説明

エネルギー代謝促進因子としてのHB−EGFの使用

【課題】エネルギー代謝促進剤、肥満抑制剤および血糖低下剤、エネルギー代謝を促進させる物質のスクリーニング方法、ならびに非ヒトトランスジェニック動物を提供する。
【解決手段】本発明のエネルギー代謝促進剤は、HB−EGFの発現または機能を促進する物質を含有してなるものである。また、本発明のスクリーニング方法は、被験物質が、骨格筋細胞においてHB−EGFの発現を増加させるか否かを評価することを含むものである。さらに、本発明の非ヒトトランスジェニック動物は、骨格筋細胞においてHB−EGFを強発現するように形質転換されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー代謝促進剤、肥満抑制剤および血糖低下剤、エネルギー代謝を促進させる物質のスクリーニング方法、ならびに非ヒトトランスジェニック動物に関する。
【背景技術】
【0002】
運動不足は、過食と並ぶエネルギー代謝異常の主要要因である。一方、習慣的な運動はインスリン感受性を高め、血中の糖・脂質プロファイルに様々な好影響を与える。運動は、骨格筋におけるグルコースの取り込みや脂肪酸の燃焼を促進することによって、直接的に糖尿病や高脂質症を改善する。また、肥満(特に、内臓肥満)に伴う脂肪毒性を解除してインスリン抵抗性を改善することも、よく知られた運動の効用である。そのため、運動による動物のエネルギー代謝促進機構の解明は、糖尿病、高脂血症などといった肥満に起因して発症する種々の疾患の予防法・治療法の開発につながると期待される。しかし、運動がどのような分子メカニズムを介して多彩なエネルギー代謝改善効果を発揮するのかについてはほとんど解明されていない。
【0003】
ところで、細胞増殖因子としてHB−EGFが知られている。このHB−EGFはEGFファミリーの増殖因子としてクローニングされた(非特許文献1参照)。本分子は、膜結合型の前駆体(proHB−EGF)として合成され、細胞膜へと運ばれる。proHB−EGFがプロテアーゼによって切断されると、EGF様ドメインを含む細胞外部分が遊離し、分泌型HB−EGFとなる(非特許文献2参照)。分泌型HB−EGFは、表皮、心筋、血管内皮、平滑筋、マクロファージなど種々の組織・細胞より生じ、ErbBファミリー受容体に結合して細胞の増殖・分化・遊走、炎症反応など多岐にわたる生理機能を現す(非特許文献3参照)。さらに、最近、HB−EGF欠損マウスの解析から、HB−EGFが心臓の形成に必要であることも示された(非特許文献4参照)。
【0004】
以上のように、HB−EGFに関しては、種々の機能が知られているが、当該分子とエネルギー代謝との関連についてはほとんど知られていない。
【非特許文献1】Higashiyama et al., Science(1991)251:936−939
【非特許文献2】Goishi et al., Mol. Biol. Cell.(1995)6:967−980
【非特許文献3】Iwamoto and Mekada, Cytokine Growth Factor Rev.(2000)11:335−344
【非特許文献4】Iwamoto et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(2003)100:3221−3226
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明では、動物のエネルギー代謝におけるHB−EGFの役割を明らかにするとともに、エネルギー代謝におけるHB−EGFの機能を利用したエネルギー代謝促進剤、肥満抑制剤、血糖低下剤などを提供することを目的とする。さらに本発明は、エネルギー代謝を促進させる物質のスクリーニング方法、動物のエネルギー代謝のメカニズム解明に利用できる非ヒトトランスジェニック動物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、上記の目的を達成すべく、運動の代謝改善作用を媒介する未知分子を探索するために、骨格筋において運動依存的に発現変動する遺伝子を網羅的に解析した。すなわち、糖・脂質代謝関連分子、ミトコンドリア関連分子、転写因子、分泌因子を中心に一万以上の遺伝子をcDNAマイクロアレイにてスクリーニングし、いくつかの候補遺伝子を選択した。
【0007】
そして、本願発明者らは、これらの候補遺伝子のうち単回運動後早期に骨格筋で発現が増加するHB−EGF(heparin−binding epidermal growth factor−like growth factor)に着目し、骨格筋細胞(以下、単に骨格筋とも呼ぶ)特異的にHB−EGFを強発現するトランスジェニックマウス(HB−EGFmTgマウス)を作製した。そして、当該トランスジェニックマウスの解析を行った結果、野生型マウスと比較してエネルギー代謝機能に優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の通りである。
〔1〕HB−EGFの発現または機能を促進する物質を含有してなる、エネルギー代謝促進剤。
〔2〕上記物質が、骨格筋細胞におけるHB−EGFの発現または機能を促進する、上記〔1〕のエネルギー代謝促進剤。
〔3〕上記物質が、HB−EGFまたはHB−EGFをコードするポリヌクレオチドを組み込んだ発現ベクターである、上記〔1〕のエネルギー代謝促進剤。
〔4〕上記発現ベクター中のプロモーターが、骨格筋細胞特異的プロモーターである、上記〔3〕のエネルギー代謝促進剤。
〔5〕HB−EGFの発現または機能を促進する物質を含有してなる、肥満抑制剤。
〔6〕HB−EGFの発現または機能を促進する物質を含有してなる、血糖低下剤。
〔7〕HB−EGF又はその誘導体を有効成分として含有する、エネルギー代謝促進剤。
〔8〕HB−EGF又はその誘導体を有効成分として含有する、血糖低下剤。
〔9〕HB−EGF又はその誘導体を有効成分として含有する、肥満抑制剤。
〔10〕被験物質が、骨格筋細胞においてHB−EGFの発現を増加させるか否かを評価することを含む、エネルギー代謝を促進させる物質のスクリーニング方法。
〔11〕下記の工程(a)〜(c)を含む、上記〔10〕の方法;
(a)被験物質とHB−EGFの発現を測定可能な骨格筋細胞とを接触させる工程;
(b)被験物質を接触させた上記細胞におけるHB−EGFの発現量を測定し、その発現量を、被験物質を接触させない対照細胞におけるHB−EGFの発現量と比較する工程;
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、HB−EGFの発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
〔12〕下記の工程(a)〜(c)を含む、上記〔10〕の方法;
(a)被験物質を動物に投与する工程;
(b)被験物質を投与した動物の骨格筋細胞におけるHB−EGFの発現量を測定し、その発現量を、対照動物の骨格筋細胞におけるHB−EGFの発現量と比較する工程;
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、HB−EGFの発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
〔13〕被験物質が、骨格筋細胞においてHB−EGFの受容体であるErbB1またはErbB4と結合し、該受容体を活性化させるか否かを判定することを含む、エネルギー代謝を促進させる物質のスクリーニング方法。
〔14〕骨格筋細胞においてHB−EGFを強発現するように形質転換された非ヒトトランスジェニック動物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエネルギー代謝促進剤は、生体におけるエネルギー代謝を促進し肥満抑制効果を示すため、肥満抑制剤、さらには肥満に起因して発症する疾患の予防・治療剤として有用である。また、本発明のエネルギー代謝促進剤は、高脂肪食摂取時におけるインスリンの血糖低下作用を向上させるものであると考えられるため、血糖低下剤としても利用することができる。本発明のエネルギー代謝を促進させる物質のスクリーニング方法によれば、肥満抑制剤、血糖低下剤、または肥満に関連する疾患の予防・治療剤の新規な有効成分、あるいは該疾患の新規な研究用試薬の開発を行うことができる。さらに、本発明の非ヒトトランスジェニック動物は、動物のエネルギー代謝機構の解明、およびエネルギー代謝を促進させる物質のスクリーニングなどに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこの記載に限定されるものではない。
【0011】
(1)エネルギー代謝促進剤
本発明のエネルギー代謝促進剤は、HB−EGFの発現または機能を促進する物質を含有してなるものである。
【0012】
本発明におけるエネルギー代謝促進剤とは、生体がエネルギーを得るために行う糖、脂質などの代謝を促進する機能を有する剤を意味する。本発明のエネルギー代謝促進剤は、HB−EGFの発現または機能を促進する物質を含有することによって、骨格筋、肝臓などにおけるエネルギー消費を促進し、その結果として肥満(内臓脂肪蓄積)を抑制することができる。したがって、本発明のエネルギー代謝促進剤は、肥満抑制剤や肥満に起因して発症する各種疾患の予防・治療薬として有効利用することができる。また、本発明のエネルギー代謝促進剤は、高脂肪食摂取時におけるインスリンの血糖低下作用を向上させるものであると考えられるため、血糖低下剤としても利用することができる。
【0013】
また、本発明のエネルギー代謝促進剤に含まれる物質は、好ましくは「骨格筋細胞におけるHB−EGFの発現を促進する物質」である。ここで骨格筋細胞とは、骨格筋を形成する細胞のことを意味する。骨格筋としてより具体的には、腓腹筋、前脛骨筋、ヒラメ筋、長肢伸筋、外側広筋、大腿二頭筋などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0014】
また、本発明において、「HB−EGFの発現または機能を促進する」とは、HB−EGFの通常の発現状態、あるいは、HB−EGFが生体において通常の機能を発揮している状態(すなわち、野生型の各種動物においてHB−EGFが通常に発現し、機能を発揮している状態)と比較して、HB−EGFの発現または機能が増強されているような状態にすることを意味する。
【0015】
ここで、HB−EGFの発現とは、HB−EGFからの翻訳産物(即ち、蛋白質)が産生され且つ機能的な状態で発現していることをいう。
【0016】
そして、本発明のエネルギー代謝促進剤において、「HB−EGFの発現を促進する物質」としては、HB−EGFをコードするポリヌクレオチドを組み込んだ発現ベクター(すなわち、HB−EGFをコードするポリヌクレオチドを機能的に含有する発現ベクター)、HB−EGF誘導因子などが挙げられる。
【0017】
上記HB−EGFをコードするポリヌクレオチドには、HB−EGF又はその機能的断片をコードするポリヌクレオチドを含むものとする。ここで、HB−EGFは、膜結合型のproHB−EGFであっても、該proHB−EGFがプロテアーゼによって切断された分泌型のHB−EGFであってもよい。
【0018】
HB−EGFをコードするポリヌクレオチドとして具体的には、配列番号1に示すヒトHB−EGFの全コード領域の塩基配列(GenBankアクセッション番号:NM_001945)、あるいは、配列番号3に示すマウスHB−EGFの全コード領域の塩基配列(GenBankアクセッション番号:NM_010415)から実質的になるDNAの全部又は一部を含むDNA等が例示される。また、上記塩基配列中の任意の塩基を置換、欠失させる技術(例えばインビトロ突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発等)を利用することもできる。
【0019】
ここで、「実質的になるDNA」とは、上記特定の塩基配列からなるDNAに加えて、高度にストリンジェントな条件において、上記の特定塩基配列からなるDNAとハイブリダイズし得る塩基配列からなるDNAを意味する。
【0020】
ストリンジェントな条件は、所望する相同性やオリゴヌクレオチドの長さ等をもとに適宜当分野で利用されている計算式に当てはめて算出することができる。ここで、高度にストリンジェントな条件としては、例えば、6×SSC(1.5M NaCl、0.15M クエン酸三ナトリウムを含む溶液を10×SSCとする)、50%フォルムアミドを含む溶液中で45℃にてハイブリッドを形成させた後、0.2×SSCで50−60℃にて洗浄するような条件(高ストリンジェントな条件;Molecular Biology,Jhon Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6.参照)を挙げることができる。
【0021】
得られたポリヌクレオチドを原核細胞及び/又は真核細胞の各種の宿主内で複製保持又は自律増殖できるプラスミドベクター及びファージベクター等に適当な制限酵素部位を利用して挿入することによって、HB−EGFをコードするポリヌクレオチドを機能的に含有する発現ベクターを得ることができる。
【0022】
ここで「機能的に」とは、そのベクターに適合する宿主細胞内で該遺伝子(DNA)が転写され、それにコードされるタンパク質が産生され得るように該遺伝子が配置されていることを意味する。好ましくは、プロモーター領域、開始コドン、HB−EGFまたはその機能的断片をコードするポリヌクレオチド、終止コドン及びターミネーター領域が連続的に配列された発現カセットを有するベクターである。形質転換体選択のためには選択マーカー遺伝子をさらに含有することが好ましい。
【0023】
また、本発明のエネルギー代謝促進剤において、発現ベクターは特に限定されないが、骨格筋細胞で発現可能なものであることが好ましい。骨格筋細胞で発現可能な発現ベクター中のプロモーターは、骨格筋細胞において特異的に遺伝子の転写を促進する骨格筋特異的プロモーターであることが好ましい。骨格筋特異的プロモーターとして具体的には、MCK(muscle creatine kinase)プロモーター、HSA(human skeletal actin)プロモーターなどが例示される。
【0024】
但し、本発明のエネルギー代謝促進剤が骨格筋細胞(例えば、腓腹筋細胞、前脛骨筋細胞)へ局所的に投与される場合には、用いられるプロモーターは必ずしも上記のような骨格筋特異的プロモーターである必要はなく、一般に用いられるプロモーターであればよい。
【0025】
そして、本発明のエネルギー代謝促進剤に含まれる物質は、好ましくは「骨格筋細胞におけるHB−EGFの発現を促進する物質」であることから、上記発現ベクターは、特に骨格筋細胞においてHB−EGFの発現を促進させるものであることが好ましい。上記発現ベクターとしてより具体的には、HB−EGFをコードするポリヌクレオチドを組み込んだp3300MCK−CATベクター(非特許文献5;Jaynes et al., Mol. Cell. Biol.(1988)8:62−70参照)を挙げることができる。p3300MCKベクターは、特定の遺伝子を骨格筋特異的に発現させることを目的として開発されたベクターである。
【0026】
本発明のエネルギー代謝促進剤において、「骨格筋細胞におけるHB−EGFの機能を促進する物質」としては、HB−EGFまたはHB−EGFの機能的断片などが挙げられる。つまり、本明細書で使用される場合、HB−EGFの機能の促進としては、HB−EGF(蛋白質)の補充をも含むものとする。つまり、本発明のエネルギー代謝促進剤は、HB−EGF又はその誘導体を有効成分として含有するものであってもよい。
また、本発明において、骨格筋細胞に対して局所的に投与されるHB−EGF(蛋白質)についても、「骨格筋細胞におけるHB−EGFの機能を促進する物質」に含まれるものとする。なお、本明細書において、HB−EGFの機能的断片とは、HB−EGFタンパク質の断片であって当該断片がエネルギー代謝促進機能を発揮する形態のものを意味する。
【0027】
HB−EGFは、上述したように膜結合型のproHB−EGF(前駆体)として合成され、プロテアーゼによって切断されて分泌型タンパク質(成熟HB−EGFともいう)となる。本発明において、HB−EGFは膜結合型のproHB−EGFであってもよいし、分泌型の成熟HB−EGFであってもよい。
【0028】
HB−EGFとしてより具体的には、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるもの、あるいは、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるものが挙げられる。配列番号2で表されるアミノ酸配列は、ヒト由来のHB−EGFタンパク質の一例であり、膜結合型のproHB−EGFである。また、配列番号4で表されるアミノ酸配列は、マウス由来のHB−EGFタンパク質の一例であり、膜結合型のproHB−EGFである。
【0029】
そして、上記分泌型タンパク質の一例としては、例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列において、第63番目から第148番目までのアミノ酸配列を少なくとも有するポリペプチドなどが挙げられる。
【0030】
また、HB−EGFは、上記のヒトHB−EGF又はマウスHB−EGFのオルソログ、あるいはそれらの変異体(SNP、ハプロタイプを含む)をも含む。HB−EGFのオルソログは特に限定されず、例えば任意の動物、具体的には哺乳動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、サル、ウサギ、ラット、ハムスター、モルモット、マウス)に由来するものであり得る。
【0031】
さらに、HB−EGFは上述のものに限定されることはなく、ErbB1またはErbB4と結合し、該受容体を活性化させ、エネルギー代謝を促進させる機能を有するものである限り、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列において、1又は2以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸を欠失、置換、及び/又は付加してなるアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。なお、上記のErbB1またはErbB4を活性化させるというHB−EGFの機能は、該受容体を活性化させることによって活性化されるセリン・スレオニンキナーゼERKの活性を測定することによって、確認することができる(Besner GEら、Gastroenterology、Vol.129、No.2、p609−625(2005))。
【0032】
あるいは、HB−EGFとしては、例えば、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列と、60%以上、70%以上、80%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列で表わされるタンパク質であり、かつ、エネルギー代謝を促進させる機能を有するタンパク質が挙げられる。
【0033】
本明細書において、「相同性」とは、二つのポリペプチド配列の間の配列相関性の程度を意味するものである。二つのポリペプチド配列間の相同性を測定する方法は数多く知られており、「相同性」(「同一性」とも言われる)なる用語は、当業者には周知である。
【0034】
また、HB−EGFは、天然蛋白質又は組換え蛋白質であり得る。HB−EGFは、自体公知の方法により調製できる。
また、HB−EGFの誘導体としては、HB−EGFと酸または塩基との生理学的に許容される塩、HB−EGFのC末端がアミド化(−CONH)またはエステル化(−COOR:ここでRとしては、例えば、C1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基、C6−12アリール基、C7−14アラルキル基など)されているもの、HB−EGFのN末端のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイルなどのC1−6アシル基など)で保護されているもの、HB−EGFのN末端のアミノ基がC1−6アルキル化されているもの、HB−EGF分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの複合蛋白質などが挙げられる。
【0035】
さらに、本発明のエネルギー代謝促進剤において、「骨格筋細胞におけるHB−EGFの機能を促進する物質」には、骨格筋細胞におけるHB−EGFの受容体であると考えられるErbB1、ErbB4と特異的に結合し、該受容体を活性化させる物質、すなわち、該受容体のアゴニストも含むものとする。
【0036】
本発明のエネルギー代謝促進剤は、上記のようなHB−EGFの発現または機能を促進する物質に加え、任意の担体、例えば医薬上許容される担体を含むことができる。
【0037】
医薬上許容される担体としては、当業者に周知の担体を適宜使用することができ特に限定されない。
【0038】
経口投与に好適な製剤は、水、生理食塩水、オレンジジュースのような希釈液に有効量の物質を溶解させた液剤、有効量の物質を固体や顆粒として含んでいるカプセル剤、サッシェ剤または錠剤、適当な分散媒中に有効量の物質を懸濁させた懸濁液剤、有効量の物質を溶解させた溶液を適当な分散媒中に分散させ乳化させた乳剤等である。
【0039】
非経口的な投与(例えば、皮下注射、筋肉注射、局所注入、腹腔内投与等)に好適な製剤としては、水性および非水性の等張な無菌の注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性および非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。
【0040】
また、本発明のエネルギー代謝促進剤が非経口的投与される場合には、骨格筋細胞(例えば、腓腹筋細胞、前脛骨筋細胞)への局所投与もまた好ましいので、かかる局所投与に適当な製剤化処理が行われる。
【0041】
なお、本発明のエネルギー代謝促進剤がHB−EGFをコードするポリヌクレオチドを組み込んだ発現ベクターを含有してなる場合、その投与方法として、例えばパーティクルガン法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、陽イオン性脂質等の脂質を使用する方法などの自体公知の遺伝子導入法を採用することも可能である。これによれば、エネルギー代謝促進剤を骨格筋細胞へ局所的に投与することができる。
【0042】
本発明の製剤の投与量は、有効成分の活性や種類、病気の重篤度、投与対象となる動物種、投与対象の薬物受容性、体重、年齢等によって異なり一概に云えないが、例えば、成人1日あたり有効成分量として約0.001〜約500mg/kgであり得る。
【0043】
上述のような本発明のエネルギー代謝促進剤は、生体におけるエネルギー代謝を促進し肥満抑制効果を示すため、肥満抑制剤、さらには肥満に起因して発症する疾患の予防・治療剤として有用である。ここで、肥満に起因して発症する疾患の予防・治療剤とは、肥満に起因して発症する種々の疾患(例えば高脂血症、糖尿病、痛風、脂肪肝、高血圧、狭心症、心筋梗塞、脳血管障害(脳梗塞、脳塞栓、脳出血)、睡眠時無呼吸症候群、脂肪萎縮症(先天性、後天性、抗ウィルス薬によるもの等)、高尿酸血症、変形性関節症、腰痛症などの疾患)の治療あるいは予防の少なくとも何れかに有効な剤のことをいう。なお、後述の実施例にも示すように、骨格筋細胞におけるHB−EGFの強発現は、高脂肪食を摂取した場合に特に脂肪蓄積抑制効果が高い。このことから、本発明の肥満抑制剤は、高脂肪食摂取に起因した肥満の抑制に使用することが好ましい。
【0044】
さらに、本発明のエネルギー代謝促進剤は、後述の実施例に示すように、骨格筋において糖代謝を促し、高脂肪食摂取時におけるインスリンの血糖低下作用を向上させるものであると考えられるため、血糖低下剤としても利用することができる。本発明の血糖低下剤は、糖尿病などの予防・治療に好適に用いることができる。
【0045】
また、本発明の範疇には、上述したHB−EGFの発現または機能を促進する物質を含有してなる肥満抑制剤、および血糖低下剤も含まれる。本発明の肥満抑制剤は、HB−EGF又はその誘導体を有効成分として含有するものであってもよい。また、本発明の血糖低下剤は、HB−EGF又はその誘導体を有効成分として含有するものであってもよい。HB−EGF及びその誘導体としては、上述したものを用いることができる。
そして、HB−EGFの発現または機能を促進する物質は、骨格筋細胞においてHB−EGFの発現または機能を促進する物質であることが好ましい。
【0046】
(2)スクリーニング方法
本発明はまた、被験物質が、骨格筋細胞においてHB−EGFの発現を増加させるか否かを評価することを含む、エネルギー代謝を促進させる物質のスクリーニング方法、ならびに、該スクリーニング方法によって得られうる物質に関する。
【0047】
本発明のスクリーニング方法に供される被験物質は、いかなる公知化合物及び新規化合物であってもよく、例えば、核酸、糖質、脂質、蛋白質、ペプチド、有機低分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分等が挙げられる。
【0048】
一実施形態では、本発明のスクリーニング方法は細胞を用いて行うことができる。この場合、本発明のスクリーニング方法は下記の工程(a)〜(c)を含む;
(a)被験物質とHB−EGFの発現を測定可能な骨格筋細胞とを接触させる工程;
(b)被験物質を接触させた上記細胞におけるHB−EGFの発現量を測定し、その発現量を、被験物質を接触させない対照細胞におけるHB−EGFの発現量と比較する工程;
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、HB−EGFの発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
【0049】
ここで、「発現を測定可能な骨格筋細胞」とは、HB−EGFの産物、例えば、転写産物、翻訳産物の発現レベルを直接的又は間接的に評価可能な骨格筋細胞をいう。HB−EGFの産物の発現レベルを直接的に評価可能な骨格筋細胞は、HB−EGFを天然で発現可能な骨格筋細胞であり得、一方、HB−EGFの産物の発現レベルを間接的に評価可能な骨格筋細胞は、HB−EGF転写調節領域についてレポーターアッセイを可能とする骨格筋細胞であり得る。HB−EGFの発現を測定可能な骨格筋細胞は、動物の骨格筋細胞、例えば哺乳動物の骨格筋細胞であり得る。
【0050】
HB−EGFを天然で発現可能な骨格筋細胞は、HB−EGFを潜在的に発現するものである限り特に限定されない。かかる細胞は、当業者であれば容易に同定でき、初代培養細胞、当該初代培養細胞から誘導された細胞株、市販の細胞株、セルバンクより入手可能な細胞株などを使用できる。当該細胞として具体的には、マウスC2C12細胞、ラットL6細胞などを挙げることができる。
【0051】
HB−EGF転写調節領域についてレポーターアッセイを可能とする骨格筋細胞は、HB−EGF転写調節領域、当該領域に機能可能に連結されたレポーター遺伝子を含む細胞である。HB−EGF転写調節領域、レポーター遺伝子は、発現ベクター中に挿入され得る。HB−EGF転写調節領域は、HB−EGFの発現を制御し得る領域である限り特に限定されない。レポーター遺伝子は、検出可能な蛋白質又は検出可能な物質を生成する酵素をコードする遺伝子であればよく、例えばGFP(緑色蛍光蛋白質)遺伝子、GUS(β−グルクロニダーゼ)遺伝子、LUC(ルシフェラーゼ)遺伝子、CAT(クロラムフェニコルアセチルトランスフェラーゼ)遺伝子等が挙げられる。
【0052】
HB−EGF転写調節領域、当該領域に機能可能に連結されたレポーター遺伝子が導入される骨格筋細胞は、HB−EGF転写調節機能を評価できる限り、即ち、該レポーター遺伝子の発現量が定量的に解析可能である限り特に限定されない。しかしながら、HB−EGFに対する生理的な転写調節因子を発現し、HB−EGFの発現量の増加の有無の評価により適切であると考えられることから、該導入される細胞としては、HB−EGFを天然で発現可能な骨格筋細胞が好ましい。
【0053】
被験物質とHB−EGFの発現を測定可能な骨格筋細胞との接触は培地中で行われることが好ましく、当該培地は、用いられる細胞の種類などに応じて適宜選択される。
【0054】
上記方法の工程(b)では、先ず、被験物質を接触させた骨格筋細胞におけるHB−EGFの発現量が測定される。発現量の測定は、用いた骨格筋細胞の種類などを考慮し、自体公知の方法により行われ得る。例えば、HB−EGFの発現を測定可能な骨格筋細胞として、HB−EGFを天然で発現可能な骨格筋細胞を用いた場合、発現量は、HB−EGFの産物、例えば、転写産物又は翻訳産物を対象として自体公知の方法により測定できる。例えば、転写産物の発現量は、骨格筋細胞からtotal RNAを調製し、RT−PCR、ノザンブロッティング等により測定され得る。また、翻訳産物の発現量は、細胞から抽出液を調製し、免疫学的手法により測定され得る。一方、HB−EGFの発現を測定可能な細胞として、HB−EGF転写調節領域についてレポーターアッセイを可能とする細胞を用いた場合、発現量は、レポーターのシグナル強度に基づき測定され得る。
【0055】
次いで、被験物質を接触させた骨格筋細胞におけるHB−EGFの発現量が、被験物質を接触させない対照細胞におけるHB−EGFの発現量と比較される。発現量の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれる。被験物質を接触させない対照細胞(骨格筋細胞)におけるHB−EGFの発現量は、被験物質を接触させた骨格筋細胞におけるHB−EGFの発現量の測定に対し、事前に測定した発現量であっても、同時に測定した発現量であってもよいが、実験の精度、再現性の観点から同時に測定した発現量であることが好ましい。
【0056】
上記方法の工程(c)では、HB−EGFの発現量を増加させる被験物質が選択される。ここで選択された物質は、骨格筋においてHB−EGFの発現量を増加させてエネルギー代謝を促進させる物質であるため、肥満抑制剤、血糖低下剤、または肥満に関連する疾患の予防・治療剤、あるいは該疾患の研究用試薬のための候補物質となり得る。
【0057】
本発明のスクリーニング方法の他の実施形態として、動物を用いて行われる方法が挙げられる。この場合、本発明のスクリーニング方法は、下記の工程(a)〜(c)を含む、;
(a)被験物質を動物に投与する工程;
(b)被験物質を投与した動物の骨格筋細胞におけるHB−EGFの発現量を測定し、その発現量を、対照動物の骨格筋細胞におけるHB−EGFの発現量と比較する工程;
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、HB−EGFの発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
【0058】
上記方法の工程(a)では、動物として、例えば哺乳動物が使用される。被験物質の動物への投与は自体公知の方法により行われ得る。また、投与の方法としては、経口投与、非経口投与など種々の投与形態が可能であるが、非経口投与を採用した場合には、骨格筋への局所的な投与が好ましい。
【0059】
上記方法の工程(b)では、HB−EGFの発現量は、自体公知の方法により測定され得る。また、本工程(b)における対照動物は、例えば、被験物質が投与されていない動物であり得る。また、上記対照動物として、後述する本発明の非ヒトトランスジェニック動物を利用することもできる。対照動物として本発明の非ヒトトランスジェニック動物を用いる場合、本工程(b)において、被験物質を投与した動物の骨格筋細胞におけるHB−EGFの発現量が、該トランスジェニック動物の骨格筋細胞におけるHB−EGFの発現量と同程度(あるいはそれ以上)であれば、該被験物質は、スクリーニング対象のエネルギー代謝を促進させる物質に該当する。対照動物として被験物質が投与されていない動物を用いる場合、本工程(b)において、被験物質を投与した動物の骨格筋細胞におけるHB−EGFの発現量が、該対照動物の骨格筋細胞におけるHB−EGFの発現量以上であれば、該被験物質は、スクリーニング対象のエネルギー代謝を促進させる物質に該当する。本工程(b)における発現量の比較及び本工程(c)は、HB−EGFの発現を測定可能な細胞を用いるスクリーニング方法におけるものと同様に行われ得る。
【0060】
上記の工程(c)で選択された物質は、骨格筋においてHB−EGFの発現量を増加させてエネルギー代謝を促進させる物質であるため、肥満抑制剤、血糖低下剤、または肥満に関連する疾患の予防・治療剤、あるいは該疾患の研究用試薬のための候補物質となり得る。
【0061】
また、本発明のスクリーニング方法の他の形態として、被験物質が骨格筋細胞においてHB−EGFの受容体であるErbB1またはErbB4(文献:Olayioye et al.,EMBO J.(2000)19:3159−3167参照)と結合し、該受容体を活性化させるか否かを判定することを含む、エネルギー代謝を促進させる物質のスクリーニング方法が挙げられる。このスクリーニング方法によれば、ErbB1またはErbB4のアゴニストを、本発明の肥満抑制剤、血糖低下剤、または肥満に関連する疾患の予防・治療剤、あるいは該疾患の研究用試薬のための候補物質としてスクリーニングすることができる。
【0062】
上記のスクリーニング方法は、例えば下記の工程(a)〜(d)を含む方法によって実施することができる。
(a)被験物質を、ErbB1またはErbB4に接触させる工程;
(b)上記(a)の工程に起因して被験物質がErbB1またはErbB4と結合するか否かを判定する工程;
(c)上記(a)の工程に起因して生じるErbB1またはErbB4の活性を測定し、該活性を被験物質を接触させない場合のErbB1またはErbB4の活性と比較する工程;
(d)上記(b)および(c)の結果に基づいて、ErbB1またはErbB4と結合し、該ErbB1またはErbB4を活性化させる被験物質を選択する工程。
【0063】
上記工程(b)において、被験物質がErbB1またはErbB4と結合するか否かは、当該分野で周知の種々の方法により判定することができる。この判定方法として具体的には、表面プラズモン共鳴による方法、適切な放射性同位体又は蛍光物質で標識された被験物質とErbB1またはErbB4に対する抗体を用いたバインディングアッセイなどが挙げられる。
【0064】
上記工程(c)において、ErbB1またはErbB4の活性を測定する方法としては、例えば、ErbB1(またはErbB4)活性に関連する細胞内現象を指標とする方法が挙げられる。例えば、被験物質をErbB1(またはErbB4)を発現している細胞に接触させ、接触により生じるErbB1(またはErbB4)活性に関連する細胞内現象を測定し、該現象を対照細胞の細胞内現象と比較する。ここで対照細胞は、例えば、被験物質が接触されていない細胞であり得る。ErbB1(またはErbB4)活性に関連する細胞内現象は、例えば、セリン・スレオニンキナーゼであるERKの活性化であり得る。なお、セリン・スレオニンキナーゼERKの活性は、Besner GEら、Gastroenterology、Vol.129、No.2、p609−625(2005)に記載の方法によって測定することができる。
【0065】
次いで、上記工程(b)および工程(c)の結果に基づいて、ErbB1(またはErbB4)の活性の調節をもたらす被験物質を選択する。活性の比較は、例えば、有意差の有無に基づいて行なわれ得る。
【0066】
(3)トランスジェニック動物
本発明はまた、骨格筋細胞においてHB−EGFを強発現するように形質転換された非ヒトトランスジェニック動物を提供する。
【0067】
本発明のトランスジェニック動物の種は、ヒトを除く動物種である限り特に限定されないが、哺乳動物が好ましい。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、サル、オランウータン、チンパンジー等の霊長類が挙げられる。
【0068】
本発明の非ヒトトランスジェニック動物において、「骨格筋細胞においてHB−EGFを強発現する」とは、各種動物の骨格筋細胞におけるHB−EGFの通常の発現状態(すなわち、野生型の各種動物の骨格筋細胞においてHB−EGFが正常に発現している状態)と比較して、骨格筋細胞でHB−EGFの発現量が増加していることを意味する。
【0069】
それゆえ、本発明の非ヒトトランスジェニック動物は、本発明のエネルギー代謝促進剤に関する説明で上述した「骨格筋細胞におけるHB−EGFの発現を促進する物質」が発現可能に導入されて形質転換された非ヒトトランスジェニック動物であり得る。
【0070】
一実施形態において、本発明の非ヒトトランスジェニック動物は、マウスであり得る。
【0071】
後述の実施例に示すように、本発明のトランスジェニック動物は、高脂肪食を摂取した場合に、野生型の動物と比較してエネルギー消費が亢進され内臓脂肪の蓄積を抑制させることが確認されている。また、本発明のトランスジェニック動物は、高脂肪食を摂取した場合に、野生型の動物と比較してインスリン投与に対する血糖低下を促進させる(すなわち、インスリン抵抗性を改善する)ことが確認されている。
なお、ここで用いる「高脂肪食」とは、例えば、総エネルギーの中で脂質の占める割合が通常の食事と比較して約3〜5倍の食事のことを意味する。
【0072】
本発明の非ヒトトランスジェニック動物は、例えば下記の工程(a)〜(d)を含む方法により製造できる。
(a)HB−EGF遺伝子と骨格筋細胞において当該遺伝子を強発現させる配列とを連結した発現ベクター(すなわち、HB−EGFをコードするポリヌクレオチドを組み込んだ発現ベクター)を調製する工程;
(b)上記発現ベクターを受精卵に導入し、遺伝子導入受精卵を仮親動物に移植する工程;
(c)上記動物から出生した子孫からトランスジェニック動物を選別する工程;
(d)上記選別した動物(ファウンダー)から系統を樹立する工程。
【0073】
上記の工程(a)において、骨格筋細胞においてHB−EGF遺伝子を強発現させる配列としては、例えば、MCK(muscle creatine kinase)プロモーター(上記非特許文献5参照)、HSA(human skeletal actin)プロモーターなどが挙げられる。HB−EGF遺伝子としては、本発明のエネルギー代謝促進剤に使用されるHB−EGFをコードするポリヌクレオチドを使用することができる。
【0074】
発現ベクターの作製は、上記プロモーターを含む公知のベクターを用いて、自体公知の方法により行うことができる。得られた発現ベクターは、制限酵素等により線状化して工程(b)に供することが好ましい。
【0075】
上記の工程(b)において、上記発現ベクターを受精卵に導入する方法は、例えば、交配後の雌の卵管を洗浄して受精卵を採取し、精子または卵子由来の前核にマイクロインジェクション法により上記発現ベクターを直接注入する方法が挙げられる。この受精卵を偽妊娠させた仮親の輸卵管に移植し、子宮内で発生を続けさせる。
【0076】
上記の工程(c)において、工程(b)で移植した動物が出生した子孫からトランスジェニック動物を選別する方法としては、例えば、注入した発現ベクターが染色体DNAに組み込まれているか否かについて、産仔の尾部より分離抽出した染色体DNAをサザンブロット法またはPCR法によりスクリーニングする方法が挙げられる。
【0077】
上記の工程(d)において、工程(c)で選別した動物(ファウンダー)から遺伝的背景の均一な系統を樹立する方法としては、発現ベクターが組み込まれた動物とC57BL/6、FVBなどの近交系の野生型動物とを戻し交配する方法が挙げられる。
【0078】
このようにして得られた本発明の非ヒトトランスジェニック動物をさらに交配して得られる子孫動物、これら動物に由来する組織または細胞も本発明に含まれる。上記組織としては、すべての組織(脳、神経、骨髄、筋肉、心臓、腎臓、肝臓、血球およびその前駆体、幹細胞など)が挙げられるが、本発明のトランスジェニック動物は骨格筋におけるHB−EGFの強発現に特徴を有することから骨格筋の組織が好ましい。また、上記細胞としては、上記組織中に含まれる細胞、組織中から単離された細胞、これら細胞から樹立した細胞株が挙げられ、具体的には骨格筋細胞が好ましい。
【0079】
また、本発明には、HB−EGFを強発現するように形質転換された動物細胞、すなわち、トランスジェニック細胞も含まれる。該トランスジェニック細胞は、ヒトを含む任意の動物に由来する細胞であり得るが、哺乳動物に由来する細胞が好ましい。
【0080】
本発明のトランスジェニック細胞は、任意の組織に由来する細胞であり得るが、好ましくは骨格筋細胞である。該骨格筋細胞は、野生型の細胞と比較してエネルギー代謝機能が亢進し得る。
【0081】
本発明の非ヒトトランスジェニック動物は、例えば、動物のエネルギー代謝機構の解明(特に、動物のエネルギー代謝におけるHB−EGFの機能の解明)、およびエネルギー代謝を促進させる物質のスクリーニングなどに有用である。
【実施例】
【0082】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
〔実施例1〕
(運動による骨格筋におけるHB−EGF遺伝子の発現)
C57B6マウスに14m/分のトレッドミル運動を45分間×2回負荷した後、約3時間経過した時点で各種骨格筋より全RNAを抽出し、マウスHB−EGF cDNA(配列番号3参照)をプローブとしてノザンブロット解析を行った。
【0084】
その結果を図1に示す。本図に示すように、90分間のトレッドミル運動を負荷したC57B6マウスの腓腹筋において、運動終了後3時間の時点でHB−EGF mRNAの発現が著しく増加していることが確認された。本実施例の結果により、本願発明者らが既に行っていたcDNAマイクロアレイ解析の結果(データ示さず)が追認された。
【0085】
〔実施例2〕
(HB−EGFmTgマウスの作製)
特定の遺伝子を骨格筋特異的に発現させることを目的として開発されたベクターp3300MCK−CAT(上記非特許文献5参照)にマウスHB−EGF cDNAを組み込んだ。制限酵素SST−1およびHindIIIにて発現カセットを切り出し、精製フラグメントをトランスジーンとしてC57B6マウス由来受精卵に注入し、従来公知の方法に従ってHB−EGFmTgマウス(以下、Tgマウスと呼ぶ)を作製した。
【0086】
図2には、Tgマウスの作製に用いたトランスジーンを模式的に示す。トランスジーンは、図2に示すように、MCK(muscle creatine kinase)プロモーター(GenBankアクセッション番号:AF188002)、E.coli CAT(chloramphenicol acetyl transferase)遺伝子(GenBankアクセッション番号:V00622)、およびSV40polyadenylationシグナル(GenBankアクセッション番号:J02400)より構成される発現カセットを含むプロモーター(p3300MCK−CAT)にマウスHB−EGF cDNA(配列番号3に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド)を組み込んだものである。
【0087】
トランスジーンを注入した受精卵を移植した偽妊娠マウスから49匹のF0マウスが出生した。出生したマウスのうち、PCR法による一次スクリーニングによって9匹のマウスが陽性であることが確認された。続いて、ゲノムDNAへのトランスジーンの挿入様式を検討するために、マウスHB−EGF cDNAをプローブとしてサザンブロット解析を実施した。
【0088】
その結果を図3A、Bに示す。なお、図3AはHindIIIで制限酵素処理を行ったものであり、図3Bは、EcoRIで制限酵素処理を行ったものである。また、図中、NCはネガティブコントロールを、PCはポジティブコントロールを示す。図3A、Bに示すように、2系統(#11、#45)のマウスに適切なトランスジーンの挿入が確認された。
【0089】
〔実施例3〕
(#45TgマウスにおけるmRNA発現解析)
実施例2において得られた#45のTgマウスについて、様々な組織、あるいは骨格筋(肝臓(Liver)、心臓(Heart)、白色脂肪組織(WAT)、前脛骨筋(TA)、腓腹筋(GC)、ヒラメ筋(Sol)、長肢伸筋(EDL))における、トランスジーンに由来するHB−EGF mRNAの発現を解析した。比較のために野生型マウスについても同様の解析を行った。
【0090】
その結果を図4に示す。なお、図4では、Tgマウスを「T」と、野生型マウスを「W」と示す。図4に示すように、腓腹筋および前脛骨筋においてトランスジーンに由来するHB−EGF mRNA(外因性HB−EGF)が強く発現していた。外因性HB−EGFはヒラメ筋(Sol)、長肢伸筋(EDL)にも有意に発現し、わずかながら心臓(Heart)にも認められた。一方、肝臓(Liver)や白色脂肪組織(WAT)には検出されなかった。このように、トランスジーンに由来するHB−EGF遺伝子の発現は、筋肉に特異的かつ白筋(type II fiber)優位であった。
【0091】
さらに、細胞内部分を認識する特異的抗体を用いたウエスタンブロット解析を行った。なお、比較のために野生型マウスについても同様の解析を行った。その結果を図5Aに示す。図5Aでは、Tgマウスを「Tg」と、野生型マウスを「WT」と示す。図5Aに示すように、Tgマウスの腓腹筋においてトランスジーンに由来するHB−EGFタンパク質の発現が確認された。
【0092】
また、Tgマウスおよび野生型マウスについて、細胞内部分を認識する特異的抗体を用いた蛍光免疫染色を行った。その結果を図5Bに示す。図5Bでは、Tgマウスを「Tg」と、野生型マウスを「WT」と示す。図5Bに示すように、Tgマウスの腓腹筋線維周辺を中心に明らかなHB−EGFの免疫蛍光が検出された。
【0093】
以上の結果より、Tgマウスにおいてトランスジーンに由来するHB−EGFタンパク質の発現が確認された。
【0094】
〔実施例4〕
(#45Tgマウスの表現型解析)
実施例2において得られた#45のTgマウスについて、表現型の解析を行った。なお、本実施例で使用された通常飼料とは、100gあたりの熱量が約360キロカロリーであり、そのうち炭水化物が60%、脂質が13%、タンパク質が27%を占める飼料のことをいう。一方、本実施例で使用された高脂肪飼料とは、100gあたりの熱量が約480キロカロリーであり、そのうち炭水化物が22%、脂質が58%、タンパク質が20%を占める飼料のことをいう。
【0095】
通常飼料飼育条件におけるTgマウスの体重変化を野生型マウスと比較した。その結果を図6に示す。図6では、雄の野生型マウスを「WTM」、雄のTgマウスを「TgM」、雌の野生型マウスを「WTF」、雌のTgマウスを「TgF」、とそれぞれ示す。図6に示すように、通常飼料飼育条件におけるTgマウスの体重は、生後15週齢まで雌雄ともに野生型マウスに比較してやや軽い傾向にあった。
【0096】
高脂肪飼料飼育条件におけるTgマウスの体重変化を野生型マウスと比較した。その結果を図7に示す。図7では、雄の野生型マウスを「WTM」、雄のTgマウスを「TgM」、雌の野生型マウスを「WTF」、雌のTgマウスを「TgF」、とそれぞれ示す。図7に示すように、高脂肪飼料飼育下におけるTgマウスの体重増加は、雌雄ともに野生型マウスに比較して有意に抑制されていた。
【0097】
図8Aには、高脂肪飼料飼育下の野生型マウスおよびTgマウス(23週齢の雌)の外観を示す。また、図8Bには、高脂肪飼料飼育下の野生型マウスおよびTgマウス(23週齢の雌)の腹腔内および皮下脂肪の蓄積の様子を示す。図8AおよびBでは、Tgマウスを「Tg」と、野生型マウスを「WT」と示す。図8AおよびBに示すように、高脂肪飼料飼育下のTgマウスは、同条件の野生型マウスに比べて痩せており、腹腔内および皮下への脂肪蓄積は野生型マウスに比べて外見上明らかに少なかった。
【0098】
図9A〜Cには、高脂肪飼料飼育下の野生型マウスおよびTgマウス(23週齢の雌)の各組織の重量(体重に対する比率)を示す。図9A〜Cでは、Tgマウスを「Tg」と、野生型マウスを「WT」と示す。また、図9A〜Cにおいて、前脛骨筋は「TA」、ヒラメ筋は「So」、長肢伸筋は「EDL」、白色脂肪組織は「WAT」、肝臓は「liver」、心臓は「heart」、褐色脂肪組織は「BAT」、腓腹筋は「gastro」と示す。図9A〜Cに示すように、野生型マウスに比較して、腹腔内および皮下の白色脂肪組織の重量がTg群において著しく減少していた。一方、前脛骨筋を除く各種骨格筋、褐色脂肪組織、心臓、および肝臓の重量は、両群間に有意差を認めなかった。
【0099】
図10AおよびBには、通常飼料飼育下および高脂肪飼料飼育下における体重あたりの摂食量をそれぞれ示す。図10AおよびBでは、雄の野生型マウスを「WTM」、雄のTgマウスを「TgM」、雌の野生型マウスを「WTF」、雌のTgマウスを「TgF」、とそれぞれ示す。図10Aに示すように、通常飼料飼育下(9週齢)における体重あたりの摂食量は、雌雄とも両群で同等であった。一方、図10Bに示すように、高脂肪飼料飼育下(10週齢)における体重あたりの摂食量は、雄では両群で同等であったが、雌ではTg群でやや減少傾向にあった。
【0100】
以上の結果から、骨格筋特異的なHB−EGFの強発現が高脂肪食で誘発される肥満を抑制することが明らかとなった。さらに、このようなHB−EGFの作用は、エネルギー摂取量の低下に起因するものではなく、エネルギー消費の亢進に起因することが示唆された。
【0101】
続いて、骨格筋特異的に強発現したHB−EGFが糖代謝に及ぼす影響を検討した。
【0102】
図11AおよびBには、通常飼料飼育下におけるTgマウスおよび野生型マウス(22週齢)の随時血糖レベルを示す。図11CおよびDには、高脂肪飼料飼育下におけるTgマウスおよび野生型マウス(22週齢)の随時血糖レベルを示す。図11A〜Dでは、雄の野生型マウスを「WTM」、雄のTgマウスを「TgM」、雌の野生型マウスを「WTF」、雌のTgマウスを「TgF」、とそれぞれ示す。図11A〜Dに示すように、通常飼料、高脂肪飼料何れの飼育条件においても、22週齢での随時血糖レベルは雌雄とも野生型に比べてTg群において低値を示した。本実施例において血糖レベルの測定は、小型血糖測定機専用電極グルテストセンサー(三和化学研究所社製)および小型血糖測定機グルテストエース(三和化学研究所社製)を用いて行った。
【0103】
さらに、図12AおよびBには、通常飼料飼育下におけるTgマウスおよび野生型マウス(22週齢)の空腹時血糖レベルを示す。図12CおよびDには、高脂肪飼料飼育下におけるTgマウスおよび野生型マウス(22週齢)の空腹時血糖レベルを示す。図12A〜Dでは、雄の野生型マウスを「WTM」、雄のTgマウスを「TgM」、雌の野生型マウスを「WTF」、雌のTgマウスを「TgF」、とそれぞれ示す。図12A〜Dに示すように、通常飼料、高脂肪飼料何れの飼育条件においても、22週齢での空腹時血糖レベルは雌雄とも野生型に比べてTg群において低値を示した。
【0104】
以上の結果から、骨格筋特異的にHB−EGFを強発現することによって血糖値が低下することが明らかになった。
【0105】
また、図13AおよびBには、通常飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢)のグルコース負荷後の血糖上昇反応を示す。図13CおよびDには、通常飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢)のグルコース負荷後のインスリン分泌反応(IRI)を示す。図13A〜Dでは、雄の野生型マウスを「WTM」、雄のTgマウスを「TgM」、雌の野生型マウスを「WTF」、雌のTgマウスを「TgF」、とそれぞれ示す。図13A〜Dに示すように、通常飼料飼育下では、グルコース負荷後の血糖上昇反応およびインスリン分泌反応に雌雄とも両群間で有意差を認めなかった。なお、本実施例においてインスリン分泌反応(IRI)の定量は、レビスインスリンキット(シバヤギ社製:Code No.AKRIN−011T)を用いて行った。
【0106】
また、図14AおよびBには、高脂肪飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢)のグルコース負荷後の血糖上昇反応を示す。図14CおよびDには、高脂肪飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢)のグルコース負荷後のインスリン分泌反応(IRI)を示す。図14A〜Dでは、雄の野生型マウスを「WTM」、雄のTgマウスを「TgM」、雌の野生型マウスを「WTF」、雌のTgマウスを「TgF」、とそれぞれ示す。図14AおよびBに示すように、高脂肪飼料飼育下では、グルコース負荷後の血糖上昇反応に雌雄とも両群間で有意差を認めなかった。一方、図14CおよびDに示すように、高脂肪飼料飼育下では、グルコース負荷前(空腹時)および負荷後の血中インスリンレベルは、雌雄ともTg群で有意に低いことが確認された。
【0107】
これらの結果は、骨格筋特異的に強発現したHB−EGFが耐糖能に明らかな影響を与えないことを示す一方、高脂肪食により生じる高インスリン血症を軽減する(つまり、インスリン抵抗性の出現を抑制する)可能性を示唆するものである。
【0108】
さらに、インスリン感受性に対するHB−EGFの効果を調べるために、引き続きインスリン負荷試験を実施した。その結果を図15A〜Dに示す。図15Aには、通常飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢、雄)のインスリン投与後の血糖低下率を示す。図15Bには、通常飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢、雌)のインスリン投与後の血糖低下率を示す。図15Cには、高脂肪飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢、雄)のインスリン投与後の血糖低下率を示す。図15Dには、高脂肪飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢、雌)のインスリン投与後の血糖低下率を示す。
【0109】
図15AおよびBに示すように、通常飼料飼育下では、雌雄ともに両群間でインスリン投与後の血糖低下率に有意差を認めなかった。つまり、骨格筋特異的に強発現したHB−EGFは、通常飼料飼育下における個体レベルでのインスリン感受性に有意な影響を与えなかった。一方、図15CおよびDに示すように、高脂肪飼料飼育下では、雌雄ともにTg群においてインスリンの血糖低下作用が亢進していた。
【0110】
以上の結果から、骨格筋特異的なHB−EGFの強発現が高脂肪食で誘発されるインスリン抵抗性を改善することが明らかとなった。
【0111】
〔結論〕
以上のように、骨格筋特異的なHB−EGFの強発現がインスリン感受性に影響を与えることなく通常飼料摂取マウスの血糖値を低下させたことから、HB−EGFがインスリンとは独立した機序で骨格筋による糖利用を促進する可能性が示唆された。一方、高脂肪飼料飼育条件においては、骨格筋特異的なHB−EGFの強発現がエネルギー消費の亢進を介して肥満の発症を抑制する効果を示すことが示唆された。高脂肪飼料摂取下のHB−EGFmTgマウスで観察されたインスリン抵抗性の改善は、このような肥満(内臓脂肪蓄積型の肥満)の抑制から二次的に生じたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
上述したように、本発明のエネルギー代謝促進剤は、例えば肥満抑制剤および血糖低下剤として利用できるとともに、肥満に起因して発症する疾患の予防・治療に有用である。また、本発明のエネルギー代謝を促進させる物質のスクリーニング方法は、肥満抑制剤、血糖低下剤、または肥満に関連する疾患の予防・治療剤、あるいは該疾患の研究用試薬の開発に有用である。さらに、本発明の非ヒトトランスジェニック動物は、動物のエネルギー代謝機構の解明、およびエネルギー代謝を促進させる物質のスクリーニングなどに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】図1は、ノザンブロット解析を行った結果を示す図である。
【図2】図2は、Tgマウスの作製に用いたトランスジーンを示す模式図である。
【図3A】図3Aは、サザンブロット解析を行った結果を示す図である。
【図3B】図3Bは、サザンブロット解析を行った結果を示す図である。
【図4】図4は、Tgマウスの種々の骨格筋および組織において外因性HB−EGFの発現解析を行った結果を示す図である。
【図5A】図5Aは、Tgマウスの腓腹筋についてウエスタンブロット解析を行った結果を示す図である。
【図5B】図5Bは、Tgマウスの腓腹筋について蛍光免疫染色を行った結果を示す図である。
【図6】通常飼料飼育条件におけるTgマウスの体重変化を示すグラフである。
【図7】高脂肪飼料飼育条件におけるTgマウスの体重変化を示すグラフである。
【図8A】図8Aは、高脂肪飼料飼育条件下の野生型マウスおよびTgマウス(23週齢の雌)の外観を示す図である。
【図8B】図8Bは、高脂肪飼料飼育条件下の野生型マウスおよびTgマウス(23週齢の雌)の腹腔内および皮下脂肪の蓄積の様子を示す図である。
【図9A】図9Aは、高脂肪飼料飼育下の野生型マウスおよびTgマウス(23週齢の雌)の各組織の重量(体重に対する比率)を示すグラフである。
【図9B】図9Bは、高脂肪飼料飼育下の野生型マウスおよびTgマウス(23週齢の雌)の各組織の重量(体重に対する比率)を示すグラフである。
【図9C】図9Cは、高脂肪飼料飼育下の野生型マウスおよびTgマウス(23週齢の雌)の各組織の重量(体重に対する比率)を示すグラフである。
【図10A】図10Aは、通常飼料飼育下における体重あたりの摂食量をそれぞれ示すグラフである。
【図10B】図10Bは、高脂肪飼料飼育下における体重あたりの摂食量をそれぞれ示すグラフである。
【図11A】図11Aは、通常飼料飼育下におけるTgマウスおよび野生型マウスの随時血糖レベルを示すグラフである。
【図11B】図11Bは、通常飼料飼育下におけるTgマウスおよび野生型マウスの随時血糖レベルを示すグラフである。
【図11C】図11Cは、高脂肪飼料飼育下におけるTgマウスおよび野生型マウスの随時血糖レベルを示すグラフである。
【図11D】図11Dは、高脂肪飼料飼育下におけるTgマウスおよび野生型マウスの随時血糖レベルを示すグラフである。
【図12A】図12Aは、通常飼料飼育下におけるTgマウスおよび野生型マウスの空腹時血糖レベルを示すグラフである。
【図12B】図12Bは、通常飼料飼育下におけるTgマウスおよび野生型マウスの空腹時血糖レベルを示すグラフである。
【図12C】図12Cは、高脂肪飼料飼育下におけるTgマウスおよび野生型マウスの空腹時血糖レベルを示すグラフである。
【図12D】図12Dは、高脂肪飼料飼育下におけるTgマウスおよび野生型マウスの空腹時血糖レベルを示すグラフである。
【図13A】図13Aは、通常飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢)のグルコース負荷後の血糖上昇反応を示すグラフである。
【図13B】図13Bは、通常飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢)のグルコース負荷後の血糖上昇反応を示すグラフである。
【図13C】図13Cは、通常飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢)のグルコース負荷後のインスリン分泌反応を示すグラフである。
【図13D】図13Dは、通常飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢)のグルコース負荷後のインスリン分泌反応を示すグラフである。
【図14A】図14Aは、高脂肪飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢)のグルコース負荷後の血糖上昇反応を示すグラフである。
【図14B】図14Bは、高脂肪飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢)のグルコース負荷後の血糖上昇反応を示すグラフである。
【図14C】図14Cは、高脂肪飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢)のグルコース負荷後のインスリン分泌反応を示すグラフである。
【図14D】図14Dは、高脂肪飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢)のグルコース負荷後のインスリン分泌反応を示すグラフである。
【図15A】図15Aは、通常飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢、雄)のインスリン投与後の血糖低下率を示すグラフである。
【図15B】図15Bは、通常飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢、雌)のインスリン投与後の血糖低下率を示すグラフである。
【図15C】図15Cは、高脂肪飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢、雄)のインスリン投与後の血糖低下率を示すグラフである。
【図15D】図15Dは、高脂肪飼料飼育下でのTgマウスおよび野生型マウス(22週齢、雌)のインスリン投与後の血糖低下率を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HB−EGFの発現または機能を促進する物質を含有してなる、エネルギー代謝促進剤。
【請求項2】
上記物質が、骨格筋細胞におけるHB−EGFの発現または機能を促進する、請求項1記載のエネルギー代謝促進剤。
【請求項3】
上記物質が、HB−EGFまたはHB−EGFをコードするポリヌクレオチドを組み込んだ発現ベクターである、請求項1記載のエネルギー代謝促進剤。
【請求項4】
上記発現ベクター中のプロモーターが、骨格筋細胞特異的プロモーターである、請求項3記載のエネルギー代謝促進剤。
【請求項5】
HB−EGFの発現または機能を促進する物質を含有してなる、肥満抑制剤。
【請求項6】
HB−EGFの発現または機能を促進する物質を含有してなる、血糖低下剤。
【請求項7】
HB−EGF又はその誘導体を有効成分として含有する、エネルギー代謝促進剤。
【請求項8】
HB−EGF又はその誘導体を有効成分として含有する、血糖低下剤。
【請求項9】
HB−EGF又はその誘導体を有効成分として含有する、肥満抑制剤。
【請求項10】
被験物質が、骨格筋細胞においてHB−EGFの発現を増加させるか否かを評価することを含む、エネルギー代謝を促進させる物質のスクリーニング方法。
【請求項11】
下記の工程(a)〜(c)を含む、請求項10記載の方法;
(a)被験物質とHB−EGFの発現を測定可能な骨格筋細胞とを接触させる工程;
(b)被験物質を接触させた上記細胞におけるHB−EGFの発現量を測定し、その発現量を、被験物質を接触させない対照細胞におけるHB−EGFの発現量と比較する工程;
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、HB−EGFの発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
【請求項12】
下記の工程(a)〜(c)を含む、請求項10記載の方法;
(a)被験物質を動物に投与する工程;
(b)被験物質を投与した動物の骨格筋細胞におけるHB−EGFの発現量を測定し、その発現量を、対照動物の骨格筋細胞におけるHB−EGFの発現量と比較する工程;
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、HB−EGFの発現量を増加させる被験物質を選択する工程。
【請求項13】
被験物質が、骨格筋細胞においてHB−EGFの受容体であるErbB1またはErbB4と結合し、該受容体を活性化させるか否かを判定することを含む、エネルギー代謝を促進させる物質のスクリーニング方法。
【請求項14】
骨格筋細胞においてHB−EGFを強発現するように形質転換された非ヒトトランスジェニック動物。

【図6】
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【図7】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2007−223939(P2007−223939A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46037(P2006−46037)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】