説明

エネルギー吸収材料としてのエラストマー組成物

衝撃エネルギーの吸収のための材料の使用方法であって、該材料の組成が、少なくとも、23℃で測定されるショアA硬度が80よりも低い有機熱可塑性エラストマーである成分(A)と、ダイラタント特性を示す硼酸化シリコーンポリマーを除く、架橋されておらず且つ実質的に非反応性のシリコーンポリマーまたは架橋されたシリコーンポリマーである成分(B)との混合物である、使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性を提供するための、エネルギー吸収材料としてのエラストマー組成物の新しい使用方法に関するものである。また、本発明は、少なくとも一部分においてそのような組成物で製造された、種々の衝撃保護品に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
現在利用できる衝撃保護材料は2種類に分類される傾向があり、すなわち着用感が良くないことのある硬質の外装シェル(例えば、膝当てや肘当て)と、低い保護性を提供する発泡パッド(例えば、衣類用挿入物)とに分類される傾向がある。そのため、硬質シェルの保護性と発泡パッドの可塑性が組み合わされたエネルギー吸収材料が提案されている。
【0003】
エネルギー吸収材料は、広い用途が見出されており、例えばオートバイ、スキー、スケート、スケートボードまたはスノーボードなどの潜在的に危険性の高いスポーツ向けの防護服において、保護包装材としての用途が見出されている。エネルギー吸収材料は、典型的にはシートに成形されるが、さらに加工されて、該シート材料から部分的または全面的に形成された成形品となることもある。このシート材料はエネルギー吸収材料そのものから成形されてもよく、または、例えばエネルギー吸収材料を含浸させた織物や発泡体のような基材から成形されてもよい。大抵の既知の解決手段においては、ダイラタント材料が製品の一部をなしている。
【0004】
一例として、国際公開第03/022085号には、柔軟性の有るエネルギー吸収材料が記述されており、そこではダイラタント(シェアシックニング)材料が織物や発泡体などの柔軟性キャリアに含浸されている。ダイラタント材料は、衝撃を受けるまでは軟らかいままであり、衝撃を受けるとその特性が変化して一時的に硬化する。その衝撃の後、ダイラタント材料はその通常の柔軟な状態に戻る。望ましいダイラタント材料は、ダウコーニング社の「Dow Corning(登録商標) 3179」という商標で利用可能なシリコーン組成物である。柔軟性の有るエネルギー吸収材料は、例えば衣類または膝当て若しくは肘当てとして、衝撃保護を目的として身につけることができる。
【0005】
国際公開第05/000966号には、エラストマー複合体の形態のダイラタント材料による解決手段が開示されており、ここで、該ダイラタント材料は、変形速度につれて増大する変形下での負荷抵抗を示し、未発泡又は発泡されており、細分され又は細分されておらず、また、i)第一のポリマーベースのエラストマー材料と、ii) i) とは異なりi) の不存在下でダイラタンシーを示す第二のポリマーベースの材料とを含み、ii) は固体母材 i) 内に閉じ込められており、複合材料は未発泡であるか、発泡させられる時には発泡に先立って、ii) と i) を混ぜて調製することができる。
【0006】
その他のエネルギー吸収の分野としては、有機熱可塑性エラストマー(TPE)が用いられる、制振がある。例として、欧州特許第0362850B1号は、制振性能に優れた新しいブロックコポリマーに関するものである。このブロックコポリマーは、数平均分子量が30,000〜350,000であり、数平均分子量が2,500〜40,000の芳香族ビニル単位からなる2個以上のブロックと、ビニル結合含有量が40%以上であり、0℃以上にtanδの主分散のピークを有し、少なくとも一部の炭素-炭素二重結合が水素添加されていてもよいイソプレンまたはイソプレン-ブタジエンからなる1個以上のブロックより構成される。このブロックコポリマーは熱溶融状態での加工が可能であり、容易に成形される。英国特許出願公開第2353286号には、40〜80重量%のスチレンブロックコポリマー、20〜60重量%の脂環族飽和炭化水素系樹脂、および0.1〜10重量%のオルガノポリシロキサンを含むマウスガード組成物が記載されている。米国特許出願第2003/0109623号には、熱可塑性ポリウレタンポリマーおよびシリコーンエラストマーを含み、その重量比が5:95〜85:15である再加工可能な熱可塑性エラストマー組成物が記載されている。
【0007】
欧州特許出願公開1408076A1号では、ゴムのような特性や成形性を満たすのみならず、圧縮永久歪みや制振性の両方をも満たし、不飽和結合を含んだイソブチレンポリマー(A)およびオレフィン樹脂(B)を含む熱可塑性エラストマー組成物の形態の他の解決手段を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第03/022085号
【特許文献2】国際公開第05/000966号
【特許文献3】欧州特許第0362850B1号
【特許文献4】英国特許出願公開第2353286号
【特許文献5】米国特許出願第2003/0109623号
【特許文献6】欧州特許出願公開1408076A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、当技術分野においては、柔軟性を失うことなく、より多くのエネルギーを吸収できる柔らかいエネルギー吸収材料の必要性が依然として残っている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明は、衝撃エネルギーの吸収のための材料の使用方法に関するものであり、該材料の組成物が少なくとも以下のものの混合物である:
a. 23℃で測定されるショアA硬度(ISO 868)が80よりも低い、有機熱可塑性エラストマー成分(A)
b. ダイラタント特性を示す硼酸化シリコーンポリマーを除く、非反応性でかつ架橋されていないシリコーンポリマーまたは架橋されたシリコーンポリマーである成分(B)。
【0011】
このような成分の組み合わせ物の使用により、柔軟性とエネルギー吸収性との優れたバランスが提供される。
【0012】
本発明の別の態様は、本発明によって使用される新しい組成物に関するものである。
【0013】
従って、本発明の別の態様によれば、衝撃エネルギーの吸収性を示し、成分(A)の有機熱可塑性エラストマーが、23℃で測定されるショアA硬度(ISO 868)が80よりも低く、好ましくは、数平均分子量が30000 g/mol〜500000 g/molであり、数平均分子量が2000 g/mol〜70000 g/molの芳香族ビニル単位からなる2個以上のハードブロックと、1個以上の不飽和の、部分的に飽和の、または完全に飽和の脂肪族ソフトブロックとを有するブロックコポリマーである、組成物が提供される。
【0014】
一実施形態では、衝撃エネルギーの吸収性を示し、成分(A)の有機熱可塑性エラストマーが、23℃で測定されるショアA硬度(ISO 868)が80よりも低く、好ましくは、数平均分子量が30000 g/mol〜500000 g/molであり、数平均分子量が2000 g/mol〜70000 g/molの芳香族ビニル単位からなる2個以上のハードブロックと、1個以上の不飽和の、部分的に飽和の、または完全に飽和の脂肪族ソフトブロックとを有するブロックコポリマーであり、成分(B)が上述のものである、組成物が提供される。任意に、成分(B)は架橋性シリコーンポリマーである。
【0015】
本発明の別の態様によれば、衝撃エネルギーの吸収性を示し、以下のものの混合物である別の組成物が提供される:
a. 23℃で測定されるショアA硬度(ISO 868)が80よりも低い、有機熱可塑性エラストマー成分(A)
b. ダイラタント特性を示す硼酸化シリコーンポリマーを除く、架橋されておらず且つ非反応性のシリコーンポリマーである成分(B)。
【0016】
また、本発明は、請求項に記載された全ての使用方法および組成物に関するものでもある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(成分(A)の説明)
本発明に従って用いられる組成物において、成分(A)は、ISO 868に準拠した23℃での測定で80よりも低いショアA硬度を示す如何なる種類の有機熱可塑性エラストマーでもよい。
【0018】
それぞれの硬度を有する有機熱可塑性エラストマーの全種類が使用可能である。例えば、成分(A)は、ISO基準18604:2003に引用される熱可塑性プラスチック原料から選択することができ、例えば、ハードおよびソフトセグメントが交互に並び、ハードブロックにアミド化学結合が、ソフトブロックにエーテルおよび/またはエステル結合が含まれるブロックコポリマーからなる熱可塑性ポリアミドエラストマーや、ハードセグメントとソフトセグメントの間の主鎖における結合がエステルおよび/またはエーテルの化学結合である熱可塑性コポリエステルエラストマーや、ポリオレフィンと従来ゴムとのブレンドからなり、そのゴム相に架橋構造を一切若しくはほとんど有さない熱可塑性オレフィンエラストマーや、少なくともスチレンおよび特定のジエンのトリブロックコポリマーからなり、2個の末端ブロックがポリスチレンであり、内部ブロックがポリジエンまたは水素添加ポリジエンである熱可塑性スチレンエラストマーや、ハードブロックにウレタン化学結合を有し、ソフトブロックにエーテル、エステル若しくはカーボネート結合またはそれらのミックスを有する熱可塑性ウレタンエラストマーや、熱可塑性プラスチック材料と従来ゴムのブレンドからなり、ブレンドおよびミキシングの工程時にそのゴムが動的加硫プロセスによって架橋される熱可塑性ゴム加硫物、ならびにこれらを2個以上含む混合物などがある。特に、スチレン系のエラストマーは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーと並び、望ましいものである。欧州特許第1060217号、欧州特許第1305367号、欧州特許第1354003号、および特に欧州特許第1440122号で用いられる、それぞれのショア硬度値を有し、ポリウレタン材料に関連した熱可塑性エラストマーの使用が可能である。
【0019】
誤解を避けるために付言するならば、ハードブロックとは、ソフトブロックよりも著しく高い温度においてガラス転移点(tg)を有することから、そのように名付けられている。典型的に、ハードブロックは、50℃よりも高く、好ましくは80℃よりも高いtgを有し、ソフトブロックは50℃よりも低く、典型的には-10〜25℃の間にtgを有するものである。
【0020】
ISO 868に準拠した23℃での測定で80よりも低いショアA硬度を示す有機熱可塑性エラストマーのうち、芳香族ビニル単位からなる2個以上ハードブロックと、1個以上の不飽和の、部分的に飽和の、または完全に飽和の脂肪族ソフトブロックとを有するブロックコポリマーが特に好ましい。好ましくは、成分(A)は、数分子量が30000 g/mol〜500000 g/molであり、数分子量が2000 g/mol〜70000 g/molの芳香族ビニル単位からなる2個以上のハードブロックと、1個以上の不飽和の、部分的に飽和の、または完全に飽和の脂肪族ソフトブロックとを有するブロックコポリマーである。数分子量はASTM D5296-05を用いて測定され、ポリスチレン分子量当量として算出される。都合がいいことに、芳香族ビニル単位からなる2個以上のハードブロックは、数分子量が2000 g/mol〜70000 g/molである。最も一般的な芳香族ビニル単位はスチレンである。つまり成分(A)は、望ましくは、1個以上の不飽和の、部分的に飽和の、または完全に飽和の脂肪族ソフトブロックを有するスチレンブロックコポリマーである。望ましいのはスチレントリブロックコポリマーである。
【0021】
スチレンブロックコポリマーに最も使用されるのは、規格化された命名法ではS(B)S、S(I)S、S(EB)S、S(EP)S、S(EEP)S、S(IB)Sとして知られるスチレントリブロックコポリマーであり、ここでS=スチレン、I=イソプレン、B=ブタジエン、EB=エチレン-ブチレン、EP=エチレン-プロピレン、EEB=エチレン-エチレン-プロピレン、IS=イソブチレンである。これらのブロックコポリマーの調製は、当業者にとって周知である。
【0022】
この発明においては、-10〜50℃の範囲の温度でtg(δ)の主ピークを示すスチレンブロックコポリマーが好ましく、0〜50℃の範囲の温度で他よりも高いtg(δ)の主ピークを示すという理由から、高ビニルのS(EP)SとS(IB)Sが特に好ましい。都合がよいことに、成分(A)は、主tg(δ)損失率が0〜50℃の範囲で0.3以上である(ダイナミックレオメーター(Metravib DMA 150)、引張モード、周波数10Hzで測定)。
【0023】
本発明によれば、成分(A)はソフトブロックと混和性のある炭化水素系樹脂で変性されていてもよい。例えば、C9、水素添加C9、部分水素添加C9、C5、C5/C9コポリマー、テルペン、安定化ロジンエステル、水素添加ジシクロペンタジエン(DCPD)などの芳香族若しくは脂肪族炭化水素系樹脂を用いて成分(A)を調製し、使用温度でのtg(δ)の主ピークを最適な値および位置へ調節することが可能である。
【0024】
炭化水素系樹脂はさておき、当技術分野において周知であり、これらコポリマーと一緒に用いられる任意の成分を成分(A)に追加することができる。パラフィン系またはナフテン系有機油、ポリオレフィンのような有機ポリマー、無機充填材および添加剤パッケージなど、当技術分野において一般的に使用される可塑剤も成分(A)の一部である。
【0025】
(成分(B)の説明)
本発明に従って用いられる組成物において、成分(B)は、架橋されていないシリコーンでも、架橋されたシリコーンでもよい。それにもかかわらず、成分(B)は、国際公開第03/022085号、国際公開第03/055339号または国際公開第2005/000966号に記載の硼酸化シリコーンポリマーのように、それ自体でダイラタント性を示すシリコーンポリマーではない。言い換えれば、例えばゴム状またはゴムとシリカが調合された形で使用される架橋されていないシリコーンは、擬塑性またはシェアシニング性を有している一方、ダイラタントはシェアシックニング性を有している。言い換えれば、ダイラタント材料は外力がなければ流動し、柔軟性があり、なお流動しうるのに対し、衝撃の作用下においては一時的に硬化し、その衝撃後に柔軟な状態へと戻ることとなる。
【0026】
成分(B)の架橋されていないシリコーンは、硬化パッケージがなければ実質的に成分(A)に対して非反応性のシリコーンである。ここで「非反応性」とは、成分(A)の前駆体と化学的に反応しない(共有結合を形成しない)ことを意味する。しかしながら、好ましくは、適切な架橋パッケージの存在下で、同じ成分(B)を架橋することができる。好ましくは、架橋パッケージの不存在下で、架橋されていないシリコーンは完全に非反応性であるが、少々の反応性も許容され、それは例えば0.001〜2%である。つまり、架橋されていないシリコーンが非反応性であるとき、その組成物は、後に説明されるポリオルガノハイドロジェンシロキサンとヒドロシリル化触媒の組み合わせのような架橋パッケージを含まない。
【0027】
成分(B)は、架橋されていないシリコーンであるとき、以下のものとすることができる:
i) 25℃におけるブルックフィールド粘度が1,000 mPa・s〜3,000,000 mPa・sであるシリコーン流体(全ての粘度は、可能な限り、特に記述しない限り、ブルックフィールド回転粘度計/モデルDVIII/25℃/0.5 rpm/スピンドル CP52で測定される)、
ii) 分子量が50,000 g/mol〜700,000 g/molであるシリコーンゴム、または
iii) 架橋剤および触媒を有さない、液状シリコーンゴム(LSR)または高粘度ゴム(HCR)のようなシリコーン調製品。
以下、LSRおよびHCRについてより詳細に説明する。
【0028】
成分(B)が架橋されている場合、成分(B)は、(a)架橋性ポリジオルガノシロキサンポリマー、(b)充填材(任意)および(c)架橋パッケージとの反応生成物から形成することができる。架橋性ポリジオルガノシロキサンポリマー(a)は、末端基に少なくとも1個のアルケニル基またはアルキニル基、および任意のポリマー骨格に沿ってケイ素原子と結合したアルケニル基またはアルケニル基を有する。例えば、成分(B)は、前述のi)、ii)、iii)を満たし、i)、ii)、iii)の分子中にポリジオルガノシロキサンのアルケニルまたはアルキニル官能基を含んだ状態で得られる。好ましい成分(B)は、ASTM試験法926による測定で少なくとも30のウィリアム可塑度を持ち、分子中に平均して少なくとも2個のアルケニルラジカルを有するジオルガノポリシロキサンである。実際には、成分(B)が架橋されている場合、i)、ii)、iii)の架橋は架橋パッケージ(c)または架橋剤があるときのみ可能である。有利なことに、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンおよびヒドロキシル化触媒はi)、ii)、iii)に加えられている。有利なことに、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、1分子当り少なくとも3個のSi-H基を含んでいる。
【0029】
本発明によれば、成分(B)が架橋されている場合、成分(A)と成分(B)がしっかりと混合されているのが望ましいが、成分(A)と成分(B)の加熱撹拌下でシリコーンの架橋反応が起きるのが有利である。このようなプロセスは動的加硫と呼ばれ、参照により取り込む米国特許第6013715号に報告されている。好ましくは、この混合および架橋工程は、二軸押出機で行われる。任意の適切なプロセスを使用してよいが、典型的には、良好な相互混合が得られるまで、最初に成分(A)を成分(B)のポリマーと混合する。その後、触媒の導入に先立って、架橋剤を追加し、さらには混合することにより架橋剤を分散させる(必要があれば)。
【0030】
成分(B)は、組成物の全重量に対して5〜70重量%の量で存在する。しかしながら、好ましくは、成分(B)は少なくとも10重量%の量で存在し、より好ましくは、少なくとも15重量%の量で存在する。
【0031】
(LSRの説明)
成分(B)が液状シリコーンゴム(LSR)である場合、またはLSRとともに得られる場合、かかるLSRは、下記の化学式:
R(3-z)R1zSiO[(R2SiO)x(RR1SiO)y]SiR(3-z)R1z
[式中、各Rは、同一または異なっており、C1-6のアルキル基、アリル基(例えばフェニル若しくはナフチル基)またはフルオロ-C1-6アルキル基を表し、好ましくは各Rはメチル基またはエチル基であり;R1はC2-6のアルケニル基またはアルキニル基であり、好ましくはビニル基またはヘキセニル基であり;xは整数であり、yは0または整数であり、x+yは本ポリマーが25℃においてブルックフィールド粘度50〜250,000mPa・sを有し、望ましくは100〜100,000mPa・sを有するような数(例えば100〜1000)である]で表わされる一種以上のポリマーを含むポリオルガノシロキサンポリマーを含むことができる。
【0032】
(HCRの説明)
成分(B)が高粘度ゴム(HCR)である場合、またはHCRとともに得られる場合、かかるHCRは、上記と同様の化学式に基づくものの、初期ブルックフィールド粘度が25℃において250,000 mPa・sよりも高く、より通例では25℃において500,000 mPa・sよりも高く、典型的には25℃において1,000,000 mPa・sよりも高いポリオルガノシロキサンポリマーを含むことができる。その上限は数百万であってもよい。本発明においては、ブルックフィールド粘度が25℃において250,000 mPa・sよりも低いポリジオルガノシロキサンポリマーの使用を妨げるものは何もないが、これらはHCRよりもむしろLSRであろう。
【0033】
HCRは、通常、ゴム状の物質であり、ブルックフィールド粘度の測定が極めて困難なほど高粘度であるため、HCRはしばしばウィリアムス可塑度(ASTM D926)を参照して言及される。ゴム状の高粘度ポリシロキサンポリマーのウィリアムス可塑度は、一般的には少なくとも30であるが、典型的にはおよそ30〜250の範囲内にある。本明細書にて使用される可塑度とは、容積が2 cm3で高さが約10 mmの円筒試験片に対し、25℃で49ニュートンの圧縮荷重を3分間与えた後のその試験片の厚み(mm)を100倍した値と定義される。一般的に、これらのゴム状のポリシロキサンポリマーは実質的にシロキサン骨格(-Si-O-)を有しており、これが主としてメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびt-ブチル基などのアルキル基、ならびにアリル、1-プロペニル、イソプロペニル若しくはヘキセニル基のようなアルケニル基(特にビニル基が望ましい)を例とするいくつかの不飽和基、ならびに/またはビニル基とヒドロキシル基の組み合わせと結合し、その架橋を補助する。かかるゴム状のポリシロキサンポリマーは、典型的に500〜20,000の重合度(DP)を示し、ここで重合度とは、ポリマーにおけるSi-Oの繰り返し単位の数を表す。
【0034】
HCRは、分子中に2〜20個の炭素を有するアルケニルラジカルを少なくとも2個含むポリマーまたはコポリマーの形態の、ポリジオルガノシロキサンとすることができる(この形態は、架橋パッケージで架橋するのに特に適している)。アルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキサニルおよびデセニル基によって具体的に例示される。アルケニル官能基の位置は重要ではなく、アルケニル官能基は分子鎖の末端部若しくは分子鎖の非末端部、またはその両部に結合してもよい。アルケニル基はビニルまたはヘキセニルであり、ポリジオルガノシロキサンゴム中に0.001〜3重量%存在しているのが望ましく、0.01〜1重量%存在しているのがより望ましい。
【0035】
ポリジオルガノシロキサン中の残りの(すなわち非アルケニルの)ケイ素に結合した有機基は、脂肪族の不飽和を有さない炭化水素またはハロゲン化炭化水素から独立して選択される。これらは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルのような1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルのようなシクロアルキル基、フェニル、トリルおよびキシリルのような6〜12個の炭素原子を有するアリール基、ベンジルおよびフェネチルのような7〜20個の炭素原子を有するアラルキル基、ならびに3,3,3-トリフルオロプロピルおよびクロロメチルのような1〜20個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基によって具体的に例示されてもよい。もちろん、ポリジオルガノシロキサンゴムが室温よりも低いガラス転移点(または融点)を有し、従ってエラストマー性を示すように、これらの官能基が選択されることは理解されるであろう。メチルは、ポリジオルガノシロキサン中の不飽和でないケイ素に結合した有機基の好ましくは少なくとも85モル%の、より好ましくは少なくとも90モル%を構成する。
【0036】
このように、ポリジオルガノシロキサンは、かかる有機基を含む単独ポリマー、コポリマーまたは三元ポリマーとすることができる。例としては、数ある中でも、ジメチルシロキシ単位およびフェニルメチルシロキシ単位;ジメチルシロキシ単位およびジフェニルシロキシ単位;ジメチルシロキシ単位、ジフェニルシロキシ単位およびフェニルメチルシロキシ単位を含むゴムが挙げられる。分子構造もまた重要ではなく、直鎖および部分的に分枝した直鎖によって例示されるが、直線構造が望ましい。
【0037】
かかるポリジオルガノシロキサンの具体的な例としては、トリメチルシロキシ末端ブロックジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端ブロックメチルフェニルシロキサン-ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端ブロックジメチルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシ末端ブロックジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端ブロックメチルフェニルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシ末端ブロックメチルフェニルシロキサン-ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、および少なくとも1個の末端基がジメチルヒドロキシシロキシである類似のコポリマーが挙げられる。
【0038】
成分(iii)のHCRは、2個以上のポリジオルガノシロキサンの組み合わせを含んでもよい。最も好ましくは、成分(iii)のHCRは、その分子の各末端がビニル基で終わっているポリジメチルシロキサンホモポリマー、またはその主鎖に沿って少なくとも1個のビニル基をも含むポリジメチルシロキサンホモポリマーである。
【0039】
本発明の一態様において、ポリジオルガノシロキサンゴムの分子量は、米国材料試験協会(ASTM)試験法926で測定した場合に少なくとも約30のウィリアムス可塑度を与えるのに足りる。
【0040】
成分(iii)のHCRの可塑性に絶対的な上限はないが、通常の混合機器での実際の加工性を考慮すると、一般的にこの値には限界がある。好ましくは、可塑度は100〜200であるべきであり、最も好ましくは120〜185であるべきである。
【0041】
高粘度で不飽和基を含むポリジオルガノシロキサンを調製する方法はよく知られており、本明細書において詳細に考察する必要はない。例えば、アルケニル官能性のポリマーを調製する典型的な方法には、同様のアルケニル官能性化学種の存在下における環状および/または鎖状のポリジオルガノシロキサンの塩基触媒平衡が含まれる。
【0042】
(ヒドロシリル化による成分(B)の架橋)
成分(B)は架橋することができる。架橋されたシロキサンポリマーは、ポリジオルガノシロキサン(i)、(ii)または(iii)と、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(c1)及びヒドロシリル化反応触媒(c2)からなる架橋パッケージ(c)との反応によって得られる。成分(i)、(ii)および/または(iii)が1分子にせいぜい2個のアルケニル基しか有さない場合、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(c1)は、架橋をもたらすためには1分子に2個以上のケイ素に結合した水素原子を含んでいなければならず、好ましくは1分子に4〜200個のケイ素に結合した水素原子を、最も好ましくは1分子に4〜50個のケイ素に結合した水素原子を含んでいなければならない。ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(c1)は、25℃におけるブルックフィールド粘度が約10000 mPa・s以下であるのが好ましく、1000 mPa・s以下であるのが好ましい。ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(c1)中に存在するケイ素に結合した有機基には、さもなければエチレン性またはアセチレン性の不飽和がない、1〜4個の炭素原子の置換または未置換のアルキル基が含まれる。各ポリオルガノハイドロジェンシロキサン分子は、好ましくは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(c1)中のSi-H基のポリマー中のアルケニルまたはアルキニル基の総量に対するモル比が1:1〜10:1となるのに十分な量で、少なくとも3個のケイ素に結合した水素原子を含む。
【0043】
特に好ましいオルガノヒドリドケイ素化合物(c1)は、R”3SiO1/2またはHR”2SiO1/2で終わっているRHSiO単位を持ったポリマーまたはコポリマーであり、ここでR”は、1〜20の炭素原子を有するアルキルラジカル、フェニルまたはトリフルオロプロピルから独立して選択され、好ましくはメチルである。また、成分(C)の25℃における粘度はおよそ0.5〜1,000 MPa・sであるのが好ましく、特には2〜500 MPa・sである。さらに、この成分は、0.5〜1.7重量%のケイ素に結合した水素を有することが好ましい。成分(c1)は、非常に好ましくは、ケイ素に結合した水素が0.5〜1.7%であり、25℃における粘度が2〜500 MPa・sであり、原則的にはメチルヒドリドシロキサン単位のみからなるポリマー、または本質的にジメチルシロキサン単位とメチルヒドリドシロキサン単位からなるコポリマーから選択される。非常に好ましいこのような系は、トリメチルシロキシまたはジメチルヒドリドシロキシ基から選択される末端基を有することが理解される。
【0044】
成分(c1)は、上述の系の2個以上の組み合わせであってもよい。オルガノヒドリドケイ素化合物(C)は、成分(B)中のSi-アルキルに対するSiHのモル比が1よりも大きく、望ましくはおよそ50よりも低く、より望ましくは3〜20、最も望ましくは6〜12であるような濃度で使用される。
【0045】
これらのSiH官能性材料は、当技術分野で周知であり、その多くが市販されている。
【0046】
如何なる適切なヒドロシリル化触媒(c2)を使用してもよい。そのようなヒドロシリル化触媒(c2)は当技術分野で周知であり、典型的にはルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムまたは白金などといった、ケイ素に結合した水素原子の不飽和炭化水素基との反応を促進する任意の金属含有触媒が挙げられる。適切なヒドロシリル化触媒としては、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体、炭素担体に吸着した白金微粒子、Pt(Al2O3)のような金属酸化物担体に担持された白金、白金黒、白金アセチルアセトナート、白金(ジビニルテトラメチルジシロキサン)、PtCl2、PtCl4、Pt(CN)2で例示される白金ハロゲン化物、白金ハロゲン化物とエチレン、プロピレン、及びオルガノビニルシロキサンで例示される不飽和化合物との錯体、スチレンヘキサメチル二白金が挙げられる。このような貴金属触媒は、白金触媒を説明している米国特許第3923705号に記載されている。好ましい白金触媒の一つにカールシュテット(Karstedt’s)触媒があり、典型的にはトルエンのような溶媒中に1重量%の白金を含む白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体であり、米国特許第3715334号および米国特許第3814730号に記載されている。もう一つの好ましい白金触媒としては、塩化白金酸と末端に脂肪族不飽和部分を含む有機ケイ素化合物との反応生成物があり、米国特許第3419593号を参照されたい。本触媒として最も好ましいのは、塩化白金とジビニルテトラメチルジシロキサンの中和された錯体であり、米国特許第5175325号に記載されている。
【0047】
RhCl3(Bu2S)3のようなルテニウム触媒や、ルテニウム1,1,1-トリフルオロアセチルアセトナート、ルテニウムアセチルアセトナートおよびトリルテニウムドデカカルボニルのようなルテニウムカルボニル化合物、またはルテニウム1,3-ケトエノラートを代替的に用いてもよい。本発明において使用に適したその他のヒドロシリル化触媒としては、例えばロジウム触媒や適切なイリジウム触媒が挙げられる。
【0048】
触媒は、組成物(A)+(B)の100万部に対して、金属重量としてわずか0.001部に相当する量(ppm)で加えてもよい。組成物中の金属濃度は、好ましくは、少なくとも1 ppm相当量の元素金属の提供が可能な濃度である。およそ3〜50 ppm相当量の元素金属を提供するような触媒濃度が一般的に好ましい。
【0049】
成分(A)は、成分(c2)を介した成分(A)と(b)の総計の25〜60重量%を示すのが望ましい。
【0050】
(充填材を含むLSRまたはHCR)
LSRまたはHCRは、充填材とともに成分(B)として使用できる。任意の適切な充填材または複数の充填材の組み合わせを用いてもよい。エラストマー組成物は、1種以上の微粉化されたヒュームドシリカ若しくは沈降シリカおよび/または炭酸カルシウムなどの補強性充填材、および/または破砕石英、珪藻土、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタン、カーボンブラック、滑石ならびに珪灰石などの非補強性充填材を含んでもよい。また、それ単独で、または上述に追加して用いてもよいその他の充填材としては、アルミナイト、硫酸カルシウム(無水)、石膏、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、カオリンなどのクレー、三水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム(水滑石)、黒鉛、孔雀石などの炭酸銅、ザラカイトなどの炭酸ニッケル、毒重石などの炭酸バリウム、ストロンチアナイトなどの炭酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、ならびにかんらん石群、金剛石群、アルミノケイ酸塩、環状ケイ酸塩、鎖状ケイ酸塩および層状ケイ酸塩から選択されるケイ酸塩(かんらん石群には、それだけに限らないが、苦土かんらん石やMg2SiO4などのケイ酸塩鉱物が含まれ、金剛石群には、それだけに限られないが、パイロープ、Mg3Al2Si3O12、灰ばんざくろ石およびCa2Al2Si3O12などの粉末のケイ酸塩鉱物が含まれ、アルミノケイ酸塩には、それだけに限られないが、珪線石、Al2SiO5、ムライト、3Al2O3・2SiO2、藍晶石およびAl2SiO5などの粉末のケイ酸塩鉱物が含まれ、環状ケイ酸塩には、それだけに限られないが、菫青石やAl3(Mg,Fe)2[Si4AlO18]などのケイ酸塩鉱物が含まれ、鎖状ケイ酸塩には、それだけに限られないが、珪灰石やCa[SiO3]などの粉末のケイ酸塩鉱物が含まれ、層状ケイ酸塩には、それだけに限られないが、雲母、K2Al14[Si6Al2O20](OH)4、葉ろう石、Al4[Si8O20](OH)4、滑石、Mg6[Si8O20](OH)4、ならびに石綿、高陵石、Al4[Si4O10](OH)8および蛭石を例とする蛇紋石などのケイ酸塩鉱物が含まれる)、ならびにシリコーン樹脂が挙げられる。
【0051】
(充填材処理の説明)
充填材は、表面処理されてもよい。充填材の表面処理は、例えばステアリン酸などの脂肪酸または脂肪酸エステル、またはオルガノシラン、オルガノシロキサン若しくはオルガノシラザン(ヘキサアルキルジシラザン若しくは短鎖シロキサンジオール)を用いて行ってもよく、それによって充填材が疎水性になり、従って容易に取扱うことができ、容易に他の成分との均一混合物が得られる。充填材を表面処理することで、充填材はシリコーンポリマーでより湿らせやすくなる。これらの表面修飾された充填材は凝集せず、シリコーンポリマーへの均一な組み込みが可能である。さらに、この表面処理された充填材は、未処理材または原材料よりも低い伝導性を与える。
【0052】
充填材の処理に最も適しているとされるシランは、一般式がR2(4-n)Si(OR2)nのアルコキシシランであり、ここで、nの値は1〜3であり、各R2は同一または異なっており、アルキル基、アリール基、またはビニルやアリルなどのアルケニル基、アミノ基若しくはアミド基などの官能基のような、1価の有機ラジカルを表す。従って、適切なシランとしては、メチルトリエトキシシランやメチルトリメトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどのフェニルトリアルコキシシラン、またはビニルトリエトキシシランやビニルトリメトキシシランなどのアルケニルトリアルコキシシランが挙げられる。必要に応じて、三水酸化アルミニウムとカオリン充填材の混合物用の処理剤としてシラザンを用いることも可能である。これらとしては、ヘキサメチルジシラザン、1,1,3,3-テトラメチルジシラザンおよび1,3-ジビニルテトラメチルジシラザンが挙げられるが、それだけには限られない。短鎖ポリジオルガノシロキサンとしては、例えば2〜20の重合度を有する水酸基末端ポリジメチルシロキサンや、2〜20の重合度を有する水酸基末端ポリジアルキルアルキルアルケニルシロキサンが挙げられる。
【0053】
かかる充填材が用いられるときのその比率は、エラストマー形成組成物およびエラストマーに求められる特性に依存するであろう。通常、組成物中の充填材の含有量は、ポリマー100重量部に対して5〜500重量部の範囲内にあるであろう。
【0054】
(その他の成分)
本材料の組成物に含まれうるその他の成分には、それだけには限らないが、カルボン酸やアミンの金属塩のような、成分の硬化を加速する共触媒、レオロジー改質剤、接着促進剤、顔料、着色剤、乾燥剤、熱安定剤、難燃剤、紫外線安定剤、鎖延長剤、加硫改質剤、電気および/または熱伝導性充填材、発泡剤、付着防止剤、ハンドリング剤、過酸化物硬化共触媒、酸受容体、殺菌剤および/または殺生物剤等(これらは、好ましくは、0〜0.3重量%存在しうる)ならびに水捕捉剤(典型的には架橋剤またはシラザンとして用いられる化合物と同じもの)などが含まれる。当然のことながら、これらの添加剤の中には、1個以上の添加剤リストに含まれるものもある。その場合、そのような添加剤は、先に述べた各々の通りに機能する能力を有しているだろう。
【0055】
熱安定剤としては、主として、酸化防止剤、紫外線吸収剤、HALSが挙げられる。
【0056】
難燃剤としては、例えば、カーボンブラック、水和水酸化アルミニウム、水和水酸化マグネシウムおよび珪灰石などのケイ酸塩ならびに炭酸塩が挙げられる。
【0057】
電気伝導性充填材としては、カーボンブラック、例えば銀粉などの任意の適切な金属粉、ならびに例えば表面がスズおよび/またはアンチモンで処理された酸化チタン粉末、表面がスズおよび/またはアンチモンで処理されたチタン酸カリウム粉末、表面がアンチモンで処理された酸化スズ、ならびに表面がアルミニウムで処理された酸化亜鉛などの導電性金属酸化物が挙げられる。
【0058】
熱伝導性充填材としては、例えば粉末状、フレーク状およびコロイド状の銀、銅、ニッケル、白金、金、アルミニウムおよびチタンなどの金属粉、特には酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛および酸化ジルコニウムなどの金属酸化物、ならびに例えば炭化タングステン、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化硼素およびダイヤモンドなどのセラミック充填材が挙げられる。
【0059】
HCRsとともに(および、場合によっては高粘度のLSRとともに)用いられる任意の希釈剤としては、すなわち揮発油、ストッダード溶剤、ヘキサン、ヘプタンおよびc-ヘキサンなどの脂肪族化合物、ならびにトルエンやキシレンなどの芳香族化合物が挙げられる。
【0060】
(架橋されておらず且つ非反応性のシリコーン流体の説明)
成分(B)は、架橋されておらず且つ実質的に非反応性のシリコーン流体とすることができる。この架橋されておらず且つ非反応性のシリコーン流体は、以下の式:
R33SiO[(R32SiO)n]SiR33
で表されるポリジオルガノシロキサンであってもよく、ここで、各R3 は同一または異なっており、C1-18のアルキル(望ましくはC1-8のアルキルであり、より望ましくはC1-4のアルキルである)またはアリール(フェニルまたはナフチルなど)を表し、これらのどれかが、フルオロのような非反応基(例えばトリフルオロアルキル基)で任意にさらに置換されていてもよく;各R3は、望ましくはメチルまたはエチル基である。それは、典型的にはトリアルキルシリル末端ポリジメチルシロキサン(PDMS)流体である。最も望ましくは、各末端のアルキル基はメチルかエチルのどちらかであるが、必ずしも同一ではない。
【0061】
或いは、またはさらに、この非反応性シリコーン流体には、R33SiO[(R32SiO)n]SiR33ポリマーの骨格に、1個以上の以下に示す群:
【化1】

のどちらかまたは両方が存在することによりある程度の分岐を有するポリオルガノシロキサンが含まれていてもよく、ここで、R3は、上述の通りである。
【0062】
nは、25℃におけるこのポリマーのブルックフィールド粘度が2,000〜3,000,000 mPa・s、好ましくは5,000〜1,000,000 mPa・s、より好ましくは10,000〜500,000 mPa・sとなるような値である。
【0063】
(使用方法および成形品)
本発明は、上述した成分(A)、(B)およびその他の成分の組み合わせを生み出す全ての組成物の使用方法に関するものである。
【0064】
本発明の基本的態様によれば、耐衝撃性を提供するため、上述の組成物がエネルギー吸収材料として用いられる。この材料の適用は広範囲の使用方法に及び、物、動物および人間用の衝撃保護を含む。潜在的な用途としては、すでに物がある表面と接触しており、その物と表面の組み合わせが激しい加速および/または減速を受ける場合のような任意の動的状況にまで及び、例えば精密機器や車の座席に座る人間の体用の保護材料が挙げられる。従って、本材料の形状はその用途によって決定されるであろう。
【0065】
本発明の一態様によれば、本材料は、上述の(A)+(B)または(A)+(a)+(b)+(c)の混合物を押出機で処理して得られる熱可塑性ペレットから得ることができる。別の態様では、本材料は、ペレット製造工程を踏まずにシート状または成形品の形状で直接得ることができる。本材料の種々の成分または前駆体は任意の形状に成形してもよい。例えば、本材料の成分または前駆体を、従来の一軸押出機および適切な押抜機を使ってシート材料に成形してもよい。このシート材料は、1〜30 mmの厚みを有しているのが望ましい。このシート材料は、上述の本材料の組成物を繊維で強化することにより成形してもよい。炭素、ポリエステル、ポリアミド、ポリアラミド、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート(PTFE)、綿、ガラス、シリカファイバーが使用できる。
【0066】
シート状または成形品の形状で衝撃保護に使用される材料は、発泡されてもされなくてもよい。特に本材料は、国際公開第05/000966号に記載されるように、独立気泡フォームで発泡されることも可能である。この組成物が発泡シートまたは発泡成形品に変換されるとき、熱可塑性材料とともに用いられる任意の化学物質または機械的発泡剤を使用することができる。このシートおよび成形品は、発泡シートまたは発泡成形品への変換時に、膨張中空またはプラスチックのミクロスフィアを組成物に追加することで発泡される。別の態様によれば、発泡シートまたは発泡成形品は、光線または過酸化物および適切な助剤を組成物に与えることで十分に架橋することが可能である。
【0067】
シート状の材料は、例えばカレンダー掛けにより、または粘着剤および/若しくは溶接技術を用いることにより、本材料または1つ以上の代替基材の別のシートに積層することができる。そのような基材の例として、布や不織布材料が挙げられる。特に、これは、耐摩耗性能や、場合によっては尖った物の侵入に対する耐性を容易に高め、および/または複合材料を他の系または製品へ付着させるのを容易に補助する織物の層またはそれに類似するものとも関連していることがある。伸縮性織物の裏地もまた、本材料の伸びを制限する働きをし、従って耐久性を提供するだろう。また、この織物は、KEVLAR級の織物のような、対弾道弾または防刃用織物としての機能を果たすこともある。
【0068】
本発明の別の態様によれば、本材料は、本発明にて使用される材料を含む熱可塑性材料の共押出層によって得られるラミネートの形状で使用することも可能である。
【0069】
このシートまたはラミネートは、例えば膝、肘または肩のプロテクタのように、人間や動物の体の輪郭に一致するような成形品の形状であっても、形作られた包装材の成形品の形状であってもよい。また、衣類の形状へ成形されてもよい。これは、例えば、熱成形または外側被覆のシートによって達成されうる。シートおよび/またはラミネートは、必要であれば追加的にエンボス加工が、さもなければマーク付けがなされる。
【0070】
この組成物は、射出成形または圧縮成形により、任意の成形可能な形状に成形してもよい。
【0071】
本発明の別の態様によれば、本材料は繊維状であってもよい。その繊維は、織られ、編まれ、または、最終成形品に空気が包含されるように構成されてもよい。そのような材料が衝撃にさらされたときは、空隙が多くの局部的曲げたわみを提供することによって各繊維の歪みが促進され、これは、衝撃吸収における複合材料の効果的な使用として好ましい。
【0072】
本発明によれば、このエネルギー吸収材料は、様々な用途で物品の製造に用いることができ:例えば、人間や動物用の保護パッドまたは衣類に、人間や動物が強烈な接触に遭ったときのための自動車やその他の物のエネルギー吸収ゾーンに、またはそのものとして、および壊れやすい物または機械のための梱包材に、またはそのものとして適用される。具体例として、帽子およびヘルメット、防護服または肘、膝、腰およびすね用のパッドに、例えば飛行物体または落下物が危険なものであるような環境下で使用される一般的な人体保護に、ならびに車両のダッシュボード、サスペンションブッシュ、いす張り、ならびに座席などに適用される。その他の可能性のある使用方法としては、これらに限られないが、例えばスポーツや娯楽などにおいて物を打つ時に使用され、体の一部分を保護するための衣類またはパッドがあり、例えばランニングシューズのソール、フットボールシューズ、ボクシンググローブ、およびファイブスの試合で使用されるグローブなどがある。また、この耐衝撃性材料は、例えば膝、肘または肩のプロテクタのように、人間や動物の体の輪郭に一致するような成形品の形状であってもよい。着用者に対する鈍的外傷の予防/保護の例としては、肘当て、膝当て、前腕プロテクタ、腿プロテクタ、胸当て、背中プロテクタ、肩プロテクタ、下肢プロテクタ、胸当て、すね当て、すねプロテクタ、ヘルメット、頭部プロテクタ、腰プロテクタ、グローブ、腎臓保護および尾骨保護が含まれ、いずれの場合も単独の保護具として、または衣類形状に成形されるか若しくは衣類の一部として含有される。また、この耐衝撃性材料は、例えば靴のかかと、前足または靴の甲など、履物の形状であってもよく、または例えばラグビーポストプロテクタ、訓練用器材、着地マット、クリケットパッドおよびグローブなど、保護用のスポーツ用品に用いられてもよい。
【0073】
本発明に記載の耐衝撃性材料が組み込まれる保護具は、接触を伴うスポーツや危険性の高いスポーツおよび活動等のためであってもよく、例えば、これらに限られないが、ラグビー、サッカー、アメリカンフットボール、野球、バスケットボール、武道、ボクシング、セーリング、ウィンドサーフィン、ウェイクボード、アイススケート、スピードスケート、スノーボード、スキー、アイスホッケー、フィールドホッケー、ローラーホッケー、ローラーブレード、クリケット、ハーリング、ラクロス、マウンテンバイク、サイクリング、ボブスレー、ならびにバンジージャンプ、重量挙げおよびオートバイなどの過激なスポーツなどがある。
【0074】
また、耐衝撃性材料は、医学的用途にも用いられ、例えば災害弱者向けの臀部や頭部の保護、ケガの回復を補助する保護装置、および/若しくは整形外科用装置の用途でも用いられ、または、例えば安全手袋、安全靴および安全服などの作業保護着にも用いられる。
【0075】
耐衝撃性材料の別の用途として、耐衝撃性材料が包含された、若しくは耐衝撃性材料をケースとして使用している品目または物品の保護があり、例えばスーツケース、ラップトップケース、ラップトップ用のリュックサック、カメラケース、携帯電話のケース、携帯音楽機器のケース、ゴルフクラブ、サーフボードの保護、ラジオ、輸送時の壊れ物用の梱包材および輸送用の車両や木箱の内張りなどがある。さらに、この耐衝撃性材料は、例えば自動車のダッシュボード、バンパーならびに例えば電車や飛行機などのその他輸送手段の安全装置など、輸送の用途に用いてもよい。
【0076】
使用の際、その使用用途に適合させるため、複数の処理済み耐衝撃性材料の層を使用してもよい。それらの層は、同一であっても、上述の代替基材の組み合わせであっても、1個以上の本発明による耐衝撃性材料の層と別の材料の層との組み合わせであってもよい。さらに、本発明に記載の組成物は、単独で基材に適用しても、処理済み材料の耐衝撃性に悪影響を及ぼさない別の適切な材料と一緒に適用してもよい。その例として、ゲル、樹脂、発泡体等が挙げられる。
【実施例】
【0077】
これから、以下の実施例を参照して本発明を説明するが、制限を意図するものではない。
【0078】
特に記述しない限り、提供される全ての粘度の値はmPa・s単位であり、25℃で測定したブルックフィールド粘度である。1 mPa・sは0.1ポイズである。ポイズとは、1 cm離れた流体の2つの平行面の間で速度1 cm/sの差を維持するのに必要な、1 cm2あたりの接線力(単位:ダイン)と等しい、粘度のcgs単位である。これは、回転流手法、つまり試験液に浸かった回転スピンドルを用い、トルクの測定、および、それゆえ液の流れに対する抵抗の測定を行う方法を用いて測定される。典型的に、測定は、ブルックフィールド回転粘度計/モデルDVIII/25℃/0.5 rpm/スピンドル CP52を用いて行われる。
【0079】
(実施例1)
この実施例において、架橋されていない成分(B)を用いて3個の組成物を準備した:
成分(A):ビニル結合リッチSEPS、スチレン含有量=20重量%、ISO 868による硬度=64ショアA (クラレ製、Hybrar(登録商標)7125)
成分(B):可塑度が60〜65 MILSのHCR(ポリビニルジメチルシロキサン)(ダウコーニング製、SGM 11)

組成物(量は、重量部で与える):
Ex 1A:Hybrar(登録商標)7125/SGM 11(85/15)
Ex 1B:Hybrar(登録商標)7125/SGM 11(70/30)
Ex 1C:Hybrar(登録商標)7125/SGM 11(60/40)
【0080】
(実施例2)
この実施例において、架橋されていない成分(B)を用いてさらに3個の組成物を準備した:
成分(A):ビニル結合リッチSEPS、スチレン含有量=20重量%、ISO 868による硬度=64ショアA (クラレ製、Hybrar(登録商標)7125)
成分(B):30重量%のシリカを含む、可塑度が85〜140 MILSのHCR(ダウコーニング製、Silastic(登録商標)HS71)

組成物(量は、重量部で与える)
Ex 2A:Hybrar(登録商標)7125/Silastic(登録商標)HS71(85/15)
Ex 2B:Hybrar(登録商標)7125/Silastic(登録商標)HS71(70/30)
Ex 2C:Hybrar(登録商標)7125/Silastic(登録商標)HS71(60/40)
【0081】
実施例1および2において、二軸押出機を用い、組成物をペレットに変換する(二軸押出機:径=25 mm、L/D=48、造粒機に水バッチ冷却システム付属)。
【0082】
押出条件:軸回転速度=200 rpm/生産量=15 kg/h/溶融温度=180℃
クラウス・マッファイ射出成形機を用い、ペレットを150 mm×150 mm×6 mm(L×l×e)の平板に成形する(成形温度:180℃、型温:23℃)。
【0083】
(実施例3)
成分(B)として架橋されたシリコーンを含有する6つの組成物を作製する:
Ex 3A:Hybrar(登録商標)7125/Silastic(登録商標)HS-71(60/40)
・Hybrar(登録商標)7125:58.24重量%
・Silastic(登録商標)HS71:40重量%
・Dow Corning(登録商標)7678(分子中に少なくとも3個のSi-H結合を含む工業用架橋剤):1.2重量%
・10%Pt触媒溶液:0.56重量%

Ex 3B:Hybrar(登録商標)7125/Silastic(登録商標)HS-71(70/30)
・Hybrar(登録商標)7125:68.54重量%
・Silastic(登録商標)HS71:30重量%
・Dow Corning(登録商標)7678架橋剤:0.9重量%
・10%Pt触媒溶液:0.56重量%

Ex 3C:Hybrar(登録商標)7125/Silastic(登録商標)HS-71(85/15)
・Hybrar(登録商標)7125:84.32重量%
・Silastic(登録商標)HS71:15重量%
・Dow Corning(登録商標)7678架橋剤:0.45重量%
・10%Pt触媒溶液:0.28重量%

Ex 3D:Hybrar(登録商標)7125/SGM 11(60/40)
・Hybrar(登録商標)7125:58.24重量%
・SGM 11:40重量%
・Dow Corning(登録商標)7678架橋剤:1.2重量%
・10%Pt触媒溶液:0.56重量%

Ex 3E:Hybrar(登録商標)7125/SGM 11(70/30)
・Hybrar(登録商標)7125:68.54重量%
・SGM 11:30重量%
・Dow Corning(登録商標)7678架橋剤:0.9重量%
・10%Pt触媒溶液:0.56重量%

Ex 3F:Hybrar(登録商標)7125/SGM 11(85/15)
・Hybrar(登録商標)7125:84.32重量%
・SGM 11:15重量%
・Dow Corning(登録商標)7678架橋剤:0.45重量%
・10%Pt触媒溶液:0.28重量%
【0084】
実施例3において、二軸押出機を用いて組成物をペレットに変換する(二軸押出機:径=25 mm、L/D=48(12バレル)、造粒機に水バッチ冷却システム付属)。Hybrar(登録商標)7125およびHCR(Silastic(登録商標)HS71またはSGM 11)をそれぞれバレル1および2に導入し、十分に混合する。その後、架橋剤を(バレル5に)導入して混合物中に十分に分散し、最終的に、硬化開始の直前に(バレル8)を介して触媒を導入する。その後、成分(B)は硬化し、ヒドロシリル化硬化を経て本組成物となる。
【0085】
押出条件:軸回転速度=200 rpm/生産量=15 kg/h/溶融温度=180℃。
【0086】
得られたペレットは、その後、適切なプレス等を用いて必要な形状に成形できる。本実施例において得られたペレットを、クラウス・マッファイ射出成形機を用いて150 mm×150 mm×6 mm(L×l×e)の平板に成形する。
【0087】
発泡材料が必要な場合には、例としてAKZO NOBEL社のEXPANCEL(登録商標)092 MB 120のような発泡剤を導入してもよい。
【0088】
準備されたシートおよび発泡シートを、その後、衝撃試験に供した。衝撃試験は、EN1621のパート1および2「機械的衝撃に対するオートバイ運転者の防護服」に従い、特定の形状をしたアンビル上の装置に対し、特定の形状をした5 kgのおもりでその衝撃エネルギーが50 Jとなるように衝撃を与えることで実施した。アンビル内のロードセルが、結果的に装置を経由して伝達されたエネルギーを測定する。
【表1】

【表2】

【0089】
EN1621-1に合格するためには一回目の衝撃による伝達エネルギーが35 kNを下回らなければならないが、このように、各実施例では明らかにEN1621-1試験に合格していることがわかる。
【0090】
(実施例4)
以下を含む組成物
・ Hybrar(登録商標)7125:60重量%
・ ASTM 926に準拠した可塑度が300〜450 mm×10である高粘度ゴム(ダウコーニング製、Silastic(登録商標)NEW HS700):40重量%
【0091】
二軸押出機を用い、実施例2と同条件でペレットを供給した:このペレット状の製品はAPS 24973 NATと名付ける。
【0092】
このペレットを、厚みが3 mmまたは8 mmのシートに加工した。シート押出工程の間、発泡剤としてAKZO NOBEL社のEXPANCEL(登録商標)092 MB 120をAPS 24973 NATと混ぜた。このシートの密度は約0.45である。
【0093】
厚み8 mmの発泡シートをTP8-002と呼ぶ。シートの重量を低減するため、いくつかの穴を開け、重量の10〜50%を除去した。
【0094】
このシートの重量に関連する伝達エネルギーについて、以下の表に示す。
【表3】

【0095】
伝達エネルギーはシートの平方メートル当りの重量と無関係であったが、我々は、用途の大部分に対してより適している最軽量のバーションを好むであろう。それゆえ、全ての実施例はEN1621-1基準に合格している。しかしながら、これらの実施例は、クラス1として18 kNを下回らないといけないという伝達エネルギーの要求基準も満たし、試験を行ったものは、かかる要求基準を満たしていることに注意すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃エネルギーの吸収のための材料の使用方法であって、該材料の組成が、少なくとも、
(a) 23℃で測定されるショアA硬度(ISO 868)が80よりも低い、有機熱可塑性エラストマー成分(A)と、
(b) ダイラタント特性を示す硼酸化シリコーンポリマーを除く、架橋されておらず且つ実質的に非反応性のシリコーンポリマーまたは架橋されたシリコーンポリマーである成分(B)
との混合物である、使用方法。
【請求項2】
前記成分(A)が、不飽和の、部分的に飽和の、または完全に飽和の脂肪族ソフトブロックを有するスチレン系ブロックコポリマーである、請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
前記成分(A)の主tg(δ)損失率が、0〜50℃の範囲で0.3以上である、請求項1〜2のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項4】
前記成分(A)が、ソフトブロックと混和性のある炭化水素系樹脂で変性されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項5】
前記成分(A)が、有機可塑剤で変性されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項6】
前記成分(B)は、25℃における粘度が1,000 mPa・s〜3,000,000 mPa・sのシリコーン流体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項7】
前記成分(B)は、分子量が50,000 g/mol〜700,000 g/molのシリコーンゴムである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項8】
前記成分(B)が、シリカおよび当業者に公知の全ての関連成分を含む高粘度ゴムである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項9】
前記成分(B)が、組成物の全重量に対して5〜70重量%存在する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項10】
前記材料が、熱可塑性ペレットの形状で得られる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項11】
前記材料が、シート状、任意の成形品の形状、または糸状である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項12】
前記材料の形態が発泡されている、請求項11に記載の使用方法。
【請求項13】
前記発泡材料の形態が、発泡シートまたは発泡成形品への変換時に、中空のミクロスフィアを組成物に追加することで発泡される、請求項12に記載の使用方法。
【請求項14】
前記材料が、1つ以上の基材に積層されたシートまたは発泡シート状である、請求項11〜13のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項15】
前記材料が、保護パッド、人間や動物用の衣類、車のエネルギー吸収ゾーン、および壊れやすい物若しくは機械用の梱包材の中から選択される成形品の形状をしている、または成形品の一部である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項16】
前記成分(B)が架橋されていることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の衝撃エネルギー吸収性を示す組成物。
【請求項17】
前記組成物が、
成分(A)と、
成分(B)の前駆体である、ASTM試験法926による測定で少なくとも30のウィリアム可塑度を持ち、分子中に平均して少なくとも2個のアルケニルラジカルを有するポリジオルガノシロキサン(a)と、分子中に平均して少なくとも2個のケイ素に結合した水素基を有するオルガノヒドリドケイ素化合物(c1)とを、
ヒドロシリル化触媒(c2)および任意に補強性充填材(b)の存在下で、混合し、成分(B)を動的に架橋することにより得られる、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物を混合する工程と、
基材を請求項1〜15のいずれか一項にて定義された組成物で処理する工程と、
該組成物を硬化する工程と
を含む、耐衝撃性材料の製造方法。
【請求項19】
所定の形状で、請求項1〜10のいずれか一項で定義される組成物を硬化する工程を含む、耐衝撃性材料の製造方法。
【請求項20】
請求項16の組成物を含む、耐衝撃性材料。
【請求項21】
シート状である、請求項20に記載の耐衝撃性材料。
【請求項22】
前記シートの厚みが1〜30mmの範囲内である、請求項21に記載の耐衝撃性材料。
【請求項23】
前記シート材料が、炭素、ポリエステル、ポリアミド、ポリアラミド、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート(PTFE)、綿、ガラス、シリカファイバーの群から選択される繊維で強化された繊維である、請求項20〜22のいずれか一項に記載の耐衝撃性材料。
【請求項24】
前記シート状の材料を1つ以上の基材に積層することができる、請求項20〜23のいずれか一項に記載の耐衝撃性材料。
【請求項25】
前記材料が、請求項1〜15に記載の材料を含む熱可塑性材料の共押出層によって得られるラミネートの形状である、請求項20〜23のいずれか一項に記載の耐衝撃性材料。
【請求項26】
前記シートまたはラミネートが成形品の形状である、請求項20〜25のいずれか一項に記載の耐衝撃性材料。
【請求項27】
請求項10〜17のいずれか一項に記載の耐衝撃性材料から部分的または全体的に成形された成形品。
【請求項28】
発泡体の形状である、請求項20〜27のいずれか一項に記載の耐衝撃性材料。
【請求項29】
前記硬化組成物がペレット状またはシート状である、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2012−513490(P2012−513490A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541518(P2011−541518)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067857
【国際公開番号】WO2010/072812
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(511111286)ミュルティベース エスエー (1)
【Fターム(参考)】