説明

エネルギー線硬化性組成物

【課題】
本発明は、屈折率が低く、表面硬度、摩擦被膜強度に優れた硬化物を形成できるエネルギー線硬化性組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明に係るエネルギー線硬化性組成物は、
(A)下記一般式(I)で表される含フッ素ジ(メタ)アクリレートと、
(B)反応性(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子と、
(C)上記(A)成分以外の多官能(メタ)アクリレートと、
を含有する;
一般式(I) A1−O(CH2n−Rf−(CH2nO−A2
(式中、A1、A2は、各々同一であっても異なっていてもよく、(メタ)アクリロイル基、α−フルオロアクリロイル基、トリフルオロメタクリロイル基、およびビニル基より選ばれ、Rfはパーフルオロアルキレン基であり、nは0〜3の整数である。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイなどの表示面に好適に用いられる反射防止性被膜を形成することができるエネルギー線硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイなどの表示装置において、外光反射を抑えて視認性を向上させるために、その表示面に反射防止機能を付与するという要請が強くなっている。この反射防止機能を付与する方法として、屈折率の低い有機物質を含有する組成物を表示面に塗布し、これに紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射することにより、低屈折率の硬化被膜を形成する方法が広く行われている。
【0003】
このような方法に用いられる有機物質としては、生産性がよく、低屈折率のため優れた反射防止特性を示す含フッ素樹脂が開発されており、含フッ素樹脂組成物として、具体的には、含フッ素ジ(メタ)アクリレートを含有してなる組成物を挙げることができる(特許文献1参照)。この含フッ素樹脂組成物から形成される硬化物は、屈折率が低く、表面硬度も高いが、摩擦被膜強度が弱く剥離しやすいという問題があった。
【0004】
また、特許文献2には、一般式(1)で示した含フッ素ジ(メタ)アクリレートと、多官能(メタ)アクリレートとを所定の量で含有してなる含フッ素樹脂組成物が開示されている。この含フッ素樹脂組成物から形成される硬化物は、表面硬度、摩擦被膜強度には優れているが、屈折率が1.45を超える傾向にあり、反射防止性能が得られにくい。
【0005】
なお、シリカ粒子と、およびそれと化学的に結合している反応性(メタ)アクリロイル基を有する有機化合物とからなる反応性シリカ粒子、このシリカ粒子を含有する硬化性組成物が開示されている(特許文献3)。特許文献3では、この硬化性組成物から形成される硬化物の表面硬度、摩擦被膜強度、光透過率、密着性などを評価し、良好であった旨記載されている。しかしながら、この文献に記載の発明は、硬化物の屈折率の制御を技術的課題とするものではない。特許文献3には、どのようにすれば硬化物の屈折率を制御することができ、所望の反射防止性能が得られるのという点については何ら記載も示唆もされていない。
【特許文献1】特開平9−203801号公報
【特許文献2】特開平8−239430号公報
【特許文献3】特開平9−100111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような従来技術の問題点を解決するものであって、基材に対する付着性および上塗り塗膜との付着性にも優れ、テレビ電波に対する吸収性能に優れて反射防止性能に優れ、さらに表面硬度、摩擦被膜強度にも優れた硬化物を形成できるエネルギー線硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエネルギー線硬化性組成物は、
(A)下記一般式(I)で表される含フッ素ジ(メタ)アクリレートと、
(B)反応性(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子と、
(C)上記(A)成分以外の多官能(メタ)アクリレートと、
を含有することを特徴とする。
【0008】
一般式(I) A1−O(CH2n−Rf−(CH2nO−A2
(式中、A1、A2は、各々同一であっても異なっていてもよく、(メタ)アクリロイル基、α−フルオロアクリロイル基、トリフルオロメタクリロイル基、およびビニル基より選ばれ、Rfはパーフルオロアルキレン基であり、nはそれぞれ0〜3の整数である。)
さらに光重合開始剤(D)を含有することが好ましい。
【0009】
前記組成物から形成された硬化被膜のD線における屈折率が1.45以下であることが好ましい。
また、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計を100重量部とした場合に、(A)成分が50〜80重量部、(B)成分が10〜40重量部および(C)成分が5〜20重量部の範囲にあることが好ましく、
(A)成分が50〜75重量部、(B)成分が15〜40重量部および(C)成分が10〜20重量部の範囲にあることがより好ましい。
【0010】
本発明に係る反射防止用エネルギー線硬化性組成物は、上記いずれかに記載のエネルギー線硬化性組成物からなることを特徴とする。
本発明に係る反射防止性被膜は、反射防止用エネルギー線硬化性組成物から形成されたことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る光学基材は、前記反射防止性被膜で被覆されたことを特徴とする。
本発明に係るディスプレイは、前記反射防止性被膜で被覆されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエネルギー線硬化性組成物によれば、反射防止性能に優れ、さらに表面硬度、摩擦被膜強度にも優れた硬化被膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のエネルギー線硬化性組成物は、
(A)含フッ素ジ(メタ)アクリレートと、
(B)反応性(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子と、
(C)上記(A)成分以外の多官能(メタ)アクリレートと、
を含有してなり、さらに必要に応じて(D)光重合開始剤を含有してなる。
【0014】
以下、各成分について説明する。
(A)含フッ素ジ(メタ)アクリレート
本発明において用いられる含フッ素ジ(メタ)アクリレート(A)は、特開平9−203801号公報に記載の下記一般式(I)で表される化合物を用いることができる。
【0015】
一般式(I) A1−O(CH2n−Rf−(CH2nO−A2
式中、A1、A2は、各々同一であっても異なっていてもよく、(メタ)アクリロイル基、α−フルオロアクリロイル基、トリフルオロメタクリロイル基、およびビニル基より選ばれ、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
【0016】
また、上記式において、Rfを表すパーフルオロアルキレン基は、−(CF2m−で表わされるパーフルオロポリメチレン基であり、mは2以上、より好ましくは4〜16の整数であることが望ましい。
【0017】
また、複数のnはそれぞれ0〜3の整数であり、好ましくは同一である。
このような含フッ素ジ(メタ)アクリレート(A)としては、特開平8−239430
号公報の0011欄に記載のものが挙げられ、好ましくは以下の式で表される化合物(1),(2)、さらに好ましくは化合物(1)を用いることが望ましい。
【0018】
【化1】

【0019】
上記式で表される化合物(1),(2)において、mは一般式(I)と同様である。
含フッ素ジ(メタ)アクリレート(A)として、これらの化合物を用いることにより、表面硬度、摩擦被膜強度に優れるとともに、特に、反射防止性能に優れた硬化被膜を形成することができる。
(B)反応性(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子
本発明において用いられる反応性(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子(B)(以下、「反応性シリカ粒子(B)」ともいう)としては、特開平9−100111号公報に記載の反応性シリカ粒子を用いることができる。反応性シリカ粒子(B)は、シリカ粒子と、それと化学的に結合しているシラン化合物とからなり、シラン化合物は、加水分解性シリル基、および(メタ)アクリロイル基を末端に有し、さらに下記式(a)および(b)
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、Xは−NH−、−O−および−S−から選ばれ、Yは酸素原子およびイオウ原子から選ばれる。但しXが−O−のときYはイオウ原子である。)で表わされる基を有している。
【0022】
加水分解性シリル基は、加水分解および縮合反応によりシリカ粒子の表面に存在するシラノ−ル基と結合し、また、(メタ)アクリロイル基は、活性ラジカル種により付加重合を経て分子間で化学架橋する際に用いられる。また、上記式(a)で表わされる基および(b)で表わされる基は、これら加水分解性シリル基を有する分子と、(メタ)アクリロイル基を有する分子とを直接もしくは他の分子を介して結合する構成単位であると同時に、分子間において水素結合による適度の凝集力を発生させ、硬化組成物に優れた力学的強度、基材との密着性、耐熱性等の性能を発生せしめる役割を果たすと推定される。
【0023】
このようなシラン化合物は、特開平9−100111号公報に記載されているように、例えば、末端に活性イソシアネ−ト基を有する、メルカプトアルコキシシランとポリイソシアネ−ト化合物との付加体に対し、ポリアルキレングリコ−ルを加え、片末端ヒドロキシのアルコキシシランとしたのち、これに対し別途合成した、末端に水酸基を有し他方の末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物とポリイソシアネ−ト化合物との付加体を反応させウレタン結合で両者をつなぐ方法、または
末端に活性イソシアネ−ト基を有する、メルカプトアルコキシシランとポリシソシアネ−ト化合物との付加体に対し、別途合成した、末端に活性水酸基を有するポリアルキレングリコールポリイソシアネ−ト化合物と末端に水酸基を有し他方の末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物との付加体を反応させウレタン結合で両者をつなぐ方法、
等により合成することができる。
【0024】
一方、シリカ粒子としては、粉体状またはコロイダル状のシリカ粒子を用いることができる。シリカ粒子の平均粒子径は、0.001〜20μm、好ましくは0.001μm〜2μm、さらに好ましくは0.001〜0.1μm、特に好ましくは0.001〜0.01μmである。また、その形状は、特に限定されず、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状等のいずれの形状であってもよいが、球状であることが好ましい。
【0025】
本発明に用いられる反応性シリカ粒子は、このようなシラン化合物とシリカ粒子とを用いて調製することができる。具体的には、
(1)反応性(メタ)アクリロイル基を有するシラン化合物を加水分解させた後、これとシリカ粒子とを混合し、加熱、攪拌操作を行う方法、
(2)反応性(メタ)アクリロイル基を有するシラン化合物の加水分解をシリカ粒子の存在下に行う方法、
などにより製造することができる。
【0026】
このような反応性シリカ粒子(B)としては、デソライトZ−7503、同Z−7527(製品名、JSR(株)製)、RCS−72(製品名、大竹明新化学社製)等を用いることができる。
【0027】
このような反応性シリカ粒子(B)を用いることにより、表面硬度、摩擦被膜強度に優れる硬化性皮膜を形成することができ、さらに、上記含フッ素ジ(メタ)アクリレート(A)と併用して用いることにより、反射防止性能にも優れた硬化被膜を形成することができる。
(C)多官能(メタ)アクリレート
本発明に用いられる多官能(メタ)アクリレート(C)としては、従来より公知のものを使用でき、(メタ)アクリロイル基を少なくとも2つ以上有する(メタ)アクリルモノマーであれば、特に限定されず用いることができる。
【0028】
(メタ)アクリロイル基を2つ有する(メタ)アクリルモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(DEGDA)、トリプロ
ピレングルコールジ(メタ)アクリレート(TPGDA)、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)
アクリレート(HDDA)、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(TEGDA)、ヒドロキシピバリン酸
ネオペンチルグリコールジアクリレート(HPNDA)、ネオペンチルグリコールジ(メタ)
アクリレート(NPGDA)、1,4-ブタンジオールジアクリレート(BDDA)、1,3-ブチレングリコ
ールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート(PEG400DA)、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリ
レート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニ
ル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル)メタンなどが挙げられる。
【0029】
(メタ)アクリロイル基を3つ以上有する(メタ)アクリルモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA)、
トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(PETA)、グリセリルプロポキシトリ(メタ)アクリレート(GPTA)、1,1,1−トリス(アクリロイルオキシエトキシエトキシ)プロパン、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、水添ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0030】
本発明の多官能(メタ)アクリレート(C)は、これらの(メタ)アクリルモノマーを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
(D)光重合開始剤
本発明に用いられる光重合開始剤(D)としては、従来より公知のものを使用でき、ベンゾイン系、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の何れのものも使用することができる。
【0031】
具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、α−アクリルベンゾイン、ベンジル、ベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、1−クロルアントラキノン、2−クロルアントラキノン、チオキサントン、クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−[4−(メチル)チオフェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン等を例示することができる。
【0032】
本発明に用いられる光重合開始剤(D)は、これらの重合開始剤を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明のエネルギー線硬化性組成物は、上記(A)成分、(B)成分および(C)成分、必要に応じて(D)成分を添加混合して調製することができ、さらにこれらの成分をイソプロピルアルコール等の溶剤で希釈して調製することもできる。また、硬化被膜の反射防止性能、表面硬度、摩擦被膜強度に影響を与えない範囲で、他の成分として重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤等を添加混合することもできる。
【0033】
<エネルギー線硬化性組成物>
本発明のエネルギー線硬化性組成物は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計を100重量部とした場合に、(A)成分が50〜80重量部、(B)成分が10〜40重量部および(C)成分が5〜20重量部の範囲にあることが好ましく、さらに
(A)成分が50〜75重量部、(B)成分が15〜40重量部および(C)成分が10〜20重量部の範囲にあることがより好ましく、また
(A)成分が55〜75重量部、(B)成分が15〜35重量部、(C)成分が10〜20重量部の範囲にあることがさらに好ましく、
(A)成分が60〜70重量部、(B)成分が20〜30重量部、(C)成分が10〜
15重量部の範囲にあることが特に好ましい。
【0034】
このような範囲で各成分を含有してなるエネルギー線硬化性組成物は、反射防止性能、表面硬度、摩擦被膜強度に特に優れた硬化被膜を形成することができる。したがって、ディスプレイの表示面に硬化被膜を形成すると、外光反射を抑えて視認性を向上させることができるとともに、表面硬度および摩擦被膜強度に優れているため、ディスプレイの表示面に傷がつきにくく、さらに剥離が生じることもない。
【0035】
また、光重合開始剤(D)は、エネルギー線硬化性組成物(全量)を100重量%とした場合に、1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%となる量で用いることが作業性の面から好ましい。
【0036】
<反射防止性被膜>
本発明の反射防止性被膜は、本発明のエネルギー線硬化性組成物を基材表面に塗布し硬化することにより形成され、D線(波長589nm)における屈折率は、1.45以下である。屈折率が、この範囲にあることにより、外光反射を抑えて視認性を向上させることができ、ディスプレイなどの表示装置に好適に用いることができる。
【0037】
このような反射防止性被膜を形成するには、具体的には、まず、基材表面に上記のエネルギー線硬化性組成物をスピンコート、ディップコート、ダイコート、スプレーコーティング、バーコーターコーティング、ロールコーティング、カーテンフローコーティングなどの方法により均一の膜厚となるように塗布する。
【0038】
基材としては、特に限定されないが、例えば、通常のガラスや、厚さ1mm以下の薄板ガラス、ポリカーボネートやPMMAなどのアクリル樹脂等の樹脂透明基板、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのフィルム類などが挙げられる。
【0039】
次いで、未硬化状態の塗布膜に、活性エネルギー線を照射して硬化させる。活性エネルギー線の照射源としては、(超)高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外線発生装置を使用するのが便利であるが、他に電子線加速器、コバルト60のγ線源などを用いることもできる。また、基材表面を予め表面処理したり、基材と反射防止性被膜との間に必要に応じて中間層を設けることもできる。
【0040】
本発明の反射防止性被膜(硬化)の膜厚は、用途や屈折率によって好ましい範囲が異なるが、通常50〜500nm、好ましくは70〜200nmの範囲であることが望ましい。この範囲であると、反射防止性被膜の光学特性に優れる。
【0041】
この反射防止性被膜で被覆された光学基材としては、CRTモニター、液晶表示画面、PDP等のディスプレイ、反射防止フィルター、展示物のケースやショーウインド、絵画の額、窓ガラス、光学レンズ、メガネレンズなどが挙げられる。
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
<使用材料>
・含フッ素ジ(メタ)アクリレート(A)
含フッ素ジ(メタ)アクリレート(a-1)
2,2,3,3、4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1,8−オクタンジオールジアクリレート(下記式)
【0043】
【化3】

【0044】
含フッ素ジ(メタ)アクリレート(a-2)
2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−テトラデカフルオロ−1,9−ノナンジオールジアクリレート(下記式)
【0045】
【化4】

【0046】
含フッ素ジ(メタ)アクリレート(a-3)
2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロ−1,10−デカンジオールジアクリレート(下記式)
【0047】
【化5】

【0048】
・反応性(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子(B)
デソライトZ−7503(JSR(株)製)
デソライトZ−7527(JSR(株)製)
・多官能(メタ)アクリレート(C)
トリメチロールプロパントリアクリレート(製品名:アロニックスM−400、東亞合成(株)製)
・光重合開始剤(D)
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(製品名:イルガキュアー184、チバスペシャリティーケミカルズ社製)
・希釈溶剤
イソプロピルアルコール
[実施例1〜6、比較例1〜3]
上記材料を、表1に示す組成となるように加えて、室温で30分程度攪拌し、本発明にかかるエネルギー線硬化性組成物を調製した。(なお、各実施例等において、配合成分の添加順序は、同時でも、または任意の順序でもよい。)
得られたエネルギー線硬化性組成物を、ハードコート層が既に塗付されたポリカーボネート板上にスピンコート法で塗布した。膜厚は100nmとなるよう調整した。塗付後、60℃熱風雰囲気下に1分間放置して溶剤を揮発させ、次いで1000mJ/cm2UV照射を1分間行って硬化させ、硬化被膜を形成した。この硬化被膜の膜厚は95nmであった。この硬化被膜について、仕上り外観(ハジキ)、屈折率、表面硬度、摩擦被膜強度を評価した。評価結果を表1に示す。
【0049】
<評価法>
1)仕上り外観(ハジキ)
表面平滑性を目視にて確認し、以下の3段階で評価した。
(評価3;合格、評価1・2;不合格)
3 ; ハジキ無く、平滑。
【0050】
2 ; ハジキは無いが、若干塗膜に波打ち有り。
1 ; ハジキが有り、大きな塗膜のうねり有り。
2)屈折率
D線(587.56nm)における屈折率をアッベ屈折計DR−M2(アタゴ(株)製)により測定した。その屈折率により以下の3段階で評価した。
(評価3;合格、評価1・2;不合格)
3 ; 1.45以下。
【0051】
2 ; 1.449〜1.469。
1 ; 1.47以上。
3)表面硬度(鉛筆硬度)
JIS K 5600−5−4により測定し、以下の3段階で評価した。
(評価3;合格、評価1・2;不合格)
3 ; 2H以上。
【0052】
2 ; F〜H。
1 ; HB以下。
4)摩擦被膜強度(耐摩擦性)
消しゴム(MONO、トンボ鉛筆(株)製)を1kg荷重で往復させ、硬化被膜表面に傷が認められたときの回数により、以下の3段階で評価した。
(評価3;合格、評価1・2;不合格)
3 ; 50往復以上。
【0053】
2 ; 11〜49往復。
1 ; 10往復以下。
【0054】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)で表される含フッ素ジ(メタ)アクリレートと、
(B)反応性(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子と、
(C)上記(A)成分以外の多官能(メタ)アクリレートと、
を含有するエネルギー線硬化性組成物;
一般式(I) A1−O(CH2n−Rf−(CH2nO−A2
(式中、A1、A2は、各々同一であっても異なっていてもよく、(メタ)アクリロイル基、α−フルオロアクリロイル基、トリフルオロメタクリロイル基、およびビニル基より選ばれ、Rfはパーフルオロアルキレン基であり、nはそれぞれ0〜3の整数である。)。
【請求項2】
光重合開始剤(D)をさらに含有する請求項1に記載のエネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
前記組成物から形成された硬化被膜のD線における屈折率が1.45以下である請求項1または2に記載のエネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計を100重量部とした場合に、(A)成分が50〜80重量部、(B)成分が10〜40重量部および(C)成分が5〜20重量部の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計を100重量部とした場合に、(A)成分が50〜75重量部、(B)成分が15〜40重量部および(C)成分が10〜20重量部の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止用エネルギー線硬化性組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の反射防止用エネルギー線硬化性組成物から形成された反射防止性被膜。
【請求項8】
請求項7に記載の反射防止性被膜で被覆された光学基材。
【請求項9】
請求項7に記載の反射防止性被膜で被覆されたディスプレイ。

【公開番号】特開2006−213748(P2006−213748A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25109(P2005−25109)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(390033628)中国塗料株式会社 (57)
【Fターム(参考)】