説明

エプスタイン・バー・ウィルス核抗原2共活性化因子p100の検出による癌の検査方法および検査試薬

【課題】前立腺癌診断において最も切望されている、ラテント癌など積極的治療を必要としない前立腺癌を検出することなく、積極的治療を必要とする悪性度の高い前立腺癌をのみを特異的に検出可能な診断マーカーの提供。
【解決手段】本発明は、エプスタイン・バー・ウィルス核抗原2 共活性化因子p100(Epstein-Barr virus nuclear antigen 2 Co-activator p100(EBNA2 共活性化因子 p100))を検出することによる癌の検査方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人検体中に含まれるEBNA2 共活性化因子 p100を検出することによる癌の診断方法および検出試薬、ならびにEBNA2 共活性化因子 p100蛋白質あるいは遺伝子発現を制御することによる癌の治療方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌の主要マーカーである前立腺特異抗原(Prostate Specific antigen;PSA)が広く認知され、現在では一般臨床や検診現場でも汎用されるようになり、その結果として前立腺癌の疑いのある患者発見の頻度が高まっている。PSAは前立腺癌のみならず前立腺肥大などでも異常値を示すことより、PSAのみでの前立腺癌診断は困難であり、直腸診、画像診断など総合的な診断がなされるが、最終的な確定診断は生検検査によることとなる。生検検査では、生検組織の癌含有スコア数、病理組織学的所見、ならびにPSA関連パラメータなどにより総合的に診断が行われている。しかし、これら診断を行なう上での明確な判断基準は各施設により統一されておらず、現在も診断基準統一のため多くの施設で検討がなされている。その理由の一つとして前立腺癌における病理組織学的判断が困難なことが挙げられる。具体的には前立腺組織において、基底細胞の消失、前癌病変、癌病変の存在確認により行なわれているが、診断は病理医による主観が大きく働くため明確な腫瘍マーカーが切望されている。基底細胞の染色においては細胞質染色マーカー34βE12、細胞核染色マーカーp63が使用されているが直接癌細胞の有無を調べるものではない。最近になり、癌細胞特異的に染色像が得られるマーカーであるAMACR(α-メチルアシル−CoA−ラセマーゼ)が開発され癌の鑑別に有効であるとの報告が相次ぎ臨床現場で使用されるようになっている。しかし、本マーカーは染色像が不安定なこと、良性腺管でも陽性を示す場合があることより単独での腫瘍診断マーカーとしては充分でない。前立腺癌診断において臨床現場で切望されているマーカーは、積極的治療を必要とするいわゆる臨床的に意義のある癌の検査試薬である。具体的には主要癌組織(advance cancer)のみ特異的に染色像を認め、高齢者に高頻度で発見される治療を必要としない、いわゆる臨床的に意義のない癌であるラテント癌(insignificant cancer)を染色しない前立腺癌マーカーである。AMACRはこれら癌細胞を区別することはできず、治療を必要としない前立腺癌までも陽性判定されてしまう。
【0003】
【非特許文献1】Tong X. et al., Mol.Cell.Biol.,1995,15,4735
【非特許文献2】Callebaut I. et al., Biochem.J.,1997.321,125
【非特許文献3】Yang J., EMBO J., 2002,21,4950
【非特許文献4】Leverson J.D., Mol.Cell.,1998,2,417
【非特許文献5】Ness S.A., Oncogene, 1999,18,3039
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、前立腺癌診断において最も切望されている、ラテント癌など積極的治療を必要としない前立腺癌を検出することなく、積極的治療を必要とする悪性度の高い前立腺癌をのみを特異的に検出可能な診断マーカーの提供である。さらには本抗原蛋白質、遺伝子をターゲットした癌の治療法、治療薬の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は以下の発明を包含する。
[1] エプスタイン・バー・ウィルス核抗原2 共活性化因子p100(Epstein-Barr virus nuclear antigen 2 Co-activator p100(EBNA2 共活性化因子 p100))を検出することによる癌の検査方法。
[2] EBNA2 共活性化因子 p100に対する抗体を用い、免疫化学的にEBNA2 共活性化因子 p100の検出を行う、[1]の検査方法。
[3] 前記抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする、[1]又は[2]の検査方法。
[4] 前記抗体が少なくともEBNA2 共活性化因子 p100(Swiss Plot accession number Q7KZF4)のアミノ酸配列423〜440領域
RPASPATETVPAFSERTC (配列番号1)もしくは
アミノ酸配列806〜819領域
DDDARTDAVDSVVR (配列番号2)
又はその部分配列を認識することを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかの検査方法。
[5] 前記抗体を検体と接触させ、検体中の抗原に結合した又は結合しなかった抗体を検出する、[2]〜[4]のいずれかの検査方法。
[6] 前記抗体を検体と接触させ、検体中の抗体に結合した又は結合しなかった抗原を検出する、[2]〜[4]のいずれかの検査方法。
[7] 前記検出が酵素標識、アイソトープ標識又は蛍光標識を利用した競合法、サンドイッチ法、蛍光偏光法を利用したホモジニアス測定法、表面プラズモン共鳴分析法を利用した結合測定からなる群から選択されるいずれかの方法によるものであることを特徴とする、[2]〜[6]のいずれかの検査方法。
[8] 前記検出が酵素標識、アイソトープ標識又は蛍光標識を利用した免疫組織化学的手法であることを特徴とする、[2]〜[7]のいずれかの検査方法。
[9] 前記検出に用いる検体がヒト細胞、ヒト組織あるいはそれらの抽出物を含む検体であることを特徴とする、[1]〜[8]のいずれかの検査方法。
[10] 前記癌が前立腺癌であることを特徴とする、[1]〜[9]のいずれかの検査方法。
[11] 前記癌がラテント癌を含まない主要癌であることを特徴とする、[1]〜[10]のいずれかの検査方法。
[12] [1]〜[11]のいずれかの癌の検査を実施するためのEBNA2 共活性化因子 p100検査試薬。
[13] 前記検出がEBNA2 共活性化因子 p100遺伝子を検出することによる、[1]の検査方法。
[14] 前記検出がヒト検体中の遺伝子を材料にポリメラーゼ連鎖反応を用い、遺伝子増幅した産物を検出することを特徴とする、[13]の検査方法。
[15] 前記遺伝子の検出がヒト検体に対しin situ ハイブリダイゼーションを用いることを特徴とする、[13]の検査方法。
[16] 前記癌が前立腺癌であることを特徴とする、[13]〜[15]のいずれかの検査方法。
[17] [13]〜[16のいずれか項記載の癌の検査方法を実施するためのEBNA2 共活性化因子 p100遺伝子検出用試薬。
[18] EBNA2 共活性化因子 p100に対する抗体を用いた癌の治療方法。
[19] EBNA2 共活性化因子 p100遺伝子発現を制御することによる癌の治療方法。
[20] 前記制御が、EBNA2 共活性化因子 p100遺伝子を特異的にノックダウンすることによる、[19]の治療方法。
[21] 前記特異的遺伝子のノックダウンがsiRNAによることを特徴とする、[20]の癌の治療方法。
[22] 前記癌が前立腺癌であることを特徴とする、[18]〜[21]のいずれかの療方法。
[23] EBNA2 共活性化因子 p100に対する抗体を含有する、癌の治療のための医薬組成物。
[24] 前記抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする、[23]の医薬組成物。
[25] 前記抗体が少なくともEBNA2 共活性化因子 p100(Swiss Plot accession number Q7KZF4)のアミノ酸配列423〜440領域
RPASPATETVPAFSERTC (配列番号1)もしくは
アミノ酸配列806〜819領域
DDDARTDAVDSVVR (配列番号2)
又はその部分配列を認識することを特徴とする、[23]又は[24]の医薬組成物。
[26] 前記癌が前立腺癌であることを特徴とする、[23]〜[25]のいずれかの医薬組成物。
[27] 前記癌がラテント癌を含まない主要癌であることを特徴とする、[23]〜[26]のいずれかの医薬組成物。
[28] EBNA2 共活性化因子 p100遺伝子発現を制御できるsiRNAを含有する、癌の治療のための医薬組成物。
[29] 前記癌が前立腺癌であることを特徴とする、[28]の医薬組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によればEBNA2 共活性化因子 p100遺伝子あるいは蛋白質を検出することにより癌の検査が可能である。特にEBNA2 共活性化因子のアミノ酸配列423-440又はアミノ酸配列806〜819を認識する抗体により免疫化学的組織染色を行なうことにより、前立腺癌確定診断に必須であった病理診断において積極的治療の要否が診断可能なことより、これまでの必ずしも必要でない手術などの治療による患者の肉体的、精神的な負担、さらには医療費などの経済的な負担をも軽減させることが期待できる。さらに本抗原は前立腺肥大と高分化前立腺上皮内腫瘍および前立腺癌の分別診断が可能であること、前立腺癌においてはPSA濃度、グリーソンスコアと相関し癌進展度を反映する診断マーカーであるため治療方針決定に必要なより多くの臨床的情報を提供可能である。また、本抗原は肺癌、胃癌、大腸癌、乳癌、皮膚癌、脳腫瘍組織にも見出されるためそれら疾患の病理診断、前立腺癌を含めそれら疾患の治療薬などが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
今回我々が見出したEBNA2 共活性化因子 p100(Epstein-Barr virus nuclear antigen 2 Coactivator p100)の検出は癌の有無の判定に加え、治療を必要とする癌のみを免疫組織化学的な手法などにより特異的検出可能であり、癌、特に前立腺癌診断に大きく貢献できることが期待される。EBNA2 共活性化因子 p100は、エプスタイン・バー・ウィルスがBリンパ球に形質転換する際に必須である蛋白質であるエプスタイン・バー・ウィルス核抗原2の転写活性増強因子として同定された(Tong X. et al., Mol.Cell.Biol.,1995,15,4735)。その構造は、4個のスタフィロッカルヌクレアーゼ様ドメイン(SN-様ドメイン)とチューダードメインを有しており(Callebaut I. et al., Biochem.J.,1997.321,125)、SN-様ドメインを介してSTAT6(signal transducer and activator of transcription 6)と結合すること、RNA ポリメラーゼIIの大フラグメントと結合することが示され、STAT6の基底転写機構への橋渡機能により制御していることが示されている(Yang J., EMBO J., 2002,21,4950)。また、未成熟造血細胞、リンパ細胞の分化増殖因子であるc-Mybとの結合能も示されており翻訳活性化への関与が示唆されている(Leverson J.D., Mol.Cell.,1998,2,417)。EBNA2 共活性化因子 p100の発現は偏在したものであり、細胞内においては主に細胞質に存在するが核への移行が可能であり翻訳活性化を制御している可能性が示されている(Ness S.A., Oncogene, 1999,18,3039)。これら解析が行なわれているものの、その機能は未だ解明に至っておらず、特に癌との関連に関しての報告はない。
【0008】
ヒト前立腺組織において検体中のEBNA2 共活性化因子 p100(Swiss Plot accession number Q7KZF4)を検出することにより、前立腺癌を検出可能であることを見出した。特にアミノ酸配列423〜440領域又はアミノ酸配列806〜819領域を特異的に認識する抗体、又はその部分配列、好ましくはその10個以上の連続アミノ酸配列、より好ましくはその15個以上の連続アミノ酸配列を特異的に認識する抗体を用いることにより積極的治療を必要としないラテント癌と交差反応することなく悪性の前立腺癌のみを検出することが可能である。また、抗体に限らず特異的反応性を有するものであればペプチド、アプタマー等でも同様の効果が期待できる。
【0009】
抗体の作製は技術確立されたものであれば手段は選ばない。免疫抗原としては、EBNA2 共活性化因子 p100のアミノ酸配列423〜440領域又はアミノ酸配列806〜819領域を含む全長蛋白あるいは部分領域などを遺伝子組み換え体として取得したものを用いることが可能であり、最も簡便な方法として合成ペプチドでもかまわない。さらにはEBNA2 共活性化因子 p100配列を含む遺伝子を用いて、例えば動物細胞用発現ベクターに導入後、EBNA2 共活性化因子 p100を含むベクタープラスミドを動物に投与することによる動物個体内発現により抗体産生を誘導することも可能である。抗原免疫を行なう宿主動物は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどが主に使用可能であり、鶏を用いた抗体作製等を含め技術確立された抗体産生系であれば特に宿主を選ばない。蛋白質あるいはペプチド抗原を用いる際は、例えばフロイント完全アジュバントと共に動物に免疫を行い、必要に応じフロイント不完全アジュバントと共に追加免疫を繰り返すことにより抗体価の上昇が期待できる。動物から血清を採取することによりポリクローナル抗体の取得が可能であり、さらに動物B細胞を用いてミエローマ細胞株と細胞融合させることによりモノクローナル抗体も容易に取得可能である。
【0010】
合成ペプチドを抗原とする場合の具体的例としては、アミノ酸配列423〜440又は806〜819等の合成ペプチドに必要に応じ免疫源とするキャリア蛋白質への結合を目的にN末端あるいはC末端側にシステイン残基を追加したアミノ酸からなる合成ペプチドを作製する。逆相HPLC(高速液体クロマトグラフィー)等にて合成ペプチドを精製し、マススペクトルにてペプチドの純度検定ならびに目的分子量を示すことを確認し抗原とする。合成ペプチドはマレイミド基にて活性化処理を施したKLH(Keyhole limpet Hemocyanine)等免疫源となるキャリア蛋白と結合させ用いることができる。ウサギに対して抗原をフロイント完全アジュバント共に免疫を行い2週間おきにフロイント不完全アジュバントと共に数回の追加免疫を行なってよい。最終免疫2週間後に動物血清を取得し、抗EBNA2 共活性化因子 p100ポリクローナル抗体として回収することができる。
【0011】
採取した抗血清からの目的抗体であるEBNA2 共活性化因子 p100抗体の取得は、抗血清の硫酸アンモニウム沈殿、プロテインAあるいはプロテインGによる精製を行なった後、必要に応じ抗原ペプチドを固定化したビーズ等の担体によるアフィニティー精製により目的抗体の濃縮が可能である。
【0012】
本抗体を使用することにより、免疫化学的組織染色などによるEBNA2 共活性化因子 p100の検出が可能である。モノクローナル抗体の作製は、抗原免疫までは同一の作業にて動物への免疫を実施する。細胞融合3日前にアジュバントとの混合なしに動物へ抗原の免疫を行い、動物の脾臓あるいはリンパ節よりB細胞を回収し、ミエローマ細胞と常法に従い細胞融合を実施する。融合細胞はHAT培地などによる選択後、培養上清中の抗体価をELISA法(enzyme-linked immunosorbent assay)などにより確認することにより抗体産生株を選別する。最終的に、限界希釈によるモノクローナル化によりモノクローナル抗体産生細胞株の樹立が可能であり、その細胞株培養上清より抗EBNA2 共活性化因子 p100抗体が取得できる。
【0013】
検体中のEBNA2 共活性化因子 p100の検出は、上記モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を使用し、酵素標識、アイソトープ標識又は蛍光標識を利用した競合法、サンドイッチ法、蛍光偏光法を利用したホモジニアス測定法、表面プラズモン共鳴分析法を利用した結合測定など、当業者に周知の方法により、定性的または定量的に検出することができる。また、抗体の代わりにペプチドあるいはアプタマー等、特異的結合性を有する物質であれば同様の効果を期待できる。
【0014】
癌細胞でのEBNA2 共活性化因子 p100 mRNAの発現確認はcRNAプローブを用いたin situ ・ハイブリダイゼーション法により確認することも可能である。具体的にはEBNA2 共活性化因子 p100に対する相補的プライマー配列にT7 プロモーター配列を付加した5’-tcatcaagatggtcctctca-3’(配列番号3)(相補配列5’-atggtcctctca-3’;翻訳遺伝子配列1-12)および5’-cttaatacgactcactatagggtgcaatgttttccccattgg-3’(配列番号4) (相補配列5’-tgcaatgttttccccattgg-3’;翻訳遺伝子配列278-297)を用いてOne step RT-PCR kit(QIAGEN)でRT-PCRによるEBNA2 共活性化因子 p100遺伝子を増幅した後PCR産物の取得、精製を行なうことができる。PCR産物をDIG RNA ラベリングキット(Roche)を用いてイン・ビトロ転写を行い、EBNA2 共活性化因子 p100検出用cRNAプローブを作製してよい。10%ホルマリン固定パラフィン包埋切片をキシレン及び下降エタノール系列にて脱パラフィン後、10μg/mlのプロテイナーゼKで賦活化し、その後4%パラホルムアルデヒドで固定した後、0.2N HCl、0.25%無水酢酸/トリエタノールアミンで処理を行なうことができる。3%過酸化水素水を用いて内因性ペルオキシダーゼ不活化処理を行い、上昇エタノール系列後、風乾したものを検体とした。先に作製したcRNAプローブを50℃にて一昼夜反応させ、0.5%カゼインを含む緩衝液にてブロッキング処理後、ウサギ F(ab’) DIG/HRP抗体(400倍希釈、Dako Japan)を15分間反応させてよい。ビオチニルチラミドで処理した後、ストレプトアビジン−HRP(500倍希釈、Dako Japan)を反応させて、ジアミノベンジジン(DAKO Cytomation)にて可視化することができる。ヘマトキシリンで核染色を行い、流水水洗後、脱水、透徹、封入操作を行ない染色像の観察を行なうことができる。本mRNAは前立腺癌特異的に発現しているため、癌細胞の有無の判定に有用な手法である。
【0015】
抗EBNA2 共活性化因子 p100抗体を用いた免疫化学組織染色は、技術確立された手法であれば手段を選ばない。例えば、手術で得られた前立腺癌組織をホルマリン固定パラフィン包埋した標本をキシレンおよび下降エタノール系列で処理することで脱パラフィンし、10 mMクエン酸緩衝液(pH 6.0)で電子レンジを用いて10分間煮沸して抗原の賦活化を行う。組織サンプルと抗EBNA2 共活性化因子 p100抗体は4℃にて一昼夜反応を行い、抗原に結合した抗EBNA2 共活性化因子 p100抗体検出のためのペルオキシダーゼ標識二次抗体を反応後、ジアミノベンジジンを用いて染色することができる。アミノ酸配列423-440に対する抗体を用いて行った免疫組織化学的染色において悪性腫瘍のみが特異的に染色され、ラテント癌での染色像は観察されず、抗EBNA2 共活性化因子 p100抗体を用いた免疫化学的組織染色により癌細胞の有無の判定が可能であり、さらにアミノ酸配列423-440に対する抗体を使用することによりラテント癌が染色されることなく、悪性度の高い癌細胞のみ染色像が得られることより、積極的治療を要する前立腺癌の診断に非常に有用な検査方法が提供される。
【0016】
ラテント癌および悪性度の高い癌細胞間でのmRNAの発現はin situ ハイブリダイゼーションの結果より差が認められないため、悪性度の高い癌細胞においてのみアミノ酸配列423−440領域に対する抗体にて検出可能なEBNA2 共活性化因子 p100が存在することが推察される。例えば、ラテント癌特異的にアミノ酸配列423-440の領域内あるいは本領域付近で翻訳がなされないため、本領域で翻訳後修飾を受けているため、本領域が翻訳後に切断を受けているため、細胞内局在が大きく異なるため、あるいは蛋白質内の他の部位での修飾により本領域が構造変化を受け抗体が結合できないような状況が生じている等の理由が考えられる。
【0017】
本発明はさらにEBNA2 共活性化因子 p100の活性の抑制及び/又はEBNA2 共活性化因子 p100遺伝子の発現のノックダウン、および発現蛋白質の不活化により癌を治療するための方法及び医薬組成物を提供する。EBNA2 共活性化因子 p100の活性の抑制には、好ましくは、EBNA2 共活性化因子 p100に特異的に結合し、その活性を中和する抗体、特に上述のアミノ酸配列423〜440領域を特異的に認識する抗体、又はその部分配列、好ましくはその10個以上の連続アミノ酸配列、より好ましくはその15個以上の連続アミノ酸配列を特異的に認識する抗体を使用することができる。また、抗体に限らず同様の反応性を有するペプチドやアプタマーによっても同様の効果が期待できる。EBNA2 共活性化因子 p100遺伝子のノックダウンは、様々な遺伝学的技術、例えばRNA干渉法、アンチセンスRNA・DNA法、ペプチド及びRNA・DNAアプタマー、部位特異的欠失、相同組換え、ドミナントネガティブ対立遺伝子、イントラボディーなど、様々な技術により達成できるが、RNA干渉法によるのが特に好ましい。RNA干渉法は、標的遺伝子の一部をコードするmRNAの一部に対し相補性な21〜23塩基対程度のセンスオリゴヌクレオチドを含む鎖と上記mRNAの一部に対し相同な21〜23塩基対程度のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む鎖とから構成される二本鎖RNAを細胞へ導入することで標的遺伝子の発現を抑制する方法である。この方法は、遺伝子のコード領域に由来する二本鎖RNAの干渉特性に基づくもので、線虫の遺伝学的研究において優れた有用性を持つことが証明されており(Fire等, Nature (1998)391:806-811)、ショウジョウバエや哺乳動物においても機能欠損表現型を産出するために利用することができる。
【0018】
本発明によれば、組織、特に前立腺組織においてEBNA2 共活性化因子 p100の存在を確認することにより前立腺癌細胞の有無の判定が可能である。さらに、アミノ酸配列423−440領域又はその部分配列を認識する抗体による免疫化学的組織染色によれば、積極的治療を必要とする悪性度の高い前立腺癌細胞のみ特異的に検出可能であり、積極的治療を必要とする前立腺癌の診断精度を向上させることが可能であり、治療方針の決定に大きく貢献可能であると期待できる。また、EBNA2 共活性化因子 p100の遺伝子発現は、前立腺癌に限られたものでなく広く多様な臓器での発現が確認されているため、癌の診断はもとより生検検査を要する癌の診断に広く応用できることが期待できる。具体的には肺癌、胃癌、大腸癌、乳癌、皮膚癌、脳腫瘍において正常組織に対し癌、腫瘍組織において免疫組織染色で発現を確認しており、これら癌診断や癌治療への応用が期待できる。
【実施例】
【0019】
実施例1:EBNA2 共活性化因子 p100抗体作製
EBNA2 共活性化因子 p100アミノ酸配列423−440(RPASPATETVPAFSERTC)(配列番号1)のペプチドを合成、システイン残基を利用してマレイミド活性化KHLと結合させたものを免疫源とし、ウサギ皮下にアジュバントと共に2週間おきに8回の接種を行なった。全血清を採取後、抗血清中の目的抗体価をELISA法(enzyme linked immunosorbent assay)で抗原ペプチドとの反応力価を確認した。抗血清からの目的抗体の精製のため、抗血清を50%飽和硫酸アンモニウムにて沈殿濃縮後、プロテインG固定化カラムにてIgG画分を回収した。さらに抗原ペプチドを固定したカラムにてアフィニティー精製を行うことにより目的抗体の精製取得を行い、以下の実験に使用した。
【0020】
実施例2:抗EBNA2 共活性化因子 抗体を用いたウェスタンブロッティング法による癌細胞株中の抗原検出
癌細胞株としてアンドロゲン依存性および非依存性前立腺癌細胞を調整した。アンドロゲン依存性ヒト前立腺癌細胞として市販されているLNCaP細胞株(American Type Culture Collection(ATCC), Rockville, MD, USA)を用い、該LNCaP細胞株を、ウシ胎仔血清10%を含有する培養培地(例えば、Roswell Park Memorial Institute (RPMI) medium)中で維持、培養した後、該培養LNCaP細胞1x107個を0.1mlマトリゲル(Matrigel, Becton Dickinson Labware, NJ, USA)に混入して、雄ヌードマウス(BALB/c strain)の皮下に接種し、腫瘍が100から200mm3になったところで、精巣を摘除した。該腫瘍は一次的に縮小するが、まもなく再増殖を始めた。このときの精巣摘除前の腫瘍をアンドロゲン依存性前立腺癌、精巣摘除後に再増殖した腫瘍をアンドロゲン非依存性前立腺癌として用いた。本癌組織を各2匹のマウスより取得した。本癌組織を還元条件下、電気泳動を行なった後、ポリフッ化ビニリデン膜に転写し、抗EBNA2 共活性化因子ポリクローナル抗体にてウェスタンブロッティングにより検出した。その結果を図1に示す。アンドロゲン依存性癌組織ならびに非依存性癌組織いずれの検体においてもEBNA2 共活性化因子が同程度検出された。また、EBNA2 共活性化因子はアンドロゲン依存性獲得に伴う発現量の大きな変化は確認されなかった。
【0021】
図1にアンドロゲン依存性癌組織(LNCap)をレーン1及び2に、アンドロゲン非依存性癌組織をレーン3及び4に用い、抗EBNA2 共活性化因子ポリクローナル抗体にて検出を行なった結果を上段に示す。下段は各レーン間に用いたサンプル量に差がないことを確認する目的でアクチンを内部標準として検出した結果を示す。
【0022】
実施例3:EBNA2 共活性化因子 抗体を用いたウェスタンブロッティング法によるヒト前立腺組織中の抗原検出
ヒト正常前立腺組織と前立腺癌組織は、手術を施した患者の摘除検体から採取した。主として、神奈川県相模原市にある北里大学病院泌尿器科で手術を受けた患者から同意を得て採取されたものである。正常組織2検体ならびに前立腺癌組織2検体をサンプルとし実施例2と同様に抗EBNA2 共活性化因子ポリクローナル抗体にてウェスタンブロッティングにより検出した。その結果を図2に示す。正常組織に比較し、前立腺癌組織において発現量の上昇が確認された。
【0023】
図2は正常組織をレーン1及び2に、前立腺癌組織をレーン3及び4に用い、抗EBNA2 共活性化因子ポリクローナル抗体にて検出を行なった結果を上段に示す。下段は各レーン間に用いたサンプル量に差がないことを確認する目的でアクチンを内部標準として検出した結果を示す。
【0024】
実施例4:RT-PCRによるEBNA2 共活性化因子 遺伝子発現の検出
実施例3同様に、ヒト前立腺正常組織3検体、ヒト前立腺癌組織3検体、前立腺癌細胞株3検体に対し、5’-tcatcaagatggtcctctca-3’(配列番号3)および5’-cttaatacgactcactatagggtgcaatgttttccccattgg-3’(配列番号4)をプライマーに用いRT-PCRにてmRNAの発現量の確認を行なった。その結果を図3に示す。前立腺癌組織2検体で強いmRNAの発現が確認され、正常組織1検体においても弱いながらmRNAの発現が確認された。また、前立腺癌細胞株においては全てのサンプルで強いmRNAの発現が確認された。
図3は正常組織をレーン1〜3に、前立腺癌組織をレーン4〜6に、前立腺癌細胞株をレーン7〜9に用い、RT-PCRにてmRNA発現の確認を行なった結果を示す。上段はEBNA2 共活性化因子のmRNA発現を、下段は各処理サンプル量に差がないことを確認する目的でアクチンを内部標準として検出した結果を示す。
【0025】
実施例5:in situ ハイブリダイゼーションによるEBNA2 共活性化因子 遺伝子発現の検出
EBNA2 共活性化因子 p100に対する相補的プライマー配列にT7 プロモーター配列を付加した5’-tcatcaagatggtcctctca-3'(配列番号3)および5’-cttaatacgactcactatagggtgcaatgtttt ccccattgg-3’ (配列番号4)を用いてOne step RT-PCR kit(QIAGEN)でRT-PCRによるEBNA2 共活性化因子 p100遺伝子を増幅した後PCR産物の取得、精製を行なった。PCR産物をDIG RNA ラベリングキット(Roche)を用いてイン・ビトロ転写を行い、EBNA2 共活性化因子 p100検出用cRNAプローブを作製した。10%ホルマリン固定パラフィン包埋切片をキシレン及び下降エタノール系列に処理して脱パラフィン後、10μg/mlのプロテイナーゼ Kで賦活化し、その後4%パラホルムアルデヒドで固定した後、0.2N HCl、0.25%無水酢酸/トリエタノールアミンで処理を行った。3%過酸化水素水を用いて内因性ペルオキシダーゼ不活化処理を行い、上昇エタノール系列後、風乾したものを検体とした。先に作製したcRNAプローブを50℃にて一昼夜反応させ、0.5%カゼインを含む緩衝液にてブロッキング処理後、ウサギ F(ab’) DIG/HRP抗体(400倍希釈、Dako Japan)を15分間反応させた。ビオチニルチラミドで処理した後、ストレプトアビジン−HRP(500倍希釈、Dako Japan)を反応させて、ジアミノベンジジンにて可視化した。ヘマトキシリンで核染色を行い、流水水洗後、脱水、透徹、封入操作を行ない染色像の観察を行った。その結果を図4に示す。主要癌組織(advance cancer)およびラテント癌(insignificant cancer)いずれの細胞においてもmRNAの発現を確認した。また、正常細胞においては明らかなmRNAの染色像は確認されず、前立腺癌の検出に本方法が有効であることが確認された。
【0026】
上段左(×10倍)、下段左(×40倍)は主要癌組織(advance cancer)の結果を示しており、上段右(×10倍)、下段右(×40倍)はラテント癌(insignificant cancer)を示している。いずれにおいてもin situ ハイブリダイゼーションにおいて癌細胞特異的にmRNAの染色像(矢印)が確認された。また、主要癌組織、ラテント癌間でのmRNA発現は細胞質に局在することなど差は認められなかった。
【0027】
実施例6:免疫組織化学染色による前立腺主要癌細胞のEBNA2 共活性化因子 の検出
前立腺癌組織をホルマリン固定パラフィン包埋した標本をキシレンおよび下降エタノール系列にて脱パラフィンし、10 mMクエン酸緩衝液(pH 6.0)で電子レンジを用いて10分間煮沸して抗原の賦活化を行う。組織サンプルと抗EBNA2 共活性化因子 p100抗体およびAMACR抗体(DAKO 、P504S)は4℃にて一昼夜反応を行い、抗原に結合した抗体検出のためのペルオキシダーゼ標識抗ウサギIgG抗体を反応後、DABを用いて染色した。その結果を図5に示す。前立腺主要癌細胞において抗EBNA2 共活性化因子 p100抗体およびAMACR抗体いずれにおいても前立腺癌細胞特異的に強い染色像が確認された。
【0028】
上段左(×10倍)、下段左(×40倍)は抗EBNA2 共活性化因子 p100抗体の結果を示しており、上段右(×10倍)、下段右(×40倍)はAMACR抗体の結果を示している。いずれにおいても前立腺癌細胞特異的に細胞質の染色像が確認された。矢印は視野内での代表的な癌細胞の染色像を示す。
【0029】
実施例7:免疫組織化学染色による前立腺ラテント癌細胞のEBNA2 共活性化因子 の検出
実施例6同様、前立腺癌組織サンプルと抗EBNA2 共活性化因子 p100抗体およびAMACR抗体は4℃にて一昼夜反応を行い、抗原に結合した抗体検出のためのペルオキシダーゼ標識抗ウサギIgG抗体を反応後、ジアミノベンジジンを用いて染色した。その結果を図6に示す。同一患者切片におけるラテント癌細胞において抗EBNA2 共活性化因子 p100抗体では染色像は認められずAMACR抗体においてのみ前立腺癌細胞特異的に強い染色像が確認された。
【0030】
本結果ならびに実施例6の結果より、抗EBNA2 共活性化因子 p100抗体は悪性度の高い癌細胞を特異的に染色し、積極的治療を必要としないラテント癌を染色しないことが確認された結果を示すものである。
【0031】
上段左(×40倍)、下段左(×120倍)は抗EBNA2 共活性化因子 p100抗体の結果を示しており、上段右(×40倍)、下段右(×120倍)はAMACR抗体の結果を示している。ラテンと癌においてはAMACR抗体においてのみ癌細胞の染色像(矢印)が確認され、抗EBNA2 共活性化因子 p100抗体では染色像が確認されない。
【0032】
実施例8:EBNA2共活性化因子p100モノクローナル抗体の作製
EBNA2共活性化因子p100アミノ酸配列424-439(PASPATETVPAFSERT)(配列番号1)のアミノ末端にシステインを付加したCPASPATETVPAFSERTおよびアミノ酸配列806-819(DDDARTDAVDSVVR)(配列番号2)カルボキシ末端にシステインを付加したDDDARTDAVDSVVRCの合成ペプチドのシステイン残基を利用してマレイミド活性化KLHに結合させたものを抗原として、マレイミド活性化BSAに結合させたものをスクリーニング用抗原として調製した。ウィスター・ルイス・ラット7週令メスに対し、ペプチド付加KLH抗原250μgをフロイントの完全アジュバントと共に後足にエーテル麻酔下にて免疫を行なった。1ヵ月後、ラットより鼠頚リンパ節ならびに腸骨リンパ節を採取し、B細胞を回収した。マウスミエローマ細胞株PAIとポリエチレングリコール存在下、細胞融合を常法に従い行い、約10日間のHAT培地による選択を行なった。スクリーニング陽性ウェル中の細胞を限界釈放法にてモノクローナル化を行い、ハイブリドーマとして樹立した。この際、HT培地にて約10日間の培養を行った後、最終的にハイブリドーマ用培地にて培養を続け、抗体回収のために培養上清を回収した。培地はGIT培地(大日本住友製薬)500mLに対し、NCTC-109 培地(インビトロジェン)27.5 mL、不必須アミノ酸(インビトロジェン)5.5mL、ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン酸(インビトロジェン)5.5mLをろ過滅菌し添加したものをハイブリドーマ細胞培養用培地とした。本培地にHAT(Sigma-Aldrich Co.,HYBRYMAX、Cat.No.H0262)を添加したものをHAT培地として、HT(Sigma-Aldrich Co., HYBRYMAX、Cat.No.H0137)を添加したものをHT培地として用いた。ハイブリドーマのスクリーニングはペプチド付加BSAを96穴イムノプレート(Griener, Cat.No. 655001)に 50 ng/well にてコーティングした。具体的にはペプチド付加BSAをTBSにて希釈し1 μg/mL 溶液を調製した。本溶液を 50μL/wellにてイムノプレートに添加し、4℃にて一昼夜保存する。続いてTBSにて3回の洗浄後、3%-ウシ血清アルブミン(BSA;bovine serum albumin)を含むTBS溶液を250 μL/well にて添加し室温2時間放置した。TBSにて3回洗浄を行い、ハイブリドーマ細胞の培養上清を50μL/wellにて添加し、室温2時間放置する。TBSTにて4回洗浄を行なった後、0.2μg/mL HRP標識抗ラットIgG抗体および1% BSAを含むTBSTを50μL/wellにて添加し室温2時間放置した。TBSTにて4回洗浄を行ない、TMB 基質(Kirkegaard & Perry Laboratories, Inc., Cat.No.50-76-00)を50μl/wellで添加し室温30分放置後、1N-リン酸にて反応を停止しOD450の吸光度を測定した。反応性を示したものを陽性クローンとして選択し、限界希釈にてモノクローナル抗体の樹立を行った。
【0033】
実施例9:EBNA2共活性化因子P100遺伝子のクローニングと大腸菌での発現
LNCap細胞を5% FCS、100単位/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシンを含むDullbecco’s Modified Eagle Media(インビトロジェン)にて培養した。約1×107 細胞を回収し、RNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用いマニュアルに従いRNAを回収した。EBNA2共活性化因子P100のクローニングには5’ 側プライマーとしてEBNA2共活性化因子P100をコードする塩基配列にBamHI切断配列を添加した5’-catggatcctatggcgtcctccgcgcagagcggcg-3’(配列番号5)を使用し、3’側プライマーとしてEBNA2共活性化因子P100をコードする塩基配列にXbaI切断配列を付加した5’-ggctctagactagcggctgtagccaaattcgtctg-3(配列番号6)を使用し、OneStep RT-PCR Kit(QIAGEN)を用いマニュアルに従いEBNA2共活性化因子P100のcDNAを調製した。調製したcDNAをプライマーに付加した制限酵素BamH I ならびにXbaI切断部位を利用し切断し、pUC18ベクターのマルチクローニングサイトのBamH I ならびにXba Iを制限酵素にて切断したものに対しライゲーションを行ない目的のプラスミドを調製した。得られたEBNA2共活性化因子P100遺伝子の全長配列をABI PRISM(登録商標) 310 genetic analyzer(Applied Biosystems)にて確認した。大腸菌での蛋白質発現を目的にEBNA2共活性化因子P100のアミノ酸配列1-410残基に相当する目的遺伝子断片を取得するためのプライマーとして5’-catggatccatggcgtcctccgcgcagagcggcg-3’ (配列番号7)および5’-tcttcccaataagcttttttcgaag-3’ (配列番号8)を使用し、アミノ酸配列411-910残基に対するプライマーとして5’-aatttcttcgaaaaaagcttattgggaag-3’ (配列番号9)および5’-ggctctagactagcggctgtagccaaattcgtctg-3(配列番号10)を使用した。EBNA2共活性化因子P100遺伝子を含むpUC18をテンプレートとしてPCRを行い遺伝子フラグメントEBF1(アミノ酸配列1-410残基に対応)およびEBF2(アミノ酸配列411-910残基に対応)を得た。得られたEBF1およびEBF2のPCRプロダクトをそれぞれBamHI/HindIII 、HindIII /XbaIにて制限酵素処理した後、同様にBamHI/HindIII 、HindIII /XbaIで制限酵素処理したpCold TF ベクターにライゲーションにより導入した。取得したpCold-EBF1ならびに pCold-EBF2 プラスミドは遺伝子配列確認後、大腸菌株JM109に形質転換し蛋白質発現用大腸菌として用い蛋白質発現を実施した。蛋白質発現はpCold-EBF1ならびに pCold-EBF2を形質転換した大腸菌株を50μg/mLのアンピシリンを含むLB培地にて吸光度600nmが0.5になるまで37℃にて培養した。その後15℃にて30分間静置後最終濃度1mMになるようイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドを添加し24時間培養した。培養終了後、遠心分離により大腸菌を回収し、4mMのフェニルメチルスルフォニルフルオリド、0.1% Tween-20 を含むTBS(10mM-Tris-HCl、150mM NaCl、pH7.4)中にて超音波処理した後、遠心分離により溶液画分を回収した。発現した蛋白質はポリヒスチジン配列を有するトリガー蛋白質との融合蛋白質として発現されるためポリヒスチジンを利用した金属キレートカラムで精製が可能である。具体的には溶液画分を0.45μmのフィルターにて細胞破砕物などの沈殿物を除去した。HiTrap Chelating HP (GEヘルスケア)に、50mMのNiCl2溶液を5mL添加しニッケルを結合さた。15mLの純水にて洗浄後、0.5 M NaCl、0.1% Tween-20を含む20mMリン酸緩衝溶液、pH 7.4にてカラムを平衡化した。目的蛋白質を含むサンプルを0.5 M NaCl、0.1% Tween-20を含む20mMリン酸緩衝溶液、pH 7.4になるよう調製した後カラムにロードした。0.5 M NaCl、10mM イミダゾール、0.1% Tween-20を含む20mMリン酸緩衝溶液、pH 7.4の洗浄液で未結合物質を洗浄し、カラム通過溶液の280nmの吸光度が0.01以下になったことを確認した。0.5 M NaCl、500mM イミダゾール、0.1% Tween-20を含む20mMリン酸緩衝溶液、pH 7.4にて目的物をカラムから溶出した。精製した蛋白質は目的蛋白質であるEBF1(分子量46kDa)、EBF2(分子量56kDa)とトリガー蛋白質(分子量52kDa)との融合蛋白質となるためそれぞれ98kDa、108kDaの分子量が予想されSDS-PAGEにより予想分子量を示していることが確認された。その結果を図7に示す。
【0034】
実施例10:EBNA2共活性化因子P100抗体の大腸菌発現蛋白への反応性
大腸菌にて発現させたpCold-EBF1ならびにpCold-EBF2に対する抗体の反応性をウェスタンブロッティングにより確認した。1μg/レーンにて精製蛋白質を還元条件化SDS-PAGEを行った後、PVDF膜に転写し、PVDF膜は3%スキムミルクを含むTBSにて一昼夜ブロッキング処理を行った。TBSにて洗浄後、1μg/mLの抗EBNA2共活性化因子P100抗体を含む1% ブロックエース-TBSTと2時間反応させた後、0.3μg/mLアルカリ性ホスファターゼ標識抗ラットIgG抗体(American Qualex社製;Cat.No.A103AT)を含む1% ブロックエース-TBSTあるいは、0.3μg/mLアルカリ性ホスファターゼ標識抗ウサギIgG抗体(Zymed社製)を含む1% ブロックエース-TBSTを添加した。2時間反応後、TBSTにて十分洗浄し、NBT/BCIP(PIERCE社製)にて発色により検出した。その結果を図8に示す。本結果より、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体いずれもEBNA2共活性化因子P100と強い反応性を示すことが確認された。
【0035】
実施例11:前立腺免疫組織染色によるEBNA2共活性化因子P100およびAMACRの比較
実施例1にて取得したポリクローナル抗体および市販AMACR抗体(DAKO 、P504S)を用い多様な前立腺癌病理サンプルの免疫組織染色を実施例6に従い実施し、検体採取患者病態との関連性を調査した。免疫組織染色強度を図9に示すとおり0(染色像なし)、+1(弱染色像)、+2(中染色像)、+3(強染色像)の4段階に分類し、病理診断分類、PSA濃度、グリーソンスコア、pathological T Stage 分類との因果関係をEBNA2共活性化因子P100およびAMACRの比較にて比較検証した結果を示す。
【0036】
前立腺癌組織部位、高分化前立腺上皮内腫瘍部位(High grade PIN)、前立腺肥大症組織部位、正常組織部位の染色像を染色強度で分類した結果を図10に示す。EBNA2共活性化因子P100およびAMACR いずれも前立腺癌で高分化前立腺上皮内腫瘍、前立腺肥大症、正常組織部位に対しp<0.01の有意差を示した。また、高分化前立腺上皮内腫瘍も前立腺肥大症、正常組織部位に対しp<0.01の有意差を示している。
【0037】
PSA濃度を10 ng/mL 未満、10〜20ng/mL、20 ng/mLを超える患者からの検体で分類し染色強度との関連性を示した結果を図11に示す。AMACR が染色強度とPSA濃度間に有意な因果関係が認められないのに対しEBNA2共活性化因子P100においてはPSA濃度に依存し有意な染色強度の上昇が認められた。
【0038】
グリーゾンスコアを2〜6、7、8〜10 に分類し染色強度との関連性を示した結果を図12に示す。AMACR が染色強度とグリーゾンスコア間に有意な因果関係が認められないのに対しEBNA2共活性化因子P100においてはグリーゾンスコアに依存し染色強度の上昇し、グリーソンスコア2〜6のグループに対し7以上のスコア群では有意差p<0.05 で有志差を認めた。また、グリーソンパターン2〜5の病理染色像を図13に示すが、パターン上昇に伴い染色強度の上昇が認められる。
【0039】
pathological T Stage 分類 pT2 および pT3 での染色強度との関連性を示した結果を図14に示す。EBNA2共活性化因子P100およびAMACR いずれもpT2 および pT3 間での染色像の差は認められなかった。
【0040】
実施例12:Tissue array を用いた各種癌組織への反応性
Tissue array (US Biomax, Inc、Rockville, MD, USA)を用い、実施例6に記載の方法に従い各種癌組織の免疫組織染色を実施した。図15に示すとおり、前立腺癌、肺扁平上皮癌、大腸腺癌、胃腺癌、乳癌、皮膚黒色腫、脳星状細胞腫にて染色像を観察した。その染色強度を実施例11に従い分類した結果を図16に示す。前立腺癌、大腸癌で染色強度+2、肺癌、胃癌、乳癌、皮膚癌、脳腫瘍で染色強度+1、卵巣癌、食道癌、子宮頚癌、腎癌、肝癌では染色像を認めなかった。
【0041】
実施例13:siRNAによる抗腫瘍活性試験
前立腺癌細胞 PC3 に対し、siRNA2種を用い細胞増殖能の制御が可能であるかMTT assayにて抗腫瘍活性試験を実施した。具体的には、PC3 細胞を5×105cells/ウェルにて96穴プレートにて培養し、翌日DharmaFECT 2(GEヘルスサイエンス)を用いsiRNAを10pmol/ウェルにて遺伝子導入する。未処理群(Untreated)、siRNAを使用せず遺伝子導入操作を実施した群(Mock)、本試験とは無関係のsiRNAを用いた群(Nega)、siRNAを用いた2群(Si-1,Si-3)で処理開始後、2,3,4日目の細胞をMTT assay(Chemicon International, Inc.)にて細胞生存率を吸光度570nmにて検証した。Si-1、Si-3のそれぞれのセンス、アンチセンス配列は、Si-1 センス配列GGGAGAACACCCAGGAUAATT(配列番号11)、Si-1アンチセンス配列UUAUCCUGGGUGUUCUCCCTT(配列番号11)、Si-3センス配列CCGCAAAGCAGAAGAAAGATT(配列番号11)、Si-3 アンチセンス配列UCUUUCUUCUGCUUUGCGGTT(配列番号11)である。その結果、図17に示すとおりSi-1、Si-3 siRNAを用いた細胞で細胞増殖が強く抑制された。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】アンドロゲン依存性前立腺癌組織(レーン1及び2)及びアンドロゲン非依存性前立腺癌組織(レーン3及び4)を抗EBNA2 共活性化因子ポリクローナル抗体を用い、ウェスタンブロッティングにより検出した結果を示す。下部は内部標準アクチンである。
【図2】正常組織(レーン1及び2)ならびに前立腺癌組織(レーン3及び4)を抗EBNA2 共活性化因子ポリクローナル抗体を用い、ウェスタンブロッティングにより検出した結果を示す。下部は内部標準アクチンである。
【図3】ヒト前立腺正常組織(レーン1〜3)、ヒト前立腺癌組織(レーン4〜6)、前立腺癌細胞株(レーン7〜9)についての抗EBNA2 共活性化因子のRT-PCRによるmRNA発現の確認試験結果を示す。下部は内部標準アクチンである。
【図4】主要癌組織及びラテント癌組織のEBNA2 共活性化因子 p100遺伝子のin situ ハイブリダイゼーションの結果を示す。上段左(×10倍)、下段左(×40倍)は抗EBNA2 共活性化因子 p100抗体の結果を示す。矢印は視野内での代表的な癌細胞の染色像を示す。
【図5】免疫組織化学染色による前立腺主要癌細胞のEBNA2 共活性化因子の検出を示す。上段左(×10倍)、下段左(×40倍)は抗EBNA2 共活性化因子 p100抗体の結果を示し、上段右(×10倍)、下段右(×40倍)はAMACR抗体の結果を示す。矢印は視野内での代表的な癌細胞の染色像を示す。
【図6】免疫組織化学染色による前立腺ラテント癌細胞のEBNA2 共活性化因子の検出を示す。上段左(×40倍)、下段左(×120倍)は抗EBNA2 共活性化因子 p100抗体の結果を示し、上段右(×40倍)、下段右(×120倍)はAMACR抗体の結果を示す。
【図7】大腸菌で発現させたpCold-EBF1(レーン1)、 pCold-EBF2(レーン2)を示す。矢印は目的蛋白質を示す。
【図8】pCold-EB1およびpCold-EB2に対する抗体の反応性を示す。1〜4の各使用抗体は、1:クローン名EB2.15asモノクローナル抗体(アミノ酸配列806-819:DDDARTDAVDSVVRを認識)、2:クローン名EB3C.2aモノクローナル抗体(アミノ酸配列424-439:PASPATETVPAFSERTを認識)、3:EB2ポリクローナル抗体(アミノ酸配列806-819:DDDARTDAVDSVVRを認識)、4:EB3ポリクローナル抗体(アミノ酸配列423-439:RPASPATETVPAFSERTを認識)の結果を示す。
【図9】EBNA2共活性化因子P100ポリクローナル抗体による免疫組織染色強度を示す。その染色強度から染色強度0(染色像なし)、染色強度+1(弱染色像)、染色強度+2(中染色像)、染色強度+3(強染色像)の4段階に分類した。
【図10】EBNA2共活性化因子P100およびAMACR抗体を用いた前立腺癌組織部位、高分化前立腺上皮内腫瘍部位、前立腺肥大症組織部位、正常組織部位の染色像を染色強度で分類した際の結果を示す。
【図11】EBNA2共活性化因子P100およびAMACR抗体を用いた染色強度をPSA濃度10 ng/mL 未満、10〜20ng/mL、20 ng/mLを超える検体で分類した際の結果を示す。
【図12】EBNA2共活性化因子P100およびAMACR抗体を用いた染色強度をグリーゾンスコア2〜6、7、8〜10 に分類した際の結果を示す。
【図13】EBNA2共活性化因子P100によるグリーソンパターン2〜5の免疫組織染色像を示す。
【図14】EBNA2共活性化因子P100およびAMACR抗体を用いた染色強度をpathological T Stage 分類 pT2 および pT3 で分類した際の結果を示す。
【図15】Tissue array を用いEBNA2共活性化因子P100抗体にて各種癌組織の免疫組織染色した際の染色結果を示す。
【図16】Tissue array を用いEBNA2共活性化因子P100抗体にて各種癌組織の免疫組織染色した際の染色強度一覧結果を示す。
【図17】siRNAを用いた抗腫瘍抑制活性試験(MTT assay)の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エプスタイン・バー・ウィルス核抗原2 共活性化因子p100(Epstein-Barr virus nuclear antigen 2 Co-activator p100(EBNA2 共活性化因子 p100))を検出することによる癌の検査方法。
【請求項2】
EBNA2 共活性化因子 p100に対する抗体を用い、免疫化学的にEBNA2 共活性化因子 p100の検出を行う、請求項1記載の検査方法。
【請求項3】
前記抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項1又は2記載の検査方法。
【請求項4】
前記抗体が少なくともEBNA2 共活性化因子 p100(Swiss Plot accession number Q7KZF4)のアミノ酸配列423〜440領域
RPASPATETVPAFSERTC (配列番号1)もしくは
アミノ酸配列806〜819領域
DDDARTDAVDSVVR (配列番号2)
又はその部分配列を認識することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の検査方法。
【請求項5】
前記抗体を検体と接触させ、検体中の抗原に結合した又は結合しなかった抗体を検出する、請求項2〜4のいずれか1項記載の検査方法。
【請求項6】
前記抗体を検体と接触させ、検体中の抗体に結合した又は結合しなかった抗原を検出する、請求項2〜4のいずれか1項記載の検査方法。
【請求項7】
前記検出が酵素標識、アイソトープ標識又は蛍光標識を利用した競合法、サンドイッチ法、蛍光偏光法を利用したホモジニアス測定法、表面プラズモン共鳴分析法を利用した結合測定からなる群から選択されるいずれかの方法によるものであることを特徴とする、請求項2〜6のいずれか1項記載の検査方法。
【請求項8】
前記検出が酵素標識、アイソトープ標識又は蛍光標識を利用した免疫組織化学的手法であることを特徴とする、請求項2〜7のいずれか1項記載の検査方法。
【請求項9】
前記検出に用いる検体がヒト細胞、ヒト組織あるいはそれらの抽出物を含む検体であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の検査方法。
【請求項10】
前記癌が前立腺癌であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載の検査方法。
【請求項11】
前記癌がラテント癌を含まない主要癌であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項記載の検査方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載の癌の検査を実施するためのEBNA2 共活性化因子 p100検査試薬。
【請求項13】
前記検出がEBNA2 共活性化因子 p100遺伝子を検出することによる、請求項1記載の検査方法。
【請求項14】
前記検出がヒト検体中の遺伝子を材料にポリメラーゼ連鎖反応を用い、遺伝子増幅した産物を検出することを特徴とする、請求項13記載の検査方法。
【請求項15】
前記遺伝子の検出がヒト検体に対しin situ ハイブリダイゼーションを用いることを特徴とする、請求項13記載の検査方法。
【請求項16】
前記癌が前立腺癌であることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか1項記載の検査方法。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれか項記載の癌の検査方法を実施するためのEBNA2 共活性化因子 p100遺伝子検出用試薬。
【請求項18】
EBNA2 共活性化因子 p100に対する抗体を用いた癌の治療方法。
【請求項19】
EBNA2 共活性化因子 p100遺伝子発現を制御することによる癌の治療方法。
【請求項20】
前記制御が、EBNA2 共活性化因子 p100遺伝子を特異的にノックダウンすることによる、請求項19記載の治療方法。
【請求項21】
前記特異的遺伝子のノックダウンがsiRNAによることを特徴とする、請求項20記載の癌の治療方法。
【請求項22】
前記癌が前立腺癌であることを特徴とする、請求項18〜21のいずれか1項記載の療方法。
【請求項23】
EBNA2 共活性化因子 p100に対する抗体を含有する、癌の治療のための医薬組成物。
【請求項24】
前記抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記抗体が少なくともEBNA2 共活性化因子 p100(Swiss Plot accession number Q7KZF4)のアミノ酸配列423〜440領域
RPASPATETVPAFSERTC (配列番号1)もしくは
アミノ酸配列806〜819領域
DDDARTDAVDSVVR (配列番号2)
又はその部分配列を認識することを特徴とする、請求項23又は24記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記癌が前立腺癌であることを特徴とする、請求項23〜25のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記癌がラテント癌を含まない主要癌であることを特徴とする、請求項23〜26のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項28】
EBNA2 共活性化因子 p100遺伝子発現を制御できるsiRNAを含有する、癌の治療のための医薬組成物。
【請求項29】
前記癌が前立腺癌であることを特徴とする、請求項28記載の医薬組成物。

【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図13】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−96417(P2008−96417A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49849(P2007−49849)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】