説明

エポキシ基含有オルガノポリシロキサンの製造方法

【課題】エポキシ基含有オルガノポリシロキサンを、簡便な方法で1ポットで得ることができ、目的物の選択率に優れ、経時変化の少ないエポキシ基含有オルガノポリシロキサンを製造する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】有機溶媒中において、特定式で示されるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物又は該エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物と特定式で示されるアルコキシシラン化合物を、前記アルコキシシラン化合物の全アルコキシ基1モルに対して0.8〜1.1モルの水を添加し、アルコキシ基を加水分解する工程と、引き続き、前工程において添加された水1モルに対して、酸無水物基当り1.5〜3モルに相当する酸無水物を添加して縮合反応を行う工程と、を含むエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ基を含有するオルガノポリシロキサンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エポキシ基を含有するオルガノポリシロキサンは、優れた耐熱性、耐候性、成形加工性、各種基材への密着性等の特性を有することからコーティング剤、成形材料、封止剤、樹脂改質材等として広く利用されている。
このようなエポキシ基を含有するオルガノポリシロキサンは公知であり、次のような方法で合成することができる。
(1)SiH基を含有するオルガノポリシロキサンと1分子中にエチレン性不飽和二重結合とエポキシ基を有する化合物を、ハイドロシリレーション反応を行うことによってエポキシ基を導入する方法(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
(2)縮合反応性基含有オルガノポリシロキサンに、縮合反応によってエポキシ基を導入する方法(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に記載されているエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの製造方法は、反応時のエポキシ基の開環を防ぎエポキシ基を効率的に導入するため、予め主鎖となるSiH基を有するオルガノポリシロキサン化合物を合成し、精製、単離した後、これと、分子中にエチレン性不飽和二重結合とエポキシ基を有する化合物とを反応させる2段階反応であり、簡便な製造方法でないといった問題があった。
また、エポキシ基を含むアルコキシシランを原料として一段階反応で容易にエポキシ基含有オルガノポリシロキサンを製造する方法が特許文献3に開示されている。しかしながら、この方法で得られるエポキシ基含有オルガノポリシロキサンはエポキシ基の他に多量のアルコキシ基を含有することから、時間の経過と共にゲル化することが多く、安定性の点で問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開平6−306084号公報
【特許文献2】特開平5−287077号公報
【特許文献3】特開平7−126391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、エポキシ基含有オルガノポリシロキサンを、簡便な方法で1ポットで得ることができ、目的物の選択率に優れ、経時変化の少ないエポキシ基含有オルガノポリシロキサンを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討をした結果、(1)下記式(I)
で示されるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物又は下記式(I)で示されるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物及び下記式(II)で示されるアルコキシシラン化合物のアルコキシ基を加水分解する工程、(2)さらに、酸無水物を添加し縮合反応を行う工程を含む製造方法により、エポキシ基を効率よく導入したエポキシ基含有オルガノポリシロキサンを、1ポットの反応で容易に得ることができ、目的物の選択率に優れたエポキシ基含有オルガノポリシロキサンを製造することができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)下記の工程1及び2を含むことを特徴とするエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの製造方法、
工程1
有機溶媒中において、下記式(I)で示されるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物又は下記式(I)で示されるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物と下記式(II)で示されるアルコキシシラン化合物を、前記アルコキシシラン化合物の全アルコキシ基1モルに対して0.8〜1.1モルの水を添加し、30℃以下の温度でアルコキシ基を加水分解する工程
【0008】
【化1】

(式(I)中、R1はエポキシ基含有一価有機基、R2はエポキシ基以外の一価
有機基であり、R3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルコキシ基、mは2又は3の整数を表す。)
【0009】
(R4n−Si−(R5)4-n (II)
(式(II)中、R4はそれぞれ同一でも異なっていてもよいエポキシ基以外の一価有機基、R5はそれぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルコキシ基、nは0〜3の整数を表す。)
【0010】
工程2
工程1に引き続き、工程1において添加された水1モルに対して、酸無水物基当り1.5〜3モルの酸無水物を添加し、20〜60℃の温度で、縮合反応を行う工程
【0011】
(2)上記(1)の式(I)で示されるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物/上記(1)の式(II)で示されるアルコキシシラン化合物のモル比が80/20〜5/95である上記(1)に記載のエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの製造方法、
(3)酸無水物が無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸及び無水コハク酸の中から選ばれる1種以上である上記(1)記載のエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの製造方法、
(4)酸無水物が無水酢酸である上記(1)記載のエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの製造方法、
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エポキシ基含有オルガノポリシロキサンを、簡便な方法で1ポットで得ることができ、目的物の選択率に優れ、経時変化の少ないエポキシ基含有オルガノポリシロキサンを製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法に使用されるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物は、下記式(I)で示される。
【0014】
【化2】

(式(I)中、R1はエポキシ基含有一価有機基、R2はエポキシ基以外の一価
有機基であり、R3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルコキシ基、mは2又は3の整数を表す。)。
【0015】
上記式(I)で示されるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物中、エポキシ基含有一価有機基R1としては、エポキシ基を含む一価の炭化水素基が好適であり、具体的には、グリシドキシエチル基、グリシドキシプロピル基、グリシドキシブチル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル基、3,4−エポキシノルボルネニルエチル基、2−(3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシル)−2−メチルエチル基等が例示できる。
また、上記式(I)で示されるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物中、エポキシ基以外の一価有機基R2としては、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;及びクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;等の置換もしくは非置換の一価炭化水素基が挙げられる。好ましい一価有機基はアルキル基であり、経済性の点より、メチル基がより好ましい。
また、上記式(I)で示されるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物中、
3は炭素数が1〜3のアルコキシ基であり、具体例としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基が挙げられ、加水分解の容易さより特にメトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
【0016】
上記式(I)で示されるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物として好適
に使用されるものの例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランもしくはβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等があり、これらは1種又は2種以上を使用することができる。
【0017】
本発明の製造方法に使用されるアルコキシシラン化合物は、下記式(II)で示される。
【0018】
(R4n−Si−(R5)4-n (II)
(式(II)中、R4はそれぞれ同一でも異なっていてもよいエポキシ基以外の一価有機基、R5はそれぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルコキシ基、nは0〜3の整数を表す。)。
【0019】
上記アルコキシシラン化合物中、それぞれ同一でも異なっていてもよいエポキシ基以外の一価有機基R4としては、上記式(I)におけるR2と同様の基を例示することができる。また、R5はR3と同様に炭素数が1〜3のアルコキシ基であり、上記式(I)におけるR3と同様の基を例示することができる。ここで、上記式(II)で示されるアルコキシシラン化合物として好適に使用されるものの例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等があり、これらは1種又は2種以上を使用することができる
【0020】
本発明の製造方法に使用される有機溶媒としては、特に制限は無く、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒等が使用される。中でも、原料の溶解性、及びオルガノポリシロキサンの溶解性からジオキサン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸ブチルが好ましい。
【0021】
本発明の製造方法は、以下に示す工程1と工程2を含むものである。
(工程1)
前述した有機溶媒中において、上記式(I)で示されるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物又は上記式(I)で示されるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物と式(II)で示されるアルコキシシラン化合物を、該アルコキシシラン化合物の全アルコキシ基1モルに対して0.8〜1.1モルの水を添加することにより、アルコキシ基を加水分解する工程である。この工程で、アルコキシ基の加水分解時の系内温度は、30℃以下であり、好ましくは20℃以下、0℃以上である。加水分解時の系内温度が30℃より高い場合には、エポキシ基の一部が加水分解することがある。また、この工程でアルコキシ基を加水分解するために添加される水は、アルコキシ基の合計量1モルに対して0.8〜1.1モルであり、より好ましくは、0.9〜1.0モルである。添加される水の量が0.8モルより少ない場合には、アルコキシ基の加水分解が十分に行われず、オルガノポリシロキサンにアルコキシ基が残存してしまい経時の安定性を損なう可能性がある。また、添加される水の量が1.1モルより多い場合には、エポキシ基の一部が加水分解されることがある。
【0022】
工程1において、上記式(I)で示されるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物/式(II)で示されるアルコキシシラン化合物のモル比は特に限定されないが、80/20〜5/95の範囲が好ましく、50/50〜10/90の範囲がより好ましい。
【0023】
(工程2)
本発明の製造方法における工程2は、工程1に引き続き、工程1において添加された水1モルに対して、酸無水物基あたり1.5〜3モルに相当する酸無水物を添加することにより、縮合反応を行う工程である。この工程で、溶媒中に添加される酸無水物は、シラノール相互の縮合反応から生成する水と反応する。すなわち、反応系内から水を除去する作用、及びアルコキシ基の加水分解によって生成したアルコールと反応してエステル化合物を生成することでシラノール相互の縮合反応を高める作用をする。
【0024】
ここで、使用できる酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、ドデセニル無水コハク酸、脂肪族二塩基酸無水物(例えば、岡村精油株式会社製 IPU−22AH、SL−12AH、SL−20AH)等を挙げることができるが、後工程における残存酸無水物の除去の容易さ、経済性の点より、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水コハク酸が好ましく、無水酢酸がより好ましい。
【0025】
この工程で添加される酸無水物の量は、工程1で添加された水1モルに対して酸無水物基当り1.5〜3モルに相当する酸無水物であり、より好ましくは、2.0〜2.5モルである。添加される酸無水物の量が1.5モルより少ない場合には、反応系内に生成する水を除去できずエポキシ基の一部が加水分解することがある。また、添加される酸無水物の量が3モルより多い場合には、実質的に不要な酸無水物が多くなることになる。この工程において、酸無水物を添加した後、20〜60℃の温度で縮合反応するが、より好ましくは30〜50℃である。20℃よりも低い温度では、シラノール相互の縮合反応が遅くなるため反応時間が長くなる。また、60℃よりも高い温度では、エポキシ基と酸無水物の反応が起る可能性がある。
工程2の反応時間は、特に限定はされないが、好ましくは1時間から48時間、より好ましくは3時間から12時間程度である。
また、工程2における反応終了後、得られた反応液を水洗さらに溶媒留去することで目的のエポキシ基含有オルガノポリシロキサンを得ることができる。
【0026】
本発明の製造方法により得られるエポキシ基含有オルガノポリシロキサンは、必要に応じて、着色顔料や体質顔料などの顔料類;顔料分散剤、可塑剤、剥離剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、硬化触媒、消泡剤、などの添加剤等を適宜配合してもよい。特にエポキシ樹脂と配合することにより、その硬化物は強靭性、基材との接着性が著しく向上する。
【0027】
使用できるエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂、含リンエポキシ樹脂等が挙げられる。また、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物、アジピン酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジエルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル化合物、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアジペート)等の脂環式エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアヌレート等も使用することができる。本発明のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンに対し、これらのエポキシ樹脂は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることもできる
【0028】
上記エポキシ基含有オルガノポリシロキサン及びそのエポキシ樹脂配合物は、種々のエポキシ樹脂硬化剤と配合されて使用することができる。かかる硬化剤としては、酸無水物基含有化合物、フェノール化合物、アミノ基含化合物等を例示することができる。
【0029】
酸無水物基含有化合物の具体例としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、ドデセニル無水コハク酸、脂肪族二塩基酸無水物(例えば、岡村精油株式会社製 IPU−22AH、SL−12AH、SL−20AH)等が挙げられる。これらの酸無水物基含有化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0030】
フェノール化合物の具体例としては、2,6−ジヒドロキシナフタリン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[別名:ビスフェノールA]、2−(3−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[別名:ビスフェノールF]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン[別名:ビスフェノールS]、フェノール樹脂類、具体的には、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂、フェノール−ジシクロペンタジエン共重合体樹脂などが挙げられる。これらのフェノール性水酸基を有する樹脂は、単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0031】
アミノ基含有化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミン等を挙げることができる。
【0032】
上記エポキシ基含有オルガノポリシロキサン、エポキシ樹脂と酸無水物基含有化合物、フェノール化合物又はアミノ基含有化合物との反応は硬化触媒の存在で促進される。そのような硬化触媒としては、3級アミン系化合物、ホスフィン化合物、オニウム塩、イミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0033】
3級アミン系化合物の具体例としては、ジメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等が挙げられ、ホスフィン系化合物としてはトリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。またオニウム塩としては4級アンモニウム塩や4級ホスホニウム塩等が挙げられ、4級アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等が挙げられ、4級ホスホニウム塩としては、テトラフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等が挙げられ、イミダゾール系化合物の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0034】
これら硬化触媒の添加量は、エポキシ基含有オルガノポリシロキサン、エポキシ樹脂、酸無水物基含有化合物、フェノール化合物又はアミノ基含有化合物の総和に対して、0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜3質量%である。0.1質量%未満では硬化促進の効果が現れにくく、5質量%を超えると組成物の安定性が低下することがある。
本発明の製造方法より得られるエポキシ基含有オルガノポリシロキサンは、良好な硬化性を有し、良好な機械的強度、耐湿性、耐熱性、耐候性さらには良好な各種基材に対する接着性を有する硬化物を与える。
【0035】
このような特徴を有する本発明のエポキシ基含有オルガノポリシロキサンは、耐熱性塗料、耐候性塗料あるいは各種フィルムのコーティング剤として有用である。また光半導体及び電子部品の封止用樹脂やそのバインダーとしても好適に用いられる。さらに、各種の無機材料、有機材料等の改質材や表面処理材として有用である。
【実施例】
【0036】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
なお、目的物の選択率(開環せずにエポキシ基として残存している率)は、1H−NMRスペクトルの測定により定量した。ここでの定量の方法は、エポキシ基含有アルコキシシランから派生したけい素原子に結合したメチレン中のプロトン(エポキシ基が開環しても変化しないプロトン)とエポキシ基中のプロトンの面積比から算出することにより行った。
【0037】
実施例1(アルコキシ基1モルに対して等モルの水を添加)
攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器を取り付けた1リットルの4つ口フラスコに、メチルイソブチルケトン100g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン24g(0.1モル)、メチルトリメトキシシラン27g(0.2モル)、ジメチルジメトキシシラン24g(0.2モル)を投入し、次いで蒸留水23g(1.3モル)を添加し、20℃で3時間攪拌しアルコキシシランの加水分解を行った。その後、無水酢酸275g(2.7モル)を系に添加し、40℃で12時間攪拌した。冷却後、系内に蒸留水を添加し内容物を洗浄し、水層を除去するという水洗浄操作を3回行い、さらに有機層のメチルイソブチルケトンを留去することで目的のエポキシ基含有オルガノポリシロキサンを得た。合成したエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの1H−NMRスペクトルからエポキシ基の98%が開環せずに残存していることが確認された。
【0038】
実施例2
エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランからβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン26g(0.1モル)に代えた以外は、実施例1と同様に合成を行った。合成したエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの1H−NMRスペクトルからエポキシ基の99%以上が開環せずに残存していることが確認された。
【0039】
実施例3
攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器を取り付けた1リットルの4つ口フラスコに、メチルイソブチルケトン100g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン48g(0.2モル)を投入し、次いで蒸留水11g(0.6モル)を添加し、20℃で3時間攪拌しアルコキシシランの加水分解を行った。その後、無水酢酸125g(1.2モル)を系に添加し、40℃で12時間攪拌した。冷却後、系内に蒸留水を添加し内容物を洗浄し、水層を除去するという水洗浄操作を3回行い、さらに有機層のメチルイソブチルケトンを留去することで目的のエポキシ基含有オルガノポリシロキサンを得た。合成したエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの1H−NMRスペクトルからエポキシ基の97%が開環せずに残存していることが確認された。
【0040】
比較例1(アルコキシ基1モルに対して0.5モルの水を添加)
アルコキシ基の加水分解に用いる蒸留水を11g(0.6モル)、及び無水酢酸を185g(1.8モル)に代えた以外は実施例1と同様に合成を行った。合成したエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの1H−NMRスペクトルからエポキシ基の99%以上が開環せずに残存していることを確認したが、同時に多量のメトキシ基が残存しているのが確認された。このメトキシ基が残存したエポキシ基含有オルガノポリシロキサンは、室温で2週間放置後、ゲル化するのが確認された。
【0041】
比較例2(アルコキシ基1モルに対して1.5モルの水を添加)
アルコキシ基の加水分解に用いる蒸留水を36g(2.0モル)、及び無水酢酸を310g(3.0モル)に代えた以外は実施例1と同様に合成を行った。合成したエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの1H−NMRスペクトルからエポキシ基の11%が開環していることが確認された。
【0042】
比較例3(水1モルに対して酸無水物基あたり1.0モルの酸無水物を添加)
無水酢酸を130g(1.3モル)に代えた以外は実施例1と同様に合成を行った。合成したエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの1H−NMRスペクトルからエポキシ基の16%が開環していることが確認された。
【0043】
比較例4
アルコキシシランの加水分解の温度を50℃で行った以外は実施例1と同様に合成を行った。合成したエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの1H−NMRスペクトルからエポキシ基の12%が開環していることが確認された。
【0044】
比較例5
無水酢酸を添加後80℃で攪拌を行った以外は実施例1と同様に合成を行った。合成したエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの1H−NMRスペクトルからエポキシ基の35%が開環していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、エポキシ基含有オルガノポリシロキサンを、簡便な方法で1ポットで得ることができ、目的物の選択率に優れ、経時変化の少ないエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの製造方法を提供することである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程1及び2を含むことを特徴とするエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの製造方法。
工程1
有機溶媒中において、下記式(I)で示されるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物又は下記式(I)で示されるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物と下記式(II)で示されるアルコキシシラン化合物を、前記アルコキシシラン化合物の全アルコキシ基1モルに対して0.8〜1.1モルの水を添加し、30℃以下の温度でアルコキシ基を加水分解する工程
【化1】

(式(I)中、R1はエポキシ基含有一価有機基、R2はエポキシ基以外の一価
有機基であり、R3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルコキシ基、mは2又は3の整数を表す。)
(R4n−Si−(R5)4-n (II)
(式(II)中、R4はそれぞれ同一でも異なっていてもよいエポキシ基以外の一価有機基、R5はそれぞれ同一でも異なっていてもよい炭素数1〜3のアルコキシ基、nは0〜3の整数を表す。)
工程2
工程1に引き続き、工程1において添加された水1モルに対して、酸無水物基当り1.5〜3モルに相当する酸無水物を添加し、20〜60℃の温度で、縮合反応を行う工程
【請求項2】
請求項1の式(I)で示されるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物/請求項1の式(II)で示されるアルコキシシラン化合物のモル比が80/20〜5/95である請求項1記載のエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項3】
酸無水物が無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸及び無水コハク酸の中から選ばれる1種以上である請求項1記載のエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項4】
酸無水物が無水酢酸である請求項1記載のエポキシ基含有オルガノポリシロキサンの製造方法。

【公開番号】特開2008−74931(P2008−74931A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254553(P2006−254553)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】