説明

エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物

【課題】硬化物の耐熱性に優れ、また、金属に対する接着性、難接着性フィルム等にも優れた接着性を示すエポキシ樹脂、及びエポキシ樹脂組成物を提供すること。
【解決の手段】本発明は、下記式(1)
【化1】


(式中、Gはグリシジル基を表し、Rはハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはアリール基を示す、複数個のRはそれぞれ互いに同一でも異なっても良い。また、m、nはそれぞれ1〜4を表しm+nは5を超えることはない)で表されるエポキシ樹脂に関する。本発明のエポキシ樹脂は、充分フレキシビリティーを保ちながら、接着強度に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性、電気特性、密着性、接着性に優れる硬化物を与え、しかもフィルム状に形成した場合、十分なフレキシビリティーを有するエポキシ樹脂組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物を与える事から、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。特に近年の電気・電子分野では高集積化、高密度化、微少化に伴い密着性や接着性等の向上要求、またポリイミド(PI)フィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレングリコールテレフタレート(PET)フィルム、ポリエーテルスルホン(PES)フィルムを初めとする機能性フィルムや金属箔等の接着による複合化に於ける密着性や接着性の向上等が求められているが未だ充分ではない。
【0003】
【特許文献1】特開2005−146128号公報
【特許文献2】特開2005−146142号公報
【特許文献3】特開2006−016547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の電気・電子部品の形態は従来の大型パッケージやガラス繊維を基材とした基板、トランスファー成形による基板だけではなく、ポリイミドやPETフィルム、金属箔上にワニスの状態で塗布した後、溶剤を除去するシート状の成形物が開発されている。この様な場合使用される樹脂には十分なフレキシビリティー及びポリイミドなどの基材に対する高い接着性が要求される。また、電気・電子部品の信頼性という面からは硬化物の耐熱性が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らはこうした実状に鑑み、耐熱性、接着性に優れた硬化物を与え、シート状に成形しても十分なフレキシビリティーを有するエポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物を求めて鋭意研究した結果、本発明を完成させるに到ったものである。
【0006】
すなわち本発明は
(1)、下記式(1)
【0007】
【化1】

(式中、Gはグリシジル基を表し、Rはハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはアリール基を示す、複数個のRはそれぞれ互いに同一でも異なっても良い。また、m、nはそれぞれ1〜4を表しm+nは5を超えることはない)、
で表されるエポキシ樹脂。
(2)、上記(1)記載のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含有してなるエポキシ樹脂組成物。
(3)、上記(1)記載のエポキシ樹脂、該エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂及び及びエポキシ樹脂硬化剤を含有してなるエポキシ樹脂組成物
(4)、上記(2)または(3)に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物
【発明の効果】
【0008】
本発明のエポキシ樹脂、及び本発明のエポキシ樹脂を含んだエポキシ樹脂組成物の硬化物は、接着性に優れる他、難燃性、耐熱性等にも優れ、特に銅箔等の金属に対する接着性に優れるものである。またフィルム複合化物とした場合でも十分な接着性とフレキシビリティーを有しているため、成形材料、注型材料、積層材料、フィルム材料、塗料、接着剤、レジストなどの広範囲の用途にきわめて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明の上記式(1)で表されるエポキシ樹脂は、下記式(2)
【0010】
【化2】

(式中、R、m及びnは式(1)におけるのと同じ意味を表す。)
で表されるベンゾトリアゾール化合物をエポキシ化することにより得ることが出来る。式(2)の化合物は、紫外線吸収剤等として使用されている化合物であり、市販品が入手可能である。前記式(2)において、Rとしては、水素原子;塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基またはアリール基が挙げられる。置換基Rの置換位置に特に制限はないが、水酸基は、少なくとも2位に結合しているのが好ましい。
【0011】
本発明のエポキシ樹脂は式(2)の化合物をエピハロヒドリンと反応させる事によって容易に得られる。この反応に使用されるエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、エピヨードヒドリン等があるが、工業的に入手し易く安価なエピクロルヒドリンが好ましく用いられる。この反応は従来公知のノボラック型フェノール樹脂とエピハロヒドリンからポリグリシジルエーテルを得る方法に準じて行うことが出来るが、式(2)の化合物のエピハロヒドリンへの溶解性やエポキシ化物の加水分解性塩素を低減させるという観点から、該化合物をアルカリ金属水酸化物及び極性溶媒の存在下にエピハロヒドリンと反応させることにより製造するのが特に好ましい。
【0012】
即ち、式(2)の化合物とエピハロヒドリンの混合物に極性溶媒を添加した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の固体を添加し、または、添加しながら20乃至120℃で反応させる。この場合、極性溶媒の使用量はエピハロヒドリンに対して好ましくは2乃至200重量%、特に好ましくは5乃至100重量%の範囲である。また、アルカリ金属水酸化物は水溶液を使用してもよく、その場合は該アルカリ金属水酸化物を連続的に添加すると共に反応系内から減圧下、または常圧下、連続的に水及びエピクロルヒドリンを留出させ、これを分液し、水は除去しエピクロルヒドリンは反応系内に連続的に戻す方法でもよい。極性溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン類、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられるがこれらの溶媒に限定されるものではない。
【0013】
上記の方法においてエピハロヒドリンの使用量は式(2)の化合物の水酸基(フェノール性水酸基)1モルに対して通常1乃至20モル、好ましくは2乃至10モルである。アルカリ金属水酸化物の使用量は式(2)の化合物中の水酸基(フェノール性水酸基)1モルに対し通常0.8乃至1.5モル、好ましくは0.9乃至1.2モルの範囲である。極性溶媒の使用量はエピハロヒドリンに対して例えばDMSOの場合には好ましくは10乃至200重量%、特に好ましくは20乃至100重量%であり、アルコール類、ケトン類、エーテル類の場合には好ましくは2乃至50重量%、特に好ましくは5乃至30重量%である。
【0014】
また、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩などを触媒として併用することもできる。
【0015】
第4級アンモニウム塩などを触媒として使用する場合、式(2)の化合物と過剰のエピハロヒドリンとの混合物に、これら第4級アンモニウム塩を添加し、好ましくは40乃至130℃で好ましくは1乃至20時間反応して得られるハロヒドリンエーテル含有混合物に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加え、再び好ましくは30乃至100℃で反応させハロヒドリンエーテルを閉環させる。この場合第4級アンモニウム塩の使用量は式(2)の化合物に対して好ましくは0.05乃至20重量%、特に好ましくは0.25乃至10重量%の範囲である。またこの反応も前記極性溶媒などの存在下に行なうこともできる。
【0016】
通常、これらの反応物(一段目の反応物)は水洗後、または水洗無しに加熱減圧下、過剰のエピハロヒドリンを除去した後、再びトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶媒に溶解すると共に、必要な場合は濾過し、更に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて、二段目の反応を行う事により閉環を確実なものにする。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量は、一段目の反応における水式(2)の化合物の水酸基1モルに対して通常0.02乃至0.3モル、好ましくは0.05乃至0.15モルであり、好ましくは50乃至100℃で反応させる。この反応は通常0.5乃至2時間かけて行われる。又、この反応においては一段目反応と同様にDMSO等の極性溶媒を併用することもできる。尚、この二段目の反応は省略することもできる。かくして式(1)で表される本発明のエポキシ樹脂が得られる。
【0017】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含有する。
本発明のエポキシ樹脂組成物には本発明のエポキシ樹脂の他、特性を損なわない範囲で他のエポキシ樹脂を併用することが出来る。併用できるエポキシ樹脂は特に限定されるものではなく、例えばノボラック型エポキシ樹脂、ポリフェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールエポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられる。これらエポキシ樹脂は2種以上を併用することも出来る。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂硬化剤は特に限定されるものではなく、例えばフェノールノボラック樹脂、ポリフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂等のフェノール系硬化剤、ナフトール変性フェノールノボラック樹脂やジシクロペンタジエン変性ポリフェノール樹脂等の変性フェノール系硬化剤、フタル酸無水物やトリメリット酸無水物等の酸無水物系硬化剤、ジアミドジフェニルメタンやジシアンジアミド等のアミン系硬化剤等が挙げられる。これら硬化剤は2種以上を併用することも出来る。これら硬化剤の使用量は使用されるエポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対し0.4乃至1.5倍当量の範囲で用いることが好ましく、特に0.6乃至1.2当量用いることが好ましい。また、前記硬化剤の他、反応性水酸基を有するポリアミド樹脂等を併用することも可能である。
【0019】
上記、反応性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂は、ポリマー構造中に反応性水酸基を持つ芳香族ポリアミド樹脂で有れば良く、特に限定されない。反応性水酸基含有芳香族ポリアミド樹脂の合成方法については、例えば特開平8−143661号公報等に記載されている、芳香族ジアミン成分と芳香族ジカルボン酸成分との縮重合の際に、これらの成分の全部または一部として、水酸基を有する芳香族ジアミン及び/または芳香族ジカルボン酸を使用することにより製造することが出来る。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じ硬化促進剤、及び/又は充填剤、添加剤、溶剤、イオン捕捉剤等を添加する事が出来る。硬化促進剤はエポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進させるもので有れば特に限定されるものではなく、例えば有機リン化合物、イミダゾール系化合物、三級アミン、四級アンモニュウム塩、ホスフィン類、金属化合物等が用いられる。これら硬化促進剤は使用するエポキシ樹脂や硬化剤の種類、また成形条件や要求特性等により適宜選択される。硬化促進剤の具体例としては例えば2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリフェニルホスフィン、オクチル酸スズ等が挙げられるがこれら硬化促進剤に限定されるものではない。硬化促進剤を用いる場合、その使用量はエポキシ樹脂100重量部に対して0.01乃至15重量部の範囲が好ましく、特に0.1乃至10重量部の範囲が好ましい。
【0021】
充填剤、添加剤としては、例えばシリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシュウム、珪酸カルシュウム、水酸化カルシュウム、炭酸マグネシュウム、炭酸バリュウム、硫酸バリュウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、カーボン、カーボン繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリコンカーバイト繊維等の無機系充填剤、ポリエステル繊維、セルロース繊維、アラミド繊維、また種々のポリマービーズ等の有機系充填剤、シランカップリング剤や難燃性付与剤、酸化安定剤、離型剤、顔料等の添加剤を配合することが出来る。これらの充填剤、添加剤を用いる場合の使用量は特に限定されるものではないが、充填剤はエポキシ樹脂組成物全量中の1乃至95重量%、添加剤はエポキシ樹脂組成物全重量中の0.01乃至20重量%の範囲で使用することが出来る。
【0022】
イオン捕捉剤はエポキシ樹脂組成物中の不純イオン、特に電子回路の信頼性を低下させる種々イオンを吸着固定させるもので有れば特に限定されるものではないが、ハイドロタルサイト系、リン酸ジルコニュウム系、リン酸チタン系、酸化アンチモン系、酸化ビスマス系等のイオン捕捉剤等が使用される。例えば、DHT−4A(協和化学工業(株)製)、キョーワードKW−2000(協和化学工業(株)製)、IXE−100(東亞合成(株)製)、IXE−300(東亞合成(株)製)、IXE−400(東亞合成(株)製)、IXE−500(東亞合成(株)製)、IXE−600(東亞合成(株)製)等が市販されている。これらのイオン捕捉剤は単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。これらイオン捕捉剤の使用量は通常エポキシ樹脂組成物の0.01乃至10%の範囲で用いられる。また、これらイオン捕捉剤は適当な粒径を使用することが好ましく、特に最大粒径が3乃至10μm以下、平均粒径が7μm以下のものが好ましい。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物は押し出し機、ロール等の混練装置を用いて上記各成分を所定の割合で加熱混練後、粉砕調製され、半導体素子等の電子部品をセットしたトランスファーモールド、インジェクションモールド等の従来からの成型機を用いて成形後、更に後硬化を行う事により種々の電子部品を封口、封止することが出来る。また、溶剤に溶解、及び/又は分散させワニス化した後、ロールコーター、マルチコーター、ダイコーター、グラビアコーター等を用いてポリイミドフィルム、アラミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルファイドフィルム等の電気絶縁性フィルムに塗布し、更にエポキシ樹脂組成物の硬化反応が抑制される温度範囲で1〜15分間インラインドライヤー等の乾燥装置に通して加熱乾燥処理することにより溶剤を除去されたフィルム化物を得ることもできる。この時、電気絶縁フィルムの塗布面には離型処理を施したものや接着性を付与するためブラスト処理、コロナ放電処理等を施したフィルムを使用することも出来る。離型処理を施したフィルムに塗布しフィルム化したエポキシ樹脂組成物は電子基板等に圧着後、電気絶縁フィルムを取り除き、必要な場合は更に他のフィルムや金属箔等を重ね、加圧加熱硬化させることで絶縁材、保護材、接着剤等として広範な分野で使用できる。
【0024】
上記ワニス化する時の溶剤としてはエポキシ樹脂、硬化剤、ポリアミド樹脂等の樹脂分を溶解可能な溶剤が好ましく、従来知られている種々の溶剤を使用することが出来る。例えばN-メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素、γ−ブチルラクトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、エチルセロソルブアセテート、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン等の溶剤が挙げられるがこれら溶剤に限定されるものではない。これらの溶剤は単独で用いても良く、2種以上を併用することもできる。
【実施例】
【0025】
次に本発明を更に合成例、実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。
【0026】
合成実施例1
温度計、冷却管、撹拌装置を取り付けた4径フラスコに2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(大和化成(株)製;DAINSORB T−0 水酸基当量113.6g/eq)113.6部、エピクロルヒドリン463部、ジメチルスルホキシド(DMSO)232部を仕込み50℃で溶解した、更に撹拌下に窒素ガスを導入しながらフレーク状水酸化ナトリウム(純分99%)42部を、2時間を要し添加した。添加終了後60℃で1時間、70℃で1時間、80℃で30分間反応させた。反応終了後、水300部、30%リン酸水素2ナトリウム水溶液30部加え水洗し、水層は分離除去し、油層を加熱減圧下過剰のエピクロルヒドリンを留去した。次いで420部のメチルイソブチルケトン(MIBK)を加え残留物を溶解させた。
【0027】
更に、このメチルイソブチルケトンの溶液を70℃に加熱し撹拌下、30重量%の水酸化ナトリウム水溶液7重量部を添加し1時間反応させた後、洗浄液のpHが中性になるまで水洗を繰り返した。更に水層は分離除去し、加熱減圧下過剰のメチルイソブチルケトンを留去し、黒色半固形のエポキシ樹脂(A)161部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は192g/eq、軟化点49.7℃、150℃に於けるICI粘度は0.4Pa・sであった。
【0028】
合成実施例2
温度計、冷却管、撹拌装置を取り付けた4径フラスコに2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(大和化成(株)製;(DAINSORB T−1 水酸基当量225.3g/eq)225.3部、エピクロルヒドリン463部、ジメチルスルホキシド(DMSO)232部を仕込み50℃で溶解した、更に撹拌下に窒素ガスを導入しながらフレーク状水酸化ナトリウム(純分99%)42部を、2時間を要し添加した。添加終了後60℃で1時間、70℃で1時間、80℃で30分間反応させた。反応終了後、水300部、30%リン酸水素2ナトリウム水溶液30部加え水洗し、水層は分離除去し、油層を加熱減圧下過剰のエピクロルヒドリンを留去した。次いで600部のメチルイソブチルケトン(MIBK)を加え残留物を溶解させた。
【0029】
更に、このメチルイソブチルケトンの溶液を70℃に加熱し撹拌下、30重量%の水酸化ナトリウム水溶液7部を添加し1時間反応させた後、洗浄液のpHが中性になるまで水洗を繰り返した。更に水層は分離除去し、加熱減圧下過剰のメチルイソブチルケトンを留去し、黒色液状のエポキシ樹脂(B)270部を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は290g/eq、150℃に於けるICI粘度は0.05Pa・sであった。
【0030】
実施例1
エポキシ樹脂として上記合成実施例1で得られたエポキシ樹脂(A)、及びNC−3000(日本化薬株制、エポキシ等量275g/eq、軟化点56.9℃、150℃に於けるICI粘度0.07Pa・s)、硬化剤としてフェノールアラルキル樹脂(KAYAHARD GPH−65(日本化薬(株)製、水酸基当量203g/eq、軟化点65℃、150℃に於けるICI粘度0.69Pa・s)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(TPP 純正化学(株)製)をそれぞれ表−1に示す配合割合で調整し加熱混練後、粉砕調製しトランスファー成形により各種試験片、及び長さ×幅×厚み=15mm×7mm×0.25mmの銅製金属接着試験片を長さ方向に5mm埋め込んだ成型物を得た。更に表−1に示す硬化条件で硬化させた後、動的粘弾性測定器(DMA:東洋精機(株)製 RHEOLGRAPH−SOLID)を用い昇温速度2℃/minで測定を行った時のtanδ最大値でのガラス転移温度(TG1(℃))、熱機械的分析器(TMA:真空理工(株)製 TM−7000)を用い昇温速度2℃/minで測定を行った時の変局点ガラス転移温度(TG2(℃))、幅12.5mm、厚さ1.6mm、長さ150mmに成形硬化された試験片での難燃性試験(UL−94燃焼製試験の規格に準拠した垂直燃焼試験)結果、及び接着試験片の引き抜き強度をテンシロンRTA−500(オリエンテック社製)を用いクロスヘッドスピード5mm/minで行った時の最大点荷重より求めた引き抜き強度(Nmm)を表−2に示す。
【0031】
実施例2
エポキシ樹脂として上記合成実施例2で得られたエポキシ樹脂(B)を使用した以外は、実施例1と同様に表−1に示す配合割合で調整・成形し、硬化、評価を行った結果を表−2に示す。
【0032】
実施例3
温度計、撹拌装置を取り付けた1L、4径セパラブルフラスコに表−3に示す配合量のN,N−ジメチルホルムアミド(以下DMFと称す)を仕込み、撹拌しながらエポキシ樹脂として上記合成実施例1で得られたエポキシ樹脂(A)、及びフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000(日本化薬(株)製、エポキシ当量275g/eq、軟化点56.9℃、150℃に於けるICI粘度0.07Pa・s)、エポキシ樹脂硬化剤としてKAYAHARD GPH−65をそれぞれ表−3に示す配合割合で仕込み30℃で30分を要し溶解させた。次いで熱可塑性樹脂として反応性水酸基含有ポリアミド樹脂CPAM−750(日本化薬(株)製、水酸基当量5000g/eq)を表−3に示す配合割合で仕込み1時間を要して溶解させた。更に硬化促進剤2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ−PW(四国化成工業(株)製)を表−3に示す配合割合で仕込み分散させ、ワニスを得た。このワニスのE型粘度計での25℃に於ける粘度は15,000であった。
【0033】
次いで、このワニスを、コンマコーターを用い25μmのPET離型フィルム(リンテック社製、PET25−AL−5)上に乾燥後の厚さが30μmとなるように塗布し、乾燥条件140℃、風量10m/Sec、15分間を要し溶剤を除去しフィルム化された樹脂組成物を得た、更に離型フィルムより剥離させながら連続的にロールに巻き取りB−ステージ化された接着用フィルム(1)を得た。
【0034】
次いで上記B−ステージ化された接着用フィルム(1)をポリイミドフィルム(ユーピレックスSGA−25(宇部興産製))の処理面に挟み込み30kg/cmの圧力となるように調整された熱プレス装置により175℃×1時間の加圧加熱下で硬化させ本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物により接着されたポリイミド複合化フィルム(A)を得た。また、同様に電解銅箔CF−T9−18(福田金属箔粉(株)製)の処理面に上記B−ステージ化された接着用フィルム(1)を挟み込み、更にこの複合化されたフィルムを30kg/cmの圧力となるように調整された熱プレス装置により175℃×1時間の加圧加熱下で硬化させ、本発明のエポキシ樹脂組成物により接着された銅箔複合化フィルム(B)を得た。次いでこれら複合化されたフィルム(A)、(B)を1cm幅、長さ10cmに切り出した後、接着面を出し、テンシロン引っ張り試験装置により90°、クロスヘッドスピード3mm/minの条件で剥離試験により接着強度を求めた結果、及び幅12.5mm、長さ150mmにカットされたポリイミド複合化フィルム試験片での難燃性試験(幅UL−94燃焼製試験の規格に準拠した垂直燃焼試験)結果を表−4に示す。尚、表−4中、剥離強度1はポリイミド複合化フィルムでの試験結果、剥離強度2は銅箔複合化フィルムでの剥離強度を示す。
【0035】
実施例4
実施例2で得られたベンゾトリアゾール化合物のエポキシ化物(B)を使用した他はそれぞれ表−3に示す配合割合で仕込みワニスを得た。このワニスのE型粘度計での25℃に於ける粘度は13,300であった。更に、実施例3と同様にフィルム化し、ポリイミド複合化フィルム(C)、銅箔複合化フィルム(D)を得た。次いでこれら複合化されたフィルムを1cm幅、長さ10cmに切り出し接着面を出し、テンシロン引っ張り試験装置により90°、クロスヘッドスピード3mm/minの条件で剥離試験により接着強度を求めた結果を表−4に示す。
【0036】
比較例1
エポキシ樹脂(A)を使用しない他は表−1に示す配合割合で仕込み実施例1と同様に成型し、硬化、評価を行った結果を表−2に示す。
比較例2
エポキシ(B)を使用しない他は表−3に示す配合割合で仕込み実施例3と同様にフィルム化、接着複合化しポリイミド複合化フィルム(E)、銅箔複合化フィルム(F)をそれぞれ得た。更にこれら複合化されたフィルムを1cm幅、長さ10cmに切り出し接着面を出し、テンシロン引っ張り試験装置により90°剥離試験により接着強度を求めた結果を表−4に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
このように本発明のエポキシ樹脂は、樹脂組成物に少量添加使用するだけで耐熱性、難燃性を損なうことなく、その硬化物の接着強度を向上させることが可能であり、該硬化物は特に銅箔との接着強度に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、Gはグリシジル基を表し、Rはハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはアリール基を示す、複数個のRはそれぞれ互いに同一でも異なっても良い。また、m、nはそれぞれ1〜4を表しm+nは5を超えることはない)、
で表されるエポキシ樹脂。
【請求項2】
請求項1記載のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含有してなるエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1記載のエポキシ樹脂、該エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂及び及びエポキシ樹脂硬化剤を含有してなるエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2または3に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。

【公開番号】特開2008−7725(P2008−7725A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182253(P2006−182253)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】