説明

エポキシ樹脂に基づく水系塗料

平均して1分子当たり少なくとも1つのエポキシ基を有する水分散性エポキシ樹脂Aと、水溶性又は水分散性硬化剤Bとを含む水性エポキシ樹脂系ABであって、該硬化剤Bは、少なくとも1つの第一級アミノ基及び/又は少なくとも1つの第二級アミノ基を有するアミンB1と、ポリアルキレンエーテルポリオールB21及びエポキシド成分B22の付加物B2と、ヒドロキシル基及びカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸性基を有する芳香族化合物B3との反応生成物を含む、水性エポキシ樹脂系ABが記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂に基づく水系塗料に関する。具体的には、本発明は、水系エポキシ樹脂結合剤と水系エポキシ樹脂に基づく硬化剤との組合せを含む塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂及びアミンの反応生成物に基づく、水で希釈できるエポキシ樹脂と水で希釈できる硬化剤とを含む水系塗料が、特に欧州特許第0000605号で説明されている。このような系は、特に鋼板等のベース金属基板上に、良好な腐食抵抗性をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
塩噴霧試験で実証されるように、特に塩水に対して、腐食抵抗性をさらに向上させることが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、平均して1分子当たり少なくとも1つのエポキシ基を有する水分散性エポキシ樹脂Aと、水溶性又は水分散性硬化剤Bとを含む水性エポキシ樹脂系ABであって、該硬化剤Bは、少なくとも1つの第一級アミノ基及び/又は少なくとも1つの第二級アミノ基を有するアミンB1と、ポリアルキレンエーテルポリオールB21及びエポキシド成分B22の付加物B2と、ヒドロキシル基及びカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸性基を有する芳香族化合物B3との反応生成物を含む、水性エポキシ樹脂系ABを提供することによって達成される。
【0005】
本発明は、水溶性又は水分散性硬化剤組成物Bであって、少なくとも1つの第一級アミノ基を有するアミン及び少なくとも1つの第二級アミノ基を有するアミンからなる群より選ばれるアミンB1と、ポリアルキレンエーテルポリオールB21及びエポキシド成分B22の付加物B2と、ヒドロキシル基及びカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸性基を有する芳香族化合物B3との反応生成物を含む、水溶性又は水分散性硬化剤組成物Bにも関する。
【0006】
本発明は、上記水性エポキシ樹脂系ABと、色素、充填剤、さらなる結合剤及び添加剤の少なくとも1つとを含む、被覆組成物にも関する。
【0007】
本発明はさらに、上記水性エポキシ樹脂系ABを用いて金属ベースの基板を被覆する方法であって、噴霧すること、ブラシで塗ること、又はローラーで塗ることにより、金属ベースの基板に上記水性エポキシ樹脂系ABを適用することを含む、方法に関する。
【0008】
水溶性又は水分散性硬化剤組成物Bは、少なくとも1つの第一級アミノ基を有するアミン及び少なくとも1つの第二級アミノ基を有するアミンからなる群より選ばれるアミンB1と、ポリアルキレンエーテルポリオールB21及びエポキシド成分B22の付加物B2と、ヒドロキシル基及びカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸性基を有する芳香族化合物B3との反応生成物を含む。
【0009】
ノボラックベースのエポキシ樹脂と、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する単核芳香族化合物との反応生成物は、独国特許出願公開第1470785号明細書に説明されているが、このような反応生成物は、他の液体エポキシ樹脂を固体エポキシ樹脂に変換する役割を果たすのみである。芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジヒドロキシ化合物に加えて、サリチル酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸も開示される。ポリアルキレングリコール改質エポキシ樹脂、アミン及び上記芳香族化合物の反応生成物は、言及されておらず、明らかにされてもいない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
アミンB1は、好ましくは純粋な脂肪族アミン、すなわち、直鎖状、分枝鎖状又は環状であり得る脂肪族有機基のみが分子中に存在する脂肪族アミンである。しかし、それらは、分子の他の部分が芳香族部分も含み得る一方でアミンの窒素原子が脂肪族炭素原子と結合しているようなアミンも含み得る。アミンB1がジプライマリー(diprimary)ジアミンであることが好ましい。このようなアミンは、例えば、異性体のキシリレンジアミン、好ましくはメタ−キシリレンジアミンである。好ましい脂肪族アミンは、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、異性体のトリメチルヘキサメチレンジアミン、異性体のビス−(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、高級ジアミノポリエチレンイミン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、及びN,N−ビス(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、並びにこれらのアミンの2つ以上の混合物である。メタ−キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びこれらの混合物が特に好ましい。
【0011】
ポリエーテルポリオールB21は好ましくは、多官能性アルコール又はそれらの混合物へのアルキレン酸化物の付加生成物であり、例えば、ジオールエチレン及びプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、グリセロール等のトリオール、及びペンタエリスリトール又はソルビトール等の高級多官能性アルコールである。また、このような多価(すなわち、三官能性又は高級)アルコールの質量分率が全アルコールの質量の10%を超えないことが好ましい。特に好ましいものは、ポリエチレングリコール、及びオキシエチレン部位とオキシプロピレン部位とを含むコポリマーであり、この場合、少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%の質量分率がオキシエチレン基から成る。
【0012】
エポキシ化合物B22は好ましくは、二価のアルコール若しくはフェノールのグリシジルエーテル、又はノボラック、又はジカルボン酸のグリシジルエステルである。フェノールのうち、レゾルシノール、ヒドロキノン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)、ジヒドロキシジフェニルメタンの異性体の混合物(ビスフェノールF)、テトラブロモビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、2,2−ビス−[4−(2’−ヒドロキシプロポキシ)−フェニル]−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−イソブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)−プロパン、ビス−(2−ヒドロキシナフチル)−メタン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、並びに上記の化合物のハロゲン化物及び水和物である。ビスフェノールAをベースにしたエポキシ樹脂が特に好ましい。
【0013】
エポキシ化合物B22は好ましくは、0.5mol/kg〜10mol/kg、特に好ましくは1.0mol/kg〜7.0mol/kgの特定のエポキシド基含有量(上記エポキシ化合物内の該エポキシ化合物質量で徐したエポキシド基を有する物質の量)を有する。エポキシ化合物B22は、置換されていても、非置換でもよく、脂肪族化合物及び脂肪族−芳香族混合化合物であってもよく、平均して、1分子当たり少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのエポキシド基を有し得る。エポキシ化合物B22はまた、その分子中にヒドロキシル基を有していてもよい。また、ジオレフィンのエポキシ化によって生成されるジエポキシアルカンを使用することもできる。特に好ましいものは、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(BADGE)及びビスフェノールFのジグリシジルエーテル、並びにBADGE及びビスフェノールAの発達産物(advancement products)をベースにしたエポキシ樹脂である。これらのBADGE系樹脂は通例、それらの重合度に応じてタイプ1、タイプ5、タイプ7等の樹脂で表わされる。BADGEとタイプ1エポキシ樹脂との混合物を使用することが特に好ましい。
【0014】
付加物は、三フッ化ホウ素等のルイス酸及びエーテル又はアミンを含むそれらの錯体から成る群より選択される触媒の存在下で、ポリエーテルポリオールB21とエポキシ化合物B22とを反応させることによって生成される。
【0015】
ヒドロキシル基及びカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸性基を有する芳香族化合物B3は、好ましくはベンゼン、ジフェニル若しくはナフタレン、又はこれらのホモログ、すなわち低級アルキルで置換したベンゼン、ジフェニル若しくはナフタレン、例えばトルエン、キシレン、1−若しくは2−メチルナフタレン、1,2−若しくは1,3−若しくは1,4−若しくは1,8−若しくは2,3−ジメチルナフタレン、若しくは対応するエチル−、プロピル−若しくはブチル−で置換したベンゼン、ジフェニル若しくはナフタレン(直鎖置換基、分枝鎖置換基及び混合置換基も包含される)から得られる。少なくとも2つの上記酸性基を有することが好ましく、少なくとも2つのヒドロキシル基、又は少なくとも1つのヒドロキシル基及び少なくとも1つのカルボキシル基が特に好ましい。好ましくは、芳香族化合物B3は少なくとも2つの酸性基を有し、そのうち少なくとも1つがヒドロキシル基である。少なくとも2つの酸性基を有する芳香族化合物B3であって、そのうち少なくとも1つがヒドロキシル基であり1つがカルボキシル基である、芳香族化合物B3も好ましい。ヒドロキシル基を含有しない化合物B3は不十分であることが分かっている。特に好ましいのは、レソルシノール、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸(βーレソルシン酸)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(ゲンチシン酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸(γーレソルシン酸)、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(プロトカテク酸)、3,5−ジヒドロキシ安息香酸(α−レソルシン酸)2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸及びこれらのアルキル誘導体、例えば2−ヒドロキシ−3−、−4−及び−5−メチル−安息香酸(クレソチン酸)。
【0016】
エポキシ樹脂Aは、B22で述べたのと同じ群から選択される、非改質の、又は親水的に改質したエポキシ樹脂であり得る。エポキシ樹脂の親水的改質は、B2として記載されているもののような付加物を乳化剤としてエポキシ樹脂に添加すること、及びこの混合物を分散させることにより、又は未改質のエポキシ樹脂を乳化剤の水性分散液に分散させることにより、一般的な手法に従って行われる。
【0017】
本発明の水性エポキシ樹脂系ABは好ましくは、
第1の工程として、ルイス酸又はその錯塩を触媒として使用してポリアルキレンエーテルポリオールB21及びエポキシ樹脂又はエポキシ化合物B22の付加物B2を調製する工程と、
芳香族化合物B3が溶解しているアミンB1にB2を添加する工程であって、好ましくはこれらのエポキシ基の少なくとも90%、より好ましくはB2のエポキシ基の少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%を消費することにより、上記アミンB1のアミノ基がB2のエポキシ基と反応する、添加する工程と、
任意に、残存するアミンB1と高温で反応しポリアミド又はアミドオリゴマーを形成する脂肪族ポリカルボン酸B4を添加する工程と、
前記反応により生成した水を、好ましくは共沸蒸留により除去する工程と、
任意に、モノエポキシ化合物又はモノエポキシ化合物の混合物B5を添加する工程と、
任意に、ポリアミン、好ましくはジアミンB6を添加する工程と、
任意に、得られた生成物を酸で中和する工程であって、前記アミノ基の少なくとも20%をそれぞれ陽イオンに変換する、中和する工程と、
前記任意に中和した反応生成物を水中に分散する工程と、
任意に、さらに水を添加する工程であって、固体の質量分率を40%〜80%に調整する、さらに水を添加する工程と、
を含む多工程プロセスにおいて製造される。
【0018】
芳香族化合物B3は好ましくは、B3から残存する未溶解の固体材料を含まない清澄な溶液をもたらすように、アミンB2中に溶解される。第2の工程に対する代替的経路は、芳香族化合物B3が溶解しているアミンB1を、付加物B2に添加することである。
【0019】
上で詳述した工程に従って製造される硬化剤Bは、エポキシ樹脂のポリオキシエチレングリコールとの反応等により自己乳化し得るエポキシ樹脂Aの水性分散液に混和されるか、若しくは適当な乳化剤の添加により外的に乳化されるか、又は未改質のエポキシ樹脂Aが硬化剤Bを含む水中で乳化されるが、全ての様々な方法がエポキシ樹脂系ABをもたらす。
【0020】
複数のカルボキシル基を有する、好ましくは2個のカルボキシル基を有する脂肪酸B4を任意に添加して、残存するアミドを消費する。驚くべきことに、この反応で生成するポリアミド又はアミドオリゴマーのごく一部が、本発明の水性エポキシ樹脂系の特性をさらに改良する。酸B4は好ましくは、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、それらの混合物、及びまた、C〜C12酸等の他の脂肪族ジカルボン酸、並びに炭素数が50までの脂肪酸二量体から成る群より選択される。
【0021】
残存するアミン、またアミドオリゴマーを、モノエポキシドB5、例えば、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、また芳香族モノエポキシ化合物(例えばクレジル若しくはキシレニルグリシジルエーテル)との反応により消費させる反応工程を含むことが有益であることも分かった。脂肪族及び芳香族のグリシジルエーテルの混合物を使用することが特に好ましい。
【0022】
中和の1つ前の工程で、さらなる第一級アミンB6、特にジアミンを添加して、生成する反応生成物の親水性を改良することも好ましい。このようなジアミンは好ましくは、2つの第一級アミノ基を有するジアミン、すなわち、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン、トリメチルへキサンジアミン異性体等の分岐鎖脂肪族アミン、並びに、メタ−キシリレンジアミン及びテトラメチルキシリレンジアミン等の、脂肪族炭素原子と結合するアミノ基を有する芳香族−脂肪族混合アミンから選択される。
【0023】
脂肪族ポリカルボン酸B4を添加する工程、モノエポキシドB5を添加する工程、及びさらなるアミンB6を添加する工程を必要に応じて少なくとも1つ含むことが好ましい。
【0024】
好ましくは上記の方法に従って製造される本発明の水性エポキシ樹脂系は、任意のエポキシ樹脂系被覆に使用することができる。ベース金属をコーティングするのにこのような水性系が特に好適であり、特に塩水と接触した状態で目立って改善された腐食保護性を示すことが分かった。
【実施例】
【0025】
本発明を以下の実施例でさらに例証する。
【0026】
実施例1 ポリアルキレングリコール改質エポキシ樹脂の調製
ビスフェノールAジグリシジルエーテル642gを、ポリエチレングリコール(平均モル質量(number average molar mass)600g/モル)356gと混合し、125℃まで加熱し、その後三フッ化ホウ素ベンジルアミン錯体((登録商標)Anchor1040、Air Products)2.4gを添加し、エポキシド基の特定の含有量が約2.4モル/kgの値に到達するまで反応混合物を140℃で維持した。
【0027】
実施例2 硬化剤の調製
サリチル酸19gを、約50℃に加熱したメタ−キシリレンジアミン38.4g中に溶解した。清澄な溶液が形成されるまで撹拌を継続した。この溶液を約80℃までさらに加熱し、実施例1の改質エポキシ樹脂17.5gを添加した。脱イオン水(75g)をその後2つの部分で添加した。219mg/gのアミン価を有する樹脂溶液と、固体の質量分率約50%とを得た。
【0028】
実施例3 さらなる硬化剤の調製
無水フタル酸5.0g(実施例3.1)、イソフタル酸5.0g(実施例3.2)、レゾルシノール5.0g(実施例3.3)、安息香酸5.0g(実施例3.4)、ビスフェノールA5.0g(実施例3.5)、没食子酸一水和物10.0g(実施例3.6)、イソフタル酸10.0g(実施例3.7)、レゾルシノール10.0g(実施例3.8)、安息香酸10.0g(実施例3.9)、ビスフェノールA10.0g(実施例3.10)、テトラヒドロフタル酸無水物5.0g(実施例3.11)でサリチル酸を順番に置き換えて、サリチル酸を抜いて(by nothing)(実施例3.12、比較用)、また同量のサリチル酸を混合物中に維持しつつアミン(メタ−キシリレンジアミン)をイソホロンジアミン4.8gで置き換えて(実施例3.13)、実施例2を繰り返した。
【0029】
実施例4 被覆組成物の調製
1型固体樹脂((登録商標)Beckopox EP 384w/53 WAMP、固体の質量分率53%、Cytec Surface Specialties Germany GmbH & Co. KG)の水性エポキシ樹脂分散液50g、及び表1に示すような質量の実施例3の硬化剤から透明被覆(Clearcoats)を調製した。活性アミン水素原子の物質量が同じとなるように、硬化剤の量を調整した。
【0030】
表1 透明被覆の組成、及びPendulum硬度の進展
【表1】

ガラスプレート上、乾燥膜厚50μm、室温(23℃)で、7日間の乾燥後に試験した
【0031】
表1から分かるように、実施例4.1、4.2及び4.7(カルボキシル基のみを有する芳香族化合物を使用している)を除いて、Pendulum硬度は150秒〜170秒の良好なレベルを有する。
【0032】
実施例5 被覆試験
さらなる試験では、実施例4で使用した水分散性エポキシ樹脂と、実施例2(化合物B3としてサリチル酸が存在し、アミンB1はメタ−キシリレンジアミンである)並びに実施例3.12(化合物B3を有しない)及び3.13(化合物B3としてサリチル酸、アミンB1としてイソホロンジアミン)の硬化剤とを含む、有色素性被覆の腐食抵抗性。
【0033】
有色素性結合剤分散液は、以下の処方を使用して調製した。
【0034】
(登録商標)Beckopox EP 384w/53 WAMP(実施例4と同様に)36.2g、(登録商標)Additol VXW 6208/60(ポリマー性の非イオン性湿潤分散剤、Cytec Surface Specialties Austria GmbH)1.3g、(登録商標)Additol VXW 6393(鉱物油ベースの消泡剤、Cytec Surface Specialties Austria GmbH)0.3g、及び脱イオン水7.4gの混合物を投入すること、二酸化チタン白色色素((登録商標)Kronos 2190、Kronos International Inc.)21.6g、酸化鉄黄色色素((登録商標)Bayferrox 3920、Lanxess Deutschland GmbH)0.25g、酸化鉄黒色色素((登録商標)Bayferrox 306、Lanxess Deutschland GmbH)0.8g、硫酸バリウム((登録商標)EWO、Dr. Rudolf Alberti GmbH & Co.)2.5g、リン酸亜鉛((登録商標)Heucophos ZPO、Heubach GmbH)4.20g、及び微粉化タルク((登録商標)Microtalc IT extra、Norwegian Talc AS)11.3gをそれに添加すること、溶解槽中で約30分間混合物を分散させること、並びにその後さらにエポキシ樹脂分散液10.8g、合体剤(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール−モノイソブチレート、(登録商標)Texanol、Eastman Chemical Company)0.65g、ポリウレタン濃厚剤((登録商標)Additol VXW 6388、 Cytec Surface Specialties Austria GmbH)0.7g、及び脱イオン水2gを添加することで落ち着かせる(letting down)ことにより、有色素性塗料を製造した。この有色素性結合剤分散液の各100gを、実施例2の硬化剤5g(塗料5.1)、実施例3.13の硬化剤5.3g(塗料5.2)、及び比較試験のために実施例3.12の硬化剤4.3g(塗料5.3)と混合した。これらの被覆組成物を、無処理の鋼板((登録商標)Gardobond OC)上に噴霧することにより塗布し、室温(23℃)及び相対湿度50%で7日間乾燥し、50μm〜60μmの乾燥膜厚をもたらした。これらをEN ISO 9227(NSS試験)に従って塩噴霧試験で処理し、各試料を中心のキズ(scratch)の有無で試験した。表面の外観を、EN ISO 4628に従って評価した。
【0035】
結果を表2に列挙する。
【0036】
表2 塩噴霧試験
【表2】

OK:気泡なし
p:部分的に
rp:錆点
delam.:完全な剥離
【0037】
特に化合物B3としての他の芳香族ヒドロキシカルボン酸に関しても、同様に好ましい結果が得られた。この表から見ることができるように化合物B3の添加は、腐食抵抗性を顕著に向上させ、損傷までの時間を延長するが、硬化剤中のアミン成分の性質はこれとの関連では重要ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均して1分子当たり少なくとも1つのエポキシ基を有する水分散性エポキシ樹脂Aと、水溶性又は水分散性硬化剤Bとを含む水性エポキシ樹脂系ABであって、該硬化剤Bは、少なくとも1つの第一級アミノ基及び/又は少なくとも1つの第二級アミノ基を有するアミンB1と、ポリアルキレンエーテルポリオールB21及びエポキシド成分B22の付加物B2と、ヒドロキシル基及びカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸性基を有する芳香族化合物B3との反応生成物を含む、水性エポキシ樹脂系AB。
【請求項2】
前記水分散性エポキシ樹脂Aが、平均して1分子当たり少なくとも2つのエポキシ基を有する、請求項1に記載の水性エポキシ樹脂系AB。
【請求項3】
前記芳香族化合物B3が少なくとも2つの酸性基を有し、そのうち少なくとも1つがヒドロキシル基である、請求項1に記載の水性エポキシ樹脂系AB。
【請求項4】
前記芳香族化合物B3が少なくとも2つの酸性基を有し、そのうち少なくとも1つがヒドロキシル基であり1つがカルボキシル基である、請求項1に記載の水性エポキシ樹脂系AB。
【請求項5】
前記芳香族化合物B3がサリチル酸である、請求項1に記載の水性エポキシ樹脂系AB。
【請求項6】
前記アミンB1がジプライマリージアミンである、請求項1に記載の水性エポキシ樹脂系AB。
【請求項7】
前記水分散性硬化剤Bが1g当たり120mg〜300mgのアミン価を有する、請求項1に記載の水性エポキシ樹脂系AB。
【請求項8】
請求項1に記載の水分散性硬化剤Bを調製する方法であって、
ルイス酸又はその錯塩を触媒として使用してポリアルキレンエーテルポリオールB21及びエポキシ樹脂又はエポキシ化合物B22の付加物B2を調製する工程と、
前記芳香族化合物B3が溶解している前記アミンB1にB2を添加する工程であって、好ましくはこれらのエポキシ基の少なくとも90%、より好ましくはB2のエポキシ基の少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%を消費することにより、該アミンB1のアミノ基がB2のエポキシ基と反応する、添加する工程と、
任意に、残存するアミンB1と高温で反応してポリアミド又はアミドオリゴマーを形成する脂肪族ポリカルボン酸B4を添加する工程と、
前記反応により生成した水を、好ましくは共沸蒸留により除去する工程と、
任意に、モノエポキシ化合物又はモノエポキシ化合物の混合物B5を添加する工程と、
任意に、ポリアミン、好ましくはジアミンB6を添加する工程と、
任意に、得られた生成物を酸で中和する工程であって、前記アミノ基の少なくとも20%をそれぞれ陽イオンに変換する、中和する工程と、
前記任意に中和した反応生成物を水中に分散する工程と、
任意に、さらに水を添加する工程であって、固体の質量分率を40%〜80%に調整する、さらに水を添加する工程と、
を含む、水分散性硬化剤Bを調製する方法。
【請求項9】
請求項1に記載の水性エポキシ樹脂系ABを調製する方法であって、水分散性硬化剤Bが請求項8に記載の方法により製造され、該水分散性硬化剤Bが1kg当たり0.5モル〜10モルの特定のエポキシド基含有量を有するエポキシ樹脂Aの水溶液若しくは分散液に混和されるか、又は前記硬化剤Bの水性分散液が投入され、前記エポキシ樹脂Aが該硬化剤の該分散液中で乳化される、水性エポキシ樹脂系ABを調製する方法。
【請求項10】
ベース金属基板の被覆のために請求項1に記載の水性エポキシ樹脂系を使用する方法であって、ローラーで塗ること、ブラシで塗ること、又は噴霧することにより、該エポキシ樹脂系を前記基板に適用することを含む、使用する方法。

【公表番号】特表2010−535259(P2010−535259A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518645(P2010−518645)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059898
【国際公開番号】WO2009/016162
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(505456584)サイテク サーフェィス スペシャルティーズ オーストリア ゲーエムベーハー (16)
【Fターム(参考)】