説明

エポキシ樹脂硬化剤組成物及び前記硬化剤組成物を含むエポキシ樹脂組成物

(i)少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物及び(ii)アミノアルコールの反応生成物を含むエポキシ樹脂硬化剤組成物;前記エポキシ樹脂硬化剤組成物及び少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物を含むエポキシ樹脂組成物;並びに前記エポキシ樹脂硬化剤組成物の粒子及び少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物の粒子を含む粉体コーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物の分野に属する。更に具体的には、本発明はエポキシ樹脂、特に粉体コーティング用途において有用なエポキシ樹脂の硬化又はキュアリング用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、高い耐化学攻撃性及び種々の基材(substrate)への良好な接着性のような、それらの物理的及び化学的性質により、コーティングの作成において有用である。エポキシ樹脂は、例えば有機溶液又は水溶液から種々の異なる基材上に適用するか又は粉体の形態で適用して、加熱によってフィルムコーティング(film coating)に硬化させることができる。
【0003】
従来、エポキシ樹脂を用いる粉体コーティングを製造する際には、固体エポキシ樹脂の粒子が、前記エポキシ樹脂のエポキシ基と共に拡散し且つそれと反応して硬質熱硬化コーティングを形成する、1つ若しくはそれ以上の反応性フェノール性ヒドロキシル基又は1つ若しくはそれ以上のアミン基を含む化合物のような硬化剤の粒子とブレンドされている。例えばエポキシ樹脂粉体コーティングは、固体エポキシ樹脂の粒子と1つより多いフェノール性ヒドロキシ基を有する固体エポキシ樹脂硬化剤組成物の粒子及び適当な促進剤又は触媒との混合物を基材に適用し、続いてコーティングされた基材を加熱してエポキシ含有成分とフェノール性ヒドロキシル含有成分とを反応させることによって、適当な基材上でその場で(in situ)作成されている。必要に応じて、この混合物は染料、顔料及び流れ調整剤を含むこともできる。
【0004】
前記エポキシ樹脂組成物から作成されたコーティングの基材への接着性は一般に充分なものであるが、軟鋼基材のような種々の金属基材への硬化エポキシ樹脂コーティングの接着性は、コーティングされた基材が高湿条件に供される場合には、特許文献1〜5に開示されたような、エポキシ樹脂組成物への種々の化学的改質を用いることによって改善されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−24762号公報
【特許文献2】特開平02−105817号公報
【特許文献3】米国特許第4,678,712号
【特許文献4】米国特許第7,001,938号
【特許文献5】米国特許出願第2004/0147690号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当業界における前記進歩にもかかわらず、コーティングされた基材が湿潤条件に供される場合の、軟鋼基材のような種々の金属基材への硬化エポキシ樹脂コーティングの接着性及び加工の経済的側面は依然として更なる改善を要する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題に対する解決手段を提供する。本発明のエポキシ樹脂硬化剤組成物の使用は、例えば鋼基材への硬化エポキシ樹脂コーティングの接着性を改善する。本発明のエポキシ樹脂硬化剤組成物は比較的低い温度でも使用できる。
【0008】
更に具体的には、本発明は、(i)少なくとも1つの隣接(vicinal)エポキシ基を有する化合物並びに(ii)アミノアルコールの反応生成物を含んでなる硬化剤組成物である。
【0009】
関連態様において、本発明は、(a)少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物及びアミノアルコールの反応生成物;並びに(b)少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物を含んでなるエポキシ樹脂組成物である。
【0010】
更に、別の関連態様において、本発明は、(a)少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物及びアミノアルコールの反応生成物の粒子;並びに(b)少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物の粒子を含んでなるエポキシ樹脂粉体コーティング組成物である。
【0011】
更に別の関連態様において、本発明は、(a)少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物及びアミノアルコールの反応生成物;並びに(b)少なくとも1つの隣接イソシアネート基を有する化合物を含んでなるイソシアネート樹脂溶剤非含有組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特に断らない限り、化合物又は成分への言及は、その化合物又は成分自体、及び化合物の混合物のような、その化合物又は成分と他の化合物又は成分との組合せを含む。
【0013】
本明細書中で使用する単数形(a,an及びthe)は、前後関係からそうでないことが明白に示されない限り、複数の指示物を含む。
【0014】
特に断らない限り、本明細書及び「特許請求の範囲」において使用する成分の量、反応条件などを表す全ての数値は、あらゆる場合において用語「約」によって修飾されるものと理解すべきである。従って、そうでないことが示されない限り、以下の明細書及び添付した「特許請求の範囲」中に記載した数値パラメーターは、本発明が得ようとする目的の性質によって異なり得る近似値である。最低限でも、また特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとする意図と見なされないように、各数値パラメーターは、報告した有効数字の数及び通常の丸め手法を考慮に入れて解釈しなければならない。
【0015】
更に、本明細書内における数値範囲の列挙は、その範囲内の全ての数値及び範囲の開示と見なす。例えば、範囲が約1〜約50であるならば、例えば1,7、34、46.1、23.7又はその範囲内の任意の他の値若しくは範囲を含むものと見なす。
【0016】
本明細書中に示した詳細は、例証として且つ本発明の態様の事例的解説のみを目的として記載し、本発明の原則及び概念的態様の最も有用で理解し易い説明と考えられるものを提供するために示す。この点に関しては、本発明の基本的理解に必要とされるより詳しく本発明の態様を示すことはしないが、本明細書中の説明から、本発明のいくつかの形態を実際に具体化できる方法が当業者に明らかになる。
【0017】
一態様において、本発明は、(i)少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物及び(ii)アミノアルコールの反応生成物を含んでなるエポキシ樹脂硬化剤として有用な組成物である。
【0018】
エポキシ樹脂硬化剤組成物
エポキシ樹脂硬化剤組成物の成分(i)は、任意の周知エポキシ樹脂であることができる。本明細書中で使用する用語「エポキシ樹脂」は、分子当たり1つ又はそれ以上の隣接エポキシ基、即ち分子当たり少なくとも1つの1,2−エポキシ基を有する組成物を意味する。一般に、エポキシ樹脂化合物は、少なくとも1つの1,2−エポキシ基を有する飽和又は不飽和脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式化合物であることができる。このような化合物は、所望ならばハロゲン原子、ヒドロキシ基、エーテル基、低級アルキル基などのような1つ又はそれ以上の非干渉性置換基で置換されることができる。
【0019】
本発明において有用なエポキシ樹脂はモノエポキシド、ジエポキシド、ポリエポキシド又はそれらの混合物を含むことができる。本発明の実施に際して有用な化合物の例は、McGraw-Hill(New York)によって1967年に発行されたthe Handbook of Epoxy Resins(H.E.Lee and K.Neville);及び米国特許第4,066,628号に記載されており、これらの参考文献を引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0020】
少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物は2つの隣接エポキシ基を含む化合物を含むことができる。例えば本発明の実施に際して使用できる特に有用な化合物は、下記式;
【0021】
【化1】

【0022】
(式中、nは一般に0又はそれ以上、好ましくは0〜約100、より好ましくは約0.1〜約50の平均値を有する。)
を有するエポキシ樹脂である。
【0023】
本発明において有用なエポキシ樹脂は、例えば多価フェノール類及び多価アルコール類のグリシジルポリエーテルを含むことができる。本発明の実例としては、本発明において使用できる既知のエポキシ樹脂の例は、例えばレソルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK、テトラブロモビスフェノールA、フェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂、アルキル置換フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、クレゾール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン置換フェノール樹脂、テトラメチルビフェノール、テトラメチル−テトラブロモビフェノール、テトラメチルトリブロモビフェノール、テトラクロロビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びそれらの組合せなどである。
【0024】
本発明において特に有用なジエポキシドの例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(一般にビスフェノールAと称される)のジグリシジルエーテル及び2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(一般にテトラブロモビスフェノールAと称される)のジグリシジルエーテルが挙げられる。任意の2種又はそれ以上のジエポキシドの混合物も本発明の実施に際しても使用できる。
【0025】
本発明の実施に際して使用できる他のジエポキシドとしては、米国特許第5,246,751号、第5,115,075号、第5,089,588号、第4,480,082号及び第4,438,254号(これら全てを、引用によって本明細書中に組み入れる)に記載されたような二価フェノール類のジグリシジルエーテル;又は米国特許第5,171,820号(引用することによって本明細書中に組み入れる)に記載されたようなジカルボン酸のジグリシジルエステルが挙げられる。他の適当なジエポキシドには、例えばThe Dow Chemical Companyから入手可能な、D.E.R.(登録商標)300及び600系エポキシ樹脂として商業的に知られるもののようなαω−ジグリシジルオキシイソプロピリデン−ビスフェノール系エポキシ樹脂がある。
【0026】
本発明の実施に際して使用できるエポキシ樹脂は、二価フェノール類のジグリシジルエーテルと二価フェノール類との反応によって、又は二価フェノール類とエピクロロヒドリンとの反応によって、製造されるエポキシ樹脂(「タフィー(taffy)樹脂」としても知られる)も含む。
【0027】
本発明において有用な好ましいエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA;4,4’−スルホニルジフェノール;4,4−オキシジフェノール;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン;レソルシノール;ヒドロキノン;9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン;4,4’−ジヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジヒドロキシ−α−メチルスチルベンのジグリシジルエーテル及び前述したジカルボン酸のジグリシジルエステルが挙げられる。
【0028】
本発明の実施に際して使用できる他の有用なエポキシ化合物は脂環式エポキシドである。脂環式エポキシドは、例えば下記一般式:
【0029】
【化2】

【0030】
(式中、Rは、任意的に1つ若しくはそれ以上のヘテロ原子(例えばCl、Br及びS(これらに限定するものではないが))又は炭素と安定な結合を形成する原子若しくは原子団(例えばSi、P及びB(これらに限定するものではないが))を含む炭化水素基、であり、nは1又はそれ以上である)
によって示されるような、炭素環中の2つの隣接原子にエポキシ酸素が結合した飽和炭素環からなる。
【0031】
脂環式エポキシドはモノエポキシド、ジエポキシド、ポリエポキシド又はそれらの混合物であることができる。例えば米国特許第3,686,359号(引用することによって本明細書中に組み入れる)に記載された脂環式エポキシドのいずれかを本発明に使用できる。実例として、本発明に使用できる脂環式エポキシドには例えば(3,4−エポキシシクロヘキシル−メチル)−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビニルシクロヘキセン一酸化物及びそれらの混合物がある。
【0032】
前記エポキシ樹脂硬化剤組成物の成分(ii)は、任意の周知のアミノアルコールであることができる。一般に、本発明において有用なアミノアルコールは、好ましくは第一アミン基であるアミン基を含む。しかし、第二アミン基を含むアミノアルコールも本発明において有用である。アミノアルコールは好ましくはアミノポリオールである。
【0033】
例えば本発明において有用なアミノアルコールは、モノエタノールアミン;2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール;2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール;ジエタノールアミン及びそれらの混合物からなる群から選ぶことができる。好ましくは2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを本発明において使用する。
【0034】
本発明の硬化剤樹脂組成物は、一般に、(アミノアルコールのアミン基)対(少なくとも1つの隣接エポキシ基を有するエポキシ樹脂化合物のエポキシ基)のモル比が約25:1〜約1:1、好ましくは約10:1〜約1:1、より好ましくは約5:1〜約1:1、更に好ましくは約3:1〜約1:1、最も好ましくは約2:1〜約1:1の範囲となる量の成分(i)及び成分(ii)を含む。
【0035】
本発明の得られる樹脂硬化剤組成物は、有利なことに、約30〜約150℃の軟化点を有するので、種々の化合物との併用及び種々の用途への使用が可能である。
【0036】
例えば本発明の樹脂硬化剤組成物は、エポキシ−、イソシアネート−、カルボン酸−、ビニル−及びアクリル酸−官能性樹脂から選ばれた1種又はそれ以上の化合物に対して硬化剤として有用であることができる。
【0037】
本発明の一態様において、本発明の樹脂硬化剤組成物は、残留ビスフェノールAを含まず、発泡を引き起こさず且つこの組成物中に高分子量アルカノールアミンを使用する場合には揮発分をそれほど含まない組成物を含んでなる。例えば高分子量アルカノールアミンの分子量は約150〜約10,000Daであることができる。
【0038】
別の態様において、本発明の樹脂硬化剤組成物は、水分散性組成物を含んでなる。水分散性組成物は、溶剤を使用せずにエポキシ樹脂を乳化させるのに有用であることもできる。
【0039】
本発明の樹脂硬化剤組成物は、例えばコーティング用途、接着剤用途又は複合材料用途を含む種々の用途に使用できる。1つの特定の態様において、樹脂硬化剤は熱硬化エポキシコーティングに使用できる。
【0040】
更に別の態様において、本発明の樹脂硬化剤組成物は、約300〜約10,000Daの分子量を有する高分子量エポキシ樹脂であるエポキシ樹脂のための架橋剤として使用できる。この場合、樹脂硬化剤組成物は溶剤又は分散系がなくても配合でき、また、ホルムアルデヒド非含有であることができる。
【0041】
エポキシ樹脂組成物
一般に、典型的なエポキシ樹脂組成物は、1種又はそれ以上のエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を含む。エポキシ樹脂硬化剤はエポキシ樹脂と反応して(しばしば高温で)、硬化エポキシ樹脂を生成する。先行技術のエポキシ樹脂硬化剤には、例えば脂肪族及び芳香族アミン系硬化剤並びにフェノール系硬化剤などがある。エポキシ樹脂組成物は、任意の所定の温度においてエポキシ樹脂組成物とエポキシ樹脂硬化剤との反応の速度を増加させるために、触媒又は「反応促進剤」、例えば2−メチルイミダゾールを含むことも多い。
【0042】
本発明の一態様は、(a)(i)少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物及び(ii)アミノアルコールとの反応生成物を含むエポキシ樹脂硬化剤、並びに(b)少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物を含んでなる熱硬化性エポキシ樹脂組成物を含む。
【0043】
エポキシ樹脂組成物の成分(a)である反応生成物は、(i)少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物と(ii)アミノアルコールとの反応生成物を含む前記エポキシ樹脂硬化剤組成物であることができる。
【0044】
エポキシ樹脂組成物の成分(a)の製造に有用な少なくとも1つの隣接エポキシ基
を有する化合物、成分(i)は、エポキシ樹脂硬化剤組成物に関して前述したエポキシ樹脂のいずれかであることができる。
【0045】
エポキシ樹脂組成物の成分(a)の製造に有用なアミノアルコール、成分(ii)は、エポキシ樹脂硬化剤組成物に関して前述したアミノアルコールのいずれかであることができる。
【0046】
エポキシ樹脂組成物の製造に使用できる少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物である成分(b)は、前記エポキシ樹脂硬化剤組成物に関して、前述したエポキシ樹脂の任意の1種又はそれ以上であることができる。エポキシ樹脂成分(b)はエポキシ樹脂成分(i)と同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、任意的な成分、例えば本発明のエポキシ樹脂硬化剤組成物に加えて、それとは異なる当業者によく知られた共硬化剤(co-curing agent)(補助硬化剤(co-hardener))を含むことができる。本発明において有用な共硬化剤は、エポキシ樹脂と反応して、硬化最終生成物を形成することが当業者に知られている化合物である。一態様において、本発明のエポキシ樹脂組成物は更に共硬化剤を含む。
【0048】
本発明において有用な共硬化剤の例としては、例えばジシアンジアミド、DDS、DMAのようなアミノ化合物、フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、クレゾールノボラックのようなフェノール系硬化剤並びにD.E.H.85、D.E.H.87及びD.E.H.90のような二官能価フェノール系硬化剤が挙げられる。
【0049】
一態様において、本発明の組成物に使用する共硬化剤は少なくとも1つのフェノール性ヒドロキシ官能価を有する少なくとも1種の硬化剤、少なくとも1つのフェノール性ヒドロキシル官能価を発生する硬化剤化合物又はそれらの混合物を含む。好ましくは、共硬化剤はフェノール性ヒドロキシル官能価を有する化合物又は化合物の混合物である。
【0050】
フェノール性ヒドロキシル官能価を有する化合物(フェノール系共硬化剤)の例には、分子当たり平均1つ又はそれ以上のフェノール基を有する化合物がある。適当なフェノール共硬化剤としては、ジヒドロキシフェノール類、ビフェノール類、ビスフェノール類、ハロゲン化ビフェノール類、ハロゲン化ビスフェノール類、アルキル化ビフェノール類、アルキル化ビスフェノール類、トリスフェノール類、フェノール−アルデヒド樹脂、フェノール−アルデヒドノボラック樹脂、ハロゲン化フェノール−アルデヒドノボラック樹脂、置換フェノール−アルデヒドノボラック樹脂、フェノール−炭化水素樹脂、置換フェノール−炭化水素樹脂、フェノール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、アルキル化フェノール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、炭化水素−フェノール樹脂、炭化水素−ハロゲン化フェノール樹脂、炭化水素−アルキル化フェノール樹脂又はそれらの組合せが挙げられる。好ましくは、フェノール系共硬化剤としては、置換又は非置換のフェノール類、ビフェノール類、ビスフェノール類、ノボラック又はそれらの組合せが挙げられる。
【0051】
本発明の共硬化剤は、例えばフェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA及びそれらの混合物から選ばれることができる。
【0052】
共硬化剤は、米国特許第6,645,631号の4欄,第57行−第67行〜6欄,第1行−第57行(引用することによって本明細書中に組み入れる)に記載された多官能価フェノール系架橋剤のいずれかを含むこともできる。
【0053】
フェノール性ヒドロキシル官能価を発生できる共硬化剤の例はモノマー及びオリゴマーのベンゾオキサジン及びポリベンゾオキサジンなどである。本明細書中で使用する「発生(する)(generating)」とは、共硬化剤化合物の加熱時に共硬化剤化合物が共硬化剤として働くフェノール性ヒドロキシル官能価を有する別の化合物に変わることを意味する。このヒドロキシル官能価は、更に、前に定義したフェノール系共硬化剤と同様にエポキシ樹脂と反応できる。共硬化剤の例は、また、加熱時にフェノール系架橋剤を形成する化合物、例えば米国特許第6,645,631号(引用することによって本明細書中に組み入れる)に記載されたような、ベゾオキサジン類(beozoxazines)の加熱により得られる種を含むことができる。このような成分の例には、また、フェノールフタレインのベンゾオキサジン、ビスフェノールAのベンゾオキサジン、ビスフェノールFのベンゾオキサジン、フェノールノボラックのベンゾオキサジンなどが挙げられる。前述したこのような化合物の混合物も使用できる。
【0054】
別の態様においては、フェノール性ヒドロキシル官能価を含まないか又はフェノール性ヒドロキシル官能価を発生できる1種又は数種の共硬化剤が、本発明のエポキシ樹脂組成物中に存在することができる。このような共硬化剤としては、例えばアミン及びジシアンジアミドのようなアミノ含有化合物、並びにスチレン無水マレイン酸ポリマーのようなカルボン酸及びカルボン酸無水物、更にそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0055】
好ましくは、本発明の硬化剤組成物対共硬化剤のモル比(このモル比は、エポキシドと反応することができる活性基に基づいて計算する)は約100〜約50%、好ましくは約50〜約0.1%、より好ましくは約20〜約0.5%、更に好ましくは約100〜約0%である。好ましくは、本発明の硬化剤組成物対共硬化剤の重量比は約100〜約50%、より好ましくは約50〜約1%、更に好ましくは約20〜約1%、最も好ましくは約100〜0%である。
【0056】
エポキシ樹脂に対する、本発明の硬化剤組成物対エポキシ樹脂の比は好ましくは、完全に硬化された樹脂を生成するのに充分なものである。存在できる本発明の硬化剤組成物の量はさまざまであることができる。一実施態様において、成分(b)のエポキシ樹脂のエポキシ基と、成分(a)の本発明の硬化剤組成物の反応性水素基とのモル比は、約2〜約0.5、好ましくは約1.5〜約1、より好ましくは約1.3〜約1である。共硬化剤を本発明の硬化剤組成物と併用する場合には、前記モル比は、硬化剤組成物と共硬化剤の組合せに基づく必要がある。
【0057】
本発明のエポキシ樹脂組成物中には、触媒とも称する反応促進剤を任意選択で使用できる。反応促進剤は、エポキシ樹脂と本発明の硬化剤組成物(及び/又は存在する場合には共硬化剤)との反応を触媒する化合物を含む。一態様において、本発明のエポキシ樹脂組成物は更に反応促進剤を含む。
【0058】
例えば、本発明において有用な反応促進剤としては、アミン、ホスフィン、複素環窒素、アンモニウム、ホスホニウム、アルソニウム又はスルホニウム部分を含む化合物及びそれらの混合物が挙げられる。より好ましくは、反応促進剤は複素環窒素及びアミン含有化合物であることができ、更に好ましくは反応促進剤は複素環窒素含有化合物である。反応促進剤として有用な複素環窒素含有化合物としては、複素環式第二及び第三アミン又は窒素含有化合物、例えばイミダゾール類、イミダゾリジン類、イミダゾリン類、二環式アミジン類、オキサゾール類、チアゾール類、ピリジン類、ピラジン類、モルホリン類、ピリダジン類、ピリミジン類、ピロリジン類、ピラゾール類、キノキサリン類、キナゾリン類、フタラジン類、キノリン類、プリン類、インダゾール類、インダゾリン類、フェナジン類、フェナルサジン類、フェノチアジン類、ピロリン類、インドリン類、ピペリジン類、ピペラジン類並びに第四アンモニウム、ホスホニウム、アルソニウム又はスチボニウム、第三スルホニウム、第二インドニウム、更に他の関連「オニウム」塩又は塩基、第三ホスフィン類、アミンオキシド類、またそれらの組合せが挙げられる。本発明において使用できるイミダゾール類としては、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなど;及びそれらの混合物が挙げられる。好ましいイミダゾール類としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾール並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0059】
反応促進剤として使用できる好ましい第三アミンには、アミン水素の全てが適当な置換基、例えば炭化水素基、好ましくは脂肪族、脂環式又は芳香族基で置換されている開鎖又は環状構造を有するモノアミン又はポリアミンがある。これらのアミンの例としては、特に、メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジル−ジメチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、ピリジン、キノリンなど;及びそれらの混合物が挙げられる。好ましいアミンは、トリアルキル及びトリシクロアルキルアミン、例えばトリエチルアミン、トリ(2,3−ジメチルシクロヘキシル)アミン、並びにアルキルジアルカノールアミン、例えばメチルジエタノールアミン及びトリアルカノールアミン、例えばトリエタノールアミンである。弱第三アミン、水溶液中で10未満のpHを生じるアミンが特に好ましい。とりわけ好ましい第三アミン反応促進剤はベンジルジメチルアミン及びトリス−(ジメチルアミノメチル)フェノールである。
【0060】
本発明において使用するイミダゾリン類としては、2−メチル−2−イミダゾリン、2−フェニル−2−イミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、4,4−ジメチル−2−イミダゾリン、2−ベンジル−2−イミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリンなど;及びそれらの混合物が挙げられる。
【0061】
任意的に、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、更に、特に粉体コーティングを製造するためのエポキシ樹脂組成物中に典型的に使用される、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物又はそれから得られる最終硬化生成物の性質又は性能に悪影響を及ぼさない他の成分を含むことができる。例えばエポキシ樹脂組成物において有用な他の任意的成分としては、強化剤;硬化抑制剤;他の反応促進剤、充填剤;湿潤剤:着色剤;難燃剤、例えば酸化アンチモン、オクタブロモジフェニルオキシド、デカブロモジフェニルオキシド、燐酸;溶剤;熱可塑性樹脂;加工助剤;螢光化合物、例えばテトラフェノールエタン(TPE)又はその誘導体;紫外線遮断化合物;染料;顔料;界面活性剤;流動調整剤(flow modifier);流れ調整剤(flow control agent);粘度調整剤;可塑剤;当業界で知られている、エポキシ樹脂組成物用の添加剤として一般的に使用される他の任意的な添加剤;及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0062】
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用される他の任意的な成分はエポキシ樹脂組成物に目的とする性質をもたらすのに有効な量で使用できる。例えば任意的な成分は一般に、約0.05〜約40重量%の量で使用できる。
【0063】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、例えばコーティング、接着剤及び複合材料を含む種々の用途に使用できる。一態様において、エポキシ樹脂組成物は、アクリル酸類で改質可能なポリマー鎖中にアルカノールアミンを含むことができ、組成物はUV硬化用途に有用であることができる。
【0064】
コーティング組成物として有用であることができる、本明細書中に開示した本発明の硬化性又は硬化可能なエポキシ樹脂組成物は、例えば少なくとも1種のエポキシ樹脂及び本発明の少なくとも1種のエポキシ樹脂硬化剤組成物並びに任意的な共硬化剤を含む前記成分を混合することによって製造できる。
【0065】
硬化性エポキシ樹脂組成物は組成物の成分の全てを任意の順序で一緒に混合することによって製造できる。別法として、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分を含む第1の組成物と硬化剤組成物成分を含む第2の組成物を製造することによって製造できる。エポキシ樹脂組成物の製造において有用な全ての他の成分は同じ組成物中に存在することもできるし、或いは一部が第1の組成物中に、一部が第2の組成物中に存在することもできる。次に、第1の組成物を第2の組成物と混合して、硬化性エポキシ樹脂組成物を形成する。次いで、エポキシ樹脂組成物混合物を硬化させて、エポキシ樹脂熱硬化材料を生成する。好ましくは、硬化性エポキシ樹脂組成物は粉体粒子の形態であり、組成物の成分は基材に適用されて、コーティングされた物品を形成する。
【0066】
粉体コーティング組成物
本発明の別の関連態様において、本発明は、(a)(i)少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物及び(ii)アミノアルコールの反応生成物の粒子;並びに(b)少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物の粒子を含んでなるエポキシ樹脂粉体コーティング組成物である。
【0067】
本発明のエポキシ樹脂硬化剤組成物(キュアリング剤)はエポキシ樹脂と併用することによって硬化性粉体コーティング組成物を形成でき、この硬化性粉体コーティング組成物は任意的に顔料、充填剤、染料及び流れ調整剤のような当業界で知られた補助剤と含むことができる。一態様において、本発明の粉体コーティング組成物は、顔料、充填剤、染料又は流れ調整剤の1種又はそれ以上を含む。
【0068】
本発明の粉体コーティング組成物は、組成物の成分を実質的に均一にブレンドする任意の方法によって製造できる。例えばドライブレンド、セミドライブレンド又は溶融ブレンド操作を使用できる。次いで、ブレンドを微粉砕して、粉体コーティング組成物を形成できる。粉体コーティング組成物の粒子は約300ミクロン以下の粒度を有するであろう。
【0069】
本発明の硬化剤組成物を含むエポキシ樹脂粉体コーティング組成物は、当業界で知られた任意の望ましい粉体コーティング適用法によって基材に適用できる。本発明の粉体コーティング組成物を基材に適用するための適用方法の例には、流動床焼結(FBS)、静電粉体コーティング(EPC)及び静電流動床(EFB)の利用がある。
【0070】
流動床焼結(FBS)法においては、予熱された基材、例えば金属パイプを、空気の流れによって浮遊状態に保たれた粉体コーティング組成物中に浸漬する。コーティングされる基材を所定の温度に、例えば一態様では少なくとも約200℃、別の態様では少なくとも約240℃であるが、一般に一態様では約350℃以下、別の態様では約300℃以下の温度に予熱する。次に、予熱基材を流動床と接触させる(例えばその中に浸漬する)。基材の浸漬時間はとりわけ、目標コーティング厚に左右される。
【0071】
静電粉体塗装(EPC)法において、粉体コーティング組成物は、圧縮空気によってアプリケーター中に吹き込み、通常アプリケーター中で高圧直流によって約30〜100kVの電圧に帯電させ、コーティングすべき基材の表面に噴霧する。次いで、コーティングされた基材を適当なオーブン中で焼き付ける。粉体はその帯電により、低温基材に密着する。別法として、静電気的に帯電した粉体を、パイプのような加熱基材上に噴霧し、基材の予熱によって又は外部熱の助けを借りて硬化させることができる。
【0072】
静電流動床(EFB)法においては、例えば50〜100kVの静電荷を生じるように粉体を含む流動床上に環状又は部分環状電極を取り付けることによって、前記操作を組合せる。基材は粉体コーティングの完全硬化に特有の温度において加熱する。
【0073】
前記コーティング法は、各粉体粒子が、完全硬化及び前記性能特性の達成に必要な成分全てを確実に含むようにするために用いる。
【0074】
本発明の粉体コーティング組成物は、非常に多くの基材にコーティングできる。好ましい基材は金属(例えば鉄、鋼、銅)、特に金属パイプである。本発明の粉体コーティング組成物によってコーティングできる他の材料の例には、セラミック及びガラス材料がある。本発明の粉体コーティング組成物から作成されたコーティングは、例えば高い使用温度(例えば約110℃又はそれ以上)において運転されるパイプラインにコーティング材料として使用できる。
【0075】
本発明の焼結及び非焼結樹脂並びにコーティング組成物はまた、アーマチュア及びステーターを被覆することによって、コイル、変圧器及びモーターを電気的に絶縁するのに使用できる。本発明のコーティング組成物はマグネット線、母線(bus bar)及びトーピッドコア(torpid core)の被覆にも使用できる。とりわけ、前記コーティング組成物は、UL電気絶縁システムの認証を必要とする電気器具の分数馬力電動機(fractional horsepower motor)などの製造業者によって使用されることができる。更に、適切に配合されれば、本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、電気用積層板用途にも使用できる。
【0076】
本発明の代表的な利点を含めて本発明を更によく理解できるように、以下の実施例を記載する。以下の実施例は説明のために記載するのであって、本発明の範囲を特定の材料又は条件に限定するものと見なしてはならないことを理解すべきである。
【0077】
実施例1
反応器中の2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(THMAM)101.4gに、滴下漏斗を用いて市販のビスフェノールAジグリシジルエーテル(DER330銘柄エポキシ樹脂;The Dow Chemical Company)40gをゆっくり加えてスラリーとし、これを168℃に加熱することによって反応させる。得られた撹拌均質混合物に、30分間にわたってDER330銘柄エポキシ樹脂60gを加える。その間、反応器の温度を160℃(設定温度)〜177℃(反応熱による)の間に保持する。その後、温度160℃で更に30分間撹拌して、より完全な反応を確実にする。得られた生成物のガラス転移点は37℃である。この生成物の150℃における溶融粘度は2.1Pa・sである。この生成物の軟化点は81℃である。
【0078】
実施例2
温度172℃の反応器中の2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(THMAM)324.5gに、滴下漏斗を用いて市販のビスフェノールAジグリシジルエーテル(DER330銘柄エポキシ樹脂;The Dow Chemical Company)480gをゆっくり加える。その間、反応器の温度を153〜172℃に保持する。その後、温度150℃で更に30分間撹拌して、より完全な反応を確実にする。得られた生成物のガラス転移点は56℃である。この生成物の150℃における溶融粘度は2.7Pa・sである。この生成物の軟化点は96℃である。13C NMRによって未反応エポキシ基は観察されない。13C NMRによる概算質量分布はBAB 84モル%;B 10モル%; BABAB 6モル%[AはDER330であり、BはTHMAMである]である。
【0079】
実施例3
温度175℃の反応器中の2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(THMAM)167.3gに、滴下漏斗を用いて市販のビスフェノールAジグリシジルエーテル(DER330銘柄エポキシ樹脂;The Dow Chemical Company)333gをゆっくり加える。その間、反応器の温度を156〜178℃に保持する。その後、温度175℃で更に60分間撹拌して、より完全な反応を確実にする。得られた生成物のガラス転移点は78℃である。この生成物の150℃における溶融粘度は131Pa・sである。この生成物の軟化点は134℃である。
【0080】
実施例4
温度172℃の反応器中の2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(THMAM)145gに、滴下漏斗を用いて最初にポリグリコールジグリシジルエーテルを基材とする液体エポキシ樹脂18.5gを、次いで市販のビスフェノールAジグリシジルエーテル(DER330銘柄エポキシ樹脂;The Dow Chemical Company)204.5gをゆっくり加える。その間、反応器の温度を168〜182℃に保持する。その後、温度175℃で更に30分間撹拌して、より完全な反応を確実にする。得られた生成物のガラス転移点は40℃である。この生成物の150℃における溶融粘度は2.4Pa・sである。この生成物の軟化点は91℃である。
【0081】
実施例5
温度165℃の反応器中の2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(THMAM)142gに、滴下漏斗を用いて最初にポリグリコールジグリシジルエーテルを基材とする液体エポキシ樹脂23gを、次いで市販のビスフェノールAジグリシジルエーテル(DER330銘柄エポキシ樹脂;The Dow Chemical Company)200gをゆっくり加える。その間、反応器の温度を160〜181℃に保持する。その後、温度170℃で更に30分間撹拌して、より完全な反応を確実にする。得られた生成物のガラス転移点は49℃である。この生成物の150℃における溶融粘度は4.0Pa・sである。この生成物の軟化点は98℃である。
【0082】
実施例6及び7並びに比較例A
下記表Iに示した成分粉末をブレンドすることによって、3種の粉体コーティング組成物を調製する。
【0083】
【表1】

【0084】
表Iに記載した粉体コーティング組成物を、グリットブラスト鋼パネルに適用し、170℃において3分間硬化させる。適用コーティングは約0.35mmの厚さを有する。コーティングを温水コーティング密着性試験及び陰極剥離試験(CAN/CAS−Z245.20−M92)に供する。これらの試験の結果を下記表IIに示す。
【0085】
【表2】

【0086】
本発明をその好ましい態様に関して前述したが、当業者ならば、本発明はそれによって限定されるのでははく、添付した「特許請求の範囲」によって定義される本発明の範囲内に含まれる全ての代替形態、変更形態及び均等形態を包含するものであることはわかるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物並びに(ii)少なくとも1つのアミノ基及び少なくとも1つのアルコール基を有するアミノアルコールの反応生成物を含んでなる硬化剤組成物。
【請求項2】
前記の少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物のエポキシ基に対する前記アミノアルコールのアミン基のモル比が25:1〜1:1の範囲である請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項3】
前記アミノアルコールのアミン基が第一アミン基である請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項4】
前記アミノアルコールがアミノポリオールである請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項5】
前記アミノアルコールがモノエタノールアミン、2−アミノー2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール及び2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群から選ばれる請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項6】
前記の少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物が、2つの隣接エポキシ基を有する化合物を含む請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項7】
前記の少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物が下記式:
【化1】

(式中、nは0又はそれ以上である)
を有する化合物を含む請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項8】
エポキシ−、イソシアネート−、カルボン酸−、ビニル−及びアクリル酸−官能性樹脂から選ばれた1種又はそれ以上の化合物に対する硬化剤として有用な請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項9】
前記アルカノールアミンの分子量が約150〜約10,000Daである請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項10】
前記組成物が水分散性である請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項11】
前記組成物が約30〜約150℃の軟化点を有する請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項12】
(a)請求項1に記載の反応生成物及び(b)少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物を含んでなるエポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
前記組成物が共硬化剤として固体イソシアネート又はブロックト固体イソシアネートを含む請求項12に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
(a)請求項1に記載の反応生成物の粒子及び(b)少なくとも1つの隣接エポキシ基を有する化合物の粒子を含んでなる粉体コーティング組成物。
【請求項15】
(a)請求項1に記載の反応生成物及び(b)少なくとも1つの隣接イソシアネート基を有する化合物を含んでなるイソシアネート樹脂溶剤非含有組成物。
【請求項16】
前記化合物(b)がイソシアネート、ブロックトイソシアネート又はそれらの混合物である請求項15に記載のイソシアネート樹脂溶剤非含有組成物。

【公表番号】特表2011−510156(P2011−510156A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544364(P2010−544364)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/030170
【国際公開番号】WO2009/094235
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ リミティド ライアビリティ カンパニー (1,383)
【Fターム(参考)】