説明

エポキシ樹脂組成物及びその硬化物

【課題】脂肪族炭化水素を主成分とする溶剤に可溶で、作業性、密着性、耐食性に優れるポリアミドアミン硬化剤とそれを用いたエポキシ樹脂組成物およびその硬化物を提供すること。
【解決手段】ポリエチレンポリアミン(a1)と脂肪族モノカルボン酸(a2)と芳香族モノカルボン酸(a3)とを反応させて得られるポリアミドアミン硬化剤であり、脂肪族モノカルボン酸(a2)と芳香族モノカルボン酸(a3)とをモル比〔(a2)/(a3)〕で2/1〜6/1となる範囲で用いて得られることを特徴とするポリアミドアミン硬化剤、該硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物及び該組成物の硬化物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族炭化水素を主成分とする溶剤に可溶で、かつ作業性、密着性、耐食性に優れるポリアミドアミン硬化剤、それを用いたエポキシ樹脂組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
アミン系硬化剤とエポキシ樹脂を含有する組成物は、金属及び無機基材を被覆及び表面処理するため、接着剤及びシーラントとして、マトリクス樹脂として、工具材樹脂として、あるいは、極めて一般的に、成形品又はシート状の構造物を製造するための注型樹脂として、産業界で広く使用されている。用いられるアミン系硬化剤としては、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミドアミン等が挙げられる。
【0003】
アミン系硬化剤の中でも、ポリアミドアミンは一般に粘度が高く、ポリアミドアミンを含有するエポキシ樹脂組成物は作業性が良いとは言えない。しかしながら、該エポキシ樹脂組成物の硬化物は金属や無機基材との接着性や防食性に優れ、また、柔軟性も良好なことから硬化物の硬化収縮も少ないという利点を有する。
【0004】
作業性に優れるエポキシ樹脂組成物が得られ、かつ強度にも優れる硬化物が得られる組成物が得られるポリアミドアミンとして、例えば、芳香族モノカルボン酸1当量あたり1:0.2〜1.5当量の脂肪族モノカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸1当量あたり1:0.1〜0.6当量のモノカルボン酸および酸全体1当量あたり0.8〜1.3:1モルのポリアミン全体の比率で反応させて得られるポリアミドアミンが開示されている(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
該特許文献1には、該ポリアミドアミン硬化剤は低い粘度を有する硬化剤として開示されている。しかしながら、該硬化剤はジカルボン酸を用いて得られている為、分子量が大きくなり、その結果、低粘度とはいえ橋梁などの補修に用いる注入用接着材や塗料など、より低い粘度が要求される分野における要求を十分に満足できない。
【0006】
また、アミン系硬化剤とエポキシ樹脂は、通常、有機溶剤にアミン系硬化剤とエポキシ樹脂とを溶解して組成物としている。しかしながら、上記のアミン系硬化剤やエポキシ樹脂は一般的に溶剤溶解性に劣り、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等に代表される低引火点、低沸点、有毒性の強い溶剤を用いざるをえない。その為、臭気が強く、作業環境が良好でない問題がある。
【0007】
ミネラルスピリットなど、臭気が少なく作業環境を汚染しにくい脂肪族炭化水素系有機溶剤への溶剤溶解性に優れる樹脂組成物として、例えば、炭素原子数4〜18の脂肪族炭化水素基を芳香核上の置換基として有するノボラック型エポキシ樹脂と、ポリアミド樹脂とを含有する樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、特許文献2に開示されている樹脂組成物は用いられている硬化剤(ポリアミドアミン)の粘度が高く、粘度が低く塗布しやすい樹脂組成物をえるには多量の有機溶剤で希釈せざるを得ず、固形分含有量を高めた樹脂組成物を得るのは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−226437(第2頁)
【特許文献2】特開平9−12678(第2頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、脂肪族炭化水素を主成分とする溶剤に可溶で、作業性、密着性、耐食性に優れるポリアミドアミン硬化剤とそれを用いたエポキシ樹脂組成物およびその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、ポリアミドアミン硬化剤を得るにあたり、前記特許文献1に記載された範囲を超えて多量に脂肪族モノカルボン酸を用いる、具体的には、芳香族モノカルボン酸と脂肪族モノカルボン酸とをモル比で1:2〜1:6と引用文献1に記載された範囲を超えて用いることにより粘度が低いポリアミドアミン硬化剤が得られること、該ポリアミドアミン硬化剤はミネラルスピリットなど、脂肪族炭化水素を主成分とする弱溶剤への溶解性が良好なこと、該ポリアミドアミンをアルキルフェノール変性エポキシ樹脂と組み合わせて用いる事により、作業性、密着性、耐食性に優れるエポキシ樹脂組成物を得られること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、ポリエチレンポリアミン(a1)と脂肪族モノカルボン酸(a2)と芳香族モノカルボン酸(a3)とを反応させて得られるポリアミドアミン硬化剤であり、脂肪族モノカルボン酸(a2)と芳香族モノカルボン酸(a3)とをモル比〔(a2)/(a3)〕で2/1〜6/1となる範囲で用いて得られるポリアミドアミン硬化剤(A)と、炭素原子数4〜18の脂肪族炭化水素基を芳香核上の置換基として有するノボラック型エポキシ樹脂(B)と、脂肪族炭化水素系有機溶剤(C)とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記エポキシ樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化物を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、脂肪族炭化水素を主成分とする溶剤に可溶で、低粘度で作業性に優れるエポキシ樹脂組成物およびその硬化物を提供することができる。そして、本発明のエポキシ樹脂組成物は脂肪族炭化水素を主成分とする溶剤に溶解している組成物のため、この組成物を既に塗膜が形成してある基材に補修用塗料として該塗膜の上に重ね塗りしても古い塗膜がリフティングを起こしにくい。よって本発明のエポキシ樹脂組成物は特に、塗料用途として特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を以下に詳細に説明する。本発明のポリアミドアミン硬化剤はポリエチレンポリアミン(a1)と脂肪族モノカルボン酸(a2)と芳香族モノカルボン酸(a3)とを反応させて得られるポリアミドアミン硬化剤であり、脂肪族モノカルボン酸(a2)と芳香族モノカルボン酸(a3)とをモル比〔(a2)/(a3)〕で2/1〜6/1となる範囲で用いて得られることを特徴とする。脂肪族モノカルボン酸(a2)と芳香族モノカルボン酸(a3)とをモル比〔(a2)/(a3)〕が2より小さくなるように反応させた場合、得られる硬化物の強度が十分でない硬化剤となることから好ましくない。脂肪族モノカルボン酸(a2)と芳香族モノカルボン酸(a3)とをモル比〔(a2)/(a3)〕が6より大きくなるように反応させた場合、粘度が低いエポキシ基樹脂組成物を得にくいことから好ましくない。本発明のポリアミドアミン硬化剤は低粘度のエポキシ樹脂組成物が得られ、且つ、該組成物の硬化物が高強度が硬化物となることから脂肪族モノカルボン酸(a2)と芳香族モノカルボン酸(a3)とをモル比〔(a2)/(a3)〕で3/1〜5/1となる範囲で用いて得られるポリアミドアミン硬化剤がより好ましい。
【0015】
本発明で用いるポリエチレンポリアミン(a1)は、例えば、下記式で表されるポリエチレンポリアミンを好ましく用いることができる。
NH(CNH)H・・・(1)
〔前記nは1以上である。〕
【0016】
ポリエチレンポリアミン(a1)としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘプタエチレンオクタミン、オクタエチレンノナミン、ノナエチレンデカミン等が挙げられる。
【0017】
また、ポリエチレンポリアミン(a1)として、例えば、ピペラジンあるいは、炭素原子数が2〜6のアルキル鎖を有するN−アミノアルキルピペラジン等も挙げられる。
【0018】
本発明で用いるポリエチレンポリアミン(a1)の中でも、高粘度化しにくいポリアミドポリアミン硬化剤が得られることから前記式(1)中のnが6〜8のポリエチレンポリアミンが好ましく、テトラエチレンペンタミンがより好ましい。更に、臭気の少ないポリアミドアミン硬化剤が得られることからヘキサエチレンヘプタミンがより好ましい。
【0019】
本発明で用いる脂肪族モノカルボン酸(a2)としては、例えば、炭素原子数18〜50のモノカルボン酸が挙げられる。前記モノカルボン酸としては、例えば、リノール酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸等が挙げられる。また、これらを含む天然脂肪酸としてはトール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、桐油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、やし油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられる。
【0020】
脂肪族モノカルボン酸(a2)は、反応後に得られるポリアミドアミン硬化剤が高粘度化するのを防ぐことができることから炭素原子数18〜36の脂肪族モノカルボン酸が好ましく、炭素原子数18の脂肪族モノカルボン酸がより好ましい。更に、脂肪族モノカルボン酸酸(a2)はオレイン酸とリノール酸を主成分とするトール油脂肪酸が特に好ましい。
【0021】
本発明で用いる芳香族モノカルボン酸(a3)は、はカルボン酸基一つとベンゼン環少なくとも一つとを含み、カルボン酸基がベンゼン環に直接結合している化合物である。酸がベンゼン環を二つ含む場合、これらは互いに直接結合してよく、あるいは酸素原子またはメチレン基のような長さの短い結合基を介して結合してもよい。芳香族モノカルボン酸としては、例えば、安息香酸、サリチル酸、ナフトエ酸並びに、芳香族環上に一つまたは二つのアルキル鎖があり、アルキル鎖が1〜約4個の炭素原子を有するアルキル置換された様々な安息香酸およびナフトエ酸等が挙げられる。芳香族モノカルボン酸(a3)は、粘度と硬化物強度とのバランスに優れるエポキシ樹脂組成物が得られることから安息香酸が好ましい。
【0022】
本発明のポリアミドアミン硬化剤は、例えば、ポリエチレンポリアミン(a1)と脂肪族モノカルボン酸(a2)と芳香族モノカルボン酸(a3)とを、脂肪族モノカルボン酸(a2)と芳香族モノカルボン酸(a3)とをモル比〔(a2)/(a3)〕で2/1〜6/1となる範囲で反応系に仕込み、200℃以上の高温で脱水縮合させて製造することができる。
【0023】
前記ポリエチレンポリアミン(a1)と脂肪族モノカルボン酸(a2)と芳香族モノカルボン酸(a3)との反応割合は、ポリエチレンポリアミン(a1)中のアミノ基(NH)と脂肪族モノカルボン酸(a2)と芳香族モノカルボン酸(a3)中のカルボキシル基(COOH)とが当量比〔(NH)/(COOH)〕で2.0/1.5〜2.0/0.5となるように反応させるのが、活性水素当量が調整しやすいことからが好ましく、2.0/1.2〜2.0/0.7がより好ましい。
【0024】
本発明のポリアミドアミン硬化剤が有する活性水素当量は、後述する本発明のエポキシ樹脂組成物の主剤であるエポキシ樹脂(B)との配合量を調整しやすいことから50〜100が好ましく、60〜90がより好ましい。また、本発明のポリアミドアミン硬化剤は、主剤であるエポキシ樹脂(B)との適正な反応が進行すること400〜800が好ましく、500〜700がより好ましい。
【0025】
本発明のポリアミドアミン硬化剤を得るにあたり、本発明の効果を損なわない範囲で前記ポリエチレンポリアミン(a1)以外のポリアミン、脂肪族モノカルボン酸(a2)や芳香族モノカルボン酸(a3)以外の脂肪酸を併用しても良い。
【0026】
前記ポリエチレンポリアミン(a1)以外のポリアミンとしては、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン等、ベンジルアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ノナエチレンデカミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2−アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3−ビス(2’−アミノエチルアミノ)プロパン、トリエチレン−ビス(トリメチレン)ヘキサミン、ビス(3−アミノエチル)アミン、ビスヘキサメチレントリアミン等、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミン、4,4’−イソプロピリデンビスシクロヘキシルアミン、ノルボルナジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン等、ビス(アミノアルキル)ベンゼン、ビス(アミノアルキル)ナフタレン、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミン、オルトキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ナフチレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノビフェニル、2,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノエチル)ナフタレン等、N−メチルピペラジン、モルホリン、1,4−ビス−(8−アミノプロピル)−ピペラジン、ピペラジン−1,4−ジアザシクロヘプタン、1−(2’−アミノエチルピペラジン)、1−[2’−(2”−アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジン、トリシクロデカンジアミン等が挙げられる。
【0027】
前記脂肪族モノカルボン酸(a2)や芳香族モノカルボン酸(a3)以外の脂肪酸としては、例えば、パリミチン酸、ステアリン酸、天然脂肪酸の3量体であるトリマー酸等が挙げられる。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のポリアミドアミン硬化剤〔以下、ポリアミドアミン硬化剤(A)と略記することがある。〕とエポキシ樹脂(B)とを含有する。
【0029】
本発明で使用する炭素原子数4〜18の脂肪族炭化水素基を芳香核上の置換基として有するノボラック型エポキシ樹脂(B)は、その構造が特に限定されるものではないが、例えばフェノール核上に脂肪族炭化水素基を置換基として有するフェノールノボラック型樹脂とエピハロヒドリンとを反応せしめて得られる構造を有するものが挙げられる。
【0030】
この様な炭素原子数4〜18の脂肪族炭化水素基を芳香核上の置換基として有するノボラック型エポキシ樹脂(B)は、例えば、以下の方法によって製造できる。
【0031】
即ち、脂肪族炭化水素基を芳香核上の置換基として有するフェノール類とケトン類とを触媒の存在下で縮合させ、得られたフェノールノボラック型樹脂にエピハロヒドリンを反応させる方法が挙げられる。
【0032】
ここで用いる脂肪族炭化水素基を芳香核上の置換基として有するフェノール類としては、例えば、ブチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、オクタデシルフェノール等のアルキルフェノールが挙げられる。また、本発明において、前記フェノール類は1種単独でも使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。また、脂肪族炭化水素置換基の位置並びに数は任意で良い。
【0033】
また、当該反応で使用するケトン類としては特に限定しないが、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、ベンズアルデヒド等があり、好ましくはホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒドが挙げられる。
【0034】
脂肪族炭化水素基を芳香核上の置換基として有するフェノール類とケトン類との反応に用いられる触媒としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、塩酸、硫酸、リン酸、サリチル酸、安息香酸、シュウ酸等の如き酸性触媒、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、アンモニア等の如き塩基性触媒、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の如き金属塩触媒が挙げられる。
【0035】
ここで、脂肪族炭化水素基を芳香核上の置換基として有するフェノール類とケトン類との反応の結果、得られるフェノールノボラック型樹脂は、最終的に得られるエポキシ樹脂の溶液中の適正な粘度を保持するために、芳香核の平均核体数が2〜6核体のものが好ましく、なかでも2〜4核体のものが好ましい。
【0036】
次いで、得られたフェノールノボラック型樹脂は、エピハロヒドリンと反応させてグリシジル化し目的とする炭素原子数4〜18の脂肪族炭化水素基を芳香核上の置換基として有するノボラック型エポキシ樹脂(B)が得られる。
【0037】
この場合の反応条件は、特に制限されるものではないが、例えば、前記フェノールノボラック樹脂の水酸基の1当量に対し、エピハロヒドリンを1.4〜20当量添加し、塩基の存在下に50〜120℃で反応を行うことが好ましい。
【0038】
グリシジル化の際に用いる塩基は特に限定されるものではなく、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられるが、好ましくは水酸化カリウム及び/または水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0039】
本発明に係わるエピハロヒドリンとしては特に限定しないが、好ましくはエピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピブロモヒドリン等が挙げられるが、なかでも反応性の点からエピクロルヒドリンが好ましい。
【0040】
この様にして得られるノボラック型エポキシ樹脂(B)は、既述の通り、炭素原子数4〜18の脂肪族炭化水素基を芳香核上の置換基として有するノボラック型エポキシ樹脂である。ここで、ノボラック型エポキシ樹脂(B)は、組成物の粘度低減効果の点から芳香核の平均核体数が2〜6核体のものが好ましく、なかでも2〜4核体のものが好ましい。
【0041】
また、エポキシ樹脂(B)中の芳香核上に存在する脂肪族炭化水素基は、上記の通り炭素原子数4〜18のものであるが、なかでも耐熱性が良好である点から炭素原子数6〜10であることが特に好ましい。
【0042】
本発明のエポキシ樹脂組成物中のポリアミドアミン硬化剤(A)と、エポキシ樹脂(B)の配合割合としては、配合割合としては、本発明の効果が損なわれない範囲であればよく、特に限定されるものではないが、通常、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ基に対する硬化剤全量中の活性水素の当量比が0.5〜1.5の範囲であり、得られる硬化物の機械的強度に優れ、且つ硬化物の透明性が良好である点から該比が0.7〜1.2の範囲にあることが好ましい。
【0043】
本発明の樹脂組成物の(C)成分として用いられる脂肪族炭化水素系有機溶剤は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン等のアルカン、シクロヘキサン、デカリン等のシクロアルカン、もしくは、これらを主成分とするミネラルスピリット、0号ソルベント(日本石油(株)製、芳香族成分0.0%溶剤:沸点244〜262℃、引火点133℃)等の有機溶剤が挙げられる。
【0044】
これらのなかでも引火点が高く塗装環境が良好である点から引火点70℃以上、200℃未満のものが好ましく、具体的には前記0号ソルベントが挙げられ、また、補修用塗料として使用した場合のリフティング等の塗膜欠陥の防止効果が良好である点からミネラルスピリットが好ましい。
【0045】
脂肪族炭化水素系有機溶剤(C)の含有率としては特に制限されるものではなく、寧ろ優れた相溶性を有する為に、所望の固形分含量に設定できるものであるが、特に塗料用組成物としては、塗装作業性の点から組成物中の不揮発分の50〜90重量%であることが好ましい。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で前記ポリアミドアミン硬化剤(A)以外の硬化剤、前記ノボラック型エポキシ樹脂(B)以外のエポキシ樹脂、前記脂肪族炭化水素系有機溶剤(C)以外の有機溶剤を含有させても良い。
【0047】
前記ポリアミドアミン硬化剤(A)以外の硬化剤としては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、へキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ベンジルアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、ペンジルエチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、アミノエチルエタノールアミン、ジエチレングリコール・ビスプロピレンジアミン、メンセンジアミン、ノルボルナンジアミン、N−アミノエチルビペラジン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、トリシクロデカンジアミンや、これらとエポキシ化合物やアクリロニトリル、アクリル酸エステル等の不飽和化合物等による付加変性物等が挙げられ、単独でも、2種以上の混合物としても使用できる。
【0048】
前記ノボラック型エポキシ樹脂(B)以外のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(B)以外のノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0049】
前記脂肪族炭化水素系有機溶剤(C)以外の有機溶剤としては、例えば、トルエン等の芳香族炭化水素系、メチルエチルケトン等のケトン類、イソブタノール等のアルコール類、ブチルセルソルブ等のエステル類等が挙げられる。
【0050】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、更に反応性希釈剤を含有させることができる。反応性希釈剤としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル、バーサティック酸グリシジルエステル、α−オレフィンエポキサイド、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、メチルフェノールグリシジルエーテル、エチルフェノールグリシジルエーテル、プロピルフェノールグリシジルエーテル等のアルキルフェノールグリシジルエーテル等が挙げられ、単独でも、2種以上を併用して用いても良い。
【0051】
これらの反応性希釈剤のうちでは、エポキシ基を含有するものが好ましく、さらには、上記アルキルフェノールグリシジルエーテルが低粘度で、希釈効果を発揮でき、組成物のハイソリッド化(すなわち、組成物中の固形分濃度が高く、低溶剤含量となり、少ない塗装回数で塗膜の厚膜化を図ることができること)を図ることができる点から好ましい。
【0052】
加えて、本発明のエポキシ樹脂組成物には、用途や目的とする物性に応じて、添加剤等を配合することができる。前記添加剤としては、硬化促進剤、可塑剤、染料、顔料、抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、充填剤、レベリング剤、消泡剤、たれ止剤等が挙げられる。その適用量は、本発明の所定の効果に悪影響を及ぼさない限り特に限定されるものではなく、所望の範囲で適用される。
【0053】
前記硬化促進剤としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノール、炭素数16以下のアルキル鎖を有するアルキルフェノール等のフェノール類や、トリフェニルホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト等の亜リン酸フェニルエステル類、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多価アルコール類、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、酪酸、酢酸セルロース等が挙げられる。
【0054】
前記可塑剤としては、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル等の多塩基酸エステル類、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジオクトエート、グリセロールトリブチレート等の多価アルコールエステル類、9,10−エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化植物油、4,5−エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル等のエポキシ化エステル類、トリフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、ジフェニルモノイソプロピルホスフェート等のリン酸エステル類が挙げられる。
【0055】
前記染料及び顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、黄鉛、ジスアゾ系イエロー、キノフタロン系イエロー、モノアゾ系レッド、ベンツイミダゾリン系レッド、フタロシアニンブルー等が挙げられる。
【0056】
前記酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、2−メルカプトベンゾイミダゾール等の硫黄系酸化防止剤;トリデシルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト等の亜リン酸エステル類が挙げられる。
【0057】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2(2,−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、サリチル酸フェニル等のサリチル酸エステル系化合物等が挙げられる。
【0058】
前記光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セパケート等のヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
【0059】
前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、リン酸エステル類等が挙げられる。
【0060】
前記充填剤としては、例えば、亜鉛末、アルミニウムブレーク等の金属粉、亜酸化鉛、炭酸カルシウム、水和アルミナ、炭酸バリウム、カオリン、シリカ粉、タルク、硫酸バリウム、珪藻土、ウォラストナイト、ガラスビーズ、ガラスマイクロパルーン、ガラス繊維、有機繊維、重合体粒子、含水ケイ酸アルミニウムカリウム、金属酸化物被覆雲母等が挙げられる。
【0061】
前記レベリング剤及び消泡剤としては、例えば、イソパラフィン、流動パラフィン、シリコンオイル、ポリシロキサン系オリゴマー、フッ素系化合物、アクリル酸エステルやビニル系化合物の共重合体等が挙げられる。
【0062】
前記たれ止剤としては、例えば、コロイダルシリ力、水添ヒマシ油系ワックス、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、有機ペントナイト、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0063】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、接着剤、塗料、ライニング・床材を始め様々な分野に使用することができる。例えば成形物(キャスティング樹脂)として工具類の製造に用いられる。また様々な種類の基材、例えば木、木材繊維材料(ウッドシーリング)、天然または合成織物、プラスチック、ガラス、セラミック、コンクリート、繊維ボードおよび人造石の様な建材、および金属への塗装に使用することができる。これらの塗料は、ハケ塗り、スプレー、ディップその他により塗布することができる。さらには接着剤、パテ、積層用樹脂として使用することも出来る。本発明のエポキシ樹脂組成物が無溶剤系である場合は−10℃〜+50℃で、好ましくは0℃〜40℃の温度で硬化が起こる。例えば、5℃程度の低い温度で、大気中の相対湿度90%で8〜24時間後に、あるいは室温で1〜4時間後には強度に優れる硬化物を得ることが出来る。
【実施例】
【0064】
以下に実施例および比較例を示して、本発明をさらに詳しく説明する。以下において、部および%は特に断りのない限り、すべて質量基準である。
【0065】
合成例1〔ポリアミドアミン硬化剤(A)の合成〕
温度計、攪拌装置および脱水縮合用冷却管を備えた2L容器にテトラエチレンペンタミン(TEPA)100g、トール油脂肪酸(TOFA)110g(0.38モル)、安息香酸12g(0.1モル)を加えて攪拌下150℃に昇温した。150℃で1時間保持し、その後260℃まで3時間かけて昇温し、260℃で5時間保持した。その後生成した水を留去させ、活性水素当量が77、粘度(B型回転粘度計、以下同様。)が300mPa・sである目的のポリアミドアミン樹脂(A1)を得た。尚、トール油脂肪酸の分子量は290とした(以下同様。)。
【0066】
合成例2(同上)
温度計、攪拌装置および脱水縮合用冷却管を備えた2L容器にテトラエチレンペンタミン(TEPA)100g、トール油脂肪酸(TOFA)64g(0.22モル)、安息香酸12g(0.1モル)を加えて攪拌下150℃に昇温した。150℃で1時間保持し、その後260℃まで3時間かけて昇温し、260℃で5時間保持した。その後生成した水を留去させ、活性水素当量が56、粘度が200mPa・sである目的のポリアミドアミン樹脂(A2)を得た。
【0067】
合成例3(同上)
温度計、攪拌装置および脱水縮合用冷却管を備えた2L容器にテトラエチレンペンタミン(TEPA)100g、トール油脂肪酸(TOFA)168g(0.58モル)、安息香酸12g(0.1モル)を加えて攪拌下150℃に昇温した。150℃で1時間保持し、その後260℃まで3時間かけて昇温し、260℃で5時間保持した。その後生成した水を留去させ、活性水素当量が148、粘度が1000mPa・sである目的のポリアミドアミン樹脂(A3)を得た。
【0068】
合成例4(同上)
温度計、攪拌装置および脱水縮合用冷却管を備えた2L容器にヘキサエチレンヘプタミン100g、トール油脂肪酸(TOFA)73g(0.25モル)、安息香酸8g(0.066モル)を加えて攪拌下150℃に昇温した。150℃で1時間保持し、その後260℃まで3時間かけて昇温し、260℃で5時間保持した。その後生成した水を留去させ、活性水素当量が70、粘度が500mPa・sである目的のポリアミドアミン樹脂(A4)を得た。
【0069】
合成例5〔比較対照用アミン系硬化剤(a)の合成〕
温度計、攪拌装置および脱水縮合用冷却管を備えた2L容器にアミノエチルピペラジン(AEP)47部、テトラエチレンペンタミン(TEPA)352部にトール油脂肪酸(TOFA)461部、安息香酸76部、テレフタル酸64部を加えて攪拌下150℃に昇温した。150℃で1時間保持し、260℃まで3時間かけて昇温し、その後5時間保持した。その後生成する水を留去させ、活性水素当量が115、粘度が970mPa・sである比較対照用ポリアミドアミン樹脂(a1)を得た。
【0070】
合成例6(同上)
温度計、攪拌装置および脱水縮合用冷却管を備えた2L容器にアミノエチルピペラジン(AEP)62部、トリエチレンテトラミン(TETA)464部に安息香酸474部を加えて攪拌下150℃に昇温した。150℃で1時間保持し、260℃まで3時間かけて昇温し、その後5時間保持した。その後生成する水を留去させ、活性水素当量が111、粘度が18000mPa・sである目的の比較対照用ポリアミドアミン樹脂(a2)を得た。
【0071】
合成例8〔ノボラック型エポキシ樹脂(B)の調製〕
温度計、適下ロート、冷却管、攪拌器を備えた2リットルのフラスコに、パラオクチルフェノール400gを溶融させ、シュウ酸35を仕込、攪拌、溶解させ、その後適下ロートより、41%ホルマリン80gを100℃に保ちながら3時間かけて適下した。適下終了後2時間攪拌を続け、反応を完結させた。その後徐々に140℃まで昇温し、メタノールと水を留去した。更に、昇温を続けながら、最終的に220℃、5mmHgで低沸点物を留去し、ノボラック樹脂405gを得た。得られたノボラック樹脂の水酸基当量は214、平均核体数3.0、軟化点87℃であった。
【0072】
温度計、適下ロート、冷却管、攪拌器、邪魔板を備えた、下部に分液コック付きの2リットルのセパラブルフラスコに、前記ノボラック樹脂400g、エピクロルヒドリン600gを仕込、攪拌、溶解させ、45℃に加熱した。その後適下ロートより、20%水酸化ナトリウム水溶液の400gを3時間かけて適下した。適下終了後30分間攪拌を続け、反応を完結させた。その後攪拌を停止し静置し、下層の食塩水を分液し除いた。次に、過剰のエピクロルヒドリン、水を蒸留回収した。得られた粗樹脂中をメチルイソブチルケトン800gで溶解させ、水酸化ナトリウム水溶液を60g加え、80℃、3時間攪拌した。その後水洗により生成した塩、及びアルカリを油水分離させ、除き、脱水、濾過を経てメチルイソブチルケトンを蒸留回収しエポキシ樹脂(B1)を得た。得られたエポキシ樹脂(B1)のエポキシ当量は350、平均核体数3.3、軟化点62℃であった。
【0073】
合成例9(同上)
温度計、適下ロート、冷却管、攪拌器を備えた2リットルのフラスコに、パラドデシルフェノール510gを溶融させ、シュウ酸35を仕込、攪拌、溶解させ、その後適下ロートより、41%ホルマリン80gを100℃に保ちながら3時間かけて適下した。適下終了後2時間攪拌を続け、反応を完結させた。その後徐々に140℃まで昇温し、メタノールと水を留去した。更に、昇温を続けながら、最終的に220℃、5mmHgで低沸点物を留去し、ノボラック樹脂を得た。得られたノボラック樹脂の水酸基当量は275、平均核体数3.1であった。
【0074】
温度計、適下ロート、冷却管、攪拌器、邪魔板を備えた、下部に分液コック付きの2リットルのセパラブルフラスコに、前記ノボラック樹脂510g、エピクロルヒドリン600gを仕込、攪拌、溶解させ、45℃に加熱した。その後適下ロートより、20%水酸化ナトリウム水溶液の400gを3時間かけて適下した。適下終了後30分間攪拌を続け、反応を完結させた。その後攪拌を停止し静置し、下層の食塩水を分液し除いた。次に、過剰のエピクロルヒドリン、水を蒸留回収した。得られた粗樹脂中をメチルイソブチルケトン800gで溶解させ、水酸化ナトリウム水溶液を60g加え、80℃、3時間攪拌した。その後水洗により生成した塩、及びアルカリを油水分離させ、除き、脱水、濾過を経てメチルイソブチルケトンを蒸留回収しエポキシ樹脂(B2)を得た。得られたエポキシ樹脂(B2)のエポキシ当量は450、平均核体数3.2、軟化点42℃であった。
【0075】
合成例10(同上)
温度計、適下ロート、冷却管、攪拌器を備えた2リットルのフラスコに、オルソセカンダリーブチルフェノール290gを溶融させ、シュウ酸35を仕込、攪拌、溶解させ、その後適下ロートより、41%ホルマリン80gを100℃に保ちながら3時間かけて適下した。適下終了後2時間攪拌を続け、反応を完結させた。その後徐々に140℃まで昇温し、メタノールと水を留去した。更に、昇温を続けながら、最終的に220℃、5mmHgで低沸点物を留去し、ノボラック樹脂を得た。得られたノボラック樹脂の水酸基当量は165、平均核体数2.9であった。
【0076】
温度計、適下ロート、冷却管、攪拌器、邪魔板を備えた、下部に分液コック付きの2リットルのセパラブルフラスコに、前記ノボラック樹脂310g、エピクロルヒドリン600gを仕込、攪拌、溶解させ、45℃に加熱した。その後適下ロートより、20%水酸化ナトリウム水溶液の400gを3時間かけて適下した。適下終了後30分間攪拌を続け、反応を完結させた。その後攪拌を停止し静置し、下層の食塩水を分液し除いた。次に、過剰のエピクロルヒドリン、水を蒸留回収した。得られた粗樹脂中をメチルイソブチルケトン800gで溶解させ、水酸化ナトリウム水溶液を60g加え、80℃、3時間攪拌した。その後水洗により生成した塩、及びアルカリを油水分離させ、除き、脱水、濾過を経てメチルイソブチルケトンを蒸留回収しエポキシ樹脂(B3)を得た。得られたエポキシ樹脂(B3)のエポキシ当量は280、平均核体数3.3、軟化点67℃であった。
【0077】
試験例1〜6
ポリアミドアミン(A1)〜(A3)及び比較対照用ポリアミドアミン(a1)〜(a2)のミネラルスピリットへのトレランスを下記条件に従って評価した。評価結果を第1表に示す。
【0078】
<ミネラルスピリットへのトレランスの評価方法>
25℃の環境下で、ポリアミドアミン(A1)〜(A3)及び比較対照用ポリアミドアミン(a1)〜(a3)のそれぞれ5部にミネラルスピリットを加えていった。白濁に要する溶剤の重量を求め、次式により算出した。
【0079】
トレランス=(白濁に要したミネラルスピリットの重量/5)×100
【0080】
第1表において、トレランス=1000となるまでミネラルスピリットを加えても白濁しない場合、1000↑と示した。
【0081】
【表1】

【0082】
実施例1〜6及び比較例1〜6
第2表及び第3表に示す配合にてポリアミドアミン硬化剤(A)比較対照用ポリアミドアミン硬化剤(a)、ノボラック型エポキシ樹脂(B)及び脂肪族炭化水素系有機溶剤(C)を配合して本発明のエポキシ樹脂組成物(1)〔エポキシ樹脂ワニス(1)〕〜(6)及び比較対照用エポキシ樹脂組成物(1´)〔エポキシ樹脂ワニス(1´)〕〜(6‘)を調製した。得られたエポキシ樹脂ワニス(1)のトレランスを評価し、この評価結果を第2表に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
実施例7〜12及び比較例7〜12
第4表及び第5表に示す配合に従って本発明のエポキシ樹脂組成物(1−1)〜(6−1)及び比較対照用エポキシ樹脂(1´−1)〜(6´−1)を得た。得られた組成物の硬化塗膜の基材への密着性、塗膜の耐食性及び上塗り性を下記評価方法に従って評価し、評価結果を第4表及び第5表に示す。
【0086】
<密着性の測定方法>
軟鋼板に乾燥膜厚100μになるようエポキシ樹脂組成物を塗布し、20℃、7日間乾燥させ、碁盤目セロファンテープ試験(2mm間隔25目)した。
○:25/25(残存目数/試験目数)
△:13〜25/25
×:0〜12/25
【0087】
<耐食性の測定方法>
サンドブラスト板に乾燥膜厚100μになるようにエポキシ樹脂組成物塗布し、20℃、7日間乾燥させ、JIS K5400−7,8に準拠して塩水噴霧試験(300時間)
した。
○:異常なし
△:多少のフクレ、錆発生
×:著しいフクレ、錆発生
【0088】
<上塗り性の測定方法>
塩化ゴム系旧塗膜(1年間屋外暴露したもの)上にエポキシ樹脂組成物を塗布し、5時間後の表面状態を目視で観察した。
○:異常なし
×:旧塗膜がリフティング
【0089】
【表4】

【0090】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンポリアミン(a1)と脂肪族モノカルボン酸(a2)と芳香族モノカルボン酸(a3)とを反応させて得られるポリアミドアミン硬化剤であり、脂肪族モノカルボン酸(a2)と芳香族モノカルボン酸(a3)とをモル比〔(a2)/(a3)〕で2/1〜6/1となる範囲で用いて得られるポリアミドアミン硬化剤(A)と、炭素原子数4〜18の脂肪族炭化水素基を芳香核上の置換基として有するノボラック型エポキシ樹脂(B)と、脂肪族炭化水素系有機溶剤(C)とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記脂肪族モノカルボン酸(a2)と芳香族モノカルボン酸(a3)とをモル比〔(a3)/(a2)〕で3/1〜5/1となる範囲で用いて得られる請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂肪族モノカルボン酸(a2)がトール油脂肪酸であり、芳香族モノカルボン酸(a3)が安息香酸である請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリエチレンポリアミン(a1)がテトラエチレンペンタミンである請求項3記載のエポキシ樹脂組成物
【請求項5】
前記ポリエチレンポリアミン(a1)がヘキサエチレンヘプタミンである請求項3記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記炭素原子数4〜18の脂肪族炭化水素基を芳香核上の置換基として有するノボラック型エポキシ樹脂(B)が、芳香核の平均核体数が2〜6のものである請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記脂肪族炭化水素系有機溶剤(C)が、炭素原子数6〜16の脂肪族炭化水素系有機溶剤である請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記脂肪族炭化水素系有機溶剤(C)が、引火点70℃以上、200℃未満のものである請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
脂肪族炭化水素系有機溶剤(C)が、ミネラルスピリットである請求項8記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
炭化水素系有機溶剤(C)の含有率が、不揮発分の50〜90重量%である請求項1〜9のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
塗料用途である請求項1〜10のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化物。

【公開番号】特開2011−208034(P2011−208034A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77593(P2010−77593)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】