説明

エポキシ樹脂組成物用充填剤

【課題】 長期間保存しても性能が低下することなく安定しており、平均粒子径を小さくした場合であってもエポキシ樹脂組成物に配合した場合の粘度が低く、しかも硬化させた際、マトリックス樹脂と強固に結合する充填剤を提供する。
【解決手段】 シリカのような無機粉体に、例えばグリシジルメタクリレートのようなエポキシ基含有モノマーを含む架橋重合性組成物を、飽和吸収量を越えない範囲で吸収させてからこれを重合することにより得られる、無機粒子の表面の少なくとも一部がエポキシ基を有する架橋重合体で被覆された複合粒子及び/又はその凝集粒子で構成される粉体からなる充填剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止材又はフラットパネルディスプレイ(FPD)用シール剤として好適に使用できるエポキシ樹脂組成物用の充填剤に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置などの電子部品の封止、或いはFPDのメインシール及びエンドシールにおいては、エポキシ樹脂組成物からなる封止材若しくはシール剤(以後、これらを併せて封止材と称す)が広く使用されている。一般に、このような封止材には、封止材の熱膨張率、熱伝導率、及び吸湿性等をコントロールする目的で無機粒子からなる充填剤が配合されている。たとえば、FPDのシール用途においては、封止材に無機充填剤を充填することで、熱膨張率を小さくし、環境温度の変化に伴う寸法変化を小さくすることによってシールの信頼性を高めている。
【0003】
このような無機充填剤を含有するエポキシ樹脂系の封止材に関しては、硬化後において無機粒子とマトリックスポリマーとが良好に接合することは勿論、近年の半導体装置の高機能化・高集積化或いはFPDの薄型化に対する要求に応えるために、硬化前において低粘度であると共に添加される無機粒子を微細にすることが求められている。すなわち、半導体封止においては微細空隙に容易に充填でき、成形性が良好であるためには低粘度である必要があり、かつ数十マイクロメートルといった非常に狭い素子−基板間の隙間を通過することができるようにするため、無機充填剤の粒子径を小さくする必要がある。また、FPDシールにおいても、封止材を塗布する際、高い描画精度が求められるため、粘度の制御が重要な要素となっており、かつ高応答速度化に伴うFPD基板間の狭ギャップ化に対応するため、配合される無機充填剤の小粒子径化が進んでいる。
【0004】
しかしながら、配合する無機充填剤の粒径を小さくすると封止材が増粘し、粘度の制御が困難になるため、上記の要求を全て同時に満足させることは困難である。無機粒子充填材の粒子表面を改質することによる改良も試みられているが、十分な効果を得るには至っていない。
【0005】
たとえば、無機粒子表面をエポキシ基含有シランカップリング剤で改質した場合(特許文献1参照)やシラザン類とエポキシ基含有シランカップリング剤とを併用して金属酸化物粒子を表面改質した場合(特許文献2参照)には、均一な処理を行なうことが困難であるばかりでなく、吸湿により表面処理層が変化するという問題がある。このため、処理の直後には高粘度化を抑制する効果が得られるものの、長期間保存するとその効果は消失してしまう。また、金属を燃焼して得られる金属酸化物粒子をシラザン類で表面改質した場合(特許文献3参照)には、表面改質後の粒子表面にはマトリックス樹脂と化学的結合を形成できる官能基が存在しないため、得られた粒子をエポキシ樹脂組成物に配合して硬化させた場合、硬化体において粒子とマトリックスとの間の結合性が十分ではない。
【0006】
【特許文献1】特開平2001−189407号公報
【特許文献2】特開平2004−59380号公報
【特許文献3】特開平2004−59779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明は、長期間保存しても性能が低下することなく安定しており、平均粒子径を小さくした場合であってもエポキシ樹脂組成物に配合した場合の粘度が低く、しかも硬化させた際、マトリックス樹脂と強固に結合する充填剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、下記(I)〜(IV)の発明を含む。
(I) 無機粒子の表面の少なくとも一部がエポキシ基を有する架橋重合体で被覆された複合粒子及び/又はその凝集粒子で構成される粉体からなるエポキシ樹脂組成物用充填剤。
(II) 前記複合粒子の被覆層を構成するエポキシ基を有する架橋重合体が、下記式(1)で示される単量体を含む架橋重合性組成物の重合体である上記(I)に記載の充填剤。
【0009】
【化1】

【0010】
{但し、式中Rは水素原子またはメチル基であり、式中Xは炭素数1〜10のアルキレン基または下記式(2)で示される基である。}
【0011】
【化2】

【0012】
(但し、式中Rは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
(III) 前記粉体の平均粒子径が0.05〜5μmである前記(I)又は(II)に記載の充填剤。
(IV) 前記複合粒子の表面に存在するエポキシ基の量が0.01〜50μmol・m−2である前記(I)又は(II)の充填剤。
(V) エポキシ樹脂100質量部及び前記(I)乃至(IV)の何れかに記載の充填剤10〜2000質量部を含有してなる組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエポキシ樹脂組成物用充填剤は、従来の充填剤に比べ品質の経時的な劣化が少なく、平均粒子径の小さいものをエポキシ樹脂組成物に高充填した場合であっても粘度上昇を低く抑えることができ、粘度制御が容易である。従って、微細空隙への充填が容易で、また、塗布時の描画精度が低下しない。しかも、その硬化体においては充填材とマトリックス樹脂との接合性は極めて良好であるため、硬化体の線膨張係数、吸湿性、強度、硬度などの物性の制御が容易となる。よって、本発明の充填剤を含むエポキシ樹脂組成物は、薄型化、微細化された半導体装置や薄型化されたFPD装置を製造する際に使用する封止材として特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のエポキシ樹脂組成物用充填剤は、無機粒子の表面の少なくとも一部がエポキシ基を有する架橋重合体(以下、被覆樹脂ともいう。)によって被覆された複合粒子及び/又はその凝集粒子で構成される粉体(以下、単に複合粉体ともいう。)からなる。該複合粉体を構成する複合粒子は、無機粒子を核としているので、熱膨張係数、熱伝導率といった基本的物性は、無機粉体からなる従来のエポキシ樹脂組成物用充填剤とほぼ同じとなる。このため、本発明の充填剤を配合したエポキシ樹脂組成物を封止材として使用した場合には、従来の充填剤を配合した場合と同様に、その配合量に応じて硬化体の熱膨張係数や熱伝導率等の物性を調整することが可能である。また、無機粒子の表面の少なくとも一部はエポキシ基を有する架橋重合体によって被覆されているので、エポキシ樹脂組成物用充填剤として使用したときにマトリックス樹脂と極めて良好に接合する。さらに、被覆樹脂は架橋しているため安定であり、その処理効果は長期間持続する。
【0015】
前記複合粒子の核となる無機粒子(以下、核粒子ともいう)としては、エポキシ樹脂組成物の無機充填剤として公知の無機粒子が特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、結晶性シリカ、溶融シリカ、沈殿法により得られるシリカ、ゾルゲル法により得られるシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物類や、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等を採用することができる。これらのなかでも、化学的、熱的安定性に優れる点で金属酸化物類が好ましく、結晶性シリカ、溶融シリカ、ゾルゲル法により得られるシリカ等のシリカ類が特に好ましい。なお、金属酸化物としては、特開平7−41544号公報、特開平7−2520号公報等に記載のシリカと他の金属との複合酸化物も好適に使用できる。
【0016】
前記複合粉体においては、その構成粒子は基本的に核粒子の形状が維持されるので、核粒子の形状や大きさは用途に応じて適宜決定すればよい。しかしながら、前記した小粒径化の要求に応えるという観点から、平均粒子径が0.01〜10μm、特に0.05〜5μmであるのが好適である。また、形状も特に制限されず球状、板状、層状、針状あるいは不定形等、どのような形状でもよいが、最終的に目的とするエポキシ樹脂組成物の粘度を低下させる効果がより大きく、また半導体封止に用いた場合に半導体素子を傷つけ難いという点で球状の無機粒子であることが特に好ましい。
【0017】
これら無機粒子はそのまま核粒子として使用してもよいが、吸湿性の低い複合粒子を得るためには、これら無機粒子に疎水化処理を施して疎水化したものを核粒子とするのが好適である。一般に、何ら表面処理等を行っていない無機酸化物粒子等の無機粒子は表面が親水性であるため、粒子表面が完全に被覆樹脂で覆われていない場合には吸湿性を示すことがあり、吸湿した複合粒子を配合した封止材を使用した場合には十分な封止性が得られなかったり、封止の耐久性が低下したりする恐れがある。また、保存中の吸湿を防止するためには、保存雰囲気の制御など特別な注意が必要となる。これに対し、疎水化した無機粒子を核粒子とした複合粒子では、被覆樹脂で覆われていない部分があっても吸湿し難いので、保存について特に注意をしなくとも封止材用充填材としての機能が低下しない。
【0018】
無機粒子の疎水化処理方法としては、表面に疎水性基或いは疎水性物質を導入する公知の方法が特に限定されず採用できる。好適な疎水化方法を具体的に示せば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、環状シロキサン、ヘキサアルキルジシラザン等の処理剤を用いて処理する方法が挙げられる。これらのなかでも、処理効果が高く表面処理剤の溶出や滲み出しが起こり難いという理由から、環状シロキサン又はヘキサアルキルジシラザンにより処理することが好ましい。これら処理剤は、反応性が高いため、無機粒子の表面に存在するシラノール基等の反応性基の量が少ない場合でも高い疎水化処理を行うことができる。
【0019】
なお、無機粒子が疎水化されたか否かの判断は、無機粒子の水/n−ヘキサン分散性向がn−ヘキサン側にあることで確認することができる。具体的には、ガラス製試験管等に水及びn−ヘキサンをほぼ等量入れ、そこへ少量の粒子を加えてよく振とうしてから静置した時に粒子がヘキサン側に多く分配されていることで確認できる。
【0020】
前記複合粒子において核となる無機粒子の表面の少なくとも一部、好ましくは全部を被覆する被覆樹脂は、エポキシ基を有する架橋重合体である必要がある。エポキシ基を有しない場合には添加剤として使用したときにマトリックス樹脂であるエポキシ樹脂と十分に接合することができない。また、被覆樹脂が架橋構造を有しない場合には例えば有機溶媒と接触した場合には樹脂が溶解したり被覆が剥がれたりして被覆による効果が低下する。
【0021】
被覆樹脂を構成する架橋重合体としては、架橋型であり、かつエポキシ基を有するものであれば特に制限されない。なお、安定性の観点から、該架橋重合体における架橋は共有結合性の架橋であることが好適である。架橋性重合体は、ポリスチレン系、(メタ)アクリル系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリウレタン系、ポリスルホン系、ポリエーテル系、ポリエーテルスルホン系の架橋樹脂を含むが、これらのなかでも、本発明の複合粉体の製造が容易であると言う理由からポリスチレン系または(メタ)アクリル系の架橋重合体であることが好ましく、化学的安定性の観点からポリスチレン系の架橋重合体であることが特に好ましい。
【0022】
本発明の複合粉体では、核粒子の表面が前記被覆樹脂で被覆されているが、必ずしもその全面を被覆している必要はなく一部の表面が被覆されていればよい。しかしながら、複合樹脂の安定性の観点から、表面の50%、より好ましくは70%以上最も好ましくは、全面が被覆されているのが好適である。また、被覆の状態は、核粒子の表面に被覆樹脂が容易に脱離しない形で固定化されていれば特に限定されず、例えば核粒子が細孔を有している場合には、該細孔の壁面を覆った状態、あるいは該細孔を埋めるように存在している状態、あるいはそれらが組み合わさった状態で存在していてもよい。
【0023】
被覆樹脂が有するエポキシ基の量は、上記接合力の観点から複合粒子又は複合粉体表面積1m当りのエポキシ基モル数で表して0.01〜50(μmol/m)、特に0.1〜10(μmol/m)であるのが好適である。ここで、被覆樹脂中のエポキシ基の定性及び定量は、日本工業規格JIS−K−7236「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」に準拠して測定することができる。即ち、該規格による測定方法で用いられるエポキシ樹脂を本発明の充填剤に代えて測定することで、被覆樹脂中のエポキシ基の定性及び定量が可能となる。また、被覆樹脂が架橋構造を有していることは、複合粒子または複合粉体を公知の有機溶媒中で超音波処理した際に表面層の剥離が起らず、C元素分析による測定値が処理前と処理後で変化がないことにより確認することができる。
【0024】
前記複合粒子に占める被覆樹脂の量は特に限定されるものではないが、多すぎると吸湿や線膨張係数の抑制が不十分となる傾向があり、一方少なすぎると流動性向上の効果が充分に得られない場合があるため、無機粒子100質量部に対し0.01〜20質量部、特に0.05〜10質量部であることがより好ましく、0.1〜5質重量部であることが最も好ましい。被覆樹脂量は、本発明の充填剤の質量から該充填剤の有機成分を燃焼除去した後の質量を引くことにより求めることができる。
【0025】
被覆樹脂量が無機粒子100質量部に対して0.01〜20質量部、特に0.05〜10質量部である場合、本発明のエポキシ樹脂組成物用充填剤となる前記粉体を構成する複合粒子は、基本的に核となる無機粒子の形状を反映することになる。
【0026】
本発明のエポキシ樹脂組成物用充填剤は、次のような方法により好適に製造することができる。即ち、下記工程(A)〜(C)を含む方法により好適に製造できる。
(A) 無機粒子からなる原料粉体と、エポキシ基を有する重合性単量体を含む架橋重合性組成物を準備する工程、
(B) 前記原料粉体と、該原料粉体の飽和吸収量の0.1〜100%の量の前記架橋重合性組成物を混合して該原料粉体に該架橋重合性組成物を吸収若しくは吸着させる工程、及び
(C) 前記工程(B)で得られた架橋重合性組成物を吸収若しくは吸着した原料粉体について、吸収若しくは吸着された架橋重合性組成物を重合する工程。
【0027】
前記工程(A)における原料粉体としては前記した核粒子からなる粉体が使用される。ここで、核粒子は疎水化処理されたものであるのが好適である。また、エポキシ基を有する重合性単量体を含む架橋重合性組成物としては、エポキシ基を有する重合性単量体、架橋剤(多官能の重合性単量体)を必須成分として含有し、任意成分としてその他の重合性単量体、重合開始剤、溶媒、各種添加剤を含有する組成物である。なお、重合性単量体に関しては、重合性に優れる点で、(メタ)アクリル基、スチリル基等のラジカル重合性の不飽和二重結合を有する重合性単量体であることが好ましい。
【0028】
エポキシ基を有する重合性単量体としては、下記式(1)で表されるものを使用するのが好適である。
【0029】
【化3】

【0030】
{式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Xは炭素数1〜10のアルキレン基、または下記式(2)
【0031】
【化4】

【0032】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキレン基である。)で示される基である。}
上記式(1)においては、重合性に優れる点及びエポキシ環を開環させないラジカル重合により重合できる点で、Rが水素原子若しくはメチル基で且つXが−C(=O)−であるか、Rが水素原子で且つXが式(2)で示される基のうち二価の芳香族基である化合物が好ましい。また、出発原料の入手の容易さという点から、Rの炭素数は1であることが好ましい。式(1)で表されるようなエポキシ基含有重合性単量体の代表的な化合物を例示すると、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル、グリシドキシスチレン、グリシドキシメチルスチレン、グリシドキシエチルスチレン、グリシドキシプロピルスチレン等が挙げられる。これらエポキシ基含有重合性単量体は、目的とする重合体被覆層に応じて、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また主成分とする重合性単量体が常温、常圧下で固体の場合などには、該重合性単量体と共重合する液状の重合性単量体に溶解することも好ましい。
【0033】
架橋剤としては、1分子内に2つ以上のエポキシ基以外の重合性基を有する化合物であれば特に限定なく用いることができる。例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の多官能の芳香族ビニル化合物類等の芳香族ビニル系の単量体類や、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ヘキサメチレンジ(メタ)アクリルアミド等の多官能の(メタ)アクリル系の単量体類、(メタ)アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら架橋性単量体は、エポキシ基含有重合性単量体に対し、モル比で0.001〜1の範囲で用いるのが好ましく、特に0.01〜0.3の範囲で用いるのが好ましい。
【0034】
任意成分のその他の重合性単量体は、架橋重合性組成物が原料粉体に吸収若しくは吸着され易くするという目的、エポキシ基含有重合性単量体が常温、常圧下で固体の場合にこれらを溶解せしめるという目的、或いは被覆樹脂の物性を改良するという目的で添加されるものである。好適に使用される重合性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、クロロメチルスチレン、p−クロロスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル系の単量体類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリトリデシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、 (メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジアセトンメタクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、メタクリロレイン(メタ)アクリル酸トリフロロメチル、(メタ)アクリル酸ペンタフロロエチル、(メタ)アクリル酸パーフロロブチル、(メタ)アクリル酸パーフロロ2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル等の(メタ)アクリル系の単量体類。酢酸ビニル、メチルビニルケトン、ビニルピロリドン、エチルビニルエーテル、ジビニルスルホン、フタル酸ジアリル等が挙げられる。
【0035】
任意成分である重合開始剤としては、用いる重合性単量体に応じて、公知の重合開始剤を適宜選択して用いればよいが、エポキシ基の開環を防ぐためラジカル型の重合開始剤を使用するのが好ましく、それらの中でも、加熱により重合開始能を発現するものであることが、操作がより簡便であり特に好ましい。例えば、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物や、2,2,−アゾビスイソブチロニトリルや2,2,−アゾビス−(2,4,−ジメルバレロニトリル)等のアゾビス系重合開始剤等が好適な重合開始剤として挙げられる。これら重合開始剤は、エポキシ基含有重合性単量体100質量部に対して、0.1〜20質量部、好適には0.5〜10質量部用いるのが一般的である。
【0036】
また、前記架橋重合性組成物には、必要に応じて重合禁止剤や重合抑制剤、紫外線吸収剤等の他の添加剤を配合したものを用いても良い。さらに、重合性単量体が固体である場合には、少量の溶剤を用いて液状のものとすることも可能である。なお、(A)工程において、それぞれ所定量の各成分を混合することにより架橋重合性組成物を調製することができる。このとき予め全ての成分を混合してもよいし、後述する工程(B)における混合操作の際に各成分を添加し架橋重合性組成物の調製を行なってもよい。
【0037】
本発明の製造方法では、前記(A)工程に次いで、前記原料粉体と、該原料粉体の飽和吸収量の0.1〜100%の量の前記架橋重合性組成物を混合して該原料粉体に該架橋重合性組成物を吸収若しくは吸着させる{工程(B)}。
【0038】
ここで飽和吸収量とは前記架橋重合性組成物を原料粉体とよく混合しながら少量ずつ吸収若しくは吸着させていったときに、自然放置の状態で架橋重合性組成物が原料粉末から滲み出すことなく全てが原料粉体に保持される限界の吸収量(乾燥原料粉体1g当りの吸収量(g))を意味し、吸油量とほぼ同義である。該飽和吸収量は、予め少量の原料粉体を用いて実験的に決定することができる。本発明では、後段の(C)工程で全ての架橋重合性組成物が原料粉体に保持された状態でこれを重合硬化させるので、原料粉体の形状や粒径を維持したままの表面処理が可能となる。吸収若しくは吸着(或いは保持)させる架橋重合性組成物の量が飽和吸収量の0.1%未満の場合には十分な改質効果が得られない。また、吸収若しくは吸着させる架橋重合性組成物の量が飽和吸収量を越える場合には、重合の際に粒子同士がくっついてしまったり、樹脂のみからなる粉体が混入したりしてしまう。粒子性状の良好な複合粉体が得られると言う観点から吸収若しくは吸着させる架橋重合性組成物の好適な量は飽和吸収量の0.01〜30%であり、さらに好ましい量は0.05〜20%であり、最も好ましい量は0.1〜10%である。なお、一般的に粒子の比表面積1mあたり、2×10−4〜8×10−4gの重合性単量体を使用すれば、約1nm相当の厚さの被覆層が形成されるため、この値を元に粒径や比表面積を勘案し、目的に応じて最適な量を決定すればよい。
【0039】
原料粉体に架橋重合性組成物を吸収若しくは吸着させるには、原料粉体と架橋重合性組成物とを攪拌下に混合すればよい。十分な攪拌を行ないながら両者を混合することにより原料粉体に均一に架橋重合性組成物を吸収若しくは吸着させることができる。なお、上記吸収若しくは吸着処理において架橋重合性組成物は、予め全成分を混合したものを用いてもよいし、吸収若しくは吸着処理の際に各成分を別々に供給してもよい。
【0040】
攪拌の方法は特に限定されるものではなく、粒子が攪拌により浮遊する程度の状態を得られるのであれば、公知の如何なる方法でも良い。例えば、ヘンシェルミキサー等を用いて直接機械的に攪拌してもよいし、また高速気流を吹き込む攪拌、外部から振動や揺動等を与える攪拌でも良い。機械的に原料粉体を直接攪拌する場合の攪拌速度は、原料粉体の材質や形状、粒子径により一概には言えないが、一般的には100〜3000rpmとするのが好適である。なお、均一な吸収を行なうためには、吸収操作に際して所定量の架橋重合性組成物を連続的又は断続的に供給するのが好ましく、特に不活性ガス雰囲気中で噴霧により供給するのが好ましい。噴霧に際しては公知のスプレーノズル等が好適に使用できる。また添加速度も特に限定されず、他の種々の条件によって決定すれば良いが、一般的には、核粒子100g当たり1〜20ml/minである。これらを加える際の温度条件も特に制限されず、冷却下でも、加熱下でも良いが、あまりに高い温度では被覆前に単量体が重合してしまうため、一般には−10〜40℃程度が好ましい。
【0041】
本発明の製造方法では、前記工程(B)で得られた架橋重合性組成物を吸収若しくは吸着した原料粉末について、吸収若しくは吸着された架橋重合性組成物を、エポキシ基を残したまま重合し、複合粉体を得る{工程(C)}。
【0042】
原料粉末に吸収若しくは吸着された架橋重合性組成物を重合させる方法としては、該組成物に含まれる重合性単量体の重合方法として公知の方法が採用できるが、加熱により重合を開始させるのが好適である。例えばビニル系単量体を重合させる場合には、前記したような熱重合開始剤を用いることにより、より効率的に重合させることができる。また、当該加熱温度は、用いた重合性単量体及び重合開始剤の種類等により公知の条件を適宜設定すればよいが、加熱温度が高すぎるとエポキシ基が開環する恐れがあるため、40〜180℃程度が好ましく、50〜120℃程度が特に好ましい。このとき、酸素による重合阻害を防止するため、これら操作は窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。反応容器内の圧力は、特に制限されず、加圧でもよいし、常圧でもよいし、減圧でもよい。
【0043】
重合時間も上記したような他の条件に合わせて適宜設定すればよく、一般的には、30〜180分程度である。
【0044】
このようにして製造される複合粉体は、被覆樹脂層が安定で、平均粒子径を小さくした場合であってもエポキシ樹脂組成物に配合した場合の粘度が低く、しかも硬化させた際、マトリックス樹脂と強固に結合するという優れた特徴を有する。このため、エポキシ樹脂組成物用充填剤として好適である。
【0045】
複合粉体をエポキシ樹脂組成物用充填剤として使用する場合、通常、エポキシ樹脂100質量部に対して複合粉体からなる充填剤を10〜2000質量部が使用される。このとき、エポキシ樹脂を硬化させるために熱硬化剤及び/又は光重合開始剤が使用される。熱硬化剤を使用する場合には、エポキシ樹脂100質量部、熱硬化剤50〜200質量部、硬化促進剤0.1〜10質量部、及び本発明のエポキシ樹脂充填剤10〜2000質量部を含有する組成物として使用するのが好ましい。また、光重合開始剤を使用する場合には、エポキシ樹脂100質量部、光重合開始剤0.01〜20質量部、光増感剤0〜10質量部、及び本発明のエポキシ樹脂充填剤10〜2000質量部を含有する組成物とするのが好ましい。さらに、熱硬化剤と光重合開始剤を併用することもできる。
【0046】
これら組成物(本発明の組成物)は、封止材として好適である。これら本発明の組成物の中でも光重合開始剤を用いた組成物は、光照射によって硬化するため、封止作業において加熱装置(熱硬化剤を用いた場合に必要となる)を使用することなく、光源さえあれば封止行うことができるので、省エネルギー、省資源、省スペースの観点から好ましい。以下、本発明の組成物について説明する。
【0047】
前記本発明の組成物で使用されるエポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有する公知の化合物が特に制限なく採用される。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、シクロペンタジエン含有エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂が例示される。本発明の充填剤をエポキシ樹脂組成物中に高充填するために、これらの中でもビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂が例示される。
【0048】
前記本発明の組成物で使用される熱硬化剤はエポキシ樹脂の硬化剤として公知の如何なるものを採用してもよく、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤などが例示される。より具体的には酸無水物系硬化剤として、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が例示され、アミン系硬化剤として、ジアミノジフェニルメタン、メタンフェニレンジアミン等が例示され、フェノール樹脂系硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリフェノールメタン、フェノールアラルキル樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、シクロペンタジエン含有フェノール樹脂、テルペン環含有フェノール樹脂等が例示される。これら熱硬化剤は、エポキシ樹脂100質量部に対して、50〜200質量部の範囲で用いるのが好ましく、70〜150重量部の範囲で用いられるのが特に好ましい。
【0049】
また硬化促進剤としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾ−ルなどのイミダゾール系硬化促進剤、トリフェニルホスフィン、トリス−p−メトキシフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のホスフィン誘導体、1、8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ−7−エン等のシクロアミジン誘導体等が挙げられる。これら硬化促進剤は、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部、好適には0.5〜5質量部を用いるのが一般的である。
【0050】
前記本発明の組成物で使用される光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、もしくはその混合物を用いることができる。光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノンおよびその誘導体、ベンゾインエーテル、ベンジルメチルケタール、α−ヒドロキアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルフォスフォンサイド等が例示される。また、光カチオン重合開始剤を例示すると、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルフォニウム塩、アリールジアゾニウム塩等のオニウム塩およびその関連化合物が挙げられる。また、これら重合開始剤は、少なすぎると硬化速度の低下や、硬化体の強度低下につながり、また多すぎると黄変が顕著になるため、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部、特に0.5〜10重量部で用いるのが好ましい。
【0051】
また、光重合開始剤を使用する場合には、光増感剤を添加することも好ましい。好適に使用できる光増感剤を例示すれば、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジヘキサノキシアントラセン、2−メチルー9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチルー9,10−ジメトキシアントラセン等のアントラセン化合物やチオキサントン誘導体を挙げることができる。また、これら光増感剤は、単独使用しても異なる種類のものを複数併用してもよい。光増感剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、通常0〜10質量部、好ましくは0〜5質量部である。
【0052】
本発明組成物における本発明の充填剤の配合量は、硬化前の組成物の粘度と、硬化後の組成物の熱膨張性や熱伝導率、吸湿性等との兼ね合いから、エポキシ樹脂100質量部に対し、10〜2000質量部、好ましくは20〜1900質量部である。
【0053】
本発明の組成物においては、必要に応じて希釈剤を添加してもよい。好適に使用できる希釈剤を具体的に例示すれば、反応性の希釈剤として、n−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、グリセリントリグリシジルエーテル等が挙げられ、また非反応性希釈剤として、アセトンやメチルエチルケトンといったケトン類若しくはベンジルアルコール、キシレン等が挙げられる。
【0054】
さらにその他必要に応じて、可撓性付与剤、離型剤、難燃剤、安定剤、顔料、若しくは本発明充填剤以外の充填剤等を配合しても良い。なお、これら成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
なお、実施例及び比較例で使用した各種原材料を以下に示す。これら原材料は、特に断りが無い限り精製せずにそのまま使用した。
【0057】
(1)被覆樹脂原料
〔エポキシ基を有する重合性単量体〕
・GMA: グリシジルメタクリレート(和光純薬工業社製)
・GMS: グリシドキシメチルスチレン(特開平9−227540号公報記載の方法により合成したもの。)
〔架橋性単量体〕
・DVB: ジビニルベンゼン(和光純薬工業社製)
〔重合開始剤〕
・t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製、商品名パーブチルO)
(2)無機粒子
・SH03: 平均粒子径0.14μm、比表面積20m−1の球状シリカ(株式会社トクヤマ社製、商品名SH03、飽和吸収量0.7(g/g−粉体))
・SE−5: 平均粒子径5μmの球状シリカ(株式会社トクヤマ社製、商品名SE−5、飽和吸収量0.2(g/g−粉体))
・表面疎水化ゾルゲルシリカ: ゾルゲル法によって調製した平均粒子径0.6μmの球状シリカを、環状シロキサンによる前処理によって表面疎水化したもの(飽和吸収量0.5(g/g−粉体))。
【0058】
(3)シラン系処理剤
・GPS: γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名LS−2940)
・HMDS: ヘキサメチルジシラザン(和光純薬工業社製)
また、実施例及び比較例における各種物性測定方法を以下に示す。
【0059】
〔複合分体の炭素量測定〕
複合粉体の被覆層に由来する炭素量は、微量炭素分析装置(堀場製作所製EMIA511)で測定し求めた。
【0060】
〔複合分体の表面エポキシ基量測定〕
複合粉体の表面エポキシ基に由来するエポキシ基量は、日本工業規格JIS−K−7236「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」に準拠して測定した。
【0061】
〔各種粉体の粒度分布及び平均粒子径測定〕
レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製LS230)にて、分散溶媒としてエタノールを用いて測定した。
【0062】
〔各種分体の比表面積測定〕
BET比表面積測定装置(島津製作所製マイクロメリテックス−フローソーブII2300)を用いて測定した。
【0063】
〔各種粉体を添加したエポキシ樹脂組成物の粘度測定〕
下記式(3)
【0064】
【化5】

【0065】
で示されるエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製;商品名ERL4221)と、評価対象粉体とを質量比1:1で混合することによって試料を調製した。得られた試料について30℃における粘度をコーンプレート型回転粘度測定計(BROOKFIELD社製RVDV−II+)で測定した。
【0066】
なお、測定は、3点のシェアレート(0.6s−1、6s−1、60s−1)行った。ここで、0.6s−1というシェアレートは、アンダーフィル等の自重による封止材注入法のような低シェアレートで封止材注入を行う際のシェアレートに対応するものであり、60s−1というシェアレートはトランスファー成形等の加圧による封止材注入法のような高シェアレートを要する注入方法におけるシェアレートに対応するものである。また、これらの中間的なシェアレートとして6s−1を採用した。
【0067】
また、複合粉体及び表面処理粉体については調製又は処理後における粉体の保存安定性を調べる目的で、調製又は処理直後の粉体と、調製又は処理後30℃、90%RHの条件下で30日間放置した粉体の2種について粘度測定を行った。
【0068】
〔各種粉体を添加したエポキシ樹脂組成物硬化体の曲げ強度測定〕
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(旭電化工業社製;商品名EP−4901E):100質量部、テトラヒドロメチル無水フタル酸:85質量部、1、8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ−7−エン:1質量部の混合溶液と評価対象粉体とを質量比1:1で混合し、これらを所定の型に流し込み、150℃で5時間熱硬化させることによって寸法30mm×2mm×2mmの平板状試験体を作製した。得られた試験体について、万能試験機(島津製作所社製オートグラフAG1−50kN)を用いクロスヘッドスピード1mm/minで曲げ強度を測定した。
【0069】
実施例1
まず、GMA(グリシジルメタクリレート)0.071g、DVB(ジビニルベンゼン)0.013g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.02gを混合して溶液エポキシ基を有する重合性単量体を含む架橋重合性組成物(処理液)を調製した。次いで、ポリテトラフルオロエチレン製の撹拌翼を有する攪拌装置付のポリテトラフルオロエチレン製三つ口ナス型フラスコ(内容積500ml)内に原料粉体として50gの球状シリカSH03を仕込み、攪拌翼を300rpmで回転させて粉体を攪拌しながら、前記処理液の全量を二流体ノズルにて噴霧した。噴霧終了後にさらに2時間撹拌して上記混合液を原料粉末に均一に吸収若しくは吸着させた。その後、攪拌下に粉体を20℃から100℃まで1時間かけて昇温し、同温度で2時間保持することにより原料粉体に吸収若しくは吸着した処理液を重合・硬化させ、複合粉体を得た。
【0070】
このようにして得られた複合粉体について炭素量を測定した。結果を表1に示す。さらに、該複合粉体をジクロロメタン中で3分間超音波処理し、乾燥した後の試料についても炭素量を測定した。その結果、炭素量は超音波処理前が0.10重量%であり、超音波処理後も0.10重量%であった。測定値が処理前後で変化していないことから、超音波処理によって表面被覆層の溶解や剥離が起こっていないことが確認された。また、該複合粉体について表面エポキシ基量を測定した。結果を表1に示す。この結果より、表面処理により該複合粉体について表面にエポキシ基が付与されていることが確認された。また、該複合粉体およびその原料として使用したSH03について粒度分布、平均粒子径、及び比表面積を測定した。複合粉体及びSH03の粒度分布測定結果を図1に複合粉体の平均粒子径及び比表面積の測定結果を表1に示す。図1に示されるように、複合粉体と原料粉体(SH03)とでは、分布自体は若干変わっているものの最大粒子径と最小粒子径はほぼ同じであり、大きな凝集粒子が観測されなかった。以上、炭素量および粒度分布より、均一な被覆処理が行われたことが確認された。
【0071】
また、上記複合粉体を添加した各種エポキシ樹脂組成物について、粘度及び硬化体の曲げ強度を測定した。結果を表2に示す。表2に示されるように、粘度は低くしかも調製直後と30日間保存したものとの間で有意の差は見られなかったことから本実施例の複合粉体の安定性が高いことが分かる。さらに、硬化体曲げ強度も高い値を示している。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
実施例2
実施例1において使用した処理液をGMA(グリシジルメタクリレート)0.035g、DVB(ジビニルベンゼン)0.007g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.04gの混合溶液からなる処理液に替えた他は実施例1と同様にして複合粉体を得た。得られた複合粉体について実施例1と同様にして各種物性を評価した。結果を表1、及び表2に示す。
【0075】
実施例3
実施例1において使用した処理液をGMS(グリシドキシメチルスチレン)0.095g、DVB(ジビニルベンゼン)0.013g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.02gの混合溶液からなる処理液に替えた他は実施例1と同様にして複合粉体を得た。得られた複合粉体について実施例1と同様にして各種物性を評価した。結果を表1、表2、及び図1に示す。
【0076】
実施例4
実施例1において使用した原料粉体をSE−5に替えた他は実施例1と同様にして複合粉体を得た。得られた複合粉体について実施例1と同様にして各種物性を評価した。結果を表1、及び表2に示す。
【0077】
実施例5
実施例2において使用した原料粉体をSE−5に替えた他は実施例2と同様にして複合粉体を得た。得られた複合粉体について実施例1と同様にして各種物性を評価した。結果を表1、及び表2に示す。
【0078】
実施例6
実施例1において使用した原料粉体を表面疎水化ゾルゲルシリカに替えた他は実施例1と同様にして複合粉体を得た。得られた複合粉体について実施例1と同様にして各種物性を評価した。結果を表1、及び表2に示す。
【0079】
比較例1
100mlオートクレーブ内で、球状シリカSH03:10gに、GPS(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)0.1gを添加し撹拌混合した後、200℃で2時間加熱させ、その後、真空乾燥して、エポキシシラン処理シリカ粉体を得た。得られた粉体について実施例1と同様にして評価を行った(但し、炭素量測定は除く)。結果を表1及び表2に示した。
【0080】
比較例2
1000mlオートクレーブ内で、球状シリカSH03:200gに、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)10gを添加し撹拌混合した後、200℃で2時間加熱させ、その後、真空乾燥して、ヘキサメチルジシラザン処理シリカ粉体を得た。得られた粉体について実施例1と同様にして評価を行った(但し、炭素量測定は除く)。結果を表1及び表2に示した。
【0081】
比較例3
SH03(全く処理をしていないもの)を添加したエポキシ樹脂組成物の粘度及び硬化体の曲げ強度測定した。その結果を表2に示す。
【0082】
上記各実施例と比較例の結果に示されるように、複合粉体からなる本発明の充填剤を添加したエポキシ樹脂組成物は粘度が低く、30日保存後のものを使用しても粘度の上昇はあまり見られない。これに対し、エポキシ基含有シランカップリング処理剤により処理された無機充填剤を添加した場合(比較例1)は、初期粘度の実施例より高く、しかも30日保存後のものを使用した場合の粘度は非常に高くなっている。また、本発明の充填剤を添加したエポキシ樹脂組成物の硬化体の強度は、シラザンにより処理された無機充填剤を添加した場合(比較例2)や未処理の無機充填剤を添加した場合(比較例3)と比べて有意に高くなっており、さらに、実施例における粘度は、比較例2及び3よりも有意に低くなっていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本図は、SH03並びに実施例1及び2で得られた複合粉体の粒度分布を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子の表面の少なくとも一部がエポキシ基を有する架橋重合体で被覆された複合粒子及び/又はその凝集粒子で構成される粉体からなるエポキシ樹脂組成物用充填剤。
【請求項2】
前記複合粒子の被覆層を構成するエポキシ基を有する架橋重合体が、下記式(1)で示される単量体を含む架橋重合性組成物の重合体である請求項1記載の充填剤。
【化1】

{但し、式中Rは水素原子またはメチル基であり、式中Xは炭素数1〜10のアルキレン基または下記式(2)で示される基である。}
【化2】

(但し、式中Rは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
【請求項3】
前記粉体の平均粒子径が0.05〜5μmである請求項1又は2に記載の充填剤。
【請求項4】
前記複合粒子の表面に存在するエポキシ基の量が0.01〜50μmol・m−2である請求項1又は2に記載の充填剤。
【請求項5】
エポキシ樹脂100質量部及び請求項1乃至4の何れかに記載の充填剤10〜2000質量部を含有してなる組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−328349(P2006−328349A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353021(P2005−353021)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】