エポチロンの合成とその中間体及びその類似物並びにその使用
【課題】エポチロンA及びB、及びデスオキシエポチロンA及びB、及び抗腫瘍薬治療として有用な関連化合物の製造方法の提供。エポチロンA及びB並びにそれらの類似物の製造における中間体として有用な種々の化合物の提供。それらの中間体の調製のための合成方法の提供。本発明の製造方法を通して得られるエポチロンの任意の類似物と、任意に製薬的キャリアとの組み合わせを含み、ガン罹患患者の治療に有用な組成物の提供。本発明の製造方法を通して得られるエポチロンの任意の類似物と、任意に製薬的キャリアとの組み合わせを用いて、ガン罹患患者を治療する方法の提供。
【解決手段】本発明は、エポチロンA及びB、デスエポチロンA及びB、及びその類似物を提供する。また、本発明は、エポチロンA及びBに関連する類似物並びにその調製に有用な中間体も提供する。さらに本発明は、エポチロンの類似物に基づく新規な化合物、並びにガン及び多剤耐性表現型が進行したガンの治療方法も提供する。
【解決手段】本発明は、エポチロンA及びB、デスエポチロンA及びB、及びその類似物を提供する。また、本発明は、エポチロンA及びBに関連する類似物並びにその調製に有用な中間体も提供する。さらに本発明は、エポチロンの類似物に基づく新規な化合物、並びにガン及び多剤耐性表現型が進行したガンの治療方法も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エポチロンの合成とその中間体及びその類似物並びにその使用
この出願は、各々、1996年12月3日、1997年1月14日、1997年5月22日、1997年5月29日、及び1997年8月13日に出願した出願番号60/032,282、60/033,767、60/047,566、60/047,941、及び60/055,533の米国仮出願を基礎とするものであり、これらの出願の内容は、ここに、本出願に取りこむものとする。本発明は、国立衛生機関から、CA-28824、CA-39821、CA-GM72231、CA-62948、及びA10-9355で認可され、及び国立科学財団からCHE-9504805で認可され、政府の保護によってなされたものである。
【0002】
本発明は、エポチロン(epothilone)マクロライド系抗生物質の分野に属する。特に本発明は、高い特異性を持ち、非毒性の抗腫瘍治療薬であるエポチロンA及びB、デスオキシエポチロン(desoxyepothilone)A及びB、及びそれらの類似物の製造方法に関する。さらに、本発明は、多剤耐性細胞の阻害方法も提供する。また、本発明は、エポチロン製造の中間体として提供される新規な組成物も提供する。
【0003】
この出願を通じて種々の文献が参照されるが、それら各々は、その全てを参考として本出願に取り入れ、本発明がなされたときの技術水準をより十分に記載したものとする。
【背景技術】
【0004】
エポチロンA及びBは、高活性の抗腫瘍薬であり、Sorangium属のミクソバクテリアから単離された。これらの化合物の全体構造は、X−線結晶構造解析から、Hofleによって決定された、G.Hofle等,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1996,35,1水の浄化7。エポチロンの全合成は幾つかの理由によって極めて重要な目標である。タキソールは、既に、卵巣及び乳ガンの化学治療における有用な供給源であり、その臨床応用の範囲は拡大している。G.I.Georg等,Taxane Anticancer Agents;American Cancer Society:SanDiego,1995。タキソールの細胞毒性のメカニズムは、少なくともin vitroレベルでは、微小管アセンブリの安定化を含んでいる。P.B.Schiff等,Nature(London),1979,277,665。エポチロンでのin vitro実験での一連の相補形は、それらが、おそらくタンパク質標的との結合部位の下流側においてタキソールの機械的主題を共有していることを示した。D.M.Bollag等,Cancer Res.,1995,55,2325。さらに、エポチロンは、細胞毒性の点でタキソールを凌ぎ、薬物耐性細胞に抗するin vitro効率の点でさらに凌いでいる。多剤耐性(MDR)は、タキソールの一連の制限の一つであるので(L. M.Landino及びT.L.MacDonald,The Chemistry and Pharmacology of Taxol and its Derivatives,V.Farin,Ed。,Elsevier:New York,1995,ch.7,p.301)、この問題を解決することを約束するあらゆる試薬が一連の注目の的であった。さらに、エポチロンの臨床用製剤は、タキソールより直接的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国仮出願第60/032,282号
【特許文献2】米国仮出願第60/033,767号
【特許文献3】米国仮出願第60/047,566号
【特許文献4】米国仮出願第60/047,941号
【特許文献5】米国仮出願第60/055,533号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】G.Hofle等,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1996 ,35
【非特許文献2】G.I.Georg等,Taxane Anticancer Agents;American Cancer Society:SanDiego,1995
【非特許文献3】P.B.Schiff等,Nature(London),1979,277,665
【非特許文献4】D. M.Bollag等,Cancer Res.,1995,55,2325
【非特許文献5】L. M.Landino及びT.L.MacDonald,The Chemistry and Pharmacology of Taxol an d its Derivatives,V.Farin,Ed。,Elsevier:New York,1995,ch.7,p.301
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明者らは、エポチロンの全合成に着手し、その結果、エポチロンA及びB、対応するデスオキシエポチロン、並びにそれらの類似物を合成する有効な方法を開発した。また本発明は、エポチロンA及びB及びそれらの類似物の合成に有用な新規な中間体、そのようなエポチロン及び類似物から誘導される組成物、エポチロンA及びB、及びデスオキシエポチロンA及びBの精製された化合物、さらには、エポチロン類似物のガン治療における使用方法を提供する。予想しないことに、エポチロンは、癌細胞における多剤耐性を逆転させことが判明しただけではなく、in vitro及びin vivoの両方で、正常細胞よりMDR細胞に対して細胞毒性である副行感受性薬として、さらに、ビンブラスチン等の他の細胞毒性薬と組み合わせた場合に、個々の薬物を同じ濃度で単独使用した場合より活性が高い相乗薬として活性であることが解った。特に、本発明のデスオキシエポチロンは、in vivoでの腫瘍細胞毒性薬として極めて優れた特異性を有し、タキソール、ビンブラスチン、アドリアマイシン及びカンプトセシン(camptothecin)を含む現在用いられている主要な化学治療薬より有効であるとともに正常細胞に対する毒性が低い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の目的は、エポチロンA及びB、及びデスオキシエポチロンA及びB、及び抗腫瘍薬治療として有用な関連化合物の製造方法を提供することである。本発明の他の目的は、エポチロンA及びB並びにそれらの類似物の製造における中間体として有用な種々の化合物を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、それらの中間体の調製のための合成方法を提供することである。さらに本発明の目的は、本発明の製造方法を通して得られるエポチロンの任意の類似物と、任意に製薬的キャリアとの組み合わせを含み、ガン罹患患者の治療に有用な組成物を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、本発明の製造方法を通して得られるエポチロンの任意の類似物と、任意に製薬的キャリアとの組み合わせを用いて、ガン罹患患者を治療する方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(A)は、エポチロンA及びBの逆行合成分析を示す。図1(B)は、化合物11の合成を提示する。(a)t-BuMe2OTf,2,6-ルチジン,CH2Cl2,98%;(b)(1)DDQ,CH2Cl2/H2O,89%;(2)(COCl)2,DMSO,CH2Cl2,-78℃ →rt(室温),90%;(c)MeOCH2PPh3Cl,t-BuOK,THF,0℃→rt,86%;(d)(1)p-TsOH,ジオキサン/H2O,50℃,99%;(2)CH3PPh3Br,NaHMDS,PhCH3,0℃→rt,76%;(e )Phl(OCOCF3)2,MeOH/THF,rt,0.25h,92%。
【図2】12,13-E-及び-Z-デオキシエポチロンの調製において鍵となる中間体を提示する図である。
【図3A】ヒドロキシメチレン-及びヒドロキシプロピレン-置換エポチロン誘導体の調製に用いられる鍵となるヨウ素化中間体の合成を提示する図である。
【図3B】ヒドロキシメチレン-及びヒドロキシプロピレン-置換エポチロン誘導体の調製方法を提示する図であり、当該方法は一般的に、12,13-E-エポチロンであって、Rがメチル、エチル、n-プロピル、及びn-ヘキシルであるものを、対応する E-ビニルヨウ化物から調製するのに有用である。
【図3C】ベンゾイル化ヒドロキシメチレン-置換デスオキシエポチロン及びヒドロキシメチレン-置換エポチロン(エポキシド)に導く反応を示す図である。
【図4】図4(A)は、化合物19の合成を提示する。(a)DHP,PPTS,CH2Cl2,rt:( b)(1)Me3SiCCLi,BF3・OEt2,THF,-78℃,(2)MOMCl,I-Pr2NEt,Cl(CH2)Cl,55 ℃;(3)PPTS,MeOH,rt;(c)(1)(COCl)2,DMSO,CH2Cl2,-78℃;次いでEt3N,-78 ℃→rt;(2)MeMgBr,Et2O,0℃→rt,(3)TPAP,NMO,4A mol シーブス,CH2Cl2,0℃ →rt;(d)16,n-BuLi,THF,-78℃;次いで15,THf,-78℃→rt;(e)(1)N-ヨード スクシンイミド,AgNO3,(CH3)2CO;(2)Cy2BH,Et2O,AcOH;(f)(1)PhSH,BF3・OEt2,CH2Cl2,rt;(2)Ac2O,ピリジン,4-DMAP,CH2Cl2,rt。図4(B)化合物1の合成を提示する。(a)11,p-BBN,THF,rt;次いでPdCl2(dppf)2,Cs2CO3,Ph3As,H2O,DMF,19,rt,71%;(b)p-TsOH,ジオキサン/H2O,50℃;(c)KHMDS,THF,-78℃,51%;(d)(1)HF-ピリジン,ピリジン,THF,rt,97%;(2)t-BuMe2SiOTf,2,6-ルチジン,CH2Cl2,-25℃,93%;(3)デス-マーチンペリオジナン(periodinane),CH2Cl2,87%;(4)HF・ピリジン,THF,rt,99%;(e)ジメチルジオキシラン;,CH2Cl2,0.5h,-50℃,45%(≧20:1)。
【図5】エポチロンAの”左翼(left wing)”の合成の機構を示す図である。
【図6】エポチロンA及び他の類似物へのオレフィン置換経路の機構を示す図である。
【図7】エポチロンA(1)の全合成のための収束方法、及び、ゲミナル(geminal)メチル基を導入するためのグリカールシクロプロパンのソルボリシス方法を例示する図である。
【図8】化合物15Bの鏡像(エナンチオ)選択的合成を提示する図である。
【図9】閉環オレフィン置換による、モデル系20B、21B及び22Bの構造を示す図である。
【図10】天然、合成及びデスオキシエポチロンAの沈降試験を例示する図である。
【図11】4℃で天然、合成及びデスオキシエポチロンAの沈降試験を例示する図である。
【図12】(A)エポチロンA(1)及び(B)タキソール(登録商標)(1A)の構造を示す図である。
【図13】ジヒドロビロン(dihydropyrone)マトリクスに基づく非環式立体化学的関係の立案方法を示す図である。
【図14】中間体4Aの調製を示す図である。
【図15】化合物17Aの代替的鏡像選択的合成を示す図である。
【図16】中間体13Cの合成経路を提示する図である。(a)1.トリブチルアリルチン,(S)-(- )-BINOL,Ti(Oi-Pr)4,CH2Cl2,-20℃,60%,>95%e.e.;2.Ac2O,Et3N,DMAP,CH2Cl2,95%;(b)1.OsO4,NMO,アセトン/H2O,0℃;2.NalO4,THF/H2O;(c)12,THF,-20℃,Z異性体のみ,10から25%;(d)Pd(dppf)2,Cs2CO3,Ph3As,H2O,DMF,rt.77%。
【図17】中間体エポチロンB(2)への合成経路を提示する図である。(a)p-TsOH ,ヂオキサン/H2O,55℃,71%;(b)KHMDS,THF,-78℃,67%,α/β:1.5:1;(c)デス-マーチンペリオジナン,CH2Cl2;(d)NaBH4,MeOH,2工程につき67%;(e)1.HF・ピリジン,ピリジン,THF,rt,93%;2.TBSOTf,2,6-ルチジン,CH2Cl2,-30℃,89%;3.デス-マーチンペリオジナン,CH2Cl2,67%;(f)HF・ピリジン,THF,rt,80%;(g)ジメチルジオキシラン,CH2Cl2,-50℃,70%。
【図18】8-デスメチルデオキシエポチロンAのための保護された中間体への合成経路を提示する図である。
【図19】8-デスメチルデオキシエポチロンAへの合成経路、及び、トランス-8-デスメチル-デオキシエポチロンA及びそれへのトランス-ヨードオレフィン中間体の構造を提示する図である。
【図20】(上部)エポチロンA及びB及び8-デスメチルエポチロン、並びに(下部)デスメチルエポチロンAの調製に用いられる中間体TBSエステル10への合成経路を示す図である。(a)(Z)-クロチル-B[(-)-lpc]2,-78℃,Et2O,次いで3N NaOH,30% H2O2;(b)TBSOTf,2,6-ルチジン,CH2Cl2(2工程につき74%,87%ee);(c)O3,CH2Cl2/MeOH,-78℃,次いでDMS,(82%);(d)t-ブチルイソブチリルアセテート,NaH,BuLi,0℃,次いで,6(60%,10:1);(e)Me4NBH(OAc)3,-10℃(50%,10:1 α/β); (f)TBSOTf,2,6-ルチジン,-40℃,(88%);(g)デス-マーチンペリオジナン,(90%);(h)Pd(OH)2,H2,EtOH(96%);(i)DMSO,オキサリルクロリド,CH2Cl2,-78℃(78%);(j)メチルトリフェニルホスホニウムブロミド,NaHMDS,THF,0℃(85%);(k)TBSOTf,2,6-ルチジン,CH2Cl2,rt(87%)。
【図21】8-デスメチルエポチロンAの合成経路を示す図である。(a)Pd(dppf)2Cl2 ,Ph3As,Cs2CO3,H2O,DMF,rt(62%);(b)K2CO3,MeOH,H2O(78%);(c)DCC,4-DMAP,4-DMAP・HCl,CHCl3(78%);(d)HF・pyr,THF,rt(82%),(e)3,3-ジメチルジオキシラン,CH2Cl2,-35℃(72%,1.5:1)。
【図22】エポチロン類似物27Dへの合成経路を示す図である。
【図23】エポチロン類似物24Dへの合成経路を示す図である。
【図24】エポチロン類似物19Dへの合成経路を示す図である。
【図25】エポチロン類似物20Dへの合成経路を示す図である。
【図26】エポチロン類似物22Dへの合成経路を示す図である。
【図27】エポチロン類似物12−ヒドロキシエチルエポチロンへの合成経路を示す図である。
【図28】DMSO、エポチロンA及び/又はBと比較した沈降試験におけるエポチロン類似物の活性を示す図である。構造17−20、22、及び24−27は、図29−37に各々示す。化合物は、チューブリン(1mg/ml)に、10μMの濃度まで添加した。エポチロンで形成された微小細管の量は、100%と測定された。
【図29】エポチロン類似物#17の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図30】エポチロン類似物#18の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図31】エポチロン類似物#19の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図32】エポチロン類似物#20の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図33】エポチロン類似物#22の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図34】エポチロン類似物#24の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図35】エポチロン類似物#25の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図36】エポチロン類似物#26の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図37】エポチロン類似物#27の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図38】細胞毒性薬の分別混合の効果の図式的説明を提示する図である。
【図39】エポチロンA及びエポチロン類似物#1−7を示す図である。ヒト白血病CCRF-CEM(感受性)及びCCRF-CEM/VBL MDR(耐性)サブラインに対する効力は、各々、丸型及び角形ブラケットで示した。
【図40】エポチロンB及びエポチロン類似物#8−16を示す図である。ヒト白血病CCRF-CEM(感受性)及びCCRF-CEM/VBL MDR(耐性)サブラインに対する効力は、各々、丸型及び角形ブラケットで示した。
【図41】エポチロン類似物#17−25を示す図である。ヒト白血病CCRF-CEM(感受性)及びCCRF-CEM/VBL MDR(耐性)サブラインに対する効力は、各々、丸型及び角形ブラケットで示した。
【図42A】エポチロン類似物#26−34を示す図である。ヒト白血病CCRF-CEM(感受性)及びCCRF-CEM/VBL MDR(耐性)サブラインに対する効力は、各々、丸型及び角形ブラケットで示した。
【図42B】エポチロン類似物#35−46を示す図である。ヒト白血病CCRF-CEM(感受性)及びCCRF-CEM/VBL MDR(耐性)サブラインに対する効力は、各々、丸型及び角形ブラケットで示した。
【図42C】エポチロン類似物#47−49を示す図である。
【図43A】タキソールとの比較における、MDR MCF-7/Adr異種移植に対するデスオキシエポチロンBの抗腫瘍活性を示す図である。コントロール(◆) ;デスオキシエポチロンB(■;35mg/kg);タキソール(▲;6mg/kg);アドリアマイシン(×;1.8mg/kg);i.p.Q2Dx5;8日目に開始。
【図43B】タキソールとの比較における、MDR MCF-7/Adr異種移植に対するエポチロンBの抗腫瘍活性を示す図である。コントロール(◆);エポチロンB(■;25mg/kg;非毒性投与量);タキソール(▲;6mg/kg;LD50半分);アドリアマイシン(×;1.8mg/kg);i.p.Q2Dx5;8日目に開始。
【図44A】B16黒色腫を持つB6D2F1マウスにおけるデスオキシエポチロンBの毒性を示す図である。体重は、0、2、4、6、8、10及び12日目に測定した。コントロール(▲);デスオキシエポチロンB(○;10mg/kg;QDx8;8中0 が死亡);デスオキシエポチロンB(●;20mg/kg;QDx6;8中0が死亡)。注射は1日目に開始。
【図44B】B16黒色腫を持つB6D2F1マウスにおけるエポチロンBの毒性を示す図である。体重は、0、2、4、6、8、10及び12日目に測定した。コントロール(▲);エポチロンB(○;0.4mg/kg;QDx6;8中1が死亡する毒性);エポチロンB(●;0.8mg/kg;QDx5;8中5が死亡)。注射は1日目に開始。
【図45A】MX-1異種移植を持つヌードマウスでの、デスオキシエポチロンB及びタキソールの比較治療効果を示す図である。腫瘍,s.c.;薬剤はi.p.で投与した,Q2Dx5,7日目に開始。コントロール(◆);タキソール(□;5mg/kg;LD50の半分);デスオキシエポチロンB(△;25mg/kg;非毒性投与量)。
【図45B】MX-1異種移植を持つヌードマウスでの、デスオキシエポチロンB及びタキソールの比較治療効果を示す図である。腫瘍,s.c.;薬剤はi.p.で投与した,Q2Dx5,7日目に開始。コントロール(◆);タキソール(□;5mg/kg;LD50の半分;7,9,11,13,15日に投与;次いで、6mg/kg,17,19,23,24,25日に投与);デスオキシエポチロンB(n=3;△,×,*;25mg/kg;非毒性投与量;3匹のマウスに、7,9,11,13,15日に投与;次いで、35mg/kg,17,19,23,24,25日に投与)。
【図46】ヒトMX-1異種移植を持つヌードマウスの、デスオキシエポチロンB(35mg/kg)、タキソール(5mg/kg)及びアドリアマイシン(2mg/kg)での治療効果を、移植8から18日後の間の腫瘍サイズについて示す図である。デスオキシエポチロンB(□)、タキソール(△)、アドリアマイシン(×)、コントロール(◆);i.p.処理は、8,10,12,14及び16日目に行った。
【図47】正常ヌードマウスにおける、コントロールに対するエポチロンB(□;0.6mg/kg QDx4;i.p.)及びデスエポチロンB(△;25mg/kg QDx4;i.p.)の相対的毒性を示す図である。体重は、注射後毎日測定した。エポチロンBについて、8匹中8匹が、5,6,6,7,7,7,7,及び7日目に死亡する毒性を有するが、デスオキシエポチロンでは、全て6匹のマウスが生き残った。
【図48】エポチロン類似物#43の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図49】エポチロン類似物#45の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図50】エポチロン類似物#46の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図51】エポチロン類似物#47の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図52】エポチロン類似物#48の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで用いられる用語「直鎖状または分枝鎖状アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t-ブチル、sec-ブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルを含むが、これらに限定されない。アルキル基は、1つの炭素原子から14炭素原子まで含むが、好ましくは、1つの炭素原子から9酸素原子までを含み、アシル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシ、ヒドロキシ、カルボキシアミド、及び/またはN-アシルアミノ部分を含むがこれらに限定されない種々の基で置換されていてもよい。
【0013】
ここで用いられる用語「アルコキシカルボニル」、「アシル」及び「アルコキシ」は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、n-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、ヒドロキシプロピルカルボニル、アミノエトキシカルボニル、sec-ブトキシカルボニル及びシクロペンチルカルボニルを含むが、これらに限定されない。アシル基の例は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル及びペナノイルを含むが、これらに限定されない。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ及びシクロペンチルオキシを含むが、これらに限定されない。
【0014】
ここで用いられる用語「アリール」は、フェニル、ピリジル、ピリル、インドリル、ナフチル、チオフェニルまたはフリル基を含むがこれらに限定されず、各々は、アシル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシ、ヒドロキシ、カルボキシアミド、またはN-アシルアミノ部分を含むがこれらに限定されない種々の基で置換されていてもよい。アリールオキシ基の例は、フェノキシ、2-メチルフェノキシ、3-メチルフェノキシ及び2-ナフトキシを含むが、これらに限定されない。アシルオキシ基の例は、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ及びヘキサノイルオキシを含むが、これらに限定されない。
【0015】
本発明は、下記の構造を有する化合物を含むエポチロンA及びBの化学治療的類似物を提供する。
【0016】
【化1】
【0017】
ここで、R、R0yびR’は、個々独立に、H、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、任意にヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、フッ素、NR1R2、N-ヒドロキシイミノ、またはN-アルコキシイミノで置換されていてもよく;R1及びR2は、個々独立に、H、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;R”は、CHY=CHX、またはH、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル-1,3-チアゾリニル、2-フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル-1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6-インドリルであり;Xは、H、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル-1,3-チアゾリニル、2-フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル-1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6-インドリルであり;Yは、Hまたは直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;Zは、O、N(OR3)またはN-NR4R5であり、R3、R4及びR5は、個々独立に、Hまたは直鎖状または分枝状アルキルまたはアルコキシであり;nは、0、1、2または3である。一実施態様では、本発明は、下記の構造を有する化合物を提供する。
【0018】
【化2】
【0019】
ここで、Rは、H、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ヘキシルまたはCH2OH、(CH2)3-OHである。
【0020】
また、本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【0021】
【化3】
【0022】
ここで、R、R0及びR’は、個々独立に、H、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、任意にヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、フッ素、NR1R2、N-ヒドロキシイミノ、またはN-アルコキシイミノで置換されていてもよく;R1及びR2は、個々独立に、H、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;R”は、CHY=CHX、またはH、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル-1,3-チアゾリニル、2-フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル-1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6-インドリルであり;Xは、H、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル-1,3-チアゾリニル、2-フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル-1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6-インドリルであり;Yは、Hまたは直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;Zは、O、N(OR3)またはN-NR4R5であり、R3、R4及びR5は、個々独立に、Hまたは直鎖状または分枝状アルキルまたはアルコキシであり;nは、0、1、2または3である。ある種の実施態様では、本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【0023】
【化4】
【0024】
ここで、Rは、H、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ヘキシルまたはCH2OHである。
【0025】
さらに、本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【0026】
【化5】
【0027】
ここで、R、R0及びR’は、個々独立に、H、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、任意にヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、フッ素、NR1R2、N-ヒドロキシイミノ、またはN-アルコキシイミノで置換されていてもよく;R1及びR2は、個々独立に、H、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;R”は、CHY=CHX、またはH、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル−1,3-チアゾリニル、2-フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル-1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6-インドリルであり;Xは、H、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル-1,3-チアゾリニル、2-フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル-1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6-インドリルであり;Yは、Hまたは直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;Zは、O、N(OR3)またはN-NR4R5であり、R5、R4及びR5は、個々独立に、Hまたは直鎖状または分枝状アルキルであり;nは、0、1、2または3である。特に、本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【0028】
【化6】
【0029】
ここで、Rは、H、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ヘキシルまたはCH2OH、(CH2)3-OHである。
【0030】
さらに本発明は、下記の構造を有する化合物を提供する。
【0031】
【化7】
【0032】
ここで、R、R0及びR’は、個々独立に、H、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、任意にヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、フッ素、NR1R2、N-ヒドロキシイミノ、またはN-アルコキシイミノで置換されていてもよく;R1及びR2は、個々独立に、H、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;R”は、CHY=CHX、またはH、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル-1,3-チアゾリニル、2-フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル−1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6-インドリルであり;Xは、H、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル-1,3-チアゾリニル、2-フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル-1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6-インドリルであり;Yは、Hまたは直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;Zは、O、N(OR3)またはN-NR4R5であり、R3、R4及びR5は、個々独立に、Hまたは直鎖状または分枝状アルキルまたはアルコキシであり;nは、0、1、2または3である。
【0033】
また、本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【0034】
【化8】
【0035】
また、本発明は、化学治療的化合物エポチロンA及びB、並びにそれらの類似物を調製するために有用な種々の中間体を提供する。従って、本発明は、下記構造を有し、エポチロンA及びその類似物への鍵となる中間体を提供する。
【0036】
【化9】
【0037】
ここで、Rは、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルであり;R’は、H、メチル、エチル、n-プロピル、n-ヘキシル、
【0038】
【化10】
【0039】
CH2OTBSまたは(CH2)3-OTBDPSであり;Xはハロゲン化物である。一実施態様では、本発明は、上記構造においてRがアセチルでありXがヨードである化合物を提供する。
【0040】
また本発明は、下記構造を有する中間体を提供する。
【0041】
【化11】
【0042】
ここで、R’及びR”は、個々独立に、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリール又はベンジル、トリアルキルシリル、ジアリキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルであり;Xは、酸素、(OR)2、(SR)2、-(O-(CH2)n-O)-、-(O-(CH2)n-S)-、または-(S-(CH2)n-S)-であり;nは、2、3または4である。
【0043】
【化12】
【0044】
ここで、RはHまたはメチルである。
【0045】
本発明による他の類似物は以下の構造を有する。
【0046】
【化13】
【0047】
ここで、Rは、H、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ヘキシル、CH2OHまたは(CH2)3-OHである。
【0048】
さらに、本発明は、下記構造を有する類似物を提供する。
【0049】
【化14】
【0050】
ここで、RはHまたはメチルである。本発明の範囲は、そのC3炭素がRまたはS絶対配置の何れかを有するもの、並びにそれらの混合物を包含する。
【0051】
さらに本発明は、下記構造を有するエポチロンAの類似物を提供する。
【0052】
【化15】
【0053】
また、本発明は、エポチロン調製のための中間体の調製経路も提供する。従って、本発明は、下記構造を有するZ-ヨードアルケンの製造方法を提供する。
【0054】
【化16】
【0055】
ここで、Rは、水素、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、置換又は非置換のアリールオキシアルキル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルである。この方法は、(a)下記構造:
【0056】
【化17】
【0057】
を有する化合物を、下記構造:
【0058】
【化18】
【0059】
(ここで、R’及びR”は、個々独立に、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、置換又は非置換アリールまたはベンジルである)を有するメチルケトンと、適当な条件下でカップリングさせて、下記構造:
【0060】
【化19】
【0061】
を有する化合物を生成し、(b)工程(a)で生成した化合物を適当な条件下で処理して下記構造:
【0062】
【化20】
【0063】
を有するz-ヨードアルケンを生成し、次いで、(c)工程(b)で生成したZ-ヨードアルケンを適当な条件下で脱保護及びアセチル化して、Z-ヨードアルケンエステルを生成することを含む。工程(a)のカップリングば、テトラヒドロフラン(THF)等の不活性溶媒中のn-BuLi等の強酸を用いて、低温、典型的には-50℃以下、好ましくは-78℃以下で行うことができる。工程(b)の処理は、アセトン等の極性有機溶媒中で、硝酸銀等のAg(I)の存在下でのN-ヨードスクシンイミドでの逐次反応を含み、典型的には水素化ホウ素試薬、好ましくはCy2BHを用いた還元条件に続く。脱保護工程(c)は、ジクロロメタン等の不活性有機溶媒中で、三フッ化ホウ素エーテレート等のルイス酸触媒の存在下、チオフェノール等のチオールと接触させることを含み、ジクロロメタン等の不活性有機溶媒中で、ピリジン及び/または4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下、塩化アセチル等のハロゲン化アシル、または無水酢酸等の無水アシルでのアシル化に続く。
【0064】
また本発明は、下記式を有するZ-ハロアルケンエステルの製造方法も提供する。
【0065】
【化21】
【0066】
上記式中、Rは、水素、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、置換又は非置換アリールオキシアルキル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルであり;Xはハロゲンである。この方法は(a)下記構造:
【0067】
【化22】
【0068】
を有する化合物を適当な条件下で酸化的に開裂してアルデヒド中間体を生成し、そして、(b)当該アルデヒド中間体を、適当な条件下で、ハロメチレン転移剤で縮合させてZ−ハロアルケンエステルを生成することを含んでなる。一実施態様において、Xはヨウ素である。他の実施態様において、この方法は、ハロメチレン転移剤が、Ph3P=CHIまたは(Ph3P+CH2I)I-として実施される。ハロアルキリデン転移剤Ph3P=CR’I、(但し、R’は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、n-ヘキシル、
【0069】
【化23】
【0070】
CO2Et、または(CH2)3-OTBDPSである)を用いて、2置換オレフィンを調製することもできる。酸化工程(a)は、弱い酸化剤、例えば四酸化オスミウムを用いて、約0℃で行うことができ、続いて、過ヨウ素酸ナトリウムまたは四酢酸鉛/炭酸ナトリウムで処理して末端オレフィンを完全に開裂し、末端アルデヒドを提供する。縮合工程(b)は、Wittig試薬などの種々のハロメチレン化剤で有効に行われる。
【0071】
さらに本発明は、下記構造を有する光学的に純粋な化合物の製造方法を提供する。
【0072】
【化24】
【0073】
ここで、Rは、水素、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、置換又は非置換のアリールオキシアルキル、直鎖状又は分枝状アシル、置換又は非置換のアリルまたはベンジルである。この方法は、(a)アリル有機金属試薬と、下記構造:
【0074】
【化25】
【0075】
を有する不飽和アルデヒドとを、適当な条件下で縮合させてアルコールを生成し、任意にそれと並行して、当該アルコールを光学的に分割して下記構造:
【0076】
【化26】
【0077】
を有する光学的に純粋なアルコールを生成し、(b)前記工程(a)で生成した光学的に純粋なアルコールを、適当な条件下でアルキル化またはアシル化して光学的に純粋な化合物を形成することを含んでなる。この方法の一実施態様では、アリル有機金属試薬が、アリル(トリアルキル)スタンナンである。他の実施態様では、前記縮合工程が、チタンテトラアルコキシド及び光学活性触媒を含む試薬を用いて行われる。工程(a)において、不飽和アルデヒドへの1,2-付加は、種々のアリル有機金属試薬を用いて行われるが、典型的には、アリルトリアルキルスズ酸塩、好ましくはアリルスズ-n-ブチルスズ酸塩を用い、キラル触媒及びモレキュラーシーブの存在下、ジクロロメタン等の不活性有機溶媒中で行われる。好ましくは、この方法は、チタンテトラアルコキシド、例えば、チタンテトラ-n-プロポキシド、及び光学活性触媒としてS-(-)BINOLを用いて行われる。アルキル化またはアシル化工程(b)は、典型的なアルキル化剤、例えばアルキルハライドまたはアルキルトシレート、アルキルトリフレート、またはアルキルメシレート、並びに、典型的なアシル化剤、例えば塩化アセチル、無水酢酸、塩化ベンゾイル、または無水ベンゾイルを用い、マイルドな塩基触媒の存在下、ジクロロメタン等の不活性有機溶媒中で行われる。
【0078】
また本発明は、下記式の構造を有する開環アルデヒドの製造方法も提供する。
【0079】
【化27】
【0080】
ここで、R’及びR”は、個々独立に、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリール又はベンジル、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルである。この方法は、(a)下記構造:
【0081】
【化28】
【0082】
(ここで、Rは、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、置換又は非置換のアリールオキシアルキル、トリアルキルシリル、アリールジアルキルシリル、ジアリールアルキルシリル、トリアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルであり;Xは、ハロゲンである)を有するハロオレフィンを、下記構造:
【0083】
【化29】
【0084】
(ここで、(OR”’)2は、酸素、(OR0)2、(SR0)2、-(O-(CH2)n-O)-、-(O-(CH2)n-S)-、または-(S-(CH2)n-S)-であり;R0は、直鎖状または分枝状アルキル、置換または非置換のアリールまたはベンジルであり;nは、2、3または4である)を有する末端オレフィンと、適当な条件下で交差カップリングして、下記構造:
【0085】
【化30】
【0086】
(ここで、Yは、CH(OR*)2であり、R*は、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、置換または非置換アリールオキシアルキルである)を有する交差カップリング化合物を生成し、次いで、(b)前記工程(a)で生成した交差カップリング化合物を、適当な条件下で脱保護して開環化合物を形成することを含んでなる。交差-カップリング工程(a)は、この目的に適しているとこの分野で知られた試薬を用いて行われる。例えば、この工程は、プレ-アシル成分を9-BBNでハイドロボレートすることによって実施できる。得られた混合ボランは、次いでPdCl2(dppf)2等の有機金属触媒または周知の等価物と、炭酸セシウム及びトリフェニルアルシンのような補助試薬の存在下、交差-カップリングされる。脱保護工程(b)は、p-トシック酸(tosic acid)等のマイルドな酸で、典型的にはジオキサン−水といった混合水性有機溶媒系中で行うことができる。
【0087】
また本発明は、下記構造を有するエポチロンの製造方法も提供する。
【0088】
【化31】
【0089】
この方法は、(a)下記構造:
【0090】
【化32】
(ここで、R’及びR”は、個々独立に、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリール又はベンジル、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルである)を有する環化化合物を、適当な条件下で脱保護して脱保護環化化合物を生成し、当該脱保護環化化合物を適当な条件下で酸化して、下記構造:
【0091】
【化33】
【0092】
を有するデスオキシエポチロンを生成し、次いで、(b)前記工程(a)で生成したデスオキシエポチロンを、適当な条件下でエポキシ化してエポチロンを形成することを含んでなる。脱保護工程(a)は、HF-ピリジン等の触媒、次いで、ルチジン等の塩基の存在下でのt-ブチルジメチルシリルトリフレートでの連続的な処理を用いて行われる。デス-マーチン酸化、及びHF-ピリジン等の触媒でのさらなる脱保護は、デスオキシエポチロンを提供する。後者の化合物は、次いで、工程(b)において、過酢酸、過酸化水素、過安息香酸、m-クロロ過安息香酸等の種々のエポキシ化剤を用いて、ジクロロメタン等の不活性有機溶媒中でエポキシ化することができるが、ジメチルジオキシランが好ましい。
【0093】
さらに本発明は、下記構造を有するエポチロン前駆体の製造方法を提供する。
【0094】
【化34】
【0095】
ここで、R1は、水素、またはメチルであり;XはO、または各々炭素原子に単結合したハロゲン及びOR”であり,R0、R’及びR”は、個々独立に、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリール又はベンジル、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルである。この方法は、(a)下記構造:
【0096】
【化35】
【0097】
(ここで、Rは、アセチルである)を有する化合物を、下記構造:
【0098】
【化36】
【0099】
(ここで、Yは、酸素である)を有するアルデヒドと、適当な条件下でカップリングさせてアルドール中間体を生成し、当該アルドール中間体は、任意に、適当な条件下で保護して下記構造:
【0100】
【化37】
【0101】
を有する非環式エポチロン前駆体を生成してもよく、(b)前記非環式エポチロン前駆体に、分子内オレフィン置換を導く条件下で処理してエポチロン前駆体を形成することを含んてなる。この方法の一実施態様では、分子内オレフィン置換を導く条件が、有機金属触媒の存在を必要とする。この方法の特別な実施態様では、触媒が、RuまたはMoを含む。カップリング工程(a)は、非求核塩基、例えばリチウムジエチルアミドまたはリチウムジイソプロピルアミドを用いて準室温で行われるが、好ましくは約−78℃である。工程(b)のオレフィン置換は、この目的に適したこの分野で周知の触媒を用いて行われるが、Grubbの触媒を用いるのが好ましい。
【0102】
さらに、本発明は、下記構造を有し、エポチロンの製造のための中間体として有用な化合物を提供する。
【0103】
【化38】
【0104】
ここで、R’及びR”は、個々独立に、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリール又はベンジル、トリアルキルシリル、ジアリキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルであり;Xは、酸素、(OR*)2、(SR*)2、-(O-(CH2)n-O)-、-(O-(CH2)n-S)-、または-(S-(CH2)n-S)-であり;R*は、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換アリール又はベンジルであり;R2Bは、直鎖状、分枝状または環状アルキルあるいは置換又は非置換アリール又はベンジルボラニル部分であり;nは、2、3または4である。一実施態様では、本発明は、R’がTBSであり、R”がTPSであり、Xが(OMe)2である化合物を提供する。R2Bの好ましい例は、9-BBNから誘導される。
【0105】
また本発明は、下記構造を有する化合物も提供する。
【0106】
【化39】
【0107】
ここで、R’及びR”は、個々独立に、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリール又はベンジル、トリアルキルシリル、ジアリキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルであり;Xは、酸素、(OR)2、(SR)2、-(O-(CH2)n-O)-、-(O-(CH2)m-S)-、または-(S-(CH2)n-S)-であり;nは、2、3または4である。一実施態様では、本発明は、R’がTBSであり、R”がTPSであり、Xが(OMe)2である化合物を提供する。
【0108】
さらに本発明は、下記構造を有するデスメチルエポチロン類似物も提供する。
【0109】
【化40】
【0110】
但し、Rは、Hまたはメチルである。
【0111】
本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【0112】
【化41】
【0113】
但し、Rは、Hまたはメチルである。
【0114】
また本発明は、下記構造を有するtrans-デスメチルデオキシエポチロン類似物も提供する。
【0115】
【化42】
【0116】
但し、Rは、Hまたはメチルである。
【0117】
また本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【0118】
【化43】
【0119】
但し、Rは、Hまたはメチルである。
【0120】
また本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【0121】
【化44】
【0122】
但し、Rは、水素、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、置換又は非置換のアリールオキシアルキル、直鎖状または分枝状アシル、置換または非置換のアロイルまたはベンゾイルであり;R’は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、n-ヘキシル、
【0123】
【化45】
【0124】
、CO2Et、または、(CH2)3OTBDPSであり;そしてXはハロゲンである。一実施態様では、本発明は、RがアセチルでありXがヨウ化物である化合物を提供する。
【0125】
さらに本発明は、下記構造を有する環状アルデヒドの製造方法を提供する。
【0126】
【化46】
【0127】
ここで、Rは、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、置換又は非置換のアリールオキシアルキル、トリアルキルシリル、アリールジアルキルシリル、ジアリールアルキルシリル、トリアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイル又はベンゾイルであり;R’及びR”は、個々独立に、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリールまたはベンジル、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイル又はベンゾイルである。この方法は、(a)下記構造:
【0128】
【化47】
【0129】
(ここで、Xは、ハロゲンである)を有するハロオレフィンを、下記構造:
【0130】
【化48】
【0131】
(ここで、R*2Bは、直鎖状または分枝状または環状アルキル、あるいは置換又は非置換のアリールまたはベンジルボラニル部分であり;Yは、(OR0)2、(SR0)2、-(O-(CH2)n-O)-、-(O-(CH2)n-S)-、または-(S-(CH2)n-S)-であり;R0は、直鎖状または分枝状アルキル、置換または非置換のアリールまたはベンジルであり;nは、2、3または4である)と、適当な条件下で交差カップリングさせて、下記構造:
【0132】
【化49】
【0133】
を有する交差カップリング化合物を生成し、次いで、(b)前記工程(a)で生成した交差カップリング化合物を、適当な条件下で脱保護して開環アルデヒドを形成することを含んでなる。一実施態様では、本発明は、Rがアセチルであり;R’がTBSであり;R”がTPSであり、R*2Bが9−BBNから誘導され、かつYが(OMe)2である方法を提供する。交差-カップリング工程(a)は、この目的のために適しているとこの分野で知られている試薬を用いて行われる。例えば、混合ボランは、PdCl2(dppf)2等の有機金属触媒またはその周知の等価物と、炭酸セシウム及びトリフェニルアルシンの存在下で交差-カップリングできる。脱保護工程(b)は、p-トシック酸等のマイルド名酸触媒を用い、典型的にはジオキサン−水等の混合水性有機溶媒中で行うことができる。
【0134】
また本発明は、下記構造を有する保護されたエポチロンの製造方法も提供する。
【0135】
【化50】
【0136】
ここで、R’及びR”は、個々独立に、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリールまたはベンジル、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイル又はベンゾイルである。この方法は、(a)下記構造:
【0137】
【化51】
【0138】
を有する環状ジオールを、適当な条件下でモノプロテクションして、下記構造:
【0139】
【化52】
【0140】
を有する環状アルコールを生成し、次いで、(b)前記工程(a)で生成した環状アルコールを、適当な条件下で酸化して、保護されたエポチロンを形成することを含んでなる。一実施態様では、本発明は、R’及びR”がTBSである方法を提供する。モノプロテクション(monoprotection)工程(a)は、TBSOTfを含む種々の適当な試薬を用いて、塩基の存在下、不活性有機溶媒中で行われる。塩基は、2,6-ルチジン等の非求核塩基でよく、溶媒はジクロロメタンでよい。反応は、準室温で行われるが、好ましくは−30℃の範囲である。酸化工程(b)は、デス-マーチンペリオジナン(Dess-Martinperiodinane)等の選択的酸化剤を使用し、ジクロロメタン等の不活性有機溶媒中で行われる。酸化は、室温、好ましくは20−25℃で行われる。
【0141】
さらに本発明は、下記構造を有するエポチロンの製造方法を提供する。
【0142】
【化53】
【0143】
この方法は、(a)下記構造:
【0144】
【化54】
【0145】
(ここで、R’及びR”は、個々独立に、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリールまたはベンジル、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイル又はベンゾイルである)を有する保護された環状ケトンを、適当な条件下で脱保護して、下記構造:
【0146】
【化55】
【0147】
を有するデスオキシエポチロンを生成し、次いで、(b)前記工程(a)で生成したデスオキシエポチロンを、適当な条件下でエポキシ化してエポチロンを形成することを含んでなる。一実施態様では、本発明は、R’及びR”がTBSである方法を提供する。脱保護工程(a)は、HF・ピリジン等の試薬を含む処理によって行われる。脱保護された化合物は、工程(b)において、過酢酸、過酸化水素、過安息香酸、m-クロロ過安息香酸等のエポキシ化剤を用い、ジクロロメタン等の不活性有機溶媒中でエポキシ化されるが、好ましくはジメチルジオキシランである。
【0148】
また本発明は、下記構造を有する環状ジオールの製造方法も提供する。
【0149】
【化56】
【0150】
ここで、R’は、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリールまたはベンジル、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイル又はベンゾイルである。この方法は、(a)下記構造:
【0151】
【化57】
【0152】
(ここで、Rは、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、置換又は非置換のアリールオキシアルキル、トリアルキルシリル、アリールジアルキルシリル、ジアリールアルキルシリル、トリアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイル又はベンゾイルであり;R’は、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリールまたはベンジル、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイル又はベンゾイルである)を有する開環アルデヒドを、適当な条件下で環化して、下記構造:
【0153】
【化58】
【0154】
を有し、α-及びβ-アルコール成分を含有する保護された環状アルコールのエナンチオマー混合物を形成し、(b)任意に、前記工程(a)で生成されたα-アルコールを、適当な条件下で単離及び酸化してケトンを生成し、その後、当該ケトンを適当な条件下で還元して、実質的にβ-アルコールからなる保護された環状アルコールのエナンチオマー混合物を形成し、次いで、(c)前記工程(a)及び(b)で生成された保護された環状アルコールを、適当な条件下で脱保護剤で処理して環状ジオールを形成することを含んでなる。一実施態様では、本発明は、R’がTBSであり、R”がTPSである方法を提供する。環化工程(a)は、KHMDS等の種々のマイルドな非求核塩基を用い、THF等の不活性溶媒中で行われる。反応は、準室温、好ましくは−90℃〜−50℃の間、より好ましくは−78℃で行われる。非天然α−OHジアステレオマーの単離は、適当なタイプのクロマトグラフィまたは結晶化を含む任意の精製方法によって行われる。この目的に適したクロマトグラフィ技術は、高圧液体クロマトグラフィ、向流クロマトグラフィ、またはフラッシュクロマトグラフィを含む。種々のカラム媒体が適しており、中でも、シリカまたは逆送支持体を含む。β−OH誘導体は、次いで、デス-マーチンペリオジナン等の選択的酸化剤を用いて酸化される。得られたケトンは、選択的還元剤を用いて還元される。種々の水素化ホウ素及び水素化アルミニウム試薬は夕子上ある。好ましい還元剤は、水素化ホウ素ナトリウムである。処理工程(c)は、HF-ピリジンを含む様々な脱保護剤を用いて行うことができる。
【0155】
さらに、本発明は、ガン患者におけるガンの治療方法も提供し、その方法は、当該患者に、ここに開示したエポチロンBに関連する任意の類似物の治療のための有効量を、任意に製薬に適したキャリアと組み合わせて投与することを含む。この方法は、ガンが充実性腫瘍または白血病である場合に適用できる。特に、この方法は、ガンが乳ガンまたは黒色腫である場合に適用できる。
【0156】
また本発明は、ガンの治療用製薬組成物も提供し、この組成物は、上記のエポチロン類似物の任意のものを活性成分として含み、任意だが典型的には製薬に適したキャリアも含む。本発明の製薬組成物は、他の治療用活性成分をさらに含んでいてもよい。
【0157】
さらに本発明は、ガン患者におけるガンの治療方法を提供し、その方法は、当該患者に、上記エポチロン類似物の治療のための有効量と、製薬に適したキャリアとを含む。この方法は、ガンが充実性腫瘍または白血病である場合に適用できる。
【0158】
エポチロンA及びBに関連する上記の化合物は、ガンの治療、特に多剤耐性が存在する場合において、in vivoでもin vitroでも有用である。これらの化合物の細胞中のMDRの非−基質としての能力を、下表において測定したが、それによると、これらの化合物は、ガン患者におけるガンの治療、予防または改善に有用であることが示された。
【0159】
本発明の化合物の治療的投与量は、治療すべき状況の性質及び重さ、並びに化合物の種類及びその投与経路によって変化する。一般的に、抗ガン剤活性のための1日の投与量は、哺乳類の体重1kg当たり、0.001から25mg、好ましくは0.001から10mg、最も好ましくは0.001から1.0mgの範囲であり、これらは1回又は複数回投与である。通常の場合、約25mg/kgの投与量が必要とされる。
【0160】
ここに開示した化合物の有効投与量を、哺乳類、特にヒトに供給するために、任意の適した投与経路が用いられる。例えば、経口、直腸、局所、腸管外、眼、肺、鼻等の経路が用いられる。投与形態は、錠剤、トローチ、分散液、懸濁液、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エアロゾル等を含む。
【0161】
これらの組成物は、経口、直腸、局所(経皮装置、エアロゾル、クリーム、軟膏、ローション及び粉剤を含む)、腸管外(皮下、筋肉内、静脈内を含む)、眼(眼動脈)、肺(鼻または口腔吸入)又は鼻投与に適した組成物を含む。任意の与えられた場合における最も好適な経路は、治療すべき状況の性質及び重さ、並びに、活性成分の性質に大きく依存する。これらは、単位投与形態で便利に提供され、製薬の分野で良く知られた任意の方法によって調製される。
【0162】
経口投与形態の調製において、異例の製薬媒体を用いることもでき、それは、経口液体製剤(例えば、懸濁液、エリキシル、及び溶液)の場合、水、グリコール、オイル、アルコール、香料、防腐剤、着色剤等であり、経口固体製剤の場合、デンプン、糖、微結晶セルロース等のキャリア、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、バインダー、崩壊剤等であり、粉末、カプセル及び錠剤などの固体製剤は、経口液体製剤より好ましい。必要ならば、標準的な水性または非水性技術によって被覆してもよい。上記の投与形態に加えて、本発明の化合物は、徐放手段及び装置によって投与してもよい。
【0163】
経口投与に適した本発明の製薬組成物は、カプセル、カシェ剤又は錠剤といった別個の単位として調製してもよく、それら各々は、粉末または顆粒、あるいは水性又は非水性液体中の溶液または懸濁液、あるいは水中油型または油中水型エマルションの形態の所定量の活性成分を被覆している。これらの組成物は、薬学の分野で知られた任意の方法によって調製される。一般に、組成物は、活性成分と液体キャリア、微粉砕した固体キャリア、またはその両方とを均一かつ強力に混合することによって調製され、次いで、必要ならば、製品を所望の形状に成形する。例えば、錠剤は、任意に1つ又はそれ以上の副成分とともに、圧縮又は成型することによって調製される。圧縮錠剤は、適当な機械の中で、粉末又は顆粒といった自由に流動する形態の活性成分を、任意にバインダー、潤滑剤、不活性希釈剤または界面活性剤または分散剤と混合して圧縮することにより調製される。成型錠剤は、適当な機械の中で、不活性液体希釈剤で加湿された粉末状化合物の混合物を成型することにより調製される。
【0164】
本発明は、以下の詳細な実験から、さらに良く理解されるであろう。しかし、当業者は、議論される特定の方法及び結果が、後述される請求の範囲に記載された本発明を単に例示するのみであることを容易に理解するであろう。本発明に係るエポチロンA及びB、それらの類似物、及びそれらの中間体の製造方法は、この分野で周知の種々の代替的保護基を包含すると理解されるであろう。下記の実施例を含むこの開示において用いられる保護基は、単なる例示に過ぎない。
【実施例】
【0165】
実施例1
THPグリコール;13:CH2Cl2(900ml)中の(R)-(+)-グリシドール12(20g;270mm ol)及び新たに蒸留した3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(68.1g;810mmol)を、ピリジニウム p-トルエンスルホン酸塩(2.1g;8.36mmol)で、室温'(rt)において処理し、得られた溶液を16時間攪拌した。溶液の約50%を、次いで、真空下で除去し、残った溶液をエーテル(1L)で希釈した。次に、有機層を重炭酸ナトリウム飽和水溶液(500ml)で2回に分けて洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮した。残留物をフレッシュクロマトグラフィ(シリカ、25→50%エーテル:ヘキサン)で精製し、THPグリシドール13(31.2g;73%)を無色液体として得た。
【0166】
【数1】
【0167】
実施例2
アルコール13a:トリメチルシリルアセチレン(32.3g;329mmol)を、シリンジを介してTHF(290ml)に添加し、得られた溶液を-78℃に冷却し、n-ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M溶液の154ml;246.4mmol)で処理した。15分後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテレート(34.9g;246mmol)を添加し、得られた混合物を10分間攪拌した。次いで、THF(130ml)中のエポキシド13(26g;164.3mmol)を、カニューレを通して添加し、得られた溶液を、-78℃で5.5時間攪拌した。反応は、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(250ml)の添加によってクエンチし、溶液を室温に戻した。次いで、混合物をエーテル(600ml)で希釈し、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(250ml)、水(250ml)、及びブライン(250ml)で連続的に洗浄した。次いで、有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、真空下で濃縮した。残留物をフレッシュクロマトグラフィ(シリカ、20%エーテル:ヘキサン)で精製し、アルコール13a(34g;76%)を得た。
【0168】
実施例3
MOMエーテル13b:無水1,2-ジクロロエタン(600ml)中のアルコール13a(24g;88.9 mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチレオンアミン(108ml;662mmol)溶液を、クロロメチルメチルエーテル(17m l;196mmol)で処理し、得られた混合物を55℃に28時間加熱した。次いで、暗色混合物を室温に冷却し、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(300ml)で処理した。層が分離した後、有機層を重炭酸ナトリウム飽和水溶液(200ml)及びブライン(200ml)で連続的に洗浄した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、シリカゲルパッド(エーレツリンス)を通して瀘過した。残留物をフレッシュクロマトグラフィ(シリカ、20→30%エーテル:ヘキサン)で精製し、MOMエーテル13b(23.7g;85%)を得た。
【0169】
実施例4
アルコール14:メタノール(90ml)中のTHPエーテル13bを、ピリジニウムp-トルエンスルホン酸塩(4.0g;15.9mmol)で処理し、得られた混合物を室温で16時間攪拌した。次いで、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(100ml)の添加で反応をクエンチし、過剰のメタノールを真空下で除去した。残留物をエーテル(300ml)で希釈し、有機層を重炭酸ナトリウム飽和水溶掖(200ml)及びブライン(200ml)で連続的に洗浄した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮した。残留物をフレッシュクロマトグラフィ(シリカ、40→50%エーテル:ヘキサン)で精製し、アルコール14(13.1g;95%)を無色オイルとして得た。
【0170】
実施例5
アルコール14a:CH2Cl2(165ml)中の塩化オキサリル(2MのCH2Cl2溶液の24.04ml; 48.08mmol)の冷却溶液(-78℃)に、無水DMSO(4.6ml;64.1mmol)を滴下した。
【0171】
30分後、CH2Cl2(65ml+10mlリンス)中のアルコール14(6.93g;32.05mmol)溶液を添加し、得られた溶液を-78℃で40分間攪拌した。次いで、新たに蒸留したトリエチルアミン(13.4ml;96.15mmol)を添加し、冷却バスを取り除き、混合物を0℃まで暖めた。次いで、反応混合物をエーテル(500ml)で希釈し、水(250ml)で2回及びブライン(250ml)で1回連続的に洗浄した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮した。
【0172】
上記の反応で調製した原料アルデヒド(6.9g)を、エーテル(160ml)に溶解し、0℃に暖めた。次いで、メチルマグネシウムブロマイド(3.0Mブチルエーテル溶液の32.1ml;96.15mmol)を添加し、溶液を徐々に室温まで暖めた。10時間後、反応混合物を0℃に冷却し、塩化アンモニウム飽和水溶液の添加により反応をクエンチした。混合物をエーテル(200ml)で希釈し、水(150ml)及びブライン(150ml)で連続的に洗浄した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮した。残留物をフレッシュクロマトグラフィ(シリカ、40→50%エーテル:ヘキサン)で精製し、アルコール14a(6.3g;14から85%)を得た。
【0173】
実施例6
ケトン15:室温のCH2Cl2(20ml)中の、アルコール14(1.0g;4.35mmol)、4Åmol.シーブス、及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(1.0g;8.7mmol)を、触媒量のテトラ-n-プロピルアンモニウム過ルテニウム酸塩で処理し、得られた黒色懸濁液を3時間攪拌した。次いで、反応混合物をシリカゲルパッド(エーテルリンス)を通して濾過し、濾過物を真空下で濃縮した。残留物をフレッシュクロマトグラフィ(シリカ、10%エーテル:ヘキサン)で精製し、ケトン15(924mg;93%)を明黄色オイルとして得た。
【0174】
実施例7
アルケン17:THF(15.2ml)中の酸化ホスフィン16(1.53g;4.88mmol)の冷却溶液(-78℃)を、n-ブチルリチウム(2.45Mヘキサン溶液の1.79ml)で処理した。15分後、オレンジ色溶液を、THF(4.6ml)中のケトン15(557mg;2.44mmol)溶液で処理した。
【0175】
10分後、冷却バスを取り除き、溶液を室温まで暖めた。溶渣が暖まると、析出物の生成が観察された。塩化アンモンニウム飽和水溶液(20ml)の添加により反応をクエンチした。混合物をエーテル(150ml)に投入し、水(50ml)及びブライン(50ml)で連続的に洗浄した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、瀘過し、濃縮した。残留物をフレッシュクロマトグラフィ(シリカ、10%エーテル:ヘキサン)で精製し、アルケン17(767mg;97%)を無色オイルとして得た。
【0176】
【数2】
【0177】
実施例8
ヨウ化アルキル形成:アセトン(100ml)中のアルキン17(3.00g;9.29mmol)の溶掖に、0℃でNIS(2.51g;11.2mmol)及びAgNO3(0.160g;0.929mmol)を添加した。次いで、混合物を徐々に室温まで暖めた。1.5時間後、反応物をEt2O(250mL)に投入し、飽和重亜硫酸(40mL)で1回、飽和NaHCO3(40mL)で1回、ブライン(40mL)で1回洗浄し、無水MgSO4上で乾燥させた。ヘキサン/酢酸エチル(10:1-7:1)での勾配溶離を用いたシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィによる精製で、2.22g(64%)のヨウ化物17aを琥珀色オイルとして得た。
【0178】
実施例9
ヨウ化アルキニルの還元:Et20(60mL)中のシクロヘキセン(1.47mL、17.9mmol)溶液に、BH3・DMS(0.846mL,8.92mmol)を0℃で添加した。次いで、反応物を室温まで暖めた。1時間後、ヨウ化物x(2.22g;5.95mmol)をEt2Oに添加した。3時間後、AcOH(1.0mL)を添加した。さらに30分後、溶液を飽和NaHCO3に投入し、Et2O(3×100mL)で抽出した。混合した有機物を、次いで、ブライン(50mL)で洗浄し、無水HgSO4上で乾燥させた。ヘキサン/酢酸エチル(6:1)で溶離させるシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィによる精製で、1.45g(65%)のヨウ化ビニル18を黄色オイルとして得た。
【0179】
実施例10
MOM除去:CH2Cl2(40mL)中のヨウ化物18(1.45g;3.86mmol)溶掖に、チオフェノール(1.98mL;19.3mmol)及びBF3・Et2O(1.90mL;15.43mmol)を室温で添加した。22時間後、反応物をEtOAc(150mL)に投入し、1N NaOH(2×50mL)で洗浄し、無水MgSO4上で乾燥させた。ヘキサン/酢酸エチル(4:1-2:1-1:1)での勾配溶離を用いた
【0180】
シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィによる精製で、1.075g(86%)のアルコール 18aを薄黄色オイルとして得た。
【0181】
実施例11
アセテート形成:CH2Cl2(30mL)中のアルコール18a(1.04g;3.15mmol)溶液に、ピリジン(2.52mL,25.4mmol)、無水酢酸(1.19mL,12.61mmol)及びDMAP(0.005g)を添加した。1時間後、揮発物を真空下で除去した。得られた残留物を、ヘキサン/酢酸エチル(7:1)で溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、1.16g(99%)のアセテート19を薄黄色オイルとして得た。
【0182】
【数3】
【0183】
実施例12
CH2Cl2(23mL)中のアルコール4(2.34g,3.62mmol)及び2,6-ルチジン(1.26mL,10.86m mol)溶液を、0℃においてTBSOTf(1.0mL,4.34mmol)で処理した。0℃で1.5時間攪拌した後、反応混合物をMeOH(200μL)でクエンチし、混合物をさらに5分間攪拌した。反応混合物をEt2O(100mL)で希釈し、1N HCl(25mL)、水(25mL)及びブライン(25mL)で続けて洗浄した。溶液をMgSO4上で乾燥させ、濾過して濃縮した。ヘキサン中5%Et2Oで溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、化合物7(2.70g,98%)を無色フォームとして得た。
【0184】
実施例13
CH2Cl2/H2O(20:1,80mL)中の化合物7(2.93g,3.85mmol)の溶液を、DDQ(5.23g,23.07mmol)で処理し、得られた懸濁液を室温で24時間攪拌した。反応混合物をEt2O(200ml)で希釈し、水性NaHCO3(2×40mL)で洗浄した。水層をEt2O(3×40mL)で抽出し、まとめた有機分画をブライン(50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過して濃縮した。原料オイルを、ヘキサン中30%エーテルで溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、アルコール7A(2.30g,89%)を無色オイルとして得た。
【0185】
【数4】
【0186】
実施例14
CH2Cl2(40mL)中の塩化オキサリル(414μL,4.74mmol)の溶液に、DMSO(448μL,6.32mmol)を-78℃で滴下し、得られた溶掖を-78℃で30分間攪拌した。CH2Cl2(20mL)中のアルコール7a(2.12g,3.16mmol)を添加し、得られた白色懸濁液を-78℃で45分間攪拌した。反応混合物をEt3N(2.2mL,15.8mmol)でクエンチし、溶液を0℃まで暖め、この温度で30分間攪拌した。反応混合物をEt20(100mL)で希釈し、水性NH4Cl(20mL)、水(20mL)及びブライン(20mL)で続けて洗浄した。原料アルデヒドを、ヘキサン中5%Et2Oで溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、アルデヒド8(1.90g,90%)を無色オイルとして得た。
【0187】
実施例15
(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムクロライド(2.97g,8.55mmol)のTHF(25mL)溶液を、0℃においてKOtBu(THF中1Mの8.21mL,8.1mmol)で処理した。混合物を0℃で30分間攪拌した。THF(10mL)中のアルデヒド8(3.1g,4.O7mmol)を添加し、得られた溶液を室温まで暖め、この温度で2時間攪拌した。反応混合物は、水性NH4Cl(40mL)でクエンチし、得られた溶液をEt2O(3×30mL)で抽出した。まとめたEt2O分画を、ブライン(20ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濃縮した。残留物を、ヘキサン中5%Et2Oで溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、化合物9(2.83g,86%)を無色フォームとして得た。
【0188】
実施例16
ジオキサン/H2O(9:1,28mL)中の化合物9(2.83g,3.50mmol)の溶液に、pTSA・H2O(1.0g,5.30mmol)を添加し、得られた混合物を50℃に2時間加熱した。室温まで冷却した後、Et20(50mL)で希釈し、水性NaHCO3(15mL)、ブライン(20mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、濃縮して、アルデヒド9a(2.75g,99%)を無色フォームとして得た。
【0189】
実施例17
メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(1.98g,5.54mmol)のTHF(50mL)溶液を、0℃においてリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(THF中1Mの5.04mL,5.04mmol)で処理し、得られた溶液を0℃で30分間攪拌した。THF(5.0mL)中のアルデヒド9a(2.0g,2.52mmol)を添加し、得られた溶液を室温まで暖め、この温度で1時間攪拌した。反応混合物は、水性NH4Cl(15mL)でクエンチし、Et2O(3×20mL)で抽出した。まとめたEt2O分画を、ブライン(15mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濃縮した。残留物を、ヘキサン中5%Et2Oで溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、化合物10(1.42g,76%)を無色フォームとして得た。
【0190】
実施例18
MeOH/THF(2:1,13mL)中の化合物10(1.0g,1.34mmol)の溶液を、室温において[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨードベンゼン](865mg,2.0lmmol)で処理した。15分後、反応混合物を水性NaHCO3(25mL)でクエンチした。混合物を、Et2O(3×25mL)で注出し、まとめたEt2O分画をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、濃縮した。残留物を、ヘキサン中5%Et2Oで溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、化合物11(865mg,92%)を無色フォームとして得た。
【0191】
【数5】
【0192】
実施例19
スズキ・カップリング:THF(8.0mL)中のオレフィン11(0.680,1.07mmol)の溶液に、9-BBN(0.5M THF溶液,2.99mL,1.50mmol)を添加した。別のフラスコで、ヨウ化物19(0.478g,1.284mmol)をDMF(10.0mL)中に溶解した。次いで、CsCO3(0.696g,2.14mmol)を強く攪拌しながら添加し、さらに、Ph3As(0.034g,0.111mmol)、PdCl2(dppf)2(0.091g,0.111mmol)及びH20(0.693mL,38.5mmol)を添加した。4時間後、ボラン溶液を、DMF中のヨウ化物混合物に添加した。反応物は即座に暗褐色となり、2時間後には徐々に薄黄色となった。次いで、反応物をH2O(100mL)中に投入し、Et20(3×50mL)で抽出した。まとめた有機物を、水(2×50mL)及びブラインで1回洗浄し、無水HgSO4上で乾燥させた。ヘキサン/酢酸エチル(7:1)で溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、0.630g(75%)のカップリング化合物20を薄黄色オイルとして得た。
【0193】
実施例20
ジメチルアセタール21の加水分解:アセテート20(0.610g,0.770mmol)を、ジオキサン/H20(9:1,15m)に溶解し、p-TSA・H2O(0.442g,2.32mmol)を添加した。次いで、混合物を55℃に加熱した。3時間後、混合物を室温に冷却し、Et2O中に投入した。この溶液を、飽和NaHCO3(30mL)で1回、ブライン(30mL)で1回洗浄し、無水MgSO4上で乾燥させた。ヘキサン/酢酸エチル(7:1)で溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、0.486g(85%)のアルデヒド21を薄黄色オイルとして得た。
【0194】
【数6】
【0195】
実施例21
アルドール:アセテート-アルデヒド21(84mg,0.099mmol)のTHF溶液に、-78℃においてKHMDS(0.5Mのトルエン溶液,1.0ml,0.5mmol)を滴下した。得られた溶液を、-78℃で30分間攪拌した。次いで、反応混合物をシリカゲルの短パッドにカニューレ挿入し、エーテルで洗浄した。残留物を、フラッシュクロマトグラフィ(シリカ,ヘキサン中12%EtOAc)により精製して、ラクトン22(37mgの3-S及び6mgの3-R,51%)を白色フォームとして得た。
【0196】
実施例22
モノ脱保護:ラクトン22(32mg,0.0376mmol)を、1mlのピリジン緩衝HF・ピリジン-THF溶液で、室温において2時間処理した。反応混合物を、飽和NHCO3水に投入し、エーテルで抽出した。有機層を、飽和CuSO4(10ml×3)及び飽和NaHCO3(10ml)で続けて洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物を、フラッシュクロマトグラフィ(シリカ,ヘキサン中25%EtOAc)により精製して、ジオール22a(22mg,99%)を白色フォームとして得た。
【0197】
実施例23
無水CH2Cl2中のジオール22a(29mg,0.0489mmol)及び2,6-ルチジン(0.017ml,0.147 mmol)の冷却(-30℃)溶液に、TBSOTf(0.015ml,0.0646mmol)を添加した。次いで、得られた溶液を-30℃で30分間攪拌した。反応は、0.5M HCl(10ml)でクエンチし、エーテル(15ml)で抽出した。エーテル層を、飽和NaHCO3で洗浄し、乾燥(Na2SO4)させ、真空下で濃縮した。残留物を、フラッシュクロマトグラフィ(シリカ,ヘキサン中8%EtOAc)により精製して、TBSエーテル22B(32mg,93%)を白色フォームとして得た。
【0198】
実施例24
ケトン形成:CH2Cl2(2mL)中のアルコール22B(30mg,0.0424mmol)溶液に、25℃において、デス-マーチンペリオジナン(36mg,0.0848mmol)を一度に添加した。次いで、得られた溶液を25℃で1.5時間攪拌した。反応は、1:1の飽和重炭酸ナトリウム:チオ硫酸ナトリウム水溶液(10ml)を添加してクエンチし、5分間攪拌した。次いで、混合物をエーテル(3×15ml)で抽出した。有機層を乾燥(Na2SO4)し、濾過し、真空下で濃縮した。残留物を、フラッシュクロマトグラフィ(シリカ,ヘキサン中8%EtOAc)により精製して、ケトン22C(25mg,84%)を白色フォームとして得た。
【0199】
【数7】
【0200】
実施例25
デスオキシ化合物:THF(1ml)中のTBSエーテル22C(27mg,0.038mmol)溶液に、25℃において、プラスチック容器で、HF・ピリジン(0.5ml)を添加した。得られた溶液を25℃で2時間攪拌した。反応混合物を、クロロホルム(2ml)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム(20ml)に極めてゆっくり添加した。混合物をCHCl3(20ml×3)で抽出した。有機層を乾燥(Na2SO4)し、濾過し、真空下で濃縮した。残留物を、フラッシュクロマトグラフィ(シリカ,ヘキサン中30%EtOAc)により精製して、ジオール23(18mg,99%)を白色フォームとして得た。
【0201】
【数8】
【0202】
実施例26
エポチロン:乾燥CH2Cl2(1ml)中のデスオキシエポチロン(9mg,0.0189mmol)の冷却(-50℃)溶液に、新たに調製したジメチルジオキシラン(0.95ml,アセトン中の0.1M)を添加した。得られた溶液を、-30℃まで2時間暖めた。次いで、窒素気流を溶液に吹き込み、過剰のDMDOを除去した。残留物を、フラッシュクロマトグラフィ(シリカ,ヘキサン中40%EtOAc)により精製して、エポチロンA(4.6mg,49%)を無色固体として、そして0.1mgのcis-エポチロンジアステレオマー得た。この物質は、全ての点において天然エポチロンAと一致した。
【0203】
実施例27
閉環オレフィン置換のための方法:乾燥ベンゼン(1.5mL)中のジエン24(5mg,0.0068mmol)の攪拌された溶液に、グラッブス(grubbs)の触媒(2.8mg,0.0034mmol)を添加した。12時間後、触媒(2.8mg)をさらに添加した。さらに5時間後、反応物を濃縮した。ヘキサン/酢酸エチル(1:1)で溶離するフラッシュクロマトグラフィにより精製して、ラクトン23(3.5mg,94%,2:1E/Z)を得た。
【0204】
実施例28
化合物19の調製アルコール2A:CH2Cl2(16mL)中の、(S)-(-)-1,11-ビ-2-ナフトール(259mg,0.91mmol)、Ti(O-i-Pr)4(261μL;0.90mmol)、及び4Åシーブス(3.23g)の混合物を、1時間環流加熱した。この混合物を室温に冷却し、アルデヒド1を添加した。10分後、懸濁液を-78℃に冷却し、アリルトリブチルスズ(3.6mL;11.60mmol)を添加した。反応混合物を-78℃で10分間攪拌し、次いで、-20℃のフリーザーに70時間置いた。飽和NaHCO3(2mL)を添加し、混合物を1時間攪拌し、Na2SO4を投入し、次いで、MgSO4及びセライトのパッドを通して濾過した。粗原料をフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,1:1)により精製して、アルコール2Aを黄色オイルとして得た(1.11g,60%)。
【0205】
実施例29
アセテート3A:CH2Cl2(12mL)中の、アルコール2A(264mg,1.26mmol)溶液に、DMAP(15mg;0.098mmol)、Et3N(0.45mL,3.22mmol)及びAc2O(0.18mL;1.90mmol)を添加した。2時間後、反応混合物を20mLのH2Oでクエンチし、EtOAc(4×20mL)で抽出した。まとめた有機層をMgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(EtOAc/ヘキサン,1:3)により精製して、アセテート3Aを黄色オイルとして得た(302mg,96%)。
【0206】
実施例30
ヨウ化ビニル:アセトン中のアセテート(99mg,0.39mmol)の溶液に、0℃において、H2O(4滴)、OsO4(ブチルアルコール中2.5重量%;175μL;0.018mmol)、及びN-メチル-モルホリン-N-オキシド(69mg;0.59mmol)を添加した。混合物を、0℃で2時間45分攪拌し、次いで、Na2SO4でクエンチした。溶液を10mLのH2Oに投入し、EtOAc(5×10mL)で抽出した。まとめた有機層をMgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。THF/H2O(4mL,3:1)中の原料生成物溶液に、NaLO4(260mg;1.22mmol)を添加した。1.25時間後、反応混合物を10mLのH2Oでクエンチして濃縮した。残留物をEtOAc(5×10mL)で抽出した。有機層をMgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(EtOAc/ヘキサン,1:1)により、黄色オイル(80mg)を得たが、これは未同定の複生成物を含んでいた。この混合物を、さらに精製すること無しに用いた。
【0207】
0.25mLのTHF中の(Ph3P+CH2I)I-(100mg;0.19mmol)溶液に、室温において、NAHMDS(THF中1H)の0.15mL(0.15mmol)を添加した。得られた溶液に、-78℃において、THF(0.25mL)中のHMPA(22μL;0.13mmol)と前工程の生成物(16mg)を加えた。次いで、反応混合物を、30分間攪拌した。ヘキサン(10mL)を添加した後、溶液をEtOAc(4×10mL)で抽出した。まとめたEtOAc層を乾燥(MgSO4)し、濾過紙、そして濃縮した。調製TLC(EtOAc/ヘキサン,2:3)により、ヨウ化ビニルを黄色オイルとして得た(14mg;3段階で50%)。
【0208】
実施例31
ヨードオレフィンアセテート8C:ヨウ化エチルトリフェニルホスホニウム(1.125g,2.69mmol)のTHF(10mL)中の懸濁液に、nBuLi(ヘキサン中2.5M溶液,1.05mL,2.62mmol)を室温で添加した。固体物質が消失した後、溶液を、-78℃においてTHF(20mL)中のヨウ化物(0.613g,2.41mmol)の混合物に添加した。得られた懸濁液を、-78℃で5分間強く攪拌し、次いで-20℃まで暖め、ヘキサメチルジシラザンナトリウム(1MのTHF溶液,2.4mL,2.4mmol)で処理した。得られた赤色溶液を、5分間攪拌し、アルデヒド9C(0.339g,1.34mmol)を徐々に添加した。混合物を-20℃で40分間攪拌し、ペンタン(50mL)で希釈し、セライトのパッドを通して濾過し、濃縮した。残留物のカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,85:15)による精製で、0.202g(酢酸ビニル10Cから全体で25%)のヨウ化ビニル8Cを黄色オイルとして得た。
【0209】
【数9】
【0210】
実施例32
アセタール13C:THF(0.5mL)中のオレフィン"7C"(0.082g,0.13mmol)溶液に、9-BBN(0.5MのTHF溶液,0.4mL,0.2mmol)を添加した。室温で3.5時間攪拌した後、さらに9-BBN(0.5MのTHF溶液,0.26mL,0.13mmol)を添加した。別のフラスコにおいて、ヨウ化物8C(0.063g,0.16mmol)をDMF(0.5mL)に溶解した。次いで、Cs2CO3(0.097g,0.30mmol)を強く攪拌しながら添加し、PdCl2(dppf)2(0.018,0.022mmol)、Ph3As(0.0059g,0.019mmol)、及びH2O(0.035mL,1.941mmol)を続けて添加した。6時間後、ボラン溶液をDMF中のヨウ化物混合物に添加した。反応物は即座に暗褐色となり、3時間後に徐々に薄黄色となった。次いで、反応物を、H2O(10mL)に投入し、Et2O(3×15mL)で抽出した。まとめた有機層を、H2O(3×15mL)、ブライン(1×20mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,9:1)により、0.089g(77%)のカップリング生成物13Cを黄色オイルとして得た。
【0211】
実施例33
アルデヒド14C:アセタール13C(0.069g,0.077mmol)をジオキサン/H2O(9:1,1mL)に溶解し、pTSA・H2O(0.045g,0.237mmol)を添加した。次いで、混合物を55℃に加熱した。3時間後、混合物を室温に冷却し、Et2Oに投入し、Et2O(4×15mL)で抽出した。まとめたエーテル溶液を、飽和NaHCO3(1×30mL)、ブライン(1×30mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,3:1)により、0.046g(71%)のアルデヒド14Cを薄黄色オイルとして得た。
【0212】
実施例34
マクロサイクル15C-(SR):THF(5mL)中のアルデヒド14C(0.021g,0.024mmol)溶液に、-78℃において、KHMDS(0.5Mのトルエン溶液,0.145mL,0.073mmol)を添加した。溶液を-78℃で1時間攪拌し、飽和NH4Clでクエンチし、エーテル(3×15mL)で抽出した。まとめた有機層を、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,7:1)により、0.008gの所望のα-アルコール15C-(S)及び0.006gのβ-アルコール15C-(R)を薄黄色オイルとして得た。
【0213】
実施例35
マクロサイクル15C-(S):β-アルコール15-(R)(0.006g,0.0070mmol)の0.5mLのCH2Cl2溶液に、室温でデス-マーチンペリオジネート(0.028g,0.066mmol)を添加した。0.5時間後、デス-マーチンペリオジネート(0.025g,0.059mmol)をさらに添加した。得られた溶液を、室温でさらに1時間攪拌し、次いで、エーテル(2mL)及びNa2S2O3/飽和NaHCO3(3mL,1:1)で処理し、H2O(20mL)に投入し、エーテル(4×10mL)で抽出した。まとめたエーテル溶液を、H2O(1×30mL)、ブライン(1×30mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。MeOH/THF(2mL,1:1)中の原料ケトン15C’溶液に、-78℃でNaBH4(0.015g,0.395mmol)を添加した。得られた溶液を室温で1時間攪拌し、飽和NH4Clでクエンチし、エーテル(3×15mL)で抽出した。有機層を、MgSO4で乾燥させ、瀘過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,9:1)により、0.0040g(67%)のα-アルコール15C-(S)及び0.006gを黄色オイルとして、そして0.0006gのβ-アルコール15C-(R)を得た。
【0214】
実施例36
ジオール15C”’:シリルエーテル15C-(S)(0.010g,0.012mmol)を、HF・ピリジン/ピリジン/THF(1mL)に溶解した。この溶液を室温で2時間攪拌し、次いで、Et2O(1mL)で希釈し、Et2O/飽和NaHCO3(20mL,1:1)に投入し、Et2O(4×10mL)で抽出した。Et2O溶液を、CuSO4(3×30mL)、飽和NaHCO3(1×30mL)、ブライン(1×30mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,9:1)により、0.0066g(93%)のジオール15C”を薄黄色オイルとして得た。
【0215】
実施例37
アルコール15C”’:ジオール15C”(0.0066g,0.011mmol)の0.5mLのCH2Cl2溶液に、2,6-ルチジン(7μL,0.060mmol)及びTBSOTf(5μL,0.022mmol)を添加した。得られた溶液を-30℃で0.5時間攪拌し、H2O(5mL)でクエンチして、Et2O(4×10mL)で抽出した。エーテル溶液を、0.5MのHCl(1×10mL)、飽和NaHCO3(1×10mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,93:7)により、0.0070g(89%)のアルコール15C”’を薄黄色オイルとして得た。
【0216】
実施例38
ケトン16C:アルコール15C”’(0.006g,0.0083mmol)の0.5mLのCH2Cl2溶液に、室温でデス-マーチンペリオジナン(0.030g,0.071mmol)を添加した。1.25時間後、デス-マーチンペリオジナン(0.025g,0.059mmol)をさらに添加した。得られた溶液を室温でさらに0.75時間攪拌し、エーテル(1mL)及びNa2S2O3/飽和NaHCO3(2mL,1:1)で処理し、H2O(20mL)に投入し、エーテル(4×10ML)で抽出した。エーテル溶液を、飽和NaHCO3(1×20mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,9:1)により、0.0040g(67%)のケトン16Cを薄黄色オイルとして得た。
【0217】
実施例39
デスオキシエポチロンB(2C):THF(0.35mL)中のケトン16C(0.004g,0.0056mmol)の溶掖に、HF・ピリジン(0.25mL)を20分間滴下した。この溶液を室温で1.5時間攪拌し、CHCl3(2mL)で希釈し、飽和NaHCO3/CHCl3(20mL,1:1)に徐々に投入し、CHCl3(4×10mL)で抽出した。まとめたCHCl3層を、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,3:1)により、0.0022g(80%)のデスオキシエポチロンB2Cを薄黄色オイルとして得た。
【0218】
実施例40
エポチロンB(2):CH2Cl2(0.25mL)中のデスオキシエポチロンB(0.0022g,0.0041mmol)の溶液に、-50℃において、ジメチルジオキシラン(0.1mL,0.0095mmol)を滴下した。得られた溶液を-50℃で1時間攪拌した。ジメチルオキシラン及び溶媒をN2気流で除去した。残留物をフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,1:1)で精製することにより、0.0015g(70%)のエポチロンB(2)を薄黄色オイルとして得たが、これは、1H NMR、マススペクトル、及び[α]Dにおいて基準試料と一致した。
【0219】
実施例41
8-デスオキシエポチロンAクロチル化(crotylation)生成物:カリウムtert-ブトキシド(1.0M THF溶液,50.4mL,50.4mmol)、THF(14mL)、及びcis-2-ブテン(9.0mL,101mmol)の攪拌された混合物に、-78℃において、n-BuLi(ヘキサン中1.6M,31.5mL,50.4mmol)を添加した。n-BuLiを完全に添加した後、混合物を-45℃で10分間攪拌し、-78℃に冷却した。次いで、(+)-B-メトキシジイソピノカンフェニルボラン(methoxydiisopinocamphenylborane)(19.21g,60.74mmol)をEt2O(10mL)に滴下した。30分後、BF3・Et2O(7.47mL,60.74mmol)、次いで、THF(15mL)中のアルデヒド4D(9.84g,60.74mmol)を添加し、攪拌不能な粘性溶液を生成した。この混合物を10分ごとに強く振り動かしで均質にした。-78℃で3時間後、反応物を3N NaOH(36.6g,110mmol)及び30%H2O2(15mL)で処理し、溶液を1時間環流させた。反応物をEt2O(300mL)に投入し、H2O(100 mL)、ブライン(30mL)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させた。原材料をバルブ-バルブ蒸留装置に配し、所望の生成物からリガンドを除去した。2mmHg、80℃で加熱して低沸点リガンドを取り除いた。アルコール4Dのさらなる精製は、CH2Cl2中のEt2O(2%→4%)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィによって行い、純粋なアルコール4Dを透明オイルとして得た。エリスロ選択性は、1H NMRスペクトルで測定したところ、>50:1であった。生成物は、モシャエステル(Mosherester)の形成により、87%eeと決定された。
【0220】
【数10】
【0221】
実施例42
TBSエーテル5D:アルコール4D(5.00g,21.4mmol)をCH2Cl2(150mL)に溶解し、2,6-ルチジン(9.97mL,85.6mmol)を添加した。混合物を0℃に冷却し、TBSOTf(9.83mL,42.8mmol)を徐々に添加した。反応物を室温に暖めた。1時間後、反応物をEt2O(300mL)に投入し、1N HCl(50mL)で1回、飽和NaHCO3(50mL)で1回、ブライン(50mL)で1回洗浄し、無水MgSO4で乾燥させた。ヘキサン/ジエチルエーテル(97:3)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィによって精製し、純粋なオレフィン5Dを透明オイルとして得た。
【0222】
【数11】
【0223】
実施例43
アルデヒド6D:オレフィン5D(4.00g,11.49mmol)を、1:1 MeOH/CH2Cl2(100mL)に溶解した。次いで、ピリジン(4.0mL)を添加し、混合物を-78℃に冷却した。次に、オゾンを反応物に10分間通気した後、色が明るい青色に変化した。次いで、酸素を反応物に10分間通気した。ジメチルスルフィド(4.0mL)を添加し、反応物を室温まで徐々に暖めた。反応物を終夜攪拌し、次いで、揮発成分を真空下で除去した。ヘキサン/酢酸エチル(9:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィによって精製し、3.31g(82%)のアルデヒド6Dを透明オイルとして得た。
【0224】
【数12】
【0225】
実施例44
ジアニオン付加生成物7D:tert-ブチリルアセテート(0.635g,3.51mmol)を、THF(50mL)中のNaH(鉱油中60%,0.188g,4.69mmol)に室温で加えた。10分後、混合物を0℃に冷却した。さらに10分後、n-BuLi(ヘキサン中1.6H,2.20mL,3.52mmol)を徐々に添加した。30分後、アルデヒド6D(1.03g,2.93mmol)を巧妙に加えた。10分後、反応をH2O(10mL)でクエンチし、Et2O(2×75mL)で抽出した。まとめた有機物をブライン(30mL)で1回洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。原料反応混合物は、15:1の比率でC5におけるジアステレオマーを含んでいた。ヘキサン/酢酸エチル(9:1→7:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィによって精製し、0.723g(47%)の所望のアルコール7Dを透明オイルとして得た。
【0226】
【数13】
【0227】
実施例45
直接還元:アセトニトリル(4.0mL)中のテトラメチルアンモニウムトリアセトキシボロハイドライド(1.54g,5.88mmol)に、無水AcOH(4.0mL)を加えた。混合物を室温で30分間攪拌した後-10℃に冷却した。エステル7D(0.200g,0.39mmol)のアセトニトリル(1.0mL溶液)を反応物に加え、-10℃で20時間攪拌した。反応を、1Nの酒石酸ナトリウム-カリウム(10mL)でクエンチし、室温で10分間攪拌した。次いで、溶液を飽和NaHCO3(25mL)に投入し、固体Na2CO3を添加して中和した。次いで、混合物をEtOAc(3×30mL)で抽出し、有機物をブライン(20mL)で1回洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。ヘキサン/酢酸エチル(4:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィによって精製し、0.100g(50%)のジオールを10:1の比率のジアステレオマーアルコールとして得た。
【0228】
実施例46
ジオールのモノプロテクション:ジオール(1.76g,3.31mmol)をCH2Cl2(100mL)に溶解し0℃に冷却した。2,6-ルチジン(12.2mL,9.92mmol)、続いてTBSOTf(1.14mL ,4.96mmol)を添加し、反応物を室温に徐々に暖めた。1時間後、反応物をEt2O(300mL)に投入し、1N HCl(50mL)で1回、飽和NaHCO3(50mL)で1回、ブライン(30mL)で1回洗浄し、無水HgSO4で乾燥した。ヘキサン/酢酸エチル(20:1→15:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィによって精製し、2.03g(95%)のアルコール8Dを透明オイルとして得たが、これをジアステレオマーの混合物として使用した。
【0229】
実施例47
C5ケトン形成:アルコール8D(2.03g,3.14mmol)をCH2Cl2(50mL)に溶解し、デス-マーチンペリオジナン(2.66g,6.28mmol)を添加した。2時間後、飽和NaHCO3/飽和Na2S2O3の1:1混合物を添加した。10分後、混合物をEt2O(300mL)中に投入し、有機層をブライン(30mL)で洗浄して無水MgSO4で乾燥した。ヘキサン/酢酸エチル(15:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィによって精製し、1.85g(91%)のケトン(ベンジルエーテル)を透明オイルとして得たが、これをジアステレオマーの混合物として使用した。
【0230】
実施例48
脱ベンジル化:ケトン(ベンジルエーテル)(1.85g,2.87mmol)をEtOH(50mL)に溶解し、Pd(OH)2(0.5g)を添加した。次いで、混合物をH2雰囲気下で攪拌した。3時間後、反応物をN2でパージし、次いでCHCl3(100mL)で洗浄するセライトのパッドを通して濾過した。ヘキサン中酢酸エチル(12%→15%)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィによって精製し、1.43g(90%)のジアステレオマーアルコールを透明オイルとして得た。C3ジアステレオマーは、ヘキサン中酢酸エチル(15%)で溶離するTLC-グレードSiO2でのフラッシュクロマトグラフィで分離した。
【0231】
【数14】
【0232】
実施例49
アルデヒド形成:DMSO(0.177mL,2.50mmol)を、CH2Cl2(15mL)のオキサリルクロライド(0.11mL,1.25mmol)の混合物に-78℃で添加した。10分後、アルコール(0.531g,0.96mmol)をCH2Cl2(14L)に添加した。20分後、TEA(0.697mL,5.00mmol)を反応物に加え、次いで室温まで暖めた。反応物をH2O(50mL)に投入し、Et2O(3×50mL)で抽出した。有機物をH2O(30mL)で1回、ブライン(30mL)で1回洗浄して無水MgSO4で乾燥した。アルデヒドは、原料形態で使用した。
【0233】
509Dを与えるためのwittigオレフィン化:NaHMDS(THF中1.0M溶液,1.54mL,1.54mmol)を、THF(20mL)中のメチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(0.690g,1.92mmol)の懸濁液に0℃で添加した。1時間後、原料アルデヒド(0.96mmol)をTHF(5mL)に添加した。0℃で15分後、H2O(0.1mL)を添加し、反応物をヘキサン(50mL)に投入した。これを、ヘキサン/Et20(9:1,150mL)で溶離するシリカゲルプラグを通して濾過した。原料オレフィン9Dを、ヘキサン中酢酸エチル(5%)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィでさらに精製し、0.437g(2段階について83%)のオレフィン9Dを透明オイルとして得た。
【0234】
【数15】
【0235】
実施例51
TBSエステル10D:オレフィン9D(0.420g,0.76mmol)を、CH2Cl2(15mL)に溶解し、2,6-ルチジン(1.33mL,11.4mmol)及びTBSOTf(1.32mL,5.73mmol)で続けて処理した。7時間後、反応物をEt2O(100mL)に投入し、0.2N HCL(25mL)、ブライン(20mL)で続けて洗浄し、無水MgSO4で乾燥させた。残留物を、ヘキサン/酢酸エチル(20:1)で迅速に溶離するシリカゲルの短いパッドでのフラッシュクロマトグラフィで精製し、TBSエステル10Dを透明オイルとして得た。精製は迅速に行い、シリルエステルの加水分解を防止する必要があった。
【0236】
【数16】
【0237】
実施例52
スズキ・カップリング:アセテート酸13Dを、ヘキサン/酢酸エチル(7:1→4:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィで精製した。これを、ヘキサン/酸エチル(2:1)で溶離する調製TLCでさらに精製して、アセテート酸13Dからヨウ化ビニル12Dを除去した。酸の単離した収量は、0.297g(ボラン残基での90%精製に基づくと62%)であった。
【0238】
実施例53
アセテート酸13Dの加水分解:アセテート13D(0.220g,0.297mmol)を、MeOH/H2O(2:1,15mL)に溶解し、K2CO2(0.300g)を添加した。3時間後、反応物を飽和NH4Cl()で希釈し、CHCl3(5×20mL)で抽出した。ヒドロキシ酸14Dを、ヘキサン/酢酸エチル(4:1→2:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィで精製し、0.146g(70%)の精製したヒドロキシ酸14Dを得た。
【0239】
【数17】
【0240】
実施例54
マクロラクトニゼーション(macrolactonization):DCC(0.150g,0.725mmol)、4-DMAP(0.078g,0.64mmol)及び4-DMAP・HCl(0.110g,0.696mmol)を、CHCl3O(80mL)に80℃で溶解した。この環流溶液に、シリンジポンプで、CHCl3中のヒドロキシ酸14D(0.020g,0.029mmol)及びDMAP(0.010g)を20時間で添加した。シリンジ針を、コンデンサの基部に配置して適切な添加を維持した。20時間後、反応物を50℃に冷却し、AcOH(0.046mL,0.812mmol)を添加した。2時間後、反応物を室温まで冷却し、飽和NaHCO3(30mL)、ブライン(30mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。ラクトン15Dは、ヘキサン/酢酸エチル(20:1→15:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグで精製し、0.014g(75%)を得た。
【0241】
【数18】
【0242】
実施例55
デスメチルデスオキシエポチロンA(16D):THF(2.0mL)中のラクトン15D(0.038g,0.056mmol)に、HF・ピリジン(1.0mL)を添加した。2時間後、反応物を飽和NaHCO3(30mL)中に投入し、CHCl3(5×20mL)で抽出した。有機物をNa2SO4で乾燥させた。原料ジオール16Dを、ヘキサン/酢酸エチル(3:1→2:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグで精製し、0.023g(89%)を得た。
【0243】
【数19】
【0244】
実施例56
エポキシド形成:ジオール16D(0.008g,0.017mmol)を、CH2Cl2(1.0mL)に溶解し、-60℃に冷却した。次いで、ジメチルジオキシラン(0.06M,0.570mL,0.0034mmol)を徐々に添加した。反応温度を、徐々に-25℃とした。-25℃で2時間後、揮発成分を反応物から-25℃において真空下で除去した。得られた残留物を、CH2Cl2中MeOH(1%→2%)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグで精製し、cis-エポキシド3D及びジアステレオマーcis-エポキシドの1.6:1の混合物を得た(0.0058g,74%)。このジアステレオマーエポキシドを、ヘキサン/酢酸エチル(1:1)で溶離する調製TLCで分離し、溶離後、純粋なジアステレオマーを得た。
【0245】
【数20】
【0246】
実施例57
C-12ヒドロキシエポチロン類似物の実験データプロピルヒドロキシ化合物43:
【0247】
【数21】
ヒドロキシメチル化合物46:
【0248】
【数22】
【0249】
議論(-)-エポチロンAの全合成
本発明により、エポチロンA(1)の調製方法が初めて知られるところとなった。炭素9から11は、マクロールアクトンのアシル側鎖上の炭素3から8、及びアルキル側鎖上の炭素12から15のキラリティ包含領域を遮蔽する。立体化学情報の一つのセグメントから他への転送は起こりがたい。したがって、採用したアプローチでは、各セグメントの立体化学を個別に扱う。アシルセグメントにおいては、このストラテジーには“ポリプロピオネート様”網目構造の、相対的及び絶対的な両方の構造についての知識が要求される。アルキルセグメントにおいては、二つの可能性がある。一点としては、C12−C13エポキシドが、アシル関連構造との合併を経る構築に関与することが考えられる。その場合、炭素15,13及び12の相対的な立体化学関係を保護する必要がある。エポキシドが、カップリングを経てアルキル側鎖部分から消去される可能性について考慮することが必要であった。このアプローチは、許容される立体制御により、マクロ閉環後エポキシドを導入可能な場合にのみ実行可能である。アシルフラグメントに必要な必須の立体化学情報のほとんどを有する化合物4の合成は、上記の通りである。この中間体を、新規な酸化的に誘発されるシクロプロパノピラン3のソルボリシス開裂によって調製する。さらに、上記には、炭素15,13及び12における絶対的及び相対的な立体化学を表すアルキル側鎖カップリングパートナーを含む構造もまた記載されており、これは下記の代替方法とは異なる。
【0250】
アルキル及びアシル領域の連結について考慮すると、幾つか可能な結合部位がある。ある箇所では、エステル(またはラクトン)結合の形成にアシル化の必要がある(実線矢印2参照)。さらにまた、C2−C3結合の形成には、アルドール構造が要求される。このアルドール段階の正確なタイミングを決定するには、検討を要する。C3−C9構造を延長する際、C−15ヒドロキシルのアシル化が検討される。予期せぬことに、マクロリドは、新たなマクロアルドール化によって閉環されうることが判った(ケトアルデヒドマクロアルドール化の既知の点については、C.M.Hayward,et al.,J.Am.Chem.Soc.,1993,
115,9345参照)。この選択肢は、図1(A)において実線矢印3によって示される。
【0251】
アシル及びアルキルフラグメントの併合の第一段階(矢印1参照)には、困難な合成上の障害が存在する。当業者には、炭素9と10、または炭素10と11との間の結合形成を達成する試みにおいて、エポキシドがアルキルカツプリングパートナーに包含される場合に著しい反力が働くことが認められている。これらの問題は、アシル及びアルキル反応物質で、これらの結合の両方に渡る併合のための適切な相補性を有するものを形成する際の予期せぬ困難性による。炭素11及び12間の最初の併合を試験した。このアプローチは、O-アルキルカップリングパートナーからのオキシラン結合の消失を必要とする。幾つかの置換をテストした後、カップリング反応第一段階に入るために一般化システム5及び6を試験した。前者の列は中間体4から誘導されたものである。一般化システム5に相当する有用な置換体のde novo合成が必要とされる(図1(B))。
【0252】
4から11へと進む段階をスキーム2に示す。後のC−7アルコール(化合物7参照)の保護に続き、ベンジルエーテルの開裂及びアルデヒド8の酸化を行った。末端アリール含有フラグメント10へのアルデヒドの延長を、末端エーテル9(幾何異性体EとZとの混合物)を経て行った。最後に、ソルボリシス・トラップ条件(solcolytic trapping conditions)下でジチアン結合を酸化的に開裂させ、特定のカップリング成分11を生成した(G.Stork;K.Zhao,Tetrahedron Lett.1989,30,287)。
【0253】
市販の(R)−グリシドール12で、そのTHP誘導体13を経てアルコール14に転化されたものから出発するアルキルフラグメントの合成。テトラヒドロピランブロッンク基の開裂の後、示した通り、生成するアルコールはメチルケトン15に円滑に転化する。後者に、ホスフィンオキシド16を用いてエモンスタイプの同族化を行った。D.Menget al.,J.Org.Chem.,1996,61,7998.このエモンスカップリングにより、オレフィン立体異性体のca.8:1混合物よりもトランス体17が得られた。生成したアルキン17を転化し、化合物18を経てZ-ヨードアルケン19とした(図4(A)参照)。E.J.Coreyet al.,J.Am.Chem.Soc.,1985,107,713.
【0254】
二つのフラグメントの重要な第一段階カップリングは、B-アルキルスズキ炭素−炭素結合構築によって達成される。N.Miyaura et al.,J.Am.Chem.Soc.,1989,111,314;N.Miyaura and A.Suzuki,Chem.Rev.,1995,95,2457.このように、前アシルフラグメント11のヒドロホウ素化は、その9-BBNとの反応によって達成される。提示の条件下で、ヨードオレフィン19に交差カップリングした混合ボランが、71%の収率で20を生成した。(図4(B))アセタールの開裂に際し、アルデヒド21が得られた。
【0255】
21が得られることにより、C−1結合アセトキシ官能基のメチル基がマクロアルドール化において求核成分として作用するストラテジーを探求することができる。C.M.Hayward et al.,supra参照。脱プロトンは、THF中−78℃にてカリウムヘキサメチルジシラジドを用いて達成される。予期せぬことに、これらの条件により高度に立体選択的なマクロアルドール化が起こり、結果として示した通りC−3(S)-アルコール22が生成する。前駆体カリウムアルドラートをca.0℃でクエンチした際、22が重量にしてより多いことが望ましい。アルドラートを低温でプロトン化すると、より多量のC−3(R)化合物が検出された。実際、幾つかの処理の下では、C−3(R)エピマーが支配的である。したがって、分析スケールのクエンチでは、非常に好ましいC−3(R):C−3(S)比で生成させることが可能である。調製スケールの実験では、22対C−3エピマーの比は6:1である。
【0256】
化合物22の供給が整ったことにより、デソキシエポチロン(23)を得るという準目標が可能となった。この目的は、22におけるトリフェニルシリル(TPS)基の選択的除去、続いてC−3アルコールの選択的シリル化、C−5アルコールの酸化、及び最後に二つのシリルエーテルのフッ化物誘発開裂により達成される。
【0257】
エポチロンの公知の結晶構造(Hofle et al.,supra)によりモデルの実験が可能となり、これはオキシランがマクロリドの凸周辺部にオキシランが配置されることを示唆している。提示の条件下で、ジメチルジオキシランを用いて23の酸化を行った。この反応の主要生成物は、(-)エポチロンA(1)であり、その同定はnmr、赤外線、マススペクトル、旋光及び実際の目的物質とのクロマトグラフィー比較によって行われた。Hofle et al.,supra.エポチロンA(1)に加え、少量のジエポキシド混合物並びに微量のジアステレオマーcisC12−C13モノエポキシド(≧20:1)が検出された。
【0258】
ここに開示した合成方法は、採集可能で実用的な量のエポチロンAを供する。更に重要なのは、この方法は天然物それ自体からは不可能な同族体、類似体及び誘導体への経路を供する。
【0259】
エポチロンAの合成についての研究:アクリル立体化学関係の管理のためのヒドロピランテンプレートの使用
アルコキシセグメント(炭素9−15)の鏡像異性的に純粋な等価体の合成をモデル実験として行った。鍵となる原理には、立体化学傾向を(S)−ラクトアルデヒド誘導体から新たなジヒドロピランに転写することが含まれる。後者は、チアゾール部分の添加及び分解により、所望のアクリルフラグメントを鏡像異性的に純粋な形態で与える。
【0260】
エポチロンの様々な新規な構造特性によりその合成は困難である。チアゾール部分並びにcisエポキシド、及びジェミナルジメチル配置(geminal dimethyl grouping)の存在が、解決すべき鍵となる問題である。興味深い特徴は、分子の二つの官能ドメインを隔離するはたらきをする三つの連続したメチレン基の列である。このようなアキラルな“スペーサーエレメント”を包囲する必要が、連続的なキラリティ転写のための展望を実際に複雑化し、二つの立体化学的に寄与する構造を併合(merge)させるストラテジーを必要としているようである。本発明は、化合物4A(図14)の合成を提供するが、原則として、こうした構造がエポチロンそのもの及び関連の遮蔽物候補に転化可能であることを想定している。
【0261】
合成中間体としての化合物4Aの同定により、アクリル中間体の立体化学の制御に付随する問題の処理におけるヒドロピランマトリックスの力が示された。ジヒドロピロンの合成は、適当に活性なジエンとアルデヒド性ヘテロジエノフィルの全縮合環化(overall cyclocondensation)に要する量によって既に開示されている。Danishefsky,S.J.Aldrichimica Acta,1986,19,59.このようなマトリックス(図13)の構成(参考:5A+6A→7A)においては、立体選択性に大きな誤差範囲のあることが認識される。さらにまた、ヒドロフランプラットフォームは、様々な立体特異的反応に有用である(図式7A→8A参照)。さらにまた、これらの反応の生成物は、開環スキームに従い、結果として定義した立体化学関係を有する非環式フラグメントを生成する(図式7A→8A参照)。Danish efsky,S.J.Chemtracts,1989,2,273.
【0262】
本発明は、化合物4Aの合成のためにこのような二つのルートの応用を提供する。ルート1は、絶対配置の問題の制御それ自体は含まず、既知のアルデヒド10Aから開始する。Shafiee,A.,et al.,J.Heterocyclic Chem.,1979,16,1563;Shafiee,A.;Shahocini,
S.J.Heterocyclic Chem.,1989,26,1627.提示の通り、同族化はエナール12Aを供する。12Aと既知のジエンとの縮合環化(Danishefsk y,S.J.;Hitahara,T.J.Am.Chem.
Soc.,1974,96,7807)で、BF3触媒を用い、ジヒドロピロン13Aのラセミ体を生じる。Luche条件下での13Aの還元により化合物14Aが与えられる。Luche,J.-L.J.Am.Chem.
Soc.,1978,100,2226.この時点で、酵素媒介反応速度分析によるグリカル誘導体の分析のため、既に紹介したリパーゼ方法論が利用可能であった。Berkowitz,D.B.及びDanishefsky,
S.J.Tetrah edron Lett.,1991,32,5497;Berkowitz,D.B.;Danishefsky,S.J.;Schulte,
G.K.J.Am.Chem.Soc.,1992,114,4518.このように、イソプロピルアセタートの存在下でカルビノール14Aにリパーゼ30を作用させ、下記のWong(Hsu,S.-H.,et al.,Tetrahedron Lett.,1990,31,6403)の処方に従って、アセタート15Aを伴う鏡像異性的に関連した遊離のグリカール16Aを生成させた。化合物15AをさらにPMB保護システム17Aに進めた。この箇所では、本出願人による既に示されている他の反応タイプを使用可能であった。したがって、ジメチルジオキシランとの17Aの反応(Danishefsky,S.J.;Bilodeau,M.T.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1996,35,1381)により中間体(対応するグリカールエポキシドと思われる)を生成し、これは金属ペリオダートナトリウムでの処理によりギ酸アルデヒド18Aを生成した。18Aのアリル化によりカルビノール19Aが生成し、ギ酸エステルは見事に存続している(アリル化の確認のためには、Yamamoto,Y.;Asao,N.Chemy.Rev.1993,93,2207参照)。しかしながら、19Aはそのanti立体異性体(ここには示していない)に伴われている[4:1]。第二級アルコールのメシル化に続き、提示のように脱保護(19A→20A参照)及び環化を行い、化合物4Aを得た。
【0263】
この合成において、ジヒドロピロンの約半分のみが反応速度解析によって保証された。一方、理論上は、検討した合成戦略には、エポチロンそのものを得るために15Aの各鏡像異性体の使用を予定しているものあり、全鏡像異性体を統合できるように別のルートが求められていた。このルートの論理は、“ダミー”の不斉中心のキラリティを、既に確立された縮合環化反応における可変のジアステレオ選択の原則に従って、併合ピランに伝達することである(Danishefsky,supra)。提示のジエンとラクトアルデヒド誘導体21Aの縮合環化(Heathcock,C.H.,et al.,J.Org.Chem.,1980,45,3846)を、表見的なキレート化制御の下で行い、22Aを得た。側鎖のエーテルが、提示のように(22A→23A→24A→25A)メチルケトンに転化可能であった。最後に、ホスフィンオキシド26Aとの25Aのエモンス縮合物(例えばLythgoe,B.,et al.,.Tetrahedron Lett .,1975,3863;Toh,H.T.;Okamura,W.H.J.Org.Chem.,1983,48,1414;Baggiolini,E.G.,et al.,J.Org.Chem.,1986,51,3098参照)を、図15に示したようにホスフィンオキシド26Aに変形(Toh,supraに記載の操作に従う)し、27Aを生成させた(既知の2-メチル−4−クロロメチルチアゾール(Marzoni,G.J.Heterocyclic Chem.,1986,23,577参照))。直線状の保護基調整を既出の17Aに行った。このルートは、続いて誘導される立体中心に鏡像選択を与えた後、平面形態で徐々に併合れる炭素中心による立体化学インプリンティングの概念を示している。エポチロンの立体化学要素を保証するためのジヒドロピロンに基づく論理の使用並びに、マクロ環化のため可能な戦略の証明は、以下の項で述べる。エポチロンAの合成:アシル領域の立体制御配置及びマクロ環化のモデル
【0264】
環形成オレフィン置換を、エポチロンAに関連する16員環の同類体の構築に用いた。アシルフラグメントのC3−C9セクターの立体特異的合成を、新規なシクロプロパナート化グリカールの酸化的開環を利用して達成した。
【0265】
前項に開示したのは、炭素10から21を含むエポチロン(1)の“アルコキシ”セグメントの合成(図7,化合物2B参照)である。このセクションは、アシルセクション素3から9の立体化学情報をコード化する他のフラグメントの合成である。正式な標的3Bのアルデヒド中心(C3)が、分子間または分子内ののいずれかの手段により化合物2Bから誘導される求核構造(図7に示した通り、2炭素挿入物の配置を要する)との結合部位として作用することが想定された。こうした状況では、次第にC3で必要とされる第二級アルコール中心の立体化学は、個別に扱う必要がある。システム3Bの興味深い特徴の一つに、炭素4(エポチロンナンバリング)における双性メチル基の存在がある。適切な構成分解(diassembly)の後、再度、システム3Bの存立可能な等価物に相当する環状マトリックスの構成にジヒドロピランストラテジーを使用する。gem−ジメチル含有の環式または非環式フラグメントの合成を含むジヒドロピランパラダイムが詳説されることを期待した。この目的のための特定の反応タイプを、4B→5Bの変換(図7参照)の表題の下に一般化する。求電子体Eの性質についての言及は避ける。したがって、還元が構造タイプ5Bから意図する一般化した標的3Bに進行するか否かという疑問は提示されていない。
【0266】
開始段階は、ジエン−アルデヒド縮合環化反応(図8;Danishefsky,S.J.,Aldrichmica Acta,1986,19,59)の立体化学的に調整可能バージョンからなり、この例は、容易に入手可能な鏡像異性的に同族のアルデヒド6Bと既に得たジエン7Bとの併合におけるキレート化制御を利用している。Danishefsky,S.J.et al;J. Am.Chem.Soc.,1979,101,7001.実際、先例の通り、四塩化チタンの作用の下では化合物8Bとして示した単一の異性体が生成した。通常の立体化学的に確かな方法(Danishefsky,S.J.;Chemtracts Org.Chem.1989,2,273.)では、ジヒドロピロンが対応のグリカール9Bに還元される。この時点で、グリカール9Bをシクロプロパン10Bに転化するために、直接シモンズ−スミス反応を利用可能であった。
【0267】
Weinstein,S.;Sonnenberg,J.J.Am.Chem.Soc.,1961,83,3235;Dauben,W.G.;Berezi n,G.H.J.AmChem.Soc.,1963,85,468;Furukawa,J.,et al.,Tetrahedron,1968,24,5 3;選択的例については、Soekman,R.K.Jr.:Charette,A.B.;Asberom,T.;Johnston, B.H.J.Am.Chem.Soc.,1991,113,5337;Timmers,C.M.;Leeuwenurgh,M.A.;Verheijen ,J.C.;Van der Marel,G.A.;Van Boom,J.H.Tetrajedron:Asymmetry,1996,7,49参照。この化合物は、実際、ある意味ではC-グリコシドのシクロプロパノバージョンに相当する点で興味深い構造である。同時に、シクロプロパンは、シクロプロピルカルビニルアルコールシステムの一部であり、再編成の可能性が付随している。Wenkert,E.,et al.,J.Amer.Chem.
Soc.,1970,92,7428.双性メチル基を生成させる方法により、シクロプロパンのC-グリコシド結合の開裂を目的とし、結果としてC−3に所望のアルデヒド酸化状態を有する溶媒誘導グリコシドを生成した(図7、仮定した変換4B→5B参照)。初期の研究では、計画した反応(すなわちE+=H+)の非酸化バージョンは実用に応用不可能であった。その代わり、環拡張システム11に寄与可能なことが明白な生成物が確認された。例えば、10Bに酸性メタノールを作用させると、おそらくはオキソカルベニウムイオン11Bへのメタノールの付加により、七員環混合アセタールのエピマー混合物が生成した。
【0268】
しかしながら、シクロプロパン開環の所望の意図は、環状酸素の影響下で、化合物10BをN-イソスクシンイミドを用いた酸化的開環に処すことにより達成される(10Bから12Bへの変換と概念的に類似であるシクロプロパンのHg(II)誘発加溶媒分解の参考のためには、Collum,D.B.;Still,W.C.;Mohamadi,F. J.Amer.Chem.Soc.,1986,108,
2094;Collum,D.B.;Mohamadi,F.;hallock,J.S.;J.Am er.Chem.Soc.,1983,105,6882.参照)。この先例に従い、この変換は図8に示したものよりも効率が悪いことが判明しているが、シクロプロパン10BのHg(II)誘発加溶媒分解を行った。メチルグリコシド12Bとして得られた中間体ヨードメチル化合物に、トリ-n-ブチルチンヒドリドを作用させると双性メチル基を有するピラン13Bを生成した。このアルコールの保護(13B→14B参照)、これに続くグリコシド結合の開裂により、仮想アルデヒド3Bの官能基バージョンとして作用しうるアクリルジチアン誘導体を生成した。エポチロン及び同族体に到達する2B及び3Bに関連のフラグメントの混合に可能な方法を試験した。Schrock(Schrock,R.R.et al.,J.Amer.Chem.Soc.,1990,112,3875)及びGrubbs(Schwab,P.et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1995,34,2039;Grubbs,R.H.;Hiller, S.J.Fu,G.C.Acc.Chem.Res.,1995,28,446;Schmalz,H.-G.,Angew.Chem.Int.Ed.Eng l.,1995,34,1833)の研究及びHoveydaの開示(Houri,A.F.,et al.,J.Am.Chem.S oc.,1995,117,2943)では、複合ラクタムが、置換反応におけるモリブデン媒介分子間オレフィンによる鍵となる分子内オレフィンマクロ環化段階において構築されている(Schrock,supra;Schwab,supra)が、これらを考慮してこのようなアプローチを現実化する可能性が検討されている(閉環置換の他の例としては、 Martin,S.F.;Chen,H.-J.;Coutney,
A.K.;Lia,Y.;Patzel,M.;Ramser,M N.;Wagman, A.S.Tetrahedron,1996,52,7251
;Furstner,A.;Langemann,K.J.Org.Chem.,1996,61 ,3942参照)。
【0269】
この問題は、まず、二つのモデルω不飽和酸16B及び17Bで、アクリラートアルコール2Bに使用してそれぞれエステル18B及び19Bを生成させたものを用いて試験した(図9参照)。これらの化合物に、実際に、提示条件で所望の方法によりオレフィン置換マクロ環化を行った。置換体18Bの場合は化合物群20BがE-及びZ-立体異性体の混合物[ca.1:1]として得られた。20Bのジイミド還元を行い、同族体2Bを得た。オレフィン置換反応はまた、エポチロンAのC4に該当する配置の双性メチル基を有する化合物19Bに拡張された。オレフィン置換が起き、この場合は奇妙なことにオレフィン21Bを単一の実体として70%の収量(立体化学試験ではZ体を示した)で生成した。ほぼ同様の結果がSchrockのモリブデンアルキリデン置換触媒の使用によって得られた。
【0270】
したがって、上記のように、オレフィン置換は、標的システムの要求されるエポキシとチアゾリル官能基の両方を含む16員環を構築する試みに処すことができる。エポチロンに到達するために必要とされる官能性を完全に有するセコシステムから実現可能なオレフィン置換反応で、これまでに成功したものはない。マクロ環化に適切な、適当な官能基制約パターンを見定める際に、これらの否定的な結果が失敗として反映されることはほぼ無いであろう。エポチロンBの全合成:スズキカップリング法の拡張
【0271】
本発明は、エポチロンA(1)の全合成を初めて与える。D.Meng et al.,J.Or g.Chem,1996,61,7998 P.Bertinato,et al.,J.Org.Chem,1996,61,8000.A.Balog, et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1996,35,2801.D.Meng,et al.,J.Amer.Chem.S oc.,1997,119,10073.(続くエポチロンAの全合成については、Z.Yang,et al.,A ngew.Chem.Int.Ed.Engl.,1997,36,166参照)この合成は、2,2-ジメチルジオキシランを用いた非常に立体選択的なエポキシ化を施したZ-デソキシ化合物(23)を経て、注意深く決定された条件下で行われ、所望のβ-エポキシドを生成する。23を生成するSorangium属の同様のミクソバクテリアが、エポチロンB(2)をも生成する。後者は、抗真菌スクリーン及び細胞毒性/細胞核壊変アッセイのいずれにおいても23よりも強力な剤である。G.Hofle,et al.,Angew.C hem.Int.Ed.Engl.1996,35,1567;D.M.Bollag,et al.,Cancer Res.1995,55,2325.
【0272】
最初の目的構造はデソキシエポチロンB(2)またはその適当な誘導体であった。このような化合物の利用により、C12−C13二重結合のエポキシ化に伴うレギオ選択性及び立体選択性の研究が可能となるであろう。鍵となる点は、立体選択性に大きな誤差範囲のある2CのZ-トリ-置換オレフィン前駆体の合成の問題であった。ジ置換システムへの合成ルート(A.Balog,et al.,Agnew.Chem.In t.Ed.Engl.,1996,35,2801)では、9-BBN(図4(B))を用いた化合物11(図1(A))のヒドロホウ素化により誘導されるボラン7Cを用いたZ−ビニルヨーダイド19(図4(A))のパラジウム媒介B-アルキルスズキカップリング(N.Miyaura,et al.,J.Am.Chem.Soc.1989,111,314.(確認のためには、N.Mi yaura,A.Suzuki,Chem.Rev.1995,95,2457参照)を利用した。
【0273】
予備的なアプローチは、2Cと同様の考え方を適用してZ-トリ-置換オレフィン(図17)を目指した。二つの重要な点を提示しなければならない。第一に、ヨウ化ビニル8C、19のトリ置換同族体を調製する方法を考案する必要があるであろうこと。この目的が達成可能であれば、問うべきは、Z-トリ-置換オレフィンを目指して必要とされるB-アルキルスズキカップリング反応を実行するの可能性である。分子間レベルで、ヨウ化ビニルがβ-ヨードエノエート(またはβ- ヨードエノン)形式では無い場合の“B-アルキル”(“B-アルケニル”システムに対抗して)を用いたこのような変換の実現は優位性が認められていない。(ここに示した研究とは、細部に重大な相違点がある幾つかのよく似た類似体については、N.Miyaura,et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.1982,55,2221;M.Ohba,et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36,6101;C.R.Johnson,M.P.Braun,J.Am.Chem.Soc.1993,11 5,11014.参照)
【0274】
化合物8Cの合成を図16に示す。該ルートは、9Cの触媒非対称アリル化(G.E.Keck,et al.,J.Am.Chem.Soc.,1993,115,8467)により調製されたオレフィン10Cから出発し、続いてアセチル化を行った。10Cの部位選択的ジヒドロキシル化に次ぐグリコールの開環により、不安定なアルデヒド11Cを生成した。驚くべきことに、後者はホスホラン12Cと反応し(J.Chen,et al.,Tetrahedro n Lett.,1994,35,2827)、全体でも少量ではあるがZ-ヨウ化物8Cを生成した。ボラン7Cが、記載したとおり11から生成した。化合物7Cとヨウ化物8C(図16)のカップリングの実行により、純粋なZ-オレフィン13Cを調製することができた。
【0275】
化合物13Cを得たところで、23の合成に関連して利用したものと同様のプロトコルが使用可能であった。(Balog,et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1996, 35,2801)したがって、アセタール結合の開裂からアルデヒド14Cが生じ、これがマクロアルドール化に処されているのである(図17)。最も高い収率は、C3ヒドロキシル基を一見平衡させる条件下で反応を行うことにより得られた。3R異性体を、その誘導されたC3−ケトンの還元(化合物15C参照)を経て必要とされる3Sエピマーに転化させた。エポチロンAについて記載されたような天然の3S配座を導く反応速度論的に制御したアルドール縮合を達成した。しかしながら、3Sエピマーに到達した全収量では、このプロトコルを用いた方が優れている。C−5トリフェニルシリルエーテルの開裂に次いで、連続的なC3ヒドロキシルのモノ保護(t-ブチルジメチルシリル)、C5での酸化(化合物16C参照)、及び最後にシリル保護基の開裂によりC3及びC7アルコールを生じた(化合物2C参照)。
【0276】
Z-デソキシエポチロンB(2C)が、提示の条件下で非常に速い、実質的にレギオ選択的及び立体選択的なエポキシ化を経ており(正確な比較は行っていないが、2Cのエポキシ化は23の場合よりもより迅速でレギオ選択的のようである)、本物の試料と同様のエポチロンB(2)(1H NMR、マススペクトル、IR、[α]D)を与えることが判明した(A.Balog,et al.,Angew.Chem.Int-Ed-En gl.,1996,35,2801)。このように、本発明は、エポチロンBの全合成を初めて開示する。本方法の重要な特徴には、トリ置換ビニルビニルヨーダイド8Cのエナンチオ選択的合成、化学式7C及び8Cのパラジウム媒介立体特異的カップリングからの化合物13の生成(この形態では事実上前例のない反応)、及びZ-デソキシエポチロンB(2C)が適当な条件下でレギオ選択的及び立体選択的なエポキシ化に従うことが含まれる。デスメチルエポチロンA
【0277】
エポチロンA及びBの全合成は既に開示されている。Balog,A.,等,Angew.Ch em.,Int.Ed.Engl.1996,35,2801;Nicolaou,K.C.,等,Angew.Chem.,Int.Ed .Engl.1997,36,166;Nicolaou,K.C.,等,Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.1997 ,36,525;Schinzer,D.,等,Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.1997,36,523;Su, D.-S.,等,Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.1997,36,757。エポチロンの抗腫瘍作用は、タキソール(Taxol(商標))に極めて類似している。Hofle,G.,等,H.An gew.Chem.,Int.Rd.Engl.1996,35,1567。タキソール(パクリタキセル)は、臨床的に承認された薬であるが、その製剤は未だに困難である。さらに、タキソールは多剤耐性(MDR)表現型を含んでいる。従って、タキソールと同様の作用機構を有し、より優れた治療仮性が予想される新規な薬剤が真剣に研究されている。Bollag,D.M.,等,Cancer Res.1995,55,2325。
【0278】
本発明は、エポチロンA及びBより有効であり、なおかつ合成が容易なエポチロン類似物を提供する。天然物の合成は、予備的な生物学的評価のためには十分な材料を提供するが、全ての開発に十分な量は生成しない。構造変化が合成の複雑さのかなり緩和をもたらす特定の領域は、ポリプロピレンドメインからのC8メチル基の削除であろう(標的系3D参照)。このC8キラル中心を取り扱う必要性は、これまで開示されたエポチロンの合成の全てを複雑化している。C8メチル基の削除は、初期のジエン−アルデヒド環化縮合経路に関する合成手法において大きな変化を要求する。Danishefsky,S.J.Chemtracts 1989,2,273;Meng, D.,等,J.Org.Chem.1996,61,7998;Bertinato,P.,等,J.Org.Chem.1996,61 ,8000。
【0279】
図20に示すように、4Dの非対称的クロチル化(87% ee)(Brown,H.C.;Bha t,K.S>J.Am.Chem.Soc.1986,108,5919)、それに続く保護がTBSエーテル5Dを導く。二重結合は、容易に切断してアルデヒド6Dを与える。アルデヒドはt-ブチルイソブチリルアセテートから誘導されたジアニオンとカップリングして7Dを与える。C5S(7D):C5R(7D)化合物の比率(図示せず)は約10:1である。Weiler-タイプのβ-ケトエステルジアニオン化学(Weiler,L.J. Am.Chem.Soc.1970,92,6702;Weiler,L.;Huckin,S.N.J.Am.Chem.Soc.1974,96 ,1082)が、イソブチリル基内で行えることは、より簡便な合成のための代替的方法を示唆している。先の文献に従う7DのC3ケトンの直接還元(Evans,D.A. ,等,J.Org.Chem.1991,56,741)、それに続くC3ヒドロキシルの選択的シリル化は、50%の収率で、C3R異性体(図示せず)に対する所望のC3S(化合物8D参照)の比率を10:1で与える。水素化ホウ素ナトリウムでの還元では、C3エピマーの約1:1混合物を与える。脱ベンジル化で生成されるカルビノールは、酸化されてアルデヒドとなり、次いで、単純なwittig反応を通してメチレン化されて、オレフィン9Dを与える。この化合物のTBSOTfでの処理はエステル10Dを与え、これは、ヨウ化ビニル12Dとのスズキ・カップリングに直接用いられる。
【0280】
10Dの9-BBNでのハイドロボレーションは、中間体11Dを生成し、これば、ヨウ化ビニル12Dとのカップリング、及びその場でのTBSエステルの開裂に際して、13D(図21)を導く。脱アセチル化の後、ヒドロキシ酸14Dが入手できる。この化合物のマクロラクトニゼーション(Boden,E.P.;Keck,G. E.J.Org.Chem.1985,50,2394)は、15Dを生成し、これは、脱シリル化の後、C8-デスメチルデスオキシエポチロン(16D)を与える。最後に、この化合物のジメチルジオキシランによるエポキシ化により、目的構造3Dが生成される。エポキシ化の立体選択性は、デスオキシエポチロンAのエポキシ化が>20:1の立体選択性であることからは、驚くほど低い(1.5:1)。C8メチル基の削除は、16Dの立体配座的寄与を変化させ、ジメチルジオキシランによるエポキシ化のβ-選択性を低下させることを示している。ジメチルジオキシランによるエポキシ化の立体選択性に対するC8メチルの効果と生物学的活性の劇的な低下とが関係しているか否かは不明である。
【0281】
化合物3D及び16Dが、GTPの不存在下での細胞培地及びチューブリンのアセンブリにおける細胞毒性について試験された。微小管タンパク質(MTP)は、ウシ脳から2サイクルの温度依存性アセンブリ及びディスアセンブリによって精製した。Weisenberg,R.C.Science 1972,177,1104。コントロールアセンブリ実験では、MTP(1mg/mL)を、0.1M MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、1mME GTA、0.5mM MgCl2、1mM GTP、及び3Mグリセロールを含みpH6.6のアセンブリバッファで希釈した。アセンブリは、35℃で40分間350nmにおいて分光学的に監視し、濁り度の変化をポリマー量として測定した。Gaskin,F.;Cantor ,C.R.;Shelanksi,M.L.J.Mol.Biol.1974,89,737。薬剤は、GTP無しで、10μMの濃度で試験した。微小管形成は、電子顕微鏡で確認した。GTPまたは薬剤の存在下での微小管の安定性を測定するため、反応温度を4℃に変えた後、40分間濁り度を測定した。
【0282】
細胞毒性実験により、8−デスメチル類における極端な活性低下が示された。化合物3D及び16Dは、それらに対応するエポチロンAより活性が約200倍低くなっていた(表1参照)。以前のC3及びC5両方でのSAR発見を、ここに開示する発見と結びつけて再考すると、エポチロンのポリプロピレンセクターは、生物学的機能の特に感受性の部分と考えられる。Su,D.-S.,等,Angew.Chem.I nt.Ed.Engl.1997,36,757;Meng,D.,等,J.Am.Cehm.Soc.1997,119。
【0283】
【表1】
【0284】
a試験化合物の細胞毒性は、ヒトリンパ芽珠白血病細胞CCRF-CEM、またはビンブラスチン及びタキソールに耐性のサプライン(CCRF-CEM/VBL)、またはエトポシドに耐性のサブライン(CCRF-CEM/VM-1)の成長によって測定した。XTT-マイクロ培地テトラゾリウム/ホルマザンアッセイを用いた。
【0285】
bIC5Dの値は、中央有効量プロットに基づいて5−6濃度からコンピュータソフトウェアを用いて計算した。生物学的結果
【0286】
以下の表では、モデル系1は、デスオキシエポチロンである。モデル系2は、下記の構造を有する。
【0287】
【化59】
【0288】
但し、R’及びR”はHである。モデル系3は、下記の構造を有する。
【0289】
【化60】
【0290】
【表2】
【0291】
【表3】
【0292】
表2に示したように、CCRF−CEMは親細胞系である。CCRF-CEM/VBL(MDR細胞系)は、タキソールに1143倍の耐性である。CCRF -CEM/VM(トポII突然変異細胞系)は、タキソールに1.3倍の耐性でしかない。
【0293】
相対的能力の点では、合成エポチロンは天然エポチロンAとほぼ同様である。CCRF-CEM細胞について、その順序は以下の通り:タキソール≒エポチロンA>デスオキシエポチロンA>>試験類似物>>モデル系1。CCRF-CEM/VBLについて、相対的能力の順序は以下の通り:デスオキシエポチロンA≧エポチロンA>>タキソール>試験類似物>モデル系1。CCRF-CEM/VMについて、相対的能力の順序は:タキソール≒エポチロンA>デスオキシエポチロンA>>モデル系1>試験類似物。CCRF−CEM/VM細胞は、ある種のエポチロン化合物に側副的感受性であると結論される。
【0294】
【表4】
【0295】
表3に関して、実験はDC-3F(親ハムスター肺細胞)、DC-3F/ADII(中程度の多剤耐性(MDR)細胞)及びDC-3F/ADX(非常に強いMDR細胞)の細胞系を用いて行った。化合物の相対的能力は以下の通り:
DC-3F: アクチノマイシンD>ビンブラスチン≧エポチロンA(0.0036μM)>デスオキシエポチロン>VP-16>タ キソール(0.09μM)>モデル系1及び試験類似物DC-3F/ADX: デスオキシエポチロン≧エポチロンA(0.06μM)>ア クチノマイシンD>モデル系1>ビンブラスチン>試 験類似物>ビアブラスチン>タキソール(32.0μM) DC-3F/ADX細胞(アクチノマイシンDに8379倍の耐性)は、タキソール、VP-16、ビンブラスチン及びアクチノマイ シンDに>338倍(約8379倍)耐性だが、エポ チロン化合物には<20倍耐性である。全体的に、これらの結果はCRF-CEM細胞の結果と類似している。
【0296】
【表5】
【0297】
VBL → 微小管解重合 タキソール→ 微小管重合 Epo-B → 微小管重合エポチロンB及びタキソールは、類似の作用機構(重合)を有しているが、タキソールがVBLに拮抗するのに対してエポチロンBはVBLを相乗する。 タキソール+VBL → 拮抗作用 EpoB+タキソール → 拮抗作用 EpoB+VBL → 相乗作用 EpoB+タキソール+VBL → 拮抗作用
*混合係数値<1,=1、及び>1は、各々、相乗作用、付加的効果、及び拮抗作用を示す。
【0298】
【表6】
【0299】
【表7】
【0300】
【表8】
【0301】
【表9】
【0302】
要するに、エポチロン及びタキソールは、微小管の重合を安定化させることによる類似の作用方法を有している。しかし、エポチロン及びタキソールは異なる新規な化字構造を有している。
【0303】
MDR細胞は、タキソール(CCRF-CEM/VBL細胞)に1500倍の耐性であるが、エポチロンAは、わずか8倍の耐性しか示さず、エポチロンBは5倍の耐性しか示さない。CCRE-CEM細胞について、EpoBはEpoAより6倍の能力、タキソールより10倍の能力を有する。デスオキシエポチロンB及び化合物#24は、タキソールより3−4倍低い能力しか持たないが、化合物#27はタキソールより>2倍の能力を有する。結局、タキソール及びビンブラスチンは、CCRF−CEM腫瘍細胞に拮抗作用を示すが、EpoB+ビンブラスチンの組み合わせは相乗作用を示す。
【0304】
ヒト白血病細胞に対するin vitroでの相対的細胞毒性は、次のような順序である:CCRF-CEM白血病細胞EpoB(IC50=0.00035μM;相対値=1)>VBL(0.00063;1/1.8)>#27( 0.0010;1/2.9)>タキソール(0.0021;1/6)>EpoA(0.0027;1/7.7)>#24(0.0078;1/22.3)>#10(0.0095;1/27.1)>#25(0.021;1/60)>#1(0.022;1/62.8)>#20(0.030;1/85.7)>#6(0.052;1/149)>#26(0 .055;1/157)>#17(0.090;1/257)>VP-16(0.29;1/8.29)>#15(0.4 4;1/1257)>#19(0.96;1/2943)。CCRF-CEM/VBL MDR白血病細胞EpoB(IC50=0.0021;1/6*[1]*)>#27(0.0072;1/20.6)>#1(0.012; 1/34.3)>#10(0.017;1/48.6)>EpoA(0.020;1/57.1[1/9.5])>#6(0.035)>#20(0.049)>#24(0.053)>#25(0.077)>#22(0. 146)>#26(0.197)>#17(0.254)>#11(0.262)>VBL(0.332; 1/948.6[1/158.1])>タキソール(4.14;1/11828[1/1971.4])>VP-16(10. 33;1/29514[1/4919])。
*括弧内の能力は、CCRF-CEH細胞におけるEpo Bに対するもの。
**角括弧内の能力は、CCRF-CEM/VBL MDR細胞におけるEpo Bに対するもの。
【0305】
表9に示すように、MX-1異種移植片を有するヌードマウスを、デスオキシエポチロンB(35mg/kg、死亡率0/10)、タキソール(5mg/kg、死亡率2/10;10mg/ kg、死亡率2/6)及びアドリアマイシン(2mg/kg、死亡率1/10;3mg/kg、死亡率4 /6)で、8日から開始して1日おきに5投与するi.p.処理することは、極めて良好な治療効果をもたらし、35mg/kgのデスオキシエポチロンB、5mg/kgのタキソール及び2mg/kgのアドリアマイシンについて、腫瘍容積の縮小は、各々98%、53%及び28%であった。デスオキシエポチロン処理群について、10匹中3匹のマウスに、18日目(day 18)において腫瘍が検出不能となった(図48参照)。
【0306】
18日目に開始するデスオキシエポチロンB(40mg/kg;i.p.)での延長された処理で、1日おきに5投与以上すると、10匹中5匹のマウスで、28日目(又は31日目)に腫瘍の消失をもたらした。表10参照。これに対して、5投与より多くの5mg/kgでのタキソールの延長された処理では、腫瘍は引き続き中程度の速度で成長を続け、10匹中2匹のマウスが毒性で死亡した。
【0307】
6匹のマウスに対して4日に渡り毎日デスオキシエポチロンBのi.p.投与(25mg/kg、以前の実験で示したように、治療に極めて有効な量)をする毒性試験は、平均体重の低下をもたらさなかった。(表13;図47)。それに対して、8匹のマウスに対する4日間のエポチロンB(0.6mg/kg)i.p.)では、平均体重の33%の低下を引き起こし、8匹全てのマウスが、5から7日目の間に毒性のため死亡した。
【0308】
【表10】
【0309】
【表11】
【0310】
【表12】
【0311】
【表13】
【0312】
【表14】
【0313】
【表15】
【0314】
表15から明らかなように、デスオキシエポチロンBは、MDR腫瘍異種移植片(ヒト哺乳類アデノガンMCF-7/Adr異種移植片)に対して、タキソール、ビンブラスチン、アドリアマイシン及びカンプトテシンより有意に優れた作用をする。この薬物耐性腫瘍は非常に攻撃的に成長し、タキソール及びアドリアマイシンの半致死量に耐性を持つ。タキソールの6mg/kg i.p.Q2D×5は、腫瘍サイズを10%しか縮小させず、アドリアマイシンは、17日目に22%縮小させるだけである。一方、デスオキシエポチロンBは、35mg/kgで、17日目に腫瘍サイズを66%縮小させるが、体重減少や明らかな毒性は示さない。タキソール(12mg/kg)またはアドリアマイシン(3mg/kg)というLD50量に比較しても、デスオキシエポチロンBの方が有効である。それに比較して、カンプトテシンは、1.5及び3.0 mg/kgで、腫瘍サイズを各々28%及び57%縮小した。結局、現在使用されている4つの重要な抗腫瘍薬、即ち、タキソール、アドリアマイシン、ビンブラスチン及びカンプトテシンに比較して、デスオキシエポチロンBは、MDR異種移植片に対する優れた化学治療効果を示した。
【0315】
【表16】
【0316】
【表17】
【0317】
【表18】
【技術分野】
【0001】
エポチロンの合成とその中間体及びその類似物並びにその使用
この出願は、各々、1996年12月3日、1997年1月14日、1997年5月22日、1997年5月29日、及び1997年8月13日に出願した出願番号60/032,282、60/033,767、60/047,566、60/047,941、及び60/055,533の米国仮出願を基礎とするものであり、これらの出願の内容は、ここに、本出願に取りこむものとする。本発明は、国立衛生機関から、CA-28824、CA-39821、CA-GM72231、CA-62948、及びA10-9355で認可され、及び国立科学財団からCHE-9504805で認可され、政府の保護によってなされたものである。
【0002】
本発明は、エポチロン(epothilone)マクロライド系抗生物質の分野に属する。特に本発明は、高い特異性を持ち、非毒性の抗腫瘍治療薬であるエポチロンA及びB、デスオキシエポチロン(desoxyepothilone)A及びB、及びそれらの類似物の製造方法に関する。さらに、本発明は、多剤耐性細胞の阻害方法も提供する。また、本発明は、エポチロン製造の中間体として提供される新規な組成物も提供する。
【0003】
この出願を通じて種々の文献が参照されるが、それら各々は、その全てを参考として本出願に取り入れ、本発明がなされたときの技術水準をより十分に記載したものとする。
【背景技術】
【0004】
エポチロンA及びBは、高活性の抗腫瘍薬であり、Sorangium属のミクソバクテリアから単離された。これらの化合物の全体構造は、X−線結晶構造解析から、Hofleによって決定された、G.Hofle等,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1996,35,1水の浄化7。エポチロンの全合成は幾つかの理由によって極めて重要な目標である。タキソールは、既に、卵巣及び乳ガンの化学治療における有用な供給源であり、その臨床応用の範囲は拡大している。G.I.Georg等,Taxane Anticancer Agents;American Cancer Society:SanDiego,1995。タキソールの細胞毒性のメカニズムは、少なくともin vitroレベルでは、微小管アセンブリの安定化を含んでいる。P.B.Schiff等,Nature(London),1979,277,665。エポチロンでのin vitro実験での一連の相補形は、それらが、おそらくタンパク質標的との結合部位の下流側においてタキソールの機械的主題を共有していることを示した。D.M.Bollag等,Cancer Res.,1995,55,2325。さらに、エポチロンは、細胞毒性の点でタキソールを凌ぎ、薬物耐性細胞に抗するin vitro効率の点でさらに凌いでいる。多剤耐性(MDR)は、タキソールの一連の制限の一つであるので(L. M.Landino及びT.L.MacDonald,The Chemistry and Pharmacology of Taxol and its Derivatives,V.Farin,Ed。,Elsevier:New York,1995,ch.7,p.301)、この問題を解決することを約束するあらゆる試薬が一連の注目の的であった。さらに、エポチロンの臨床用製剤は、タキソールより直接的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国仮出願第60/032,282号
【特許文献2】米国仮出願第60/033,767号
【特許文献3】米国仮出願第60/047,566号
【特許文献4】米国仮出願第60/047,941号
【特許文献5】米国仮出願第60/055,533号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】G.Hofle等,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1996 ,35
【非特許文献2】G.I.Georg等,Taxane Anticancer Agents;American Cancer Society:SanDiego,1995
【非特許文献3】P.B.Schiff等,Nature(London),1979,277,665
【非特許文献4】D. M.Bollag等,Cancer Res.,1995,55,2325
【非特許文献5】L. M.Landino及びT.L.MacDonald,The Chemistry and Pharmacology of Taxol an d its Derivatives,V.Farin,Ed。,Elsevier:New York,1995,ch.7,p.301
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明者らは、エポチロンの全合成に着手し、その結果、エポチロンA及びB、対応するデスオキシエポチロン、並びにそれらの類似物を合成する有効な方法を開発した。また本発明は、エポチロンA及びB及びそれらの類似物の合成に有用な新規な中間体、そのようなエポチロン及び類似物から誘導される組成物、エポチロンA及びB、及びデスオキシエポチロンA及びBの精製された化合物、さらには、エポチロン類似物のガン治療における使用方法を提供する。予想しないことに、エポチロンは、癌細胞における多剤耐性を逆転させことが判明しただけではなく、in vitro及びin vivoの両方で、正常細胞よりMDR細胞に対して細胞毒性である副行感受性薬として、さらに、ビンブラスチン等の他の細胞毒性薬と組み合わせた場合に、個々の薬物を同じ濃度で単独使用した場合より活性が高い相乗薬として活性であることが解った。特に、本発明のデスオキシエポチロンは、in vivoでの腫瘍細胞毒性薬として極めて優れた特異性を有し、タキソール、ビンブラスチン、アドリアマイシン及びカンプトセシン(camptothecin)を含む現在用いられている主要な化学治療薬より有効であるとともに正常細胞に対する毒性が低い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の目的は、エポチロンA及びB、及びデスオキシエポチロンA及びB、及び抗腫瘍薬治療として有用な関連化合物の製造方法を提供することである。本発明の他の目的は、エポチロンA及びB並びにそれらの類似物の製造における中間体として有用な種々の化合物を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、それらの中間体の調製のための合成方法を提供することである。さらに本発明の目的は、本発明の製造方法を通して得られるエポチロンの任意の類似物と、任意に製薬的キャリアとの組み合わせを含み、ガン罹患患者の治療に有用な組成物を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、本発明の製造方法を通して得られるエポチロンの任意の類似物と、任意に製薬的キャリアとの組み合わせを用いて、ガン罹患患者を治療する方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(A)は、エポチロンA及びBの逆行合成分析を示す。図1(B)は、化合物11の合成を提示する。(a)t-BuMe2OTf,2,6-ルチジン,CH2Cl2,98%;(b)(1)DDQ,CH2Cl2/H2O,89%;(2)(COCl)2,DMSO,CH2Cl2,-78℃ →rt(室温),90%;(c)MeOCH2PPh3Cl,t-BuOK,THF,0℃→rt,86%;(d)(1)p-TsOH,ジオキサン/H2O,50℃,99%;(2)CH3PPh3Br,NaHMDS,PhCH3,0℃→rt,76%;(e )Phl(OCOCF3)2,MeOH/THF,rt,0.25h,92%。
【図2】12,13-E-及び-Z-デオキシエポチロンの調製において鍵となる中間体を提示する図である。
【図3A】ヒドロキシメチレン-及びヒドロキシプロピレン-置換エポチロン誘導体の調製に用いられる鍵となるヨウ素化中間体の合成を提示する図である。
【図3B】ヒドロキシメチレン-及びヒドロキシプロピレン-置換エポチロン誘導体の調製方法を提示する図であり、当該方法は一般的に、12,13-E-エポチロンであって、Rがメチル、エチル、n-プロピル、及びn-ヘキシルであるものを、対応する E-ビニルヨウ化物から調製するのに有用である。
【図3C】ベンゾイル化ヒドロキシメチレン-置換デスオキシエポチロン及びヒドロキシメチレン-置換エポチロン(エポキシド)に導く反応を示す図である。
【図4】図4(A)は、化合物19の合成を提示する。(a)DHP,PPTS,CH2Cl2,rt:( b)(1)Me3SiCCLi,BF3・OEt2,THF,-78℃,(2)MOMCl,I-Pr2NEt,Cl(CH2)Cl,55 ℃;(3)PPTS,MeOH,rt;(c)(1)(COCl)2,DMSO,CH2Cl2,-78℃;次いでEt3N,-78 ℃→rt;(2)MeMgBr,Et2O,0℃→rt,(3)TPAP,NMO,4A mol シーブス,CH2Cl2,0℃ →rt;(d)16,n-BuLi,THF,-78℃;次いで15,THf,-78℃→rt;(e)(1)N-ヨード スクシンイミド,AgNO3,(CH3)2CO;(2)Cy2BH,Et2O,AcOH;(f)(1)PhSH,BF3・OEt2,CH2Cl2,rt;(2)Ac2O,ピリジン,4-DMAP,CH2Cl2,rt。図4(B)化合物1の合成を提示する。(a)11,p-BBN,THF,rt;次いでPdCl2(dppf)2,Cs2CO3,Ph3As,H2O,DMF,19,rt,71%;(b)p-TsOH,ジオキサン/H2O,50℃;(c)KHMDS,THF,-78℃,51%;(d)(1)HF-ピリジン,ピリジン,THF,rt,97%;(2)t-BuMe2SiOTf,2,6-ルチジン,CH2Cl2,-25℃,93%;(3)デス-マーチンペリオジナン(periodinane),CH2Cl2,87%;(4)HF・ピリジン,THF,rt,99%;(e)ジメチルジオキシラン;,CH2Cl2,0.5h,-50℃,45%(≧20:1)。
【図5】エポチロンAの”左翼(left wing)”の合成の機構を示す図である。
【図6】エポチロンA及び他の類似物へのオレフィン置換経路の機構を示す図である。
【図7】エポチロンA(1)の全合成のための収束方法、及び、ゲミナル(geminal)メチル基を導入するためのグリカールシクロプロパンのソルボリシス方法を例示する図である。
【図8】化合物15Bの鏡像(エナンチオ)選択的合成を提示する図である。
【図9】閉環オレフィン置換による、モデル系20B、21B及び22Bの構造を示す図である。
【図10】天然、合成及びデスオキシエポチロンAの沈降試験を例示する図である。
【図11】4℃で天然、合成及びデスオキシエポチロンAの沈降試験を例示する図である。
【図12】(A)エポチロンA(1)及び(B)タキソール(登録商標)(1A)の構造を示す図である。
【図13】ジヒドロビロン(dihydropyrone)マトリクスに基づく非環式立体化学的関係の立案方法を示す図である。
【図14】中間体4Aの調製を示す図である。
【図15】化合物17Aの代替的鏡像選択的合成を示す図である。
【図16】中間体13Cの合成経路を提示する図である。(a)1.トリブチルアリルチン,(S)-(- )-BINOL,Ti(Oi-Pr)4,CH2Cl2,-20℃,60%,>95%e.e.;2.Ac2O,Et3N,DMAP,CH2Cl2,95%;(b)1.OsO4,NMO,アセトン/H2O,0℃;2.NalO4,THF/H2O;(c)12,THF,-20℃,Z異性体のみ,10から25%;(d)Pd(dppf)2,Cs2CO3,Ph3As,H2O,DMF,rt.77%。
【図17】中間体エポチロンB(2)への合成経路を提示する図である。(a)p-TsOH ,ヂオキサン/H2O,55℃,71%;(b)KHMDS,THF,-78℃,67%,α/β:1.5:1;(c)デス-マーチンペリオジナン,CH2Cl2;(d)NaBH4,MeOH,2工程につき67%;(e)1.HF・ピリジン,ピリジン,THF,rt,93%;2.TBSOTf,2,6-ルチジン,CH2Cl2,-30℃,89%;3.デス-マーチンペリオジナン,CH2Cl2,67%;(f)HF・ピリジン,THF,rt,80%;(g)ジメチルジオキシラン,CH2Cl2,-50℃,70%。
【図18】8-デスメチルデオキシエポチロンAのための保護された中間体への合成経路を提示する図である。
【図19】8-デスメチルデオキシエポチロンAへの合成経路、及び、トランス-8-デスメチル-デオキシエポチロンA及びそれへのトランス-ヨードオレフィン中間体の構造を提示する図である。
【図20】(上部)エポチロンA及びB及び8-デスメチルエポチロン、並びに(下部)デスメチルエポチロンAの調製に用いられる中間体TBSエステル10への合成経路を示す図である。(a)(Z)-クロチル-B[(-)-lpc]2,-78℃,Et2O,次いで3N NaOH,30% H2O2;(b)TBSOTf,2,6-ルチジン,CH2Cl2(2工程につき74%,87%ee);(c)O3,CH2Cl2/MeOH,-78℃,次いでDMS,(82%);(d)t-ブチルイソブチリルアセテート,NaH,BuLi,0℃,次いで,6(60%,10:1);(e)Me4NBH(OAc)3,-10℃(50%,10:1 α/β); (f)TBSOTf,2,6-ルチジン,-40℃,(88%);(g)デス-マーチンペリオジナン,(90%);(h)Pd(OH)2,H2,EtOH(96%);(i)DMSO,オキサリルクロリド,CH2Cl2,-78℃(78%);(j)メチルトリフェニルホスホニウムブロミド,NaHMDS,THF,0℃(85%);(k)TBSOTf,2,6-ルチジン,CH2Cl2,rt(87%)。
【図21】8-デスメチルエポチロンAの合成経路を示す図である。(a)Pd(dppf)2Cl2 ,Ph3As,Cs2CO3,H2O,DMF,rt(62%);(b)K2CO3,MeOH,H2O(78%);(c)DCC,4-DMAP,4-DMAP・HCl,CHCl3(78%);(d)HF・pyr,THF,rt(82%),(e)3,3-ジメチルジオキシラン,CH2Cl2,-35℃(72%,1.5:1)。
【図22】エポチロン類似物27Dへの合成経路を示す図である。
【図23】エポチロン類似物24Dへの合成経路を示す図である。
【図24】エポチロン類似物19Dへの合成経路を示す図である。
【図25】エポチロン類似物20Dへの合成経路を示す図である。
【図26】エポチロン類似物22Dへの合成経路を示す図である。
【図27】エポチロン類似物12−ヒドロキシエチルエポチロンへの合成経路を示す図である。
【図28】DMSO、エポチロンA及び/又はBと比較した沈降試験におけるエポチロン類似物の活性を示す図である。構造17−20、22、及び24−27は、図29−37に各々示す。化合物は、チューブリン(1mg/ml)に、10μMの濃度まで添加した。エポチロンで形成された微小細管の量は、100%と測定された。
【図29】エポチロン類似物#17の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図30】エポチロン類似物#18の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図31】エポチロン類似物#19の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図32】エポチロン類似物#20の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図33】エポチロン類似物#22の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図34】エポチロン類似物#24の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図35】エポチロン類似物#25の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図36】エポチロン類似物#26の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図37】エポチロン類似物#27の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図38】細胞毒性薬の分別混合の効果の図式的説明を提示する図である。
【図39】エポチロンA及びエポチロン類似物#1−7を示す図である。ヒト白血病CCRF-CEM(感受性)及びCCRF-CEM/VBL MDR(耐性)サブラインに対する効力は、各々、丸型及び角形ブラケットで示した。
【図40】エポチロンB及びエポチロン類似物#8−16を示す図である。ヒト白血病CCRF-CEM(感受性)及びCCRF-CEM/VBL MDR(耐性)サブラインに対する効力は、各々、丸型及び角形ブラケットで示した。
【図41】エポチロン類似物#17−25を示す図である。ヒト白血病CCRF-CEM(感受性)及びCCRF-CEM/VBL MDR(耐性)サブラインに対する効力は、各々、丸型及び角形ブラケットで示した。
【図42A】エポチロン類似物#26−34を示す図である。ヒト白血病CCRF-CEM(感受性)及びCCRF-CEM/VBL MDR(耐性)サブラインに対する効力は、各々、丸型及び角形ブラケットで示した。
【図42B】エポチロン類似物#35−46を示す図である。ヒト白血病CCRF-CEM(感受性)及びCCRF-CEM/VBL MDR(耐性)サブラインに対する効力は、各々、丸型及び角形ブラケットで示した。
【図42C】エポチロン類似物#47−49を示す図である。
【図43A】タキソールとの比較における、MDR MCF-7/Adr異種移植に対するデスオキシエポチロンBの抗腫瘍活性を示す図である。コントロール(◆) ;デスオキシエポチロンB(■;35mg/kg);タキソール(▲;6mg/kg);アドリアマイシン(×;1.8mg/kg);i.p.Q2Dx5;8日目に開始。
【図43B】タキソールとの比較における、MDR MCF-7/Adr異種移植に対するエポチロンBの抗腫瘍活性を示す図である。コントロール(◆);エポチロンB(■;25mg/kg;非毒性投与量);タキソール(▲;6mg/kg;LD50半分);アドリアマイシン(×;1.8mg/kg);i.p.Q2Dx5;8日目に開始。
【図44A】B16黒色腫を持つB6D2F1マウスにおけるデスオキシエポチロンBの毒性を示す図である。体重は、0、2、4、6、8、10及び12日目に測定した。コントロール(▲);デスオキシエポチロンB(○;10mg/kg;QDx8;8中0 が死亡);デスオキシエポチロンB(●;20mg/kg;QDx6;8中0が死亡)。注射は1日目に開始。
【図44B】B16黒色腫を持つB6D2F1マウスにおけるエポチロンBの毒性を示す図である。体重は、0、2、4、6、8、10及び12日目に測定した。コントロール(▲);エポチロンB(○;0.4mg/kg;QDx6;8中1が死亡する毒性);エポチロンB(●;0.8mg/kg;QDx5;8中5が死亡)。注射は1日目に開始。
【図45A】MX-1異種移植を持つヌードマウスでの、デスオキシエポチロンB及びタキソールの比較治療効果を示す図である。腫瘍,s.c.;薬剤はi.p.で投与した,Q2Dx5,7日目に開始。コントロール(◆);タキソール(□;5mg/kg;LD50の半分);デスオキシエポチロンB(△;25mg/kg;非毒性投与量)。
【図45B】MX-1異種移植を持つヌードマウスでの、デスオキシエポチロンB及びタキソールの比較治療効果を示す図である。腫瘍,s.c.;薬剤はi.p.で投与した,Q2Dx5,7日目に開始。コントロール(◆);タキソール(□;5mg/kg;LD50の半分;7,9,11,13,15日に投与;次いで、6mg/kg,17,19,23,24,25日に投与);デスオキシエポチロンB(n=3;△,×,*;25mg/kg;非毒性投与量;3匹のマウスに、7,9,11,13,15日に投与;次いで、35mg/kg,17,19,23,24,25日に投与)。
【図46】ヒトMX-1異種移植を持つヌードマウスの、デスオキシエポチロンB(35mg/kg)、タキソール(5mg/kg)及びアドリアマイシン(2mg/kg)での治療効果を、移植8から18日後の間の腫瘍サイズについて示す図である。デスオキシエポチロンB(□)、タキソール(△)、アドリアマイシン(×)、コントロール(◆);i.p.処理は、8,10,12,14及び16日目に行った。
【図47】正常ヌードマウスにおける、コントロールに対するエポチロンB(□;0.6mg/kg QDx4;i.p.)及びデスエポチロンB(△;25mg/kg QDx4;i.p.)の相対的毒性を示す図である。体重は、注射後毎日測定した。エポチロンBについて、8匹中8匹が、5,6,6,7,7,7,7,及び7日目に死亡する毒性を有するが、デスオキシエポチロンでは、全て6匹のマウスが生き残った。
【図48】エポチロン類似物#43の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図49】エポチロン類似物#45の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図50】エポチロン類似物#46の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図51】エポチロン類似物#47の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【図52】エポチロン類似物#48の高分解能1H NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで用いられる用語「直鎖状または分枝鎖状アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t-ブチル、sec-ブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルを含むが、これらに限定されない。アルキル基は、1つの炭素原子から14炭素原子まで含むが、好ましくは、1つの炭素原子から9酸素原子までを含み、アシル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシ、ヒドロキシ、カルボキシアミド、及び/またはN-アシルアミノ部分を含むがこれらに限定されない種々の基で置換されていてもよい。
【0013】
ここで用いられる用語「アルコキシカルボニル」、「アシル」及び「アルコキシ」は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、n-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、ヒドロキシプロピルカルボニル、アミノエトキシカルボニル、sec-ブトキシカルボニル及びシクロペンチルカルボニルを含むが、これらに限定されない。アシル基の例は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル及びペナノイルを含むが、これらに限定されない。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ及びシクロペンチルオキシを含むが、これらに限定されない。
【0014】
ここで用いられる用語「アリール」は、フェニル、ピリジル、ピリル、インドリル、ナフチル、チオフェニルまたはフリル基を含むがこれらに限定されず、各々は、アシル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシ、ヒドロキシ、カルボキシアミド、またはN-アシルアミノ部分を含むがこれらに限定されない種々の基で置換されていてもよい。アリールオキシ基の例は、フェノキシ、2-メチルフェノキシ、3-メチルフェノキシ及び2-ナフトキシを含むが、これらに限定されない。アシルオキシ基の例は、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ及びヘキサノイルオキシを含むが、これらに限定されない。
【0015】
本発明は、下記の構造を有する化合物を含むエポチロンA及びBの化学治療的類似物を提供する。
【0016】
【化1】
【0017】
ここで、R、R0yびR’は、個々独立に、H、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、任意にヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、フッ素、NR1R2、N-ヒドロキシイミノ、またはN-アルコキシイミノで置換されていてもよく;R1及びR2は、個々独立に、H、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;R”は、CHY=CHX、またはH、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル-1,3-チアゾリニル、2-フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル-1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6-インドリルであり;Xは、H、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル-1,3-チアゾリニル、2-フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル-1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6-インドリルであり;Yは、Hまたは直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;Zは、O、N(OR3)またはN-NR4R5であり、R3、R4及びR5は、個々独立に、Hまたは直鎖状または分枝状アルキルまたはアルコキシであり;nは、0、1、2または3である。一実施態様では、本発明は、下記の構造を有する化合物を提供する。
【0018】
【化2】
【0019】
ここで、Rは、H、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ヘキシルまたはCH2OH、(CH2)3-OHである。
【0020】
また、本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【0021】
【化3】
【0022】
ここで、R、R0及びR’は、個々独立に、H、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、任意にヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、フッ素、NR1R2、N-ヒドロキシイミノ、またはN-アルコキシイミノで置換されていてもよく;R1及びR2は、個々独立に、H、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;R”は、CHY=CHX、またはH、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル-1,3-チアゾリニル、2-フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル-1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6-インドリルであり;Xは、H、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル-1,3-チアゾリニル、2-フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル-1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6-インドリルであり;Yは、Hまたは直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;Zは、O、N(OR3)またはN-NR4R5であり、R3、R4及びR5は、個々独立に、Hまたは直鎖状または分枝状アルキルまたはアルコキシであり;nは、0、1、2または3である。ある種の実施態様では、本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【0023】
【化4】
【0024】
ここで、Rは、H、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ヘキシルまたはCH2OHである。
【0025】
さらに、本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【0026】
【化5】
【0027】
ここで、R、R0及びR’は、個々独立に、H、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、任意にヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、フッ素、NR1R2、N-ヒドロキシイミノ、またはN-アルコキシイミノで置換されていてもよく;R1及びR2は、個々独立に、H、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;R”は、CHY=CHX、またはH、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル−1,3-チアゾリニル、2-フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル-1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6-インドリルであり;Xは、H、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル-1,3-チアゾリニル、2-フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル-1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6-インドリルであり;Yは、Hまたは直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;Zは、O、N(OR3)またはN-NR4R5であり、R5、R4及びR5は、個々独立に、Hまたは直鎖状または分枝状アルキルであり;nは、0、1、2または3である。特に、本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【0028】
【化6】
【0029】
ここで、Rは、H、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ヘキシルまたはCH2OH、(CH2)3-OHである。
【0030】
さらに本発明は、下記の構造を有する化合物を提供する。
【0031】
【化7】
【0032】
ここで、R、R0及びR’は、個々独立に、H、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、任意にヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、フッ素、NR1R2、N-ヒドロキシイミノ、またはN-アルコキシイミノで置換されていてもよく;R1及びR2は、個々独立に、H、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;R”は、CHY=CHX、またはH、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル-1,3-チアゾリニル、2-フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル−1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6-インドリルであり;Xは、H、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル-1,3-チアゾリニル、2-フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル-1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6-インドリルであり;Yは、Hまたは直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;Zは、O、N(OR3)またはN-NR4R5であり、R3、R4及びR5は、個々独立に、Hまたは直鎖状または分枝状アルキルまたはアルコキシであり;nは、0、1、2または3である。
【0033】
また、本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【0034】
【化8】
【0035】
また、本発明は、化学治療的化合物エポチロンA及びB、並びにそれらの類似物を調製するために有用な種々の中間体を提供する。従って、本発明は、下記構造を有し、エポチロンA及びその類似物への鍵となる中間体を提供する。
【0036】
【化9】
【0037】
ここで、Rは、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルであり;R’は、H、メチル、エチル、n-プロピル、n-ヘキシル、
【0038】
【化10】
【0039】
CH2OTBSまたは(CH2)3-OTBDPSであり;Xはハロゲン化物である。一実施態様では、本発明は、上記構造においてRがアセチルでありXがヨードである化合物を提供する。
【0040】
また本発明は、下記構造を有する中間体を提供する。
【0041】
【化11】
【0042】
ここで、R’及びR”は、個々独立に、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリール又はベンジル、トリアルキルシリル、ジアリキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルであり;Xは、酸素、(OR)2、(SR)2、-(O-(CH2)n-O)-、-(O-(CH2)n-S)-、または-(S-(CH2)n-S)-であり;nは、2、3または4である。
【0043】
【化12】
【0044】
ここで、RはHまたはメチルである。
【0045】
本発明による他の類似物は以下の構造を有する。
【0046】
【化13】
【0047】
ここで、Rは、H、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ヘキシル、CH2OHまたは(CH2)3-OHである。
【0048】
さらに、本発明は、下記構造を有する類似物を提供する。
【0049】
【化14】
【0050】
ここで、RはHまたはメチルである。本発明の範囲は、そのC3炭素がRまたはS絶対配置の何れかを有するもの、並びにそれらの混合物を包含する。
【0051】
さらに本発明は、下記構造を有するエポチロンAの類似物を提供する。
【0052】
【化15】
【0053】
また、本発明は、エポチロン調製のための中間体の調製経路も提供する。従って、本発明は、下記構造を有するZ-ヨードアルケンの製造方法を提供する。
【0054】
【化16】
【0055】
ここで、Rは、水素、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、置換又は非置換のアリールオキシアルキル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルである。この方法は、(a)下記構造:
【0056】
【化17】
【0057】
を有する化合物を、下記構造:
【0058】
【化18】
【0059】
(ここで、R’及びR”は、個々独立に、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、置換又は非置換アリールまたはベンジルである)を有するメチルケトンと、適当な条件下でカップリングさせて、下記構造:
【0060】
【化19】
【0061】
を有する化合物を生成し、(b)工程(a)で生成した化合物を適当な条件下で処理して下記構造:
【0062】
【化20】
【0063】
を有するz-ヨードアルケンを生成し、次いで、(c)工程(b)で生成したZ-ヨードアルケンを適当な条件下で脱保護及びアセチル化して、Z-ヨードアルケンエステルを生成することを含む。工程(a)のカップリングば、テトラヒドロフラン(THF)等の不活性溶媒中のn-BuLi等の強酸を用いて、低温、典型的には-50℃以下、好ましくは-78℃以下で行うことができる。工程(b)の処理は、アセトン等の極性有機溶媒中で、硝酸銀等のAg(I)の存在下でのN-ヨードスクシンイミドでの逐次反応を含み、典型的には水素化ホウ素試薬、好ましくはCy2BHを用いた還元条件に続く。脱保護工程(c)は、ジクロロメタン等の不活性有機溶媒中で、三フッ化ホウ素エーテレート等のルイス酸触媒の存在下、チオフェノール等のチオールと接触させることを含み、ジクロロメタン等の不活性有機溶媒中で、ピリジン及び/または4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下、塩化アセチル等のハロゲン化アシル、または無水酢酸等の無水アシルでのアシル化に続く。
【0064】
また本発明は、下記式を有するZ-ハロアルケンエステルの製造方法も提供する。
【0065】
【化21】
【0066】
上記式中、Rは、水素、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、置換又は非置換アリールオキシアルキル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルであり;Xはハロゲンである。この方法は(a)下記構造:
【0067】
【化22】
【0068】
を有する化合物を適当な条件下で酸化的に開裂してアルデヒド中間体を生成し、そして、(b)当該アルデヒド中間体を、適当な条件下で、ハロメチレン転移剤で縮合させてZ−ハロアルケンエステルを生成することを含んでなる。一実施態様において、Xはヨウ素である。他の実施態様において、この方法は、ハロメチレン転移剤が、Ph3P=CHIまたは(Ph3P+CH2I)I-として実施される。ハロアルキリデン転移剤Ph3P=CR’I、(但し、R’は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、n-ヘキシル、
【0069】
【化23】
【0070】
CO2Et、または(CH2)3-OTBDPSである)を用いて、2置換オレフィンを調製することもできる。酸化工程(a)は、弱い酸化剤、例えば四酸化オスミウムを用いて、約0℃で行うことができ、続いて、過ヨウ素酸ナトリウムまたは四酢酸鉛/炭酸ナトリウムで処理して末端オレフィンを完全に開裂し、末端アルデヒドを提供する。縮合工程(b)は、Wittig試薬などの種々のハロメチレン化剤で有効に行われる。
【0071】
さらに本発明は、下記構造を有する光学的に純粋な化合物の製造方法を提供する。
【0072】
【化24】
【0073】
ここで、Rは、水素、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、置換又は非置換のアリールオキシアルキル、直鎖状又は分枝状アシル、置換又は非置換のアリルまたはベンジルである。この方法は、(a)アリル有機金属試薬と、下記構造:
【0074】
【化25】
【0075】
を有する不飽和アルデヒドとを、適当な条件下で縮合させてアルコールを生成し、任意にそれと並行して、当該アルコールを光学的に分割して下記構造:
【0076】
【化26】
【0077】
を有する光学的に純粋なアルコールを生成し、(b)前記工程(a)で生成した光学的に純粋なアルコールを、適当な条件下でアルキル化またはアシル化して光学的に純粋な化合物を形成することを含んでなる。この方法の一実施態様では、アリル有機金属試薬が、アリル(トリアルキル)スタンナンである。他の実施態様では、前記縮合工程が、チタンテトラアルコキシド及び光学活性触媒を含む試薬を用いて行われる。工程(a)において、不飽和アルデヒドへの1,2-付加は、種々のアリル有機金属試薬を用いて行われるが、典型的には、アリルトリアルキルスズ酸塩、好ましくはアリルスズ-n-ブチルスズ酸塩を用い、キラル触媒及びモレキュラーシーブの存在下、ジクロロメタン等の不活性有機溶媒中で行われる。好ましくは、この方法は、チタンテトラアルコキシド、例えば、チタンテトラ-n-プロポキシド、及び光学活性触媒としてS-(-)BINOLを用いて行われる。アルキル化またはアシル化工程(b)は、典型的なアルキル化剤、例えばアルキルハライドまたはアルキルトシレート、アルキルトリフレート、またはアルキルメシレート、並びに、典型的なアシル化剤、例えば塩化アセチル、無水酢酸、塩化ベンゾイル、または無水ベンゾイルを用い、マイルドな塩基触媒の存在下、ジクロロメタン等の不活性有機溶媒中で行われる。
【0078】
また本発明は、下記式の構造を有する開環アルデヒドの製造方法も提供する。
【0079】
【化27】
【0080】
ここで、R’及びR”は、個々独立に、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリール又はベンジル、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルである。この方法は、(a)下記構造:
【0081】
【化28】
【0082】
(ここで、Rは、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、置換又は非置換のアリールオキシアルキル、トリアルキルシリル、アリールジアルキルシリル、ジアリールアルキルシリル、トリアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルであり;Xは、ハロゲンである)を有するハロオレフィンを、下記構造:
【0083】
【化29】
【0084】
(ここで、(OR”’)2は、酸素、(OR0)2、(SR0)2、-(O-(CH2)n-O)-、-(O-(CH2)n-S)-、または-(S-(CH2)n-S)-であり;R0は、直鎖状または分枝状アルキル、置換または非置換のアリールまたはベンジルであり;nは、2、3または4である)を有する末端オレフィンと、適当な条件下で交差カップリングして、下記構造:
【0085】
【化30】
【0086】
(ここで、Yは、CH(OR*)2であり、R*は、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、置換または非置換アリールオキシアルキルである)を有する交差カップリング化合物を生成し、次いで、(b)前記工程(a)で生成した交差カップリング化合物を、適当な条件下で脱保護して開環化合物を形成することを含んでなる。交差-カップリング工程(a)は、この目的に適しているとこの分野で知られた試薬を用いて行われる。例えば、この工程は、プレ-アシル成分を9-BBNでハイドロボレートすることによって実施できる。得られた混合ボランは、次いでPdCl2(dppf)2等の有機金属触媒または周知の等価物と、炭酸セシウム及びトリフェニルアルシンのような補助試薬の存在下、交差-カップリングされる。脱保護工程(b)は、p-トシック酸(tosic acid)等のマイルドな酸で、典型的にはジオキサン−水といった混合水性有機溶媒系中で行うことができる。
【0087】
また本発明は、下記構造を有するエポチロンの製造方法も提供する。
【0088】
【化31】
【0089】
この方法は、(a)下記構造:
【0090】
【化32】
(ここで、R’及びR”は、個々独立に、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリール又はベンジル、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルである)を有する環化化合物を、適当な条件下で脱保護して脱保護環化化合物を生成し、当該脱保護環化化合物を適当な条件下で酸化して、下記構造:
【0091】
【化33】
【0092】
を有するデスオキシエポチロンを生成し、次いで、(b)前記工程(a)で生成したデスオキシエポチロンを、適当な条件下でエポキシ化してエポチロンを形成することを含んでなる。脱保護工程(a)は、HF-ピリジン等の触媒、次いで、ルチジン等の塩基の存在下でのt-ブチルジメチルシリルトリフレートでの連続的な処理を用いて行われる。デス-マーチン酸化、及びHF-ピリジン等の触媒でのさらなる脱保護は、デスオキシエポチロンを提供する。後者の化合物は、次いで、工程(b)において、過酢酸、過酸化水素、過安息香酸、m-クロロ過安息香酸等の種々のエポキシ化剤を用いて、ジクロロメタン等の不活性有機溶媒中でエポキシ化することができるが、ジメチルジオキシランが好ましい。
【0093】
さらに本発明は、下記構造を有するエポチロン前駆体の製造方法を提供する。
【0094】
【化34】
【0095】
ここで、R1は、水素、またはメチルであり;XはO、または各々炭素原子に単結合したハロゲン及びOR”であり,R0、R’及びR”は、個々独立に、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリール又はベンジル、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルである。この方法は、(a)下記構造:
【0096】
【化35】
【0097】
(ここで、Rは、アセチルである)を有する化合物を、下記構造:
【0098】
【化36】
【0099】
(ここで、Yは、酸素である)を有するアルデヒドと、適当な条件下でカップリングさせてアルドール中間体を生成し、当該アルドール中間体は、任意に、適当な条件下で保護して下記構造:
【0100】
【化37】
【0101】
を有する非環式エポチロン前駆体を生成してもよく、(b)前記非環式エポチロン前駆体に、分子内オレフィン置換を導く条件下で処理してエポチロン前駆体を形成することを含んてなる。この方法の一実施態様では、分子内オレフィン置換を導く条件が、有機金属触媒の存在を必要とする。この方法の特別な実施態様では、触媒が、RuまたはMoを含む。カップリング工程(a)は、非求核塩基、例えばリチウムジエチルアミドまたはリチウムジイソプロピルアミドを用いて準室温で行われるが、好ましくは約−78℃である。工程(b)のオレフィン置換は、この目的に適したこの分野で周知の触媒を用いて行われるが、Grubbの触媒を用いるのが好ましい。
【0102】
さらに、本発明は、下記構造を有し、エポチロンの製造のための中間体として有用な化合物を提供する。
【0103】
【化38】
【0104】
ここで、R’及びR”は、個々独立に、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリール又はベンジル、トリアルキルシリル、ジアリキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルであり;Xは、酸素、(OR*)2、(SR*)2、-(O-(CH2)n-O)-、-(O-(CH2)n-S)-、または-(S-(CH2)n-S)-であり;R*は、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換アリール又はベンジルであり;R2Bは、直鎖状、分枝状または環状アルキルあるいは置換又は非置換アリール又はベンジルボラニル部分であり;nは、2、3または4である。一実施態様では、本発明は、R’がTBSであり、R”がTPSであり、Xが(OMe)2である化合物を提供する。R2Bの好ましい例は、9-BBNから誘導される。
【0105】
また本発明は、下記構造を有する化合物も提供する。
【0106】
【化39】
【0107】
ここで、R’及びR”は、個々独立に、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリール又はベンジル、トリアルキルシリル、ジアリキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイルまたはベンゾイルであり;Xは、酸素、(OR)2、(SR)2、-(O-(CH2)n-O)-、-(O-(CH2)m-S)-、または-(S-(CH2)n-S)-であり;nは、2、3または4である。一実施態様では、本発明は、R’がTBSであり、R”がTPSであり、Xが(OMe)2である化合物を提供する。
【0108】
さらに本発明は、下記構造を有するデスメチルエポチロン類似物も提供する。
【0109】
【化40】
【0110】
但し、Rは、Hまたはメチルである。
【0111】
本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【0112】
【化41】
【0113】
但し、Rは、Hまたはメチルである。
【0114】
また本発明は、下記構造を有するtrans-デスメチルデオキシエポチロン類似物も提供する。
【0115】
【化42】
【0116】
但し、Rは、Hまたはメチルである。
【0117】
また本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【0118】
【化43】
【0119】
但し、Rは、Hまたはメチルである。
【0120】
また本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【0121】
【化44】
【0122】
但し、Rは、水素、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、置換又は非置換のアリールオキシアルキル、直鎖状または分枝状アシル、置換または非置換のアロイルまたはベンゾイルであり;R’は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、n-ヘキシル、
【0123】
【化45】
【0124】
、CO2Et、または、(CH2)3OTBDPSであり;そしてXはハロゲンである。一実施態様では、本発明は、RがアセチルでありXがヨウ化物である化合物を提供する。
【0125】
さらに本発明は、下記構造を有する環状アルデヒドの製造方法を提供する。
【0126】
【化46】
【0127】
ここで、Rは、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、置換又は非置換のアリールオキシアルキル、トリアルキルシリル、アリールジアルキルシリル、ジアリールアルキルシリル、トリアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイル又はベンゾイルであり;R’及びR”は、個々独立に、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリールまたはベンジル、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイル又はベンゾイルである。この方法は、(a)下記構造:
【0128】
【化47】
【0129】
(ここで、Xは、ハロゲンである)を有するハロオレフィンを、下記構造:
【0130】
【化48】
【0131】
(ここで、R*2Bは、直鎖状または分枝状または環状アルキル、あるいは置換又は非置換のアリールまたはベンジルボラニル部分であり;Yは、(OR0)2、(SR0)2、-(O-(CH2)n-O)-、-(O-(CH2)n-S)-、または-(S-(CH2)n-S)-であり;R0は、直鎖状または分枝状アルキル、置換または非置換のアリールまたはベンジルであり;nは、2、3または4である)と、適当な条件下で交差カップリングさせて、下記構造:
【0132】
【化49】
【0133】
を有する交差カップリング化合物を生成し、次いで、(b)前記工程(a)で生成した交差カップリング化合物を、適当な条件下で脱保護して開環アルデヒドを形成することを含んでなる。一実施態様では、本発明は、Rがアセチルであり;R’がTBSであり;R”がTPSであり、R*2Bが9−BBNから誘導され、かつYが(OMe)2である方法を提供する。交差-カップリング工程(a)は、この目的のために適しているとこの分野で知られている試薬を用いて行われる。例えば、混合ボランは、PdCl2(dppf)2等の有機金属触媒またはその周知の等価物と、炭酸セシウム及びトリフェニルアルシンの存在下で交差-カップリングできる。脱保護工程(b)は、p-トシック酸等のマイルド名酸触媒を用い、典型的にはジオキサン−水等の混合水性有機溶媒中で行うことができる。
【0134】
また本発明は、下記構造を有する保護されたエポチロンの製造方法も提供する。
【0135】
【化50】
【0136】
ここで、R’及びR”は、個々独立に、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリールまたはベンジル、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイル又はベンゾイルである。この方法は、(a)下記構造:
【0137】
【化51】
【0138】
を有する環状ジオールを、適当な条件下でモノプロテクションして、下記構造:
【0139】
【化52】
【0140】
を有する環状アルコールを生成し、次いで、(b)前記工程(a)で生成した環状アルコールを、適当な条件下で酸化して、保護されたエポチロンを形成することを含んでなる。一実施態様では、本発明は、R’及びR”がTBSである方法を提供する。モノプロテクション(monoprotection)工程(a)は、TBSOTfを含む種々の適当な試薬を用いて、塩基の存在下、不活性有機溶媒中で行われる。塩基は、2,6-ルチジン等の非求核塩基でよく、溶媒はジクロロメタンでよい。反応は、準室温で行われるが、好ましくは−30℃の範囲である。酸化工程(b)は、デス-マーチンペリオジナン(Dess-Martinperiodinane)等の選択的酸化剤を使用し、ジクロロメタン等の不活性有機溶媒中で行われる。酸化は、室温、好ましくは20−25℃で行われる。
【0141】
さらに本発明は、下記構造を有するエポチロンの製造方法を提供する。
【0142】
【化53】
【0143】
この方法は、(a)下記構造:
【0144】
【化54】
【0145】
(ここで、R’及びR”は、個々独立に、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリールまたはベンジル、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイル又はベンゾイルである)を有する保護された環状ケトンを、適当な条件下で脱保護して、下記構造:
【0146】
【化55】
【0147】
を有するデスオキシエポチロンを生成し、次いで、(b)前記工程(a)で生成したデスオキシエポチロンを、適当な条件下でエポキシ化してエポチロンを形成することを含んでなる。一実施態様では、本発明は、R’及びR”がTBSである方法を提供する。脱保護工程(a)は、HF・ピリジン等の試薬を含む処理によって行われる。脱保護された化合物は、工程(b)において、過酢酸、過酸化水素、過安息香酸、m-クロロ過安息香酸等のエポキシ化剤を用い、ジクロロメタン等の不活性有機溶媒中でエポキシ化されるが、好ましくはジメチルジオキシランである。
【0148】
また本発明は、下記構造を有する環状ジオールの製造方法も提供する。
【0149】
【化56】
【0150】
ここで、R’は、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリールまたはベンジル、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイル又はベンゾイルである。この方法は、(a)下記構造:
【0151】
【化57】
【0152】
(ここで、Rは、直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシアルキル、置換又は非置換のアリールオキシアルキル、トリアルキルシリル、アリールジアルキルシリル、ジアリールアルキルシリル、トリアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイル又はベンゾイルであり;R’は、水素、直鎖状または分枝状アルキル、置換又は非置換のアリールまたはベンジル、トリアルキルシリル、ジアルキルアリールシリル、アルキルジアリールシリル、直鎖状または分枝状アシル、置換又は非置換アロイル又はベンゾイルである)を有する開環アルデヒドを、適当な条件下で環化して、下記構造:
【0153】
【化58】
【0154】
を有し、α-及びβ-アルコール成分を含有する保護された環状アルコールのエナンチオマー混合物を形成し、(b)任意に、前記工程(a)で生成されたα-アルコールを、適当な条件下で単離及び酸化してケトンを生成し、その後、当該ケトンを適当な条件下で還元して、実質的にβ-アルコールからなる保護された環状アルコールのエナンチオマー混合物を形成し、次いで、(c)前記工程(a)及び(b)で生成された保護された環状アルコールを、適当な条件下で脱保護剤で処理して環状ジオールを形成することを含んでなる。一実施態様では、本発明は、R’がTBSであり、R”がTPSである方法を提供する。環化工程(a)は、KHMDS等の種々のマイルドな非求核塩基を用い、THF等の不活性溶媒中で行われる。反応は、準室温、好ましくは−90℃〜−50℃の間、より好ましくは−78℃で行われる。非天然α−OHジアステレオマーの単離は、適当なタイプのクロマトグラフィまたは結晶化を含む任意の精製方法によって行われる。この目的に適したクロマトグラフィ技術は、高圧液体クロマトグラフィ、向流クロマトグラフィ、またはフラッシュクロマトグラフィを含む。種々のカラム媒体が適しており、中でも、シリカまたは逆送支持体を含む。β−OH誘導体は、次いで、デス-マーチンペリオジナン等の選択的酸化剤を用いて酸化される。得られたケトンは、選択的還元剤を用いて還元される。種々の水素化ホウ素及び水素化アルミニウム試薬は夕子上ある。好ましい還元剤は、水素化ホウ素ナトリウムである。処理工程(c)は、HF-ピリジンを含む様々な脱保護剤を用いて行うことができる。
【0155】
さらに、本発明は、ガン患者におけるガンの治療方法も提供し、その方法は、当該患者に、ここに開示したエポチロンBに関連する任意の類似物の治療のための有効量を、任意に製薬に適したキャリアと組み合わせて投与することを含む。この方法は、ガンが充実性腫瘍または白血病である場合に適用できる。特に、この方法は、ガンが乳ガンまたは黒色腫である場合に適用できる。
【0156】
また本発明は、ガンの治療用製薬組成物も提供し、この組成物は、上記のエポチロン類似物の任意のものを活性成分として含み、任意だが典型的には製薬に適したキャリアも含む。本発明の製薬組成物は、他の治療用活性成分をさらに含んでいてもよい。
【0157】
さらに本発明は、ガン患者におけるガンの治療方法を提供し、その方法は、当該患者に、上記エポチロン類似物の治療のための有効量と、製薬に適したキャリアとを含む。この方法は、ガンが充実性腫瘍または白血病である場合に適用できる。
【0158】
エポチロンA及びBに関連する上記の化合物は、ガンの治療、特に多剤耐性が存在する場合において、in vivoでもin vitroでも有用である。これらの化合物の細胞中のMDRの非−基質としての能力を、下表において測定したが、それによると、これらの化合物は、ガン患者におけるガンの治療、予防または改善に有用であることが示された。
【0159】
本発明の化合物の治療的投与量は、治療すべき状況の性質及び重さ、並びに化合物の種類及びその投与経路によって変化する。一般的に、抗ガン剤活性のための1日の投与量は、哺乳類の体重1kg当たり、0.001から25mg、好ましくは0.001から10mg、最も好ましくは0.001から1.0mgの範囲であり、これらは1回又は複数回投与である。通常の場合、約25mg/kgの投与量が必要とされる。
【0160】
ここに開示した化合物の有効投与量を、哺乳類、特にヒトに供給するために、任意の適した投与経路が用いられる。例えば、経口、直腸、局所、腸管外、眼、肺、鼻等の経路が用いられる。投与形態は、錠剤、トローチ、分散液、懸濁液、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エアロゾル等を含む。
【0161】
これらの組成物は、経口、直腸、局所(経皮装置、エアロゾル、クリーム、軟膏、ローション及び粉剤を含む)、腸管外(皮下、筋肉内、静脈内を含む)、眼(眼動脈)、肺(鼻または口腔吸入)又は鼻投与に適した組成物を含む。任意の与えられた場合における最も好適な経路は、治療すべき状況の性質及び重さ、並びに、活性成分の性質に大きく依存する。これらは、単位投与形態で便利に提供され、製薬の分野で良く知られた任意の方法によって調製される。
【0162】
経口投与形態の調製において、異例の製薬媒体を用いることもでき、それは、経口液体製剤(例えば、懸濁液、エリキシル、及び溶液)の場合、水、グリコール、オイル、アルコール、香料、防腐剤、着色剤等であり、経口固体製剤の場合、デンプン、糖、微結晶セルロース等のキャリア、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、バインダー、崩壊剤等であり、粉末、カプセル及び錠剤などの固体製剤は、経口液体製剤より好ましい。必要ならば、標準的な水性または非水性技術によって被覆してもよい。上記の投与形態に加えて、本発明の化合物は、徐放手段及び装置によって投与してもよい。
【0163】
経口投与に適した本発明の製薬組成物は、カプセル、カシェ剤又は錠剤といった別個の単位として調製してもよく、それら各々は、粉末または顆粒、あるいは水性又は非水性液体中の溶液または懸濁液、あるいは水中油型または油中水型エマルションの形態の所定量の活性成分を被覆している。これらの組成物は、薬学の分野で知られた任意の方法によって調製される。一般に、組成物は、活性成分と液体キャリア、微粉砕した固体キャリア、またはその両方とを均一かつ強力に混合することによって調製され、次いで、必要ならば、製品を所望の形状に成形する。例えば、錠剤は、任意に1つ又はそれ以上の副成分とともに、圧縮又は成型することによって調製される。圧縮錠剤は、適当な機械の中で、粉末又は顆粒といった自由に流動する形態の活性成分を、任意にバインダー、潤滑剤、不活性希釈剤または界面活性剤または分散剤と混合して圧縮することにより調製される。成型錠剤は、適当な機械の中で、不活性液体希釈剤で加湿された粉末状化合物の混合物を成型することにより調製される。
【0164】
本発明は、以下の詳細な実験から、さらに良く理解されるであろう。しかし、当業者は、議論される特定の方法及び結果が、後述される請求の範囲に記載された本発明を単に例示するのみであることを容易に理解するであろう。本発明に係るエポチロンA及びB、それらの類似物、及びそれらの中間体の製造方法は、この分野で周知の種々の代替的保護基を包含すると理解されるであろう。下記の実施例を含むこの開示において用いられる保護基は、単なる例示に過ぎない。
【実施例】
【0165】
実施例1
THPグリコール;13:CH2Cl2(900ml)中の(R)-(+)-グリシドール12(20g;270mm ol)及び新たに蒸留した3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(68.1g;810mmol)を、ピリジニウム p-トルエンスルホン酸塩(2.1g;8.36mmol)で、室温'(rt)において処理し、得られた溶液を16時間攪拌した。溶液の約50%を、次いで、真空下で除去し、残った溶液をエーテル(1L)で希釈した。次に、有機層を重炭酸ナトリウム飽和水溶液(500ml)で2回に分けて洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮した。残留物をフレッシュクロマトグラフィ(シリカ、25→50%エーテル:ヘキサン)で精製し、THPグリシドール13(31.2g;73%)を無色液体として得た。
【0166】
【数1】
【0167】
実施例2
アルコール13a:トリメチルシリルアセチレン(32.3g;329mmol)を、シリンジを介してTHF(290ml)に添加し、得られた溶液を-78℃に冷却し、n-ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M溶液の154ml;246.4mmol)で処理した。15分後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテレート(34.9g;246mmol)を添加し、得られた混合物を10分間攪拌した。次いで、THF(130ml)中のエポキシド13(26g;164.3mmol)を、カニューレを通して添加し、得られた溶液を、-78℃で5.5時間攪拌した。反応は、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(250ml)の添加によってクエンチし、溶液を室温に戻した。次いで、混合物をエーテル(600ml)で希釈し、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(250ml)、水(250ml)、及びブライン(250ml)で連続的に洗浄した。次いで、有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、真空下で濃縮した。残留物をフレッシュクロマトグラフィ(シリカ、20%エーテル:ヘキサン)で精製し、アルコール13a(34g;76%)を得た。
【0168】
実施例3
MOMエーテル13b:無水1,2-ジクロロエタン(600ml)中のアルコール13a(24g;88.9 mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチレオンアミン(108ml;662mmol)溶液を、クロロメチルメチルエーテル(17m l;196mmol)で処理し、得られた混合物を55℃に28時間加熱した。次いで、暗色混合物を室温に冷却し、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(300ml)で処理した。層が分離した後、有機層を重炭酸ナトリウム飽和水溶液(200ml)及びブライン(200ml)で連続的に洗浄した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、シリカゲルパッド(エーレツリンス)を通して瀘過した。残留物をフレッシュクロマトグラフィ(シリカ、20→30%エーテル:ヘキサン)で精製し、MOMエーテル13b(23.7g;85%)を得た。
【0169】
実施例4
アルコール14:メタノール(90ml)中のTHPエーテル13bを、ピリジニウムp-トルエンスルホン酸塩(4.0g;15.9mmol)で処理し、得られた混合物を室温で16時間攪拌した。次いで、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(100ml)の添加で反応をクエンチし、過剰のメタノールを真空下で除去した。残留物をエーテル(300ml)で希釈し、有機層を重炭酸ナトリウム飽和水溶掖(200ml)及びブライン(200ml)で連続的に洗浄した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮した。残留物をフレッシュクロマトグラフィ(シリカ、40→50%エーテル:ヘキサン)で精製し、アルコール14(13.1g;95%)を無色オイルとして得た。
【0170】
実施例5
アルコール14a:CH2Cl2(165ml)中の塩化オキサリル(2MのCH2Cl2溶液の24.04ml; 48.08mmol)の冷却溶液(-78℃)に、無水DMSO(4.6ml;64.1mmol)を滴下した。
【0171】
30分後、CH2Cl2(65ml+10mlリンス)中のアルコール14(6.93g;32.05mmol)溶液を添加し、得られた溶液を-78℃で40分間攪拌した。次いで、新たに蒸留したトリエチルアミン(13.4ml;96.15mmol)を添加し、冷却バスを取り除き、混合物を0℃まで暖めた。次いで、反応混合物をエーテル(500ml)で希釈し、水(250ml)で2回及びブライン(250ml)で1回連続的に洗浄した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮した。
【0172】
上記の反応で調製した原料アルデヒド(6.9g)を、エーテル(160ml)に溶解し、0℃に暖めた。次いで、メチルマグネシウムブロマイド(3.0Mブチルエーテル溶液の32.1ml;96.15mmol)を添加し、溶液を徐々に室温まで暖めた。10時間後、反応混合物を0℃に冷却し、塩化アンモニウム飽和水溶液の添加により反応をクエンチした。混合物をエーテル(200ml)で希釈し、水(150ml)及びブライン(150ml)で連続的に洗浄した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮した。残留物をフレッシュクロマトグラフィ(シリカ、40→50%エーテル:ヘキサン)で精製し、アルコール14a(6.3g;14から85%)を得た。
【0173】
実施例6
ケトン15:室温のCH2Cl2(20ml)中の、アルコール14(1.0g;4.35mmol)、4Åmol.シーブス、及びN-メチルモルホリン-N-オキシド(1.0g;8.7mmol)を、触媒量のテトラ-n-プロピルアンモニウム過ルテニウム酸塩で処理し、得られた黒色懸濁液を3時間攪拌した。次いで、反応混合物をシリカゲルパッド(エーテルリンス)を通して濾過し、濾過物を真空下で濃縮した。残留物をフレッシュクロマトグラフィ(シリカ、10%エーテル:ヘキサン)で精製し、ケトン15(924mg;93%)を明黄色オイルとして得た。
【0174】
実施例7
アルケン17:THF(15.2ml)中の酸化ホスフィン16(1.53g;4.88mmol)の冷却溶液(-78℃)を、n-ブチルリチウム(2.45Mヘキサン溶液の1.79ml)で処理した。15分後、オレンジ色溶液を、THF(4.6ml)中のケトン15(557mg;2.44mmol)溶液で処理した。
【0175】
10分後、冷却バスを取り除き、溶液を室温まで暖めた。溶渣が暖まると、析出物の生成が観察された。塩化アンモンニウム飽和水溶液(20ml)の添加により反応をクエンチした。混合物をエーテル(150ml)に投入し、水(50ml)及びブライン(50ml)で連続的に洗浄した。有機層を乾燥させ(Na2SO4)、瀘過し、濃縮した。残留物をフレッシュクロマトグラフィ(シリカ、10%エーテル:ヘキサン)で精製し、アルケン17(767mg;97%)を無色オイルとして得た。
【0176】
【数2】
【0177】
実施例8
ヨウ化アルキル形成:アセトン(100ml)中のアルキン17(3.00g;9.29mmol)の溶掖に、0℃でNIS(2.51g;11.2mmol)及びAgNO3(0.160g;0.929mmol)を添加した。次いで、混合物を徐々に室温まで暖めた。1.5時間後、反応物をEt2O(250mL)に投入し、飽和重亜硫酸(40mL)で1回、飽和NaHCO3(40mL)で1回、ブライン(40mL)で1回洗浄し、無水MgSO4上で乾燥させた。ヘキサン/酢酸エチル(10:1-7:1)での勾配溶離を用いたシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィによる精製で、2.22g(64%)のヨウ化物17aを琥珀色オイルとして得た。
【0178】
実施例9
ヨウ化アルキニルの還元:Et20(60mL)中のシクロヘキセン(1.47mL、17.9mmol)溶液に、BH3・DMS(0.846mL,8.92mmol)を0℃で添加した。次いで、反応物を室温まで暖めた。1時間後、ヨウ化物x(2.22g;5.95mmol)をEt2Oに添加した。3時間後、AcOH(1.0mL)を添加した。さらに30分後、溶液を飽和NaHCO3に投入し、Et2O(3×100mL)で抽出した。混合した有機物を、次いで、ブライン(50mL)で洗浄し、無水HgSO4上で乾燥させた。ヘキサン/酢酸エチル(6:1)で溶離させるシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィによる精製で、1.45g(65%)のヨウ化ビニル18を黄色オイルとして得た。
【0179】
実施例10
MOM除去:CH2Cl2(40mL)中のヨウ化物18(1.45g;3.86mmol)溶掖に、チオフェノール(1.98mL;19.3mmol)及びBF3・Et2O(1.90mL;15.43mmol)を室温で添加した。22時間後、反応物をEtOAc(150mL)に投入し、1N NaOH(2×50mL)で洗浄し、無水MgSO4上で乾燥させた。ヘキサン/酢酸エチル(4:1-2:1-1:1)での勾配溶離を用いた
【0180】
シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィによる精製で、1.075g(86%)のアルコール 18aを薄黄色オイルとして得た。
【0181】
実施例11
アセテート形成:CH2Cl2(30mL)中のアルコール18a(1.04g;3.15mmol)溶液に、ピリジン(2.52mL,25.4mmol)、無水酢酸(1.19mL,12.61mmol)及びDMAP(0.005g)を添加した。1時間後、揮発物を真空下で除去した。得られた残留物を、ヘキサン/酢酸エチル(7:1)で溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、1.16g(99%)のアセテート19を薄黄色オイルとして得た。
【0182】
【数3】
【0183】
実施例12
CH2Cl2(23mL)中のアルコール4(2.34g,3.62mmol)及び2,6-ルチジン(1.26mL,10.86m mol)溶液を、0℃においてTBSOTf(1.0mL,4.34mmol)で処理した。0℃で1.5時間攪拌した後、反応混合物をMeOH(200μL)でクエンチし、混合物をさらに5分間攪拌した。反応混合物をEt2O(100mL)で希釈し、1N HCl(25mL)、水(25mL)及びブライン(25mL)で続けて洗浄した。溶液をMgSO4上で乾燥させ、濾過して濃縮した。ヘキサン中5%Et2Oで溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、化合物7(2.70g,98%)を無色フォームとして得た。
【0184】
実施例13
CH2Cl2/H2O(20:1,80mL)中の化合物7(2.93g,3.85mmol)の溶液を、DDQ(5.23g,23.07mmol)で処理し、得られた懸濁液を室温で24時間攪拌した。反応混合物をEt2O(200ml)で希釈し、水性NaHCO3(2×40mL)で洗浄した。水層をEt2O(3×40mL)で抽出し、まとめた有機分画をブライン(50mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過して濃縮した。原料オイルを、ヘキサン中30%エーテルで溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、アルコール7A(2.30g,89%)を無色オイルとして得た。
【0185】
【数4】
【0186】
実施例14
CH2Cl2(40mL)中の塩化オキサリル(414μL,4.74mmol)の溶液に、DMSO(448μL,6.32mmol)を-78℃で滴下し、得られた溶掖を-78℃で30分間攪拌した。CH2Cl2(20mL)中のアルコール7a(2.12g,3.16mmol)を添加し、得られた白色懸濁液を-78℃で45分間攪拌した。反応混合物をEt3N(2.2mL,15.8mmol)でクエンチし、溶液を0℃まで暖め、この温度で30分間攪拌した。反応混合物をEt20(100mL)で希釈し、水性NH4Cl(20mL)、水(20mL)及びブライン(20mL)で続けて洗浄した。原料アルデヒドを、ヘキサン中5%Et2Oで溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、アルデヒド8(1.90g,90%)を無色オイルとして得た。
【0187】
実施例15
(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムクロライド(2.97g,8.55mmol)のTHF(25mL)溶液を、0℃においてKOtBu(THF中1Mの8.21mL,8.1mmol)で処理した。混合物を0℃で30分間攪拌した。THF(10mL)中のアルデヒド8(3.1g,4.O7mmol)を添加し、得られた溶液を室温まで暖め、この温度で2時間攪拌した。反応混合物は、水性NH4Cl(40mL)でクエンチし、得られた溶液をEt2O(3×30mL)で抽出した。まとめたEt2O分画を、ブライン(20ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濃縮した。残留物を、ヘキサン中5%Et2Oで溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、化合物9(2.83g,86%)を無色フォームとして得た。
【0188】
実施例16
ジオキサン/H2O(9:1,28mL)中の化合物9(2.83g,3.50mmol)の溶液に、pTSA・H2O(1.0g,5.30mmol)を添加し、得られた混合物を50℃に2時間加熱した。室温まで冷却した後、Et20(50mL)で希釈し、水性NaHCO3(15mL)、ブライン(20mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、濃縮して、アルデヒド9a(2.75g,99%)を無色フォームとして得た。
【0189】
実施例17
メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(1.98g,5.54mmol)のTHF(50mL)溶液を、0℃においてリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(THF中1Mの5.04mL,5.04mmol)で処理し、得られた溶液を0℃で30分間攪拌した。THF(5.0mL)中のアルデヒド9a(2.0g,2.52mmol)を添加し、得られた溶液を室温まで暖め、この温度で1時間攪拌した。反応混合物は、水性NH4Cl(15mL)でクエンチし、Et2O(3×20mL)で抽出した。まとめたEt2O分画を、ブライン(15mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濃縮した。残留物を、ヘキサン中5%Et2Oで溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、化合物10(1.42g,76%)を無色フォームとして得た。
【0190】
実施例18
MeOH/THF(2:1,13mL)中の化合物10(1.0g,1.34mmol)の溶液を、室温において[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨードベンゼン](865mg,2.0lmmol)で処理した。15分後、反応混合物を水性NaHCO3(25mL)でクエンチした。混合物を、Et2O(3×25mL)で注出し、まとめたEt2O分画をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、濃縮した。残留物を、ヘキサン中5%Et2Oで溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、化合物11(865mg,92%)を無色フォームとして得た。
【0191】
【数5】
【0192】
実施例19
スズキ・カップリング:THF(8.0mL)中のオレフィン11(0.680,1.07mmol)の溶液に、9-BBN(0.5M THF溶液,2.99mL,1.50mmol)を添加した。別のフラスコで、ヨウ化物19(0.478g,1.284mmol)をDMF(10.0mL)中に溶解した。次いで、CsCO3(0.696g,2.14mmol)を強く攪拌しながら添加し、さらに、Ph3As(0.034g,0.111mmol)、PdCl2(dppf)2(0.091g,0.111mmol)及びH20(0.693mL,38.5mmol)を添加した。4時間後、ボラン溶液を、DMF中のヨウ化物混合物に添加した。反応物は即座に暗褐色となり、2時間後には徐々に薄黄色となった。次いで、反応物をH2O(100mL)中に投入し、Et20(3×50mL)で抽出した。まとめた有機物を、水(2×50mL)及びブラインで1回洗浄し、無水HgSO4上で乾燥させた。ヘキサン/酢酸エチル(7:1)で溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、0.630g(75%)のカップリング化合物20を薄黄色オイルとして得た。
【0193】
実施例20
ジメチルアセタール21の加水分解:アセテート20(0.610g,0.770mmol)を、ジオキサン/H20(9:1,15m)に溶解し、p-TSA・H2O(0.442g,2.32mmol)を添加した。次いで、混合物を55℃に加熱した。3時間後、混合物を室温に冷却し、Et2O中に投入した。この溶液を、飽和NaHCO3(30mL)で1回、ブライン(30mL)で1回洗浄し、無水MgSO4上で乾燥させた。ヘキサン/酢酸エチル(7:1)で溶離するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにより精製して、0.486g(85%)のアルデヒド21を薄黄色オイルとして得た。
【0194】
【数6】
【0195】
実施例21
アルドール:アセテート-アルデヒド21(84mg,0.099mmol)のTHF溶液に、-78℃においてKHMDS(0.5Mのトルエン溶液,1.0ml,0.5mmol)を滴下した。得られた溶液を、-78℃で30分間攪拌した。次いで、反応混合物をシリカゲルの短パッドにカニューレ挿入し、エーテルで洗浄した。残留物を、フラッシュクロマトグラフィ(シリカ,ヘキサン中12%EtOAc)により精製して、ラクトン22(37mgの3-S及び6mgの3-R,51%)を白色フォームとして得た。
【0196】
実施例22
モノ脱保護:ラクトン22(32mg,0.0376mmol)を、1mlのピリジン緩衝HF・ピリジン-THF溶液で、室温において2時間処理した。反応混合物を、飽和NHCO3水に投入し、エーテルで抽出した。有機層を、飽和CuSO4(10ml×3)及び飽和NaHCO3(10ml)で続けて洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮した。残留物を、フラッシュクロマトグラフィ(シリカ,ヘキサン中25%EtOAc)により精製して、ジオール22a(22mg,99%)を白色フォームとして得た。
【0197】
実施例23
無水CH2Cl2中のジオール22a(29mg,0.0489mmol)及び2,6-ルチジン(0.017ml,0.147 mmol)の冷却(-30℃)溶液に、TBSOTf(0.015ml,0.0646mmol)を添加した。次いで、得られた溶液を-30℃で30分間攪拌した。反応は、0.5M HCl(10ml)でクエンチし、エーテル(15ml)で抽出した。エーテル層を、飽和NaHCO3で洗浄し、乾燥(Na2SO4)させ、真空下で濃縮した。残留物を、フラッシュクロマトグラフィ(シリカ,ヘキサン中8%EtOAc)により精製して、TBSエーテル22B(32mg,93%)を白色フォームとして得た。
【0198】
実施例24
ケトン形成:CH2Cl2(2mL)中のアルコール22B(30mg,0.0424mmol)溶液に、25℃において、デス-マーチンペリオジナン(36mg,0.0848mmol)を一度に添加した。次いで、得られた溶液を25℃で1.5時間攪拌した。反応は、1:1の飽和重炭酸ナトリウム:チオ硫酸ナトリウム水溶液(10ml)を添加してクエンチし、5分間攪拌した。次いで、混合物をエーテル(3×15ml)で抽出した。有機層を乾燥(Na2SO4)し、濾過し、真空下で濃縮した。残留物を、フラッシュクロマトグラフィ(シリカ,ヘキサン中8%EtOAc)により精製して、ケトン22C(25mg,84%)を白色フォームとして得た。
【0199】
【数7】
【0200】
実施例25
デスオキシ化合物:THF(1ml)中のTBSエーテル22C(27mg,0.038mmol)溶液に、25℃において、プラスチック容器で、HF・ピリジン(0.5ml)を添加した。得られた溶液を25℃で2時間攪拌した。反応混合物を、クロロホルム(2ml)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム(20ml)に極めてゆっくり添加した。混合物をCHCl3(20ml×3)で抽出した。有機層を乾燥(Na2SO4)し、濾過し、真空下で濃縮した。残留物を、フラッシュクロマトグラフィ(シリカ,ヘキサン中30%EtOAc)により精製して、ジオール23(18mg,99%)を白色フォームとして得た。
【0201】
【数8】
【0202】
実施例26
エポチロン:乾燥CH2Cl2(1ml)中のデスオキシエポチロン(9mg,0.0189mmol)の冷却(-50℃)溶液に、新たに調製したジメチルジオキシラン(0.95ml,アセトン中の0.1M)を添加した。得られた溶液を、-30℃まで2時間暖めた。次いで、窒素気流を溶液に吹き込み、過剰のDMDOを除去した。残留物を、フラッシュクロマトグラフィ(シリカ,ヘキサン中40%EtOAc)により精製して、エポチロンA(4.6mg,49%)を無色固体として、そして0.1mgのcis-エポチロンジアステレオマー得た。この物質は、全ての点において天然エポチロンAと一致した。
【0203】
実施例27
閉環オレフィン置換のための方法:乾燥ベンゼン(1.5mL)中のジエン24(5mg,0.0068mmol)の攪拌された溶液に、グラッブス(grubbs)の触媒(2.8mg,0.0034mmol)を添加した。12時間後、触媒(2.8mg)をさらに添加した。さらに5時間後、反応物を濃縮した。ヘキサン/酢酸エチル(1:1)で溶離するフラッシュクロマトグラフィにより精製して、ラクトン23(3.5mg,94%,2:1E/Z)を得た。
【0204】
実施例28
化合物19の調製アルコール2A:CH2Cl2(16mL)中の、(S)-(-)-1,11-ビ-2-ナフトール(259mg,0.91mmol)、Ti(O-i-Pr)4(261μL;0.90mmol)、及び4Åシーブス(3.23g)の混合物を、1時間環流加熱した。この混合物を室温に冷却し、アルデヒド1を添加した。10分後、懸濁液を-78℃に冷却し、アリルトリブチルスズ(3.6mL;11.60mmol)を添加した。反応混合物を-78℃で10分間攪拌し、次いで、-20℃のフリーザーに70時間置いた。飽和NaHCO3(2mL)を添加し、混合物を1時間攪拌し、Na2SO4を投入し、次いで、MgSO4及びセライトのパッドを通して濾過した。粗原料をフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,1:1)により精製して、アルコール2Aを黄色オイルとして得た(1.11g,60%)。
【0205】
実施例29
アセテート3A:CH2Cl2(12mL)中の、アルコール2A(264mg,1.26mmol)溶液に、DMAP(15mg;0.098mmol)、Et3N(0.45mL,3.22mmol)及びAc2O(0.18mL;1.90mmol)を添加した。2時間後、反応混合物を20mLのH2Oでクエンチし、EtOAc(4×20mL)で抽出した。まとめた有機層をMgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(EtOAc/ヘキサン,1:3)により精製して、アセテート3Aを黄色オイルとして得た(302mg,96%)。
【0206】
実施例30
ヨウ化ビニル:アセトン中のアセテート(99mg,0.39mmol)の溶液に、0℃において、H2O(4滴)、OsO4(ブチルアルコール中2.5重量%;175μL;0.018mmol)、及びN-メチル-モルホリン-N-オキシド(69mg;0.59mmol)を添加した。混合物を、0℃で2時間45分攪拌し、次いで、Na2SO4でクエンチした。溶液を10mLのH2Oに投入し、EtOAc(5×10mL)で抽出した。まとめた有機層をMgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。THF/H2O(4mL,3:1)中の原料生成物溶液に、NaLO4(260mg;1.22mmol)を添加した。1.25時間後、反応混合物を10mLのH2Oでクエンチして濃縮した。残留物をEtOAc(5×10mL)で抽出した。有機層をMgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(EtOAc/ヘキサン,1:1)により、黄色オイル(80mg)を得たが、これは未同定の複生成物を含んでいた。この混合物を、さらに精製すること無しに用いた。
【0207】
0.25mLのTHF中の(Ph3P+CH2I)I-(100mg;0.19mmol)溶液に、室温において、NAHMDS(THF中1H)の0.15mL(0.15mmol)を添加した。得られた溶液に、-78℃において、THF(0.25mL)中のHMPA(22μL;0.13mmol)と前工程の生成物(16mg)を加えた。次いで、反応混合物を、30分間攪拌した。ヘキサン(10mL)を添加した後、溶液をEtOAc(4×10mL)で抽出した。まとめたEtOAc層を乾燥(MgSO4)し、濾過紙、そして濃縮した。調製TLC(EtOAc/ヘキサン,2:3)により、ヨウ化ビニルを黄色オイルとして得た(14mg;3段階で50%)。
【0208】
実施例31
ヨードオレフィンアセテート8C:ヨウ化エチルトリフェニルホスホニウム(1.125g,2.69mmol)のTHF(10mL)中の懸濁液に、nBuLi(ヘキサン中2.5M溶液,1.05mL,2.62mmol)を室温で添加した。固体物質が消失した後、溶液を、-78℃においてTHF(20mL)中のヨウ化物(0.613g,2.41mmol)の混合物に添加した。得られた懸濁液を、-78℃で5分間強く攪拌し、次いで-20℃まで暖め、ヘキサメチルジシラザンナトリウム(1MのTHF溶液,2.4mL,2.4mmol)で処理した。得られた赤色溶液を、5分間攪拌し、アルデヒド9C(0.339g,1.34mmol)を徐々に添加した。混合物を-20℃で40分間攪拌し、ペンタン(50mL)で希釈し、セライトのパッドを通して濾過し、濃縮した。残留物のカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,85:15)による精製で、0.202g(酢酸ビニル10Cから全体で25%)のヨウ化ビニル8Cを黄色オイルとして得た。
【0209】
【数9】
【0210】
実施例32
アセタール13C:THF(0.5mL)中のオレフィン"7C"(0.082g,0.13mmol)溶液に、9-BBN(0.5MのTHF溶液,0.4mL,0.2mmol)を添加した。室温で3.5時間攪拌した後、さらに9-BBN(0.5MのTHF溶液,0.26mL,0.13mmol)を添加した。別のフラスコにおいて、ヨウ化物8C(0.063g,0.16mmol)をDMF(0.5mL)に溶解した。次いで、Cs2CO3(0.097g,0.30mmol)を強く攪拌しながら添加し、PdCl2(dppf)2(0.018,0.022mmol)、Ph3As(0.0059g,0.019mmol)、及びH2O(0.035mL,1.941mmol)を続けて添加した。6時間後、ボラン溶液をDMF中のヨウ化物混合物に添加した。反応物は即座に暗褐色となり、3時間後に徐々に薄黄色となった。次いで、反応物を、H2O(10mL)に投入し、Et2O(3×15mL)で抽出した。まとめた有機層を、H2O(3×15mL)、ブライン(1×20mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,9:1)により、0.089g(77%)のカップリング生成物13Cを黄色オイルとして得た。
【0211】
実施例33
アルデヒド14C:アセタール13C(0.069g,0.077mmol)をジオキサン/H2O(9:1,1mL)に溶解し、pTSA・H2O(0.045g,0.237mmol)を添加した。次いで、混合物を55℃に加熱した。3時間後、混合物を室温に冷却し、Et2Oに投入し、Et2O(4×15mL)で抽出した。まとめたエーテル溶液を、飽和NaHCO3(1×30mL)、ブライン(1×30mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,3:1)により、0.046g(71%)のアルデヒド14Cを薄黄色オイルとして得た。
【0212】
実施例34
マクロサイクル15C-(SR):THF(5mL)中のアルデヒド14C(0.021g,0.024mmol)溶液に、-78℃において、KHMDS(0.5Mのトルエン溶液,0.145mL,0.073mmol)を添加した。溶液を-78℃で1時間攪拌し、飽和NH4Clでクエンチし、エーテル(3×15mL)で抽出した。まとめた有機層を、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,7:1)により、0.008gの所望のα-アルコール15C-(S)及び0.006gのβ-アルコール15C-(R)を薄黄色オイルとして得た。
【0213】
実施例35
マクロサイクル15C-(S):β-アルコール15-(R)(0.006g,0.0070mmol)の0.5mLのCH2Cl2溶液に、室温でデス-マーチンペリオジネート(0.028g,0.066mmol)を添加した。0.5時間後、デス-マーチンペリオジネート(0.025g,0.059mmol)をさらに添加した。得られた溶液を、室温でさらに1時間攪拌し、次いで、エーテル(2mL)及びNa2S2O3/飽和NaHCO3(3mL,1:1)で処理し、H2O(20mL)に投入し、エーテル(4×10mL)で抽出した。まとめたエーテル溶液を、H2O(1×30mL)、ブライン(1×30mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。MeOH/THF(2mL,1:1)中の原料ケトン15C’溶液に、-78℃でNaBH4(0.015g,0.395mmol)を添加した。得られた溶液を室温で1時間攪拌し、飽和NH4Clでクエンチし、エーテル(3×15mL)で抽出した。有機層を、MgSO4で乾燥させ、瀘過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,9:1)により、0.0040g(67%)のα-アルコール15C-(S)及び0.006gを黄色オイルとして、そして0.0006gのβ-アルコール15C-(R)を得た。
【0214】
実施例36
ジオール15C”’:シリルエーテル15C-(S)(0.010g,0.012mmol)を、HF・ピリジン/ピリジン/THF(1mL)に溶解した。この溶液を室温で2時間攪拌し、次いで、Et2O(1mL)で希釈し、Et2O/飽和NaHCO3(20mL,1:1)に投入し、Et2O(4×10mL)で抽出した。Et2O溶液を、CuSO4(3×30mL)、飽和NaHCO3(1×30mL)、ブライン(1×30mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,9:1)により、0.0066g(93%)のジオール15C”を薄黄色オイルとして得た。
【0215】
実施例37
アルコール15C”’:ジオール15C”(0.0066g,0.011mmol)の0.5mLのCH2Cl2溶液に、2,6-ルチジン(7μL,0.060mmol)及びTBSOTf(5μL,0.022mmol)を添加した。得られた溶液を-30℃で0.5時間攪拌し、H2O(5mL)でクエンチして、Et2O(4×10mL)で抽出した。エーテル溶液を、0.5MのHCl(1×10mL)、飽和NaHCO3(1×10mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,93:7)により、0.0070g(89%)のアルコール15C”’を薄黄色オイルとして得た。
【0216】
実施例38
ケトン16C:アルコール15C”’(0.006g,0.0083mmol)の0.5mLのCH2Cl2溶液に、室温でデス-マーチンペリオジナン(0.030g,0.071mmol)を添加した。1.25時間後、デス-マーチンペリオジナン(0.025g,0.059mmol)をさらに添加した。得られた溶液を室温でさらに0.75時間攪拌し、エーテル(1mL)及びNa2S2O3/飽和NaHCO3(2mL,1:1)で処理し、H2O(20mL)に投入し、エーテル(4×10ML)で抽出した。エーテル溶液を、飽和NaHCO3(1×20mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,9:1)により、0.0040g(67%)のケトン16Cを薄黄色オイルとして得た。
【0217】
実施例39
デスオキシエポチロンB(2C):THF(0.35mL)中のケトン16C(0.004g,0.0056mmol)の溶掖に、HF・ピリジン(0.25mL)を20分間滴下した。この溶液を室温で1.5時間攪拌し、CHCl3(2mL)で希釈し、飽和NaHCO3/CHCl3(20mL,1:1)に徐々に投入し、CHCl3(4×10mL)で抽出した。まとめたCHCl3層を、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,3:1)により、0.0022g(80%)のデスオキシエポチロンB2Cを薄黄色オイルとして得た。
【0218】
実施例40
エポチロンB(2):CH2Cl2(0.25mL)中のデスオキシエポチロンB(0.0022g,0.0041mmol)の溶液に、-50℃において、ジメチルジオキシラン(0.1mL,0.0095mmol)を滴下した。得られた溶液を-50℃で1時間攪拌した。ジメチルオキシラン及び溶媒をN2気流で除去した。残留物をフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル,1:1)で精製することにより、0.0015g(70%)のエポチロンB(2)を薄黄色オイルとして得たが、これは、1H NMR、マススペクトル、及び[α]Dにおいて基準試料と一致した。
【0219】
実施例41
8-デスオキシエポチロンAクロチル化(crotylation)生成物:カリウムtert-ブトキシド(1.0M THF溶液,50.4mL,50.4mmol)、THF(14mL)、及びcis-2-ブテン(9.0mL,101mmol)の攪拌された混合物に、-78℃において、n-BuLi(ヘキサン中1.6M,31.5mL,50.4mmol)を添加した。n-BuLiを完全に添加した後、混合物を-45℃で10分間攪拌し、-78℃に冷却した。次いで、(+)-B-メトキシジイソピノカンフェニルボラン(methoxydiisopinocamphenylborane)(19.21g,60.74mmol)をEt2O(10mL)に滴下した。30分後、BF3・Et2O(7.47mL,60.74mmol)、次いで、THF(15mL)中のアルデヒド4D(9.84g,60.74mmol)を添加し、攪拌不能な粘性溶液を生成した。この混合物を10分ごとに強く振り動かしで均質にした。-78℃で3時間後、反応物を3N NaOH(36.6g,110mmol)及び30%H2O2(15mL)で処理し、溶液を1時間環流させた。反応物をEt2O(300mL)に投入し、H2O(100 mL)、ブライン(30mL)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させた。原材料をバルブ-バルブ蒸留装置に配し、所望の生成物からリガンドを除去した。2mmHg、80℃で加熱して低沸点リガンドを取り除いた。アルコール4Dのさらなる精製は、CH2Cl2中のEt2O(2%→4%)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィによって行い、純粋なアルコール4Dを透明オイルとして得た。エリスロ選択性は、1H NMRスペクトルで測定したところ、>50:1であった。生成物は、モシャエステル(Mosherester)の形成により、87%eeと決定された。
【0220】
【数10】
【0221】
実施例42
TBSエーテル5D:アルコール4D(5.00g,21.4mmol)をCH2Cl2(150mL)に溶解し、2,6-ルチジン(9.97mL,85.6mmol)を添加した。混合物を0℃に冷却し、TBSOTf(9.83mL,42.8mmol)を徐々に添加した。反応物を室温に暖めた。1時間後、反応物をEt2O(300mL)に投入し、1N HCl(50mL)で1回、飽和NaHCO3(50mL)で1回、ブライン(50mL)で1回洗浄し、無水MgSO4で乾燥させた。ヘキサン/ジエチルエーテル(97:3)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィによって精製し、純粋なオレフィン5Dを透明オイルとして得た。
【0222】
【数11】
【0223】
実施例43
アルデヒド6D:オレフィン5D(4.00g,11.49mmol)を、1:1 MeOH/CH2Cl2(100mL)に溶解した。次いで、ピリジン(4.0mL)を添加し、混合物を-78℃に冷却した。次に、オゾンを反応物に10分間通気した後、色が明るい青色に変化した。次いで、酸素を反応物に10分間通気した。ジメチルスルフィド(4.0mL)を添加し、反応物を室温まで徐々に暖めた。反応物を終夜攪拌し、次いで、揮発成分を真空下で除去した。ヘキサン/酢酸エチル(9:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィによって精製し、3.31g(82%)のアルデヒド6Dを透明オイルとして得た。
【0224】
【数12】
【0225】
実施例44
ジアニオン付加生成物7D:tert-ブチリルアセテート(0.635g,3.51mmol)を、THF(50mL)中のNaH(鉱油中60%,0.188g,4.69mmol)に室温で加えた。10分後、混合物を0℃に冷却した。さらに10分後、n-BuLi(ヘキサン中1.6H,2.20mL,3.52mmol)を徐々に添加した。30分後、アルデヒド6D(1.03g,2.93mmol)を巧妙に加えた。10分後、反応をH2O(10mL)でクエンチし、Et2O(2×75mL)で抽出した。まとめた有機物をブライン(30mL)で1回洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。原料反応混合物は、15:1の比率でC5におけるジアステレオマーを含んでいた。ヘキサン/酢酸エチル(9:1→7:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィによって精製し、0.723g(47%)の所望のアルコール7Dを透明オイルとして得た。
【0226】
【数13】
【0227】
実施例45
直接還元:アセトニトリル(4.0mL)中のテトラメチルアンモニウムトリアセトキシボロハイドライド(1.54g,5.88mmol)に、無水AcOH(4.0mL)を加えた。混合物を室温で30分間攪拌した後-10℃に冷却した。エステル7D(0.200g,0.39mmol)のアセトニトリル(1.0mL溶液)を反応物に加え、-10℃で20時間攪拌した。反応を、1Nの酒石酸ナトリウム-カリウム(10mL)でクエンチし、室温で10分間攪拌した。次いで、溶液を飽和NaHCO3(25mL)に投入し、固体Na2CO3を添加して中和した。次いで、混合物をEtOAc(3×30mL)で抽出し、有機物をブライン(20mL)で1回洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。ヘキサン/酢酸エチル(4:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィによって精製し、0.100g(50%)のジオールを10:1の比率のジアステレオマーアルコールとして得た。
【0228】
実施例46
ジオールのモノプロテクション:ジオール(1.76g,3.31mmol)をCH2Cl2(100mL)に溶解し0℃に冷却した。2,6-ルチジン(12.2mL,9.92mmol)、続いてTBSOTf(1.14mL ,4.96mmol)を添加し、反応物を室温に徐々に暖めた。1時間後、反応物をEt2O(300mL)に投入し、1N HCl(50mL)で1回、飽和NaHCO3(50mL)で1回、ブライン(30mL)で1回洗浄し、無水HgSO4で乾燥した。ヘキサン/酢酸エチル(20:1→15:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィによって精製し、2.03g(95%)のアルコール8Dを透明オイルとして得たが、これをジアステレオマーの混合物として使用した。
【0229】
実施例47
C5ケトン形成:アルコール8D(2.03g,3.14mmol)をCH2Cl2(50mL)に溶解し、デス-マーチンペリオジナン(2.66g,6.28mmol)を添加した。2時間後、飽和NaHCO3/飽和Na2S2O3の1:1混合物を添加した。10分後、混合物をEt2O(300mL)中に投入し、有機層をブライン(30mL)で洗浄して無水MgSO4で乾燥した。ヘキサン/酢酸エチル(15:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィによって精製し、1.85g(91%)のケトン(ベンジルエーテル)を透明オイルとして得たが、これをジアステレオマーの混合物として使用した。
【0230】
実施例48
脱ベンジル化:ケトン(ベンジルエーテル)(1.85g,2.87mmol)をEtOH(50mL)に溶解し、Pd(OH)2(0.5g)を添加した。次いで、混合物をH2雰囲気下で攪拌した。3時間後、反応物をN2でパージし、次いでCHCl3(100mL)で洗浄するセライトのパッドを通して濾過した。ヘキサン中酢酸エチル(12%→15%)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィによって精製し、1.43g(90%)のジアステレオマーアルコールを透明オイルとして得た。C3ジアステレオマーは、ヘキサン中酢酸エチル(15%)で溶離するTLC-グレードSiO2でのフラッシュクロマトグラフィで分離した。
【0231】
【数14】
【0232】
実施例49
アルデヒド形成:DMSO(0.177mL,2.50mmol)を、CH2Cl2(15mL)のオキサリルクロライド(0.11mL,1.25mmol)の混合物に-78℃で添加した。10分後、アルコール(0.531g,0.96mmol)をCH2Cl2(14L)に添加した。20分後、TEA(0.697mL,5.00mmol)を反応物に加え、次いで室温まで暖めた。反応物をH2O(50mL)に投入し、Et2O(3×50mL)で抽出した。有機物をH2O(30mL)で1回、ブライン(30mL)で1回洗浄して無水MgSO4で乾燥した。アルデヒドは、原料形態で使用した。
【0233】
509Dを与えるためのwittigオレフィン化:NaHMDS(THF中1.0M溶液,1.54mL,1.54mmol)を、THF(20mL)中のメチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(0.690g,1.92mmol)の懸濁液に0℃で添加した。1時間後、原料アルデヒド(0.96mmol)をTHF(5mL)に添加した。0℃で15分後、H2O(0.1mL)を添加し、反応物をヘキサン(50mL)に投入した。これを、ヘキサン/Et20(9:1,150mL)で溶離するシリカゲルプラグを通して濾過した。原料オレフィン9Dを、ヘキサン中酢酸エチル(5%)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィでさらに精製し、0.437g(2段階について83%)のオレフィン9Dを透明オイルとして得た。
【0234】
【数15】
【0235】
実施例51
TBSエステル10D:オレフィン9D(0.420g,0.76mmol)を、CH2Cl2(15mL)に溶解し、2,6-ルチジン(1.33mL,11.4mmol)及びTBSOTf(1.32mL,5.73mmol)で続けて処理した。7時間後、反応物をEt2O(100mL)に投入し、0.2N HCL(25mL)、ブライン(20mL)で続けて洗浄し、無水MgSO4で乾燥させた。残留物を、ヘキサン/酢酸エチル(20:1)で迅速に溶離するシリカゲルの短いパッドでのフラッシュクロマトグラフィで精製し、TBSエステル10Dを透明オイルとして得た。精製は迅速に行い、シリルエステルの加水分解を防止する必要があった。
【0236】
【数16】
【0237】
実施例52
スズキ・カップリング:アセテート酸13Dを、ヘキサン/酢酸エチル(7:1→4:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィで精製した。これを、ヘキサン/酸エチル(2:1)で溶離する調製TLCでさらに精製して、アセテート酸13Dからヨウ化ビニル12Dを除去した。酸の単離した収量は、0.297g(ボラン残基での90%精製に基づくと62%)であった。
【0238】
実施例53
アセテート酸13Dの加水分解:アセテート13D(0.220g,0.297mmol)を、MeOH/H2O(2:1,15mL)に溶解し、K2CO2(0.300g)を添加した。3時間後、反応物を飽和NH4Cl()で希釈し、CHCl3(5×20mL)で抽出した。ヒドロキシ酸14Dを、ヘキサン/酢酸エチル(4:1→2:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィで精製し、0.146g(70%)の精製したヒドロキシ酸14Dを得た。
【0239】
【数17】
【0240】
実施例54
マクロラクトニゼーション(macrolactonization):DCC(0.150g,0.725mmol)、4-DMAP(0.078g,0.64mmol)及び4-DMAP・HCl(0.110g,0.696mmol)を、CHCl3O(80mL)に80℃で溶解した。この環流溶液に、シリンジポンプで、CHCl3中のヒドロキシ酸14D(0.020g,0.029mmol)及びDMAP(0.010g)を20時間で添加した。シリンジ針を、コンデンサの基部に配置して適切な添加を維持した。20時間後、反応物を50℃に冷却し、AcOH(0.046mL,0.812mmol)を添加した。2時間後、反応物を室温まで冷却し、飽和NaHCO3(30mL)、ブライン(30mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。ラクトン15Dは、ヘキサン/酢酸エチル(20:1→15:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグで精製し、0.014g(75%)を得た。
【0241】
【数18】
【0242】
実施例55
デスメチルデスオキシエポチロンA(16D):THF(2.0mL)中のラクトン15D(0.038g,0.056mmol)に、HF・ピリジン(1.0mL)を添加した。2時間後、反応物を飽和NaHCO3(30mL)中に投入し、CHCl3(5×20mL)で抽出した。有機物をNa2SO4で乾燥させた。原料ジオール16Dを、ヘキサン/酢酸エチル(3:1→2:1)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグで精製し、0.023g(89%)を得た。
【0243】
【数19】
【0244】
実施例56
エポキシド形成:ジオール16D(0.008g,0.017mmol)を、CH2Cl2(1.0mL)に溶解し、-60℃に冷却した。次いで、ジメチルジオキシラン(0.06M,0.570mL,0.0034mmol)を徐々に添加した。反応温度を、徐々に-25℃とした。-25℃で2時間後、揮発成分を反応物から-25℃において真空下で除去した。得られた残留物を、CH2Cl2中MeOH(1%→2%)で溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグで精製し、cis-エポキシド3D及びジアステレオマーcis-エポキシドの1.6:1の混合物を得た(0.0058g,74%)。このジアステレオマーエポキシドを、ヘキサン/酢酸エチル(1:1)で溶離する調製TLCで分離し、溶離後、純粋なジアステレオマーを得た。
【0245】
【数20】
【0246】
実施例57
C-12ヒドロキシエポチロン類似物の実験データプロピルヒドロキシ化合物43:
【0247】
【数21】
ヒドロキシメチル化合物46:
【0248】
【数22】
【0249】
議論(-)-エポチロンAの全合成
本発明により、エポチロンA(1)の調製方法が初めて知られるところとなった。炭素9から11は、マクロールアクトンのアシル側鎖上の炭素3から8、及びアルキル側鎖上の炭素12から15のキラリティ包含領域を遮蔽する。立体化学情報の一つのセグメントから他への転送は起こりがたい。したがって、採用したアプローチでは、各セグメントの立体化学を個別に扱う。アシルセグメントにおいては、このストラテジーには“ポリプロピオネート様”網目構造の、相対的及び絶対的な両方の構造についての知識が要求される。アルキルセグメントにおいては、二つの可能性がある。一点としては、C12−C13エポキシドが、アシル関連構造との合併を経る構築に関与することが考えられる。その場合、炭素15,13及び12の相対的な立体化学関係を保護する必要がある。エポキシドが、カップリングを経てアルキル側鎖部分から消去される可能性について考慮することが必要であった。このアプローチは、許容される立体制御により、マクロ閉環後エポキシドを導入可能な場合にのみ実行可能である。アシルフラグメントに必要な必須の立体化学情報のほとんどを有する化合物4の合成は、上記の通りである。この中間体を、新規な酸化的に誘発されるシクロプロパノピラン3のソルボリシス開裂によって調製する。さらに、上記には、炭素15,13及び12における絶対的及び相対的な立体化学を表すアルキル側鎖カップリングパートナーを含む構造もまた記載されており、これは下記の代替方法とは異なる。
【0250】
アルキル及びアシル領域の連結について考慮すると、幾つか可能な結合部位がある。ある箇所では、エステル(またはラクトン)結合の形成にアシル化の必要がある(実線矢印2参照)。さらにまた、C2−C3結合の形成には、アルドール構造が要求される。このアルドール段階の正確なタイミングを決定するには、検討を要する。C3−C9構造を延長する際、C−15ヒドロキシルのアシル化が検討される。予期せぬことに、マクロリドは、新たなマクロアルドール化によって閉環されうることが判った(ケトアルデヒドマクロアルドール化の既知の点については、C.M.Hayward,et al.,J.Am.Chem.Soc.,1993,
115,9345参照)。この選択肢は、図1(A)において実線矢印3によって示される。
【0251】
アシル及びアルキルフラグメントの併合の第一段階(矢印1参照)には、困難な合成上の障害が存在する。当業者には、炭素9と10、または炭素10と11との間の結合形成を達成する試みにおいて、エポキシドがアルキルカツプリングパートナーに包含される場合に著しい反力が働くことが認められている。これらの問題は、アシル及びアルキル反応物質で、これらの結合の両方に渡る併合のための適切な相補性を有するものを形成する際の予期せぬ困難性による。炭素11及び12間の最初の併合を試験した。このアプローチは、O-アルキルカップリングパートナーからのオキシラン結合の消失を必要とする。幾つかの置換をテストした後、カップリング反応第一段階に入るために一般化システム5及び6を試験した。前者の列は中間体4から誘導されたものである。一般化システム5に相当する有用な置換体のde novo合成が必要とされる(図1(B))。
【0252】
4から11へと進む段階をスキーム2に示す。後のC−7アルコール(化合物7参照)の保護に続き、ベンジルエーテルの開裂及びアルデヒド8の酸化を行った。末端アリール含有フラグメント10へのアルデヒドの延長を、末端エーテル9(幾何異性体EとZとの混合物)を経て行った。最後に、ソルボリシス・トラップ条件(solcolytic trapping conditions)下でジチアン結合を酸化的に開裂させ、特定のカップリング成分11を生成した(G.Stork;K.Zhao,Tetrahedron Lett.1989,30,287)。
【0253】
市販の(R)−グリシドール12で、そのTHP誘導体13を経てアルコール14に転化されたものから出発するアルキルフラグメントの合成。テトラヒドロピランブロッンク基の開裂の後、示した通り、生成するアルコールはメチルケトン15に円滑に転化する。後者に、ホスフィンオキシド16を用いてエモンスタイプの同族化を行った。D.Menget al.,J.Org.Chem.,1996,61,7998.このエモンスカップリングにより、オレフィン立体異性体のca.8:1混合物よりもトランス体17が得られた。生成したアルキン17を転化し、化合物18を経てZ-ヨードアルケン19とした(図4(A)参照)。E.J.Coreyet al.,J.Am.Chem.Soc.,1985,107,713.
【0254】
二つのフラグメントの重要な第一段階カップリングは、B-アルキルスズキ炭素−炭素結合構築によって達成される。N.Miyaura et al.,J.Am.Chem.Soc.,1989,111,314;N.Miyaura and A.Suzuki,Chem.Rev.,1995,95,2457.このように、前アシルフラグメント11のヒドロホウ素化は、その9-BBNとの反応によって達成される。提示の条件下で、ヨードオレフィン19に交差カップリングした混合ボランが、71%の収率で20を生成した。(図4(B))アセタールの開裂に際し、アルデヒド21が得られた。
【0255】
21が得られることにより、C−1結合アセトキシ官能基のメチル基がマクロアルドール化において求核成分として作用するストラテジーを探求することができる。C.M.Hayward et al.,supra参照。脱プロトンは、THF中−78℃にてカリウムヘキサメチルジシラジドを用いて達成される。予期せぬことに、これらの条件により高度に立体選択的なマクロアルドール化が起こり、結果として示した通りC−3(S)-アルコール22が生成する。前駆体カリウムアルドラートをca.0℃でクエンチした際、22が重量にしてより多いことが望ましい。アルドラートを低温でプロトン化すると、より多量のC−3(R)化合物が検出された。実際、幾つかの処理の下では、C−3(R)エピマーが支配的である。したがって、分析スケールのクエンチでは、非常に好ましいC−3(R):C−3(S)比で生成させることが可能である。調製スケールの実験では、22対C−3エピマーの比は6:1である。
【0256】
化合物22の供給が整ったことにより、デソキシエポチロン(23)を得るという準目標が可能となった。この目的は、22におけるトリフェニルシリル(TPS)基の選択的除去、続いてC−3アルコールの選択的シリル化、C−5アルコールの酸化、及び最後に二つのシリルエーテルのフッ化物誘発開裂により達成される。
【0257】
エポチロンの公知の結晶構造(Hofle et al.,supra)によりモデルの実験が可能となり、これはオキシランがマクロリドの凸周辺部にオキシランが配置されることを示唆している。提示の条件下で、ジメチルジオキシランを用いて23の酸化を行った。この反応の主要生成物は、(-)エポチロンA(1)であり、その同定はnmr、赤外線、マススペクトル、旋光及び実際の目的物質とのクロマトグラフィー比較によって行われた。Hofle et al.,supra.エポチロンA(1)に加え、少量のジエポキシド混合物並びに微量のジアステレオマーcisC12−C13モノエポキシド(≧20:1)が検出された。
【0258】
ここに開示した合成方法は、採集可能で実用的な量のエポチロンAを供する。更に重要なのは、この方法は天然物それ自体からは不可能な同族体、類似体及び誘導体への経路を供する。
【0259】
エポチロンAの合成についての研究:アクリル立体化学関係の管理のためのヒドロピランテンプレートの使用
アルコキシセグメント(炭素9−15)の鏡像異性的に純粋な等価体の合成をモデル実験として行った。鍵となる原理には、立体化学傾向を(S)−ラクトアルデヒド誘導体から新たなジヒドロピランに転写することが含まれる。後者は、チアゾール部分の添加及び分解により、所望のアクリルフラグメントを鏡像異性的に純粋な形態で与える。
【0260】
エポチロンの様々な新規な構造特性によりその合成は困難である。チアゾール部分並びにcisエポキシド、及びジェミナルジメチル配置(geminal dimethyl grouping)の存在が、解決すべき鍵となる問題である。興味深い特徴は、分子の二つの官能ドメインを隔離するはたらきをする三つの連続したメチレン基の列である。このようなアキラルな“スペーサーエレメント”を包囲する必要が、連続的なキラリティ転写のための展望を実際に複雑化し、二つの立体化学的に寄与する構造を併合(merge)させるストラテジーを必要としているようである。本発明は、化合物4A(図14)の合成を提供するが、原則として、こうした構造がエポチロンそのもの及び関連の遮蔽物候補に転化可能であることを想定している。
【0261】
合成中間体としての化合物4Aの同定により、アクリル中間体の立体化学の制御に付随する問題の処理におけるヒドロピランマトリックスの力が示された。ジヒドロピロンの合成は、適当に活性なジエンとアルデヒド性ヘテロジエノフィルの全縮合環化(overall cyclocondensation)に要する量によって既に開示されている。Danishefsky,S.J.Aldrichimica Acta,1986,19,59.このようなマトリックス(図13)の構成(参考:5A+6A→7A)においては、立体選択性に大きな誤差範囲のあることが認識される。さらにまた、ヒドロフランプラットフォームは、様々な立体特異的反応に有用である(図式7A→8A参照)。さらにまた、これらの反応の生成物は、開環スキームに従い、結果として定義した立体化学関係を有する非環式フラグメントを生成する(図式7A→8A参照)。Danish efsky,S.J.Chemtracts,1989,2,273.
【0262】
本発明は、化合物4Aの合成のためにこのような二つのルートの応用を提供する。ルート1は、絶対配置の問題の制御それ自体は含まず、既知のアルデヒド10Aから開始する。Shafiee,A.,et al.,J.Heterocyclic Chem.,1979,16,1563;Shafiee,A.;Shahocini,
S.J.Heterocyclic Chem.,1989,26,1627.提示の通り、同族化はエナール12Aを供する。12Aと既知のジエンとの縮合環化(Danishefsk y,S.J.;Hitahara,T.J.Am.Chem.
Soc.,1974,96,7807)で、BF3触媒を用い、ジヒドロピロン13Aのラセミ体を生じる。Luche条件下での13Aの還元により化合物14Aが与えられる。Luche,J.-L.J.Am.Chem.
Soc.,1978,100,2226.この時点で、酵素媒介反応速度分析によるグリカル誘導体の分析のため、既に紹介したリパーゼ方法論が利用可能であった。Berkowitz,D.B.及びDanishefsky,
S.J.Tetrah edron Lett.,1991,32,5497;Berkowitz,D.B.;Danishefsky,S.J.;Schulte,
G.K.J.Am.Chem.Soc.,1992,114,4518.このように、イソプロピルアセタートの存在下でカルビノール14Aにリパーゼ30を作用させ、下記のWong(Hsu,S.-H.,et al.,Tetrahedron Lett.,1990,31,6403)の処方に従って、アセタート15Aを伴う鏡像異性的に関連した遊離のグリカール16Aを生成させた。化合物15AをさらにPMB保護システム17Aに進めた。この箇所では、本出願人による既に示されている他の反応タイプを使用可能であった。したがって、ジメチルジオキシランとの17Aの反応(Danishefsky,S.J.;Bilodeau,M.T.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1996,35,1381)により中間体(対応するグリカールエポキシドと思われる)を生成し、これは金属ペリオダートナトリウムでの処理によりギ酸アルデヒド18Aを生成した。18Aのアリル化によりカルビノール19Aが生成し、ギ酸エステルは見事に存続している(アリル化の確認のためには、Yamamoto,Y.;Asao,N.Chemy.Rev.1993,93,2207参照)。しかしながら、19Aはそのanti立体異性体(ここには示していない)に伴われている[4:1]。第二級アルコールのメシル化に続き、提示のように脱保護(19A→20A参照)及び環化を行い、化合物4Aを得た。
【0263】
この合成において、ジヒドロピロンの約半分のみが反応速度解析によって保証された。一方、理論上は、検討した合成戦略には、エポチロンそのものを得るために15Aの各鏡像異性体の使用を予定しているものあり、全鏡像異性体を統合できるように別のルートが求められていた。このルートの論理は、“ダミー”の不斉中心のキラリティを、既に確立された縮合環化反応における可変のジアステレオ選択の原則に従って、併合ピランに伝達することである(Danishefsky,supra)。提示のジエンとラクトアルデヒド誘導体21Aの縮合環化(Heathcock,C.H.,et al.,J.Org.Chem.,1980,45,3846)を、表見的なキレート化制御の下で行い、22Aを得た。側鎖のエーテルが、提示のように(22A→23A→24A→25A)メチルケトンに転化可能であった。最後に、ホスフィンオキシド26Aとの25Aのエモンス縮合物(例えばLythgoe,B.,et al.,.Tetrahedron Lett .,1975,3863;Toh,H.T.;Okamura,W.H.J.Org.Chem.,1983,48,1414;Baggiolini,E.G.,et al.,J.Org.Chem.,1986,51,3098参照)を、図15に示したようにホスフィンオキシド26Aに変形(Toh,supraに記載の操作に従う)し、27Aを生成させた(既知の2-メチル−4−クロロメチルチアゾール(Marzoni,G.J.Heterocyclic Chem.,1986,23,577参照))。直線状の保護基調整を既出の17Aに行った。このルートは、続いて誘導される立体中心に鏡像選択を与えた後、平面形態で徐々に併合れる炭素中心による立体化学インプリンティングの概念を示している。エポチロンの立体化学要素を保証するためのジヒドロピロンに基づく論理の使用並びに、マクロ環化のため可能な戦略の証明は、以下の項で述べる。エポチロンAの合成:アシル領域の立体制御配置及びマクロ環化のモデル
【0264】
環形成オレフィン置換を、エポチロンAに関連する16員環の同類体の構築に用いた。アシルフラグメントのC3−C9セクターの立体特異的合成を、新規なシクロプロパナート化グリカールの酸化的開環を利用して達成した。
【0265】
前項に開示したのは、炭素10から21を含むエポチロン(1)の“アルコキシ”セグメントの合成(図7,化合物2B参照)である。このセクションは、アシルセクション素3から9の立体化学情報をコード化する他のフラグメントの合成である。正式な標的3Bのアルデヒド中心(C3)が、分子間または分子内ののいずれかの手段により化合物2Bから誘導される求核構造(図7に示した通り、2炭素挿入物の配置を要する)との結合部位として作用することが想定された。こうした状況では、次第にC3で必要とされる第二級アルコール中心の立体化学は、個別に扱う必要がある。システム3Bの興味深い特徴の一つに、炭素4(エポチロンナンバリング)における双性メチル基の存在がある。適切な構成分解(diassembly)の後、再度、システム3Bの存立可能な等価物に相当する環状マトリックスの構成にジヒドロピランストラテジーを使用する。gem−ジメチル含有の環式または非環式フラグメントの合成を含むジヒドロピランパラダイムが詳説されることを期待した。この目的のための特定の反応タイプを、4B→5Bの変換(図7参照)の表題の下に一般化する。求電子体Eの性質についての言及は避ける。したがって、還元が構造タイプ5Bから意図する一般化した標的3Bに進行するか否かという疑問は提示されていない。
【0266】
開始段階は、ジエン−アルデヒド縮合環化反応(図8;Danishefsky,S.J.,Aldrichmica Acta,1986,19,59)の立体化学的に調整可能バージョンからなり、この例は、容易に入手可能な鏡像異性的に同族のアルデヒド6Bと既に得たジエン7Bとの併合におけるキレート化制御を利用している。Danishefsky,S.J.et al;J. Am.Chem.Soc.,1979,101,7001.実際、先例の通り、四塩化チタンの作用の下では化合物8Bとして示した単一の異性体が生成した。通常の立体化学的に確かな方法(Danishefsky,S.J.;Chemtracts Org.Chem.1989,2,273.)では、ジヒドロピロンが対応のグリカール9Bに還元される。この時点で、グリカール9Bをシクロプロパン10Bに転化するために、直接シモンズ−スミス反応を利用可能であった。
【0267】
Weinstein,S.;Sonnenberg,J.J.Am.Chem.Soc.,1961,83,3235;Dauben,W.G.;Berezi n,G.H.J.AmChem.Soc.,1963,85,468;Furukawa,J.,et al.,Tetrahedron,1968,24,5 3;選択的例については、Soekman,R.K.Jr.:Charette,A.B.;Asberom,T.;Johnston, B.H.J.Am.Chem.Soc.,1991,113,5337;Timmers,C.M.;Leeuwenurgh,M.A.;Verheijen ,J.C.;Van der Marel,G.A.;Van Boom,J.H.Tetrajedron:Asymmetry,1996,7,49参照。この化合物は、実際、ある意味ではC-グリコシドのシクロプロパノバージョンに相当する点で興味深い構造である。同時に、シクロプロパンは、シクロプロピルカルビニルアルコールシステムの一部であり、再編成の可能性が付随している。Wenkert,E.,et al.,J.Amer.Chem.
Soc.,1970,92,7428.双性メチル基を生成させる方法により、シクロプロパンのC-グリコシド結合の開裂を目的とし、結果としてC−3に所望のアルデヒド酸化状態を有する溶媒誘導グリコシドを生成した(図7、仮定した変換4B→5B参照)。初期の研究では、計画した反応(すなわちE+=H+)の非酸化バージョンは実用に応用不可能であった。その代わり、環拡張システム11に寄与可能なことが明白な生成物が確認された。例えば、10Bに酸性メタノールを作用させると、おそらくはオキソカルベニウムイオン11Bへのメタノールの付加により、七員環混合アセタールのエピマー混合物が生成した。
【0268】
しかしながら、シクロプロパン開環の所望の意図は、環状酸素の影響下で、化合物10BをN-イソスクシンイミドを用いた酸化的開環に処すことにより達成される(10Bから12Bへの変換と概念的に類似であるシクロプロパンのHg(II)誘発加溶媒分解の参考のためには、Collum,D.B.;Still,W.C.;Mohamadi,F. J.Amer.Chem.Soc.,1986,108,
2094;Collum,D.B.;Mohamadi,F.;hallock,J.S.;J.Am er.Chem.Soc.,1983,105,6882.参照)。この先例に従い、この変換は図8に示したものよりも効率が悪いことが判明しているが、シクロプロパン10BのHg(II)誘発加溶媒分解を行った。メチルグリコシド12Bとして得られた中間体ヨードメチル化合物に、トリ-n-ブチルチンヒドリドを作用させると双性メチル基を有するピラン13Bを生成した。このアルコールの保護(13B→14B参照)、これに続くグリコシド結合の開裂により、仮想アルデヒド3Bの官能基バージョンとして作用しうるアクリルジチアン誘導体を生成した。エポチロン及び同族体に到達する2B及び3Bに関連のフラグメントの混合に可能な方法を試験した。Schrock(Schrock,R.R.et al.,J.Amer.Chem.Soc.,1990,112,3875)及びGrubbs(Schwab,P.et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1995,34,2039;Grubbs,R.H.;Hiller, S.J.Fu,G.C.Acc.Chem.Res.,1995,28,446;Schmalz,H.-G.,Angew.Chem.Int.Ed.Eng l.,1995,34,1833)の研究及びHoveydaの開示(Houri,A.F.,et al.,J.Am.Chem.S oc.,1995,117,2943)では、複合ラクタムが、置換反応におけるモリブデン媒介分子間オレフィンによる鍵となる分子内オレフィンマクロ環化段階において構築されている(Schrock,supra;Schwab,supra)が、これらを考慮してこのようなアプローチを現実化する可能性が検討されている(閉環置換の他の例としては、 Martin,S.F.;Chen,H.-J.;Coutney,
A.K.;Lia,Y.;Patzel,M.;Ramser,M N.;Wagman, A.S.Tetrahedron,1996,52,7251
;Furstner,A.;Langemann,K.J.Org.Chem.,1996,61 ,3942参照)。
【0269】
この問題は、まず、二つのモデルω不飽和酸16B及び17Bで、アクリラートアルコール2Bに使用してそれぞれエステル18B及び19Bを生成させたものを用いて試験した(図9参照)。これらの化合物に、実際に、提示条件で所望の方法によりオレフィン置換マクロ環化を行った。置換体18Bの場合は化合物群20BがE-及びZ-立体異性体の混合物[ca.1:1]として得られた。20Bのジイミド還元を行い、同族体2Bを得た。オレフィン置換反応はまた、エポチロンAのC4に該当する配置の双性メチル基を有する化合物19Bに拡張された。オレフィン置換が起き、この場合は奇妙なことにオレフィン21Bを単一の実体として70%の収量(立体化学試験ではZ体を示した)で生成した。ほぼ同様の結果がSchrockのモリブデンアルキリデン置換触媒の使用によって得られた。
【0270】
したがって、上記のように、オレフィン置換は、標的システムの要求されるエポキシとチアゾリル官能基の両方を含む16員環を構築する試みに処すことができる。エポチロンに到達するために必要とされる官能性を完全に有するセコシステムから実現可能なオレフィン置換反応で、これまでに成功したものはない。マクロ環化に適切な、適当な官能基制約パターンを見定める際に、これらの否定的な結果が失敗として反映されることはほぼ無いであろう。エポチロンBの全合成:スズキカップリング法の拡張
【0271】
本発明は、エポチロンA(1)の全合成を初めて与える。D.Meng et al.,J.Or g.Chem,1996,61,7998 P.Bertinato,et al.,J.Org.Chem,1996,61,8000.A.Balog, et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1996,35,2801.D.Meng,et al.,J.Amer.Chem.S oc.,1997,119,10073.(続くエポチロンAの全合成については、Z.Yang,et al.,A ngew.Chem.Int.Ed.Engl.,1997,36,166参照)この合成は、2,2-ジメチルジオキシランを用いた非常に立体選択的なエポキシ化を施したZ-デソキシ化合物(23)を経て、注意深く決定された条件下で行われ、所望のβ-エポキシドを生成する。23を生成するSorangium属の同様のミクソバクテリアが、エポチロンB(2)をも生成する。後者は、抗真菌スクリーン及び細胞毒性/細胞核壊変アッセイのいずれにおいても23よりも強力な剤である。G.Hofle,et al.,Angew.C hem.Int.Ed.Engl.1996,35,1567;D.M.Bollag,et al.,Cancer Res.1995,55,2325.
【0272】
最初の目的構造はデソキシエポチロンB(2)またはその適当な誘導体であった。このような化合物の利用により、C12−C13二重結合のエポキシ化に伴うレギオ選択性及び立体選択性の研究が可能となるであろう。鍵となる点は、立体選択性に大きな誤差範囲のある2CのZ-トリ-置換オレフィン前駆体の合成の問題であった。ジ置換システムへの合成ルート(A.Balog,et al.,Agnew.Chem.In t.Ed.Engl.,1996,35,2801)では、9-BBN(図4(B))を用いた化合物11(図1(A))のヒドロホウ素化により誘導されるボラン7Cを用いたZ−ビニルヨーダイド19(図4(A))のパラジウム媒介B-アルキルスズキカップリング(N.Miyaura,et al.,J.Am.Chem.Soc.1989,111,314.(確認のためには、N.Mi yaura,A.Suzuki,Chem.Rev.1995,95,2457参照)を利用した。
【0273】
予備的なアプローチは、2Cと同様の考え方を適用してZ-トリ-置換オレフィン(図17)を目指した。二つの重要な点を提示しなければならない。第一に、ヨウ化ビニル8C、19のトリ置換同族体を調製する方法を考案する必要があるであろうこと。この目的が達成可能であれば、問うべきは、Z-トリ-置換オレフィンを目指して必要とされるB-アルキルスズキカップリング反応を実行するの可能性である。分子間レベルで、ヨウ化ビニルがβ-ヨードエノエート(またはβ- ヨードエノン)形式では無い場合の“B-アルキル”(“B-アルケニル”システムに対抗して)を用いたこのような変換の実現は優位性が認められていない。(ここに示した研究とは、細部に重大な相違点がある幾つかのよく似た類似体については、N.Miyaura,et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.1982,55,2221;M.Ohba,et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36,6101;C.R.Johnson,M.P.Braun,J.Am.Chem.Soc.1993,11 5,11014.参照)
【0274】
化合物8Cの合成を図16に示す。該ルートは、9Cの触媒非対称アリル化(G.E.Keck,et al.,J.Am.Chem.Soc.,1993,115,8467)により調製されたオレフィン10Cから出発し、続いてアセチル化を行った。10Cの部位選択的ジヒドロキシル化に次ぐグリコールの開環により、不安定なアルデヒド11Cを生成した。驚くべきことに、後者はホスホラン12Cと反応し(J.Chen,et al.,Tetrahedro n Lett.,1994,35,2827)、全体でも少量ではあるがZ-ヨウ化物8Cを生成した。ボラン7Cが、記載したとおり11から生成した。化合物7Cとヨウ化物8C(図16)のカップリングの実行により、純粋なZ-オレフィン13Cを調製することができた。
【0275】
化合物13Cを得たところで、23の合成に関連して利用したものと同様のプロトコルが使用可能であった。(Balog,et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1996, 35,2801)したがって、アセタール結合の開裂からアルデヒド14Cが生じ、これがマクロアルドール化に処されているのである(図17)。最も高い収率は、C3ヒドロキシル基を一見平衡させる条件下で反応を行うことにより得られた。3R異性体を、その誘導されたC3−ケトンの還元(化合物15C参照)を経て必要とされる3Sエピマーに転化させた。エポチロンAについて記載されたような天然の3S配座を導く反応速度論的に制御したアルドール縮合を達成した。しかしながら、3Sエピマーに到達した全収量では、このプロトコルを用いた方が優れている。C−5トリフェニルシリルエーテルの開裂に次いで、連続的なC3ヒドロキシルのモノ保護(t-ブチルジメチルシリル)、C5での酸化(化合物16C参照)、及び最後にシリル保護基の開裂によりC3及びC7アルコールを生じた(化合物2C参照)。
【0276】
Z-デソキシエポチロンB(2C)が、提示の条件下で非常に速い、実質的にレギオ選択的及び立体選択的なエポキシ化を経ており(正確な比較は行っていないが、2Cのエポキシ化は23の場合よりもより迅速でレギオ選択的のようである)、本物の試料と同様のエポチロンB(2)(1H NMR、マススペクトル、IR、[α]D)を与えることが判明した(A.Balog,et al.,Angew.Chem.Int-Ed-En gl.,1996,35,2801)。このように、本発明は、エポチロンBの全合成を初めて開示する。本方法の重要な特徴には、トリ置換ビニルビニルヨーダイド8Cのエナンチオ選択的合成、化学式7C及び8Cのパラジウム媒介立体特異的カップリングからの化合物13の生成(この形態では事実上前例のない反応)、及びZ-デソキシエポチロンB(2C)が適当な条件下でレギオ選択的及び立体選択的なエポキシ化に従うことが含まれる。デスメチルエポチロンA
【0277】
エポチロンA及びBの全合成は既に開示されている。Balog,A.,等,Angew.Ch em.,Int.Ed.Engl.1996,35,2801;Nicolaou,K.C.,等,Angew.Chem.,Int.Ed .Engl.1997,36,166;Nicolaou,K.C.,等,Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.1997 ,36,525;Schinzer,D.,等,Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.1997,36,523;Su, D.-S.,等,Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.1997,36,757。エポチロンの抗腫瘍作用は、タキソール(Taxol(商標))に極めて類似している。Hofle,G.,等,H.An gew.Chem.,Int.Rd.Engl.1996,35,1567。タキソール(パクリタキセル)は、臨床的に承認された薬であるが、その製剤は未だに困難である。さらに、タキソールは多剤耐性(MDR)表現型を含んでいる。従って、タキソールと同様の作用機構を有し、より優れた治療仮性が予想される新規な薬剤が真剣に研究されている。Bollag,D.M.,等,Cancer Res.1995,55,2325。
【0278】
本発明は、エポチロンA及びBより有効であり、なおかつ合成が容易なエポチロン類似物を提供する。天然物の合成は、予備的な生物学的評価のためには十分な材料を提供するが、全ての開発に十分な量は生成しない。構造変化が合成の複雑さのかなり緩和をもたらす特定の領域は、ポリプロピレンドメインからのC8メチル基の削除であろう(標的系3D参照)。このC8キラル中心を取り扱う必要性は、これまで開示されたエポチロンの合成の全てを複雑化している。C8メチル基の削除は、初期のジエン−アルデヒド環化縮合経路に関する合成手法において大きな変化を要求する。Danishefsky,S.J.Chemtracts 1989,2,273;Meng, D.,等,J.Org.Chem.1996,61,7998;Bertinato,P.,等,J.Org.Chem.1996,61 ,8000。
【0279】
図20に示すように、4Dの非対称的クロチル化(87% ee)(Brown,H.C.;Bha t,K.S>J.Am.Chem.Soc.1986,108,5919)、それに続く保護がTBSエーテル5Dを導く。二重結合は、容易に切断してアルデヒド6Dを与える。アルデヒドはt-ブチルイソブチリルアセテートから誘導されたジアニオンとカップリングして7Dを与える。C5S(7D):C5R(7D)化合物の比率(図示せず)は約10:1である。Weiler-タイプのβ-ケトエステルジアニオン化学(Weiler,L.J. Am.Chem.Soc.1970,92,6702;Weiler,L.;Huckin,S.N.J.Am.Chem.Soc.1974,96 ,1082)が、イソブチリル基内で行えることは、より簡便な合成のための代替的方法を示唆している。先の文献に従う7DのC3ケトンの直接還元(Evans,D.A. ,等,J.Org.Chem.1991,56,741)、それに続くC3ヒドロキシルの選択的シリル化は、50%の収率で、C3R異性体(図示せず)に対する所望のC3S(化合物8D参照)の比率を10:1で与える。水素化ホウ素ナトリウムでの還元では、C3エピマーの約1:1混合物を与える。脱ベンジル化で生成されるカルビノールは、酸化されてアルデヒドとなり、次いで、単純なwittig反応を通してメチレン化されて、オレフィン9Dを与える。この化合物のTBSOTfでの処理はエステル10Dを与え、これは、ヨウ化ビニル12Dとのスズキ・カップリングに直接用いられる。
【0280】
10Dの9-BBNでのハイドロボレーションは、中間体11Dを生成し、これば、ヨウ化ビニル12Dとのカップリング、及びその場でのTBSエステルの開裂に際して、13D(図21)を導く。脱アセチル化の後、ヒドロキシ酸14Dが入手できる。この化合物のマクロラクトニゼーション(Boden,E.P.;Keck,G. E.J.Org.Chem.1985,50,2394)は、15Dを生成し、これは、脱シリル化の後、C8-デスメチルデスオキシエポチロン(16D)を与える。最後に、この化合物のジメチルジオキシランによるエポキシ化により、目的構造3Dが生成される。エポキシ化の立体選択性は、デスオキシエポチロンAのエポキシ化が>20:1の立体選択性であることからは、驚くほど低い(1.5:1)。C8メチル基の削除は、16Dの立体配座的寄与を変化させ、ジメチルジオキシランによるエポキシ化のβ-選択性を低下させることを示している。ジメチルジオキシランによるエポキシ化の立体選択性に対するC8メチルの効果と生物学的活性の劇的な低下とが関係しているか否かは不明である。
【0281】
化合物3D及び16Dが、GTPの不存在下での細胞培地及びチューブリンのアセンブリにおける細胞毒性について試験された。微小管タンパク質(MTP)は、ウシ脳から2サイクルの温度依存性アセンブリ及びディスアセンブリによって精製した。Weisenberg,R.C.Science 1972,177,1104。コントロールアセンブリ実験では、MTP(1mg/mL)を、0.1M MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、1mME GTA、0.5mM MgCl2、1mM GTP、及び3Mグリセロールを含みpH6.6のアセンブリバッファで希釈した。アセンブリは、35℃で40分間350nmにおいて分光学的に監視し、濁り度の変化をポリマー量として測定した。Gaskin,F.;Cantor ,C.R.;Shelanksi,M.L.J.Mol.Biol.1974,89,737。薬剤は、GTP無しで、10μMの濃度で試験した。微小管形成は、電子顕微鏡で確認した。GTPまたは薬剤の存在下での微小管の安定性を測定するため、反応温度を4℃に変えた後、40分間濁り度を測定した。
【0282】
細胞毒性実験により、8−デスメチル類における極端な活性低下が示された。化合物3D及び16Dは、それらに対応するエポチロンAより活性が約200倍低くなっていた(表1参照)。以前のC3及びC5両方でのSAR発見を、ここに開示する発見と結びつけて再考すると、エポチロンのポリプロピレンセクターは、生物学的機能の特に感受性の部分と考えられる。Su,D.-S.,等,Angew.Chem.I nt.Ed.Engl.1997,36,757;Meng,D.,等,J.Am.Cehm.Soc.1997,119。
【0283】
【表1】
【0284】
a試験化合物の細胞毒性は、ヒトリンパ芽珠白血病細胞CCRF-CEM、またはビンブラスチン及びタキソールに耐性のサプライン(CCRF-CEM/VBL)、またはエトポシドに耐性のサブライン(CCRF-CEM/VM-1)の成長によって測定した。XTT-マイクロ培地テトラゾリウム/ホルマザンアッセイを用いた。
【0285】
bIC5Dの値は、中央有効量プロットに基づいて5−6濃度からコンピュータソフトウェアを用いて計算した。生物学的結果
【0286】
以下の表では、モデル系1は、デスオキシエポチロンである。モデル系2は、下記の構造を有する。
【0287】
【化59】
【0288】
但し、R’及びR”はHである。モデル系3は、下記の構造を有する。
【0289】
【化60】
【0290】
【表2】
【0291】
【表3】
【0292】
表2に示したように、CCRF−CEMは親細胞系である。CCRF-CEM/VBL(MDR細胞系)は、タキソールに1143倍の耐性である。CCRF -CEM/VM(トポII突然変異細胞系)は、タキソールに1.3倍の耐性でしかない。
【0293】
相対的能力の点では、合成エポチロンは天然エポチロンAとほぼ同様である。CCRF-CEM細胞について、その順序は以下の通り:タキソール≒エポチロンA>デスオキシエポチロンA>>試験類似物>>モデル系1。CCRF-CEM/VBLについて、相対的能力の順序は以下の通り:デスオキシエポチロンA≧エポチロンA>>タキソール>試験類似物>モデル系1。CCRF-CEM/VMについて、相対的能力の順序は:タキソール≒エポチロンA>デスオキシエポチロンA>>モデル系1>試験類似物。CCRF−CEM/VM細胞は、ある種のエポチロン化合物に側副的感受性であると結論される。
【0294】
【表4】
【0295】
表3に関して、実験はDC-3F(親ハムスター肺細胞)、DC-3F/ADII(中程度の多剤耐性(MDR)細胞)及びDC-3F/ADX(非常に強いMDR細胞)の細胞系を用いて行った。化合物の相対的能力は以下の通り:
DC-3F: アクチノマイシンD>ビンブラスチン≧エポチロンA(0.0036μM)>デスオキシエポチロン>VP-16>タ キソール(0.09μM)>モデル系1及び試験類似物DC-3F/ADX: デスオキシエポチロン≧エポチロンA(0.06μM)>ア クチノマイシンD>モデル系1>ビンブラスチン>試 験類似物>ビアブラスチン>タキソール(32.0μM) DC-3F/ADX細胞(アクチノマイシンDに8379倍の耐性)は、タキソール、VP-16、ビンブラスチン及びアクチノマイ シンDに>338倍(約8379倍)耐性だが、エポ チロン化合物には<20倍耐性である。全体的に、これらの結果はCRF-CEM細胞の結果と類似している。
【0296】
【表5】
【0297】
VBL → 微小管解重合 タキソール→ 微小管重合 Epo-B → 微小管重合エポチロンB及びタキソールは、類似の作用機構(重合)を有しているが、タキソールがVBLに拮抗するのに対してエポチロンBはVBLを相乗する。 タキソール+VBL → 拮抗作用 EpoB+タキソール → 拮抗作用 EpoB+VBL → 相乗作用 EpoB+タキソール+VBL → 拮抗作用
*混合係数値<1,=1、及び>1は、各々、相乗作用、付加的効果、及び拮抗作用を示す。
【0298】
【表6】
【0299】
【表7】
【0300】
【表8】
【0301】
【表9】
【0302】
要するに、エポチロン及びタキソールは、微小管の重合を安定化させることによる類似の作用方法を有している。しかし、エポチロン及びタキソールは異なる新規な化字構造を有している。
【0303】
MDR細胞は、タキソール(CCRF-CEM/VBL細胞)に1500倍の耐性であるが、エポチロンAは、わずか8倍の耐性しか示さず、エポチロンBは5倍の耐性しか示さない。CCRE-CEM細胞について、EpoBはEpoAより6倍の能力、タキソールより10倍の能力を有する。デスオキシエポチロンB及び化合物#24は、タキソールより3−4倍低い能力しか持たないが、化合物#27はタキソールより>2倍の能力を有する。結局、タキソール及びビンブラスチンは、CCRF−CEM腫瘍細胞に拮抗作用を示すが、EpoB+ビンブラスチンの組み合わせは相乗作用を示す。
【0304】
ヒト白血病細胞に対するin vitroでの相対的細胞毒性は、次のような順序である:CCRF-CEM白血病細胞EpoB(IC50=0.00035μM;相対値=1)>VBL(0.00063;1/1.8)>#27( 0.0010;1/2.9)>タキソール(0.0021;1/6)>EpoA(0.0027;1/7.7)>#24(0.0078;1/22.3)>#10(0.0095;1/27.1)>#25(0.021;1/60)>#1(0.022;1/62.8)>#20(0.030;1/85.7)>#6(0.052;1/149)>#26(0 .055;1/157)>#17(0.090;1/257)>VP-16(0.29;1/8.29)>#15(0.4 4;1/1257)>#19(0.96;1/2943)。CCRF-CEM/VBL MDR白血病細胞EpoB(IC50=0.0021;1/6*[1]*)>#27(0.0072;1/20.6)>#1(0.012; 1/34.3)>#10(0.017;1/48.6)>EpoA(0.020;1/57.1[1/9.5])>#6(0.035)>#20(0.049)>#24(0.053)>#25(0.077)>#22(0. 146)>#26(0.197)>#17(0.254)>#11(0.262)>VBL(0.332; 1/948.6[1/158.1])>タキソール(4.14;1/11828[1/1971.4])>VP-16(10. 33;1/29514[1/4919])。
*括弧内の能力は、CCRF-CEH細胞におけるEpo Bに対するもの。
**角括弧内の能力は、CCRF-CEM/VBL MDR細胞におけるEpo Bに対するもの。
【0305】
表9に示すように、MX-1異種移植片を有するヌードマウスを、デスオキシエポチロンB(35mg/kg、死亡率0/10)、タキソール(5mg/kg、死亡率2/10;10mg/ kg、死亡率2/6)及びアドリアマイシン(2mg/kg、死亡率1/10;3mg/kg、死亡率4 /6)で、8日から開始して1日おきに5投与するi.p.処理することは、極めて良好な治療効果をもたらし、35mg/kgのデスオキシエポチロンB、5mg/kgのタキソール及び2mg/kgのアドリアマイシンについて、腫瘍容積の縮小は、各々98%、53%及び28%であった。デスオキシエポチロン処理群について、10匹中3匹のマウスに、18日目(day 18)において腫瘍が検出不能となった(図48参照)。
【0306】
18日目に開始するデスオキシエポチロンB(40mg/kg;i.p.)での延長された処理で、1日おきに5投与以上すると、10匹中5匹のマウスで、28日目(又は31日目)に腫瘍の消失をもたらした。表10参照。これに対して、5投与より多くの5mg/kgでのタキソールの延長された処理では、腫瘍は引き続き中程度の速度で成長を続け、10匹中2匹のマウスが毒性で死亡した。
【0307】
6匹のマウスに対して4日に渡り毎日デスオキシエポチロンBのi.p.投与(25mg/kg、以前の実験で示したように、治療に極めて有効な量)をする毒性試験は、平均体重の低下をもたらさなかった。(表13;図47)。それに対して、8匹のマウスに対する4日間のエポチロンB(0.6mg/kg)i.p.)では、平均体重の33%の低下を引き起こし、8匹全てのマウスが、5から7日目の間に毒性のため死亡した。
【0308】
【表10】
【0309】
【表11】
【0310】
【表12】
【0311】
【表13】
【0312】
【表14】
【0313】
【表15】
【0314】
表15から明らかなように、デスオキシエポチロンBは、MDR腫瘍異種移植片(ヒト哺乳類アデノガンMCF-7/Adr異種移植片)に対して、タキソール、ビンブラスチン、アドリアマイシン及びカンプトテシンより有意に優れた作用をする。この薬物耐性腫瘍は非常に攻撃的に成長し、タキソール及びアドリアマイシンの半致死量に耐性を持つ。タキソールの6mg/kg i.p.Q2D×5は、腫瘍サイズを10%しか縮小させず、アドリアマイシンは、17日目に22%縮小させるだけである。一方、デスオキシエポチロンBは、35mg/kgで、17日目に腫瘍サイズを66%縮小させるが、体重減少や明らかな毒性は示さない。タキソール(12mg/kg)またはアドリアマイシン(3mg/kg)というLD50量に比較しても、デスオキシエポチロンBの方が有効である。それに比較して、カンプトテシンは、1.5及び3.0 mg/kgで、腫瘍サイズを各々28%及び57%縮小した。結局、現在使用されている4つの重要な抗腫瘍薬、即ち、タキソール、アドリアマイシン、ビンブラスチン及びカンプトテシンに比較して、デスオキシエポチロンBは、MDR異種移植片に対する優れた化学治療効果を示した。
【0315】
【表16】
【0316】
【表17】
【0317】
【表18】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造:
【化1】
(ここで、R、R0及びR’は、個々独立に、H、または、任意にヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒド、直鎖状または分枝状アルキルまたは環状アセタール、フッ素、NR1R2、N−ヒドロキシイミノ、または、N−アルコキシイミノで置換されていてもよい直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、
R1及びR2 は、個々独立に、H、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;
R”は、CHY=CHX、またはH、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル-1,3-チアゾリニル、2-フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル-1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6-インドリルであり;
Xは、H、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル-1,3-チアゾリニル、2- フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル-1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6 -インドリルであり;
Yは、Hまたは直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;
Zは、O、N(OR3)またはN-NR4R5であり、
R3、R4及びR5は、個々独立に、Hまたは直鎖状または分枝状アルキルまたはアルコキシであり;
nは、0、1、2または3である)
を有する化合物。
【請求項1】
下記の構造:
【化1】
(ここで、R、R0及びR’は、個々独立に、H、または、任意にヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルデヒド、直鎖状または分枝状アルキルまたは環状アセタール、フッ素、NR1R2、N−ヒドロキシイミノ、または、N−アルコキシイミノで置換されていてもよい直鎖状または分枝鎖状アルキルであり、
R1及びR2 は、個々独立に、H、フェニル、ベンジル、直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;
R”は、CHY=CHX、またはH、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル-1,3-チアゾリニル、2-フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル-1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6-インドリルであり;
Xは、H、直鎖状または分枝鎖状アルキル、フェニル、2-メチル-1,3-チアゾリニル、2- フラニル、3-フラニル、4-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、イミダゾリル、2-メチル-1,3-オキサゾリニル、3-インドリルまたは6 -インドリルであり;
Yは、Hまたは直鎖状または分枝鎖状アルキルであり;
Zは、O、N(OR3)またはN-NR4R5であり、
R3、R4及びR5は、個々独立に、Hまたは直鎖状または分枝状アルキルまたはアルコキシであり;
nは、0、1、2または3である)
を有する化合物。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42A】
【図42B】
【図42C】
【図43A】
【図43B】
【図44A】
【図44B】
【図45A】
【図45B】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42A】
【図42B】
【図42C】
【図43A】
【図43B】
【図44A】
【図44B】
【図45A】
【図45B】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【公開番号】特開2009−298816(P2009−298816A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222984(P2009−222984)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【分割の表示】特願平11−501095の分割
【原出願日】平成9年12月3日(1997.12.3)
【出願人】(500446661)スローン−ケッタリング インスティトュート フォア キャンサー リサーチ (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【分割の表示】特願平11−501095の分割
【原出願日】平成9年12月3日(1997.12.3)
【出願人】(500446661)スローン−ケッタリング インスティトュート フォア キャンサー リサーチ (5)
【Fターム(参考)】
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