説明

エマメクチンを使用して魚の寄生虫を処理する方法

【課題】魚個体群に対する毒性なくして、魚個体群における寄生虫を駆除、低減または予防すること。
【解決手段】魚個体群における寄生虫を駆除、低減または予防する方法であって、3〜14日間の期間にわたって、1日あたり、魚の生物量1kgあたり、25μg〜400μgの1日用量で、エマメクチンまたはその塩を該魚個体群に給餌する工程を包含する、方法。前記寄生虫は、内部寄生虫または外部寄生虫である。また、エマメクチン安息香酸塩が、使用される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
商業規模の鮭養殖経営でのウミシラミ(Lepeophtheirus salmonisおよびCaligus elongatus)の蔓延の制御は、依然として、化学処理の使用に大きく依存している(非特許文献1)。これらの外部寄生虫カイアシ類の発生は、現在、浸漬浴処理により、有機リン酸塩ジクロルボス(Aquagard(登録商標) Novartis)およびAzamethiphos(Salmosan(登録商標) Novartis)、または過酸化水素(Salartect Brenntag Paramove(登録商標) Solvay−Interox)または合成ピレソイド(pyrethoids)、サイパーメスリン(cypermethrin)(Excis(登録商標) Vericore)およびデルタメスリン(Alphamax Alpharma)で処理されている。浴手順は、非常に労働集約的であり、コストがかかり、魚に相当なストレスを与える。さらに、このような処理は、風雨に晒される部位では、また、悪天候中には、実現可能であり得ない。
【0002】
サイパーメスリンを除いて(非特許文献2)、両方の処理は、前成体段階および成体段階のウミシラミに対して有効であるにすぎず、カリマス(chalimus)段階のものは生き残り、蔓延サイクルが続く。従って、治療は、個体群が前成体または成体段階に達したときにのみ指示され、それゆえ、有効な抑制を行うためには、頻繁に繰り返さなければならない。有機リン酸塩ジクロボスに対する抵抗性は、一部のウミシラミの個体群で確認されている(非特許文献3)。過酸化水素は、鰓に損傷を起こし得、その使用は、高温でのその毒性のために、夏期には、制限されている(非特許文献4)。
【0003】
全ての寄生的段階のウミシラミおよび他の寄生虫に対して有効な処理であって、浴での適用に付随した欠点を回避するために給餌中に投与できる処理があれば、鮭工業において、有益である。給餌内処理により、悪天候中および風雨に晒される部位での投薬が可能となり、ラック(loch)システムまたは単一入り江での1部位および全部位にある全ケージの同時投薬が可能となり、それゆえ、任意の交差蔓延(これは、1部位での全てのケージに浴処理を適用するのに必要な数日間にわたって、起こり得る)を少なくする。現在利用できる給餌内処理は、昆虫成長調節器、ジフルベンズロン(diflubenzuron)(Lepsidon Ewos)およびテフルベンズロン(teflubenzuron)がある(非特許文献5)。それらの作用様式は、キチン合成の阻害にあり(非特許文献6)、従って、活性は、ウミシラミの脱皮段階に制限されている。
【0004】
アベルメクチン類(avermectins)は、Streptomyces avermilitisの培養物から製造されるが、非常に強力な駆虫および殺虫特性を有する。化学的に変性した誘導体であるイベルメクチン(22,23−ジヒドロアベルメクチンB)は、ウシ、ヒツジ、ウマおよびブタ用の広範囲の駆虫薬として開発され(非特許文献7)、そして1981年以来、世界的に販売されている。イベルメクチンはまた、数種のヒト寄生虫の治療に広く使用されている(非特許文献8)。ウミシラミが有機リン酸塩に耐性があることが認められたのに続いて(非特許文献3)、イベルメクチンは、代替的な療法と考えられていた。その新規な作用様式に加えて、それを給餌内投薬で適用すると、さらに有利であった。イベルメクチンは、鮭での使用には、規制当局の許可が得られていないものの、それは、英国では、カスケード処置の下で、獣医により処方され得る(非特許文献9)が、この場合、認可された製品は、ウミシラミの蔓延を有効に制御できない。数年間にわたってイベルメクチンを使用すると、週2回、25μgkg-1の生物量の一般的に採用された用量割合で、ある程度の制御を与えることが示された(非特許文献10)。しかしながら、イベルメクチンは、週2回、25μgkg-1より多いレベルで、毒性があることが発見された(非特許文献11)。
【0005】
エマメクチン(4”−デオキシ−4”エピメチルアミノアベルメクチンB1)は、最近、食用農産物を処理するのに使用されている(非特許文献12)。
【非特許文献1】Roth M.,Richards R.& Sommerville C.(1993)「Current Practices In The Chemotherapeutic Control of Sea Lice Infestation:A Review」Journal of Fish Diseases(16(1):1〜26
【非特許文献2】Jakobsen P.J.& Holm J.C.(1990)「Promising Test With New Compound Against Salmon Lice」Norsk Fiskeoppdrett.1月16〜18日
【非特許文献3】Jones M.W.,Sommerville C.S.& Wootten,R.(1992)「Reduced Sensitivity of the Salmon Louse,Lepeophtheirus salmonis,to the Organophosphate Dichlorvos」Journal of Fish Diseases 15:197〜202
【非特許文献4】Thomassen J.M.(1993)「Hydrogen peroxide as a Delousing Agent for Atlantic Salmon」In:Pathogens of Wild and Farmed Salmon:Sea Lice(G. Boxshall & D. Defaye著)Ellis Horwood Ltd. London
【非特許文献5】Erdal J.I.(1997)「New Drug Treatment Hits Sea Lice When They are Most Vulnerable」.Fish Farming International vol.24,No.2
【非特許文献6】Horst M.N.& Walker A.N.(1996)「Biochemical Effects of Diflubenzuron on Chitin Synthesis in the Post−moltblue crab」(Callinectes sapidus)Journal of Crustacean Biology.15;401〜408
【非特許文献7】Sutherland I.H.(1990)「Veterinary Use of Ivermectin」Acta Leidensia 59;211〜216
【非特許文献8】Ottesen E.A.& Campbell W.C.(1994)"Ivermectin in Human Medicine「Journal of Antimicrobial Chemotherapy.34(2):195203
【非特許文献9】Anonymous(1998) Amelia No.8 Veterinary Medicines Directorate,Woodham Lane,Newhaw,Addlestone,Surrey KT15 3NB
【非特許文献10】Rae G.H.(1996)「Guidelines for the Use of Ivermectin Pre−Mix for Pigs to Treat Farmed Salmon For Sea Lice」Scottish Salmon Growers Association pamphlet
【非特許文献11】S.C.Johnsonら、「Toxicity and Pathological Effects of Orally Administered Ivermectin In Atlantic, Chinook, and Coho Salmon and Steelhead Trout」、Diseases of Aquatic Organisms.Vol.17:107〜112(1993)
【非特許文献12】Leibee G. L.,Jansson,R.K.,Nuessly,G & Taylor J.L.(1995)「Efficacy of Emamectin Benzoate and Bacillus thuringensis at Controlling Diamondback Moth(Lepidoptera:Plutellidae)Populations On Cabbage in Florida」Florida Entomologist.78 (1):82〜96
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、魚個体群における寄生虫を駆除、低減または予防する方法を提供し、該方法は、3〜14日間の期間にわたって、1日あたり、魚の生物量1kgあたり、25μg〜400μgの1日用量で、エマメクチンまたはその塩を該魚個体群に給餌する工程を包含する。
【0007】
さらに他の局面では、魚個体群における寄生虫を駆除、低減または予防する薬用魚餌を調製するキットが提供され、該キットは、エマメクチンまたはその塩の供給物、および印刷説明書を含み、該印刷説明書は、3〜14日間の期間にわたって、1日あたり、魚の生物量1kgあたり、25μg〜400μgの1日用量で、該エマメクチンまたはエマメクチン塩を給餌するためにある。
上記に加えて、本発明は、以下を提供する:
(項目1) 魚個体群における寄生虫を駆除、低減または予防する方法であって、3〜14日間の期間にわたって、1日あたり、魚の生物量1kgあたり、25μg〜400μgの1日用量で、エマメクチンまたはその塩を該魚個体群に給餌する工程を包含する、
方法。
(項目2) 前記寄生虫が、内部寄生虫である、項目1に記載の方法。
(項目3) エマメクチン安息香酸塩が、使用される、項目2に記載の方法。
(項目4) 前記寄生虫が、外部寄生虫である、項目1に記載の方法。
(項目5) エマメクチン安息香酸塩が、使用される、項目4に記載の方法。
(項目6) エマメクチン安息香酸塩が、少なくとも7日間にわたって、25〜100μg/魚の生物量1kg/日の割合で給餌される、項目5に記載の方法。
(項目7) エマメクチン安息香酸塩が、少なくとも7日間にわたって、50〜75μg/魚の生物量1kg/日の割合で給餌される、項目5に記載の方法。
(項目8) 前記寄生虫が、ウミシラミであり、そして前記1日用量が、少なくとも7日間にわたって投与される、項目5に記載の方法。
(項目9) 前記エマメクチン安息香酸塩が、25〜100μg/魚の生物量1kg/日の割合で、給餌される、項目8に記載の方法。
(項目10) 前記エマメクチン安息香酸塩が、50〜75μg/魚の生物量1kg/日の割合で、給餌される、項目9に記載の方法。
(項目11) 魚個体群における寄生虫を駆除、低減または予防する薬用魚餌を調製するキットであって、該キットは、エマメクチンまたはその塩の供給物、および印刷説明書を含み、該印刷説明書は、3〜14日間の期間にわたって、1日あたり、魚の生物量1kgあたり、25μg〜400μgの1日用量で、該エマメクチンまたはエマメクチン塩を給餌するためにある、
キット。
(項目12) 前記エマメクチンが、エマメクチン安息香酸塩であり、そして前記説明書が、7〜14日間の期間にわたって、1日あたり、魚の生物量1kgあたり、25μg〜100μgの1日用量を述べている、項目11に記載のキット。
(項目13) 前記説明書が、7〜14日間の期間にわたって、1日あたり、魚の生物量1kgあたり、50μg〜75μgの1日用量を述べている、項目11に記載のキット。
(項目14) 前記説明書が、1週間の期間にわたって、1日あたり、魚の生物量1kgあたり、50μgの1日用量を述べている、項目11に記載のキット。
(項目15) 前記エマメクチン安息香酸塩が、0.01〜1重量%の該エマメクチン安息香酸塩を含有するプレミックス中にある、項目14に記載のキット。
(項目16) 前記プレミックスが、
(a)0.01〜1重量%のエマメクチン安息香酸塩;
(b)0.001〜0.2重量%の防腐剤;
(c)1〜4重量%のプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール;および
(d)QS希釈剤、
を含有する、項目15に記載のキット。
(項目17) 前記プレミックスが、
(a)0.2重量%のエマメクチン安息香酸塩;
(b)0.01重量%のブチル化ヒドロキシアニソール;
(c)2.5重量%のプロピレングリコール;
(d)49.8重量%のコーンスターチ;および
(e)QSマルトデキストリンM−100、
を含有する、項目16に記載のキット。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
エマメクチン(4”−デオキシ−4”エピメチルアミノアベルメクチンB1)は、米国特許第5,288,710号または第5,399,717号で記述されているように調製でき、2種の同族体である4”−デオキシ−4”エピ−メチルアミノアベルメクチンB1aおよび4”−デオキシ−4”−エピメチルアミノアベルメクチンB1bの混合物である。好ましくは、エマメクチンの混合物が使用される。本発明で使用され得るエマメクチンの塩の非限定的な例には、米国特許第5,288,710号で記述された塩、例えば、安息香酸、置換安息香酸、ベンゼンスルホン酸、クエン酸、リン酸、酒石酸、マレイン酸などから誘導された塩が挙げられる。最も好ましくは、本発明で使用されるエマメクチン塩は、エマメクチン安息香酸塩である。
【0009】
驚くべきことに、エマメクチンは、本発明に従った投薬量レベルおよび投薬量スケジュールで使用するとき、魚個体群に対して毒性ではないことが発見された。このことは、イベルメクチンが比較的に低いレベルで毒性であることが分かった事実を考えると、特に驚くべき発見である。イベルメクチンは、毒性の問題があるために、2日以上続けて投与できないので、一部の魚が餌を過剰に摂取するために、一定個体群における全ての魚が適当な用量を受容する訳ではなくなるという重要なリスクがある。少なくとも数日間連続してエマメクチンを給餌できると、数日間の給餌によって、一定個体群において、それを消費する魚が多くなる可能性が増すので、エマメクチンは、イベルメクチンよりも著しく有利となる。
【0010】
エマメクチンおよびその塩は、全種類の魚寄生虫(内部寄生虫だけでなく、外部寄生虫を含めて)を駆除または低減するために、本発明に従って使用され得る。駆除または低減され得る内部寄生虫の例には、the Phylum Platyhelminthes(Classes Monogenea, Digenea, and Cestoda);the Phylum Aschelminthes(Class Nematoda);および原生動物類(例えば、ミクソゾアン感染(Phylum Mxyozoa)、微胞子虫感染(Phylum Microspora)、球虫類感染(Phylum Apicomplexa)、およびthe Phylum Ciliophora)が挙げられるが、これらに限定されない。駆除または低減できる外部寄生虫の例には、単生類;the Phylum Arthropoda(Class Crustacea、Subclass Branchiura、およびSubclass Copepoda(例えば、the Orders Cyclopidea、Caligidea、およびLernaeopodideaを含めて));およびに由来の寄生虫;およびthe Order Argulusおよびthe Phylum Isopodaに由来の寄生虫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
本発明のエマメクチン処理は、ウミシラミ、すなわち、Subclass Copepoda、Order Caligideaに属する寄生虫、例えば、Lepeophtheirus属およびCaligus属に属するもの用の処理として、特に効果的であることが発見された。
【0012】
寄生虫を駆除または低減するために、任意の種属の魚(淡水魚および鹹水魚を含めて)がエマメクチンで処理できる。処理できる魚の例には、鮭、鱒、ナマズ、スズキ、マグロ、オヒョウ、北極イワナ、チョウザメ、ターボット、ヒラメ、シタガレイ、鯉、テラビア、縞スズキ、鰻、鯛、ブリ、ヒラマサ、ハタおよびサバヒーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
寄生虫を低減、駆除または予防するのに有効な用量のエマメクチンは、日常的には、獣医により決定できるが、処理する魚の種類、関与している特定の寄生虫、および感染の程度に依存して、変わり得る。好ましくは、エマメクチンまたはその塩は、1日あたり、魚の生物量1kgあたり、25μg〜400μgの用量、さらに好ましくは、1日あたり、魚の生物量1kgあたり、25μg〜100μgの用量、最も好ましくは、1日あたり、魚の生物量1kgあたり、50μg〜75μgの用量で、給餌される。
【0014】
このエマメクチン処理は、3〜14日間、好ましくは、7〜14日間、最も好ましくは、1週間にわたって、毎日、投与される。驚くべきことに、エマメクチンは、処理後、8〜10週間までの持続効能を示すことが発見された。それゆえ、エマメクチンは、寄生虫の発生を防止するための予防手段として、投与できる。
【0015】
本発明に従ったキットは、上記の投薬レベルおよびスケジュールに従って投与するための説明書と共に、少なくとも7日間にわたって、エマメクチンの供給を生じるのに適当な任意の形状であり得る。例には、種々の容器(例えば、ビン、箱、ブリスター包装、およびアンプル)が挙げられるが、これらに限定されず、これらには、周期的投薬手順を記載している包装挿入物が付随しており、ここで、これらの投薬手順は、印刷されているか、または容器に貼付されている。このキット内のエマメクチンまたはエマメクチン塩は、プレミックスの形状であり得、これは、1種またはそれ以上の希釈剤および0.01〜1重量%のエマメクチンまたはエマメクチン塩を含有する。
【0016】
薬物処理した魚餌は、適当な量のエマメクチンまたはエマメクチン塩を市販の魚餌製品に取り込んで所望の投薬レベルを達成することにより、調製され得る。魚餌に取り込むエマメクチンの量は、魚を給餌する割合に依存している。0.2%〜4%の生物量/日で給餌される魚に対しては、薬物処理餌は、薬物処理餌1kgあたり、0.5〜100mgのエマメクチンまたはその塩、さらに好ましくは、薬物処理餌1kgあたり、1〜50mgのエマメクチンまたはその塩、最も好ましくは、薬物処理餌1kgあたり、5〜15mgのエマメクチンまたはその塩を含有する。
【0017】
エマメクチンは、ペレット化前に、給餌混合物に取り込むことができるものの、薬物処理餌は、好ましくは、給餌ペレットをエマメクチンで被覆することにより、形成される。給餌ペレットを被覆するためには、以下を含有するプレミックスを使用するのが好ましい:
(a)0.01〜1重量%のエマメクチンまたはその塩;
(b)0.001〜0.2重量%の防腐剤;
(c)1〜4重量%のプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール;および
(d)QS希釈剤。
この防腐剤は、好ましくは、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)である。好ましくは、プロピレングリコールが使用される。この希釈剤は、通例使用される希釈剤のいずれか、例えば、ラクトース、マルトデキストリン、コーンスターチ、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、もみ殻、およびトウモロコシの穂軸であり得る。好ましくは、この希釈剤は、マルトデキストリン、コーンスターチ、またはそれらの混合物である。特に好ましいプレミックスは、0.2重量%のエマメクチン安息香酸塩、0.01重量%のブチル化ヒドロキシアニソール、2.5重量%のプロピレングリコール、49.8重量%のコーンスターチ、およびQSモルトデキストリンM−100を含有する。このプレミックスは、好ましくは、以下の手順を使用して、高剪断ミキサー/造粒機を用いて調製される:攪拌下にて、BHAをプロピレングリコールに溶解する。スターチを高剪断ミキサー/造粒機に充填する。このBHA溶液を、混合下にて、このスターチに充填する。20〜40分間(目標30分間)にわたって混合を継続して、このスターチをこの溶液に吸収させる。この混合ボールの内壁を擦り落として、いずれかの付着した物質を取り除く。この薬剤を、20メッシュのふるいに通して、このミキサーボールに充填する。10分間にわたって、混合し切り刻む(チョッパーをオンにする)。さらに10分間にわたって、この混合ボールおよびミキサー/チョップにマルトデキストリンを充填する。包装のために送り出す。
【0018】
あるいは、以下のリボン・ブレンダ工程が使用され得る:攪拌下にて、このBHAをプロピレングリコールに溶解する。このスターチを小リボンブレンダ(約半バッチのサイズ)に充填する。このリボンブレンダをオンにし、このBHA溶液をこのスターチにゆっくりと充填する。均一になるまで混合する。このミキサーを停止し、そのブレンドを、約30〜60分間にわたって、このミキサー内に滞留させる。少量のブレンド(バッチ容量の1〜5%)を取り出して、小プラネタリーミキサーに入れる。この薬剤を、このプラネタリーミキサーに充填し、そして5分間混合する。この薬剤プレブレンドをリボンブレンダに戻し、そして10〜30分間混合する。この薬剤ブレンドをリボンブレンダから排出し、そして粉砕ミル(Fitzmill)に通して、塊状物を壊す。粉砕した物質を他のリボンブレンダに移動させる。このマルトデキストリンをこのブレンダに充填し、そして10〜30分間混合する。包装のために送り出す。
【0019】
これらの給餌ペレットは、乾燥被覆法またはオイル被覆法のいずれかにより、被覆できる。この乾燥被覆法では、このプレミックスは、これらのペレット上に均一に分布するように、ペレットと混合され、この混合物には、加熱した魚油または植物油が添加されて、これらのペレットを十分に被覆する。このオイル被覆法では、このプレミックスは、まず最初に、少量の加熱した魚油または植物油と混合され、これは、次いで、これらのペレットと混合されて、それをそれらに均一に分散させ、被覆したペレットには、追加の加熱した魚油または植物油が添加されて、これらのペレットが十分に被覆されるまで、混合される。
【0020】
以下の実施例は、前述の発明を説明しているが、このような実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【実施例】
【0021】
(実施例)
Machrihanish,Scotlandのthe Institute of Aquaculture Marine Environmental Research Laboratoryにおいて、3つの研究を行った。病気に罹っていない在庫から、大西洋鮭であるSalmo salar L.の2年齢以上の鮭を得、試験施設で環境順化させた。
【0022】
魚は、プラスチックファイバータンクにおいて、同型群で保持され、各々は、0.54m3の容量を有していた。各タンクに、周囲の温度(7〜14℃)および塩分濃度(30〜35ppt)で、約18l.min-1の流速で、天然海水を供給した。これらのタンクに、その水出口を覆ってメッシュスクリーンを取り付けて、食べ残した魚ペレットを保持した。魚の死亡率および総ウミシラミ損傷の発生率もまた、記録した。
【0023】
(ウミシラミ感染)
ウミシラミは、スコットランドの西岸において、商業的な鮭養殖場で収穫中に、採集した。妊娠したメスシラミから収集した卵群は、32〜35pptの塩分濃度内で、室温で、海水中でインキュベートした。一旦、孵化した幼生がコーペポダイト(copepodite)段階に達すると、4個の魚用同型タンクには、1匹の魚あたり、38〜170匹のコーペポダイトが導入され、各タンクの水供給は、およそ3時間にわたって停止して、コーペポダイトを魚に付着させた。これを、カリマス段階I、II、IIIおよびIVになるまで、3〜5日間の間隔で、4〜5回繰り返した。カリマス数は、魚のサブサンプル(1個のタンクあたり、N=6〜9匹の魚)に対して、1日目または2日目の前処理で、概算した。この時点で、各タンクに、魚1匹あたり、5〜10匹のシラミを添加することにより、魚に、前成体および成体のシラミを蔓延させた。全てのシラミが魚に付着するまで、約1時間にわたって、各タンクへの水の供給を停止した。前処理シラミ数は、その全個体群のサブサンプルに基づいており、魚1匹あたりのカリマスの平均数として、表わした。次いで、魚を、各研究に対する実験的設計で記述しているように、各コントロールまたは処理タンクに対して、4個の初期タンクからランダムに再分散し、処理中または処理後では、さらに蔓延させることは実行しなかった。
【0024】
(薬物処理餌)
その基礎配給は、Fulmar(登録商標)(BOCM Pauls Ltd.)の3.5または5mmの鮭給餌ペレットであった。エマメクチン安息香酸塩をプロピレングリコールに溶解し、これらの給餌ペレットを上塗りする前に、魚油と混合した。プロピレングリコールおよび魚油を使って、同様にして、コントロール餌を調製した。処理は、7日間の連続期間にわたって(0〜6日目)、0.5%の生物量の給餌割合で、1日あたり、0、25、50および100μgkg-1の魚生物量の名目用量割合で、投与した。実際の毎日給餌消費量は、各タンクにおいて、投与の約30分後、食べ残しの給餌ペレットを収集することにより、そしてこのペレットの数を毎日配給給餌から差し引くことにより、測定した。消費された平均用量は、各群について、以下のようであった:

毎日の給餌消費量%の合計 = 平均給餌消費量(%)
7日

平均給餌消費量(%)×名目用量割合(μgkg-1)=消費された平均用量(μgkg-1

(ウミシラミの評価)
ウミシラミの数の評価は、処理の開始から7日、14日および21日で、実行した。魚を、40mg.l-1のエチル−P−アミノ安息香酸塩(ベンゾカイン)で麻酔し、各魚を、低出力の顕微鏡下で検査した。シラミは、カリマスI〜IV段階、前成体IまたはII段階および成体段階であると確認した。前成体シラミおよび成体シラミを、さらに、オスまたはメスに識別した。各発達段階の数を記録した。この麻酔溶液で引き離された任意のシラミを総数に含め、それらを新鮮な海水に移した後、この魚に再付着した。この魚を、試料採取後、この保持タンクに戻し、同じ魚を、7日目、14日目および21日目で評価した。
【0025】
(実施例1)
(用量滴定研究)
水温は、7〜10℃であり、そして塩分濃度は、33〜34pptであった。処理前の平均魚重量は、192g(±30g S.D)であった。エマメクチン安息香酸塩を、0、25、50および100μgkg-1の魚生物量の名目1日用量割合で、投与した。1タンクあたり、19匹または20匹の標本サイズで、1処理あたり、2個の同型タンクを使った。この研究の結果は、以下の表1で報告する。
表1 用量滴定研究:大西洋鮭(Salmo salar)に対するウミシラミ(Lepeophtheirus salmonis)の誘発蔓延に抗したエマメクチン安息香酸塩の効能。連続7日間(0日目〜6日目)にわたって、1日あたり、0.5%の生物量の割合で、魚に、薬物処理した餌を与えた。7日目、14日目および21日目で、ウミシラミの平均数を決定した。この平均および標準偏差は、2個の同型タンクのプールしたデータから誘導される(標本サイズN=1タンクあたり19匹または20匹の魚)。
【0026】
【表1】


* 平均消費用量は、この薬物投与中の給餌消費%から計算した実際の受容用量である。
【0027】
(実施例2)
(用量確認研究I)
水温は、12〜14℃であり、そして塩分濃度は、33〜35pptであった。処理前の平均魚重量は、224g(±43g S.D)であった。エマメクチン安息香酸塩を、0、25および50μgkg-1の魚生物量の名目1日用量割合で、投与した。1タンクあたり15匹の魚で、1処理あたり3個の同型タンクを使った。しかしながら、この研究では、魚の死亡率が高かったために、研究の最後まで寄生虫評価に利用できた魚の数は、25μgkg-1の群において、9匹、10匹および14匹まで減り、50μgkg-1の群において、10匹、12匹および13匹まで減り、コントロール群では、2匹、5匹および5匹にすぎなかった。この理由のために、第二研究、すなわち、用量確認II(以下の実施例3)を実行した。この研究の結果は、以下の表2で報告する。
表2 用量確認研究I:大西洋鮭(Salmo salar)に対するウミシラミ(Lepeophtheirus salmonis)の誘発蔓延に抗したエマメクチン安息香酸塩の効能。連続7日間(0日目〜6日目)にわたって、1日あたり、0.5%の生物量の割合で、魚に、薬物処理した餌を与えた。7日目、14日目および21日目で、ウミシラミの平均数を決定した。この平均および標準偏差は、3個の同型タンクのプールしたデータから誘導される(標本サイズN=1タンクあたり2〜15匹の魚)。
【0028】
【表2】


* 平均消費用量は、この薬物投与中の給餌消費%から計算した実際の受容用量である。
【0029】
(実施例3)
(用量確認研究II)
水温は、9〜12℃であり、そして塩分濃度は、30〜34pptであった。処理前の平均魚重量は、418.2g(±49g S.D)であった。エマメクチン安息香酸塩を、0および50μgkg-1の魚生物量の名目1日用量割合で、投与した。1タンクあたり、15〜16匹の標本サイズで、1処理あたり、3個の同型タンクを使った。この研究の結果は、以下の表3で報告する。
表3 用量消費研究:大西洋鮭(Salmo salar)に対するウミシラミ(Lepeophtheirus salmonis)の誘発蔓延に抗したエマメクチン安息香酸塩の効能。連続7日間(0日目〜6日目)にわたって、1日あたり、0.5%の生物量の割合で、魚に、薬物処理した餌を与えた。7日目、14日目および21日目で、ウミシラミの平均数を決定した。この平均および標準偏差は、3個の同型タンクのプールしたデータから誘導される(標本サイズN=1タンクあたり15匹〜16匹の魚)。
【0030】
【表3】


* 平均消費用量は、この薬物投与中の給餌消費%から計算した実際の受容用量である。
【0031】
(データ処理)
結果は、カリマス(カリマス段階I〜IV)、モチールシラミ(前成体および成体段階)および全シラミ(カリマス段階およびモチール段階の合計)として、要約した。魚1匹あたりのシラミ数に関数データを、分散の同質性(homogeneity of variances)に関するF試験および矯正試験にかけて、分布の正規性(normality of distribution)を検査した。魚の重量および処理前シラミ数を、一方向AVONAにより試験した。これらの分散は、不均質ではなく、正規的に分布しているので、シラミの前処理数を、非パラメータDunn試験(Zar 1984)を使用して、分析した。
【0032】
3つの研究の全てでは、任意の時点において、コントロール、25、50または100μgkg-1の群の各々にて、これらの同型タンクのいずれかの間で、カリマスまたはモノリスシラミ数には、著しい差(P>0.05)はなかった。このことにより、表1、2および3において、各組の同型タンクについての平均データをプールできた。しかしながら、データはまた、各同型タンクについて、別々に分析した。
【0033】
そのコントロール群に対する平均ウミシラミの低減割合は、各用量について、以下のようにして算出した:

低減% = 100− (処理した同型物の平均)
コントロール同型物の平均

これらの3つの研究の各々の結果の要約は、以下の表4で示す。
表4 21日目での用量滴定研究、用量確認研究Iおよび用量確認研究IIの要約:大西洋鮭(Salmo salar)に対するウミシラミ(Lepeophtheirus salmonis)の誘発蔓延に抗したエマメクチン安息香酸塩の効能。連続7日間(0日目〜6日目)にわたって、1日あたり、0.5%の生物量の割合で、魚に、薬物処理した餌を与えた。
【0034】
【表4】


低減%とは、コントロール群に対するウミシラミ数の低減であり、各処理群に対するプールした同型平均から計算した。
*は、用量確認研究II(この場合、コントロール魚中の死亡率の2%は、ウミシラミが原因ではなかった)を除いて、ウミシラミが原因の死亡率を表わす。死亡率の数字は、淘汰された魚を含む。
【0035】
(結果の分析および考察)
処理群の給餌消費量は、81〜92%であった。各群について、実際の平均用量を計算し、名目用量割合と共に、表1、2および3で提示する。給餌消費量は、コントロール群では、77〜90%の範囲であった。摂食挙動および行動を観察すると、研究期間全体にわたって、コントロール群の一部では、低下した。このことは、コントロール群の魚における高いシラミレベルと関連しており、カリマスがモチール段階(さらに破壊的である)に成熟するにつれてウミシラミの活性が高まったとき、最も顕著であった。各研究の最後において、処理群およびコントロール群のいずれの間にも、平均魚重量の著しい差(P>0.05)はなかった。
【0036】
試験したいずれの用量でも、エマメクチン安息香酸塩での処理が原因の悪影響または魚の死亡はなかった。この用量滴定研究および用量確認研究IIにおいて、ごく少数の魚の死亡があったが、高いシラミ数が理由の多数の死亡または淘汰は、用量確認研究Iで起こった(表4)。
【0037】
(用量滴定研究)
この研究の開始時、魚1匹あたりのカリマスの全体的な前処理平均数は、1タンクあたり10匹の魚のサブ標本に基づいて、58.1(±21.9)であった。再分布および処理前には、タンク間において、蔓延レベルに著しい差(F3.36=1.70、P>0.05)はなかった。シラミの前処理平均数は、モチールを含めて、魚1匹あたり、63〜68匹であった。
【0038】
この用量滴定研究の結果は、表1で示す。早くも7日目にて、魚1匹あたりのシラミの全数は、コントロール群と比較して、全処理群において、35.4〜37.5%低下した。21日目までに、魚1匹あたりのシラミの平均数は、25、50および100μgkg-1の群において、それぞれ、89.8、95.2および95.8%も低下した。コントロール群では、魚1匹あたり、平均して、34.5匹のシラミがあったのに対して、50μgkg-1の用量では、その平均は、1.7匹程度の少なかった。コントロール群に対するシラミ数は、50および100μgkg-1の用量割合では、処理開始から7日目、14日目(P<0.05)および21日目(P<0.001)において、著しく低下した。しかしながら、50および100μgkg-1の用量割合の間では、著しい差はなかった。
【0039】
このデータはまた、カリマス段階およびモチール段階について別々に分析し、7日目から21日目まで、コントロール群では、モチールシラミの平均数は、カリマスが成熟するにつれて、魚1匹あたり、平均して、26.7匹から34.5匹まで増加した(表1)。対照的に、処理群でのモチールシラミの平均数は、21日目では、魚1匹あたり、0.1〜1.1匹程度に低下した。
【0040】
コントロール群では、カリマスの平均数もまた、それらが成熟するにつれて、低下し、モチール段階の数が増加した(表1)。しかしながら、3つの処理群の全てでは、カリマスの平均数は、さらにゆっくりと低下したが、モチール段階の数が対応して増加することはなった。14日目および21日目において、カリマス数は、3つの処理群の全てにおいて、コントロール群よりも高くなった。しかしながら、処理魚に存在しているカリマスの多くは、異常な外観であり、死亡または生育不能であると見なされた。7日目では、処理魚では、図1で示すように、コントロール魚(これは、カリマスIIIおよびIV段階の割合が高い)よりも多くのカリマスIおよびIIが存在していた。14日目(図2)では、処理魚には、依然として、カリマスIおよびII段階が存在していたものの、コントロール魚は、カリマスIまたはIIはなく、少数のカリマスIIIおよびIV段階が残っているにすぎなかった。
【0041】
21日目では、処理魚の多くには、モチールシラミが存在していなかったものの、一部の魚は、カリマスシラミおよびモチールシラミの両方が全くなかった。対照的に、コントロール魚のうち、モチールシラミが全くないものはなかった(表4)。
【0042】
(用量確認研究I)
この研究の開始時では、魚1匹あたりのカリマスの全体的な前処理平均数は、タンク1個あたり9匹の副標本に基づいて、82.3匹(±36.6匹)であった。再分布および処理前では、タンク間には、蔓延レベルに著しい差はなかった(F3.32=0.05、P>0.05)。シラミ(モチールを含めて)の前処理平均全数は、魚1匹あたり、87〜92匹であった。
【0043】
この研究では、高い蔓延レベルの結果として、多数の魚が死亡し、または淘汰された。コントロール群(この場合、シラミ数は、高いままである)では、魚の75%が死亡したか、または淘汰されたのに対して、50μgkg-1では、処理魚の27%しか死亡または淘汰されなかった(表4)。コントロール群における死亡した魚の検査により、非常に多い数のモチールシラミが明らかとなり、21日目まで生き延びたコントロール魚は、シラミが少ないものであったと思われる。それゆえ、魚1匹あたりのシラミの平均数は、21日目では、コントロール魚の全てが生存していたなら、ずっと高かったかも知れない。死亡および淘汰された魚の全ては、ウミシラミ活性によって負った損傷が原因であった。コントロール魚および処理魚の両方でのウミシラミ損傷は、頭蓋および背部領域での表皮の糜爛面積として明らかとなり、これには、これらの個体における低い摂食行動が付随している。21日目では、処理魚における魚の全体的な様子および摂食行動は、目に見えて改善された。対照的に、コントロール群において生存したごく少数の魚は、シラミ損傷があり、引き続いて、摂食応答が低かった。
【0044】
用量確認研究Iの結果は、表2で示す。その処理群では、シラミの全平均数は、既に、7日目にて、コントロール群と比較して、44〜54%低下し、21日目では、この治験の最後まで、シラミの平均数は、25μgkg-1群で82%低下し、また、50μgkg-1群で94%低下した。50μgkg-1の最大用量割合では、ウミシラミ数は、14日目および21日目にて、3個のコントロール群のうちの2個と比較して、著しく低下した(P<0.05)。第三のコントロール同型物は、この研究の最後まで、たった2匹の魚の標本サイズであり、従って、分析には含めなかった。コントロール群および25μgkg-1群の個々の同型物の間では、著しい差はなかったものの、これらのデータをプールしてさらに大きな標本サイズにしたとき、これらの2個の処理物の間では、著しい差(P<0.001)があった。また、25μgkg-1同型物と50μgkg-1同型物と間では、著しい差はなかったが、再度、これらの群のデータをプールすると、これらの2個の用量割合には、著しい差(P<0.001)があった。21日目では、プールしたシラミの平均数は、コントロール群では、魚1匹あたり27.3匹であり、25μgkg-1群では、4.9匹であり、そして50μgkg-1群では、1.6匹であった。
【0045】
この研究の開始時には、比較的に少数の前成体および成体モチール段階が存在していたものの、カリマス段階が成熟するにつれて、全ての群において、7日目までに、数が増えた(表2)。2個の処理群での魚にあるモチールシラミ数の増加は、コントロール群で見られたよりも少なかった。7日目と21日目との間では、平均数は、コントロール群では、自然死によって、また、この研究では、最もひどく感染した魚の死亡または淘汰のために、平均数が減った。処理群では、平均シラミ数の低下は、時間の経過と共に、21日目で、さらに大きく、全シラミ数は、コントロール群よりも82〜94%低かった。
【0046】
表2は、平均カリマス数は、コントロール群および25μgkg-1群では、この研究の開始から14日目まで、低下したことを示している。7日目および14日目では、カリマス群は、50μgkg-1群では、僅かに高いが、再度、処理魚に存在しているカリマスは、21日目で検査した魚のいずれにもカリマスが残っていないように、生育不能であった。
【0047】
21日目では、50μgkg-1群の魚の28.6%は、カリマスシラミおよびモチールシラミの両方が全くなかった(表4)。対照的に、シラミが全くないものは、25μgkg-1群では、僅か3%の魚、そしてコントロール魚では全くなかった。
【0048】
(用量確認研究II)
再分布および処理の前に、タンク間のカリマスの蔓延レベルでは、全く差がなかった(F3.20=0.428、P>0.05)。この前処理シラミ数は、モチールを含めて、魚1匹あたり、79〜84匹であった。
【0049】
表3で提示した要約結果によれば、早くも7日目には、50μgkg-1群では、シラミの全平均数は、コントロール群に比べて、46%低下し、21日目では、95%低下したことが分かる。21日目では、コントロール群は、魚1匹あたり、平均して、38.1匹の全シラミがあったのに対して、50μgkg-1群では、平均して、魚1匹あたり、2.1匹のシラミしかなかった。シラミ数は、7日目、14日目および21日目において、50μgkg-1で処理した3つの群の全てにおいて、3つのコントロール群と比較して、著しく低かった(P<0.001)。
【0050】
コントロール群におけるモチールシラミの平均数は、7日目の魚1匹あたり52.2匹から、21日目の魚1匹あたり38.1匹まで低下した(表3)。同じ期間にわたって、50μgkg-1群におけるモチールシラミの平均数は、ずっと急速に低下し、21日目では、魚1匹あたり、平均して、0.6匹のシラミにすぎなかった。平均カリマス数は、コントロール群では、成熟と共に少なくなり、事実上、14日までに、カリマスはなくなった(表3)。各標本抽出では、14日目には、コントロール魚よりも処理魚において、多くのカリマスが残っており、この差は、統計的に有意であった(P<0.001)。21日目では、処理魚に残っているカリマスの多くは、退化形態であることが観察され、発達が停止されて生育不能であると見なされた。図3および4は、7日目および14日目におけるコントロール群および処理群での各カリマス段階の割合を示す。7日目では、処理魚において、高い割合のカリマスIおよびIIが存在していたのに対して、コントロール魚では、カリマスIIIおよびIVが多かった(図3)。14日目では、処理魚には、依然として、殆どカリマスIIIおよびIVであり、一部、段階IおよびIIであったのに対して、コントロール魚では、魚1匹あたり、平均して、0.4匹のカリマスIVがあった(図4)。
【0051】
この研究の最後には、処理魚の27%には、カリマスまたはモチールシラミが存在しておらず、魚の66%には、モチールシラミが存在していなかった。対照的に、いずれの段階でも、コントロール魚のうち、カリマスまたはモチールシラミが全くないものはなかった。21日目までに、コントロール魚の21%は、ウミシラミ活性に由来の頭蓋外傷が生じた。50μgkg-1群の魚では、頭蓋外傷は記録されず、処理群のいずれでも、魚の死亡はなかったのに対して、コントロール魚の4%は、ウミシラミ損傷のために、この研究において淘汰された。
【0052】
大西洋鮭をエマメクチン安息香酸塩で経口処理すると、3つの全ての研究において、モチール段階およびカリマス段階のL.salmonisに対して、非常に良好な効能が明らかとなった。21日間の研究期間にわたって、寄生虫数の低下率が高まった。50μgkg-1エマメクチン安息香酸塩の用量割合は、ウミシラミ数の低減の際に、100μgkg-1のと同程度に有効であることが分かった。25μgkg-1の用量割合は、殆どの場合において有効であることが証明されたという事実にもかかわらず、50μgkg-1の用量割合では、94〜95%といったより高い低減が一貫して達成された。用量確認研究Iでは、25μgkg-1で処理した魚におけるシラミの全平均数は、コントロール群のそれとあまり差がなかったのに対して、50μgkg-1で処理した魚では、25μgkg-1で処理した魚よりも著しく少ないシラミがあった。その研究では、25μgkg-1で処理した群には、給餌消費割合に基づいて、僅か18.7〜22.0μgkg-1の実際用量割合を与えた。この研究の開始時にひどい蔓延があった個体は、餌の摂取が少なくなりそうであり、それゆえ、薬剤消費も少なく、投薬による恩典を完全には享受できなかった。この結果、この群では、比較的に高い死亡および淘汰割合が生じ、全ての場合において、これらは、シラミ損傷の原因となった。カリマス数は、コントロール魚よりも処理魚において高いままであるものの、それに対応した何らかのモチールシラミ数の増加がなく、また、異なるカリマス段階での発達が遅いことは、エマメクチン安息香酸塩処理が未成熟カリマス段階に対して非常に有効であることを示している。
【0053】
50μgkg-1のエマメクチン安息香酸塩の用量割合での処理の後では、モチールシラミが存在しない魚の割合は、87%程度に高かった。いずかの段階でシラミがない魚の割合は、20〜30%にすぎないものの、シラミがある魚の殆どは、カリマス段階のものしかなかった。たとえ、処理魚におけるカリマスの多くが、外観が異常であり、死亡または生育不能と見なされていても、その付着構造(前部フィラメント)が破壊して分離が起こるには、ある程度の時間がかかり得るので、それらは、魚に残っていた。カリマス段階に対する効能は、さらに破壊的なモチール段階への発達を防止するのに有益であるのに対して、モチールシラミ数の急速な低下もまた、実際にホストの魚を急性的に損傷するので、重要である。投薬開始から早くも7日目には、モチールシラミ数は、50μgkg-1で処理した魚において、58〜80%低下した。
【0054】
エマメクチン安息香酸塩での処理に続いたシラミの駆除の結果、寄生虫による負わされる表皮外傷が減ることが明らかとなった。用量確認試験Iでは、シラミ損傷の結果、魚の死亡および淘汰が相当に起こり、この研究の有効性が低下した。この理由のために、この研究を繰り返した結果、エマメクチンでの処理の保護有益性が立証された。
【0055】
ウミシラミの蔓延を抑制するのに利用できる認可された処理の殆どは、未成熟カリマスおよび成熟モチール段階に対して有効ではなく(Roth,Richards & Sommervilles 1993)、また、処理は、シラミの大多数がそのライフサイクルでの感受性段階で確実に処理されるように、注意深く時機を定めなければならない。幼虫シラミは、引き続いて、生殖能のある成体段階に達し、個体数が絶えず再生される。全ての寄生虫段階に対して有効な処理の利点は、そのライフサイクルの任意の時点でシラミが制御できることにあり、それにより、繁殖が防止される。給餌内処理により、全部位および領域の処理が可能であるように、全ケージにおいて同時に制御できるようになり、それゆえ、処理の頻度が少なくなる。
【0056】
本発明は、その特定の実施形態に関連して記述されているものの、その多くの代替、改良および変更は、当業者に明らかである。このような代替、改良および変更は、本発明の精神および範囲内に入ると解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、用量滴定研究(実施例1)について、7日目で、50μg/kgの用量で投薬した群に対する、コントロール群の魚1匹あたりの個々の平均カリマス(段階I、II、IIIおよびIV)を比較するチャートである。
【図2】図2は、14日目であること以外、図1と同じ比較を示すチャートである。
【図3】図3は、用量確認研究(実施例3)について、7日目で、50μg/kgの用量で投薬した群に対する、コントロール群の魚1匹あたりの個々の平均カリマス(段階I、II、IIIおよびIV)を比較するチャートである。
【図4】図4は、14日目であること以外、図3と同じ比較を示すチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚個体群における寄生虫を駆除、低減または予防する方法であって、3〜14日間の期間にわたって、1日あたり、魚の生物量1kgあたり、25μg〜400μgの1日用量で、エマメクチンまたはその塩を該魚個体群に給餌する工程を包含する、
方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−191488(P2007−191488A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77967(P2007−77967)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【分割の表示】特願2000−610302(P2000−610302)の分割
【原出願日】平成12年4月6日(2000.4.6)
【出願人】(503442097)シェーリング−プラウ・リミテッド (47)
【住所又は居所原語表記】Weystrasse20,Lucerne6,CH−6000,Switzerland
【Fターム(参考)】