説明

エマルションの製造方法及びそれを用いた塗料

【課題】本発明は、優れた耐水性、耐候性、耐汚染性と、耐クラック性を兼ね備えたエマルションが安定して製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の製造方法は、エチレン性不飽和モノマーを2段階重合して得られるエマルションの製造において、特定量のシクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基を有するモノマーを含有し、かつ、特定の種類及び特定量、特定ガラス転移温度のエチレン性不飽和モノマーを含有するモノマー群を2段階重合することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルションの製造方法及びそのエマルションを用いた高耐候性の塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅、ビル等の建築物の外壁・屋根等には、通常塗料が塗られており、風雨や直射日光等から建築物を保護するとともに、建築物の美観性を維持する役割も果たしている。
このような塗料では、風雨や直射日光に対する耐水性、耐候性、耐汚染性等の性能が要求される。また、近年では、無公害性や火災安全性を考慮し、水性の塗料の使用が多くなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような状況下において、水性の塗料用バインダーとしては、一般に、合成樹脂エマルションが採用されている。しかし、合成樹脂エマルションは、溶剤型の樹脂に比べ、形成塗膜の耐水性、耐候性等の諸物性において十分な性能が得られにくい傾向があった。
このような問題に対し、例えば、特許文献1には、シクロアルキル基含有単量体を含む単量体群を乳化重合することにより、耐候性など耐久性に優れるエマルションが得られることが記載されている。
【0004】
しかしながら、このようなシクロアルキル基含有単量体をただ単に混合して合成したエマルションを塗料用バインダーとして用いた場合、当該単量体の疎水性により、造膜助剤等が塗膜形成後も塗膜中に存在する場合が多く耐汚染性に劣る傾向があり、また、耐クラック性にも劣る傾向等があり、塗膜物性に悪影響を与えるおそれがあった。
【0005】
【特許文献1】特開平6−122734号公報
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、特定量のシクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基を有するモノマーを含有し、かつ、特定の種類及び特定量、特定ガラス転移温度のエチレン性不飽和モノマーを含有するモノマー群を2段階重合することにより、優れた耐水性、耐候性、耐汚染性と、耐クラック性を兼ね備えたエマルションが安定して製造できることを見出し、本発明の完成に至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明のエマルションの製造方法により得られたエマルションは、優れた耐水性、耐候性、耐汚染性、耐クラック性を兼ね備えており、高耐候性の塗料用のバインダーとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を、実施するための最良の形態とともに詳細に説明する。
1.エチレン性不飽和モノマーを2段階重合して得られるエマルションの製造方法であって、
1段目に使用するエチレン性不飽和モノマーが、カルボニル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、アルキレンオキサイド鎖含有モノマーから選ばれる1種以上の非イオン性親水性モノマーを含有し、
1段目に使用するエチレン性不飽和モノマー全量のうち、非イオン性親水性モノマーの重量比率が1重量%以上15重量%以下であり、
1段目に使用する非イオン性親水性モノマーの重量比率よりも、2段目に使用する非イオン性親水性モノマーの重量比率のほうが小さく、
2段目に使用するエチレン性不飽和モノマーの重合体のガラス転移温度よりも、1段目に使用するエチレン性不飽和モノマーの重合体のガラス転移温度のほうが20℃〜100℃高く、1段目及び2段目で使用する全エチレン性不飽和モノマーの重合体のガラス転移温度が−40℃以上80℃以下、
1段目及び/または2段目にシクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基含有モノマーを含有し、その重量比率が、1段目及び2段目で使用する全エチレン性不飽和モノマーの10重量%以上であることを特徴とするエマルションの製造方法。
2.1.に記載の製造方法により得られるエマルションをバインダーとする塗料。
【0009】
本発明のエマルションの製造方法は、エチレン性不飽和モノマーを2段階重合(好ましくは2段階乳化重合)して得られることを特徴とするものであって、
1段目に使用するエチレン性不飽和モノマーが、カルボニル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、アルキレンオキサイド鎖含有モノマーから選ばれる1種以上の非イオン性親水性モノマー(以下、単に、「非イオン性親水性モノマー」ともいう。)を含有し、
1段目に使用するエチレン性不飽和モノマー全量のうち、非イオン性親水性モノマーの重量比率が1重量%以上15重量%以下であり、
2段目に使用するエチレン性不飽和モノマーとしては、非イオン性親水性モノマーを含まないか、あるいは、1種以上を含む場合は1段目に使用する非イオン性親水性モノマーの重量比率よりも、2段目に使用する非イオン性親水性モノマーの重量比率が小さく、
2段目に使用するエチレン性不飽和モノマーの重合体のガラス転移温度よりも、1段目に使用するエチレン性不飽和モノマーの重合体のガラス転移温度のほうが20℃〜100℃高く、1段目及び2段目で使用する全エチレン性不飽和モノマーの重合体のガラス転移温度が−40℃以上、1段目及び/または2段目にシクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基含有モノマーを含有し、その重量比率が、1段目及び2段目で使用する全エチレン性不飽和モノマーの10重量%以上であることを特徴とする。
【0010】
なお、非イオン性親水性モノマーの重量比率とは、それぞれの段階で使用するエチレン性不飽和モノマー全量のうち、非イオン性親水性モノマー(カルボニル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、アルキレンオキサイド鎖含有モノマー)の合計量の重量比率のことである。
【0011】
このような製造方法により得られるエマルションは、優れた耐水性、耐候性、耐汚染性を兼ね備えており、さらに耐クラック性にも優れていることを特徴とする。
本発明では特に、シクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基含有モノマーを特定量含有することにより、耐水性、耐候性の性能を向上させるとともに、非イオン性の親水性モノマーを特定量、特定比率で2段階重合させることにより、耐汚染性、耐クラック性の性能を向上させたものである。
【0012】
その理由は明らかではないが、1段目で使用する非イオン性の親水性モノマーよりも、2段目で使用する非イオン性の親水性モノマーの重量比率を少なくすることによって、2段目で使用するエチレン性不飽和モノマーは、1段目で重合したエマルション粒子の表層や内部で重合が進行しやすくなる。その結果、新たな粒子(2段目のモノマーだけで重合した粒子)の生成を抑制し、均一な粒子が合成でき、上記性能を有するエマルションが得られるものと考えられる。
【0013】
1段目に使用するエチレン性不飽和モノマーとしては、上記条件を満たすかぎり、特に限定されることはないが、非イオン性親水性モノマーを含有し、1段目に使用するエチレン性不飽和モノマー全量のうち、非イオン性親水性モノマーの重量比率が1重量%以上15重量%以下(好ましくは1.2重量%以上12重量%以下、さらに好ましくは1.5重量%以上10重量%以下)であることを特徴するものである。
非イオン性親水性モノマーの重量比率が1重量%より少ない場合は、エマルションの重合安定性に劣る場合があり、また耐クラック性、耐汚染性、クリヤー性、耐水性に劣る場合がある。非イオン性親水性モノマーの重量比率が15重量%より多い場合は、形成塗膜の耐水性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0014】
カルボニル基含有モノマーとしては、例えば、ジアセトン(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アクロレイン、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニル(イソ)ブチルケトン、アセトニルアクリレート、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、2ーヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、タンジオールアクリレートアセチルアセテート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル等が挙げられる。
【0015】
ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール―ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコール―ポリプロピレングリコールアリルエーテル、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0016】
アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクロイルピロリジン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、ビニルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0017】
グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、ジグリシジルフマレート、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル、3,4−エポキシビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−ε−カプロラクトン変性グリシジル、(メタ)アクリル酸−β−メチルグリシジル等が挙げられる。
【0018】
アルキレンオキサイド鎖含有モノマーとしては、(メトキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコールアリルエーテル、(メトキシ)ポリプロピレングリコールアリルエーテル、(メトキシ)ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル等が挙げられる。
【0019】
本発明では、非イオン性親水性モノマーのうち、特に、カルボニル基含有モノマー、グリシジル基含有モノマーのうち1種以上含有することが好ましい。このようなモノマーを用いることにより、耐水性がより向上し好ましい。
また、エチレン性不飽和モノマーが、カルボニル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、アルキレンオキサイド鎖含有モノマーのうち1種以上を含有し、該官能基と反応可能な官能基を含有するモノマーあるいは化合物を添加することにより、耐水性を高めることもできる。
例えば、カルボニル基含有モノマーを使用する場合には、カルボニル基と反応可能な官能基であるヒドラジド基、アミノ基等を含有するモノマーあるいは化合物を共重合または後添加することによって、耐水性等を高めることもできる。
また、グリシジル基含有モノマーを使用する場合には、グリシジル基と反応可能な官能基であるカルボキシル基、アミノ基等を含有するモノマーあるいは化合物を共重合または後添加することによって、耐水性等を高めることができ好ましい。
【0020】
シクロアルキル基含有モノマーとしては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
t−アルキル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸トリプロピルメチル、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルメチル、(メタ)アクリル酸トリブチルメチル、(メタ)アクリル酸トリイソブチルメチル、(メタ)アクリル酸トリt−ブチルメチル、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
1段目に使用するエチレン性不飽和モノマーとしては、この他に、
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸、けい皮酸等のカルボキシル基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸アミノブチル、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p−アミノスチレン、(メタ)アクリル酸−N−メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N−t−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノプロピル、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピロリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕モルホリン、4−〔N,N−ジメチルアミノ〕スチレン、4−〔N,N−ジエチルアミノ〕スチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のアミノ基含有モノマー;
アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;
メタクリロイルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;
プロピレン−1,3−ジヒドラジン及びブチレン−1,4−ジヒドラジンなどのヒドラジノ基含有モノマー;
ビニルオキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−プロペニル2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有モノマー;
アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル等のアセトアセトキシル基含有モノマー;
N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等のメチロール基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−i−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸n一アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸オキチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ドデセニル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−フェニルエチル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−4−メトキシブチル等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系モノマー;
スチレン、2−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル系モノマー;
スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸含有モノマー;
エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン等のその他のモノマー;
等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができ、上述したガラス転移温度の範囲で適宜設定することができる。
【0023】
本発明では、特に、1段目に使用するエチレン性不飽和モノマーのうち、カルボキシル基含有モノマーが重量比率で0.5重量%以上10重量%以下(好ましくは1重量%以上9重量%以下、さらに好ましくは1.5重量%以上8重量%以下)であることが好ましい。このような範囲であることにより、均一なエマルション粒子が得られやすく、また、重合安定性や形成塗膜の耐水性を高めることもできる。0.5重量%未満の場合、重合安定性に劣る傾向がある。また、カルボキシル基含有モノマーを含有することによって、エマルションの重合安定性等を向上させることができるが、10重量%より多くなると、耐水性等に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、1段目に使用するエチレン性不飽和モノマーのうち、シクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基含有モノマーの合計量が重量比率で10重量%以上95重量%以下(好ましくは15重量%以上90重量%以下、さらに好ましくは20重量%以上85重量%以下)であることが好ましい。10重量%以上95重量%以下であることにより、形成塗膜の耐水性、耐候性、耐クラック性の向上が期待できる。さらに、形成塗膜のクリヤー性、弾性塗膜への密着性の向上も期待できる。
【0024】
1段目の重合においては、上記エチレン性不飽和モノマーを、必要に応じ各種添加剤とともに、通常知られる重合法、例えば乳化重合法等によりエマルション粒子を製造すればよい。乳化重合法で製造した場合、特定大きさのエマルション粒子を簡便に製造することができ、1段目から2段目の重合へ連続して行うことができるため、製造過程が簡略化でき好ましい。
【0025】
添加剤としては、水、乳化剤、開始剤、溶剤、分散剤、乳化安定化剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、架橋剤、pH調整剤、連鎖移動剤、触媒等が挙げられ、各種重合法、目的に応じ、必要量添加すればよい。
【0026】
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両イオン性乳化剤、反応性乳化剤等特に限定されず、用いることができる。
例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩、ロジン酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルスルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル(アリール)硫酸エステル塩等のアニオン性乳化剤、
ラウリルトリアルキルアンモニウム塩、ステアリルトリアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩、第1級〜第3級アミン塩、ラウリルピリジニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、或は、ラウリルアミンアセテート等のカチオン性界面活性剤、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等のノニオン性界面活性剤、
カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸型、イミダゾリン誘導体型等の両性界面活性剤、
エレミノールJS−2(三洋化成工業製)、エレミノールRS−30(三洋化成工業製)、ラテムルS−180A(花王製)、アクアロンHS−05(第一工業製薬製)、アクアロンRN−10(第一工業製薬製)、アデカリアソープSE−10N(旭電化製)等の反応性乳化剤等が挙げられる。
本発明では、特に、凍結安定性の面からポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性乳化剤や、ノニオン性乳化剤の使用が好ましい。また耐水性等の面から反応性乳化剤の使用が好ましい。
【0027】
開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4’−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド等の過酸化系開始剤、レドックス開始剤、光重合開始剤、反応性開始剤等を用いることができる。
【0028】
重合温度としては、特に限定されないが、20℃から90℃程度であればよい。
【0029】
2段目に使用するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、上記した1段目に使用するエチレン性不飽和モノマー等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
2段目に使用するエチレン性不飽和モノマーは、非イオン性親水性モノマーを含まないか、あるいは、非イオン性親水性モノマーのうち1種以上を含む場合は、1段目に使用する非イオン性親水性モノマーの重量比率よりも、2段目に使用する非イオン性親水性モノマーの重量比率が小さい(好ましくは0.1重量%以上10重量以下、さらに好ましくは0.5重量%以上5重量以下)ことを特徴とする。
【0030】
具体的には、2段目に使用する非イオン性親水性モノマーの合計量(重量比率)は、1段目に使用する非イオン性親水性モノマーの合計量(重量比率)の80%以下、好ましくは60%以下とすることが好ましい。
【0031】
2段目に使用する非イオン性親水性モノマーのうち、特に、カルボニル基含有モノマー、グリシジル基含有モノマーのうち1種以上を含有することが好ましい。このようなモノマーを用いることにより、耐水性がより向上するため好ましい。
特に、2段目に使用するエチレン性不飽和モノマーのうち、カルボニル基含有モノマーを使用する場合には、カルボニル基と反応可能な官能基であるヒドラジド基、アミノ基等を含有するモノマーあるいは化合物を共重合または後添加することによって、耐水性等を高めることができる。
また、2段目に使用するエチレン性不飽和モノマーのうち、グリシジル基含有モノマーを使用する場合には、グリシジル基と反応可能な官能基であるカルボキシル基、アミノ基等を含有するモノマーあるいは化合物を共重合または後添加することによって、耐水性等を高めることができ好ましい。
【0032】
本発明では、特に、2段目に使用するエチレン性不飽和モノマーのうち、カルボキシル基含有モノマーが重量比率で0.5重量%以上10重量%以下(好ましくは1重量%以上9重量%以下、さらに好ましくは1.5重量%以上8重量%以下)であることが好ましい。このような範囲であることにより、均一なエマルション粒子が得られやすく、また、重合安定性や形成塗膜の耐水性を高めることもできる。0.5重量%未満の場合、重合安定性に劣る傾向がある。また、カルボキシル基含有モノマーを含有することによって、エマルションの重合安定性等を向上させることができるが、10重量%より多くなると、耐水性に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、2段目に使用するエチレン性不飽和モノマーのうち、シクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基含有モノマーの合計量が重量比率で5重量%以上80重量%以下(好ましくは10重量%以上70重量%以下、さらに好ましくは15重量%以上60重量%以下)であることが好ましい。5重量%以上80重量%以下であることにより、形成塗膜の耐水性、耐候性、耐クラック性の向上が期待できる。さらに、形成塗膜のクリヤー性、弾性塗膜への密着性の向上も期待できる。
【0033】
2段目における重合では、1段目で得られたエマルション粒子の存在下で乳化重合法(シード乳化重合法)で製造することが好ましい。例えば、1段目で得られたエマルション粒子(シード粒子)、水、乳化剤等を含有するプレエマルションを予め作製しておき、2段目に使用するエチレン性不飽和モノマー(または2段目に使用するエチレン性不飽和モノマー、水、乳化剤等を含有するプレエマルション)を添加し、重合する方法等により、エマルションを製造することができる。
特に、1段目において、乳化重合法でエマルション粒子を製造した場合は、1段目で得られたエマルションに、2段目に使用するエチレン性不飽和モノマー(または2段目に使用するエチレン性不飽和モノマー、水、乳化剤等を含有するプレエマルション)を添加し、乳化重合することにより製造することができ、1段目から2段目へ連続して製造ができるため、製造過程が簡略化されるため好ましい。
【0034】
また、上記成分以外に、本発明の効果を阻害しない程度に、水、乳化剤、開始剤、溶剤、分散剤、乳化安定化剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、架橋剤、pH調整剤、連鎖移動剤等の添加剤を添加することもできる。
【0035】
重合温度としては、特に限定されないが、20℃以上90℃以下程度であればよい。
2段目の製造で得られるエマルションの平均粒子径は、特に限定されないが、50nm〜500nm(好ましくは60nm〜400nm、さらに好ましくは70nm〜300nm)であることが好ましい。500nmよりも大きい場合は、経時安定性、光沢、耐水性、耐候性が劣る恐れがある。
【0036】
1段目に使用するエチレン性不飽和モノマーと2段目に使用するエチレン性不飽和モノマーの比は、重量比率で、1:5〜5:1、さらには1:3〜3:1であることが好ましい。このような範囲であることにより、より優れた耐汚染性と耐クラック性の両立が可能である。このような範囲よりも1段目に使用するエチレン性不飽和モノマーが多い場合は、耐クラック性に劣る場合があり、このような範囲よりも2段目に使用するエチレン性不飽和モノマーが多い場合は、耐汚染性に劣る場合がある。
【0037】
1段目及び2段目に使用する全エチレン性不飽和モノマーのうち、1段目及び2段目に使用する全カルボキシル基含有モノマーが、重量比率で1重量%以上10重量%以下(好ましくは1.5重量%以上9重量%以下)であることが好ましい。10重量%以下であることにより、均一なエマルション粒子が得られやすく、また、形成塗膜の耐水性を高めることもできる。
【0038】
1段目及び2段目に使用する全エチレン性不飽和モノマーのうち、1段目及び/または2段目に使用するシクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基含有モノマーの合計量は、重量比率で10重量%以上(好ましくは10重量%以上95重量%以下、さらに好ましくは15重量%以上90重量%以下)である。10重量%以上であることにより、形成塗膜の耐水性、耐候性の向上が期待できる。さらに、形成塗膜のクリヤー性、弾性塗膜への密着性の向上も期待できる。
【0039】
本発明では、2段目に使用するエチレン性不飽和モノマーの重合体のガラス転移温度よりも、1段目に使用するエチレン性不飽和モノマーの重合体のガラス転移温度のほうが20℃〜100℃高いことを特徴とする。
1段目と2段目のガラス転移温度の差を20℃以上100℃以下に設定することにより、優れた耐水性、耐候性、耐汚染性、耐クラック性を発揮できる。このような範囲から外れる場合、耐水性、耐候性、耐汚染性、耐クラック性を確保することが困難となる。
具体的には2段目に使用するエチレン性不飽和モノマーの重合体のガラス転移温度は、−40℃以上20℃以下(さらには−30℃以上10℃以下、さらには−20℃以上5℃以下)であることが好ましい。
また1段目に使用するエチレン性不飽和モノマーの重合体のガラス転移温度は、10℃以上80℃以下(さらには15℃以上70℃以下、さらには20℃以上50℃以下)であることが好ましい。
【0040】
さらに、1段目に使用するエチレン性不飽和モノマー及び2段目に使用するエチレン性不飽和モノマーを重合して得られる重合体のガラス転移温度が−40℃以上80℃以下(好ましくは、−30℃以上60℃以下、さらに好ましくは−20℃以上50℃以下)である。このガラス転移温度は、本発明では、エマルションのトータルのガラス転移温度を表すものであり、−40℃以上80℃以下であることにより、特に常温において、より優れた造膜性と耐汚染性を両立することができる。トータルのガラス転移温度が−40℃未満の場合、耐汚染性が劣る場合があり、また、トータルのガラス転移温度が80℃より高い場合、造膜性に劣る場合がある。
【0041】
なお本発明のガラス転移温度は、フォックス(FOX)の式より計算される値である。例えば、モノマー(1)及びモノマー(2)からなる2成分系において、それぞれのホモポリマーのガラス転移点Tg(1)およびTg(2)が分かっている場合には、該モノマー(1)及び(2)の2成分からなる共重合体のガラス転移点Tgは、次式に示すフォックス(FOX)の式(2成分)により計算値として求めることができる。
1/Tg=W(1)/Tg(1)+W(2)/Tg(2)(但し、W(1)+W(2)=1)
W(1):モノマー(1)の重量分率、W(2):モノマー(2)の重量分率、Tg(1):モノマー(1)のホモポリマーのTg値(単位:K)、Tg(2):モノマー(2)のホモポリマーのTg値(単位:K)
本発明におけるポリマーのTg値は上記の式を多成分系に一般化した式により計算したものである。
【0042】
本発明で製造されたエマルションは、インク、接着剤、塗料・コーティング材料、プラスチック成形用材料等様々な分野で利用可能である。特に本発明では、塗料用のバインダーとして好適に用いることができる。
塗料用のバインダーとして用いた場合、優れた耐水性、耐候性、耐汚染性、耐クラック性を示す。
特に、2段目に使用するエチレン性不飽和モノマーの重合体のガラス転移温度が10℃以下であり、1段目に使用するエチレン性不飽和モノマーの重合体のガラス転移温度が30℃以上であることにより、優れた耐水性、耐候性、耐汚染性、耐クラック性を有する水性塗料を得ることができる。
【0043】
このような塗料は、上塗材として適用することができ、上述のエマルションをバインダーとし、必要に応じ通常用いられる公知の着色顔料、体質顔料、骨材、繊維、可塑剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤、粘性調整剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、抗菌剤、吸着剤、光触媒等を、単独あるいは併用して配合することにより得ることができる。さらに、適宜水を加えて粘度等を調整することもできる。
【0044】
例えば、着色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、酸化第二鉄、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、クロムグリーン、オーカー、群青、紺青、コバルトグリーン、コバルトブルー等の無機系着色顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の有機系着色顔料、パール顔料、アルミニウム顔料、金属又は金属酸化物をコーティングしたガラスフレークまたは樹脂フィルム、ホログラム顔料、コレステリック結晶ポリマー顔料等の光輝性顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。
【0045】
体質顔料としては、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土、寒水石、陶土、チャイナクレー、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、珪砂、珪石粉、石英粉、樹脂ビーズ、ガラスビーズ、中空バルーン等が挙げられる。
【0046】
本発明における塗料は、例えば、モルタル、コンクリート、石膏ボード、サイディングボード、押出成形板、スレート板、石綿セメント板、繊維混入セメント板、ケイ酸カルシウム板、ALC板、金属、木材、ガラス、陶磁器、焼成タイル、磁器タイル、プラスチック板、合成樹脂等の基材、あるいはこのような基材上に形成された塗膜(下塗材や既存塗膜等)等に対し適用することができる。
【0047】
塗料の塗装方法としては、特に限定されず公知の方法で塗装することができるが、塗料の形態の応じ、例えば、刷毛、スプレー、ローラー、鏝、へら等の各種塗装器具を用いた塗装や、ロールコーター、フローコーター等種々の方法により塗装することができる。また、塗料の塗付量は、各種用途にあわせて、適宜設定すればよい。
【実施例】
【0048】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にするが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0049】
(実施例1)
水38重量部、ドデシル硫酸ナトリウム1重量部、過硫酸アンモニウム0.2重量部と、表1の合成例1(1段目)に示す原料を各重量部で混合し、窒素雰囲気下80℃で3時間、乳化重合を行いエマルション(1段目)を得た。
次に、エマルション(1段目)64重量部に、水10重量部、ドデシル硫酸ナトリウム1重量部、過硫酸アンモニウム0.2重量部と、表1の合成例1(2段目)に示す原料を各重量部で混合したプレエマルションを、窒素雰囲気下80℃で2時間かけて添加し、シード乳化重合を行い、エマルションを得た。
以上の方法で得られたエマルションは、固形分50重量%であり、平均粒子径は120nmであった。
【0050】
次に、エマルション65重量部、二酸化チタンペースト(二酸化チタン含有量70重量%)30重量部、添加剤(造膜助剤、消泡剤、粘性調整剤)5重量部を常法にて均一に混合、攪拌し、水性塗料を製造した。この水性塗料を用いて、次の各種試験を行った。
【0051】
(光沢度測定)
ガラス板(150mm×150mm)に、すきま150μmのフィルムアプリケーターを用いて水性塗料を塗付し、標準状態で48時間乾燥させた後、光沢度計(日本電色工業株式会社製)を用いて、60度光沢を測定した。結果は表3に示す。
【0052】
(耐汚染試験)
光沢度測定を行った後、試験体に珪砂を散布し、温度50℃で静置した。3時間後、試験体を垂直にして珪砂を落下させ、残存する珪砂量を目視にて評価した。結果は表3に示す。
◎:残存率25%未満
○:残存率25以上50%未満
△:残存率50以上75%未満
×:残存率75%以上
【0053】
(耐水性試験)
スレート板(150mm×150mm)に、SKクリヤーシーラー(合成樹脂エマルション系シーラー、エスケー化研株式会社製)をスプレーで150g/m塗付し、標準状態で24時間養生させた後、水性塗料をスプレーにて300g/m塗付し、標準状態で14日間乾燥させた。耐水性試験では、14日間乾燥後、23℃の水に96時間浸漬し、96時間浸漬前後の光沢度を、光沢度計(日本電色工業株式会社製)にて測定し、光沢保持率を算出することによって評価した。評価は次の通りである。結果は表3に示す。
◎:光沢保持率90%以上
○:光沢保持率80以上以上90%未満
△:光沢保持率60以上以上80%未満
×:光沢保持率60%未満
【0054】
(耐湿潤冷熱繰返し性)
スレート板(150mm×150mm)に、SKクリヤーシーラー(合成樹脂エマルション系シーラー、エスケー化研株式会社製)をスプレーで150g/m塗付し、温度23℃、相対湿度50%(以下、「標準状態」ともいう。)で24時間養生させた後、水性塗料を刷毛にて300g/m塗付し、標準状態で14日間乾燥させ、試験体を得た。
作製した試験体をJIS K 5660 6.14に準じ、23±2℃の水中に18時間浸した後、直ちに−20±3℃に保った恒温槽にて3時間冷却し、次に50±3℃に保った別の恒温槽で3時間加温した。この操作を8回繰り返した後、標準状態に約24時間置いて、塗膜表面の状態を目視にて観察した。結果は表3に示す。
◎:塗膜の割れ数0
〇:塗膜の割れ数1〜5
△:塗膜の割れ数6〜10
×:塗膜の割れ数11以上
【0055】
(促進耐候性試験)
スレート板(150mm×150mm)に、SKクリヤーシーラー(合成樹脂エマルション系シーラー、エスケー化研株式会社製)をスプレーで150g/m塗付し、標準状態で24時間養生させた後、水性塗料をスプレーにて300g/m塗付し、標準状態で14日間乾燥させた。促進耐候性試験では、キセノンウェザーメーターで2000時間照射し、480時間照射前後の光沢度を、光沢度計(日本電色工業株式会社製)にて測定し、光沢保持率を算出することによって評価した。評価は次の通りである。結果は表3に示す。
◎:光沢保持率90%以上
○:光沢保持率80以上以上90%未満
△:光沢保持率60以上以上80%未満
×:光沢保持率60%未満
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
(実施例2)
表1の合成例2に示す配合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、エマルションを得、実施例1と同様の方法で水性塗料を製造した。
最終的に得られたエマルションは、固形分50重量%であり、平均粒子径は120nmであった。
得れらたエマルション、及びその水性塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
結果は表3に示す。
【0060】
(実施例3)
表1の合成例3に示す配合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、エマルションを得、実施例1と同様の方法で水性塗料を製造した。
最終的に得られたエマルションは、固形分50重量%であり、平均粒子径は122nmであった。
得れらたエマルション、及びその水性塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
結果は表3に示す。
【0061】
(実施例4)
表1の合成例4に示す配合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、エマルションを得、実施例1と同様の方法で水性塗料を製造した。
最終的に得られたエマルションは、固形分50重量%であり、平均粒子径は122nmであった。
得れらたエマルション、及びその水性塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
結果は表3に示す。
【0062】
(比較例1)
表2の合成例5に示す配合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、エマルションを得、実施例1と同様の方法で水性塗料を製造した。
最終的に得られたエマルションは、固形分50重量%であり、平均粒子径は119nmであった。
得れらたエマルション、及びその水性塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
結果は表3に示す。
【0063】
(比較例2)
表2の合成例6に示す配合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、エマルションを得、実施例1と同様の方法で水性塗料を製造した。
最終的に得られたエマルションは、固形分50重量%であり、平均粒子径は119nmであった。
得れらたエマルション、及びその水性塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
結果は表3に示す。
【0064】
(比較例3)
表2の合成例7に示す配合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、エマルションを得、実施例1と同様の方法で水性塗料を製造した。
最終的に得られたエマルションは、固形分50重量%であり、平均粒子径は120nmであった。
得れらたエマルション、及びその水性塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
結果は表3に示す。
【0065】
(比較例4)
表2の合成例8に示す配合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、エマルションを得、実施例1と同様の方法で水性塗料を製造した。
最終的に得られたエマルションは、固形分50重量%であり、平均粒子径は121nmであった。
得れらたエマルション、及びその水性塗料を用いて、実施例1と同様の試験を行った。
結果は表3に示す。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和モノマーを2段階重合して得られるエマルションの製造方法であって、
1段目に使用するエチレン性不飽和モノマーが、カルボニル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、アルキレンオキサイド鎖含有モノマーから選ばれる1種以上の非イオン性親水性モノマーを含有し、
1段目に使用するエチレン性不飽和モノマー全量のうち、非イオン性親水性モノマーの重量比率が1重量%以上15重量%以下であり、
1段目に使用する非イオン性親水性モノマーの重量比率よりも、2段目に使用する非イオン性親水性モノマーの重量比率のほうが小さく、
2段目に使用するエチレン性不飽和モノマーの重合体のガラス転移温度よりも、1段目に使用するエチレン性不飽和モノマーの重合体のガラス転移温度のほうが20℃〜100℃高く、1段目及び2段目で使用する全エチレン性不飽和モノマーの重合体のガラス転移温度が−40℃以上80℃以下、
1段目及び/または2段目にシクロアルキル基含有モノマー及び/またはt−アルキル基含有モノマーを含有し、その重量比率が、1段目及び2段目で使用する全エチレン性不飽和モノマーの10重量%以上であることを特徴とするエマルションの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法により得られるエマルションをバインダーとする塗料。



【公開番号】特開2007−131650(P2007−131650A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322931(P2005−322931)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】