説明

エマルションをプラグ流に変化させる方法及びそのためのマイクロ流路

【課題】マイクロ流路内において、公知の方法よりも安定に、かつ、高い抽出効率で抽出操作を行うことを可能にする手段を提供すること。
【解決手段】マイクロ流路内で、エマルション状態で抽出操作を行えば、微小な液滴は単位体積当たりの表面積が大きいので、液体全体の単位体積当たりの他相との接触面積を公知の平行流の場合よりも大きくすることができ、抽出効率を向上させることができる。途中で内表面の濡れ性が変化しているマイクロ流路にエマルションを流通させることにより、エマルションをプラグ流(流路全体をそれぞれ塞ぐ油相の塊と水相の塊が交互に流れる)に変化させる。プラグ流が生成する部位よりも下流に、マイクロ流路よりも浅い親水性又は疎水性のチャネル部を介して接続される分岐マイクロ流路を設けることにより、生成されたプラグ流の水相又は油相のみを、チャネル部を介して分岐マイクロ流路に導くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルションをプラグ流に変化させる方法及びそのためのマイクロ流路並びにそれを利用したエマルションを含む二相流れの油水分離方法及び複数の覚醒剤の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化学プロセスを微小化し、様々な操作を集積化したマイクロ流体デバイスが盛んに研究され、急速な発展を遂げている。マイクロ流体デバイスでは、微細な流路であるマイクロ流路内で種々の反応が行なわれる。このような化学プロセスの微小化は、従来のバルクスケールの化学システムに対して多くの利点が見出されている。すなわち、分析時間、試料、労働力、場所、エネルギーなど、あらゆるリソースの削減を可能とする。さらに、スケールダウンに伴い廃棄物量も抑制される。
【0003】
汎用される化学プロセスの1つとして、抽出操作がある。例えば、水相に含まれる有機化合物を油相に抽出する等の操作である。このような抽出操作をマイクロ流路において行うことができる方法を本願発明者らは開発した(特許文献1、非特許文献1、2)。この方法では、マイクロ流路と平行して、該マイクロ流路よりも浅いマイクロ流路を配置し、この2本のマイクロ流路に、2相を平行して流し、2相が互いに接触しながら流れていく過程で抽出が行なわれる。
【0004】
しかしながら、この方法では、平行流が何らかの原因で崩れてしまうと、平行流を回復させることはできず、プロセス全体を停止する必要が生じる。また、上記方法よりも抽出効率が高い方法がもしあれば有利であることは言うまでもない。
【0005】
また、表面の濡れ性を利用して油水混合物の油水分離を行なう方法として、ガラス板と、表面をテフロン(登録商標)加工した板との間の間隙にエマルションを流す方法も知られている(非特許文献3)。しかしながら、この方法では、エマルションの完全な油水分離を行なうことは困難であり、マイクロ流路に適用することも困難である。
【0006】
【特許文献1】特開2005-169386号公報
【非特許文献1】Surface Modification Method of Microchannels for Gas-Liquid Two Phase Flow in Microchips, A. Hibara, S. Iwayama, S. Matsuoka, M. Ueno, Y. Kikutani, M. Tokeshi, T. Kitamori, Anal. Chem., 77(3), 943-947 (2005).
【非特許文献2】S. Matsuoka, K. Hosoda, M. Ueno, A. Hibara, T. Kitamori, Phase separation of organic-aqueous droplet and segmented mixed phase flow by using a capillarity restricted surface modification, Proc. MicroTAS2005, 1143-1145.
【非特許文献3】Yoshihito Okubo, Masaaki Toma, Hiroshi Ueda, Taisuke Maki, Kazuhiro Mae, Chemical Engineering Journal, 101, 39-48 (2004).
【非特許文献4】A. Hibara, S, Iwayama, S. Matsuoka, M. Ueno, Y. Kikutani, M. Tokeshi, T. Kitamori, Anal. Chem., 77, 943(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、マイクロ流路内において、公知の方法よりも安定に、かつ、高い抽出効率で抽出操作を行うことを可能にする手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、マイクロ流路内で、エマルション状態で抽出操作を行えば、微小な液滴は単位体積当たりの表面積が大きいので、液体全体の単位体積当たりの他相との接触面積を公知の平行流の場合よりも大きくすることができ、抽出効率を向上させることができることに想到した。しかしながら、マイクロ流路内でエマルションを油水分離する方法は知られていない。
【0009】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、途中で内表面の濡れ性が変化しているマイクロ流路にエマルションを流通させることにより、エマルションをプラグ流(流路全体をそれぞれ塞ぐ油相の塊と水相の塊が交互に流れる)に変化させることができることを見出した。さらに、該プラグ流が生成する部位よりも下流に、前記マイクロ流路よりも浅い親水性又は疎水性のチャネル部を介して接続される分岐マイクロ流路を設けることにより、生成された前記プラグ流の水相又は油相のみを、前記チャネル部を介して前記分岐マイクロ流路に導くことができることを見出し、プラグ流の油水分離に成功し、ひいては、マイクロ流路内でのエマルションの油水分離に成功し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、途中で内表面の濡れ性が変化しているマイクロ流路にエマルションを流通させることを含む、エマルションをプラグ流に変化させる方法を提供する。また、本発明は、上記本発明の方法において、前記マイクロ流路は、前記プラグ流が生成する部位よりも下流に、該マイクロ流路よりも浅い親水性又は疎水性のチャネル部を介して接続される分岐マイクロ流路を具備し、上記本発明の方法により生成された前記プラグ流の水相又は油相のみを、前記チャネル部を介して前記分岐マイクロ流路に導くことを含む、プラグ流の油水分離方法を提供する。さらに、本発明は、途中で内表面の濡れ性が変化している、エマルションをプラグ流に変化させるためのマイクロ流路を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、マイクロ流路内で、エマルションをプラグ流に変化させる方法及び該プラグ流を油水分離する方法並びにそのためのマイクロ流路が初めて提供された。本発明のエマルションをプラグ流に変化させる方法及びそれに続く油水分離方法によれば、マイクロ流路内のエマルションを油水分離することが可能になる。このため、公知の平行流を用いた抽出方法よりも、抽出効率を向上させることができる。さらに、エマルションは、公知の平行流を用いる方法とは異なり、それ以上崩れることがないので、安定に抽出操作を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の方法で用いるマイクロ流路自体(後述する内表面の濡れ性の要件を除く)は、何ら限定されるものではなく、周知のマイクロ流体デバイスに含まれているいずれのマイクロ流路であってもよい。例えば、広く用いられている、ガラス基板内にエッチングにより形成されたマイクロ流路等を採用することができる。エッチングは、パターニングしたマスクを用いたウェットエッチング等の常法により行なうことができる。マイクロ流路の幅及び深さは、特に限定されず、従来と同様でよく、通常、幅が10μm〜1000μm、深さが1μm〜300μm程度である。また、長さは、目的とする反応や他の処理を行なうのに望まれる長さであり、通常、数mm〜十数cmである。マイクロ流路を設ける基板は、化学プロセスに供される反応物質や生成物と反応しないものであれば特に限定されず、通常、ガラスが用いられる。マイクロ流路の頂部は、通常、ガラス板などを基板に積層することにより被覆される。マイクロ流路の断面形状は、特に限定されないが、基板内にエッチングによりマイクロ流路を形成する場合には、かまぼこ形(図4参照)になる場合が多い。
【0013】
上記の通り、本発明の方法では、途中で内表面の濡れ性が変化しているマイクロ流路を用いる。ここで、「濡れ性が変化する」程度は、エマルション中の液滴が合一してプラグ流が生じる程度であれば特に限定されないが、好ましくは、マイクロ流路を構成するガラス等の材質に親水処理及び疎水処理をそれぞれ行なうことにより濡れ性を変化させる。なお、プラグ流は、流路全体をそれぞれ塞ぐ油相の塊と水相の塊が交互に流れる流れ(図1参照)である。
【0014】
親水処理後の表面の水に対する接触角は、通常、0度〜20度、好ましくは、0度〜5度程度である。親水処理は、公知の方法により行なうことができ、例えば、0.1M〜2M程度、好ましくは0.8M〜1.2M程度の水酸化ナトリウム水溶液をマイクロ流路内の所定領域に通常、1時間〜6時間程度、好ましくは2時間〜4時間程度満たすことにより行なうことができる。親水処理としては、この他に、例えば、空気プラズマや酸素プラズマを用いた処理やアミノ基やカルボキシル基の極性官能基をもつ表面修飾剤による化学修飾および物理修飾等を挙げることができる。一方、疎水処理後の表面の水に対する接触角は、通常、90度〜170度、好ましくは、100度〜170度程度である。疎水処理は、公知の方法により行なうことができ、例えば、n-オクタデシルトリクロロシラン(ODS)等のハロゲン置換またはメトキシ基置換、エトキシ基置換を有する長鎖アルキル(炭素数は通常8〜30)シランの溶液をマイクロ流路内の所定領域に通常、5分間〜30分間程度、好ましくは10分間〜20分間程度満たすことにより行なうことができる。この際のODS溶液の濃度は、通常、0.5%(v/v)〜2%(v/v)程度、好ましくは0.8%(v/v)〜1.2%(v/v)程度である。溶媒としては、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒等が通常用いられる。疎水処理としては、この他に、テフロン(登録商標)加工、撥水性樹脂の物理修飾や表面重合による撥水性高分子形成等の公知の方法を採用することができる。また、表面をTiO2ナノ粒子で処理すると親水性となり、これを上記の通りODS等で処理すると接触角が170度程度の超撥水性となるので、これらを親水処理及び疎水処理として採用することができる。さらに、TiO2表面をODSで処理した後、紫外線を照射すると紫外線を照射した部分のみが光触媒作用により親水性に変化するので、全体が疎水性のマイクロ流路の所定の部分のみを選択的に親水性に変化させることができる。この場合の紫外線の照射量は、通常、1〜20J/cm2程度でよい。また、上記の通りODS等で疎水処理した後、上記の通り水酸化ナトリウム水溶液を作用させることによっても親水処理することができる。ただし、この場合の処理時間は、通常、36時間〜144時間程度必要であり、好ましくは48時間〜96時間程度である。この方法により、ODSで疎水処理したマイクロ流路の一部分のみに水酸化ナトリウム水溶液を作用させることにより、疎水部分中に選択的に親水処理を行なうことができる。
【0015】
なお、上記親水処理及び疎水処理は、マイクロ流路の所定領域の内表面の全周に渡って行なうことが好ましいが、エマルションからプラグ流が生じる限り、全周の一部のみに処理を行なってもよく、例えば、側壁面と底面のみに処理を行なうことも可能である。
【0016】
濡れ性の変化は、液の流通方向において、上流側を親水性、下流側を疎水性としても、その逆でもよいが、より安定にプラグ流を生成させる観点から前者がより好ましい。流通させるエマルションもO/WエマルションでもW/Oエマルションでもよいが、より安定にプラグ流を生成させる観点からO/Wエマルションが好ましく、特に、上流側が親水性、下流側が疎水性であるマイクロ流路にO/Wエマルションを流すことが好ましい。なお、後述のように、生成したプラグ流を油水分離する操作を行う場合等のように、一旦、プラグ流を生じさせれば、その後の濡れ性をさらに反転させてもよい。例えば、上流側が親水性、下流側が疎水性であるマイクロ流路において、プラグ流が発生する部位よりも下流を親水性としてもよい。すなわち、例えば、全体が親水性のマイクロ流路のうち、プラグ流を生じさせる部分のみを疎水性にしてもよい。
【0017】
本発明の方法により、エマルションがプラグ流に変化する原理を、図1に基づき、上流側が親水性、下流側が疎水性であるマイクロ流路にO/Wエマルションを流した場合を例として説明する。
【0018】
図1に示すように、マイクロ流路10内にO/Wエマルションを流す。マイクロ流路内に液体を流通させることは、従来と同様、マイクロ流路の端部からシリンジポンプ等により、所望の流量で液体を送り込むことにより行なうことができる。流量を調節することにより、流速を調節することができるので、所望の抽出時間を達成することができる。12は親水処理した部分、14は疎水処理した部分である。エマルションは、親水部分では、安定にエマルションとして存在するが(図1A)、疎水部分に入ると、エマルション中の油滴が、疎水性の内表面に付着する(図1B)。そして、この状態でさらに後続のエマルションが流れてくると、エマルション中の油滴が、内表面に付着している油相と合一し(図1B)、さらに、次々と油滴が合一して、内表面に付着している油相が成長し(図1C)、やがては流路の全周を塞ぐ塊(プラグ)となり、塊の状態で流れていく(プラグ流、図1D)。なお、生じた油相の塊同士の間は、水相であるから、プラグ流では、流路全体をそれぞれ塞ぐ油相の塊と水相の塊が交互に流れていく。
【0019】
さらに、図2に示すように、濡れ性の境界部分よりも下流にくびれ部を設けると、液滴の合一がより効率的に起き、プラグ流がより安定、確実に生成するので好ましい。すなわち、くびれ部では、流路の内径が小さくなっているので、図1Bに示す液滴の合一及び図1Cに示す、内表面に付着した液滴の成長がより起きやすくなる。くびれ部のくびれの程度は、特に限定されないが、液滴の合一、成長が促進され、かつ、流速を不所望な程度にまで下げないという観点から、最もくびれている部分の内径を、くびれていない部分の内径の5%〜50%程度、さらに好ましくは、10%〜30%程度にすることが好ましい。
【0020】
本発明の方法では、予め別の場所で調製したエマルションを、上記したマイクロ流路に流してもよいが、水相と液相から、マイクロ流路内でエマルションを生成させ、生成したエマルションを上記本発明の方法に供してもよい。この場合、例えば、図3に示すように、マイクロ流路10の上流に、2本の支流マイクロ流路16、18が細いチャネル部20を介して合流した流路が設けられており、前記エマルションは、該2本の支流マイクロ流路16、18のうちの1本(図3では支流マイクロ流路18)に水相を流し、他の1本(図3では支流マイクロ流路16)に油相を流すことにより生成させることができる。細いチャネル部の幅は、エマルションが生成する幅であれば特に限定されないが、エマルションを効率良く生成させ、かつ、流速を不所望な程度にまで下げないという観点から、通常、20μm〜100μm程度、好ましくは40μm〜60μm程度である。また、細いチャネル部の深さも同様に浅くすることが好ましく、上記した幅の5%〜70%程度の深さとすることが好ましい。また、エマルションを効率良く生成させる観点から、上記細いチャネル部20は、親水処理又は疎水処理されていることが好ましい。親水処理がされている場合には、O/Wエマルションが生成し、疎水処理されている場合にはW/Oエマルションが生成する。
【0021】
親水処理したチャネル部を用いる上記方法により、エマルションが生成する原理を図4に基づき説明する。親水処理後のチャネル部の断面を図4Aに示す。図4Aに示されるように、チャネル部20の全周が親水膜(水のぬれ膜)22により被覆される。このようなチャネル部に上記した2本の支流マイクロ流路16、18からの水相と油相の混合物が流れてくると、チャネル部20の内表面が親水処理されているので、図4B中の左側に示すように、マイクロ流路の内表面と接する外側に水相が流れ、油相は内側を流れる。そして、チャネル部と通常のマイクロ流路の境界部において、内部を流れる油相がせん断され、油滴が生じ、O/Wエマルションが生成する。チャネル部が疎水処理されている場合には、全く同様にしてW/Oエマルションが生成する。
【0022】
あるいは、前記マイクロ流路の上流に、細いチャネル部を介して合流する支流マイクロ流路を設け、マイクロ流路の上流から水相又は油相を流し、前記支流マイクロ流路にはこれとは異なる相を流すことによりエマルションを生成することも可能である。原理は上記と同様であり、従って、細いチャネル部は、親水処理又は疎水処理をしておくことが好ましく、親水処理がされている場合には、O/Wエマルションが生成し、疎水処理されている場合にはW/Oエマルションが生成する。
【0023】
なお、上記したマイクロ流路内でのエマルションの生成方法も本願発明者らが独自に開発したものであり、従って、本発明は、上記したマイクロ流路内でのエマルションの生成方法をも提供するものである。
【0024】
本願発明者らは、上記本発明の方法により生成したプラグ流を油水分離する方法をも独自に開発した。マイクロ流路内で、気体を含む液体流れを気液分離する方法として、マイクロ流路と平行して、疎水性の浅いマイクロ流路を設けることが知られている(非特許文献4)。しかしながら、非特許文献3記載の方法を、上記本発明の方法により生成されたプラグ流に転用して油水分離を行なおうとしても、浅いマイクロ流路に油相は流れていかなかった。
【0025】
マイクロ流路から浅いチャネルに液体が流れていく際には、ラプラス圧による抵抗を受ける。ラプラス圧はYoung-Laplace の式により以下のように示される。
【0026】
【数1】

【0027】
γは界面張力、R はメニスカスの曲率半径である。つまり、チャネルが浅いほど、大きなラプラス圧が働くことになる。気体と液体の分離の場合、気体のみが浅いチャネルに流れ液体はラプラス圧による抵抗のため浅いチャネルに侵入できない。浅いチャネルに液体が流れていくためには、液体がこのラプラス圧に打ち勝つ必要がある。また液体を別の液体と分離する場合にも上記と同様の原理が働くが、浅いチャネルを気体ではなく液体が流れるためには、気体の場合には無視できた圧力損失が油の流れにより働くため、油が浅い流路に入っていかない。本願発明者らは、鋭意研究の結果、液体が浅いチャネルに侵入する際の圧力損失を小さくすることにより、マイクロ流路から浅いチャネルに液体が侵入していくかもしれないことに想到した。すなわち、まず、このマイクロチップを流体が流れるときの圧力損失を計算した。計算にはHagen-Poiseuille の式を用いた。
【0028】
【数2】

【0029】
μは粘度、L は管長、u は平均流速、D は管径である。今回用いるマイクロチャネルの断面は円ではないため、管径には、次の式により水力学的円相当径を用いた。
【0030】
【数3】

【0031】
S は断面積、l は管周長である。
【0032】
ラプラス圧を稼ぐためには、チャネルを浅くする必要がある。しかし、圧力損失を低減するためには、チャネルを太くしなければならない。この背反する両者の特長を併せ持つ構造として、二本のマイクロ流路を浅いチャネルで接続する構造を考案し、作製した(図 5)。図5のAは、実際に試作した試作品の写真(平面図)であり、図5Bは、図5A中のS−S’線切断部端面図である。図示の通り、マイクロ流路10と、分岐マイクロ流路24が、浅いチャネル部26を介して接続されている。図5Bに示される通り、試作品のマイクロ流路10及び分岐マイクロ流路24の深さは100μmであり、それらを連通する浅いチャネル部26の深さは10μmである。このような構造では、浅いチャネル部26の先に、浅いチャネル部26よりもずっと深い分岐マイクロ流路24が接続されているため、浅いチャネル部26に侵入する液体の圧力損失が小さくなり、浅いチャネル部26を介して液体が分岐マイクロ流路24に流れる。
【0033】
チャネル部26は親水性でも疎水性でもよく、親水性にすれば水相がチャネル部26を介して分岐マイクロ流路24に流れ、疎水性にすれば油相がチャネル部26を介して分岐マイクロ流路24に流れる。水相を分岐マイクロ流路24に導く場合、当然ながら、分岐マイクロ流路24は親水性にすることが好ましく、チャネル26との接続部位よりも下流のマイクロ流路10は疎水性にすることが好ましい。同様に、油相を分岐マイクロ流路24に導く場合、分岐マイクロ流路24は疎水性にすることが好ましく、チャネル26への接続部位よりも下流のマイクロ流路10は親水性にすることが好ましい。また、マイクロ流路10は、チャネル26と接続する側の壁面の全部又は一部のみをチャネル部26と同じ濡れ性にしてもよい。このような部分的な親水処理又は疎水処理は、マイクロ流路と平行する浅い流路をマイクロ流路に接触して設け、この浅いマイクロ流路に処理剤を流通させる、本願発明者らが先に開発した方法(特許文献1)により達成することができる。
【0034】
浅いチャネル部26を介して2本のマイクロ流路を接続する、図5に示す構造において、チャネル部26の深さは、上記した各理論式からわかるが、同じ深さの2本のマイクロ流路を接続する場合、チャネル部26の深さは、通常、該マイクロ流路の深さの5%〜20%、好ましくは7%〜15%程度である。また、チャネル部26の幅は、特に限定されないが、通常、50μm〜200μm程度、好ましくは70μm〜150μm程度である。また、チャネル部26の長さは、特に限定されないが、通常、0.1mm〜20mm程度、好ましくは1mm〜4mm程度である。
【0035】
上記した、マイクロ流路に浅いチャネル部を介して分岐マイクロ流路を接続することにより、マイクロ流路内を流れるプラグ流の水相又は油相のみを分岐マイクロ流路に導く方法は、本願発明者らが独自に開発した方法であり、従って、本発明は、上記したプラグ流の油水分離方法をも提供するものである。
【0036】
以上、述べた通り、本発明の好ましい態様では、水相と油相から、単一のマイクロチップの連続するマイクロ流路において、エマルションの生成及びエマルション状態での抽出操作、並びにその後のエマルションの油水分離までを行なうことができ、高効率の抽出操作を極めて簡便に行うことができる。
【0037】
本発明はまた、上記本発明の方法に用いられる、上記マイクロ流路自体をも提供するものである。
【0038】
上記本発明の方法により、エマルション状態で抽出操作を行い、エマルションの油水分離を行なった後、油水分離された水相又は油相に、浅いチャネル部を介して接続された支流マイクロ流路から、異相の流れを合流させて(すなわち、水相に合流させる場合には油相、油相に合流させる場合には水相を合流させる)エマルションを生成させ、該エマルションを上記本発明の方法に供して再度油水分離する操作を1回以上繰り返すことも可能である。この場合は、上記したとおり、前記マイクロ流路の上流に、細いチャネル部を介して合流する支流マイクロ流路を設け、マイクロ流路の上流から水相又は油相を流し、前記支流マイクロ流路にはこれとは異なる相を流すことによりエマルションを生成する方法を好ましく採用することができる。エマルションの生成及びその油水分離を複数回繰り返すことにより、エマルション状態での抽出操作を複数回行うことができる。従って、単純に、抽出有機溶媒(油相)を合流させた場合には、1段目と同じ抽出操作を複数回行うことになり、水相からの抽出をより完全に行なうことができ、高価な医薬品等を抽出する場合に有利である。
【0039】
あるいは、最初の油水分離よりも後のエマルション生成の前に、マイクロ流路に設けられた試薬注入用の支流マイクロ流路から、試薬を注入することにより、1段目の抽出条件とは異なる条件下でエマルション状態での抽出操作を行うことができる。試薬としては、例えば、反応液のpHを変化させる酸又は塩基を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、所望の任意の物質を合流させることができる。下記実施例において、実際に作成した、エマルション状態での抽出を3回行なうマイクロ流路の模式図を図6に示す。マイクロ流路10の上流端10aから水相を注入する。一方、第1の支流マイクロ流路16aから、細いチャネル20aを介して有機溶媒(油相)が合流される(「相合流1」)。これにより、上記の通りエマルションが生成する。下記実施例では、細いチャネル20a〜20cはいずれも疎水性であり、O/Wエマルションが生成する。図示のくびれ部で、プラグ流が生成した後、浅い疎水性チャネル26aを介して油相が分岐マイクロ流路24aに導かれ(「相分離1」)、「分画1」として回収される。油相が分岐した後の水相はそのまま下流に流れ、試薬注入用のマイクロ流路28aから試薬(下記実施例では塩基)が合流される(「相合流2」)。次に、試薬が添加された反応混合液は、反応しながらそのまま下流に流れ、一方、第2の支流マイクロ流路16bから、第2の細いチャネル20bを介して有機溶媒(油相)が合流され(「相合流3」)、O/Wエマルションが生成する。次に、油相のみが分岐マイクロ流路24bに導かれ(「相分離2」)、「分画2」として回収される。油相が分岐した後の水相はそのまま下流に流れ、第2の試薬注入用のマイクロ流路28bから試薬(下記実施例では酸)が合流される(「相合流4」)。次に、試薬が添加された反応混合液は、反応しながらそのまま下流に流れ、一方、第3の支流マイクロ流路16cから、第3の細いチャネル20cを介して有機溶媒(油相)が合流され(「相合流5」)、O/Wエマルションが生成する。次に、油相のみが分岐マイクロ流路24cに導かれ(「相分離3」)、「分画3」として回収される。
【0040】
以上のように、異なる3つの条件下での抽出操作を、連続するマイクロ流路を用いて連続的に行なうことができる。
【0041】
本発明は、また、このような多段階の抽出を連続するマイクロ流路で行なう方法に用いられる、上記したマイクロ流路をも提供するものである。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0043】
実施例1 マイクロ流路の作製
幅70mm、奥行き30mm、厚さ1.4mmの市販のホウケイ酸ガラスに、常法により、クロムマスクを用いた2段階ウェットエッチング法(エッチング液:50%フッ化水素酸)により、図7に示すマイクロ流路を作製した。このマイクロ流路は、図3を参照して説明した液滴生成部と、図2を参照して説明した、くびれ部を有する液滴合一部と、図5を参照して説明した油水二相分離部を具備し、図7中の参照番号は、図3、図2及び図5中の参照番号と一致している。図7に示すマイクロ流路では、エマルション状態での抽出を長時間行なうために、液滴生成部から液滴合一部までの間に折り返しを2回含んでいる。濡れ性は、先ず、ODSのトルエン溶液(濃度1%(v/v))でマイクロ流路全長を疎水処理し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度0.1M)を入口側から導入し、液滴合一部の手前まで導入し、24時間放置して親水処理した。マイクロ流路を洗浄後、150℃で1時間加熱することにより変化させた。なお、本実施例では、油相のみを回収するので、濡れ性の変化は、単純に液滴合一部の手前から上流を親水性、それより下流を疎水性とした。なお、細いチャネル20の疎水処理は、ODSのトルエン溶液(濃度1%(v/v))により行なった。
【0044】
マイクロ流路は、基本的に幅250μm、深さ100μmの断面かまぼこ形であり、液滴生成部の細いチャネル20は、幅50μm、深さ10μm、液滴合一部のくびれ部は幅100μm、深さ50μm、油水二相分離部の浅いチャネル部26は、幅100μm、深さ10μm、長さ3330μmであった。
【0045】
実施例2 金属キレート抽出
金属イオンの分析に幅広く利用されているジチゾンを用いた、金属イオンのキレート抽出を、実施例1で作製したマイクロ流路を用いて行った。ジチゾンは多くの遷移金属イオンとキレート錯体を形成し、水相中の金属イオンを油相へ抽出することが知られている。金属イオン種とpH によって抽出速度が大きく異なるため、pHを調節することで水相中の金属イオンを分離することにも利用されている。本実施例では、ジチゾンによる亜鉛イオンのキレート抽出を行った。ジチゾンは亜鉛とキレート錯体を形成すると、青からピンク色へ変色する。従って、吸光度測定によりその濃度を測定することができる。予備実験の結果、塩化ブチル溶媒中のジチゾンの亜鉛キレート錯体の最大吸収波長は617nmであったので、以降、吸光度測定は617nmで行った。
【0046】
pH6.9のHEPES緩衝液に、種々の既知濃度の硝酸亜鉛を溶解して種々の既知濃度の標準溶液を調製した。一方、ジチゾンの塩化ブチル溶液を調製し、これと上記各標準溶液をバイアル内で反応させ、吸光度を測定して亜鉛濃度と吸光度の関係を示す検量線を作成した。
【0047】
一方、上記の通り、ジチゾンによる金属イオンの抽出速度はpHにより大きく影響を受けるので、種々のpHにおいて、ジチゾンの塩化ブチル溶液と硝酸亜鉛水溶液との反応を行ない、吸光度測定から、抽出が平衡に達するまでの時間を測定した。その結果、pH4.6において、平衡(98.8%抽出)に達するまでの時間は約3時間であった。
【0048】
次に、実施例1で作製したマイクロ流路を用い、支流マイクロ流路16に、ジチゾンの塩化ブチル溶液(濃度:0.46mM)をシリンジポンプで種々の流速で注入した。同時に、支流マイクロ流路18に、ジチゾンの塩化ブチル溶液をシリンジポンプで種々の流速で注入した。流速は、マイクロ流路10内の流速が1μL/minから50μL/minになるように種々変化させた。分岐マイクロ流路24から油相を取り出し、吸光度を測定し、上記検量線を用いて抽出率を算出した。その結果、平衡(98.8%抽出)に達するまでの時間はわずか10秒であった。
【0049】
実施例3 多段階抽出用マイクロ流路の作製
基本的に図7に示す3段階の抽出を行なうマイクロ流路を作製した。(1)マイクロ流路のエッチング深さを、第1段95μm、第2段5μmとし、(2)浅いチャンネル部26の深さを5μm、長さを2000μmとし、(3)各段のマイクロ流路において、液滴合一部の手前から、浅いチャネル部26まで、浅いチャネル部26及び分岐マイクロ流路24を疎水性とし、それ以外の部分を親水性とした以外は、実施例1と同様にして作製した。なお、濡れ性は、マイクロ流路全体を一旦、上記と同様、ODSで疎水処理し、各段の油相の入口から1M水酸化ナトリウム水溶液を導入し、空気を抜きたい穴以外をポリイミドテープで覆って、水酸化ナトリウム水溶液の導入を制御し、目的の位置まで濡らすことにより行なった。選択的な親水処理は、この方法で各段ごとに行なった。
【0050】
実際に試作したマイクロ流路を図8に示す。図8のAは、マイクロ流路の平面図、Bは液滴合一部と油水二相分離部を拡大して示す図である。図中、マイクロ流路がグレーで示されている部分が疎水性の部分であり、それ以外は親水性である。
【0051】
実施例4 多段階抽出による覚醒剤混合物の分離
実施例3で作製したマイクロ流路を用い、図9に模式的に示す方法により、覚醒剤Yaba及びその代謝物を含む混合物の分離を行なった。この方法により行なった化学プロセスを図10に示す。覚醒剤Yabaは、メタンフェタミンを主成分とし、カフェインが添加されている。覚醒剤検査は、尿等の体液を用いるため、メタンフェタミンが体内で代謝されて生じる代謝物であるp-ヒドロキシメタンフェタミンを検出することも有用である。メタンフェタミン、カフェイン及びp-ヒドロキシメタンフェタミンを含む水溶液(尿等)からの、これら各成分の油相への抽出は、pHによって抽出される成分が異なることが知られており、カフェインは、pH4で、メタンフェタミンはpH13で、p-ヒドロキシメタンフェタミンはpH9で油相に抽出される。ここでは、メタンフェタミンの替わりに類似物質であるメフェンテルミンを用い、実施例3で作製した3段階の抽出を行うマイクロ流路を用いて、pHごとに異なる成分を抽出した。
【0052】
すなわち、図9に示すように、サンプル(カフェイン、メフェンテルミン及びp-ヒドロキシメタンフェタミンを含む水溶液(各成分の濃度は、それぞれ、5ppm、10ppm、20ppm)を酸(塩酸)でpH4に調整したもの)をマイクロ流路の上流端からシリンジポンプにより注入すると共に、支流マイクロ流路から有機溶媒であるヘキサン(「油相1」)を注入した。マイクロ流路中の流速は、試料および3つの油相がそれぞれ1μL/min、2つのpH調整用溶液がそれぞれ0.5μL/minとした。図中、「酸性抽出部」で、酸性条件下でO/Wエマルションの状態で抽出を行い、分岐マイクロ流路から第1の油相を取り出した(「分画1)」。次に、塩基(水酸化ナトリウム)を注入してpHを13とし、「油相2」としてヘキサンを注入した。強塩基性条件下でエマルションの状態で抽出を行い、分岐マイクロ流路から第2の油相を取り出した(「分画2)」。次に、水酸化ナトリウムと混合して緩衝溶液をつくるホウ酸ナトリウム水溶液を注入してpHを9とし、「油相3」としてヘキサンを注入し、弱塩基性の条件下でエマルションの状態で抽出を行い、分岐マイクロ流路から第3の油相を取り出した(「分画3」)。
【0053】
分画1、分画2及び分画3の成分を常法により分析したところ、分画1中ではカフェインが、分画2中ではメフェンテルミンが、分画3中ではp-ヒドロキシメタンフェタミンが検出された。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の方法により、エマルションがプラグ流に変化する原理を模式的に示す図である。
【図2】マイクロ流路にくびれ部を設けることにより、エマルションがプラグ流に変化しやすくなる原理を模式的に示す図である。
【図3】マイクロ流路内で水相と油相からエマルションを生成させる方法を模式的に示す図である。
【図4】マイクロ流路内で水相と油相からエマルションが生成する原理を模式的に示す図である。
【図5】エマルションを油水分離する方法を模式的に説明する図であり、Aは平面図(写真)、BはA中のS-S'線切断部端面図である。
【図6】本発明により、多段階のエマルション状態での抽出を行なう方法を模式的に説明する図である。
【図7】本発明の実施例で作製したマイクロ流路を示す図である。
【図8】本発明の実施例で作製した、多段階の抽出を行なうためのマイクロ流路を示す図であり、Aが平面図、Bが主要部の拡大図である。
【図9】本発明の実施例で行った、多段階の抽出を連続するマイクロ流路内で行なう方法を模式的に説明するための図である。
【図10】本発明の実施例で行った、覚醒剤及びその代謝物の混合物を、図9に示す方法により分離するプロセスを示すチャートである。
【符号の説明】
【0055】
10 マイクロ流路
12 親水性の内表面
14 疎水性の内表面
16 油相を注入する支流マイクロ流路
18 水相を注入する支流マイクロ流路
20 細いチャネル部
22 親水膜
24 分岐マイクロ流路
26 浅いチャネル部
28 試薬注入用のマイクロ流路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
途中で内表面の濡れ性が変化しているマイクロ流路にエマルションを流通させることを含む、エマルションをプラグ流に変化させる方法。
【請求項2】
内表面の濡れ性が、液の流通方向において、親水性から疎水性に変化している請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記エマルションが、O/Wエマルションである請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロ流路は、濡れ性の境界部分よりも下流にくびれ部を有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロ流路の上流には、2本の支流マイクロ流路が細いチャネル部を介して合流した流路が設けられており、前記エマルションは、該2本の支流マイクロ流路のうちの1本に水相を流し、他の1本に油相を流すことにより生成されたものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記細いチャネル部が親水性又は疎水性である請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記マイクロ流路の上流には、細いチャネル部を介して合流する支流マイクロ流路が設けられており、前記エマルションは、前記マイクロ流路の上流から水相又は油相を流し、前記支流マイクロ流路にはこれとは異なる相を流すことにより生成されたものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記細いチャネル部は親水性又は疎水性である請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロ流路は、前記プラグ流が生成する部位よりも下流に、該マイクロ流路よりも浅い疎水性又は親水性のチャネル部を介して接続される分岐マイクロ流路を具備し、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法により生成された前記プラグ流の水相又は油相のみを、前記チャネル部を介して前記分岐マイクロ流路に導くことを含む、プラグ流の油水分離方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法により油水分離された水相又は油相に、浅いチャネル部を介して接続された支流マイクロ流路から、異相の流れを合流させてエマルションを生成させ、該エマルションを請求項9記載の方法に供して再度油水分離する操作を1回以上繰り返すことをさらに含む、多段階の油水分離工程を含む油水分離方法。
【請求項11】
請求項9記載の方法により油水分離された水相に、浅い疎水性チャネル部を介して接続された支流マイクロ流路から、油相の流れを合流させてエマルションを生成させる請求項10記載の方法。
【請求項12】
最初の油水分離よりも後のエマルション生成の前に、マイクロ流路に設けられた試薬注入用の支流マイクロ流路から、試薬を注入する請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
前記試薬が、反応液のpHを変化させる酸又は塩基である請求項12記載の方法。
【請求項14】
途中で内表面の濡れ性が変化している、エマルションをプラグ流に変化させるためのマイクロ流路。
【請求項15】
内表面の濡れ性が、液の流通方向において、親水性から疎水性に変化している請求項14記載のマイクロ流路。
【請求項16】
前記エマルションが、O/Wエマルションである請求項14又は15記載のマイクロ流路。
【請求項17】
前記マイクロ流路は、濡れ性の境界部分よりも下流にくびれ部を有する請求項14ないし16のいずれか1項に記載のマイクロ流路。
【請求項18】
前記マイクロ流路の上流には、2本の支流マイクロ流路が浅いチャネル部を介して合流した流路が設けられている請求項14ないし17のいずれか1項に記載のマイクロ流路。
【請求項19】
前記浅いチャネル部が疎水性である請求項18記載のマイクロ流路。
【請求項20】
前記マイクロ流路の上流には、細いチャネル部を介して合流する支流マイクロ流路が設けられている請求項14ないし19のいずれか1項に記載のマイクロ流路。
【請求項21】
前記細いチャネル部は親水性又は疎水性である請求項20記載のマイクロ流路。
【請求項22】
前記マイクロ流路は、前記プラグ流が生成する部位よりも下流に、該マイクロ流路よりも浅い親水性又は疎水性のチャネル部を介して接続される分岐マイクロ流路をさらに具備する請求項14ないし21のいずれか1項に記載のマイクロ流路。
【請求項23】
請求項14ないし22のいずれか1項に記載のマイクロ流路が複数直列に接続されたマイクロ流路であって、各油水分離部よりも下流に、浅いチャネル部を介して支流マイクロ流路がそれぞれ接続されている、多段階の油水分離を行なうためのマイクロ流路。
【請求項24】
それぞれの段階で油水分離された水相が流れるマイクロ流路に、浅い疎水性チャネル部を介して前記支流マイクロ流路がそれぞれ接続されている請求項23記載のマイクロ流路。
【請求項25】
最初の油水分離部位よりも下流で、前記各支流マイクロ流路よりも上流の部位に試薬注入用の支流マイクロ流路が接続されている請求項23又は24記載のマイクロ流路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−226271(P2009−226271A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72504(P2008−72504)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月5日 社団法人日本分析化学会発行の「日本分析化学会第56年会講演要旨集」に発表
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)
【Fターム(参考)】