説明

エマルジョン型粘着剤及び粘着シート。

【課題】耐水性に優れ、被着体汚染の少ない粘着剤層の形成が可能であり、光学フィルム素材等に好ましく用いることができるエマルジョン型粘着剤及びそれを用いてなる粘着シートを提供すること。
【解決手段】炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするラジカル重合性不飽和モノマー(A)100重量部に対して、非反応性界面活性剤(B)を0.05〜1重量部及び水を含有する、50%粒子径が10μm以下のモノマーエマルジョン(1)を重合して得られるポリマーエマルジョン(2)を含んでなるエマルジョン型粘着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルジョン型粘着剤ならびに該エマルジョン型粘着剤を用いてなる粘着シートに関する。詳しくは、耐水性に優れ、被着体汚染が少なく、光学フィルム素材等に好ましく用いることができるエマルジョン型粘着剤及びそれを用いてなる粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
様々なフラットパネルディスプレイ(FPD)が、様々な分野で表示装置として使用されようになってきた。例えば、FPDは、パーソナルコンピューターのディスプレイや液晶テレビをはじめ屋内で使用されるばかりでなく、カーナビゲーション用ディスプレイ等のように車両に搭載して使用されたりする。これらFPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、リアプロジェクションディスプレイ(RPJ)、ELディスプレイ、発光ダイオ−ドディスプレイなどが挙げられる。
これらの表示装置には、外部光源からの反射を防ぐための反射防止フィルムや、内部光源のからの光を拡散させるための光拡散フィルム、表示装置の表面の傷付き防止のための保護フィルム(プロテクトフィルム)などが使用されている。
さらにFPDは、表示装置として利用するだけではなく、それらの表面にタッチパネルの機能を設けて、入力装置としても利用されることがある。このタッチパネルにも、保護フィルム、反射防止フィルムやITO蒸着樹脂フィルムなどが使用されている。
また、FPDのうちLCDは、液晶セル用ガラス部材に偏光フィルムや位相差フィルムが積層されている。
また、FPD用途ではないが、屋内外において、ガラスを装飾するための目隠しシート等が広く使用されている。
【0003】
これらに使用される種々のフィルムやシートは、粘着剤により被着体に貼着され、使用されている。上記の用途では、高湿度下におかれたり、冷水や温水に曝されたりするが、このような環境下においても、外観変化が無いことが要求され、粘着剤層の耐湿性や耐水性が要求される。したがって、耐水性に優れる、アクリル系樹脂を主剤とする溶剤型粘着剤が従来より好適に使用されている。
ところで、液晶セル用のガラス部材に偏光フィルムを貼り付けた後、貼り付け界面のエアーの有無や貼り付け界面の粉塵の有無が検査される。そして、エアーや粉塵のある場合、ガラス部材から偏光フィルム等を剥がして、新しい偏光フィルム等を貼り直す。したがって、偏光フィルムを剥がす際には、ガラス部材に粘着剤成分を残さないこと、すなわち被着体汚染がないことが求められる。
また、目隠しシートの場合においても、目的を果たした後はガラスから剥がされることが前提とされているため、被着体汚染が無いことが要求される。
ここに、残存した粘着剤により汚染された被着体表面は、その水の接触角は高い値を示す。そのため、例えばガラスを被着体とした場合の被着体汚染の程度は、フィルムを剥がした後のガラス表面の水接触角が、もとのガラス表面の水接触角に比べてどれ位増加したかという見方によって見積もることができる。
【0004】
近年、地球環境保護(揮発性有機化合物排出抑制)や労働環境の改善ならびに資源の有効利用などの観点から、溶剤型粘着剤の代替として水性のエマルジョン型粘着剤の利用検討が進んできた。
例えば、特許第2698536号公報(特許文献1)や特許第3207001号公報(特許文献2)では、難水溶性である長鎖アルキル(メタ)アクリレートを含むモノマーを水と界面活性剤を用いてモノマーエマルジョンを作製し、そのエマルジョンを重合してエマルジョン型粘着剤を得る方法が提案されている。
しかしながら、得られるポリマーが撥水性であるため、被着体汚染が生じやすい。
また特開2000−313865号公報(特許文献3)においては長鎖アルキル(メタ)アクリレートと耐水性向上のための粘着付与樹脂を界面活性剤と水を用いてモノマーエマルジョンを作製し、そのモノマーエマルジョンを重合してエマルジョン型粘着剤を得る方法が提案されているが、特許文献3の方法では、被着体汚染が発生するということに加えて、エマルジョン型粘着剤が光や熱に弱い粘着付与樹脂を含有しており、耐候性の要求されるFPD用途には使用できない。
このように、エマルジョン型粘着剤に、溶剤型粘着剤と同等の性能を付与すべく様々な工夫がなされてきたが、これまでのところ不十分であった。
【特許文献1】特許第2698536号公報
【特許文献2】特許第3207001号公報
【特許文献3】特開2000−313865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐水性に優れ、被着体汚染の少ない粘着剤層の形成が可能であり、光学フィルム素材等に好ましく用いることができるエマルジョン型粘着剤及びそれを用いてなる粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明者は鋭意研究し、本発明に至った。
即ち、第1の発明は、炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするラジカル重合性不飽和モノマー(A)100重量部に対して、非反応性界面活性剤(B)を0.05〜1重量部及び水を含有する、50%粒子径が10μm以下のモノマーエマルジョン(1)を重合して得られるポリマーエマルジョン(2)を含んでなるエマルジョン型粘着剤に関する。
【0007】
また、第2の発明は、エマルジョン型粘着剤が、さらに無機粒子(C)及び/又はゲル分率が99%以上の既架橋有機粒子(D)を含んでなることを特徴とする第1の発明記載のエマルジョン型粘着剤に関する。
【0008】
また、第3の発明は、無機粒子(C)及びゲル分率が99%以上の既架橋有機粒子(D)の平均粒子径が0.01〜50μm、真比重が0.9〜6であり、(C)と(D)との合計量はポリマーエマルジョン(2)の乾燥重量100重量部に対して100重量部以下であることを特徴とする第1または第2の発明記載のエマルジョン型粘着剤に関する。
【0009】
さらに、第4の発明は、プラスチックフィルム基材の少なくとも一方の面に第1ないし第3いずれかの発明記載のエマルジョン型粘着剤から形成される粘着剤層が設けられてなる粘着シートに関する。
【0010】
さらにまた、第5の発明は、プラスチックフィルム基材が光学用フィルム基材であることを特徴とする第4の発明記載の粘着シートに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、耐水性に優れ、被着体汚染の少ない粘着剤層の形成が可能であり、光学フィルム素材等に好ましく用いることができるエマルジョン型粘着剤及びそれを用いてなる粘着シートを提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、モノマーエマルジョン(1)の形成に用いられるラジカル重合性不飽和モノマー(A)は、アルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とすることが重要である。かかるアルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。上記アルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、ラジカル重合性不飽和モノマー(A)の合計100重量%中70〜99.9重量%含有され、1種または2種以上含有される。
【0013】
ラジカル重合性不飽和モノマー(A)は、極性基含有モノマーとしてカルボキシル基含有モノマーやアルコール性水酸基含有モノマーを単独または併用して、ラジカル重合性不飽和モノマー(A)の合計100重量%中0.1〜20重量%含有することが好ましく、0.2〜5重量%含有することがより好ましく、0.2〜2重量%含有することがさらに好ましい。
カルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸等が挙げられる。
アルコール性水酸基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等が挙げられる。
カルボキシル基含有モノマーとアルコール性水酸基含有モノマーの合計量の割合が0.1重量%未満の場合、形成されるモノマーエマルジョン(1)を構成する分散質である粒子(以下、分散質である粒子を「エマルジョン粒子」という)の水中で分散状態が不安定となり易く、重合も不安定になり易い。一方、20重量%を超えると、乾燥時にエマルジョン粒子同士の密着が阻害され、粘着剤層の均一性が低下し易い。
【0014】
また、本発明に用いるラジカル重合性不飽和モノマー(A)としては、上記以外のモノマーを必要に応じて使用することもでき、そのようなモノマーの例としては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマー、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N―アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、メチロール化アクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3オキソブチル)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミドモノマー、燐酸基含有ビニルモノマーや酢酸ビニル、スチレン、ブタジエン等のビニルモノマー、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられ、ラジカル重合性不飽和モノマー(A)の合計100重量%中0〜10重量%の割合で用いることができ、1種または2種以上使用できる。
【0015】
ところで、粘着シートは、液体状態の粘着剤をシート状基材に塗布し、乾燥して粘着剤中に含まれていた液状の媒体を除去することにより粘着剤層が形成される。
溶剤型粘着剤の場合、液状の媒体を除去することによって、含まれていたポリマー成分がそのまま成膜し、粘着剤層を形成する。一方、エマルジョン型粘着剤の場合、液状の媒体が除去される際に、エマルジョン粒子同士が接近、密着、融着し、成膜するという過程を経る。従って、粘着剤層の均一性を向上させるためには、エマルジョン粒子同士の融着を促進することが重要である。そこで、エマルジョン粒子同士の融着を促進するために粒子間架橋を利用することがよい。
粒子間架橋を生成するために、上記のラジカル重合性不飽和モノマー(A)としては、架橋反応を生じ得る官能基を有するモノマーを組み合わせて用いることが好ましい。それらの中でも、カルボキシル基もしくは水酸基を有するモノマーと、これらと成膜時に架橋反応をし得る官能基を有するモノマーとを組み合わせて用いることが好ましい。これらの官能基は、自己架橋性を有するものであってもよい。
さらに、後述する架橋剤を使用することによっても粒子間架橋を生成することができる。
粒子間架橋を生成するため好適に用いられるモノマーとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマー、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N―アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、メチロール化アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミドモノマーやシラン系モノマーなどのモノマー類が例示でき、特に、被着体がガラスである場合や、後述する粒子(C)を添加する場合には、ガラスへの密着性向上やポリマーと粒子(C)とを結合させる目的で、シラン系モノマーを使用することが好ましい。
その例としては、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−ビニルブチルトリメトキシシラン、4−ビニルブチルトリエトキシシラン、8−ビニルオクチルトリメトキシシラン、8−ビニルオクチルトリエトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0016】
本発明においては、上記した種々のラジカル重合性不飽和モノマー(A)を重合した場合、得られるポリマーのガラス転移温度(Tg)は0℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましく、−20℃以下であることがさらに好ましい。ポリマーのガラス転移温度が0℃を超えるようなラジカル重合性不飽和モノマーを用いてポリマーエマルジョンを得ても、そのようなポリマーエマルジョンからは良好な接着性能を有する粘着剤を得ることが困難である。
【0017】
次に非反応性界面活性剤(B)について説明する。
本発明では用いられる界面活性剤の種類とその量が極めて重要である。
ラジカル重合性不飽和モノマー(A)の混合液を水媒体中に単に乳化させるだけであれば、ラジカル重合性官能基を有するいわゆる反応性界面活性剤や前記官能基を有しない非反応性界面活性剤、さらには「アクリル系高分子乳化剤」、「アクリル系水溶性樹脂分散剤」と呼ばれる分散剤のいずれをも用いることができる。
しかし、均一性に優れる粘着剤層を得るためには、非反応性界面活性剤(B)を用いることが重要である。
【0018】
ラジカル重合性不飽和モノマー(A)を重合する際、反応性界面活性剤や「アクリル系高分子乳化剤」、「アクリル系水溶性樹脂分散剤」と呼ばれる分散剤はラジカル重合性不飽和モノマー(A)と共重合し、自由度を失った反応性界面活性剤やアクリル系高分子乳化剤あるいはアクリル系水溶性樹脂分散剤が、ポリマーエマルジョンのエマルジョン粒子の表面近傍に固定化されると考察される。エマルジョン粒子は、比較的親油性に富むラジカル重合性不飽和モノマー(A)から構成される。従って、エマルジョン型粘着剤を乾燥し、粘着剤層を形成する際、固定化された界面活性剤や分散剤由来の親水部は、その親水性故に、エマルジョン粒子の大部分を占める親油性部分とは親和せずに、エマルジョン粒子同士の融着を阻害するものと推察される。その結果、反応性界面活性剤やアクリル系高分子乳化剤あるいはアクリル系水溶性樹脂分散剤を用いて得られるポリマーエマルジョンを含有する粘着剤からは、均一性の優れる粘着剤層が得難い。
【0019】
これに対し、非反応性界面活性剤(B)を用いた場合、界面活性剤がポリマーエマルジョンのエマルジョン粒子の表面近傍に存在してはいても、固定化されてはいないので、乾燥時の成膜の過程で膜中を動き得る。つまり、非反応性界面活性剤(B)は、親油性に富むエマルジョン粒子同士の融着を阻害しないので、非反応性界面活性剤(B)を用いて得られるポリマーエマルジョンを含有する粘着剤からは、密で均一な粘着剤層を形成することができる。粘着剤層が密で均一なので、耐水性に優れる。よって、非反応性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0020】
本発明で用いられる非反応性界面活性剤(B)は、イオン性のもの、非イオン性のものが挙げられ、それぞれ単独で使用することもできるし、両者を併用することもできる。
【0021】
非反応性界面活性剤(B)のうち非イオン性のものとしては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルに代表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルやポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル等のエーテル型の他に、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレントリメチロールプロパン脂肪酸エステル、アミノ酸誘導体、ポリグリセリン脂肪酸エステル、シリコン系界面活性剤等が挙げられる。
【0022】
非反応性界面活性剤(B)のうちイオン性のものとしては、上記非イオン性界面活性剤がアニオン化された硫酸エステルやその塩類等のイオン性界面活性剤を使用することができる。
【0023】
非反応性界面活性剤(B)の使用量は、ラジカル重合性不飽和モノマー(A)の合計100重量部に対して0.05〜1重量部であることが重要であり、0.1〜0.8重量部であることが好ましく、0.1〜0.5重量部であることがさらに好ましい。非反応性界面活性剤(B)が、0.05重量部未満の場合は、モノマーエマルジョン自体の安定性が悪く、ラジカル重合性不飽和モノマー(A)層と水層とに分離しやすくなる。分散安定性の悪いモノマーエマルジョンを重合しようとすると、重合も不安定となり、凝集物が多く生じる。
一方、非反応性界面活性剤(B)が1重量部を超えると、得られたアクリル系ポリマーエマルジョンを乾燥する際に、過剰量の非反応性界面活性剤(B)が、エマルジョン粒子同士の融着を阻害し、粘着剤層の均一性を低下させる傾向にある。
本発明においては、エマルジョン粒子径制御のため、使用する非反応性界面活性剤(B)の一部を予め重合用容器に添加しておいてもよい。
また、本発明においては非反応性界面活性剤(B)を用いることが重要なのであるが、得られる粘着剤層の透明性や耐水性を損なわない範囲において、必要に応じて反応性界面活性剤や「アクリル系高分子乳化剤」、「アクリル系水溶性樹脂分散剤」を使用してもよい。
【0024】
ラジカル重合性モノマー(A)、特定量の非反応性界面活性剤(B)及び水を含有するモノマーエマルジョン(1)は、エマルジョン粒子の50%粒子径が10μm以下であることが重要であり、0.1〜5μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。撹拌条件等を制御することによって、モノマーエマルジョン(1)のエマルジョン粒子の粒子径を制御することができる。
なお、、本発明でいう「50%粒子径」とは、体積基準でのメジアン径のことを指す。
【0025】
本発明は、従来の粘着剤用エマルジョンの乳化重合の際に用いられる界面活性剤の量に比べて、極めて少ない使用量にてモノマーエマルジョンに安定性を付与し得るものであるが、モノマーエマルジョンの50%粒子径が10μmを超えると、ラジカル重合性不飽和モノマー(A)層と水層とに分離しやすく、モノマーエマルジョンが不安定になりやすい。
【0026】
次に、本発明のポリマーエマルジョン(2)に関して説明する。
ポリマーエマルジョン(2)は例えば、ラジカル重合性モノマー(A)を十分に混合し、この混合物に非反応性界面活性剤(B)及び水を加え、撹拌混合し、必要に応じて超音波乳化機やホモミキサー等の分散機を用い、エマルジョン粒子の50%粒子径が10μm以下のモノマーエマルジョン(1)を得、滴下装置に上記モノマーエマルジョン(1)を入れる。
次いで、
加熱及び撹拌手段を具備する反応容器に水を入れ、その水に上記モノマーエマルジョン(1)を滴下して、重合したり、
加熱及び撹拌手段を具備する反応容器に水と上記モノマーエマルジョン(1)の一部を入れ、そこに残りのモノマーエマルジョン(1)を滴下して、重合したり、
加熱及び撹拌手段を具備する反応容器に水と非反応性界面活性剤(B)を入れ、その界面活性剤水溶液中に上記モノマーエマルジョン(1)を滴下して、重合したりすることができる。
3番目に例示した方法の場合、反応容器中の水に配合し得る非反応性界面活性剤(B)の量は、形成される粘着剤層の透明性や耐水性を低下しない程度の量であることが好ましく、モノマーエマルジョン(1)の形成に用いられた非反応性界面活性剤(B)の量と合わせて、ラジカル重合性モノマー(A)100重量部に対して0.05〜1重量部となるようにすることが好ましい。
【0027】
本発明のポリマーエマルジョン(2)を得る際に用いられる重合開始剤について説明する。
重合開始剤としては、水溶性、非水溶性いずれのものも使用でき、水溶性の重合開始剤を用いることが好ましい。一般的に用いられるものとしては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩またはアゾビス系カチオン塩または水酸基付加物等の水溶性の熱分解型重合開始剤や、レドックス開始剤を用いることができる。レドックス開始剤としてはt−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物とロンガリット、メタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤との組み合わせ、または過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムとロンガリット、チオ硫酸ナトリウムなどの組み合わせ、過酸化水素水とアスコルビン酸の組み合わせ等を用いることができるが、後述する架橋剤を用いてポリマーを架橋する場合には、分岐構造の少ないポリマーを得ることが、粘着剤層の均一性という点で好ましいため、過硫酸塩系や過酸化物系よりもアゾ系開始剤を使用することが好ましい。
重合開始剤の使用量は、ラジカル重合性不飽和モノマー(A)100重量部に対して、0.02〜3重量部であることが好ましく、0.1〜1重量部であることがより好ましい。
重合開始剤の添加方法としては、全量を反応容器中に仕込んでおき、反応を開始させてもよく、その一部を反応容器中に仕込んでおき、残りを分割添加あるいは滴下してもよく、全量を分割添加あるいは滴下しても良い。分割添加あるいは滴下する場合には、モノマーエマルジョンと混合された状態にて使用されても良い。
【0028】
また、得られるポリマーの分子量や分子量分布を制御するために連鎖移動剤として、メルカプタン系、チオグリコール系、β−メルカプトプロピオン酸系のアルキルエステルを使用することができる。連鎖移動剤を使用する際、添加量はラジカル重合性不飽和モノマー(A)100重量部に対して0〜0.1重量部で分子量を調節しながら使用することができる。
ポリマーエマルジョン(2)を得るための重合反応は、通常40℃〜90℃の温度範囲で、2〜6時間かけて行われる。
【0029】
本発明のポリマーエマルジョン(2)を含有する粘着剤は、乾燥の過程で、エマルジョン粒子同士を粒子間架橋またはポリマー分子間架橋させることが好ましい。
そのためには、
ラジカル重合性不飽和モノマー(A)のラジカル重合後、前記モノマー(A)由来の官能基同士が、乾燥過程及び必要に応じて行われるエージングの過程において架橋反応し得るように、ラジカル重合性不飽和モノマー(A)中の官能基の種類を選択したり、
前記モノマー(A)由来の官能基と反応可能な架橋剤を含有することが好ましい。
例えば、ラジカル重合性不飽和モノマー(A)の1つとしてアセトアセトキシ基を有するモノマーやシラン系モノマーを用いると乾燥過程等において、エマルジョン粒子を構成するアクリル系ポリマー同士が自己架橋し得る。
【0030】
架橋剤としては、アクリル系ポリマーエマルジョン(2)中のラジカル重合性不飽和モノマー(A)由来の官能基、例えば水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等と乾燥過程やエージングの際に反応し得る化合物を用いることができる。 このような架橋剤としては、一般的に用いられるものであれば特に制限はされず、エポキシ系化合物、ヒドラジド化合物、セミカルバジド誘導体、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、アジリジン系化合物、錯形成可能な金属キレート系化合物等が挙げられる。架橋剤が水に溶解ないしは分散し難い場合には、少量の界面活性剤や溶剤に架橋剤を溶解あるいは分散させて、添加するとよい。
【0031】
公知の金属キレート系化合物としては、チタンキレート化合物、アルミキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物等が挙げられる。
【0032】
エポキシ系化合物としては、エポキシ基を分子内に複数個有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。該エポキシ系化合物としては、具体的には、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、N,N,N’N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン等が挙げられる。
【0033】
イソシアネート系化合物としては、公知のジイソシアネート化合物、公知のジイソシアネート化合物を3官能ポリオール成分で変性したいわゆるアダクト体、ジイソシアネート化合物が水と反応したビュレット体、ジイソシアネート化合物3分子から形成されるイソシアヌレート環を有する3量体(イソシアヌレート体)、また、ポリイソシアネート化合物を使用することができる。
【0034】
公知のジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等を用いることができ、それらの例として、1,3−フェニレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
アジリジン系化合物としては、1分子中に少なくともアジリジニル基を2個以上有する化合物を用いることができ、例えば、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアマイド)、N,N’−ジフェニルエタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアマイド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−トルエン−2,4−ビス(アジリジンカルボキシアマイド)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)ホスフィン、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等が挙げられる。
【0036】
ヒドラジド化合物としては、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、チオカルボヒドラジド等が挙げられる。
【0037】
セミカルバジド誘導体としては、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)、1,1,1',1'−テトラメチル−4,4'−(メチレン−ジ−パラ−フェニレン)ジセミカルバジド、4,4−ジメチル−1−フェニルセミカルバジド等が挙げられる。
【0038】
カルボジイミド系化合物としては、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N'−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N'−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド・塩酸塩等が挙げられる。
【0039】
架橋剤の使用量としては、要求される粘着物性を考慮して決めることが好ましいのであるが、乾燥過程やエージング過程では、エマルジョン粒子同士の融着と粒子間架橋とが競争して進行するものと考えられる。従って、エマルジョン粒子同士の融着がほとんど進行しないうちに粒子間架橋が進むと、架橋した部分がエマルジョン粒子同士の融着にとっては一種の障壁となると考察される。よって、架橋剤の量は多すぎないことが好ましい。
【0040】
本発明のポリマーエマルジョン(2)に、さらに必要に応じて各種の添加剤等を添加することにより、エマルジョン型粘着剤を得ることができる。添加剤として具体的には、濡れ剤(ハジキ防止の界面活性剤等)、消泡剤、中和剤、可塑剤、増粘剤、着色剤、防腐剤、防錆剤、溶剤等が挙げられる。
なお、各種添加剤を添加する際には、ホモミキサー等を使用して添加剤をよく分散させることが好ましい。
また、添加剤が水溶性であり、かつ不揮発性のものである場合には、反応性界面活性剤と同様に、粘着剤の乾燥時において、エマルジョン粒子同士の融着を阻害しやすいものと考えられる。したがって水溶性かつ不揮発性の添加剤量は、エマルジョン型粘着剤の固形分100重量%中、3重量%以下であることが好ましい。
3重量%を超えると、得られたアクリル系ポリマーエマルジョンの乾燥時において、水溶性の添加剤がエマルジョン同士の融着障壁となり、粘着剤層の均一性および耐水性が低下するため、好ましくない。
さらに、本発明のエマルジョン型粘着剤は、光や熱によって劣化しやすい、粘着付与樹脂を含有することは好ましくない。
【0041】
また、本発明において得られるエマルジョン型粘着剤に、さらに光拡散剤として、無機粒子(C)及び/又はゲル分率が99%以上の既架橋有機粒子(D)を含有させることにより、得られる粘着剤層に光拡散性を付与することができる。
本発明で使用できる無機粒子(C)としては、炭酸カルシウム、酸化鉄、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、珪石粉末、ハイドロタルサイト、ガラスビーズ、アルミナ、珪藻土、酸化ジルコン、合成シリカ、水酸化アルミニウム、ベントナイト、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、カオリンクレー、パイロフィライト(ロー石クレー)、タルク 、セリナイト、アタパルジャイト、マイカ、硫酸カルシウム、ケイ酸ジルコン、カーボンブラック、亜硫酸カルシウム、アセチレンブラック、酸化チタン、ファ−ネスブラック、黒鉛粉末、チタン酸カリウム、炭素繊維、硫酸バリウム、窒化珪素、炭化珪素、炭酸バリウム、三酸化アンチモン、チタン酸バリウム、二硫化モリブテン、トルマリン、ゲルマニウム、酸化亜鉛等の無機系粒子が挙げられる。
【0042】
本発明においては無機粒子(C)の他、ゲル分率が99%以上の既架橋有機粒子(D)を使用することもできる。
なお、ここでいうゲル分率とは、抽出溶媒としてトルエンを用い、室温にて24時間浸漬した前後の重量変化より算出される値をいう。
既架橋有機粒子のゲル分率が99%未満である場合、粘着剤中で溶解あるいは膨潤しやすい傾向にあり、粒子径の変化を引き起こして、粘着物性が不安定になるため好ましくない。
このような、ゲル分率が99%以上の既架橋有機粒子(D)としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、テフロン(登録商標)および脂肪酸アミド等からなる既架橋型有機系粒子が挙げられる。
【0043】
本発明において粒子(C)及び(D)の粒子径は、0.01〜50μmであることが好ましく、0.01〜30μmであることがより好ましく、0.01〜20μmであることがさらに好ましい。
また、粒子の真比重は0.9〜6であることが好ましい。粒子の真比重が0.9より小さい場合、また6より大きい場合には、ともに、粒子以外の粘着剤成分と粒子が分離するという不具合が生じやすく、粘着剤の安定性が低下する。
また、粒子の使用量は、ポリマーエマルジョン(2)の乾燥重量100重量部に対して、(C)と(D)との合計が100重量部以下であることが好ましく、40重量部以下であることがより好ましく、30重量部以下であることがさらに好ましい。また、粒子の種類は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。粒子の使用量が100重量部を超えると光の透過率が低下する。
尚、これら各種添加剤成分は、ホモミキサー等を使用してポリマーエマルジョン(2)によく混ぜることが好ましい。
このようにして得られる、光拡散機能を有するエマルジョン型粘着剤は、FPD用の光拡散フィルムなどの用途に好ましく用いることができる。
【0044】
本発明のエマルジョン型粘着剤を、プラスチックフィルム基材にコーティングし、乾燥することにより、粘着シートを得ることができる。
本発明の粘着シートはまた、エマルジョン型粘着剤を剥離紙上にコーティングし、乾燥させ、粘着剤層を設けた後、該粘着剤層とプラスチックフィルム基材とを貼り合せ、粘着剤層をフィルム基材上に転写する方法、いわゆる転写法によっても得ることができる。
エマルジョン型粘着剤をプラスチックフィルム基材あるいは剥離紙にコーティングする方法としては特に制限されるものではなく、コンマコーター、ブレードコーター、グラビアコーター等のロールコーター、スロットダイコーター、リップコーター、カーテンコーター等の従来公知のコーティング装置によることができる。
プラスチックフィルム基材としては、セロハン、各種プラスチックシート(ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセテートフィルム、シクロオレフィンフィルム、ポリアクリルフィルム等の各種フィルム等)があげられる。また、各種基材は単独でも用いることもできるし、複数のものを積層してなる多層状態にあるものも用いることができる。さらに表面を剥離処理したものを用いることもできる。
【0045】
本発明においては、プラスチックフィルム基材として特に光学用フィルム基材を好ましく用いることができ、光学用途の粘着シートを得ることができる。
本発明の粘着シートは、粘着剤層を形成するエマルジョン粒子同士の融着や架橋反応が十分であることが重要である。エマルジョン型粘着剤の乾燥は、100℃前後で数十秒間であることが多い。このような条件で、エマルジョン粒子同士の融着が不十分な場合には、乾燥後の粘着シートをさらにエージングすることにより、エマルジョン粒子同士の融着や架橋反応を進行させることができる。例えば、25℃−7日あるいは40℃−3日程度、エージングすることが好ましい。エージングすることより、粒子状であったポリマーの形状が崩れ、均一な相を形成するようになり、また、架橋反応が完結した粘着シートが得られる。
【0046】
このようにして得られる本発明の粘着シートは、透水性に優れ、被着体汚染が少ないため、ウィンドウフィルムや偏光板等の光学部材等の用途に有用である。
尚、本発明でいう「基材」とは、比較的短い長さのものだけではなく、長尺状のいわゆるWeb状態のものをも含む意である。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。また、下記実施例および比較例中、「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。また、ポリエチレンオキサイド構造のエチレンオキサイドの繰り返し数を「EO数」とする。
【0048】
(実施例1)
ラジカル重合性不飽和モノマーとしてアクリル酸2−エチルヘキシル:50.5部、アクリル酸ブチル:40.5部、アクリル酸エチル:5部、メタクリル酸メチル:3部、アクリル酸:1部、連鎖移動剤であるチオグリコール酸オクチル:0.01部を混合し、溶解させてモノマー混合物を得た。
この混合物に非反応性界面活性剤であるアルキル炭素数12、EO数18のポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート:0.5部と脱イオン水45.6部を加え、ホモミキサーにて撹拌し、50%粒子径が0.5μmのモノマーエマルジョンを得、該モノマーエマルジョンを滴下槽に仕込んだ。
【0049】
加熱装置、撹拌機、還流冷却装置、温度計、窒素導入管および滴下槽を備えた重合用容器に脱イオン水:46部とアルキル炭素数12、EO数18のポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート:0.1部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌して内温78℃まで昇温させて、5%過硫酸カリウム水溶液を固形分で0.065部を入れた。5分後に上記モノマーエマルジョンと、5%過硫酸アンモニウム水溶液を固形分として0.187部をそれぞれ別の滴下槽から3時間かけて滴下して重合を行った。
滴下終了後30分間80℃に保ち、次いで30分かけて内温を60〜65℃に設定し、t−ブチルハイドロパーオキサイド:0.01部とロンガリット:0.012部を5%水溶液にて10分おきに3回に分けて添加した。更に撹拌しながら1時間反応させた後、アンモニア水で中和し、175メッシュのナイロン濾布で濾過して不揮発分49.7%、粘度220mPa・s、50%粒子径150nmのポリマーエマルジョンを得た。
上記で得たポリマーエマルジョン100部に、消泡剤:0.1部(50重量%が水溶性成分)、濡れ剤として水溶性であるナトリウムジオクチルスルホサクシネート:0.1部、防腐剤:0.3部(5重量%が水溶性成分)を加え、さらに増粘剤:1部(30重量%が水溶性成分)で5000mPa・s(BL型粘度計、25℃で#4ロータ/60rpmにて測定。)に増粘してエマルジョン型粘着剤を得た。なお、粘着剤の調製はホモミキサーにて行った。
<50%粒子径><不揮発分>
モノマーエマルジョン及びポリマーエマルジョンの粒子径測定は、日機装(株)製「マイクロトラック」にて測定し、不揮発分の測定は電気オーブンで150℃−20分乾燥後の重量比を測定して行った。
得られたエマルジョン型粘粘着剤をフィルムセパレーター上に乾燥膜厚20μmがとなるようドクターブレードを用いて塗工し、100℃−75秒乾燥させ、50μmPETフィルムをラミネートして塗工物を作製し、40℃−3日間エージングして、粘着シートを得た。
粘着シートの耐水性と被着体汚染性を以下に示す方法で評価した。結果を表1に記載する。
【0050】
<耐水性評価>
水浸漬前:剥離シートを剥がして、50μmPETフィルムをラミネートし、紫外可視近赤外分光光度計(V−570:日本分光株式会社製)を用いてヘーズを測定した。
水浸漬後:剥離シートを剥がして、25℃の水中へ浸漬し、24時間放置した後、取り出して、直ちに接着剤層に50μmPETフィルムをラミネートし、紫外可視近赤外分光光度計(V−570:日本分光株式会社製)を用いてヘーズを測定した。水浸漬前後でのヘーズの変化が小さいほど、粘着シートの外観変化が少ないことを示す。
【0051】
<被着体汚染性評価>
粘着シートを幅20mmの短冊状にカットし剥離紙を剥がして、被着体であるガラスに貼り付け、2kgロールで1往復し、貼付して24時間後において、23℃雰囲気下で、300mm/分の速さで180゜方向に剥離し、粘着シートが貼りつけられていたガラス表面の水の接触角を自動接触角計(CA−V型:協和界面科学株式会社製)にて測定した。
なお、粘着シートを貼りつけていない、清浄なガラス表面の水の接触角は20°であった。この角度が増加するにつれて、被着体が汚染されていることを意味する。
【0052】
(実施例2)
実施例1において、エージング条件を25℃−7日間に変更したこと以外は実施例1と同様の実験を行った。
【0053】
(実施例3)
塗工物のエージングをおこなわなかったこと以外は、実施例1と同様の実験をおこなった。
【0054】
(実施例4)
アクリル酸2−エチルヘキシル:50.4部、アクリル酸ブチル:40.5部、アクリル酸エチル:5部、メタクリル酸メチル:3部、アクリル酸:1部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン:0.1部、連鎖移動剤であるチオグリコール酸オクチル:0.01部を混合し、溶解させてモノマー混合物を得た。
これ以後は、実施例1と同様の実験を行った。
【0055】
(実施例5)
アクリル酸2−エチルヘキシル:50.5部、アクリル酸ブチル:40.5部、アクリル酸エチル:5部、メタクリル酸メチル:3部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル:1部、連鎖移動剤であるチオグリコール酸オクチル:0.01部を混合し、溶解させてモノマー混合物を得た。
この混合物に非反応性界面活性剤であるアルキル炭素数12、EO数18のポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート:0.5部と脱イオン水45.6部を加え、ホモミキサーにて撹拌し、50%粒子径が0.5μmのモノマーエマルジョンを得、該モノマーエマルジョンを滴下槽に仕込んだ。
【0056】
加熱装置、撹拌機、還流冷却装置、温度計、窒素導入管および滴下槽を備えた重合用容器に脱イオン水:46部とアルキル炭素数12、EO数18のポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート:0.1部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌して内温78℃まで昇温させて、5%過硫酸カリウム水溶液を固形分で0.065部を入れた。5分後に上記モノマーエマルジョンと、5%過硫酸アンモニウム水溶液を固形分として0.187部をそれぞれ別の滴下槽から3時間かけて滴下して重合を行った。
滴下終了後30分間80℃に保ち、次いで30分かけて内温を60〜65℃に設定し、t−ブチルハイドロパーオキサイド:0.01部とロンガリット:0.012部を5%水溶液にて10分おきに3回に分けて添加した。更に撹拌しながら1時間反応させた後、アンモニア水で中和し、175メッシュのナイロン濾布で濾過して不揮発分49.8%、粘度400mPa・s、50%粒子径140nmのポリマーエマルジョンを得た。
上記で得たポリマーエマルジョン100部に、消泡剤:0.1部(50重量%が水溶性成分)、濡れ剤として水溶性であるナトリウムジオクチルスルホサクシネート:0.1部、防腐剤:0.3部(5重量%が水溶性成分)、ポリイソシアネート系架橋剤として「タケネートWD−725」(三井武田ケミカル社製):0.5部(水溶性成分無し)を加え、さらに増粘剤:1部(30重量%が水溶性成分)で5000mPa・s(BL型粘度計、25℃で#4ロータ/60rpmにて測定)に増粘してエマルジョン型粘着剤を得た。なお、粘着剤の調製はホモミキサーにて行った。
これ以後は、実施例1と同様の実験を行った。
【0057】
(実施例6)
実施例4で得られたポリマーエマルジョン100部に、消泡剤:0.1部(50重量%が水溶性成分)、濡れ剤として水溶性であるナトリウムジオクチルスルホサクシネート:0.1部、防腐剤:0.3部(5重量%が水溶性成分)、平均粒子径3μm、真比重3.06のトルマリン粒子:10部を加え、さらに増粘剤:1部(30重量%が水溶性成分)で5000mPa・s(BL型粘度計、25℃で#4ロータ/60rpmにて測定)に増粘してエマルジョン型粘着剤を得た。なお、粘着剤の調製はホモミキサーにて行った。
これ以後は、実施例4と同様の実験を行った。
【0058】
(比較例1)
実施例1において、モノマーエマルジョンの50%粒子径を20μmに調整したが、撹拌をとめるとモノマー層と水層が分離したため、これ以後の実験は中止した。
【0059】
(比較例2)
非反応性界面活性剤であるアルキル炭素数12、EO数18のポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートを2部としたこと以外は実施例1と同様の実験を行った。
【0060】
(比較例3)
実施例1において用いた非反応性界面活性剤であるアルキル炭素数12、EO数18のポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートに代えて、反応性界面活性剤であるポリオキシエチレン(EO数:10)−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩を用いたこと以外は実施例1と同様の実験をおこなった。
【0061】
(比較例4)
メタクリル酸ラウリル:81部、アクリル酸2−エチルヘキシル:15部、メタクリル酸メチル:3部、アクリル酸:1部、連鎖移動剤であるチオグリコール酸オクチル:0.01部、ベンゾイルパーオキサイド:0.3部を混合し、溶解させてモノマー混合物を得た。
この混合物に非反応性界面活性剤であるアルキル炭素数12、EO数18のポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート:0.5部と脱イオン水45.6部を加え、ホモミキサーにて撹拌し、50%粒子径が0.4μmのモノマーエマルジョンを得た。
【0062】
加熱装置、撹拌機、還流冷却装置、温度計、窒素導入管を備えた重合用容器に脱イオン水:46部と上記にて得られたモノマーエマルジョンを仕込み、窒素雰囲気下で撹拌して、5%過硫酸カリウム水溶液を固形分で0.25部を入れ、内温78℃まで昇温させた。その後6時間かけて重合を行った。
次いで、内温を40℃まで下げて、アンモニア水で中和し、175メッシュのナイロン濾布で濾過して不揮発分49.8%、粘度120mPa・s、50%粒子径300nmのポリマーエマルジョンを得た。
上記で得たポリマーエマルジョン100部に、消泡剤:0.1部(50重量%が水溶性成分)、濡れ剤として水溶性であるナトリウムジオクチルスルホサクシネート:0.1部、防腐剤:0.3部(5重量%が水溶性成分)を添加し、さらに増粘剤:1部(30重量%が水溶性成分)で5000mPa・s(BL型粘度計、25℃で#4ロータ/60rpmにて測定。)に増粘してエマルジョン型粘着剤を得た。なお、粘着剤の調製はホモミキサーにて行った。
これ以後は、実施例1と同様の実験を行った。
【0063】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするラジカル重合性不飽和モノマー(A)100重量部に対して、非反応性界面活性剤(B)を0.05〜1重量部及び水を含有する、50%粒子径が10μm以下のモノマーエマルジョン(1)を重合して得られるポリマーエマルジョン(2)を含んでなるエマルジョン型粘着剤。
【請求項2】
エマルジョン型粘着剤が、さらに無機粒子(C)及び/又はゲル分率が99%以上の既架橋有機粒子(D)を含んでなることを特徴とする請求項1記載のエマルジョン型粘着剤。
【請求項3】
無機粒子(C)及びゲル分率が99%以上の既架橋有機粒子(D)の平均粒子径が0.01〜50μm、真比重が0.9〜6であり、(C)と(D)との合計量はポリマーエマルジョン(2)の乾燥重量100重量部に対して100重量部以下であることを特徴とする請求項1または2記載のエマルジョン型粘着剤。
【請求項4】
プラスチックフィルム基材の少なくとも一方の面に請求項1ないし3いずれか記載のエマルジョン型粘着剤から形成される粘着剤層が設けられてなる粘着シート。
【請求項5】
プラスチックフィルム基材が光学用フィルム基材であることを特徴とする請求項4記載の粘着シート。



【公開番号】特開2007−224186(P2007−224186A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48081(P2006−48081)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】