説明

エリア・アレイ・アダプタ

【課題】熱膨張や熱収縮に起因してリードのはんだ接合部で歪みを生じる。
【解決手段】BGA部品と回路基板とを電気的に接続するアダプタのリード106に、BGA部品のはんだボールを受ける窪み部202が形成された頂端部114と、回路基板上のパッド・パターンにはんだ接合されるピン状の底端部116と、非導電性のキャリアに取り付けられる支持部と、ヒンジ部204と、を一体に形成する。ヒンジ部204は、はんだ接合部の熱膨張・収縮を許容するように、4つの屈曲部を有する立体構造をなし、このヒンジ部204の変形を許容するように、ヒンジ部204とは反対側の片部304にギャップ部350を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の組立体に関し、特に、ボール・グリッド・アレイ(BGA)結合部を備えた電子部品を、リーデッド・グリッド・アレイ(Leaded Grid Array;LGA)結合部を備えた回路基板へ接合するためのアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の機能を実現する回路基板を製造する際、一般的な方法では、回路基板上に電気配線を”プリント”し、次いで、プリント基板に接合可能な(マイクロチップやキャパシタ等のような)非プリント部品を接合して、回路を完成する。このような接合技術では、複数の標準的な結合形式が用いられている。
【0003】
結合形式の一つであるボール・グリッド・アレイ(BGA)結合では、部品の各接合部にはんだのボールが設けられ、各接合部は基板全体を加熱する手法により結合されて、部品が回路基板へはんだ付けされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
BGA結合形式を用いた場合の不利な点の一つは、はんだと電子部品とが、これらが実装される回路基板に対し、熱膨張率/熱収縮率が異なることに起因して生じる。この相異によって、熱膨張や熱収縮に伴ってBGA結合の部位に不可避的に歪み(応力)が生じることとなる。BGA結合の性質上、特にはんだ接合部で、熱膨張や熱収縮に起因する余分な歪みを生じ易い。このような歪みによって、接合部の耐久性(寿命)が低下したり、破損の危険性を招くおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電気リード(線)を利用して、BGA接合形式を用いた部品をリーデッド・グリッド・アレイ(LGA)接合形式を用いた回路基板のプリント・パッド・パターンに接合するためのアダプタに関する。リードは、一端でBGA部品に接合可能であるとともに、他端で回路基板のプリント・パッド・パターンに接合可能である。これにより、BGA部品のLGA回路基板への電気的な接続がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】エリア・アレイ・アダプタを用いてボール・グリッド・アレイ部品を回路基板上のプリント・パッド・パターンに接合した装置の一実施例を示す分解図。
【図2A】アダプタのリードの一実施例を示す側面図。
【図2B】アダプタのリードの一実施例を示す斜視図。
【図3】本発明の一実施例に係るリードのヒンジ部を示す拡大図。
【図4】本発明の一実施例に係るリードの支持部を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1を参照して、BGA部品120と、エリア・アレイ・アダプタ122と、回路基板124と、を有する装置の一実施例が分解図で描かれている。この例では、BGA部品120には、部品機能部102の底面上にはんだボール104の配列が設けられている。配列内の各はんだボール104により、部品機能部102とエリア・アレイ・アダプタ122のような他のものとの電気的な接続を形成可能である。
【0008】
図1に示されるアダプタ122は、このエリア・アレイ・アダプタ122の内側に配置されたリード106を図示するように破断して描いている。各リード106は、導電性であり、BGA部品120と回路基板124との接続に必要な結線を行うものである。各リード106は、キャリア部材108に保持されている。キャリア部材108は、非導電性で、材料の組成によっては、回路基板124,アダプタ122及びBGA部品120の熱膨張や熱収縮を緩和・許容可能なものである。各リード106は、(BGA部品120のような)BGAデバイス上のはんだボール104と接合可能な丸く窪んだ頂部114を有している。また、各リード106は、回路基板124の母材112上のプリント・パッド・パターンと接合可能なピン状の底端部116を有している。上記アダプタの接合については、リード106とキャリア108に対する少しの変更で逆の構成とすることができ、従って、BGA接合部を備えた回路基板に対しリードレス部品を接合することもできる。
【0009】
図1の回路基板124は、LGA結合を利用して電子部品に接合可能なものである。回路基板124は一連(一組)のプリント・パッド110を有し、各プリント・パッド110は電子部品からの一つのピン(あるいはエリア・アレイ・アダプタ122からのリード106)にそれぞれ対応して設けられている。プリント・パッド110は回路基板の大きな母材112上に配置され、これにより、回路を完成するために必要な全ての接合が可能となっている。BGA部品120の他に複数の部品を一つの回路基板124に設けることも可能で、これにより様々な回路を形成することができる。
【0010】
図2Aは側面図、図2Bは斜視図であり、アダプタ122に適用可能で、アダプタ122と回路基板124との間、ならびにBGA部品120とアダプタ122との間のはんだ結合での歪みを緩和可能なリード106の形態の一例を示している。図示実施例の形態では、リード106には窪み部202が頂端部114上に設けられている。この窪み部202は、アダプタ122が接合するように設定されたはんだボール104(図1参照)の寸法よりも僅かに大きい寸法である。はんだ付けの前に、はんだボール104は窪み部202内に配置される。窪み部202は、はんだ付け工程の間、はんだボール104を所定位置に保持し、交差接合のような接合不良の発生を確実に防止する。
【0011】
はんだボール104はリード106の底端部116のピン接合部へヒンジ部204を介して電気的に接続されている。ヒンジ部204は、熱膨張や熱圧縮のような熱的な影響による歪みに対する可撓性を有し、これによって、歪みの大部分が吸収されて、はんだ結合部の耐久性が増加する。ヒンジ部204は、回路基板124にはんだ付けされるピン状の底端部116に連なっており、つまり一体的に形成されている。
【0012】
図2A及び図2Bに示されるアダプタのリード106は頂端部に窪み部202を有し、この窪み部202で、基板全体の加熱工程前のはんだボールを受容可能である。更にリード頂部には、下方へ延びる2つの片部302,304が設けられている。第1の片部302は、ヒンジ部204へ向けて下方へ延びる一方(図2A参照)、第2の片部304は、ギャップ部350を終端として下方へ延びている。また、ヒンジ部204は、ピン部116に連なる支持部352と連なっており、つまり一体的に形成されている。
【0013】
図3に示すように、ヒンジ部204は、4つの屈曲部310,320,330,340を備えた立体構造をなしている。頂部側の屈曲部310と底部側の屈曲部340とにより反対側ではギャップ部350へ向かう方向の可撓性が与えられる一方、中間の屈曲部320,330により反対側ではギャップ部350が離間する方向の可撓性が与えられている。ヒンジ部204とは反対側のギャップ部350の存在によって、熱膨張や熱収縮に応じてリード106が変形する余地が与えられている。
【0014】
ヒンジ部204とギャップ部350との直下位置に支持部352が設けられている。支持部352は、4つの翼部356と2つのギャップ358とを形成している。これに代えて、各翼部356の一端同士を連結することによって、リード106を、支持部352に1つのギャップのみが設けられた構成としてもよい。
【0015】
リード106をキャリア108内に取り付けると、支持部352がリード106を所定位置に保持する。先ずリード106をキャリア108内に挿入する際には、リード106の支持部352を互いに締め付ける。一旦リード106がキャリア108内に位置決めされると、リード材の自己復元力によって、リード106がギャップ358を有する元の形状に戻ろうとする。支持部352が元の形状に復元すると、各翼部356がキャリア108内の適切な大きさのスロットに嵌合し、これによって、リード106は、所定位置に保持されるとともに、熱的な歪みに対する曲げ変形がヒンジ部204により許容される状態のままとなっている。
【0016】
エリア・アレイ・アダプタ122を用いることで、リード106を介したBGA部品120のはんだボール104の接合部とLGA回路基板124のプリント・パッド110との良好な電気的接続が得られる。
【0017】
BGA部品120と回路基板124との間で永久的な接合を行うためには、はんだ接合を用いることができる。はんだ接合を行うためには、先ずBGA部品120がアダプタ122におけるリード106の頂端部114と接合する位置に配置される。リード106の底端部116は、回路基板124のプリント・パッド110上のはんだペースト,プリフォーム,あるいは他のはんだ付与手段の中に配置される。これら三者が適切な位置に配置された状態で、この装置はBGAからはんだボール104が溶けるのに十分な高温下にさらされる。次いで、はんだボール104が冷却されて、リード106の窪んだ頂端部114との恒久的なはんだ接合がなされる。このような工程は全体加熱工程と呼ばれている。同様に、全体加熱工程を利用してリード106のピン状の底端部116と回路基板124上のプリント・パッド110との間にはんだ結合が形成される。
【0018】
全体加熱工程では、部品が溶けたり損傷せず、かつはんだが十分に溶けるだけの熱を加える必要がある。加熱に用いられる温度は、使用されるはんだの種類や特定の部品の耐熱性に応じて異なる。特定の装置に与える適切な温度の設定技術は公知である。
【0019】
通常の使用においては、上述した開示内容によって製造される部品は、装置の組立及び設置後に加熱や冷却を繰り返し受けることとなる。BGA部品120と回路基板124とは異なる熱膨張率や熱収縮率を有するため、温度変化に応じて両者は異なる量で膨張・収縮する。熱膨張率や熱収縮率の相異により歪みが生じると、はんだ結合部が潜在的に弱められ、あるいは最終的に破壊されるおそれがある。
【0020】
本発明では、熱的な歪みはリード106のヒンジ部204を介して低減され、このヒンジ部204により電気的な接続性能を損なうことなく接合部に対する可撓性が与えられる。ヒンジ部204は、屈曲部310,320,330,340を介して熱的な歪みに応じてあらゆる方向へ撓み変形することができる。リード106の撓み変形により熱膨張率の相異が相殺され、はんだ結合部の歪みが低減される。本発明の範囲内であれば、異なる位置へのヒンジ部の配置や歪みを相殺する他の手法を用いた他のリードの形態を用いることもできる。
【0021】
以上のように本発明の一実施例について説明してきたが、当業者であれば本発明の範囲内での幾つかの変更を認識するであろう。このような理由により、後述する特許請求の範囲は本発明の真の範囲や趣旨を考慮して理解されるべきである。
【符号の説明】
【0022】
106…リード
108…キャリア
114…頂端部
116…底端部(ピン部)
120…BGA部品
122…アダプタ
124…回路基板
202…窪み部
204…ヒンジ部
302,304…片部
310,320,330,340…屈曲部
350…ギャップ部
352…支持部
356…翼部
358…ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板へ部品を接合する装置であって、上記回路基板と上記部品の一方がボール・グリッド・アレイ(BGA)接合部を有するとともに、他方がリーデッド・グリッド・アレイ(LGA)接合部を有し、
少なくとも一組の導電性のリードが取り付けられる非導電性のキャリアを有し、
上記リードは、第1の端部でBGA接合部に対し電気的な接続を形成可能であり、
上記リードは、上記第1の端部と反対側の第2の端部でLGA接合部に対し電気的な接続を形成可能であることを特徴とする装置。
【請求項2】
上記リードの上記第1の端部に、BGA接合部を有する電子部品あるいはBGA接合部を有する回路基板が接合されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
上記リードの上記第2の端部に、リード接合用のプリント・パッド・パターンを有する回路基板あるいはリード接合用のプリント・パッド・パターンを有する電子部品が接合されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
BGA部品又はBGA回路基板が、全体加熱はんだ手法を用いてこの装置とはんだ接合されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
リードレス部品又はLGA回路基板が、全体加熱はんだ手法を用いてこの装置とはんだ接合されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
上記リードは、熱膨張及び熱収縮に起因する歪みの少なくとも一部を低減可能な単一の導電性部品からなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
上記リードは、窪み部と、ヒンジ部と、支持部と、ピン部と、を有することを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
上記ヒンジ部が、下方へ延びる中間セクションに内側へ傾斜しつつ連なる頂部セクションを有し、
上記中間セクションが、外側へ傾斜する底部セクションに連なっており、
かつ、上記ヒンジ部が、4つの屈曲部を有することを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
上記支持部は、少なくとも2つの翼部と、少なくとも一つのギャップと、を有し、上記ギャップにより上記支持部を互いに締め付けることができるとともに、上記リードを所定位置に保持するように上記翼部がキャリアのスロット内に嵌合可能であることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項10】
上記支持部が4つの翼部と2つのギャップとにより構成されていることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
上記窪み部を有するカップ状の部分が、該部分から垂直に延びる少なくとも2つの片部を有することを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項12】
上記片部の一つが上記ヒンジ部に連なっており、上記ヒンジ部が上記支持部に連なっており、上記支持部がピン部に連なっていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
上記リードが、非導電性の材料からなるキャリア部材のキャビティ内に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
上記キャリア部材が少なくとも半剛体の材料からなることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
上記キャビティから上記リードを取り外すことなく上記リードに少なくとも一部の可撓性が残されるように、上記キャビティが形成されていることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項16】
回路基板に接合される少なくとも一つの電子部品を有し、
上記回路基板と上記電子部品の一方がボール・グリッド・アレイ(BGA)接合形式を有し、他方がリーデッド・グリッド・アレイ(LGA)接合形式を有し、
かつ、上記部品と回路基板とを電気的に接続するアダプタを有することを特徴とする回路基板装置。
【請求項17】
上記アダプタが、第1の端部でBGA接合部に、第2の端部でプリント・パッド・パターンに接合可能な一連のリードを有することを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
上記リードが、熱膨張及び熱収縮による接合部の歪みを低減可能であることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
上記リードが、熱膨張及び熱収縮に応じて変形可能な少なくとも一つの屈曲部を有するヒンジ部を有し、
上記リードにより上記部品と上記回路基板とが電気的に接続されることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項20】
上記リードが、窪み部と、ヒンジ部と、ギャップ部と、支持部と、ピン部と、を有する単一の導電性部品からなることを特徴とする請求項19に記載の装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−157701(P2010−157701A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270931(P2009−270931)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】