説明

エリスリトールの水素化分解物の製造方法

【課題】温和な条件下で、効率よく、エリスリトールを水素化分解して、ブタン−モノ、ジ、又はトリオールを得るエリスリトールの水素化分解物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のエリスリトールの水素化分解物の製造方法は、エリスリトール及び水素を触媒の存在下で反応させて、ブタン−モノ、ジ、及びトリオールから選択される少なくとも1種の化合物を生成させるエリスリトールの水素化分解物の製造方法であって、前記触媒としてイリジウム、白金、ロジウム、コバルト、パラジウム、及びニッケルからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を担体に担持した触媒を使用することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の存在下、エリスリトールを水素化分解してブタン−モノ、ジ、及びトリオールから選択される少なくとも1種の化合物を製造するエリスリトールの水素化分解物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、化学製品は主に原油が出発原料になっている。化学製品は炭素原子を主な構成成分とする。その炭素の流れを地球規模でみると、原油として地中に眠っていた炭素が、化学製品として地上にもたらされ、様々な用途で使用され、使用が終われば燃焼廃棄処分される。その際、炭素は二酸化炭素となり大気中に蓄積される。ガソリン、軽油等のように、燃焼そのものが使用目的である化学製品も多数存在する。この炭素の流れにより大気中に蓄積される二酸化炭素は、地球温暖化を引き起こし、異常気候や海面上昇等様々な害悪を引き起こすとされ、二酸化炭素排出量の削減が叫ばれている。
【0003】
その解決策の1つとして、植物由来の資源であるバイオマス(例えば、セルロース、グルコース、植物油等)を化学製品の出発原料に用いることが挙げられる。バイオマスの元となる植物は、その成長過程において光合成により二酸化炭素を吸収するため、その二酸化炭素の吸収量により化学製品の燃焼による二酸化炭素の排出量が相殺されるからである。
【0004】
化学製品の原料のうち、エチレンに代表される炭素数2の化合物はバイオエタノールの脱水により製造されることが知られており、プロピレン、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール等の炭素数3の化合物はバイオディーゼル製造の際に副生するグリセリンを水素化分解及び脱水することにより製造できることが知られている(非特許文献1等)。
【0005】
一方、炭素数4の化合物の原料としては、グルコース等の糖類から発酵技術で誘導されるエリスリトール、コハク酸、1,4−ブタンジオール、及び1−ブタノール等がある。なかでも、エリスリトールは4つの炭素すべてに水酸基を有するため、ブタン−モノ、ジ、及びトリオール(具体的には、1,4−ブタンジオールや、優れた燃料である1−ブタノール、火薬の原料として有用な1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、医薬・化粧品原料として有用な1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール等)へ誘導できる可能性を持つ。しかし、未だ、実用化されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Yoshinao Nakagawa,et al."Direct hydrogenolysis of glycerol into 1,3-propanediol over rhenium-modified iridium catalyst",Journal of Catalysis,2010,272,p.191-194.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、温和な条件下で、効率よく、エリスリトールを水素化分解して、ブタン−モノ、ジ、又はトリオールを得るエリスリトールの水素化分解物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、触媒として、少なくとも、イリジウム、白金、ロジウム、コバルト、パラジウム、及びニッケルからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を担体に担持した触媒を使用すると、温和な条件下で、効率よくエリスリトールを水素化分解して、ブタン−モノ、ジ、又はトリオールを得ることができることを見いだした。本発明は前記知見に基づいて完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明はエリスリトール及び水素を触媒の存在下で反応させて、ブタン−モノ、ジ、及びトリオールから選択される少なくとも1種の化合物を生成させるエリスリトールの水素化分解物の製造方法であって、前記触媒としてイリジウム、白金、ロジウム、コバルト、パラジウム、及びニッケルからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を担体に担持した触媒を使用することを特徴とするエリスリトールの水素化分解物の製造方法を提供する。
【0010】
前記触媒としては、イリジウム、白金、ロジウム、コバルト、パラジウム、及びニッケルからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を担体に担持した触媒と共に、レニウム、モリブデン、タングステン、及びマンガンからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を併用することが好ましい。
【0011】
前記レニウム、モリブデン、タングステン、及びマンガンからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分は、担体に担持した状態で使用することが好ましい。
【0012】
前記触媒としては、特に、少なくともイリジウム又はロジウムを担体に担持した触媒を使用することが好ましく、イリジウム、白金、ロジウム、コバルト、パラジウム、及びニッケルからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分と、レニウム、モリブデン、タングステン、及びマンガンからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を1/50〜6/1[前者/後者(モル比)]の割合で含有することが好ましい。
【0013】
イリジウム、白金、ロジウム、コバルト、パラジウム、及びニッケルからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を担持する担体、及びレニウム、モリブデン、タングステン、及びマンガンからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を担持する担体は、同一又は異なって、無機酸化物が好ましく、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ、マグネシア、及びゼオライトから選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0014】
本発明のエリスリトールの水素化分解物の製造方法は、酸の共存下で反応させることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るエリスリトールの水素化分解物の製造方法によれば、ブタン−モノ、ジ、又はトリオールを効率よく製造することができ、生産性に優れる。また、従来は原油を出発原料として合成していた、ブタン−モノ、ジ、又はトリオールを、植物由来の資源であるエリスリトールから温和な条件で効率よく製造することができるため、大気中の二酸化炭素総量の増減に影響を与えず、カーボンニュートラルであり、二酸化炭素排出量の削減に大いに貢献することができる。更に、本発明に係るエリスリトールの水素化分解物の製造方法は、触媒として固体触媒を使用するため、反応系からの分離が容易であり、且つ容易に再生できるため、コスト面で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、トリクルベッド反応器を使用した場合の、本発明のエリスリトールの水素化分解物の製造方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るエリスリトールの水素化分解物の製造方法は、エリスリトール及び水素を触媒の存在下で反応させて、ブタン−モノ、ジ、及びトリオールから選択される少なくとも1種の化合物を生成させるエリスリトールの水素化分解物の製造方法であって、前記触媒としてイリジウム、白金、ロジウム、コバルト、パラジウム、及びニッケルからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を担体に担持した触媒を使用することを特徴とする。
【0018】
[触媒]
本発明の触媒としては、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、及びニッケル(Ni)からなる群より選択される少なくとも1種の金属成分(以後、「イリジウム等」と称する場合がある)を担体に担持した触媒を使用する。イリジウム等が担体に担持される状態としては、特に限定されることがなく、例えば、金属単体、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物又は金属錯体の状態等を挙げることができる。
【0019】
本発明の触媒としては、なかでも、反応活性に優れる点、及び工業上特に有用な1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオールを優れた選択率で生成させることができる点で、少なくともイリジウム又はロジウム(特に、イリジウム)を担体に担持した触媒を使用することが好ましい。
【0020】
イリジウム等を担持する担体としては、例えば、無機酸化物や活性炭等の無機物担体、イオン交換樹脂等の有機物担体等を挙げることができる。本発明におけるイリジウム等を担持する担体としては、なかでも、反応活性に優れる点で無機物担体が好ましく、特に無機酸化物が好ましい。無機酸化物としては、例えば、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al23)、マグネシア(MgO)、これらの無機酸化物の2種以上の複合体(例えば、ゼオライト等)等を挙げることができる。本発明においては、特に、反応活性に優れる点で、シリカ(SiO2)、又はゼオライトが好ましい。
【0021】
イリジウム等を担体する担体の平均粒径としては、特に限定されないが、例えば1〜10000μmが好ましく、より好ましくは10〜10000μmである。また、イリジウム等を担体する担体の形状は、粉末状、粒状、成型(成型体状)等、特に限定されない。
【0022】
また、イリジウム等を担持する担体の比表面積としては、例えば50m2/g以上(例えば50〜1500m2/g、好ましくは100〜1000m2/g)である。比表面積が上記範囲を下回ると、イリジウム等の担持量が低下し、単位重量当たりの触媒活性が低下する傾向がある。
【0023】
イリジウム等の担体への担持量としては、特に限定されないが、イリジウム等と担体の総量(100重量%)に対して、0.01〜20重量%程度が好ましく、特に好ましくは0.5〜15重量%、最も好ましくは1.0〜10重量%である。イリジウム等の担持量が0.01重量%未満であると、エリスリトールの転化率が低下する傾向がある。一方、イリジウム等の担持量が20重量%を超えると、不経済となる場合がある。
【0024】
イリジウム等の担体への担持方法としては、特に限定されず、公知乃至慣用の担持方法により行うことができ、例えば、イリジウム等を含有する溶液(例えば、塩化イリジウム酸水溶液、塩化ロジウム・三水和物水溶液等)を担体に含浸させた後、乾燥させ、次いで焼成する方法により担持させることができる。尚、イリジウム等を含有する溶液の濃度や、担体への含浸、及び乾燥処理の施用回数を調整することにより、イリジウム等の担持量を制御することができる。また、イリジウム等を含有する溶液を含浸させる際の温度、該溶液を含浸させた担体を乾燥させる際の温度は、特に限定されない。
【0025】
イリジウム等を含有する溶液を含浸させ、乾燥させた後の担体を焼成する際の温度としては、例えば、大気中において400〜700℃程度、好ましくは450〜550℃程度である。また、焼成する際の雰囲気は、上述のように大気中に限定されず、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気、水素等の還元性ガス雰囲気等で焼成することもできる。
【0026】
イリジウム等を担体に担持した触媒の平均粒径としては、特に限定されないが、過剰な圧力損失を伴わない点で、1〜10000μmが好ましく、より好ましくは10〜10000μmである。また、イリジウム等を担体に担持した触媒の形状は、粉末状、粒状、成型(成型体状)等、特に限定されない。
【0027】
また、イリジウム等を担体に担持した触媒の比表面積としては、例えば50m2/g以上(例えば、50〜1500m2/g、好ましくは100〜1000m2/g)である。比表面積が上記範囲を下回ると、単位重量当たりの触媒活性が低下する傾向がある。
【0028】
本発明の触媒は、イリジウム等を担体に担持した触媒と共に、レニウム、モリブデン、タングステン、及びマンガンからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分(以後、「レニウム等」と称する場合がある)を併用することが好ましい。レニウム等を併用することにより、エリスリトールの転化率を向上することができ、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオールの選択率を高めることができる。選択率が高まる理由は明らかではないが、イリジウム等とレニウム等との何らかの相互作用により、レニウム等がエリスリトールの一つの水酸基と相互作用を持った状態でイリジウム等が隣接する水酸基を還元すると考えられる。また、イリジウム等とレニウム等の相互作用により、イリジウム等の酸化還元状態が変化してイリジウム等の還元能力が高まるとも考えられる。
【0029】
触媒に含まれるレニウム等の態様としては、特に限定されることがなく、例えば、金属単体、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物又は金属錯体の状態で含まれる態様や、金属単体、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物又は金属錯体として担体に担持された状態で含まれる態様等を挙げることができる。
【0030】
レニウム等を担持する担体としては、上記イリジウム等を担持する担体と同様の例を挙げることができる。本発明におけるレニウム等を担持する担体としては、なかでも、反応活性に優れる点で無機酸化物が好ましく、特に好ましくは、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al23)、マグネシア(MgO)、及びゼオライトから選択される少なくとも1種の化合物であり、最も好ましくは、シリカ(SiO2)、ゼオライトである。また、レニウム等を担持する担体はイリジウム等を担持する担体と同一であってもよく異なっていてもよい。本発明においては、なかでも、よりすぐれた触媒作用を発揮することができる点で、レニウム等を担持する担体とイリジウム等を担持する担体が同一であること(すなわち、イリジウム等とレニウム等が同一の担体に担持されていること)が好ましい。
【0031】
レニウム等を担体に担持させる場合、その方法は特に限定されず、公知乃至慣用の担持方法を利用することができる。具体的には、例えば、レニウム等含有溶液を担体に含浸し、乾燥させた後、焼成する方法等を挙げることができる。また、レニウム等を、上記イリジウム等と同じ担体に担持させる場合は、例えば、イリジウム等を含有する溶液を含浸させ、乾燥させた後の担体にレニウム等含有溶液を含浸し、乾燥させた後、焼成する方法等を挙げることができる。尚、上記レニウム等含有溶液を含浸させる際の温度、該溶液を含浸させた担体を乾燥させる際の温度、及び上記担体を焼成する際の温度は特に限定されない。
【0032】
本発明における触媒としては、なかでも、少なくともイリジウム又はロジウム(特に、イリジウム)を担体に担持した触媒と共に、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、及びマンガン(Mn)からなる群より選択された少なくとも1種の金属成分[特に、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)、又はタングステン(W)]を、担体に担持した状態(特に、イリジウム等とレニウム等を同じ担体に担持した状態)で使用することが、よりすぐれた触媒作用を発揮することができる点、及び反応後の触媒を容易に回収することができる点で好ましい。
【0033】
触媒として、イリジウム等を担体に担持した触媒と共にレニウム等を併用する場合、レニウム等の使用量が増加するにつれて、エリスリトールの転化率を向上することができる。また、レニウム等の使用量が増加するにつれて、トリオールの選択率が減少し、ジオール、及びモノオールの選択率が高くなる傾向がある。レニウム等(2種類以上含有する場合は合計量)とイリジウム等(2種類以上含有する場合は合計量)のモル比(前者/後者)は、例えば、1/50〜6/1程度(好ましくは1/4〜4/1、特に好ましくは1/3〜3/1)の範囲内であることが好ましい。レニウム等の使用量は、反応温度、反応時間、及び目的とする生成化合物によって、前記範囲内で適宜調整することができる。
【0034】
また、本発明の触媒は、容易に再利用が可能であり、例えば、水で洗浄し110℃程度の温度で1時間程度加熱して乾燥し、空気中で500℃程度の温度で焼成することにより再生することができる。本発明の触媒は高い活性及び選択性を保持したまま繰り返し利用することができ、例えば4回程度再利用が可能である。
【0035】
[原料液]
本発明に係るエリスリトールの水素化分解物の製造方法において用いられる原料液は、エリスリトールを必須成分として含有する。上記原料液は、エリスリトールの他に水や有機溶媒等の溶媒を含有してもよく、溶媒を実質的に含有しなくてもよい。上記有機溶媒としては、特に限定されることがなく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等を挙げることができる。本発明の原料液としては、なかでも、反応性に優れる点で、溶媒として水を含有することが好ましい。
【0036】
上記原料液に用いられるエリスリトールとしては、特に限定されず、例えば、グルコース等の糖類から発酵技術で誘導されるエリスリトールを使用することができる。
【0037】
上記原料液におけるエリスリトールの濃度(原料液100重量%に対するエリスリトールの含有量)は、特に限定されることがなく、例えば5〜98重量%程度である。前記範囲内において、エリスリトールの濃度が上昇するに伴い、1,4−ブタンジオールや1,2,4−ブタントリオールの選択率が上昇する傾向がある。エリスリトールの濃度は好ましくは20〜90重量%、さらに好ましくは40〜90重量%、特に好ましくは60〜80重量%である。エリスリトールの濃度が5重量%未満であると、エリスリトールの反応率(転化率)が低下する場合がある。一方、エリスリトールの濃度が98重量%を超えると、粘度が高くなり、操作が煩雑になる場合がある。
【0038】
上記原料液には、上述のエリスリトール、水、有機溶媒のほか、例えば、酸を添加してもよい。上記酸としては、特に限定されず、公知乃至慣用の酸、例えば、硫酸、リン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、酸性イオン交換樹脂(例えば、商品名「Amberlyst 70」(オルガノ(株)製)等)等を挙げることができる。酸を添加することにより水素化分解反応を促進することができる。
【0039】
酸の使用量としては、イリジウム等に対して、例えば0.1〜10モル倍程度、好ましくは0.5〜3モル倍である。酸を添加した場合は、反応終了後、中和工程を設けることが好ましい。
【0040】
上記原料液には、本発明の効果を阻害しない範囲でその他の成分(例えば、アルコール類等)を含有させてもよい。また、上記原料液には、例えば、エリスリトールの原料に由来する不純物(例えば、長鎖脂肪酸、金属塩、チオールやチオエーテル等の含硫黄化合物、アミン等の含窒素化合物等)が含まれる場合があるが、このような不純物は触媒を劣化させる恐れがあるため、公知乃至慣用の方法(例えば、蒸留、吸着、イオン交換、晶析、抽出等)により、原料液から除去することが好ましい。
【0041】
上記原料液は、特に限定されないが、エリスリトールと、必要に応じて水や有機溶媒、その他の成分とを均一に混合することにより得られる。混合には、公知乃至慣用の撹拌機等を使用してもよい。
【0042】
[水素]
本発明のエリスリトールの水素化分解物の製造方法において使用する水素(水素ガス)としては、実質的に水素のみの状態でもよく、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス等により希釈した状態でもよい。また、本発明のエリスリトールの水素化分解物の製造方法により得られた反応混合物から回収した水素を再利用することもできる。
【0043】
[反応器]
本発明のエリスリトールの水素化分解物の製造方法において使用する反応器としては、特に限定されることがなく、例えば、流動床反応器、固定床反応器等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、固定床反応器が好ましく、特にトリクルベッド反応器が好ましい。トリクルベッド反応器とは、固体触媒が充填された触媒充填層を内部に有し、該触媒充填層に対して液体(本発明では、原料液)と気体(本発明では、水素)とを共に、反応器の上方から下向流(気液下向並流)で流通する形式の反応器(固定床連続反応装置)である。
【0044】
図1は、トリクルベッド反応器を使用した場合のエリスリトールの水素化分解物の製造方法の一例を示すフロー図である。図1において、1は反応器(トリクルベッド反応器)、2は原料液の供給ライン、3は水素の供給ラインを示す。また、4は反応混合物取り出しライン、5は高圧気液分離器、6は水素リサイクルラインを示す。以下、図1を参照しながら、トリクルベッド反応器を使用したエリスリトールの水素化分解物の製造方法を簡単に説明する。
【0045】
まず、トリクルベッド反応器1の上方から原料液と水素とを連続的に供給し、その後、反応器の内部で原料液中のエリスリトールと水素とを、触媒充填層における触媒の存在下で反応させ、エリスリトールの水素化分解物(反応生成物)を生成させる。そして、当該エリスリトールの水素化分解物を含む反応混合物をトリクルベッド反応器1の下方の反応混合物取り出しライン4から連続的に取り出し、その後、必要に応じて、高圧気液分離器5により該反応混合物から水素を分離した後、精製工程にてエリスリトールの水素化分解物を精製・単離する。また、高圧気液分離器5により分離した水素は、水素リサイクルライン6を通じて、再度トリクルベッド反応器1に供給して反応に再利用することもできる。
【0046】
反応器としてトリクルベッド反応器を採用すると、原料であるエリスリトールを気化することなく、気液固三相で反応を進行させることができるため、コスト面で有利である。また、トリクルベッド反応器中では、エリスリトールを含有する原料液が触媒表面に薄膜を形成しながら下方に流通するため、原料液と水素の界面(気液界面)から触媒表面までの距離が短く、原料液に溶解した水素の触媒表面への拡散が容易となり、エリスリトールの水素化分解物を効率的に生成することができる。また、エリスリトールと水素の反応生成物からの触媒の分離プロセスも不要で、触媒の再生処置も容易であるため、製造プロセスが簡便でありコスト面で優れる。
【0047】
尚、上記トリクルベッド反応器の材質や形状、サイズ(例えば、塔径や塔長等)等は、特に限定されず、公知乃至慣用のトリクルベッド反応器の中から、反応の規模等に応じて適宜選択することができる。また、上記トリクルベッド反応器は、単一の反応管により構成されるものであってもよいし、複数の反応管により構成された多段反応器であってもよい。上記トリクルベッド反応器が多段反応器である場合の反応管の数は、適宜選択でき、特に限定されない。また、上記トリクルベッド反応器が多段反応器である場合には、当該反応器は、複数の反応管が直列に設置されたものであってもよいし、複数の反応管が並列に配置されたものであってもよい。
【0048】
更に、トリクルベッド反応器の内部における触媒充填層は、必要に応じて、例えば、反応熱による過熱を抑制するために触媒充填層を2以上の位置に分割(分離)して配置してもよい。
【0049】
原料液の液基準空間速度(LHSV)としては、特に限定されることがなく、例えば0.05〜100hr-1程度、好ましくは0.1〜50hr-1、特に好ましくは0.5〜20hr-1である。原料液の液基準空間速度が0.05hr-1未満であると、エリスリトールの水素化分解物の生産性が低下する場合がある。一方、原料液の液基準空間速度が100hr-1を超えると、エリスリトールの反応率(転化率)が低下する場合がある。尚、上記液基準空間速度は、反応器への原料液の供給速度(体積流量)の触媒充填体積に対する比[原料液の供給速度(L/hr-1)/触媒充填体積(L)]で表される。
【0050】
[エリスリトールの水素化分解物の製造方法]
本発明のエリスリトールの水素化分解物の製造方法は、エリスリトール及び水素を触媒の存在下で反応させて、ブタン−モノ、ジ、及びトリオールから選択される少なくとも1種の化合物を生成させるエリスリトールの水素化分解物の製造方法であって、前記触媒としてイリジウム、白金、ロジウム、コバルト、パラジウム、及びニッケルからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を担体に担持した触媒を使用することを特徴とする。
【0051】
反応に付す水素とエリスリトールのモル比[水素(mol)/エリスリトール(mol)]としては、例えば、1〜100程度、好ましくは1.5〜50程度、特に好ましくは2〜30程度である。上記水素とエリスリトールのモル比が1未満であると、エリスリトールの反応率(転化率)が低下する場合がある。一方、上記水素とエリスリトールのモル比が100を超えると、未反応水素回収のための用役コストが増加する傾向がある。
【0052】
上記反応におけるエリスリトールと水素の反応温度は、特に限定されることがなく、例えば50〜200℃程度、好ましくは60〜150℃、特に好ましくは70〜130℃である。反応温度が50℃未満であると、エリスリトールの反応率(転化率)が低下する場合がある。一方、反応温度が200℃を超えると、エリスリトールの分解(例えば、炭素−炭素結合の開裂等)が生じやすく、ブタン−モノ、ジ、又はトリオールの選択率が低下する場合がある。
【0053】
上記反応におけるエリスリトールと水素の反応時間は、特に限定されないが、0.1〜100時間が好ましく、より好ましくは1〜72時間、さらに好ましくは10〜60時間、最も好ましくは20〜60時間である。反応時間が0.1時間未満であると、エリスリトールの反応率(転化率)が低下する場合がある。一方、反応時間が100時間を超えると、エリスリトールが完全に水素化分解されたブタンの生成が急激に増える場合がある。
【0054】
上記反応におけるエリスリトールと水素の反応圧力(エリスリトールと水素の反応における水素圧)は、特に限定されないが、1〜50MPaが好ましく、より好ましくは3〜30MPa、さらに好ましくは5〜15MPaである。反応圧力が1MPa未満であると、エリスリトールの反応率(転化率)が低下する場合がある。一方、反応圧力が50MPaを超えると、反応器が高度な耐圧性を備える必要があるため、製造コストが高くなる傾向がある。
【0055】
本発明のエリスリトールの水素化分解物の製造方法は、回分形式、半回分形式、連続流通形式等を任意に選択した形式により実施することができる。また、所定量のエリスリトールから得られるエリスリトールの水素化分解物の量を増加させたい場合には、水素化分解実施後の未反応エリスリトールを分離回収してリサイクルするプロセスを採用してもよい。このリサイクルプロセスを採用すれば、エリスリトールを所定量使用したときのエリスリトールの水素化分解物の生成量を高めることができる。
【0056】
本発明のエリスリトールの水素化分解物の製造方法は、上記反応工程以外にも、必要に応じて他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、原料液と水素を反応器に供給する前に、原料液を調製・精製する工程、反応器から排出(流出)された反応混合物(例えば、エリスリトール、水素、及びエリスリトールの水素化分解物等の混合物)を分離・精製する工程等を挙げることができる。尚、これらの工程は、本発明のエリスリトールの水素化分解物の製造方法の反応工程とは別の工程で実施してもよく、上記反応工程と一連の工程として実施してもよい。
【0057】
本発明のエリスリトールの水素化分解物の製造方法は、エリスリトールと水素との反応を上記特定の触媒の存在下で行うものであり、ブタン−モノ、ジ、及びトリオールから選択される化合物を高い選択率で得ることができる。本発明のエリスリトールの水素化分解物の製造方法において、エリスリトールの水素化分解反応を、トリクルベッド反応器中にて気液固三相で進行させると、原料のエリスリトールを気化する必要がなく、また、反応器中で反応を効率的に進行させることができ、高い生産性でブタン−モノ、ジ、及びトリオールから選択される化合物を製造することができる。さらに、触媒分離プロセスが不要であり、該触媒の再生処理が容易であるため、より簡便なプロセスで、且つ経済的に有利にブタン−モノ、ジ、及びトリオールから選択される化合物を製造することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0059】
調製例1(触媒の調製)
担体としてシリカ(商品名「キャリアクトG−6」、平均粒径:10μm、比表面積:535m2/g、富士シリシア化学(株)製)に、Ir濃度が4.47wt%になるように調製した塩化イリジウム酸(H2IrCl6)水溶液を滴下して、前記担体全体を湿潤させ、110℃で乾燥した。その後、この滴下と乾燥を繰り返して、Ir担持量がシリカに対して4wt%になるように調整して、イリジウム担持シリカ(1)を得た。
【0060】
調製例2(触媒の調製)
調製例1で得られたイリジウム担持シリカ(1)に、Re濃度が3wt%になるように調製した過レニウム酸アンモニウム(NH4ReO4)水溶液を、前記と同様に滴下と乾燥を繰り返して、Re担持量とIrの担持量(Re/Ir:モル比)が1になるようにレニウムを担持し、空気雰囲気下で、500℃、3時間焼成して、イリジウム・レニウム担持シリカ(1)(Re/Ir=1)を得た。
【0061】
調製例3(触媒の調製)
Re担持量とIrの担持量(Re/Ir:モル比)が0.25になるように調整した以外は調製例2と同様にして、イリジウム・レニウム担持シリカ(2)(Re/Ir=0.25)を得た。
【0062】
調製例4(触媒の調製)
Re担持量とIrの担持量(Re/Ir:モル比)が2になるように調整した以外は調製例2と同様にして、イリジウム・レニウム担持シリカ(3)(Re/Ir=2)を得た。
【0063】
調製例5(触媒の調製)
担体として、シリカ(商品名「キャリアクトG−6」、平均粒径:10μm、比表面積:535m2/g、富士シリシア化学(株)製)に代えて、シリカ(商品名「キャリアクトQ−6」、平均粒径:1mm〜3mm、比表面積:535m2/g、富士シリシア化学(株)製)を使用した以外は調製例1と同様にして、イリジウム担持シリカ(2)を得た。
【0064】
得られたイリジウム担持シリカ(2)を使用した以外は調製例4と同様にしてイリジウム・レニウム担持シリカ(4)(Re/Ir=2)を得た。
【0065】
調製例6(触媒の調製)
調製例1で得られたイリジウム担持シリカ(1)に、Mo濃度が3wt%になるように調製したモリブデン酸アンモニウム水溶液((NH46Mo724・4H2O、和光純薬工業(株)製)を、前記と同様に滴下と乾燥を繰り返して、Mo担持量とIrの担持量(Mo/Ir:モル比)が0.25になるようにモリブデンを担持し、空気雰囲気下で、500℃、3時間焼成して、イリジウム・モリブデン担持シリカ(Mo/Ir=0.25)を得た。
【0066】
調製例7(触媒の調製)
調製例1で得られたイリジウム担持シリカ(1)に、W濃度が3wt%になるように調製したタングステン酸アンモニウム水溶液((NH4101241・5H2O、和光純薬工業(株)製)を、前記と同様に滴下と乾燥を繰り返して、W担持量とIrの担持量(W/Ir:モル比)が0.25になるようにタングステンを担持し、空気雰囲気下で、500℃、3時間焼成して、イリジウム・タングステン担持シリカ(W/Ir=0.25)を得た。
【0067】
調製例8
担体としてシリカ(商品名「キャリアクトG−6」、平均粒径:10μm、比表面積:535m2/g、富士シリシア化学(株)製)に、Rh濃度が3wt%になるように調製した塩化ロジウム三水和物(RhCl3・3H2O)水溶液を滴下して、前記担体全体を湿潤させ、110℃で乾燥した。その後、この滴下と乾燥を繰り返して、Rh担持量がシリカに対して4wt%になるように調整して、ロジウム担持シリカを得た。
【0068】
調製例9
調製例8で得られたロジウム担持シリカに、Re濃度が3wt%になるように調製した過レニウム酸アンモニウム(NH4ReO4)水溶液を、前記と同様に滴下と乾燥を繰り返して、Re担持量とRhの担持量(Re/Rh:モル比)が0.5になるようにレニウムを担持し、空気雰囲気下で、500℃、3時間焼成して、ロジウム・レニウム担持シリカ(Re/Rh=0.5)を得た。
【0069】
調製例10(触媒の調製)
調製例8で得られたロジウム担持シリカに、Mo濃度が3wt%になるように調製したモリブデン酸アンモニウム水溶液((NH46Mo724・4H2O、和光純薬工業(株)製)を、前記と同様に滴下と乾燥を繰り返して、Mo担持量とRhの担持量(Mo/Rh:モル比)が0.13になるようにモリブデンを担持し、空気雰囲気下で、500℃、3時間焼成して、ロジウム・モリブデン担持シリカ(Mo/Rh=0.13)を得た。
【0070】
調製例11(触媒の調製)
調製例8で得られたロジウム担持シリカに、W濃度が3wt%になるように調製したタングステン酸アンモニウム水溶液((NH4101241・5H2O、和光純薬工業(株)製)を、前記と同様に滴下と乾燥を繰り返して、W担持量とRhの担持量(W/Rh:モル比)が0.13になるようにタングステンを担持し、空気雰囲気下で、500℃、3時間焼成して、ロジウム・タングステン担持シリカ(W/Rh=0.13)を得た。
【0071】
実施例1
触媒として、調製例2で得られたイリジウム・レニウム担持シリカ(1)(Re/Ir=1)を150mg使用した。水1g、エリスリトール4g、添加物として1%硫酸150mg(イリジウムに対して0.5モル倍、1当量)を加え、反応温度80℃、水素圧力8MPaで、24時間反応を行った。
エリスリトールの転化率は28.5%で、1,2,3−ブタントリオールが21.1%、1,2,4−ブタントリオールが29.5%、1,4ブタンジオールが25.2%、1,3−ブタンジオールが7.5%、1,2−ブタンジオールが2.5%、2,3−ブタンジオールが2.3%、1−ブタノールが5.9%、2−ブタノールが5.3%得られた。
【0072】
実施例2
反応時間を24時間から48時間に変更した以外は実施例1と同様にした。
エリスリトールの転化率は39.0%で、1,2,3−ブタントリオールが21.1%、1,2,4−ブタントリオールが21.7%、1,4ブタンジオールが26.9%、1,3−ブタンジオールが7.0%、1,2−ブタンジオールが1.5%、2,3−ブタンジオールが0.3%、1−ブタノールが15.7%、2−ブタノールが5.1%得られた。
【0073】
実施例3
反応時間を24時間から72時間に変更した以外は実施例1と同様にした。
エリスリトールの転化率は46.3%で、1,2,3−ブタントリオールが22.2%、1,2,4−ブタントリオールが14.8%、1,4ブタンジオールが31.9%、1,3−ブタンジオールが9.2%、1,2−ブタンジオールが1.5%、2,3−ブタンジオールが1.5%、1−ブタノールが13.5%、2−ブタノールが4.4%得られた。
【0074】
実施例4
反応時間を24時間から96時間に変更した以外は実施例1と同様にした。
エリスリトールの転化率は55.0%で、1,2,3−ブタントリオールが19.8%、1,2,4−ブタントリオールが11.2%、1,4ブタンジオールが35.5%、1,3−ブタンジオールが10.6%、1,2−ブタンジオールが1.5%、2,3−ブタンジオールが1.0%、1−ブタノールが15.6%、2−ブタノールが3.9%得られた。
【0075】
実施例5
触媒として、調製例3で得られたイリジウム・レニウム担持シリカ(2)(Re/Ir=0.25)を300mg使用した。水1g、エリスリトール4g、添加物として1%硫酸300mg(イリジウムに対して0.5モル倍、1当量)を加え、反応温度100℃、水素圧力8MPaで、48時間反応を行った。
エリスリトールの転化率は72.7%で、1,2,3−ブタントリオールが17.7%、1,2,4−ブタントリオールが2.6%、1,4ブタンジオールが23.5%、1,3−ブタンジオールが16.4%、1,2−ブタンジオールが2.8%、2,3−ブタンジオールが3.4%、1−ブタノールが22.1%、2−ブタノールが7.3%得られた。
【0076】
実施例6
触媒量を150mgから300mgへ、添加物として1%硫酸を150mgから300mg(イリジウムに対して0.5モル倍、1当量)へ、反応温度を80℃から100℃へ変更した以外は実施例1と同様にした。
エリスリトールの転化率は62.8%で、1,2,3−ブタントリオールが18.4%、1,2,4−ブタントリオールが5.3%、1,4ブタンジオールが33.2%、1,3−ブタンジオールが12.0%、1,2−ブタンジオールが1.3%、2,3−ブタンジオールが1.5%、1−ブタノールが20.5%、2−ブタノールが5.9%得られた。
【0077】
実施例7
触媒として、調製例4で得られたイリジウム・レニウム担持シリカ(3)(Re/Ir=2)を300mg使用し、反応温度を80℃から100℃へ、反応時間を24時間から16時間に変更した以外は実施例1と同様にした。
エリスリトールの転化率は70.4%で、1,2,3−ブタントリオールが20.9%、1,2,4−ブタントリオールが7.5%、1,4ブタンジオールが33.2%、1,3−ブタンジオールが12.0%、1,2−ブタンジオールが1.3%、2,3−ブタンジオールが2.3%、1−ブタノールが18.5%、2−ブタノールが5.6%得られた。
【0078】
実施例8
触媒として、調製例5で得られたイリジウム・レニウム担持シリカ(4)(Re/Ir=2)4gを触媒籠に入れ用いた。水110g、エリスリトール20gを加え、反応温度120℃、水素圧力12MPaで、6時間反応を行った。
エリスリトールの転化率は13.6%で、1,2,3−ブタントリオールが49.0%、1,2,4−ブタントリオールが15.0%、1,4ブタンジオールが6.9%、1,3−ブタンジオールが7.2%、1,2−ブタンジオールが8.6%、2,3−ブタンジオールが2.0%、1−ブタノールが6.0%、2−ブタノールが4.9%得られた。
【0079】
実施例9〜38、比較例1〜6
下記表に記載の通りの条件下でエリスリトールの水素化分解反応を行った。結果を下記表にまとめて示す。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【0084】
【表5】

【0085】
【表6】

【0086】
【表7】

【0087】
尚、実施例1〜7の反応及び反応物の定量は下記方法により行った。
ガラス製内缶のあるSUS 316製190mLオートクレーブ及びテフロン(登録商標)コーティングをされたマグネチックスターラーチップで構成された反応器と、マグネチックスターラーと電気炉からなる加熱・撹拌装置を用いた。
所定量の触媒及び水をいれ、1MPaの水素を張り込み、常圧まで排気する水素置換作業を三回繰り返したのち、缶内が200℃になった時に、全圧が8MPaになるように水素を張り込み、200℃で1時間触媒を還元した。
還元後、オートクレーブを冷却、開圧し、所定量のエリスリトール、水、および所定の添加物を加えて、再度1MPa水素で3回水素置換を行った。所定の温度で、所定の圧力になるように水素を張り込み、撹拌回転数250rpmにて所定の時間反応を行った。
反応後、オートクレーブを室温まで冷却後、開圧し、排気ガスおよび反応液をガスクロマトフィーにて分析した。
【0088】
また、実施例8の反応及び反応物の定量は下記方法で行った。
触媒固定用のチタン製網籠と撹拌翼のついた電磁式撹拌装置を装着したガラス製内缶のあるSUS 316製500mLオートクレーブとオイルバスからなる加熱装置を用いた。
所定量の触媒及び水をいれ、1MPaの水素を張り込んで、常圧まで排気する水素置換作業を三回繰り返したのち、缶内が200℃になった時に、全圧8MPaになるように水素を張り込み、200℃で1時間触媒を還元した。
還元後、オートクレーブを冷却、開圧し、所定量のエリスリトール、水、および所定の添加物を加えて、再度1MPa水素で3回水素置換を行った。所定の温度で、所定の圧力になるように水素を張り込み、撹拌回転数500rpmにて所定の時間反応を行った。
反応後、オートクレーブを室温まで冷却後、開圧し、排気ガスおよび反応液をガスクロマトフィーにて分析した。
【0089】
実施例9〜38、比較例1〜6の反応及び反応物の定量は下記方法で行った。
尚、実施例29では、実施例23で使用したイリジウム・レニウム担持シリカ(1)(Re/Ir=1)を水で洗浄し110℃程度の温度で1時間程度加熱して乾燥し、空気中で500℃程度の温度で焼成することにより再生して得られたイリジウム・レニウム担持シリカ(1-1)(Re/Ir=1)を使用した。実施例30では実施例29で使用したイリジウム・レニウム担持シリカ(1-1)(Re/Ir=1)を水で洗浄し110℃程度の温度で1時間程度加熱して乾燥し、空気中で500℃程度の温度で焼成することにより再生して得られたイリジウム・レニウム担持シリカ(1-2)(Re/Ir=1)を使用した。実施例31では実施例30で使用したイリジウム・レニウム担持シリカ(1-2)(Re/Ir=1)を水で洗浄し110℃程度の温度で1時間程度加熱して乾燥し、空気中で500℃程度の温度で焼成することにより再生して得られたイリジウム・レニウム担持シリカ(1-3)(Re/Ir=1)を使用した。
Irを含む触媒は、予め、ガラス製内缶のあるSUS製190mLオートクレーブに適量の水と共に仕込み、200℃、水素圧8MPaで1時間還元処理を行った。
オートクレーブに20重量%エリスリトール水溶液5g、3.1mgH2SO4(イリジウム、若しくはロジウムに対して1モル倍)を加えて、1MPa水素で3回水素置換を行った。その後、所定の温度で、初期水素圧が8MPaになるように水素を張り込み、撹拌回転数250rpmにて所定の時間反応を行った。
反応後、オートクレーブを室温まで冷却後、開圧し、排気ガスおよび反応液をFID付きガスクロマトグラフィー(商品名「GC−2014」、島津製作所製)と、示差屈折率検出器を備えたクロマトグラフィー(商品名「LC−10A」、島津製作所製)を使用して測定した。キャピラリーカラム(商品名「Rtx−200」、内径:0.25mm、長さ:30m)、カラム(商品名「Aminex HPX−87C」、内径:7.8mm、長さ:300mm)を使用した。更に、反応物の同定にはGC−MS(商品名「QP5050」、島津製作所製)も使用した。
【符号の説明】
【0090】
1:トリクルベッド反応器
2:原料液供給ライン
3:水素供給ライン
4:反応混合物取り出しライン
5:高圧気液分離器
6:水素リサイクルライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリスリトール及び水素を触媒の存在下で反応させて、ブタン−モノ、ジ、及びトリオールから選択される少なくとも1種の化合物を生成させるエリスリトールの水素化分解物の製造方法であって、前記触媒としてイリジウム、白金、ロジウム、コバルト、パラジウム、及びニッケルからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を担体に担持した触媒を使用することを特徴とするエリスリトールの水素化分解物の製造方法。
【請求項2】
触媒として、イリジウム、白金、ロジウム、コバルト、パラジウム、及びニッケルからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を担体に担持した触媒と共に、レニウム、モリブデン、タングステン、及びマンガンからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を併用する請求項1に記載のエリスリトールの水素化分解物の製造方法。
【請求項3】
レニウム、モリブデン、タングステン、及びマンガンからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を担体に担持した状態で使用する請求項2に記載のエリスリトールの水素化分解物の製造方法。
【請求項4】
触媒として、少なくともイリジウム又はロジウムを担体に担持した触媒を使用する請求項1〜3の何れか1項に記載のエリスリトールの水素化分解物の製造方法。
【請求項5】
イリジウム、白金、ロジウム、コバルト、パラジウム、及びニッケルからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分と、レニウム、モリブデン、タングステン、及びマンガンからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を1/50〜6/1[前者/後者(モル比)]の割合で含有する請求項2〜4の何れか1項に記載のエリスリトールの水素化分解物の製造方法。
【請求項6】
イリジウム、白金、ロジウム、コバルト、パラジウム、及びニッケルからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を担持する担体が無機酸化物である請求項1〜5の何れか1項に記載のエリスリトールの水素化分解物の製造方法。
【請求項7】
レニウム、モリブデン、タングステン、及びマンガンからなる群より選択される少なくとも1種の金属成分を担持する担体が無機酸化物である請求項3〜6の何れか1項に記載のエリスリトールの水素化分解物の製造方法。
【請求項8】
無機酸化物が、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ、マグネシア、及びゼオライトから選択される少なくとも1種の化合物である請求項6又は7に記載のエリスリトールの水素化分解物の製造方法。
【請求項9】
酸の共存下で反応させる請求項1〜8の何れか1項に記載のエリスリトールの水素化分解物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−14577(P2013−14577A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−127866(P2012−127866)
【出願日】平成24年6月5日(2012.6.5)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】