エレクトロルミネッセンス装置、電子機器
【課題】 封止基板を樹脂でベタで接着するタイプの封止構造を持つEL装置において、素子基板と封止基板との間のギャップが容易に制御でき、かつ基板の撓み、応力等が発生しにくいEL装置を提供する。
【解決手段】 本発明のEL装置1は、複数の発光素子が設けられた基板2と、基板2の前記発光素子が設けられた側の面に接着層3aを介して設けられた封止基板3bと、基板2又は封止基板3bの少なくとも一方に設けられた凸状のスペーサ31と、基板2又は封止基板3bにおいてスペーサ31の先端部が突き当たる突き当て部分に設けられた嵌合用の凹部12Aとを備えている。
【解決手段】 本発明のEL装置1は、複数の発光素子が設けられた基板2と、基板2の前記発光素子が設けられた側の面に接着層3aを介して設けられた封止基板3bと、基板2又は封止基板3bの少なくとも一方に設けられた凸状のスペーサ31と、基板2又は封止基板3bにおいてスペーサ31の先端部が突き当たる突き当て部分に設けられた嵌合用の凹部12Aとを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス装置、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光素子であるEL(エレクトロルミネッセンス)素子を画素として用いたEL装置の開発が進められている。EL素子は、陽極と陰極との間に発光層等の機能層を挟持した構成を備えており、最近では、有機物材料を溶解した液体材料を、インクジェット法によって基板上にパターン配置する方法を採用した有機EL装置の開発が行われている(例えば特許文献1参照)。
このようなEL装置では、酸素や水分等に対する耐久性向上が課題となっている。例えば、有機EL装置を構成する発光素子は、無機陽極/(有機正孔注入層)/有機発光層/(電子注入層)/無機陰極からなるものであるが、特に電子を放出し易い材料特性を持つ電子注入層は、大気中に存在する水分と反応しやすく、水と反応することによって電子注入効果がなくなり、ダークスポットと呼ばれる非発光領域を形成してしまう。このような課題を解決する技術として、従来では、例えば基板上にEL素子を形成し、この基板上のEL素子を覆うように他の基板を樹脂等を介して貼り合わせ、EL素子を封止する構造が知られている。
【特許文献1】特開2004−265837号公報
【特許文献2】特開平11―329717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のようにEL素子基板と封止用基板とを樹脂などを用いてベタで貼り合わせる場合には、EL素子基板と封止用基板とのギャップ(間隔)を精密に制御し、全体のパネル厚を一定にする必要がある。接着層厚を管理する方法としては、液晶装置で用いられるようなスペーサ(ギャップ材)を用いるのが一般的であり、最も簡便な方法である。しかしながら、このようなスペーサは散布によって基板上にランダムに配置されるため、例えば、封止基板と素子基板を貼り合わせるときに応力が不均一となり、基板が撓みや応力を持った状態で固定されてしまうとう問題がある。また、トップエミッション型の構造に適用した場合には、発光をランダムに屈折させる、光取り出し効率を低下させる、外光を乱反射させるなど、光学的特性を不均一にしてしまうという問題もある。このような問題を回避するために、スペーサを発光に影響がないように規則的に配置させる方法が提案されている。例えば、特許文献2には、画素間の領域にスペーサを規則的に配置した構造が開示されている。
【0004】
しかしながら、このようにスペーサを規則的に配置し、基板同士をアライメントしても、樹脂が硬化するまでに基板間にずれが生じ、アライメントの精度が低下することがあり、特に大型基板でベタ封止を行なった場合には、このような問題は顕著になる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、封止基板を樹脂でベタで接着するタイプの封止構造を持つEL装置において、素子基板と封止基板との間のギャップが容易に制御でき、かつ基板の撓み、応力等が発生しにくいEL装置及びこれを用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明のエレクトロルミネッセンス装置は、複数の発光素子が設けられた基板と、前記基板の前記発光素子が設けられた側の面に接着層を介して設けられた封止基板と、前記基板又は前記封止基板の少なくとも一方に設けられた凸状のスペーサと、前記基板又は前記封止基板において前記スペーサの先端部が突き当たる突き当て部分に設けられた嵌合用の凹部とを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、スペーサと凹部とが嵌合した状態で封止基板の接着が行なわれるため、接着剤硬化時のずれが防止され、アライメント精度の向上を図ることができる。
【0006】
本発明においては、前記スペーサは、前記発光素子と平面的に重ならない位置に設けられているものとすることができる。
この構成によれば、スペーサにかかる応力によって発光素子がダメージを受けることはない。また、トップエミッション型の構造(前記発光素子からの発光光は、前記封止基板側から取り出される構造)に適用した場合には、開口率の低下など、表示への影響も避けられる。
【0007】
本発明においては、前記封止基板に遮光層が設けられているものとすることができる。
この構成によれば、画素間の混色や外光反射による視認性の低下を防ぐことができる。本発明においては、封止基板と基板とのアライメントを高精度に行なうことができるため、このような構成を採用しても、遮光層と発光素子との位置ずれによる開口率の低下は殆ど生じない。
【0008】
本発明においては、前記封止基板にカラーフィルタが設けられているものとすることができる。
この構成によれば、色純度の高い表示が得られる。本発明においては、封止基板と基板とのアライメントを高精度に行なうことができるため、このような構成を採用しても、カラーフィルタと発光素子との位置ずれによる光のロスは殆ど生じない。
【0009】
本発明においては、前記封止基板に蛍光変換膜が設けられているものとすることができる。
この構成によれば、各発光素子(すなわち画素)に対して蛍光変換膜を適切に選択することにより多色化が可能になる。本発明においては、封止基板と基板とのアライメントを高精度に行なうことができるため、このような構成を採用しても、蛍光変換膜と発光素子との位置ずれによるコントラストの低下は殆ど生じない。また、この構成においては、各発光素子の構成を同一とすることで、それぞれの発光素子の寿命が異なることによる色再現性の劣化等を防止することができる。
【0010】
本発明においては、前記発光素子は、隔壁(バンク)によって区画された領域にむ機能液を配置することにより形成されているものとすることができる。
このように液相プロセスを用いることで、蒸着等の気相プロセスを用いる場合に比べて、製造コストを下げることができる。液相プロセスとしては、特に液滴吐出法を用いたプロセスが好ましい。液滴吐出法を用いることにより、スピンコート法などの他の塗布技術に比べて、液体材料の消費に無駄が少なく、基板上に配置する機能液の量や位置の制御を行ないやすいという利点がある。
【0011】
本発明においては、前記スペーサは、前記封止基板の表面に形成されており、前記凹部は、前記隔壁の表面に設けられた凹部によって形成されているものとすることができる。この場合、凹部は、隔壁に形成された凹部そのものとすることもできるし、隔壁の表面に陰極や保護膜等の膜が形成されている場合には、これらの膜の表面に現われた凹形状を凹部とすることもできる。
【0012】
本発明においては、前記スペーサは、前記封止基板の表面をエッチングすることにより形成されているものとすることができる。
この構成によれば、強度の強いスペーサを形成することができる。
【0013】
本発明においては、前記スペーサは、前記隔壁の表面に設けられた凸部によって形成されており、前記凹部は、前記封止基板の表面に形成されているものとすることができる。この場合、スペーサは、隔壁に形成された凸部そのものとすることもできるし、隔壁の表面に陰極や保護膜等の膜が形成されている場合には、これらの膜の表面に現われた凸形状をスペーサとすることもできる。
【0014】
本発明においては、前記スペーサは、前記隔壁のパターニングと同時に形成されているものとすることができる。
この構成によれば、スペーサを形成するための別個の工程が必要なく、又、発光素子の位置に対して高い精度で形成することも可能である。
【0015】
本発明においては、前記凹部は、前記封止基板の表面をエッチングすることにより形成されているものとすることができる。
この構成によれば、強度の強い凹部を形成することができる。
【0016】
本発明の電子機器は、前述した本発明のエレクトロルミネッセンス装置を備えることを特徴とする。
この構成によれば、表示品質の高い電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る有機EL装置(有機エレクトロルミネッセンス装置)について説明する。本実施形態の有機EL装置は、発光素子を画素として基板上に配列してなる有機EL表示装置であって、接着剤を用いて封止基板をベタで接着するタイプの構造を有するものである。この有機EL装置は、トップエミッション型、ボトムエミッション型のいずれの構造でもよいが、本実施形態では例えばトップエミッション型の構造とした場合について説明する。
図1は本実施形態の有機EL装置の配線構造を示す説明図、図2は有機EL装置の平面模式図及び断面模式図、図3は有機EL装置の表示領域の断面模式図である。
【0018】
(有機EL装置)
図1に示すように、本実施形態の有機EL装置は、複数の走査線101と、走査線101に対して交差する方向に延びる複数の信号線102と、信号線102に対して並列する方向に延びる複数の電源線103とがそれぞれ配線された構成を有し、走査線101及び信号線102の各交点付近には画素領域Pが設けられている。
【0019】
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路104が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路105が接続されている。
更に、画素領域Pの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の薄膜トランジスタ122と、このスイッチング用の薄膜トランジスタ122を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量capと、該保持容量capによって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用の薄膜トランジスタ123と、この駆動用薄膜トランジスタ123を介して電源線103に電気的に接続したときに当該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(電極)111と、この画素電極111と陰極(対向電極)12との間に挟み込まれた有機EL層110とが設けられている。電極111と対向電極12と有機EL層110により、発光素子が構成されている。
【0020】
走査線101が駆動されてスイッチング用の薄膜トランジスタ122がオンになると、そのときの信号線102の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて駆動用の薄膜トランジスタ123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ123のチャネルを介して、電源線103から画素電極111に電流が流れ、更に有機EL層110を介して陰極12に電流が流れる。有機EL層110では、流れる電流量に応じて発光が生じる。
【0021】
次に図2(a)及び図2(b)に示すように、本実施形態の有機EL装置1は、ガラス等からなる基板2と、マトリックス状に配置された発光素子を具備して基板2上に形成された発光素子部11と、発光素子部11上に形成された陰極12と、封止部3とを具備している。ここで、発光素子部11と陰極12とにより表示素子10(図3参照)が構成される。
基板2は、基板2の中央に位置する表示領域2aと、基板2の周縁に位置して表示領域2aの外側に配置された非表示領域2bとに区画されている。表示領域2aは、マトリックス状に配置された発光素子によって形成される領域であり、有効表示領域とも言う。また、表示領域の外側に非表示領域2bが形成されている。そして、非表示領域2bには、表示領域2aに隣接するダミー表示領域2dが形成されている。
また、図2(b)に示すように、発光素子及びバンク部112からなる発光素子部11と基板2との間には回路素子部14が備えられ、この回路素子部14に前述の走査線、信号線、保持容量、スイッチング用の薄膜トランジスタ、駆動用の薄膜トランジスタ123等が備えられている。
また、陰極12は、その一端が基板2上に形成された陰極用配線12aに接続しており、この配線の一端部12bがフレキシブル基板5上の配線5aに接続されている。また、配線5aは、フレキシブル基板5上に備えられた駆動IC6(駆動回路)に接続されている。
【0022】
また、図2(a)及び図2(b)に示すように、回路素子部14の非表示領域2bには、前述の電源線103(103R、103G、103B)が配線されている。
また、表示領域2aの図2(a)中両側には、前述の走査側駆動回路105、105が配置されている。この走査側駆動回路105、105はダミー領域2dの下側の回路素子部14内に設けられている。更に回路素子部14内には、走査側駆動回路105、105に接続される駆動回路用制御信号配線105aと駆動回路用電源配線105bとが設けられている。
更に表示領域2aの図2(a)中上側には検査回路106が配置されている。この検査回路106により、製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行うことができる。
【0023】
また図2(b)に示すように、発光素子部11上には封止部3が備えられている。この封止部3は、陰極12上に塗布された熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂等からなる封止樹脂(接着層)3aと、封止樹脂3a上に配置された封止基板3bとからなる。なお、封止樹脂3aとしては、硬化時にガス、溶媒等が発生しないものが好ましい。
この封止部3は、少なくとも発光素子部11上にある陰極12をほぼ覆うように形成されており、陰極12及び発光層を含む機能層に対する水又は酸素の侵入を防いで、陰極12または発光層の酸化を防止する。
尚、封止基板3bは、封止樹脂3aに接合されて封止樹脂3aを保護するものであり、ガラス板、金属板若しくは樹脂板のいずれかであることが好ましい。トップエミッション型の構造においては、発光光を封止基板3b側から取り出すため、封止基板3bはガラス等の透光性の基板を用いることが必須である。
【0024】
図3に、有機EL装置1の表示領域の断面図を示す。図3には3つの画素領域Pが図示されている。本実施形態の有機EL装置1では、基板2上に、TFTなどの回路等が形成された回路素子部14、有機EL層110が形成された発光素子部11及び陰極12が順次積層されて構成されており、有機EL層110から封止部3側に発せられた光が、封止部3を透過して基板2の上側(観察者側)に出射されるようになっている。
【0025】
回路素子部14には、基板2上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜2cが形成され、この下地保護膜2c上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜141が形成されている。半導体膜141には、ソース領域141a及びドレイン領域141bが高濃度リンイオン打ち込みにより形成されている。前記リンイオンが導入されなかった部分がチャネル領域141cとなっている。
【0026】
また、前記下地保護膜2c及び半導体膜141を覆う透明なゲート絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極143(走査線101)が形成され、ゲート電極143及びゲート絶縁膜142上には透明な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bが形成されている。ゲート電極143は半導体膜141のチャネル領域141cに対応する位置に設けられている。また、第1、第2層間絶縁膜144a、144bを貫通して、半導体膜141のソース、ドレイン領域141a、141bにそれぞれ接続されるコンタクトホール145,146が形成されている。
【0027】
そして、第2層間絶縁膜144b上には、画素電極111が所定の形状にパターニングされて形成され、一方のコンタクトホール145がこの画素電極111に接続されている。また、もう一方のコンタクトホール146が電源線103に接続されている。このようにして、回路素子部14には、各画素電極111に接続された駆動用の薄膜トランジスタ123が形成されている。
【0028】
発光素子部11は、複数の画素電極111…上の各々に積層された有機EL層110と、各画素電極111及び有機EL層110の間に備えられて各有機EL層110を区画するバンク部(隔壁)112とを主体として構成されている。有機EL層110上には陰極12が配置されている。これら画素電極111、有機EL層110及び陰極12によって発光素子が構成されている。ここで、画素電極111は、例えばITOにより形成されてなり、平面視略矩形状にパターン形成されている。この画素電極111…を含む各画素を仕切る形にてバンク部112が備えられている。なお、画素電極111には、ITOに限らず任意の導電材料を用いることができる。トップエミッション型の構造では、基板2と反対側に光を出射させるため、画素電極111としては、アルミニウム等の高反射率の金属材料を用いることが好ましい。
【0029】
バンク部112は、図3に示すように、基板2側に位置する第1隔壁部としての無機物バンク層(第1バンク層)112aと、基板2から離れて位置する第2隔壁部としての有機物バンク層(第2バンク層)112bとが積層された構成を備えている。無機物バンク層112aは、例えばTiO2やSiO2等により形成され、有機物バンク層112bは、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等により形成される。
【0030】
無機物、有機物バンク層112a、112bは、画素電極111の周縁部上に乗上げるように形成されている。平面的には、画素電極111の周囲と無機物バンク層112aとが部分的に重なるように配置された構造となっている。また、有機物バンク層112bも同様であり、画素電極111の一部と平面的に重なるように配置されている。また無機物バンク層112aは、有機物バンク層112bの縁端よりも画素電極111の中央側に更に突出するように形成されている。このようにして、無機物バンク層112aの各第1積層部(突出部)112eが画素電極111の内側に形成されることにより、画素電極111の形成位置に対応する下部開口部112cが設けられている。
【0031】
また、有機物バンク層112bには、上部開口部112dが形成されている。この上部開口部112dは、画素電極111の形成位置及び下部開口部112cに対応するように設けられている。上部開口部112dは、図3に示すように、下部開口部112cより間口が広く、画素電極111より狭く形成されている。また、上部開口部112dの上部の位置と、画素電極111の端部とがほぼ同じ位置になるように形成される場合もある。この場合は、図3に示すように、有機物バンク層112bの上部開口部112dの断面が傾斜した形状となる。このようにして、バンク部112には、下部開口部112c及び上部開口部112dが連通された開口部112gが形成されている。
【0032】
また、バンク部112には、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域が形成されている。親液性を示す領域は、無機物バンク層112aの第1積層部112e及び画素電極111の電極面111aであり、これらの領域は、酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理されている。また、撥液性を示す領域は、上部開口部112dの壁面及び有機物バンク層112の上面112fであり、これらの領域は、テトラフルオロメタンを処理ガスとするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)されている。
【0033】
また、バンク部112の上面、すなわち有機物バンク層112bの上面112fには、凹部150が形成されている。この凹部150は、基板2の最表面に封止基板3b側のスペーサ31に嵌合する凹部12Aを形成するためのものである。このバンク部112の凹部150(すなわち基板最表面の凹部12A)は、表示への影響をなくすために、発光素子と平面的に重ならない位置(非画素領域)に設けられている。
【0034】
一方、有機EL層110は、画素電極111上に積層された正孔注入/輸送層110aと、正孔注入/輸送層110a上に隣接して形成された発光層110bとから構成されている。
正孔注入/輸送層110aは、発光層110bに正孔を注入する機能を有するとともに、正孔注入/輸送層110a内部において正孔を輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層110aを画素電極111と発光層110bの間に設けることにより、発光層110bの発光効率、寿命等の素子特性が向上する。また、発光層110bでは、正孔注入/輸送層110aから注入された正孔と、陰極12から注入される電子が発光層で再結合し、発光が行われる。
【0035】
正孔注入/輸送層110aは、下部開口部112c内に位置して画素電極面111a上に形成される平坦部110a1と、上部開口部112d内に位置して無機物バンク層の第1積層部112e上に形成される周縁部110a2から構成されている。また、正孔注入/輸送層110aは、構造によっては、画素電極111上であって、且つ無機物バンク層110aの間(下部開口部110c)にのみ形成されている(前述に記載した平坦部にのみ形成される形態もある)。
【0036】
また、発光層110bは、正孔注入/輸送層110aの平坦部110a1及び周縁部110a2上に渡って形成されており、平坦部112a1上での厚さが50nm〜80nmの範囲とされている。発光層110bは、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1、緑色(G)に発光する緑色発光層110b2、及び青色(B)に発光する青色発光層110b3の3種類を有し、図2に示したように、各発光層110b1〜110b3がストライプ配置されている。
【0037】
無機物バンク層の第1積層部112e上に不均一な厚さの周縁部110a2が形成されているため、周縁部110a2が第1積層部112eによって画素電極111から絶縁された状態となり、周縁部110a2から発光層110bに正孔が注入されることがない。
これにより、画素電極111からの電流が平坦部112a1のみに流れ、正孔を平坦部112a1から発光層110bに均一に輸送させることができ、発光層110bの中央部分のみを発光させることができるとともに、発光層110bにおける発光量を一定にすることができる。
また、無機物バンク層112aが有機物バンク層112bよりも画素電極111の中央側に更に延出されているので、この無機物バンク層112aによって画素電極111と平坦部110a1との接合部分の形状をトリミングすることができ、各発光層110b間の発光強度のばらつきを抑えることができる。
【0038】
更に、画素電極111の電極面111a及び無機物バンク層112aの第1積層部112eが親液性を示すので、有機EL層110が画素電極111及び無機物バンク層112aに均一に密着し、無機物バンク層112a上で有機EL層110が極端に薄くならず、画素電極111と陰極12との短絡を防止できる。また、有機物バンク層112bの上面112f及び上部開口部112dの壁面が撥液性を示すので、有機EL層110が開口部112gから溢れて形成されることがない。
【0039】
なお、正孔注入/輸送層形成材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸等の混合物を用いることができる。
また、発光層110bの材料としては、例えば、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、またはこれらの高分子材料にルブレン、ペリレン、9,10-ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープして用いることができる。
【0040】
陰極12は、発光素子部11の全面に形成されており、画素電極111と対になって有機EL層110に電流を流す役割を果たす。この陰極12は、ITO等の透光性の導電材料によって形成されている。発光層110bと陰極12との間には、発光効率を高めるためのLiF等の電子注入層を形成する場合もある。
【0041】
陰極12の表面には、バンク上面112fの凹部150を反映して凹部12Aが形成されている。この凹部12Aは、封止基板3bの表面に設けられた後述のスペーサ31と共に、基板2と封止基板3bとを位置決めする位置決め手段として機能する。すなわち、本実施形態においては、封止樹脂3aを硬化する際の基板2と封止基板3bとのずれを防止するために、これらの基板2及び封止基板3bのうち、一方の基板3bに凸状のスペーサ31を形成し、他方の基板2に嵌合用の凹部12Aを形成し、これらスペーサ31と凹部12Aとを嵌合させた状態で封止樹脂3aを硬化している。本実施形態の場合、陰極12が基板2の最表面となることから、陰極12の表面に凹部12Aが形成されており、この凹部12Aに嵌合するように、封止基板3bに凸状のスペーサ31が設けられている。
【0042】
このように発光素子部11が設けられた基板2の表面には、封止樹脂3aを接着層として封止基板3bが設けられている。封止基板3bにおいて基板2と対向する側の面には、多数の凸状のスペーサ31が設けられている。このスペーサ31は、基板2において当該スペーサ31の先端部が突き当たる突き当て部分に設けられた凹部12Aと嵌合しており、これらスペーサ31と凹部12Aによって高精度にアライメントされた状態で封止樹脂3aが硬化されている。
【0043】
図4はスペーサ31と凹部12Aによる接合状態を示す模式図であり、図4(a)はその平面構造を示す模式図、図4(b)はそのC−D断面を示す模式図である。
図4に示すように、スペーサ31と凹部12Aは、バンク112の上面112f、すなわち画素Pと画素Pとの間の非画素領域部分に配置されている。この図の例では、ドット状の凹部12Aが画素間の中央部において画素Pの長辺方向に一定のピッチで規則的に配列されているが、凹部12Aは必ずしもこの配列で形成されている必要はない。例えば、凹部12Aを画素間の中央部において画素Pの短辺方向に規則的に配列させてもよい。また、凹部12Aは必ずしもドット状に形成する必要はなく、ストライプ状の溝又は画素Pの周囲を囲む格子状の溝として形成してもよい。この場合、封止基板3bのスペーサ31は、凹部12Aの形状に合わせた形状とする必要がある。
【0044】
(有機EL装置の製造方法)
次に、上記有機EL装置1を製造する方法について図面を参照して説明する。
本実施形態の製造方法は、(1)バンク部形成工程、(2)正孔注入/輸送層形成工程、(3)発光層形成工程、(4)陰極形成工程及び(5)封止工程等を有する。なお、ここで説明する製造方法は一例であって、必要に応じてその他の工程が追加されたり、上記の工程の一部が除かれたりする。
なお、(2)正孔注入/輸送層形成工程、(3)発光層形成工程は、液滴吐出装置を用いた液体吐出法(インクジェット法)を用いて行われる。
【0045】
(1)バンク部形成工程
バンク部形成工程では、基板2の所定位置にバンク部112を形成する。バンク部112は、第1のバンク層として無機物バンク層112aが形成され、第2のバンク層として有機物バンク層112bが形成された構造を有している。
【0046】
(1)−1 無機物バンク層112aの形成
まず、図5に示すように、基板上の所定位置に無機物バンク層112aを形成する。無機物バンク層112aが形成される位置は、第2層間絶縁膜144b及び画素電極111上である。なお、第2層間絶縁膜144bは薄膜トランジスタ、走査線、信号線、等が配置された回路素子部14上に形成されている。無機物バンク層112aは、例えば、SiO2、TiO2等の無機物材料にて構成することができる。これらの材料は、例えばCVD法、コート法、スパッタ法、蒸着法等によって形成される。更に、無機物バンク層112aの膜厚は50nm〜200nmの範囲が好ましく、特に150nmがよい。
【0047】
無機物バンク層112aは、層間絶縁層144及び画素電極111の全面に無機物膜を形成し、その後無機物膜をフォトリソグラフィ法等によりパターニングすることにより、開口部を有する形にて形成される。この開口部は、画素電極111の電極面111aの形成位置に対応するもので、図5に示すように下部開口部112cとして設けられる。なお、このとき、無機物バンク層112aは画素電極111の周縁部と一部重なるように形成され、これにより発光層110の平面的な発光領域が制御される。
【0048】
(1)−2 有機物バンク層112bの形成
次に、第2のバンク層としての有機物バンク層112bを形成する。
具体的には、図5に示すように、無機物バンク層112a上に有機物バンク層112bを形成する。有機物バンク層112bを構成する材料として、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶剤性を有する材料を用いる。これらの材料を用い、有機物バンク層112bをフォトリソグラフィ技術等によりパターニングして形成される。なお、パターニングする際、有機物バンク層112bに上部開口部112dを形成する。上部開口部112dは、電極面111a及び下部開口部112cに対応する位置に設けられ、全画素共通のパターンを有して形成するものとする。また、有機物バンク層112bをパターニングする際に、バンク上面112fに凹部150を形成する。この凹部150は画素間の中央部に対応する位置に設けられるものとする。凹部150の深さは、上部開口部112dと同じ深さ(すなわち無機物バンク層112aに達する深さ)でもよく、上部開口部112dよりも浅い深さ(すなわち無機物バンク層112aに達しない程度の深さ)でもよい。凹部150を浅く形成する場合には、例えば、上部開口部112dのパターニングにおいて露光条件を変更して2度露光すればよい。
【0049】
上部開口部112dは、図5に示すように、無機物バンク層112aに形成された下部開口部112cより広く形成する事が好ましい。更に、有機物バンク層112bは断面形状がテーパー状をなすことが好ましく、有機物バンク層112bの最底面では画素電極111の幅より狭く、有機物バンク層112bの最上面では画素電極111の幅とほぼ同一の幅に形成する事が好ましい。
これにより、無機物バンク層112aの下部開口部112cを囲む第1積層部112eが、有機物バンク層112bよりも画素電極111の中央側に突出された形になる。このようにして、有機物バンク層112bに形成された上部開口部112d、無機物バンク層112aに形成された下部開口部112cを連通させることにより、無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bを貫通する開口部112gが形成される。
【0050】
有機物バンク層112bの厚さは、0.1μm〜3.5μmの範囲が好ましく、特に2μm程度がよい。このような範囲とする理由は以下の通りである。
すなわち、厚さが0.1μm未満では、後述する正孔注入/輸送層及び発光層の合計厚より有機物バンク層112bが薄くなり、発光層110bが上部開口部112dから溢れてしまうおそれがあるので好ましくない。また、厚さが3.5μmを越えると、上部開口部112dによる段差が大きくなり、上部開口部112dにおける陰極12のステップカバレッジが確保できなくなるので好ましくない。また、有機物バンク層112bの厚さを2μm以上とすれば、陰極12と駆動用の薄膜トランジスタ123との絶縁を高めることができる点で好ましい。
【0051】
さらに、形成されたバンク部112、及び画素電極111の表面は、プラズマ処理により適切な表面処理を施すことが好ましく、具体的にはバンク部112表面の撥液化処理、及び画素電極111の親液化処理を行う。
まず、画素電極111の表面処理は、酸素ガスを用いたO2プラズマ処理により行うことができ、例えばプラズマパワー100kW〜800kW、酸素ガス流量50ml/min〜100ml/min、板搬送速度0.5mm/sec〜10mm/sec、基板温度70℃〜90℃の条件で処理することで、画素電極111表面を含む領域を親液化することができる。また、このO2プラズマ処理により画素電極111表面の洗浄、及び仕事関数の調整も同時に行われる。
次いで、バンク部112の表面処理は、テトラフルオロメタンを用いたCF4プラズマ処理により行うことができ、例えばプラズマパワー100kW〜800kW、テトラフルオロメタンガス流量50ml/min〜100ml/min、基板搬送速度0.5mm/sec〜10mm/sec、基板温度70℃〜90℃の条件で処理することで、バンク部112の上部開口部112d及び上面112fを撥液化することができる。
【0052】
(2)正孔注入/輸送層形成工程
次に発光素子形成工程では、まず画素電極111上に正孔注入/輸送層を形成する。
正孔注入/輸送層形成工程では、液滴吐出装置として例えばインクジェット装置を用いることにより、正孔注入/輸送層形成材料を含む液状組成物を電極面111a上に吐出する。その後に乾燥処理及び熱処理を行い、画素電極111上及び無機物バンク層112a上に正孔注入/輸送層110aを形成する。なお、ここで、正孔注入/輸送層110aは第1積層部112e上に形成されないこともあり、つまり画素電極111上にのみ正孔注入/輸送層が形成される形態もある。
【0053】
インクジェットによる製造方法は以下の通りである。すなわち、図6に示すように、インクジェットヘッドH1に形成された複数のノズルから正孔注入/輸送層形成材料を含む液状組成物を吐出する。ここではインクジェットヘッドを走査することにより各画素毎に組成物を充填しているが、基板2を走査することによっても可能である。更に、インクジェットヘッドと基板2とを相対的に移動させることによっても組成物を充填させることができる。なお、これ以降のインクジェットヘッドを用いて行う工程では上記の点は同様である。
【0054】
インクジェットヘッドによる吐出は以下の通りである。すなわち、インクジェットヘッドH1に形成された吐出ノズルH2を電極面111aに対向させて配置し、ノズルH2から液状組成物を吐出する。画素電極111の周囲には下部開口部112cを区画するバンク112が形成されており、この下部開口部112c内に位置する画素電極面111aにインクジェットヘッドH1を対向させ、このインクジェットヘッドH1と基板2とを相対移動させながら、吐出ノズルH2から1滴当たりの液量が制御された液状組成物の液滴110cを電極面111a上に吐出する。
【0055】
本工程で用いる液状組成物としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸(PSS)等の混合物を、極性溶媒に溶解させた組成物を用いることができる。極性溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及びその誘導体、カルビト−ルアセテート、ブチルカルビト−ルアセテート等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。
【0056】
より具体的な組成としては、PEDOT/PSS混合物(PEDOT/PSS=1:20):12.52重量%、IPA:10重量%、NMP:27.48重量%、DMI:50重量%のものを例示できる。なお、上記液状組成物の粘度は1mPa・s〜20mPa・s程度が好ましく、特に4mPa・s〜15mPa・s程度が良い。
【0057】
上記の液状組成物を用いることにより、吐出ノズルH2に詰まりが生じることがなく安定吐出できる。なお、正孔注入/輸送層形成材料は、赤(R)、緑(G)、青(B)の各発光層110b1〜110b3に対して同じ材料を用いても良く、発光層毎に変えても良い。
【0058】
吐出された組成物の液滴110cは、親液処理された電極面111a及び第1積層部112e上に広がり、下部、上部開口部112c、112d内に充填される。仮に、第1組成物滴110cが所定の吐出位置から外れて上面112f上に吐出されたとしても、上面112fが第1組成物滴110cで濡れることがなく、弾かれた第1組成物滴110cが下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。
【0059】
電極面111a上に吐出する組成物の量は、下部、上部開口部112c、112dの大きさ、形成しようとする正孔注入/輸送層の厚さ、液状組成物中の正孔注入/輸送層形成材料の濃度等により決定される。また、液状組成物の液滴110cは1回のみならず、数回に分けて同一の電極面111a上に吐出しても良い。この場合、各回における液状組成物の量は同一でも良く、各回毎に液状組成物を変えても良い。更に電極面111aの同一箇所のみならず、各回毎に電極面111a内の異なる箇所に前記液状組成物を吐出しても良い。
【0060】
インクジェットヘッドの構造については、図14に示すようなヘッドHを用いる事ができる。更に、基板とインクジェットヘッドの配置に関しては図15のように配置することが好ましい。
図14中、符号H7は前記のインクジェットヘッドH1を支持する支持基板であり、この支持基板H7上に複数のインクジェットヘッドH1が備えられている。
インクジェットヘッドH1のインク吐出面(基板との対向面)には、ヘッドの長さ方向に沿って列状に、且つヘッドの幅方向に間隔をあけて2列で吐出ノズルが複数(例えば、1列180ノズル、合計360ノズル)設けられている。また、このインクジェットヘッドH1は、吐出ノズルを基板側に向けるとともに、X軸(またはY軸)に対して所定角度傾いた状態で略X軸方向に沿って列状に、且つY方向に所定間隔をあけて2列に配列された状態で平面視略矩形状の支持板20に複数(図14では1列6個、合計12個)位置決めされて支持されている。
【0061】
また図15に示すインクジェット装置において、符号1115は基板2を載置するステージであり、符号1116はステージ1115を図中x軸方向(主走査方向)に案内するガイドレールである。またヘッドHは、支持部材1111を介してガイドレール1113により図中y軸方向(副主走査方向)に移動できるようになっており、更にヘッドHは図中θ軸方向に回転できるようになっており、インクジェットヘッドH1を主走査方向に対して所定の角度に傾けることができるようになっている。このように、インクジェットヘッドを走査方向に対して傾けて配置することにより、ノズルピッチを画素ピッチに対応させることができる。
【0062】
図15に示す基板2は、マザー基板に複数のチップを配置した構造となっている。即ち、1チップの領域が1つの表示装置に相当する。ここでは、3つの表示領域2aが形成されているが、これに限られるものではない。例えば、基板2上の左側の表示領域2aに対して組成物を塗布する場合は、ガイドレール1113を介してヘッドHを図中左側に移動させるとともに、ガイドレール1116を介して基板2を図中上側に移動させ、基板2を走査させながら塗布を行う。次に、ヘッドHを図中右側に移動させて基板の中央の表示領域2aに対して組成物を塗布する。右端にある表示領域2aに対しても前記と同様である。なお、図14に示すヘッドH及び図15に示すインクジェット装置は、正孔注入/輸送層形成工程のみならず、発光層形成工程にも用いるものである。
【0063】
次に、図7に示すような乾燥工程を行う。つまり、吐出後の第1組成物を乾燥処理し、第1組成物に含まれる溶媒を蒸発させ、正孔注入/輸送層110aを形成する。乾燥処理を行うと、液状組成物に含まれる溶媒の蒸発が、主に無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bに近いところで起き、溶媒の蒸発に併せて正孔注入/輸送層形成材料が濃縮されて析出する。これにより図7に示すように、第1積層部112e上に、正孔注入/輸送層形成材料からなる周縁部110a2が形成される。この周縁部110a2は、上部開口部112dの壁面(有機物バンク層112b)に密着しており、その厚さが電極面111aに近い側では薄く、電極面111aから離れた側、即ち有機物バンク層112bに近い側で厚くなっている。
【0064】
また、これと同時に、乾燥処理によって電極面111a上でも溶媒の蒸発が起き、これにより電極面111a上に正孔注入/輸送層形成材料からなる平坦部110a1が形成される。電極面111a上では溶媒の蒸発速度がほぼ均一であるため、正孔注入/輸送層の形成材料が電極面111a上で均一に濃縮され、これにより均一な厚さの平坦部110a1が形成される。このようにして、周縁部110a2及び平坦部110a1からなる正孔注入/輸送層110aが形成される。なお、周縁部110a2には形成されず、電極面111a上のみに正孔注入/輸送層が形成される態様であっても構わない。
【0065】
上記の乾燥処理は、例えば窒素雰囲気中、室温で圧力を例えば大気圧から133.3Pa(1Torr)程度まで減圧することにより行う。減圧に要する時間は数分から10分程度とする。圧力を急減に低くすると組成物の液滴110cが突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、極性溶媒の蒸発速度が高まり、平坦な膜を形成する事ができない。乾燥処理後は、窒素中、好ましくは真空中、200℃で10分程度加熱する熱処理を行うことで、正孔注入/輸送層110a内に残存する極性溶媒や水を除去することが好ましい。
【0066】
(3)発光層形成工程
発光層形成工程は、発光層形成材料吐出工程及び乾燥工程とからなる。
前述の正孔注入/輸送層形成工程と同様、インクジェット法により発光層形成用の液状組成物を正孔注入/輸送層110a上に吐出する。その後、吐出した液状組成物を乾燥処理(及び熱処理)して、正孔注入/輸送層110a上に発光層110bを形成する。
【0067】
図8に、インクジェットにより発光層形成用材料を含む液状組成物の吐出工程を示す。
図示の通り、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対的に移動し、インクジェットヘッドに形成された吐出ノズルH6から各色(例えばここでは青色(B))発光層形成材料を含有する液状組成物が吐出される。
吐出の際には、下部、上部開口部112c、112d内に位置する正孔注入/輸送層110aに吐出ノズルを対向させ、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対移動させながら液状組成物が吐出される。吐出ノズルH6から吐出される液量は1滴当たりの液量が制御されている。このように液量が制御された液(液状組成物滴110e)が吐出ノズルから吐出され、この液状組成物滴110eを正孔注入/輸送層110a上に吐出する。
【0068】
本実施形態では、上記液状組成物滴110eの配置に続けて、他の発光層用の液状組成物の吐出を行う。つまり、図9に示すように、基板2上に滴下された液状組成物滴110eを乾燥させることなく、液状組成物滴110f及び110gの吐出配置を行うようになっている。このように各色の発光層110b1〜110b3を形成するための液状組成物滴110e〜110gの滴下を行うに際しては、各色用の液状組成物をそれぞれ充填した複数の吐出ヘッドを、それぞれ独立に走査して基板2上への液状組成物滴110e〜110gの配置を行ってもよく、前記複数の吐出ヘッドを一体的に走査することにより、ほぼ同時に液状組成物110e〜110fの配置を行えるようにしてもよい。
【0069】
図8、図9に示すように、吐出された各液状組成物110e〜110gは、正孔注入/輸送層110a上に広がって下部、上部開口部112c、112d内に満たされる。その一方で、撥液処理された上面112fでは各液状組成物滴110e〜110gが所定の吐出位置からはずれて上面112f上に吐出されたとしても、上面112fが液状組成物滴110e〜110gで濡れることがなく、液状組成物滴110e〜110gが下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。
【0070】
各正孔注入/輸送層110a上に吐出する液状組成物量は、下部、上部開口部112c、112dの大きさ、形成しようとする発光層110bの厚さ、液状組成物中の発光層材料の濃度等により決定される。また、液状組成物110e〜110gは1回のみならず、数回に分けて同一の正孔注入/輸送層110a上に吐出しても良い。この場合、各回における液状組成物の量は同一でも良く、各回毎に液状組成物の液量を変えても良い。更に正孔注入/輸送層110aの同一箇所のみならず、各回毎に正孔注入/輸送層110a内の異なる箇所に液状組成物を吐出配置しても良い。
【0071】
発光層形成材料としては、前述のものを用いる事ができる。発光層形成材料を溶解ないし分散させるための溶媒は、各色発光層毎に同じ種類のものを用いることができる。
【0072】
次に、上記各色用の液状組成物110e〜110gを所定の位置に配置し終えた後、一括に乾燥処理することにより発光層110b1〜110b3が形成される。すなわち、乾燥により液状組成物滴110e〜110gに含まれる溶媒が蒸発し、図10に示すような赤色(R)発光層110b1、緑色(G)発光層110b2、青色(B)発光層110b3が形成される。なお、図10においては赤、緑、青に発光する発光層が1つずつ図示されているが、図1やその他の図より明らかなように本来は発光素子がマトリックス状に形成されたものであり、図示しない多数の発光層(各色に対応)が形成されている。
【0073】
発光層の液状組成物の乾燥は、正孔注入/輸送層の乾燥工程と同様の方法を用いることができる。この際、温度を室温以上にすると、溶媒の蒸発速度が高まり、発光層形成材料が上部開口部112d壁面に多く付着してしまうので好ましくない。なお、当該発光層110bを形成する液状組成物の乾燥処理において、正孔注入/輸送層110aと同様に基板外周部において膜厚むらが生じた場合にも、突出部112h1の働きにより、表示不具合の発生が防止ないし抑制されることとなる。
【0074】
次いで、上記真空乾燥が終了したならば、ホットプレート等の加熱手段を用いて発光層110bのアニール処理を行うことが好ましい。このアニール処理は、各有機EL層の発光特性を最大限に引き出せる共通の温度と時間で行う。
このようにして、画素電極111上に正孔注入/輸送層110a及び発光層110bが形成される。
【0075】
なお、前記発光層形成材料吐出工程に先立ち、正孔注入/輸送層110aの表面を表面改質するために表面改質工程を行うものとしても良い。
発光層形成工程では、正孔注入/輸送層110aの再溶解を防止するために、発光層形成の際に用いる液状組成物の溶媒として、正孔注入/輸送層110aに対して不溶な溶媒を用いるものとするのが好ましい。しかし、その一方で正孔注入/輸送層110aは、溶媒に対する親和性が低いため、溶媒を含む液状組成物を正孔注入/輸送層110a上に吐出しても、正孔注入/輸送層110aと発光層110bとを密着させることができなくなるか、あるいは発光層110bを均一に塗布できないおそれがある。そこで、溶媒ならびに発光層形成材料に対する正孔注入/輸送層110aの表面の親和性を高めるために、発光層形成の前に表面改質工程を行うことが好ましい。
【0076】
表面改質工程は、発光層形成の際に用いる液状組成物の溶媒と同一溶媒又はこれに類する溶媒である表面改質材を、インクジェット法(液滴吐出法)、スピンコート法又はディップ法により正孔注入/輸送層110a上に塗布した後に乾燥することにより行うことができる。ここで用いる表面改質材としては、液状組成物の溶媒と同一なものとして例えば、シクロへキシルベンゼン、イソプロピルビフェニル、トリメチルベンゼン等を例示でき、液状組成物の溶媒に類するものとして例えば、テトラメチルベンゼントルエン、トルエン、キシレン等を例示できる。
【0077】
(4)陰極形成工程
次に、図11に示すように、画素電極(陽極)111と対をなす陰極12を形成する。即ち、各色発光層110b及び有機物バンク層112bを含む基板2上の領域全面に、例えばITO等からなる透明な陰極12を形成する。これにより、各色発光層110bの形成領域全体に、陰極12が積層され、赤色、緑色、青色の各色に対応する発光素子がそれぞれ形成される。
陰極12は、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等で形成することが好ましく、特に蒸着法で形成することが、熱による発光層110bの損傷を防止できる点で好ましい。
【0078】
(5)封止工程
最後に、基板2において発光素子部11が設けられた側の面に封止樹脂3aを介して封止基板3bを接合し、発光素子部11を封止する。
ここではまず、図12に示すように、ガラス等からなる封止基板3bの表面に凸状のスペーサ31を形成する。このスペーサ31は、封止基板3bの表面にレジストを塗布し、これをパターニングすることにより形成してもよいし、封止基板3bの表面を直接エッチングすることにより形成しても良い。基板表面をエッチングした場合には、スペーサ31が封止基板3bと一体に形成されることから、強度の強いスペーサ31が形成される。なお、スペーサ31は、表示への影響を避けるために、基板2の非画素領域に配置されるようにする。
【0079】
次に、図13に示すように、基板2と封止基板3bとを封止樹脂3aを介して対向させ、基板2の凹部12Aと封止基板3bのスペーサ31とを嵌合させて位置を固定する。そして、このように両基板2,3bを高精度に位置決めした状態で、接着層である封止樹脂3aを硬化させる。
【0080】
この後、基板2の配線に陰極12を接続するとともに、基板2上あるいは外部に設けられる駆動IC(駆動回路)に回路素子部14の配線を接続することにより、本実施形態の有機EL装置が完成する。
【0081】
以上説明したように、本実施形態では、スペーサ31と凹部12Aとを嵌合させて封止基板3bの位置を固定するため、封止樹脂3aが硬化しても、封止基板3bがずれて基板2が撓んだり、不均一な応力が生じたりすることはない。また、スペーサ31が発光素子と平面的に重ならない位置に設けられているため、封止基板3bを貼り合わせる際にスペーサ31にかかる応力によって発光素子がダメージを受けることがなく、又、開口率の低下など、表示への影響も避けられる。さらに、基板2と封止基板3bとのギャップを均一に制御できることから、高品位な表示を実現することができる。
【0082】
なお、本実施形態では陰極12を基板2の最表面の膜とし、この陰極12の表面に現われた凹形状を嵌合用の凹部12Aとしたが、本発明は係る構造に限定されない。例えば、陰極12の表面に酸化防止のためのSiO2,SiN等の保護膜を形成し、この保護膜の表面に現われた凹形状を嵌合用の凹部としてもよい。同様に、スペーサ31についても封止基板3bの表面に形成した凸構造そのものではなく、この凸構造を反映してその表面に現われた凸形状を利用することが可能である。
【0083】
[第2の実施の形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る有機EL装置について説明する。
本実施形態の有機EL装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、異なるのは封止基板3bにカラーフィルタを設けた点のみである。よって、以下では、有機EL装置自体の説明は省略し、異なる部分のみを説明する。
【0084】
図16は、本実施形態の有機EL装置を示す平面図及び断面図であり、第1実施形態の図4に対応する図である。
図16に示すように、本実施形態の有機EL装置には、封止基板3bの表面にカラーフィルタ35が設けられている。このカラーフィルタ35には、赤色用、緑色用、青色用の各画素Pに対してそれぞれ赤色着色層35R、緑色着色層35G、青色着色層35Bが設けられており、各着色層35R,35G,35Bの間にはブラックマトリクス(遮光層)BMが設けられている。ブラックマトリクスBMは、基板2の非画素領域に対応してストライプ状に設けられており、このブラックマトリクスBMの上に凸状のスペーサ31が設けられている。そして、このスペーサ31と基板2に設けられた凹部12Aとを嵌合させることで封止基板3bの位置決めが行なわれている。なお、ブラックマトリクスBMは、非画素領域に対応して格子状に設けてもよい。
【0085】
本実施形態では、封止基板3bにカラーフィルタ35を設けたため、より色純度の高い表示を実現することができる。この際、封止基板3bと基板2とをスペーサ31及び凹部12Aによって高精度に位置決めできるため、このような構成を採用しても、カラーフィルタ35と発光素子との位置ずれによる光のロスは殆ど生じない。
【0086】
[第3の実施の形態]
以下、本発明の第3実施形態に係る有機EL装置について説明する。
本実施形態の有機EL装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、異なるのは、各画素Pの発光層110bを同じ材料(例えば青色発光材料)によって形成した点と、封止基板3bに発光層110bからの光を所定の色光に変換する蛍光変換膜を設けた点のみである。よって、以下では、有機EL装置自体の説明は省略し、異なる部分のみを説明する。
【0087】
図17は、本実施形態の有機EL装置を示す平面図及び断面図であり、第1実施形態の図4に対応する図である。
図17に示すように、本実施形態の有機EL装置には、封止基板3bの表面に蛍光変換膜36(36R,36G,36B)が設けられている。この蛍光変換膜36は、赤色用、緑色用、青色用の各画素Pに対してそれぞれ赤色蛍光変換膜36R、緑色蛍光変換膜36G、青色蛍光変換膜36Bが設けられている。この蛍光変換膜としては、特開平11−251059号公報や特開平11−54273号公報等に開示されているような公知の材料を用いることができる。また、各蛍光変換膜36R,36G,36Bの間には、ブラックマトリクス(遮光層)BMが設けられている。ブラックマトリクスBMは、基板2の非画素領域に対応してストライプ状に設けられており、このブラックマトリクスBMの上に凸状のスペーサ31が設けられている。そして、このスペーサ31と基板2に設けられた凹部12Aとを嵌合させることで封止基板3bの位置決めが行なわれている。なお、ブラックマトリクスBMは、非画素領域に対応して格子状に設けてもよい。
【0088】
本実施形態では、封止基板3bに蛍光変換膜を設けたため、各画素Pの蛍光変換膜を適切に選択することで多色化が可能になる。この際、封止基板3bと基板2とをスペーサ31及び凹部12Aによって高精度に位置決めできるため、このような構成を採用しても、蛍光変換膜と発光素子との位置ずれによるコントラストの低下は殆ど生じない。また、本実施形態では、各画素Pの発光素子の構成を同一としたので、それぞれの画素Pの寿命が異なることによる色再現性の劣化等を防止することができる。
【0089】
[第4の実施の形態]
以下、本発明の第4実施形態に係る有機EL装置について説明する。
本実施形態の有機EL装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、異なるのはスペーサを形成する基板と凹部を形成する基板とを相互に入れ換えた点のみである。よって、以下では、有機EL装置自体の説明は省略し、異なる部分のみを説明する。
【0090】
図18は、本実施形態の有機EL装置を示す平面図及び断面図であり、第1実施形態の図4に対応する図である。
図18に示すように、本実施形態の有機EL装置においては、基板2に凸状のスペーサ112Aが設けられており、封止基板3aにおいてスペーサ112Aの先端部が突き当たる突き当て部分に嵌合用の凹部3Aが設けられている。スペーサ112Aと凹部3Aは、バンク部112の上面112f、すなわち画素Pと画素Pとの間の非画素領域部分に配置されている。この図の例では、ドット状の凹部3Aが画素間の中央部において画素Pの長辺方向に一定のピッチで規則的に配列されているが、凹部3Aは必ずしもこの配列で形成されている必要はない。例えば、凹部3Aを画素間の中央部において画素Pの短辺方向に規則的に配列させてもよい。また、凹部3Aは必ずしもドット状に形成する必要はなく、ストライプ状の溝又は画素Pの周囲を囲む格子状の溝として形成してもよい。この場合、基板2のスペーサ112Aは、凹部3Aの形状に合わせた形状とする必要がある。
【0091】
スペーサ112Aは、バンク部112の表面に別個の工程で形成してもよいし、有機物バンク層112bをパターニングする際に同時に形成しても良い。有機物バンク層112bと一体に形成した場合には、スペーサ112Aを形成するための別個の工程が必要なく、又、発光素子の位置に対して高い精度で形成することが可能である。凹部3Aは、封止基板3bの表面にレジストを塗布し、これをパターニングすることにより形成してもよいし、封止基板3bの表面を直接エッチングすることにより形成しても良い。基板表面をエッチングした場合には、スペーサ112Aが封止基板3bと一体に形成されることから、強度の強いスペーサ112Aが形成される。
【0092】
この有機EL装置においては、基板2に設けられたスペーサ112Aと封止基板3bに設けられた凹部3Aとを嵌合させることで封止基板3bの位置決めが行なわれている。よって、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、高品質且つ信頼性の高い有機EL装置を提供することができる。
【0093】
(電子機器)
図19は、本発明に係る電子機器の一実施形態を示している。本実施形態の電子機器は、上述した有機EL装置を表示手段として備えている。ここでは、携帯電話の一例を斜視図で示しており、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は上記の有機EL装置1を用いた表示部を示している。このように本実施形態に係る有機EL装置を表示手段として備える電子機器では、良好な発光特性を得ることができる。
【0094】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記実施形態では、トップエミッション型の有機EL装置について説明したが、本発明はこれに限らず、ボトムエミッション型の有機EL装置或いは無機EL装置に本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】第1実施形態の有機EL装置の回路図。
【図2】同、平面構成図。
【図3】同、表示領域の断面構成図。
【図4】同、表示領域の平面模式図及び断面模式図。
【図5】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図6】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図7】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図8】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図9】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図10】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図11】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図12】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図13】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図14】実施形態に係るヘッドの平面構成図。
【図15】実施形態に係るインクジェット装置の平面構成図。
【図16】第2実施形態の有機EL装置の表示領域の平面模式図及び断面模式図。
【図17】第3実施形態の有機EL装置の表示領域の平面模式図及び断面模式図。
【図18】第4実施形態の有機EL装置の表示領域の平面模式図及び断面模式図。
【図19】電子機器の一例を示す斜視構成図。
【符号の説明】
【0096】
1…有機EL装置、2…基板、3a…封止樹脂(接着層)、3b…封止基板、3A…嵌合用の凹部、12A…嵌合用の凹部、31…スペーサ、35…カラーフィルタ、36…蛍光変換膜、110c,110e…インク(機能液)、112…バンク部(隔壁)、112f…バンク上面、112g…開口部(バンクによって区画された領域)、112A…スペーサ、150…バンクの表面に設けられた凹部、1000…電子機器、BM…ブラックマトリクス(遮光層)、P…画素領域(画素)
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス装置、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光素子であるEL(エレクトロルミネッセンス)素子を画素として用いたEL装置の開発が進められている。EL素子は、陽極と陰極との間に発光層等の機能層を挟持した構成を備えており、最近では、有機物材料を溶解した液体材料を、インクジェット法によって基板上にパターン配置する方法を採用した有機EL装置の開発が行われている(例えば特許文献1参照)。
このようなEL装置では、酸素や水分等に対する耐久性向上が課題となっている。例えば、有機EL装置を構成する発光素子は、無機陽極/(有機正孔注入層)/有機発光層/(電子注入層)/無機陰極からなるものであるが、特に電子を放出し易い材料特性を持つ電子注入層は、大気中に存在する水分と反応しやすく、水と反応することによって電子注入効果がなくなり、ダークスポットと呼ばれる非発光領域を形成してしまう。このような課題を解決する技術として、従来では、例えば基板上にEL素子を形成し、この基板上のEL素子を覆うように他の基板を樹脂等を介して貼り合わせ、EL素子を封止する構造が知られている。
【特許文献1】特開2004−265837号公報
【特許文献2】特開平11―329717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のようにEL素子基板と封止用基板とを樹脂などを用いてベタで貼り合わせる場合には、EL素子基板と封止用基板とのギャップ(間隔)を精密に制御し、全体のパネル厚を一定にする必要がある。接着層厚を管理する方法としては、液晶装置で用いられるようなスペーサ(ギャップ材)を用いるのが一般的であり、最も簡便な方法である。しかしながら、このようなスペーサは散布によって基板上にランダムに配置されるため、例えば、封止基板と素子基板を貼り合わせるときに応力が不均一となり、基板が撓みや応力を持った状態で固定されてしまうとう問題がある。また、トップエミッション型の構造に適用した場合には、発光をランダムに屈折させる、光取り出し効率を低下させる、外光を乱反射させるなど、光学的特性を不均一にしてしまうという問題もある。このような問題を回避するために、スペーサを発光に影響がないように規則的に配置させる方法が提案されている。例えば、特許文献2には、画素間の領域にスペーサを規則的に配置した構造が開示されている。
【0004】
しかしながら、このようにスペーサを規則的に配置し、基板同士をアライメントしても、樹脂が硬化するまでに基板間にずれが生じ、アライメントの精度が低下することがあり、特に大型基板でベタ封止を行なった場合には、このような問題は顕著になる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、封止基板を樹脂でベタで接着するタイプの封止構造を持つEL装置において、素子基板と封止基板との間のギャップが容易に制御でき、かつ基板の撓み、応力等が発生しにくいEL装置及びこれを用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明のエレクトロルミネッセンス装置は、複数の発光素子が設けられた基板と、前記基板の前記発光素子が設けられた側の面に接着層を介して設けられた封止基板と、前記基板又は前記封止基板の少なくとも一方に設けられた凸状のスペーサと、前記基板又は前記封止基板において前記スペーサの先端部が突き当たる突き当て部分に設けられた嵌合用の凹部とを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、スペーサと凹部とが嵌合した状態で封止基板の接着が行なわれるため、接着剤硬化時のずれが防止され、アライメント精度の向上を図ることができる。
【0006】
本発明においては、前記スペーサは、前記発光素子と平面的に重ならない位置に設けられているものとすることができる。
この構成によれば、スペーサにかかる応力によって発光素子がダメージを受けることはない。また、トップエミッション型の構造(前記発光素子からの発光光は、前記封止基板側から取り出される構造)に適用した場合には、開口率の低下など、表示への影響も避けられる。
【0007】
本発明においては、前記封止基板に遮光層が設けられているものとすることができる。
この構成によれば、画素間の混色や外光反射による視認性の低下を防ぐことができる。本発明においては、封止基板と基板とのアライメントを高精度に行なうことができるため、このような構成を採用しても、遮光層と発光素子との位置ずれによる開口率の低下は殆ど生じない。
【0008】
本発明においては、前記封止基板にカラーフィルタが設けられているものとすることができる。
この構成によれば、色純度の高い表示が得られる。本発明においては、封止基板と基板とのアライメントを高精度に行なうことができるため、このような構成を採用しても、カラーフィルタと発光素子との位置ずれによる光のロスは殆ど生じない。
【0009】
本発明においては、前記封止基板に蛍光変換膜が設けられているものとすることができる。
この構成によれば、各発光素子(すなわち画素)に対して蛍光変換膜を適切に選択することにより多色化が可能になる。本発明においては、封止基板と基板とのアライメントを高精度に行なうことができるため、このような構成を採用しても、蛍光変換膜と発光素子との位置ずれによるコントラストの低下は殆ど生じない。また、この構成においては、各発光素子の構成を同一とすることで、それぞれの発光素子の寿命が異なることによる色再現性の劣化等を防止することができる。
【0010】
本発明においては、前記発光素子は、隔壁(バンク)によって区画された領域にむ機能液を配置することにより形成されているものとすることができる。
このように液相プロセスを用いることで、蒸着等の気相プロセスを用いる場合に比べて、製造コストを下げることができる。液相プロセスとしては、特に液滴吐出法を用いたプロセスが好ましい。液滴吐出法を用いることにより、スピンコート法などの他の塗布技術に比べて、液体材料の消費に無駄が少なく、基板上に配置する機能液の量や位置の制御を行ないやすいという利点がある。
【0011】
本発明においては、前記スペーサは、前記封止基板の表面に形成されており、前記凹部は、前記隔壁の表面に設けられた凹部によって形成されているものとすることができる。この場合、凹部は、隔壁に形成された凹部そのものとすることもできるし、隔壁の表面に陰極や保護膜等の膜が形成されている場合には、これらの膜の表面に現われた凹形状を凹部とすることもできる。
【0012】
本発明においては、前記スペーサは、前記封止基板の表面をエッチングすることにより形成されているものとすることができる。
この構成によれば、強度の強いスペーサを形成することができる。
【0013】
本発明においては、前記スペーサは、前記隔壁の表面に設けられた凸部によって形成されており、前記凹部は、前記封止基板の表面に形成されているものとすることができる。この場合、スペーサは、隔壁に形成された凸部そのものとすることもできるし、隔壁の表面に陰極や保護膜等の膜が形成されている場合には、これらの膜の表面に現われた凸形状をスペーサとすることもできる。
【0014】
本発明においては、前記スペーサは、前記隔壁のパターニングと同時に形成されているものとすることができる。
この構成によれば、スペーサを形成するための別個の工程が必要なく、又、発光素子の位置に対して高い精度で形成することも可能である。
【0015】
本発明においては、前記凹部は、前記封止基板の表面をエッチングすることにより形成されているものとすることができる。
この構成によれば、強度の強い凹部を形成することができる。
【0016】
本発明の電子機器は、前述した本発明のエレクトロルミネッセンス装置を備えることを特徴とする。
この構成によれば、表示品質の高い電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る有機EL装置(有機エレクトロルミネッセンス装置)について説明する。本実施形態の有機EL装置は、発光素子を画素として基板上に配列してなる有機EL表示装置であって、接着剤を用いて封止基板をベタで接着するタイプの構造を有するものである。この有機EL装置は、トップエミッション型、ボトムエミッション型のいずれの構造でもよいが、本実施形態では例えばトップエミッション型の構造とした場合について説明する。
図1は本実施形態の有機EL装置の配線構造を示す説明図、図2は有機EL装置の平面模式図及び断面模式図、図3は有機EL装置の表示領域の断面模式図である。
【0018】
(有機EL装置)
図1に示すように、本実施形態の有機EL装置は、複数の走査線101と、走査線101に対して交差する方向に延びる複数の信号線102と、信号線102に対して並列する方向に延びる複数の電源線103とがそれぞれ配線された構成を有し、走査線101及び信号線102の各交点付近には画素領域Pが設けられている。
【0019】
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路104が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路105が接続されている。
更に、画素領域Pの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の薄膜トランジスタ122と、このスイッチング用の薄膜トランジスタ122を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量capと、該保持容量capによって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用の薄膜トランジスタ123と、この駆動用薄膜トランジスタ123を介して電源線103に電気的に接続したときに当該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(電極)111と、この画素電極111と陰極(対向電極)12との間に挟み込まれた有機EL層110とが設けられている。電極111と対向電極12と有機EL層110により、発光素子が構成されている。
【0020】
走査線101が駆動されてスイッチング用の薄膜トランジスタ122がオンになると、そのときの信号線102の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて駆動用の薄膜トランジスタ123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ123のチャネルを介して、電源線103から画素電極111に電流が流れ、更に有機EL層110を介して陰極12に電流が流れる。有機EL層110では、流れる電流量に応じて発光が生じる。
【0021】
次に図2(a)及び図2(b)に示すように、本実施形態の有機EL装置1は、ガラス等からなる基板2と、マトリックス状に配置された発光素子を具備して基板2上に形成された発光素子部11と、発光素子部11上に形成された陰極12と、封止部3とを具備している。ここで、発光素子部11と陰極12とにより表示素子10(図3参照)が構成される。
基板2は、基板2の中央に位置する表示領域2aと、基板2の周縁に位置して表示領域2aの外側に配置された非表示領域2bとに区画されている。表示領域2aは、マトリックス状に配置された発光素子によって形成される領域であり、有効表示領域とも言う。また、表示領域の外側に非表示領域2bが形成されている。そして、非表示領域2bには、表示領域2aに隣接するダミー表示領域2dが形成されている。
また、図2(b)に示すように、発光素子及びバンク部112からなる発光素子部11と基板2との間には回路素子部14が備えられ、この回路素子部14に前述の走査線、信号線、保持容量、スイッチング用の薄膜トランジスタ、駆動用の薄膜トランジスタ123等が備えられている。
また、陰極12は、その一端が基板2上に形成された陰極用配線12aに接続しており、この配線の一端部12bがフレキシブル基板5上の配線5aに接続されている。また、配線5aは、フレキシブル基板5上に備えられた駆動IC6(駆動回路)に接続されている。
【0022】
また、図2(a)及び図2(b)に示すように、回路素子部14の非表示領域2bには、前述の電源線103(103R、103G、103B)が配線されている。
また、表示領域2aの図2(a)中両側には、前述の走査側駆動回路105、105が配置されている。この走査側駆動回路105、105はダミー領域2dの下側の回路素子部14内に設けられている。更に回路素子部14内には、走査側駆動回路105、105に接続される駆動回路用制御信号配線105aと駆動回路用電源配線105bとが設けられている。
更に表示領域2aの図2(a)中上側には検査回路106が配置されている。この検査回路106により、製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行うことができる。
【0023】
また図2(b)に示すように、発光素子部11上には封止部3が備えられている。この封止部3は、陰極12上に塗布された熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂等からなる封止樹脂(接着層)3aと、封止樹脂3a上に配置された封止基板3bとからなる。なお、封止樹脂3aとしては、硬化時にガス、溶媒等が発生しないものが好ましい。
この封止部3は、少なくとも発光素子部11上にある陰極12をほぼ覆うように形成されており、陰極12及び発光層を含む機能層に対する水又は酸素の侵入を防いで、陰極12または発光層の酸化を防止する。
尚、封止基板3bは、封止樹脂3aに接合されて封止樹脂3aを保護するものであり、ガラス板、金属板若しくは樹脂板のいずれかであることが好ましい。トップエミッション型の構造においては、発光光を封止基板3b側から取り出すため、封止基板3bはガラス等の透光性の基板を用いることが必須である。
【0024】
図3に、有機EL装置1の表示領域の断面図を示す。図3には3つの画素領域Pが図示されている。本実施形態の有機EL装置1では、基板2上に、TFTなどの回路等が形成された回路素子部14、有機EL層110が形成された発光素子部11及び陰極12が順次積層されて構成されており、有機EL層110から封止部3側に発せられた光が、封止部3を透過して基板2の上側(観察者側)に出射されるようになっている。
【0025】
回路素子部14には、基板2上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜2cが形成され、この下地保護膜2c上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜141が形成されている。半導体膜141には、ソース領域141a及びドレイン領域141bが高濃度リンイオン打ち込みにより形成されている。前記リンイオンが導入されなかった部分がチャネル領域141cとなっている。
【0026】
また、前記下地保護膜2c及び半導体膜141を覆う透明なゲート絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極143(走査線101)が形成され、ゲート電極143及びゲート絶縁膜142上には透明な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bが形成されている。ゲート電極143は半導体膜141のチャネル領域141cに対応する位置に設けられている。また、第1、第2層間絶縁膜144a、144bを貫通して、半導体膜141のソース、ドレイン領域141a、141bにそれぞれ接続されるコンタクトホール145,146が形成されている。
【0027】
そして、第2層間絶縁膜144b上には、画素電極111が所定の形状にパターニングされて形成され、一方のコンタクトホール145がこの画素電極111に接続されている。また、もう一方のコンタクトホール146が電源線103に接続されている。このようにして、回路素子部14には、各画素電極111に接続された駆動用の薄膜トランジスタ123が形成されている。
【0028】
発光素子部11は、複数の画素電極111…上の各々に積層された有機EL層110と、各画素電極111及び有機EL層110の間に備えられて各有機EL層110を区画するバンク部(隔壁)112とを主体として構成されている。有機EL層110上には陰極12が配置されている。これら画素電極111、有機EL層110及び陰極12によって発光素子が構成されている。ここで、画素電極111は、例えばITOにより形成されてなり、平面視略矩形状にパターン形成されている。この画素電極111…を含む各画素を仕切る形にてバンク部112が備えられている。なお、画素電極111には、ITOに限らず任意の導電材料を用いることができる。トップエミッション型の構造では、基板2と反対側に光を出射させるため、画素電極111としては、アルミニウム等の高反射率の金属材料を用いることが好ましい。
【0029】
バンク部112は、図3に示すように、基板2側に位置する第1隔壁部としての無機物バンク層(第1バンク層)112aと、基板2から離れて位置する第2隔壁部としての有機物バンク層(第2バンク層)112bとが積層された構成を備えている。無機物バンク層112aは、例えばTiO2やSiO2等により形成され、有機物バンク層112bは、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等により形成される。
【0030】
無機物、有機物バンク層112a、112bは、画素電極111の周縁部上に乗上げるように形成されている。平面的には、画素電極111の周囲と無機物バンク層112aとが部分的に重なるように配置された構造となっている。また、有機物バンク層112bも同様であり、画素電極111の一部と平面的に重なるように配置されている。また無機物バンク層112aは、有機物バンク層112bの縁端よりも画素電極111の中央側に更に突出するように形成されている。このようにして、無機物バンク層112aの各第1積層部(突出部)112eが画素電極111の内側に形成されることにより、画素電極111の形成位置に対応する下部開口部112cが設けられている。
【0031】
また、有機物バンク層112bには、上部開口部112dが形成されている。この上部開口部112dは、画素電極111の形成位置及び下部開口部112cに対応するように設けられている。上部開口部112dは、図3に示すように、下部開口部112cより間口が広く、画素電極111より狭く形成されている。また、上部開口部112dの上部の位置と、画素電極111の端部とがほぼ同じ位置になるように形成される場合もある。この場合は、図3に示すように、有機物バンク層112bの上部開口部112dの断面が傾斜した形状となる。このようにして、バンク部112には、下部開口部112c及び上部開口部112dが連通された開口部112gが形成されている。
【0032】
また、バンク部112には、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域が形成されている。親液性を示す領域は、無機物バンク層112aの第1積層部112e及び画素電極111の電極面111aであり、これらの領域は、酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理されている。また、撥液性を示す領域は、上部開口部112dの壁面及び有機物バンク層112の上面112fであり、これらの領域は、テトラフルオロメタンを処理ガスとするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)されている。
【0033】
また、バンク部112の上面、すなわち有機物バンク層112bの上面112fには、凹部150が形成されている。この凹部150は、基板2の最表面に封止基板3b側のスペーサ31に嵌合する凹部12Aを形成するためのものである。このバンク部112の凹部150(すなわち基板最表面の凹部12A)は、表示への影響をなくすために、発光素子と平面的に重ならない位置(非画素領域)に設けられている。
【0034】
一方、有機EL層110は、画素電極111上に積層された正孔注入/輸送層110aと、正孔注入/輸送層110a上に隣接して形成された発光層110bとから構成されている。
正孔注入/輸送層110aは、発光層110bに正孔を注入する機能を有するとともに、正孔注入/輸送層110a内部において正孔を輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層110aを画素電極111と発光層110bの間に設けることにより、発光層110bの発光効率、寿命等の素子特性が向上する。また、発光層110bでは、正孔注入/輸送層110aから注入された正孔と、陰極12から注入される電子が発光層で再結合し、発光が行われる。
【0035】
正孔注入/輸送層110aは、下部開口部112c内に位置して画素電極面111a上に形成される平坦部110a1と、上部開口部112d内に位置して無機物バンク層の第1積層部112e上に形成される周縁部110a2から構成されている。また、正孔注入/輸送層110aは、構造によっては、画素電極111上であって、且つ無機物バンク層110aの間(下部開口部110c)にのみ形成されている(前述に記載した平坦部にのみ形成される形態もある)。
【0036】
また、発光層110bは、正孔注入/輸送層110aの平坦部110a1及び周縁部110a2上に渡って形成されており、平坦部112a1上での厚さが50nm〜80nmの範囲とされている。発光層110bは、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1、緑色(G)に発光する緑色発光層110b2、及び青色(B)に発光する青色発光層110b3の3種類を有し、図2に示したように、各発光層110b1〜110b3がストライプ配置されている。
【0037】
無機物バンク層の第1積層部112e上に不均一な厚さの周縁部110a2が形成されているため、周縁部110a2が第1積層部112eによって画素電極111から絶縁された状態となり、周縁部110a2から発光層110bに正孔が注入されることがない。
これにより、画素電極111からの電流が平坦部112a1のみに流れ、正孔を平坦部112a1から発光層110bに均一に輸送させることができ、発光層110bの中央部分のみを発光させることができるとともに、発光層110bにおける発光量を一定にすることができる。
また、無機物バンク層112aが有機物バンク層112bよりも画素電極111の中央側に更に延出されているので、この無機物バンク層112aによって画素電極111と平坦部110a1との接合部分の形状をトリミングすることができ、各発光層110b間の発光強度のばらつきを抑えることができる。
【0038】
更に、画素電極111の電極面111a及び無機物バンク層112aの第1積層部112eが親液性を示すので、有機EL層110が画素電極111及び無機物バンク層112aに均一に密着し、無機物バンク層112a上で有機EL層110が極端に薄くならず、画素電極111と陰極12との短絡を防止できる。また、有機物バンク層112bの上面112f及び上部開口部112dの壁面が撥液性を示すので、有機EL層110が開口部112gから溢れて形成されることがない。
【0039】
なお、正孔注入/輸送層形成材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸等の混合物を用いることができる。
また、発光層110bの材料としては、例えば、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、またはこれらの高分子材料にルブレン、ペリレン、9,10-ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープして用いることができる。
【0040】
陰極12は、発光素子部11の全面に形成されており、画素電極111と対になって有機EL層110に電流を流す役割を果たす。この陰極12は、ITO等の透光性の導電材料によって形成されている。発光層110bと陰極12との間には、発光効率を高めるためのLiF等の電子注入層を形成する場合もある。
【0041】
陰極12の表面には、バンク上面112fの凹部150を反映して凹部12Aが形成されている。この凹部12Aは、封止基板3bの表面に設けられた後述のスペーサ31と共に、基板2と封止基板3bとを位置決めする位置決め手段として機能する。すなわち、本実施形態においては、封止樹脂3aを硬化する際の基板2と封止基板3bとのずれを防止するために、これらの基板2及び封止基板3bのうち、一方の基板3bに凸状のスペーサ31を形成し、他方の基板2に嵌合用の凹部12Aを形成し、これらスペーサ31と凹部12Aとを嵌合させた状態で封止樹脂3aを硬化している。本実施形態の場合、陰極12が基板2の最表面となることから、陰極12の表面に凹部12Aが形成されており、この凹部12Aに嵌合するように、封止基板3bに凸状のスペーサ31が設けられている。
【0042】
このように発光素子部11が設けられた基板2の表面には、封止樹脂3aを接着層として封止基板3bが設けられている。封止基板3bにおいて基板2と対向する側の面には、多数の凸状のスペーサ31が設けられている。このスペーサ31は、基板2において当該スペーサ31の先端部が突き当たる突き当て部分に設けられた凹部12Aと嵌合しており、これらスペーサ31と凹部12Aによって高精度にアライメントされた状態で封止樹脂3aが硬化されている。
【0043】
図4はスペーサ31と凹部12Aによる接合状態を示す模式図であり、図4(a)はその平面構造を示す模式図、図4(b)はそのC−D断面を示す模式図である。
図4に示すように、スペーサ31と凹部12Aは、バンク112の上面112f、すなわち画素Pと画素Pとの間の非画素領域部分に配置されている。この図の例では、ドット状の凹部12Aが画素間の中央部において画素Pの長辺方向に一定のピッチで規則的に配列されているが、凹部12Aは必ずしもこの配列で形成されている必要はない。例えば、凹部12Aを画素間の中央部において画素Pの短辺方向に規則的に配列させてもよい。また、凹部12Aは必ずしもドット状に形成する必要はなく、ストライプ状の溝又は画素Pの周囲を囲む格子状の溝として形成してもよい。この場合、封止基板3bのスペーサ31は、凹部12Aの形状に合わせた形状とする必要がある。
【0044】
(有機EL装置の製造方法)
次に、上記有機EL装置1を製造する方法について図面を参照して説明する。
本実施形態の製造方法は、(1)バンク部形成工程、(2)正孔注入/輸送層形成工程、(3)発光層形成工程、(4)陰極形成工程及び(5)封止工程等を有する。なお、ここで説明する製造方法は一例であって、必要に応じてその他の工程が追加されたり、上記の工程の一部が除かれたりする。
なお、(2)正孔注入/輸送層形成工程、(3)発光層形成工程は、液滴吐出装置を用いた液体吐出法(インクジェット法)を用いて行われる。
【0045】
(1)バンク部形成工程
バンク部形成工程では、基板2の所定位置にバンク部112を形成する。バンク部112は、第1のバンク層として無機物バンク層112aが形成され、第2のバンク層として有機物バンク層112bが形成された構造を有している。
【0046】
(1)−1 無機物バンク層112aの形成
まず、図5に示すように、基板上の所定位置に無機物バンク層112aを形成する。無機物バンク層112aが形成される位置は、第2層間絶縁膜144b及び画素電極111上である。なお、第2層間絶縁膜144bは薄膜トランジスタ、走査線、信号線、等が配置された回路素子部14上に形成されている。無機物バンク層112aは、例えば、SiO2、TiO2等の無機物材料にて構成することができる。これらの材料は、例えばCVD法、コート法、スパッタ法、蒸着法等によって形成される。更に、無機物バンク層112aの膜厚は50nm〜200nmの範囲が好ましく、特に150nmがよい。
【0047】
無機物バンク層112aは、層間絶縁層144及び画素電極111の全面に無機物膜を形成し、その後無機物膜をフォトリソグラフィ法等によりパターニングすることにより、開口部を有する形にて形成される。この開口部は、画素電極111の電極面111aの形成位置に対応するもので、図5に示すように下部開口部112cとして設けられる。なお、このとき、無機物バンク層112aは画素電極111の周縁部と一部重なるように形成され、これにより発光層110の平面的な発光領域が制御される。
【0048】
(1)−2 有機物バンク層112bの形成
次に、第2のバンク層としての有機物バンク層112bを形成する。
具体的には、図5に示すように、無機物バンク層112a上に有機物バンク層112bを形成する。有機物バンク層112bを構成する材料として、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶剤性を有する材料を用いる。これらの材料を用い、有機物バンク層112bをフォトリソグラフィ技術等によりパターニングして形成される。なお、パターニングする際、有機物バンク層112bに上部開口部112dを形成する。上部開口部112dは、電極面111a及び下部開口部112cに対応する位置に設けられ、全画素共通のパターンを有して形成するものとする。また、有機物バンク層112bをパターニングする際に、バンク上面112fに凹部150を形成する。この凹部150は画素間の中央部に対応する位置に設けられるものとする。凹部150の深さは、上部開口部112dと同じ深さ(すなわち無機物バンク層112aに達する深さ)でもよく、上部開口部112dよりも浅い深さ(すなわち無機物バンク層112aに達しない程度の深さ)でもよい。凹部150を浅く形成する場合には、例えば、上部開口部112dのパターニングにおいて露光条件を変更して2度露光すればよい。
【0049】
上部開口部112dは、図5に示すように、無機物バンク層112aに形成された下部開口部112cより広く形成する事が好ましい。更に、有機物バンク層112bは断面形状がテーパー状をなすことが好ましく、有機物バンク層112bの最底面では画素電極111の幅より狭く、有機物バンク層112bの最上面では画素電極111の幅とほぼ同一の幅に形成する事が好ましい。
これにより、無機物バンク層112aの下部開口部112cを囲む第1積層部112eが、有機物バンク層112bよりも画素電極111の中央側に突出された形になる。このようにして、有機物バンク層112bに形成された上部開口部112d、無機物バンク層112aに形成された下部開口部112cを連通させることにより、無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bを貫通する開口部112gが形成される。
【0050】
有機物バンク層112bの厚さは、0.1μm〜3.5μmの範囲が好ましく、特に2μm程度がよい。このような範囲とする理由は以下の通りである。
すなわち、厚さが0.1μm未満では、後述する正孔注入/輸送層及び発光層の合計厚より有機物バンク層112bが薄くなり、発光層110bが上部開口部112dから溢れてしまうおそれがあるので好ましくない。また、厚さが3.5μmを越えると、上部開口部112dによる段差が大きくなり、上部開口部112dにおける陰極12のステップカバレッジが確保できなくなるので好ましくない。また、有機物バンク層112bの厚さを2μm以上とすれば、陰極12と駆動用の薄膜トランジスタ123との絶縁を高めることができる点で好ましい。
【0051】
さらに、形成されたバンク部112、及び画素電極111の表面は、プラズマ処理により適切な表面処理を施すことが好ましく、具体的にはバンク部112表面の撥液化処理、及び画素電極111の親液化処理を行う。
まず、画素電極111の表面処理は、酸素ガスを用いたO2プラズマ処理により行うことができ、例えばプラズマパワー100kW〜800kW、酸素ガス流量50ml/min〜100ml/min、板搬送速度0.5mm/sec〜10mm/sec、基板温度70℃〜90℃の条件で処理することで、画素電極111表面を含む領域を親液化することができる。また、このO2プラズマ処理により画素電極111表面の洗浄、及び仕事関数の調整も同時に行われる。
次いで、バンク部112の表面処理は、テトラフルオロメタンを用いたCF4プラズマ処理により行うことができ、例えばプラズマパワー100kW〜800kW、テトラフルオロメタンガス流量50ml/min〜100ml/min、基板搬送速度0.5mm/sec〜10mm/sec、基板温度70℃〜90℃の条件で処理することで、バンク部112の上部開口部112d及び上面112fを撥液化することができる。
【0052】
(2)正孔注入/輸送層形成工程
次に発光素子形成工程では、まず画素電極111上に正孔注入/輸送層を形成する。
正孔注入/輸送層形成工程では、液滴吐出装置として例えばインクジェット装置を用いることにより、正孔注入/輸送層形成材料を含む液状組成物を電極面111a上に吐出する。その後に乾燥処理及び熱処理を行い、画素電極111上及び無機物バンク層112a上に正孔注入/輸送層110aを形成する。なお、ここで、正孔注入/輸送層110aは第1積層部112e上に形成されないこともあり、つまり画素電極111上にのみ正孔注入/輸送層が形成される形態もある。
【0053】
インクジェットによる製造方法は以下の通りである。すなわち、図6に示すように、インクジェットヘッドH1に形成された複数のノズルから正孔注入/輸送層形成材料を含む液状組成物を吐出する。ここではインクジェットヘッドを走査することにより各画素毎に組成物を充填しているが、基板2を走査することによっても可能である。更に、インクジェットヘッドと基板2とを相対的に移動させることによっても組成物を充填させることができる。なお、これ以降のインクジェットヘッドを用いて行う工程では上記の点は同様である。
【0054】
インクジェットヘッドによる吐出は以下の通りである。すなわち、インクジェットヘッドH1に形成された吐出ノズルH2を電極面111aに対向させて配置し、ノズルH2から液状組成物を吐出する。画素電極111の周囲には下部開口部112cを区画するバンク112が形成されており、この下部開口部112c内に位置する画素電極面111aにインクジェットヘッドH1を対向させ、このインクジェットヘッドH1と基板2とを相対移動させながら、吐出ノズルH2から1滴当たりの液量が制御された液状組成物の液滴110cを電極面111a上に吐出する。
【0055】
本工程で用いる液状組成物としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸(PSS)等の混合物を、極性溶媒に溶解させた組成物を用いることができる。極性溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及びその誘導体、カルビト−ルアセテート、ブチルカルビト−ルアセテート等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。
【0056】
より具体的な組成としては、PEDOT/PSS混合物(PEDOT/PSS=1:20):12.52重量%、IPA:10重量%、NMP:27.48重量%、DMI:50重量%のものを例示できる。なお、上記液状組成物の粘度は1mPa・s〜20mPa・s程度が好ましく、特に4mPa・s〜15mPa・s程度が良い。
【0057】
上記の液状組成物を用いることにより、吐出ノズルH2に詰まりが生じることがなく安定吐出できる。なお、正孔注入/輸送層形成材料は、赤(R)、緑(G)、青(B)の各発光層110b1〜110b3に対して同じ材料を用いても良く、発光層毎に変えても良い。
【0058】
吐出された組成物の液滴110cは、親液処理された電極面111a及び第1積層部112e上に広がり、下部、上部開口部112c、112d内に充填される。仮に、第1組成物滴110cが所定の吐出位置から外れて上面112f上に吐出されたとしても、上面112fが第1組成物滴110cで濡れることがなく、弾かれた第1組成物滴110cが下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。
【0059】
電極面111a上に吐出する組成物の量は、下部、上部開口部112c、112dの大きさ、形成しようとする正孔注入/輸送層の厚さ、液状組成物中の正孔注入/輸送層形成材料の濃度等により決定される。また、液状組成物の液滴110cは1回のみならず、数回に分けて同一の電極面111a上に吐出しても良い。この場合、各回における液状組成物の量は同一でも良く、各回毎に液状組成物を変えても良い。更に電極面111aの同一箇所のみならず、各回毎に電極面111a内の異なる箇所に前記液状組成物を吐出しても良い。
【0060】
インクジェットヘッドの構造については、図14に示すようなヘッドHを用いる事ができる。更に、基板とインクジェットヘッドの配置に関しては図15のように配置することが好ましい。
図14中、符号H7は前記のインクジェットヘッドH1を支持する支持基板であり、この支持基板H7上に複数のインクジェットヘッドH1が備えられている。
インクジェットヘッドH1のインク吐出面(基板との対向面)には、ヘッドの長さ方向に沿って列状に、且つヘッドの幅方向に間隔をあけて2列で吐出ノズルが複数(例えば、1列180ノズル、合計360ノズル)設けられている。また、このインクジェットヘッドH1は、吐出ノズルを基板側に向けるとともに、X軸(またはY軸)に対して所定角度傾いた状態で略X軸方向に沿って列状に、且つY方向に所定間隔をあけて2列に配列された状態で平面視略矩形状の支持板20に複数(図14では1列6個、合計12個)位置決めされて支持されている。
【0061】
また図15に示すインクジェット装置において、符号1115は基板2を載置するステージであり、符号1116はステージ1115を図中x軸方向(主走査方向)に案内するガイドレールである。またヘッドHは、支持部材1111を介してガイドレール1113により図中y軸方向(副主走査方向)に移動できるようになっており、更にヘッドHは図中θ軸方向に回転できるようになっており、インクジェットヘッドH1を主走査方向に対して所定の角度に傾けることができるようになっている。このように、インクジェットヘッドを走査方向に対して傾けて配置することにより、ノズルピッチを画素ピッチに対応させることができる。
【0062】
図15に示す基板2は、マザー基板に複数のチップを配置した構造となっている。即ち、1チップの領域が1つの表示装置に相当する。ここでは、3つの表示領域2aが形成されているが、これに限られるものではない。例えば、基板2上の左側の表示領域2aに対して組成物を塗布する場合は、ガイドレール1113を介してヘッドHを図中左側に移動させるとともに、ガイドレール1116を介して基板2を図中上側に移動させ、基板2を走査させながら塗布を行う。次に、ヘッドHを図中右側に移動させて基板の中央の表示領域2aに対して組成物を塗布する。右端にある表示領域2aに対しても前記と同様である。なお、図14に示すヘッドH及び図15に示すインクジェット装置は、正孔注入/輸送層形成工程のみならず、発光層形成工程にも用いるものである。
【0063】
次に、図7に示すような乾燥工程を行う。つまり、吐出後の第1組成物を乾燥処理し、第1組成物に含まれる溶媒を蒸発させ、正孔注入/輸送層110aを形成する。乾燥処理を行うと、液状組成物に含まれる溶媒の蒸発が、主に無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bに近いところで起き、溶媒の蒸発に併せて正孔注入/輸送層形成材料が濃縮されて析出する。これにより図7に示すように、第1積層部112e上に、正孔注入/輸送層形成材料からなる周縁部110a2が形成される。この周縁部110a2は、上部開口部112dの壁面(有機物バンク層112b)に密着しており、その厚さが電極面111aに近い側では薄く、電極面111aから離れた側、即ち有機物バンク層112bに近い側で厚くなっている。
【0064】
また、これと同時に、乾燥処理によって電極面111a上でも溶媒の蒸発が起き、これにより電極面111a上に正孔注入/輸送層形成材料からなる平坦部110a1が形成される。電極面111a上では溶媒の蒸発速度がほぼ均一であるため、正孔注入/輸送層の形成材料が電極面111a上で均一に濃縮され、これにより均一な厚さの平坦部110a1が形成される。このようにして、周縁部110a2及び平坦部110a1からなる正孔注入/輸送層110aが形成される。なお、周縁部110a2には形成されず、電極面111a上のみに正孔注入/輸送層が形成される態様であっても構わない。
【0065】
上記の乾燥処理は、例えば窒素雰囲気中、室温で圧力を例えば大気圧から133.3Pa(1Torr)程度まで減圧することにより行う。減圧に要する時間は数分から10分程度とする。圧力を急減に低くすると組成物の液滴110cが突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、極性溶媒の蒸発速度が高まり、平坦な膜を形成する事ができない。乾燥処理後は、窒素中、好ましくは真空中、200℃で10分程度加熱する熱処理を行うことで、正孔注入/輸送層110a内に残存する極性溶媒や水を除去することが好ましい。
【0066】
(3)発光層形成工程
発光層形成工程は、発光層形成材料吐出工程及び乾燥工程とからなる。
前述の正孔注入/輸送層形成工程と同様、インクジェット法により発光層形成用の液状組成物を正孔注入/輸送層110a上に吐出する。その後、吐出した液状組成物を乾燥処理(及び熱処理)して、正孔注入/輸送層110a上に発光層110bを形成する。
【0067】
図8に、インクジェットにより発光層形成用材料を含む液状組成物の吐出工程を示す。
図示の通り、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対的に移動し、インクジェットヘッドに形成された吐出ノズルH6から各色(例えばここでは青色(B))発光層形成材料を含有する液状組成物が吐出される。
吐出の際には、下部、上部開口部112c、112d内に位置する正孔注入/輸送層110aに吐出ノズルを対向させ、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対移動させながら液状組成物が吐出される。吐出ノズルH6から吐出される液量は1滴当たりの液量が制御されている。このように液量が制御された液(液状組成物滴110e)が吐出ノズルから吐出され、この液状組成物滴110eを正孔注入/輸送層110a上に吐出する。
【0068】
本実施形態では、上記液状組成物滴110eの配置に続けて、他の発光層用の液状組成物の吐出を行う。つまり、図9に示すように、基板2上に滴下された液状組成物滴110eを乾燥させることなく、液状組成物滴110f及び110gの吐出配置を行うようになっている。このように各色の発光層110b1〜110b3を形成するための液状組成物滴110e〜110gの滴下を行うに際しては、各色用の液状組成物をそれぞれ充填した複数の吐出ヘッドを、それぞれ独立に走査して基板2上への液状組成物滴110e〜110gの配置を行ってもよく、前記複数の吐出ヘッドを一体的に走査することにより、ほぼ同時に液状組成物110e〜110fの配置を行えるようにしてもよい。
【0069】
図8、図9に示すように、吐出された各液状組成物110e〜110gは、正孔注入/輸送層110a上に広がって下部、上部開口部112c、112d内に満たされる。その一方で、撥液処理された上面112fでは各液状組成物滴110e〜110gが所定の吐出位置からはずれて上面112f上に吐出されたとしても、上面112fが液状組成物滴110e〜110gで濡れることがなく、液状組成物滴110e〜110gが下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。
【0070】
各正孔注入/輸送層110a上に吐出する液状組成物量は、下部、上部開口部112c、112dの大きさ、形成しようとする発光層110bの厚さ、液状組成物中の発光層材料の濃度等により決定される。また、液状組成物110e〜110gは1回のみならず、数回に分けて同一の正孔注入/輸送層110a上に吐出しても良い。この場合、各回における液状組成物の量は同一でも良く、各回毎に液状組成物の液量を変えても良い。更に正孔注入/輸送層110aの同一箇所のみならず、各回毎に正孔注入/輸送層110a内の異なる箇所に液状組成物を吐出配置しても良い。
【0071】
発光層形成材料としては、前述のものを用いる事ができる。発光層形成材料を溶解ないし分散させるための溶媒は、各色発光層毎に同じ種類のものを用いることができる。
【0072】
次に、上記各色用の液状組成物110e〜110gを所定の位置に配置し終えた後、一括に乾燥処理することにより発光層110b1〜110b3が形成される。すなわち、乾燥により液状組成物滴110e〜110gに含まれる溶媒が蒸発し、図10に示すような赤色(R)発光層110b1、緑色(G)発光層110b2、青色(B)発光層110b3が形成される。なお、図10においては赤、緑、青に発光する発光層が1つずつ図示されているが、図1やその他の図より明らかなように本来は発光素子がマトリックス状に形成されたものであり、図示しない多数の発光層(各色に対応)が形成されている。
【0073】
発光層の液状組成物の乾燥は、正孔注入/輸送層の乾燥工程と同様の方法を用いることができる。この際、温度を室温以上にすると、溶媒の蒸発速度が高まり、発光層形成材料が上部開口部112d壁面に多く付着してしまうので好ましくない。なお、当該発光層110bを形成する液状組成物の乾燥処理において、正孔注入/輸送層110aと同様に基板外周部において膜厚むらが生じた場合にも、突出部112h1の働きにより、表示不具合の発生が防止ないし抑制されることとなる。
【0074】
次いで、上記真空乾燥が終了したならば、ホットプレート等の加熱手段を用いて発光層110bのアニール処理を行うことが好ましい。このアニール処理は、各有機EL層の発光特性を最大限に引き出せる共通の温度と時間で行う。
このようにして、画素電極111上に正孔注入/輸送層110a及び発光層110bが形成される。
【0075】
なお、前記発光層形成材料吐出工程に先立ち、正孔注入/輸送層110aの表面を表面改質するために表面改質工程を行うものとしても良い。
発光層形成工程では、正孔注入/輸送層110aの再溶解を防止するために、発光層形成の際に用いる液状組成物の溶媒として、正孔注入/輸送層110aに対して不溶な溶媒を用いるものとするのが好ましい。しかし、その一方で正孔注入/輸送層110aは、溶媒に対する親和性が低いため、溶媒を含む液状組成物を正孔注入/輸送層110a上に吐出しても、正孔注入/輸送層110aと発光層110bとを密着させることができなくなるか、あるいは発光層110bを均一に塗布できないおそれがある。そこで、溶媒ならびに発光層形成材料に対する正孔注入/輸送層110aの表面の親和性を高めるために、発光層形成の前に表面改質工程を行うことが好ましい。
【0076】
表面改質工程は、発光層形成の際に用いる液状組成物の溶媒と同一溶媒又はこれに類する溶媒である表面改質材を、インクジェット法(液滴吐出法)、スピンコート法又はディップ法により正孔注入/輸送層110a上に塗布した後に乾燥することにより行うことができる。ここで用いる表面改質材としては、液状組成物の溶媒と同一なものとして例えば、シクロへキシルベンゼン、イソプロピルビフェニル、トリメチルベンゼン等を例示でき、液状組成物の溶媒に類するものとして例えば、テトラメチルベンゼントルエン、トルエン、キシレン等を例示できる。
【0077】
(4)陰極形成工程
次に、図11に示すように、画素電極(陽極)111と対をなす陰極12を形成する。即ち、各色発光層110b及び有機物バンク層112bを含む基板2上の領域全面に、例えばITO等からなる透明な陰極12を形成する。これにより、各色発光層110bの形成領域全体に、陰極12が積層され、赤色、緑色、青色の各色に対応する発光素子がそれぞれ形成される。
陰極12は、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等で形成することが好ましく、特に蒸着法で形成することが、熱による発光層110bの損傷を防止できる点で好ましい。
【0078】
(5)封止工程
最後に、基板2において発光素子部11が設けられた側の面に封止樹脂3aを介して封止基板3bを接合し、発光素子部11を封止する。
ここではまず、図12に示すように、ガラス等からなる封止基板3bの表面に凸状のスペーサ31を形成する。このスペーサ31は、封止基板3bの表面にレジストを塗布し、これをパターニングすることにより形成してもよいし、封止基板3bの表面を直接エッチングすることにより形成しても良い。基板表面をエッチングした場合には、スペーサ31が封止基板3bと一体に形成されることから、強度の強いスペーサ31が形成される。なお、スペーサ31は、表示への影響を避けるために、基板2の非画素領域に配置されるようにする。
【0079】
次に、図13に示すように、基板2と封止基板3bとを封止樹脂3aを介して対向させ、基板2の凹部12Aと封止基板3bのスペーサ31とを嵌合させて位置を固定する。そして、このように両基板2,3bを高精度に位置決めした状態で、接着層である封止樹脂3aを硬化させる。
【0080】
この後、基板2の配線に陰極12を接続するとともに、基板2上あるいは外部に設けられる駆動IC(駆動回路)に回路素子部14の配線を接続することにより、本実施形態の有機EL装置が完成する。
【0081】
以上説明したように、本実施形態では、スペーサ31と凹部12Aとを嵌合させて封止基板3bの位置を固定するため、封止樹脂3aが硬化しても、封止基板3bがずれて基板2が撓んだり、不均一な応力が生じたりすることはない。また、スペーサ31が発光素子と平面的に重ならない位置に設けられているため、封止基板3bを貼り合わせる際にスペーサ31にかかる応力によって発光素子がダメージを受けることがなく、又、開口率の低下など、表示への影響も避けられる。さらに、基板2と封止基板3bとのギャップを均一に制御できることから、高品位な表示を実現することができる。
【0082】
なお、本実施形態では陰極12を基板2の最表面の膜とし、この陰極12の表面に現われた凹形状を嵌合用の凹部12Aとしたが、本発明は係る構造に限定されない。例えば、陰極12の表面に酸化防止のためのSiO2,SiN等の保護膜を形成し、この保護膜の表面に現われた凹形状を嵌合用の凹部としてもよい。同様に、スペーサ31についても封止基板3bの表面に形成した凸構造そのものではなく、この凸構造を反映してその表面に現われた凸形状を利用することが可能である。
【0083】
[第2の実施の形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る有機EL装置について説明する。
本実施形態の有機EL装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、異なるのは封止基板3bにカラーフィルタを設けた点のみである。よって、以下では、有機EL装置自体の説明は省略し、異なる部分のみを説明する。
【0084】
図16は、本実施形態の有機EL装置を示す平面図及び断面図であり、第1実施形態の図4に対応する図である。
図16に示すように、本実施形態の有機EL装置には、封止基板3bの表面にカラーフィルタ35が設けられている。このカラーフィルタ35には、赤色用、緑色用、青色用の各画素Pに対してそれぞれ赤色着色層35R、緑色着色層35G、青色着色層35Bが設けられており、各着色層35R,35G,35Bの間にはブラックマトリクス(遮光層)BMが設けられている。ブラックマトリクスBMは、基板2の非画素領域に対応してストライプ状に設けられており、このブラックマトリクスBMの上に凸状のスペーサ31が設けられている。そして、このスペーサ31と基板2に設けられた凹部12Aとを嵌合させることで封止基板3bの位置決めが行なわれている。なお、ブラックマトリクスBMは、非画素領域に対応して格子状に設けてもよい。
【0085】
本実施形態では、封止基板3bにカラーフィルタ35を設けたため、より色純度の高い表示を実現することができる。この際、封止基板3bと基板2とをスペーサ31及び凹部12Aによって高精度に位置決めできるため、このような構成を採用しても、カラーフィルタ35と発光素子との位置ずれによる光のロスは殆ど生じない。
【0086】
[第3の実施の形態]
以下、本発明の第3実施形態に係る有機EL装置について説明する。
本実施形態の有機EL装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、異なるのは、各画素Pの発光層110bを同じ材料(例えば青色発光材料)によって形成した点と、封止基板3bに発光層110bからの光を所定の色光に変換する蛍光変換膜を設けた点のみである。よって、以下では、有機EL装置自体の説明は省略し、異なる部分のみを説明する。
【0087】
図17は、本実施形態の有機EL装置を示す平面図及び断面図であり、第1実施形態の図4に対応する図である。
図17に示すように、本実施形態の有機EL装置には、封止基板3bの表面に蛍光変換膜36(36R,36G,36B)が設けられている。この蛍光変換膜36は、赤色用、緑色用、青色用の各画素Pに対してそれぞれ赤色蛍光変換膜36R、緑色蛍光変換膜36G、青色蛍光変換膜36Bが設けられている。この蛍光変換膜としては、特開平11−251059号公報や特開平11−54273号公報等に開示されているような公知の材料を用いることができる。また、各蛍光変換膜36R,36G,36Bの間には、ブラックマトリクス(遮光層)BMが設けられている。ブラックマトリクスBMは、基板2の非画素領域に対応してストライプ状に設けられており、このブラックマトリクスBMの上に凸状のスペーサ31が設けられている。そして、このスペーサ31と基板2に設けられた凹部12Aとを嵌合させることで封止基板3bの位置決めが行なわれている。なお、ブラックマトリクスBMは、非画素領域に対応して格子状に設けてもよい。
【0088】
本実施形態では、封止基板3bに蛍光変換膜を設けたため、各画素Pの蛍光変換膜を適切に選択することで多色化が可能になる。この際、封止基板3bと基板2とをスペーサ31及び凹部12Aによって高精度に位置決めできるため、このような構成を採用しても、蛍光変換膜と発光素子との位置ずれによるコントラストの低下は殆ど生じない。また、本実施形態では、各画素Pの発光素子の構成を同一としたので、それぞれの画素Pの寿命が異なることによる色再現性の劣化等を防止することができる。
【0089】
[第4の実施の形態]
以下、本発明の第4実施形態に係る有機EL装置について説明する。
本実施形態の有機EL装置の基本構成は第1実施形態と同様であり、異なるのはスペーサを形成する基板と凹部を形成する基板とを相互に入れ換えた点のみである。よって、以下では、有機EL装置自体の説明は省略し、異なる部分のみを説明する。
【0090】
図18は、本実施形態の有機EL装置を示す平面図及び断面図であり、第1実施形態の図4に対応する図である。
図18に示すように、本実施形態の有機EL装置においては、基板2に凸状のスペーサ112Aが設けられており、封止基板3aにおいてスペーサ112Aの先端部が突き当たる突き当て部分に嵌合用の凹部3Aが設けられている。スペーサ112Aと凹部3Aは、バンク部112の上面112f、すなわち画素Pと画素Pとの間の非画素領域部分に配置されている。この図の例では、ドット状の凹部3Aが画素間の中央部において画素Pの長辺方向に一定のピッチで規則的に配列されているが、凹部3Aは必ずしもこの配列で形成されている必要はない。例えば、凹部3Aを画素間の中央部において画素Pの短辺方向に規則的に配列させてもよい。また、凹部3Aは必ずしもドット状に形成する必要はなく、ストライプ状の溝又は画素Pの周囲を囲む格子状の溝として形成してもよい。この場合、基板2のスペーサ112Aは、凹部3Aの形状に合わせた形状とする必要がある。
【0091】
スペーサ112Aは、バンク部112の表面に別個の工程で形成してもよいし、有機物バンク層112bをパターニングする際に同時に形成しても良い。有機物バンク層112bと一体に形成した場合には、スペーサ112Aを形成するための別個の工程が必要なく、又、発光素子の位置に対して高い精度で形成することが可能である。凹部3Aは、封止基板3bの表面にレジストを塗布し、これをパターニングすることにより形成してもよいし、封止基板3bの表面を直接エッチングすることにより形成しても良い。基板表面をエッチングした場合には、スペーサ112Aが封止基板3bと一体に形成されることから、強度の強いスペーサ112Aが形成される。
【0092】
この有機EL装置においては、基板2に設けられたスペーサ112Aと封止基板3bに設けられた凹部3Aとを嵌合させることで封止基板3bの位置決めが行なわれている。よって、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、高品質且つ信頼性の高い有機EL装置を提供することができる。
【0093】
(電子機器)
図19は、本発明に係る電子機器の一実施形態を示している。本実施形態の電子機器は、上述した有機EL装置を表示手段として備えている。ここでは、携帯電話の一例を斜視図で示しており、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は上記の有機EL装置1を用いた表示部を示している。このように本実施形態に係る有機EL装置を表示手段として備える電子機器では、良好な発光特性を得ることができる。
【0094】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記実施形態では、トップエミッション型の有機EL装置について説明したが、本発明はこれに限らず、ボトムエミッション型の有機EL装置或いは無機EL装置に本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】第1実施形態の有機EL装置の回路図。
【図2】同、平面構成図。
【図3】同、表示領域の断面構成図。
【図4】同、表示領域の平面模式図及び断面模式図。
【図5】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図6】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図7】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図8】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図9】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図10】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図11】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図12】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図13】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図14】実施形態に係るヘッドの平面構成図。
【図15】実施形態に係るインクジェット装置の平面構成図。
【図16】第2実施形態の有機EL装置の表示領域の平面模式図及び断面模式図。
【図17】第3実施形態の有機EL装置の表示領域の平面模式図及び断面模式図。
【図18】第4実施形態の有機EL装置の表示領域の平面模式図及び断面模式図。
【図19】電子機器の一例を示す斜視構成図。
【符号の説明】
【0096】
1…有機EL装置、2…基板、3a…封止樹脂(接着層)、3b…封止基板、3A…嵌合用の凹部、12A…嵌合用の凹部、31…スペーサ、35…カラーフィルタ、36…蛍光変換膜、110c,110e…インク(機能液)、112…バンク部(隔壁)、112f…バンク上面、112g…開口部(バンクによって区画された領域)、112A…スペーサ、150…バンクの表面に設けられた凹部、1000…電子機器、BM…ブラックマトリクス(遮光層)、P…画素領域(画素)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子が設けられた基板と、
前記基板の前記発光素子が設けられた側の面に接着層を介して設けられた封止基板と、
前記基板又は前記封止基板の少なくとも一方に設けられた凸状のスペーサと、
前記基板又は前記封止基板において前記スペーサの先端部が突き当たる突き当て部分に設けられた嵌合用の凹部とを備えたことを特徴とする、エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
前記スペーサは、前記発光素子と平面的に重ならない位置に設けられていることを特徴とする、請求項1記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
前記発光素子からの発光光は、前記封止基板側から取り出されることを特徴とする、請求項2記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
前記封止基板に遮光層が設けられていることを特徴とする、請求項3記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
前記封止基板にカラーフィルタが設けられていることを特徴とする、請求項3又は4記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項6】
前記封止基板に蛍光変換膜が設けられていることを特徴とする、請求項3〜5のいずれかの項に記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項7】
前記発光素子は、隔壁によって区画された領域に機能液を配置することにより形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの項に記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項8】
前記スペーサは、前記封止基板の表面に形成されており、前記凹部は、前記隔壁の表面に設けられた凹部によって形成されていることを特徴とする、請求項7記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項9】
前記スペーサは、前記封止基板の表面をエッチングすることにより形成されていることを特徴とする、請求項8記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項10】
前記スペーサは、前記隔壁の表面に設けられた凸部によって形成されており、前記凹部は、前記封止基板の表面に形成されていることを特徴とする、請求項7記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項11】
前記スペーサは、前記隔壁のパターニングと同時に形成されていることを特徴とする、請求項10記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項12】
前記凹部は、前記封止基板の表面をエッチングすることにより形成されていることを特徴とする、請求項10又は11記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかの項に記載のエレクトロルミネッセンス装置を備えることを特徴とする、電子機器。
【請求項1】
複数の発光素子が設けられた基板と、
前記基板の前記発光素子が設けられた側の面に接着層を介して設けられた封止基板と、
前記基板又は前記封止基板の少なくとも一方に設けられた凸状のスペーサと、
前記基板又は前記封止基板において前記スペーサの先端部が突き当たる突き当て部分に設けられた嵌合用の凹部とを備えたことを特徴とする、エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
前記スペーサは、前記発光素子と平面的に重ならない位置に設けられていることを特徴とする、請求項1記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
前記発光素子からの発光光は、前記封止基板側から取り出されることを特徴とする、請求項2記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
前記封止基板に遮光層が設けられていることを特徴とする、請求項3記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
前記封止基板にカラーフィルタが設けられていることを特徴とする、請求項3又は4記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項6】
前記封止基板に蛍光変換膜が設けられていることを特徴とする、請求項3〜5のいずれかの項に記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項7】
前記発光素子は、隔壁によって区画された領域に機能液を配置することにより形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの項に記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項8】
前記スペーサは、前記封止基板の表面に形成されており、前記凹部は、前記隔壁の表面に設けられた凹部によって形成されていることを特徴とする、請求項7記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項9】
前記スペーサは、前記封止基板の表面をエッチングすることにより形成されていることを特徴とする、請求項8記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項10】
前記スペーサは、前記隔壁の表面に設けられた凸部によって形成されており、前記凹部は、前記封止基板の表面に形成されていることを特徴とする、請求項7記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項11】
前記スペーサは、前記隔壁のパターニングと同時に形成されていることを特徴とする、請求項10記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項12】
前記凹部は、前記封止基板の表面をエッチングすることにより形成されていることを特徴とする、請求項10又は11記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかの項に記載のエレクトロルミネッセンス装置を備えることを特徴とする、電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−252988(P2006−252988A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68686(P2005−68686)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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