説明

エレベータのドア装置の防水構造

【課題】ホールシルの排出孔を通して流れ込む水による機器類の故障を防ぐことが可能なエレベータのドア装置の防水構造を提供する。
【解決手段】エレベータのドア装置の防水構造において、昇降路内を昇降する乗りかごと、昇降路内に位置し、エレベータホールから昇降路内に通じる乗降口の上方に配置されたヘッダーケースと、溝部を有し、昇降路内に位置して乗降口の下方に配置され、溝部に溜まった物を排出するための排出孔が形成されたホールシルと、へッダーケースの上部とホールシルの下部とを接続するフェッシャープレートと、フェッシャープレートに設けられ、エレベータホールから排出孔に流れ込む流体を受け止めて、ヘッダーケースの出入口幅よりも外側に誘導させるガイド部材を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータのドア装置の防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータホールの乗降口を開閉するドア装置は、昇降路の内壁面に取り付けられたヘッダーケースを介して支持されたドアパネルを備えている。ヘッダーケースは水平板および垂直板を有する断面L字状をなし、このヘッダーケースの内側にハンガーレールが水平に架設され、このハンガーレールにローラを介してドアパネルが懸架され、このドアパネルがハンガーレールに沿って左右に移動し、この移動で乗降口が開閉されるようになっている。
【0003】
ヘッダーケースはブラケットを介して昇降路の内壁面に取り付けられている。ブラケットは水平板および垂直板を有する断面L状をなし、その垂直板が昇降路の内壁面に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−193267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ホール側の開口部の床面には、ドアの開閉をスムーズにするためにホールシルが設けられている。ホールシルの敷居の溝内には、溝に溜まったゴミ等を落として排出するための排出孔が形成されている。上階側のエレベータホールを清掃するときの水や消火活動による液体が、排出孔を通してヘッダーケースの水平板の表面に滴下したりするようなことがある。
【0006】
ホールシルに形成された排出孔から流れ込む水は、下の階のヘッダーケースに直接あたってしまい、ヘッダーケースの内側に設けられている電気接点機構やロック機構などの各機器類に触れ、その機器類の誤動作や動作不良、あるいは錆付きの原因を招いてしまうという問題がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ホールシルの排出孔を通して流れ込む水による機器類の故障を防ぐことが可能なエレベータのドア装置の防水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、エレベータのドア装置の防水構造において、昇降路内を昇降する乗りかごと、昇降路内に位置し、エレベータホールから昇降路内に通じる乗降口の上方に配置されたヘッダーケースと、溝部を有し、昇降路内に位置して前記乗降口の下方に配置され、前記溝部に溜まった物を排出するための排出孔が形成されたホールシルと、前記へッダーケースの上部と前記ホールシルの下部とを接続するフェッシャープレートと、前記フェッシャープレートに設けられ、前記エレベータホールから前記排出孔に流れ込む流体を受け止めて、前記ヘッダーケースの出入口幅よりも外側に誘導させるガイド部材を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る防水構造を備えたエレベータのドア装置が設けられるエレベータの全体を概略的に示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る防水構造を備えたエレベータのドア装置の乗場側を乗りかご側から見た図である。
【図3】第2の実施形態に係る防水構造を備えたエレベータのドア装置の乗場側を乗りかご側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る防水構造を備えたエレベータのドア装置が設けられるエレベータの全体を概略的に示す図である。
【0012】
図1に示すように、エレベータ2は、それぞれ昇降路3内に配置された乗りかご4と釣合いおもり5とを備えている。昇降路3内には、乗りかご4を案内するガイドレール(図示しない)と、釣合いおもり5を案内するガイドレール(図示しない)とが、それぞれ鉛直方向に延設されている。
【0013】
昇降路3の上方には、機械室7が設けられている。機械室7には、巻上機8が設置されるとともに、例えば、エレベータ2の全体を制御する制御装置9が設けられている。巻上機8は、メインシーブ11と、メインシーブ11を回転駆動するモータ12とを備えている。メインシーブ11には、メインロープ13が巻き掛けられている。メインロープ13の一端には、乗りかご4が懸吊されている。また、メインロープ13の他端には、釣合いおもり5が懸吊されている。これにより巻上機8を駆動することで、乗りかご4および釣合いおもり5が互いに反対方向に昇降動作する。
【0014】
図1に示すように、エレベータのドア装置1は、エレベータホール15のホール出入口16に設けられたホールドア17と、乗りかご4の乗りかご出入口18に設けられた乗りかごドア19と、ホールドア17を乗りかごドア19に連動させる係合機構20とを有している。
【0015】
ホールドア17は、複数のドアパネル(図示しない)を有している。本実施形態に係るホールドア17は、複数のドアパネルが互いに同じ方向に退避するサイドオープン形式(片開き形式)のドア、複数のドアパネルが互いに反対方向に退避するセンターオープン形式(両開き形式)のドア、のいずれにも適用することができる。
【0016】
なおここでは図示しないが、乗りかごドア19も同様に、サイドオープン形式またはセンターオープン形式を構成する複数のドアパネルを有している。また、乗りかご4には、乗りかごドア19を開閉する駆動装置(図示しない)が設けられている。
【0017】
エレベータホール15には、ホールドア17の下方に位置するホールシル6(後述する)と、このホールシル6と協働してホール出入口16を規定する三方枠(図示しない)とが設けられている。三方枠は、ホール出入口16の左右の両側方、および上方を規定する。
【0018】
図2は、第1の実施形態に係る防水構造を備えたエレベータのドア装置1の乗場側を乗りかご4側から見た図である。
【0019】
エレベータ2の昇降路3には、ホール側の開口部の床面と乗りかごの開口面の床には、それぞれドア17,19の開閉をスムーズにするためのホールシル6とカーシルが配設されている。ホールシル6には、敷居の溝内に溜まったゴミ等を排出するための排出孔6aが形成されている。排出孔6aは、例えば複数の長孔状に形成されている。
【0020】
ホールシル6やドア開閉装置のヘッダーは、昇降路3の壁から突出して構成されている部分があり、昇降路3の壁と突出部分とで凹凸をなしている。そのため、乗りかご4が故障などにより昇降路3の凹所に対向する位置で停止したときに乗りかご4のドア19を開いて前記凹所へ脱出しようとする乗客が、乗りかご4と昇降路3の壁との間に挟まれたり、昇降路3内へ転落する虞れがある。
【0021】
そこで、これらの事故を防止するために、昇降路3の凹所にフェッシャープレート10を設け、乗りかご4と昇降路3の壁との間隔を小さくするようにしている。
【0022】
本実施形態においては、図2に示すように、流れてきた水を受け止めて、図2中左右方向に導くためのガイド部材22を、フェッシャープレート10に配設している。このガイド部材22の長さは、少なくとも、エレベータ乗場の乗場装置を収納するヘッダーケース21の出入口幅よりも長く設定することが好適である。また、ガイド部材22は、フェッシャープレート10の補強を兼ねるように、フェッシャープレート10と同じ材質の素材で形成することが好適である。ガイド部材22は、フェッシャープレート10と一体的に製作してもよいし、また、例えば、断面L字状のものをフェッシャープレート10に取り付けてもよい。流れてきた水を受け止めて左右方向に導くことが出来ればよいので、例えば、略中央部を高くした略への字状の形状とすることもできる。
【0023】
本実施形態によれば、ホールシル6に形成された排出孔6aから流れ込んだ流体は、ガイド部材22によって下の階のヘッダーケース21の出入口幅よりも外側に誘導されるので、機器類の故障を防ぐことができる。
【0024】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係る防水構造を備えたエレベータのドア装置の乗場側を乗りかご側から見た図である。
【0025】
本実施形態においては、図3に示すように、流れてきた水を受け止めて、図3中左右方向に導くためのガイド部材22を、シルベース23に配設している。このガイド部材22の長さは、少なくとも、エレベータ乗場の乗場装置を収納するヘッダーケース21の出入口幅よりも長く設定することが好適である。また、ガイド部材22は、シルベース23の補強を兼ねるように、シルベース23と同じ材質の素材で形成することが好適である。ガイド部材22は、シルベース23と一体的に製作してもよいし、また、例えば、断面L字状のものをシルベース23に取り付けてもよい。流れてきた水を受け止めて左右方向に導くことが出来ればよいので、例えば、略中央部を高くした略への字状の形状とすることもできる。
【0026】
本実施形態によれば、ホールシル6に形成された排出孔6aから流れ込んだ流体は、ガイド部材22によって下の階のヘッダーケース21の出入口幅よりも外側に誘導されるので、機器類の故障を防ぐことができる。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1:ドア装置
3:昇降路
4:乗りかご
6:ホールシル
6a:排出孔
10:フェッシャープレート
22:ガイド部材
21:ヘッダーケース
23:シルベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降する乗りかごと、
昇降路内に位置し、エレベータホールから昇降路内に通じる乗降口の上方に配置されたヘッダーケースと、
溝部を有し、昇降路内に位置して前記乗降口の下方に配置され、前記溝部に溜まった物を排出するための排出孔が形成されたホールシルと、
前記へッダーケースの上部と前記ホールシルの下部とを接続するフェッシャープレートと、
前記フェッシャープレートに設けられ、前記エレベータホールから前記排出孔に流れ込む流体を受け止めて、前記ヘッダーケースの出入口幅よりも外側に誘導させるガイド部材を有するエレベータのドア装置の防水構造。
【請求項2】
昇降路内を昇降する乗りかごと、
昇降路内に位置し、エレベータホールから昇降路内に通じる乗降口の上方に配置されたヘッダーケースと、
溝部を有し、昇降路内に位置して前記乗降口の下方に配置され、前記溝部に溜まった物を排出するための排出孔が形成されたホールシルと、
前記ホールシルの下部に配置されるシルベースと、
前記シルベースに設けられ、前記エレベータホールから前記排出孔に流れ込む流体を受け止めて、前記ヘッダーケースの出入口幅よりも外側に誘導させるガイド部材を有するエレベータのドア装置の防水構造。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記ヘッダーケースの出入口幅よりも長く形成されている請求項1又は請求項2記載のエレベータのドア装置の防水構造。
【請求項4】
前記ガイド部材は、略中央部を高くした略への字状の形状に形成されている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエレベータのドア装置の防水構造。
【請求項5】
前記ガイド部材が、前記フェッシャープレートと同じ材質の素材で形成されている請求項1,請求項3,請求項4のいずれか1項に記載のエレベータのドア装置の防水構造。
【請求項6】
前記ガイド部材が、前記フェッシャープレートと一体的に形成されている請求項1,請求項3,請求項4のいずれか1項に記載のエレベータのドア装置の防水構造。
【請求項7】
前記ガイド部材が、前記シルベースと同じ材質の素材で形成されている請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のエレベータのドア装置の防水構造。
【請求項8】
前記ガイド部材が、前記シルベースと一体的に形成されている請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のエレベータのドア装置の防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−56680(P2012−56680A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200931(P2010−200931)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】