説明

エレベータのドア装置

【課題】着床後すぐに通常速度での戸開動作をしても音や振動が発生しないようにすることができ、滑らかな戸開動作が得られ戸開閉に必要な所要時間を削減することが可能であるエレベータのドア装置を提供する。
【解決手段】かご側係合手段を具備するかご戸と乗場側係合手段を具備する乗場戸とを有し、かご側及び乗場側係合手段とが係合しかご戸と乗場戸とが一体となって開閉するエレベータのドア装置において、かご側係合手段に設けられ乗場側係合手段の戸当側に配置される戸当側ブレードと、かご側係合手段に設けられ戸当側ブレードとで乗場側係合手段を把持するための戸袋側ブレードと、かごが所定のドアゾーン内に進入後、かごの着床前に、かご戸及び乗場戸を戸開させることなく、戸当側ブレードを、戸袋側ブレードに近接する方向へと移動させて乗場側係合手段に当接させる戸当側ブレード駆動手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータのドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来におけるエレベータのドア装置においては、かご及び乗場の出入口にそれぞれ設けられた引き戸と、かごに設けられ、かごの引き戸の開閉を駆動するドア駆動装置と、かごの引き戸に設けられ、乗場の引き戸に設けた係合体に係合してかご及び乗場の引き戸を連動開閉させる係合装置と、を有するものであって、この係合装置は、かごの引き戸に固定された垂直な固定ブレードと、かごの引き戸の固定ブレードの戸袋側に、固定ブレードと平行にリンクを介して枢着された可動ブレードと、を備え、かごが着床して係合装置の開いている固定ブレードと可動ブレードとの間に乗場の引き戸に設けた係合体が位置した状態で、かごの引き戸が開かれると、リンク、カム及びバネを組み合わせた機構により、このかごの引き戸の戸開動作に伴って可動ブレードが固定ブレード側へと平行移動して閉じこれらの間に係合体を把持して係合し、乗場の引き戸がかごの引き戸と連動して開かれるものが知られている(例えば、特許文献1や図7を参照)。
【0003】
また、従来、かご着床時におけるかご戸及び乗場戸の戸開動作をより正確に同期させようとするものとして、乗場戸に設けた一対の係合ローラ(被係合部材)の間にかご戸に設けた係合部材の先端部が回動して係合することにより、かご戸と乗場戸とが連動して開閉作動をするものにおいて、前記係合部材にローラ係合部を一体形成してこのローラ係合部に押圧ローラを挿入し、この押圧ローラの回転軸をブラケットに植設し、このブラケットをドアハンガーに回転自在に軸支するとともに、このブラケットにピンを突設してこのピンにベルト止着具を介しドア開閉駆動用の駆動ベルトを止着して構成することにより、かご戸を駆動ベルトに直接ではなく係合装置を介して取り付け、かご戸側の係合部材が乗場戸側の被係合部材に完全に係合するまでは戸開しないようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
そして、従来、かご戸と乗場戸との開閉動作を完全に一致させるように両者を堅固に連動させることを目的としたものとして、かご戸にリンクとともに配置され平行四辺形を構成している一対のブレードと、乗場戸に設けられ、かごが着床した際に前記一対のブレードの左右両側に2個ずつ配置される4個のローラと、前記一対のブレードを上下動させるアクチュエーターと、を備え、アクチュエーターが一方のブレードを押し上げた位置では、平行四辺形が縮小しており一対のブレードは4個のローラから離れて非連動状態となり、アクチュエーターがブレードを下げると、バネ力によって一対のブレードが左右に広がり両側のローラに圧接して乗場戸をかご戸に連動させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
なお、特許文献4には、かごが着床する前にかご戸を先行して戸開させる方法であるいわゆるランディングオープンを採用したエレベータの制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平06−088747号公報
【特許文献2】特許第3921028号公報
【特許文献3】特開平07−285763号公報
【特許文献4】特開昭61−203082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示された従来におけるエレベータのドア装置においては、相対的に戸当側に位置する固定ブレードはかご戸に対して固定されて移動しないため、かご戸が戸開閉動作を開始した後この戸開閉動作に伴って乗場戸の係合体と接触し、かご戸と乗場戸とが係合され連動戸開閉される。
このため、かご戸と乗場戸との係合前の戸開閉動作をなるべく低速としなければ、かご側係合装置と乗場側係合手段との衝突により騒音や振動が発生してしまうという課題がある。
【0007】
そして、戸開開始時の動作を低速とすると、戸開閉により多くの時間が必要となってしまうという課題や、戸開閉動作が滑らかでなく見栄えが悪化してしまうという課題もある。
また、以上のような課題を少しでも軽減するため、かご側係合装置と乗場側係合手段との間に生じる隙間をできるだけ小さくして対応しようとすると、据付調整作業に煩雑な手数がかかり作業効率が悪化してしまうという課題がある。
【0008】
特許文献2に示された従来におけるエレベータのドア装置においては、係合装置の構造が複雑になってしまうという課題の他、戸を中央開きとした場合に左右のかご戸の動作を対称にするための機構を別に設ける必要があり、装置全体が大型化してしまうという課題もある。(なお、この場合の左右のかご戸の動作を対称にするための機構の例としては、循環ロープにより2つのかご戸を連動させる方法や、かご側係合装置がない側のかご戸にもベルトの動作開始とかご戸の動作開始のタイミングをずらすためにかご側係合装置と類似の機構を追加する方法等が考えられる。)
また、戸反転時の慣性力に耐え得る設計とする必要があり、このためによっても装置全体が大型化してしまう可能性がある。
【0009】
特許文献3に示された従来におけるエレベータのドア装置は、かご側係合装置を平行四辺形状のリンク機構とし、かご戸と乗場戸との係合時に乗場側係合手段を内側から押圧する構成である。従って、乗場側係合手段にはかご側係合装置の一側のみではなく他側も含めた両側に係合子(ローラ)設ける必要がある。
このため、階床毎に必要な乗場側係合手段を階床の数だけ設けなければならず、製作費用がかさんでしまうという課題や、平面視において乗場側係合手段が占める面積が大きくなるため、この乗場側係合手段を避けてかご側と乗場側のそれぞれに追加敷居を設置して敷居間隔を縮小する際に不利となってしまうという課題がある。
【0010】
特許文献4に示されたような従来におけるランディングオープンを採用したエレベータにおいては、戸開閉にかかる時間を短縮することが可能であるものの、かご内の乗客が下方を見ている場合にかごが完全に停止しない状態での戸開に不安感を与えてしまう可能性があるという課題がある。また、係合装置同士の衝突による騒音や振動を避けるため戸開閉の開始直後の動作をなるべく低速としなければならず、戸開閉動作が滑らかでなく見栄えが悪化してしまうという課題については、特許文献1に記載のものと同様である。
【0011】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、乗場側係合手段を比較的小型とし、かつ、簡潔な構成であって、着床後すぐに通常速度での(低速でない)戸開動作をしても音や振動が発生しないようにすることができ、滑らかな戸開動作が得られ戸開閉に必要な所要時間を削減することが可能であるエレベータのドア装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係るエレベータのドア装置においては、かごに設けられ、かご側係合手段を具備するかご戸と、乗場に設けられ、乗場側係合手段を具備する乗場戸と、を有し、前記かご側係合手段と前記乗場側係合手段とが係合し前記かご戸と前記乗場戸とが連動して一体となって開閉するエレベータのドア装置であって、前記かご側係合手段に設けられ、前記かごの着床時において前記乗場側係合手段の戸当側に配置される戸当側ブレードと、前記かご側係合手段に前記戸当側ブレードと略平行に設けられ、前記かごの着床時において前記乗場側係合手段の反前記戸当側ブレード側に配置され、前記戸当側ブレードとで前記乗場側係合手段を把持するための戸袋側ブレードと、前記かごが停止階床の所定のドアゾーン内に進入後、前記かごの着床前に、前記かご戸及び前記乗場戸を戸開させることなく、前記戸当側ブレードを、前記戸袋側ブレードに近接する方向へと移動させて前記乗場側係合手段に当接させる戸当側ブレード駆動手段と、を備えた構成とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係るエレベータのドア装置においては、着床後すぐに通常速度での(低速でない)戸開動作をしても音や振動が発生しないようにすることができ、滑らかな戸開動作が得られ戸開閉に必要な所要時間を削減することが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエレベータのドア装置のかごが走行中でドアゾーン進入前の状態を示す正面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るエレベータのドア装置のかごが着床直前でドアゾーン進入後の状態を示す正面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るエレベータのドア装置のかご戸が開閉中の状態を示す正面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るソレノイドアクチュエーターを示す拡大図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係るエレベータのドア装置のかご戸が全閉時の状態を示す正面図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係るエレベータのドア装置のかご戸が全閉時の状態を示す正面図である。
【図7】従来におけるエレベータのドア装置のかご戸が全閉時の状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明を添付の図面に従い説明する。各図を通じて同符号は同一部分又は相当部分を示しており、その重複説明は適宜に簡略化又は省略する。
【0016】
実施の形態1.
図1から図4は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1はエレベータのドア装置のかごが走行中でドアゾーン進入前の状態を示す正面図、図2はエレベータのドア装置のかごが着床直前でドアゾーン進入後の状態を示す正面図、図3はエレベータのドア装置のかご戸が開閉中の状態を示す正面図、図4はソレノイドアクチュエーターを示す拡大図である。
【0017】
図において1はエレベータの図示しない昇降路内に昇降自在に配置されたかごであり、このかご1は内部に乗客等を積載するための箱体であるかご室1aを有している。かご室1aの正面には、このかご室1a内に出入りするための開口部である出入口2が設けられており、この出入口2には左右一対のかご戸を構成する駆動側かご戸3及び従動側かご戸4が略水平方向開閉自在に設けられている。
そして、駆動側かご戸3の上端部には駆動側ドアハンガー5が、駆動側かご戸3の上端部には従動側ドアハンガー6が、それぞれ取り付けられており、これらの駆動側ドアハンガー5及び従動側ドアハンガー6の上部には図示しないかごドアローラが回転可能に軸着されている。
【0018】
かご1の出入口2の上方には駆動側かご戸3及び従動側かご戸4の開閉動作を駆動するかご戸駆動装置7が設置されている。
このかご戸駆動装置7は、駆動側かご戸3及び従動側かご戸4の開閉方向に沿ってすなわち略水平に取り付けられたドアレール7aを有しており、このドアレール7a上には駆動側ドアハンガー5及び従動側ドアハンガー6のドアローラが転動可能に係合している。
こうして左右一対のかご戸である駆動側かご戸3及び従動側かご戸4は、駆動側ドアハンガー5及び従動側ドアハンガー6並びにドアローラを介してドアレール7aにより吊持されている。そして、ドアローラがドアレール7aに案内されて転動することにより、駆動側かご戸3及び従動側かご戸4がかご出入口2を開閉する。
【0019】
かご戸駆動装置7は駆動モータ7bを有しており、この駆動モータ7bの回転駆動は、かご戸駆動装置7の左右方向における一側に回動自在に設けられた駆動プーリ7cへと伝達される。
また、かご戸駆動装置7の左右方向における他側には従動プーリ7dが回動自在に取り付けられており、これら駆動プーリ7c及び従動プーリ7dには無端状の駆動ベルト7eが巻き掛けられている。
このようにして、駆動モータ7bの回転駆動が駆動ベルト7eの循環移動へと伝達される巻掛伝動機構であるかご戸駆動装置7が構成されている。
【0020】
駆動側ドアハンガー5及び従動側ドアハンガー6の上端には、係止部材がそれぞれ取り付けられている。これらの係止部材のうち、駆動側ドアハンガー5の係止部材が駆動ベルト7eの上下の一側に、従動側ドアハンガー6の係止部材が駆動ベルト7eの上下の他側に、それぞれ係止されている。
そして、かご戸駆動装置7の駆動モータ7bの正逆両方向の回転駆動が、駆動ベルト7eの両方向への循環移動へと変換され、駆動側かご戸3及び従動側かご戸4が互いに逆方向に移動して出入口2が開閉される。
【0021】
駆動側かご戸3にはかご側係合手段8が固設されており、このかご側係合手段8は、構成要素として、駆動側かご戸3に固定された略矩形の基板、この基板の戸当側寄りにその長手が上下方向に亘って配置された断面略L字型の戸当側ブレード9、及び、この基板の戸袋側寄りには戸当側ブレード9と平行に配置された断面略L字型の戸袋側ブレード10を有している。
【0022】
より詳しくは、基板の戸当側寄りの上部及び下部には水平方向に亘ってスライドガイド11が設けられており、戸当側ブレード9は、これらのスライドガイド11を介して水平方向に移動可能な状態で取り付けられている。
そして、戸袋側ブレード10は、基板の戸袋側寄り上部に回動自在に枢着された略く字状を呈する第1のリンク12、及び、基板の戸袋側寄り下部に回動自在に枢着された第2のリンク13を介して取り付けられている。
これらの第1のリンク12及び第2のリンク13は平行に配置され、これらの節間距離は同一となるようにされている。従って、戸袋側ブレード10は、戸当側ブレード9と平行な状態を維持しつつ戸当側ブレード9との間の距離を増減するように移動することが可能である。
【0023】
かご側係合手段8の基板の戸当側ブレード9から見て戸当側には、戸当側ブレード9を水平方向に移動させるためのソレノイドアクチュエーター14が取り付けられている。
このソレノイドアクチュエーター14が作動すると、このソレノイドアクチュエーター14が備えるプッシュバー14aが戸袋側へと移動して戸当側ブレード9を押動し、戸当側ブレード9が戸袋側へと移動する。
また、かご側係合手段8には、戸当側ブレード9の動作を緩衝し急激な移動を抑制するためのダンパー15が設けられており、このダンパー15のプランジャーが戸当側ブレード9に接続され、シリンダ部が基板に固定されている。
【0024】
かご1が停止する階床の乗場には、かご1が着床した際にかご1の出入口2と対向する位置に、乗場の出入口が設けられている。この乗場の出入口には左右一対の乗場戸が略水平方向開閉自在に設けられている。
そして、これら一対の乗場戸のうち、かご1が着床した際に駆動側かご戸3と対向する側の乗場戸には、戸開閉時にかご側係合手段8と係合してかご戸と乗場戸とを連動して戸開閉させるための乗場側係合手段16が設けられている。
【0025】
この乗場側係合手段16はローラ状部材が2つ連結されてなる本体部と、長手が略水平方向に配置され、戸当側の先端に鉤状部を有する施錠部材16aからなり、本体部に設けられた回動軸16bを介して乗場戸に回動自在に枢着されている。
そして、乗場戸の戸閉時において、この施錠部材16aの鉤状部が、乗場側係合手段16が配設されていない方の乗場戸の戸当部に設けられた図示しない穴部に係合することにより、乗場戸は施錠されて当該階床にかご1が停止していない場合に戸開されないようになっている(図1)。
【0026】
かご1が乗場階床に着床した状態において、乗場側係合手段16(の本体部)がかご側係合手段8の戸当側ブレード9及び戸袋側ブレード10の間に位置するように各部材の配は調整されている。
そして、この戸当側ブレード9及び戸袋側ブレード10間に乗場側係合手段16が位置した状態で、ソレノイドアクチュエーター14が作動して戸当側ブレード9が戸袋側へと移動すると、戸当側ブレード9が乗場側係合手段16に当接して乗場側係合手段16を回動軸16bを中心に図1の反時計回りに回動させる。
すると、施錠部材16aの鉤状部と対向する戸当部の穴部との係合が外れて解錠され、乗場戸が戸開可能な状態となる(図2)。
【0027】
駆動側ドアハンガー5には戸袋側ブレード駆動手段17が直接固定されて設けられており、この戸袋側ブレード駆動手段17により戸開動作と連動する戸袋側ブレード10の移動が駆動される。
この戸袋側ブレード駆動手段17は、略く字状を呈しその中央部で回動自在に支持されたレバー18と、このレバー18の戸当側の一端に回動自在に設けられたローラ19とを有している。
【0028】
戸袋側ブレード10を回動自在に支持する第1のリンク12は、その略く字状の中央部においてかご側係合手段8の基板に回動自在に枢着されており、戸当側の一端において戸当側ブレード9に回動自在に枢着されている。
そして、この第1のリンク12の他端と連結棒20の一端とが回動自在に枢着され、この連結棒20の他端と戸袋側ブレード駆動手段17のレバー18の他端とが回動自在に枢着されることにより、第1のリンク12及びレバー18の戸袋側の他端同士が連結棒20を介して連結されて、レバー18の回動に連動して戸袋側ブレード10が移動するリンク機構が構成されている。
【0029】
かご戸駆動装置7が設けられているかご1の桁の所定位置にはカム部材21が固定されている。このカム部材21は、戸袋側ブレード駆動手段17のレバー18に設けられたローラ19が転動する略ノ字状の下にいくほど戸袋側へと曲げられた転走面を有している。
駆動側かご戸3が全閉した状態においては、ローラ19がこの転走面の略垂直部に当接し、戸袋側ブレード駆動手段17のリンク機構により戸袋側ブレード10は戸当側ブレード9から最も離れた位置に保持され、かご1が走行した際に戸袋側ブレード10が各階の乗場側係合手段16と接触や衝突等することがないようにされる。
【0030】
駆動側かご戸3が戸開動作を開始すると、ローラ19がカム部材21の転走面を下方へと転動してレバー18が図1(又は図2)の時計回り方向に回動する。すると、連結棒20は上方へと移動して第1のリンク12もレバー18と同方向に回動し、戸袋側ブレード10は戸当側ブレード9へと近接する方向に移動する。
そして、第1のリンク12の戸袋側ブレード10側及び第2のリンク13が略水平となり、戸袋側ブレード10が戸当側ブレード9に最も近接した状態において、第1のリンク12の戸当側ブレード9側に当接する位置には、戸袋側ストッパー22が設けられており、この戸袋側ストッパー22により戸袋側ブレード10が戸当側ブレード9に最も近接した状態からさらに第1のリンク12や第2のリンク13が回動して戸袋側ブレード10が戸当側ブレード9から離間してしまうことを阻止している。
【0031】
また、戸当側ブレード9の戸当側には、戸袋側ブレード10が戸当側ブレード9に最も近接した状態で、戸当側ブレード9及び戸袋側ブレード10の間にある乗場側係合手段16が充分に把持できるように、戸当側ブレード9が所定位置を超えて戸当側へと移動することを規制する戸当側ストッパー23が設けられている。
【0032】
図4は、ソレノイドアクチュエーター14の詳細な構成を示すものである。
シリンダ本体内には、外周内壁に沿って導線が巻回されて構成されたコイル14bが設けられており、シリンダ本体内一側のコイル14b内側には、その中心に貫通孔が穿設された固定鉄心14cが取り付けられている。
そして、その一側にプッシュバー14aが設けられた可動鉄心14dが、固定鉄心14cにプッシュバー14aを通すようにして設けられている。
【0033】
このように構成されたソレノイドアクチュエーター14は、コイル14bに所定の電圧が印加されていない状態においては、プッシュバー14a(可動鉄心14d)は、自在に突出及び引込が可能であり(図7の(a))、コイル14bに所定の電圧が印加されると電磁力により可動鉄心14dが固定鉄心14cに引き付けられてプッシュバー14aが突出状態に保持される(図7の(b))、いわゆるプッシュソレノイドである。
【0034】
このように構成されたエレベータのドア装置においては、かご1が走行して、停止する階床の所定のドアゾーン(かご1が停止する階床の近傍であってかご側係合手段8と乗場側係合手段16とが係合可能である所定の範囲。例えば着床位置±200mm程度以内の範囲)内に進入すると、乗場戸の乗場側係合手段16がかご側係合手段8の戸当側ブレード9と戸袋側ブレード10との間に、接触していない状態で配置される(図1)。
この際、戸当側ブレード9は乗場側係合手段16から見て戸当側に、戸袋側ブレード10は乗場側係合手段16の反戸当側ブレード9側に、それぞれ配置されている。
【0035】
そして、かご1がドアゾーン内に進入を開始したことが検出されると、かご1が着床するまでの間に、ソレノイドアクチュエーター14に電圧を印加して作動させ、戸当側ブレード9を戸袋側へと移動させる。
すると、戸当側ブレード9が、乗場側係合手段16に当接してこれを回動させ、施錠部材16aによる乗場戸の施錠が解錠される(図2)。
【0036】
ここで、ソレノイドアクチュエーター14の作動力は、乗場側係合手段16を回動させて施錠部材16aの施錠を解錠することができる程度であれば充分であり、乗場戸を戸開させるほどの強さは不要である。
なお、かご側係合手段8が備えるダンパー15の作用により、戸当側ブレード9の移動速度は、乗場側係合手段16との衝突音が充分に小さくなるように低減されている。
【0037】
また、一度ソレノイドアクチュエーター14を作動させて戸当側ブレード9を戸袋側へと移動させた後は、当該階床における戸開閉についてソレノイドアクチュエーター14を作動させる必要はないため、ソレノイドアクチュエーター14の連続作動による発熱の心配はない。
さらに、仮に制御系の誤動作等によりドアゾーンの外でソレノイドアクチュエーター14が作動してしまった場合について考えてみても、ドアゾーン外においては戸当側ブレード9と乗場側係合手段16とが係合することがないため、乗場戸が解錠されてしまうおそれはない。
【0038】
このようにして、かご1がドアゾーン内に進入を開始すると、着床前にソレノイドアクチュエーター14により戸当側ブレード9が戸袋側へと移動されて乗場戸が解錠されるとともに、戸当側ブレード9が戸袋側へと移動したことにより乗場側係合手段16戸当側ブレード9と戸袋側ブレード10とにより把持された状態となっている(図2)。
このソレノイドアクチュエーター14は、かご1が停止階床の所定のドアゾーン内に進入後、かご1の着床前に、かご戸及び乗場戸を戸開させることなく、戸当側ブレード9を、戸袋側ブレード10に近接する方向へと移動させて乗場側係合手段16に当接させる戸当側ブレード駆動手段を構成する。
【0039】
すなわち、着床前に、かご側係合手段8と乗場側係合手段16とは既に係合が完了した状態となっており、従って、着床後に駆動側かご戸3(及び従動側かご戸4)が戸開を開始すると、乗場戸も同時に戸開を開始する。
このとき、かご側係合手段8の戸当側ブレード9及び戸袋側ブレード10と乗場側係合手段16とは既に接触後であるため、戸開時に衝突音や振動等は発生せず、戸開動作の開始直後から戸開動作を加速することが可能である。
【0040】
戸開動作開始後においてはソレノイドアクチュエーター14には電圧が印加されない
乗場戸の走行抵抗により、戸当側ブレード9は駆動側かご戸3に対して相対的に戸当側へと押動され、ソレノイドアクチュエーター14のプッシュバー14aも引込位置へと移動する。
なお、この際においては、前述したかご側係合手段8が備えるダンパー15の作用により、戸当側ブレード9の移動速度は充分に低減されたものとなる。
【0041】
戸開動作の開始後、駆動側かご戸3(及び従動側かご戸4)が戸袋側へと移動すると、ローラ19がカム部材21の転走面を下方へと転動してレバー18が回動し、連結棒20を介して第1のリンク12もレバー18と同方向に回動して、戸袋側ブレード10は、戸当側ブレード9と平行を保ちながら、戸当側ブレード9へと近接する方向に移動する。
そして、戸当側ブレード9と戸袋側ブレード10とにより、これらの間にある乗場側係合手段16が把持される。
【0042】
この際、戸当側ブレード9は、戸当側ストッパー23により所定位置より戸当側への移動が規制され、戸開動作中において、乗場側係合手段16を把持し得なくなるほど戸当側ブレード9と戸袋側ブレード10との間隔が広がってしまわないよう、戸当側ブレード9が乗場側係合手段16を把持し得る位置に保持される。
こうして、戸開動作中において、乗場側係合手段16は戸当側ブレード9及び戸袋側ブレード10に把持されてかご側係合手段8と係合された状態が維持され、かご戸及び乗場戸は連動して一体となって戸開する。
【0043】
一方、駆動側かご戸3及び従動側かご戸4並びに乗場戸が戸閉する場合、乗場側係合手段16は戸当側ブレード9及び戸袋側ブレード10に把持されてかご側係合手段8と係合されており、これらの戸は連動して一体となって戸閉する。
そして、全閉付近で、戸袋側ブレード駆動手段17のローラ19がカム部材21と当接し、ローラ19はカム部材21の転走面を今度は上方へと転動する。すると、レバー18が図1〜3の反時計回りに回動して連結棒20が下方へと移動し、第1のリンク12がレバー18と同方向へと回動する。
【0044】
戸袋側ブレード10は戸当側ブレード9から離間する方向へと移動していき、戸が全閉した時点において、戸袋側ブレード10と乗場側係合手段16とは離間してかご1の走行に支障がない程度の距離が空けられた状態となる。
また、戸当側ブレード9については、一連の戸開閉動作において、ソレノイドアクチュエーター14が作動する前、すなわちかご1がドアゾーンへと進入する前、と同じ位置、同じ状態に復帰されて保持されており、戸当側ブレード9も乗場側係合手段16とは離間してかご1の走行に支障がない程度の距離が空けられた状態となる。
【0045】
以上のように構成されたエレベータのドア装置は、かごに設けられ、かご側係合手段を具備するかご戸と、乗場に設けられ、乗場側係合手段を具備する乗場戸と、を有し、かご側係合手段と乗場側係合手段とが係合しかご戸と乗場戸とが連動して一体となって開閉するエレベータのドア装置であって、かご側係合手段に設けられ、かごの着床時において乗場側係合手段の戸当側に配置される戸当側ブレードと、かご側係合手段に戸当側ブレードと略平行に設けられ、かごの着床時において乗場側係合手段の反戸当側ブレード側に配置され、戸当側ブレードとで乗場側係合手段を把持するための戸袋側ブレードと、かごが停止階床の所定のドアゾーン内に進入後、かごの着床前に、かご戸及び乗場戸を戸開させることなく、戸当側ブレードを、戸袋側ブレードに近接する方向へと移動させて乗場側係合手段に当接させる戸当側ブレード駆動手段と、を備えたものである。
【0046】
このため、着床後すぐに通常速度での(低速でない)戸開動作をしても音や振動が発生しないようにすることができ、滑らかな戸開動作が得られ戸開閉に必要な所要時間を削減することが可能である。
また、かご側係合手段と乗場側係合手段との間に生じる隙間を小さくする必要がなく、据付調整作業は容易であって作業効率も良好である。
【0047】
そして、乗場側係合手段に設けられ、乗場戸の全閉時において乗場戸を施錠する施錠部材をさらに備え、戸当ブレード駆動手段により戸当ブレードが乗場側係合手段に当接されると、施錠部材による乗場戸の施錠が解錠されるものであるので、乗場戸の全閉時においては当該階床にかごが停止していないにも関らず乗場戸が戸開してしまうことを防止するとともに、かごの着床後、すぐに戸開を戸始することができる。
【0048】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2に係るもので、エレベータのドア装置のかご戸が全閉時の状態を示す正面図である。
ここで説明する実施の形態2は、前述した実施の形態1の構成において、戸当側ブレードの移動を駆動するソレノイドアクチュエーターを、戸開閉によりかごとの相対位置が移動してしまうかご戸ではなく、かごに固定されたかご戸駆動装置の枠部(かごの桁部)に固定するようにしたものである。
【0049】
すなわち、かご1の出入口2の上方に固定して設けられたかご戸駆動装置7の枠部(かご1の桁部と換言してもよい)の、戸当側ブレード9から見て戸当側には、戸当側ブレード9を水平方向に移動させるためのソレノイドアクチュエーター14が取り付けられている。
そして、ここでは、戸当側ブレード9とソレノイドアクチュエーター14のプッシュバー14aとの間の距離が比較的大きいため、戸当側ブレード9の上端寄りに、戸当側ブレード9とプッシュバー14aとの間に位置するように配置した補助部材9aを取り付け、プッシュバー14aはこの補助部材9aを介して戸当側ブレード9を押動するようにしている。
【0050】
なお、ソレノイドアクチュエーター14が作動して、戸当側ブレード9を移動させるのは、かご1がドアゾーンに進入してから着床するまでの間であって、駆動側かご戸3が戸開動作に移る前であるので、他の構成や動作については実施の形態1と同様とすることができる。
【0051】
以上のように構成されたエレベータのドア装置は、実施の形態1の構成において、戸当側ブレード駆動手段は、かごの出入口の上方の桁に固定して設けられたものである。
このため、実施の形態1と同様の効果を奏することができるのに加えて、特に戸当側ブレード駆動手段を電気的に作動するアクチュエーターから構成した場合に、このアクチュエーターを戸開閉時に可動するかご戸ではなく戸開閉時に可動しない箇所に固定することにより、このアクチュエーターへの配線が容易になるとともに、戸開閉時における配線の屈伸もないため配線の劣化を低減することができる。
【0052】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3に係るもので、エレベータのドア装置のかご戸が全閉時の状態を示す正面図である。
前述した実施の形態1や実施の形態2においては、戸袋側ブレードの移動を駆動する戸袋側ブレード駆動手段についてリンク機構及びカムを併用したものであったが、ここで説明する実施の形態3は、戸袋側ブレードの移動を駆動する戸袋側ブレード駆動手段についてリンク機構のみで構成するようにしたものである。
【0053】
すなわち、この実施の形態においては、戸袋側ブレードの移動を駆動する戸袋側ブレード駆動手段17は、かご1の出入口2の上方に固定して設けられたかご戸駆動装置7の枠部(かご1の桁部)の駆動側かご戸3側の端部に、その一端が回動自在に枢着された主駆動リンク24と、この主駆動リンク24の他端にその一端が回動自在に枢着され、その他端が戸袋側ブレード10に回動自在に枢着された接続部25と、を有している。
そして、この構成においては、第1のリンク12及び第2のリンク13のかご側係合手段8基板への枢着位置が、実施の形態1や実施の形態2の構成と比べて、戸袋側ブレード10の戸袋側から戸当側へと変更されている。
【0054】
このような構成によっても、実施の形態1や実施の形態2と同様に、戸開動作を開始して所定の距離だけ駆動側かご戸3が移動した後に、戸袋側ブレード10を戸当側ブレード9へと近接する方向へと移動させて乗場側係合手段16を把持するとともに、戸閉動作時には、全閉付近において、戸袋側ブレード10を戸当側ブレード9から離間する方向へと移動させて、戸が全閉した時点で、戸袋側ブレード10と乗場側係合手段16とが離間してかご1の走行に支障がない程度の距離が空けられた状態とすることができる。
【0055】
なお、この実施の形態においては、戸袋側ストッパー22が不要であることを除き、他の構成及び動作については実施の形態1や実施の形態2と同様である。
また、戸袋側ブレード駆動手段17については、以上の実施の形態1から実施の形態3において説明した構成の他、同様の動作をさせることが可能なものであれば従来公知のいずれの構成も採用することができる。
【0056】
以上のように構成されたエレベータのドア装置は、実施の形態1又は実施の形態2の構成において、戸袋側ブレードの移動を駆動する戸袋側ブレード駆動手段についてリンク機構のみで構成するようにしたものであって、実施の形態1又は実施の形態2と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 かご
1a かご室
2 出入口
3 駆動側かご戸
4 従動側かご戸
5 駆動側ドアハンガー
6 従動側ドアハンガー
7 かご戸駆動装置
7a ドアレール
7b 駆動モータ
7c 駆動プーリ
7d 従動プーリ
7e 駆動ベルト
8 かご側係合手段
9 戸当側ブレード
9a 補助部材
10 戸袋側ブレード
11 スライドガイド
12 第1のリンク
13 第2のリンク
14 ソレノイドアクチュエーター
14a プッシュバー
14b コイル
14c 固定鉄心
14d 可動鉄心
15 ダンパー
16 乗場側係合手段
16a 施錠部材
16b 回動軸
17 戸袋側ブレード駆動手段
18 レバー
19 ローラ
20 連結棒
21 カム部材
22 戸袋側ストッパー
23 戸当側ストッパー
24 主駆動リンク
25 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごに設けられ、かご側係合手段を具備するかご戸と、乗場に設けられ、乗場側係合手段を具備する乗場戸と、を有し、前記かご側係合手段と前記乗場側係合手段とが係合し前記かご戸と前記乗場戸とが連動して一体となって開閉するエレベータのドア装置であって、
前記かご側係合手段に設けられ、前記かごの着床時において前記乗場側係合手段の戸当側に配置される戸当側ブレードと、
前記かご側係合手段に前記戸当側ブレードと略平行に設けられ、前記かごの着床時において前記乗場側係合手段の反前記戸当側ブレード側に配置され、前記戸当側ブレードとで前記乗場側係合手段を把持するための戸袋側ブレードと、
前記かごが停止階床の所定のドアゾーン内に進入後、前記かごの着床前に、前記かご戸及び前記乗場戸を戸開させることなく、前記戸当側ブレードを、前記戸袋側ブレードに近接する方向へと移動させて前記乗場側係合手段に当接させる戸当側ブレード駆動手段と、を備えたことを特徴とするエレベータのドア装置。
【請求項2】
前記乗場側係合手段に設けられ、前記乗場戸の全閉時において前記乗場戸を施錠する施錠部材をさらに備え、
前記戸当ブレード駆動手段により前記戸当ブレードが前記乗場側係合手段に当接されると、前記施錠部材による前記乗場戸の施錠が解錠されることを特徴とする請求項1に記載のエレベータのドア装置。
【請求項3】
前記戸当側ブレード駆動手段は、電気的に作動するアクチュエーターからなることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のエレベータのドア装置。
【請求項4】
前記戸当側ブレード駆動手段は、前記かご戸に固定して設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のエレベータのドア装置。
【請求項5】
前記戸当側ブレード駆動手段は、前記かごの出入口の上方の桁に固定して設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のエレベータのドア装置。
【請求項6】
前記かご戸の戸開動作に伴って、前記戸袋側ブレードを前記戸当側ブレードに近接する方向へと移動させて、前記戸当側ブレードと前記戸袋側ブレードとにより前記乗場側係合手段を把持させる戸袋側ブレード駆動手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のエレベータのドア装置。
【請求項7】
前記戸当側ブレードの所定位置より戸当側への移動を規制し、戸開動作中において、前記戸当側ブレードと前記戸袋側ブレードとが前記乗場側係合手段を把持し得る位置に前記戸当側ブレードを保持するストッパーをさらに備えたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のエレベータのドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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