説明

エレベータのドア装置

【課題】エレベータのドア装置において、係合装置に作用する過大な荷重を緩和し、係合装置およびその周辺の損傷を免れるドア装置を提供する。
【解決手段】エレベータのドア装置10は、籠ドア装置11と乗場ドア装置12とロック機構13と係合装置14とを備える。係合装置14は、第1の係合ベーン141と第2の係合ベーン142とカムレール143とカムローラ144と第1のブラケット145と第2のブラケット146とを備える。第2のブラケット146は、第2の係合ベーン142に固定されて第1のブラケット145を保持し、第2の係合ベーン142に設定された移動量を超える変位をカムレール143からカムローラ144が受けた場合に第1のブラケット145を放す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの乗籠の籠ドア装置と着床階の乗場ドア装置とを連動させる機構を備えるドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータのドア装置は、乗籠に設置される籠ドア装置と、建物の各階の乗場に設置される乗場ドア装置とを備えている。乗籠が着床した階の乗場ドア装置に籠ドア装置を連結し駆動力を伝達するために、係合装置が籠ドア装置と乗場ドア装置との間に設けられている。乗場ドア装置は、駆動機構を持っておらず、乗籠が着床したときに連結される籠ドア装置の駆動力によって開閉される。また、ドア装置は、乗籠が着床していない場合に乗場ドア装置が不用意に開放されないように維持するロック機構を備える。係合装置は、乗籠が着床している階の乗場ドア装置に設けられたロック機構を操作し、戸開され始めるときにロック機構を解除し、戸閉される直前にロック機構を作動させる。
【0003】
係合装置は、籠ドア装置のドアパネルに設けられた一対の係合ベーンを有している。この係合ベーンは、乗籠が移動する鉛直方向に沿って平行に配置され、互いに平行を保ったままその間隔幅を変化させる平行リンク機構を構成している。籠ドア装置のドアパネルが開放されるときにドアパネルが移動する方向に沿って設置されたカムに転接するカムローラが係合ベーンの一方に取り付けられている。ドアパネルが移動するとカムローラがカムに案内され、係合ベーンは、互いに接近する方向に変位される。
【0004】
ロック機構は、乗場ドア装置のドアパネルに回動可能に取り付けられたフックと、建物側に固定されてこのフックと係合してドアパネルが戸開されるのを阻止するレシーバと、乗籠が着床している状態で係合ベーンの間に配置される一対の係合ローラとを備えている。係合ローラは、係合ベーンが配置された鉛直方向に対してやや傾いた方向に並んで配置されている。
【0005】
乗籠が着床して籠ドア装置が駆動されると係合ベーンが係合ローラを挟むことによって、フックが回動してレシーバから外される。係合ベーンが係合ローラを掴んだ状態で籠ドア装置のドアパネルが戸開されることで、乗場ドア装置のドアパネルも戸開される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−137958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エレベータを据付ける際、戸閉状態における係合ベーンどうしの間の寸法、そのときの係合ベーンと係合ローラとのクリアランス、戸開状態における係合ベーンどうしの間の寸法がそれぞれ設定値になるように各部品の取り付け位置が調整される。係合ベーンは、エレベータの乗籠に取り付けられる一組であるのに対し、係合ローラは、各階の乗場ドアにそれぞれ一組、つまり階層の数だけ設けられている。したがって、昇降路を移動する乗籠の籠ドア装置に設置される係合ベーンに対してすべての階の係合ローラを理想的に位置決めすることは非常に難しい。
【0008】
ドア装置が開放状態になっているにもかかわらず、係合ベーンと係合ローラとの間に隙間が残っていると、籠ドア装置のドアパネルと乗場ドア装置のドアパネルとの連結が不十分であり、ドアパネルが騒音を発するかもしれない。そのため、戸開状態における係合ベーンどうしの間の寸法は、すべての階層においてがたつきが内容に、係合ローラの直径よりもわずかに小さくなるように調整されがちである。
【0009】
戸開状態における係合ベーンどうしの間の寸法が、係合ローラの直径よりも狭く調整されている場合、係合ベーンを閉じきろうとする力がベーンローラに作用する。この力が作用することで、係合ベーン、係合ローラ、およびこれらを支持するベースに歪が生じる。その結果、係合装置に過大な外力が加わり、係合ベーンのリンク部に曲げモーメントが作用する。このときベアリングが損傷すると、ドア装置の開閉動作に支障をきたすかもしれない。
【0010】
そこで、本発明は、エレベータを据え付けたときの係合ベーンの取付位置調整不良に起因して係合装置に作用する過大な荷重を緩和し、係合装置およびその周辺の損傷を免れるドア装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態のドア装置は、乗籠に設置された籠ドア装置と、各階に設置された乗場ドア装置と、乗場ドア装置の乗場ドアパネルを閉じた状態に保持するロック機構と、乗籠が着床した階の乗場ドア装置に籠ドア装置を連結する係合装置とを備える。この係合装置は、第1の係合ベーンと第2の係合ベーンとカムレールとカムローラと第1のブラケットと第2のブラケットとを備える。第1の係合ベーンは、籠ドア装置の籠ドアパネルに固定される。第2の係合ベーンは、第1の係合ベーンに対して平行リンクで連結され移動する。カムレールは、籠ドアパネルを吊下げるドアレールに沿って取り付けられる。カムローラは、カムレールに転接する。第1のブラケットは、カムローラを支持する。第2のブラケットは、第2の係合ベーンに固定されて第1のブラケットを保持し、第2の係合ベーンに設定された移動量を超える変位をカムレールからカムローラが受けた場合に第1のブラケットを放す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態のドア装置を示す正面図。
【図2】図1に示したドア装置が戸閉状態のときの係合装置の配置を示す正面図。
【図3】図1に示したドア装置のガイドユニットの斜視図。
【図4】図3に示したガイドユニットの断面図。
【図5】図1に示したドア装置において係合装置のカムローラがスロープの上にある戸開状態のときの係合装置の配置を示す正面図。
【図6】図2に示した状態から図5に示した状態になる前に係合ベーンと係合ローラとの間のクリアランスがなくなった場合の係合装置の配置を示す正面図。
【図7】図6に示した状態から戸開動作が進んだときのガイドユニットの断面図。
【図8】第2の実施形態のドア装置のガイドユニットの固定部分を示す断面図。
【図9】第3の実施形態のドア装置のガイドユニットの固定部分を示す断面図。
【図10】第4の実施形態のドア装置のガイドユニットの固定部分を示す断面図。
【図11】第5の実施形態のドア装置のガイドユニットの固定部分を示す断面図。
【図12】第6の実施形態のドア装置のガイドユニットの固定部分を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の実施形態のドア装置10について、図1から図7を参照して説明する。図1に示すエレベータ100のドア装置10は、乗籠101に設置された籠ドア装置11と、各階に設置された乗場ドア装置12と、乗場ドア装置12の乗場ドアパネル124を閉じた状態に保持するロック機構13と、乗籠101が着床した階の乗場ドア装置12に籠ドア装置11を連結する係合装置14とを備える。図1は、乗場102側からドア装置10を見た状態で、乗籠101は、着床していない。
【0014】
図1に示すように籠ドア装置11は、中央開き式であって、乗籠101の乗口101Aの上部に設置されるヘッダ111と、ヘッダ111に水平に取り付けられたハンガーレール112と、ハンガーレール112にハンガーローラ113を介して吊下げられた籠ドアパネル114と、この籠ドアパネル114をハンガーレール112に沿って移動させる駆動装置115とを備える。籠ドアパネル114は、ヘッダ111の両端に配置されたプーリ116に巻き掛けられた無端状のワイヤ117の途中に接続されている。駆動装置115は、このワイヤ117を駆動することによって、籠ドアパネル114を移動させる。
【0015】
乗場ドア装置12は、建物の各階に設置され、乗場の乗口102Aを塞ぐ乗場ドアパネル124を備える。乗場ドアパネル124は、中央開き式に一対に配置され、乗口の上部に設置される乗場側ヘッダのレールに吊り下げられている。ロック機構13は、フック131と受部132とを有している。フック131は、図1に示すように、一対の乗場ドアパネル124の一方の上部に回動自在に取り付けられている。受部132は、乗場側ヘッダに固定されており、乗場ドアパネル124が閉じられた状態で、フック131と掛合される。乗籠101が着床していない階の乗場ドア装置12は、このロック機構13が作動していることによって、不用意に乗場ドアパネル124が開放されない。
【0016】
係合装置14は、第1の係合ベーン141と第2の係合ベーン142とカムレール143とカムローラ144と第1のブラケット145と第2のブラケット146と第1の係合ローラ147と第2の係合ローラ148とを備える。第1の係合ベーン141は、一対の籠ドアパネル114の一方に固定されている。第2の係合ベーン142は、第1の係合ベーン141に対して平行リンク149で連結されている。カムレール143は、ハンガーレール112に沿って取り付けられる。カムローラ144は、カムレール143に転接し、第1のブラケット145に支持される。第2のブラケット146は、第2の係合ベーンに固定され、図3および図4に示すように第1のブラケット145を保持している。
【0017】
カムレール143は、図2に示すように、籠ドアパネル114が閉じられた位置寄りにスロープ143Aを有している。このスロープ143Aは、籠ドアパネル114が閉じられた位置から開かれる方向へ移動する初期段階においてカムローラ144を上方へ押し上げるように傾いている。したがって、籠ドアパネル114が閉じられた位置へ向かって移動する最終段階において、カムローラ144はこのスロープ143Aに沿って下る。
【0018】
本実施形態において第1のブラケット145は、図3および図4に示すように円柱状のステム145Aを有し、第2のブラケット146は、このステム145Aが通される装着孔146Aを有し、このステム145Aの一部に対して締り嵌めで外嵌する内径の把持部146Bを有している。図4では、ステム145Aの軸径が一部太くなっており、その部分が装着孔146Aに対して締り嵌めに嵌合している。ステム145Aと装着孔146Aの関係が逆になっていてもよい。
【0019】
第2のブラケット146が第1のブラケット145を保持する力は、カムローラ144がカムレール143に沿って変位させられるときに第2のブラケット146および第2の係合ベーン142の重量が加わっても外れない十分な力である。つまり、カムローラ144、第1のブラケット145、第2のブラケット146、および第2の係合ベーン142は、平行リンク149によって一体に変位する。
【0020】
第1の係合ローラ147および第2の係合ローラ148は、各階のロック機構13に取り付けられており、図2および図5に示すように乗籠101がいずれかの階に着床した状態で、第1の係合ベーン141および第2の係合ベーン142の間に配置される。第1の係合ローラ147は、フック131の回動中心と同軸に取り付けられている。第2の係合ローラ148は、フック131の回動中心から半径方向に離れた位置に取り付けられている。この実施形態の場合、第1の係合ベーン141および第2の係合ベーン142が配置される鉛直方向に沿う方向よりやや傾いた方向に第1の係合ローラ147と第2の係合ローラ148が並んで配置される。
【0021】
以上のように構成されたドア装置10は、乗籠101がいずれかの階に着床すると、駆動装置115によって互いに離れる方向へ籠ドアパネル114を移動させる。籠ドアパネル114が移動し始めると、第1の係合ベーン141が第2の係合ローラ148に当たる。第2の係合ローラ148は、フック131に取り付けられており、フック131は、第1の係合ローラ147と同軸を中心に回動する。第1の係合ベーン141が第2の係合ローラ148に当接した後さらに籠ドアパネル114が移動すると、第1の係合ベーン141が第1の係合ローラ147に当接するまで、フック131を回動させる。この結果、フック131が受部132から外れ、ロック機構13は、解除される。
【0022】
ロック機構13が解除されると、乗場ドアパネル124が自由に移動できるようになる。籠ドアパネル114が第1の係合ローラ147に当接した状態でさらに籠ドアパネル114が開かれると、第1の係合ローラ147を介して乗場ドアパネル124も連動して開かれる。乗場ドアパネル124は、乗場用ヘッダに取り付けられたプーリとワイヤによって、籠ドアパネル114と同様に、互いに離れる方向へ移動する。
【0023】
このとき、第2の係合ベーン142にはカムローラ144が付いておりカムレール143に転接している。籠ドアパネル114が開かれる方向に移動すると、第1の係合ベーン141に対して第2の係合ベーン142が接近する方向へ平行リンク149によって移動し、図5に示すように、カムローラ144がカムレール143の上段143Bに上った状態で、第1の係合ベーン141および第2の係合ベーン142は、ちょうど第1の係合ローラ147および第2の係合ローラ148を挟んだ状態になるように、各部品が組み立てられている。
【0024】
エレベータは、乗籠101に設けられる1つの籠ドア装置11に対して階層の分だけ乗場ドア装置12が設けられる。組立公差によって、隙間が生じると籠ドアパネル114と乗場ドアパネル124とのがた付きの原因になる。どの階層の乗場ドア装置12に対しても隙間が生じないようにするため、カムローラ144がカムレール143の上段143Bに上がった状態で、第1の係合ベーン141と第2の係合ベーン142の間の寸法が第1の係合ローラ147および第2の係合ローラ148の直径の寸法よりもわずかに小さくなるように設定する。つまり、組立許容公差をマイナスになるように設定する。
【0025】
組立許容公差を小さくすれば、第1の係合ベーン141および第2の係合ベーン142が第1の係合ローラ147および第2の係合ローラ148を過剰に挟むことを抑制することができる。しかし、組立許容公差を小さく設定すると設置作業において高い組立精度が要求される。また、温度変化によって隙間が変化することも考慮しなければならない。
【0026】
そこで、組立許容公差を大きく設定すると、図6に示すように、カムローラ144がカムレール143のスロープ143Aの途中に接触している状態であるにもかかわらず、第1の係合ベーン141および第2の係合ベーン142が第1の係合ローラ147および第2の係合ローラ148を挟んだ状態となることが起こる。
【0027】
本実施形態の場合、第1のブラケット145が第2のブラケット146に対して締り嵌めで保持されている。第2の係合ベーン142に設定された移動量を超える変位をカムレール143から受けた場合、第2のブラケット146は、第1のブラケット145を放す。つまり、図6に示す第1の係合ローラ147および第2の係合ローラ148を第1の係合ベーン141および第2の係合ベーン142で挟みそれ以上回動できない状態で、さらにカムレール143からカムローラ144が変位を受けると、図7に示すように締り嵌めで嵌合している部分がずれるまたは外れるように構成されている。
【0028】
したがって、組立許容公差がマイナス側に少し大きく設定されても、第2のブラケット146に対して第1のブラケット145がずれ動くことによって、カムレール143に対するカムローラ144の位置は、適正な位置関係に調整される。そして、第1の係合ローラ147および第2の係合ローラ148を過剰に挟み込むことも無い。
【0029】
その結果、過剰な負荷によって、第2の係合ベーン142、平行リンク149、第1の係合ローラ147、第2の係合ローラ148、カムレール143などの取付部が破損しないように保護することができる。第2のブラケット146に対して第1のブラケット145がずれたことは、定期検査のときに確認される。第1のブラケット145が移動していれば、第2のブラケット146の位置が再調整される。
【0030】
以下に、第2から第6の実施形態のドア装置10の第1のブラケット145と第2のブラケット146との連結構造について、それぞれ図を参照して説明する。第2から第6の実施形態におけるドア装置10としてのそれ以外の構成は、第1の実施形態のドア装置10と同じであるので、第1の実施形態の記載および図面を参酌することとする。
【0031】
第2の実施形態における第1のブラケット145および第2のブラケット146の連結構造は、図8を参照して説明する。図8に示す第1のブラケット145は、ステム145Aの途中の外周の全周にわたって盛り上がった係止突起145Bを有している。第2のブラケット146は、ステム145Aが通される装着孔146Aが設けられている。装着孔146Aは、係止突起145Bの外径よりも小さい内径に形成された絞り部146Cを有している。絞り部146Cより下側の装着孔146Aは、係止突起145Bの外径よりも大きい。
【0032】
第2の実施形態の第2のブラケット146に対して第1のブラケット145のステム145Aの上端は、装着孔146Aの内径よりも小さく形成され、下方から挿入される。図8に示すように係止突起145Bが絞り部146Cに係合するのでその位置で、保持ブロック145Dが装着され、EリングまたはCリングなどの止め具で固定される。
【0033】
絞り部146Cは、カムレール143から離れる方向にカムローラ144が変位するのを抑制し、第2の係合ベーン142に設定された移動量を超える変位をカムレール143からカムローラ144が受けた場合に係止突起を通過させる。つまり、係止突起145Bと絞り部146Cは、第1の実施形態の締り嵌めによるステム145Aおよび装着孔146Aと同じ機能を果たす。
【0034】
第2の実施形態において、係止突起145Bが絞り部146Cを通過してしまったステム145Aは、ステム145Aを分解して第2のブラケット146の装着孔146Aの上方にいったん引き抜いたあと、装着孔146Aの下部から再度挿入して保持ブロック145Dを取り付けることで、第1の実施形態の場合よりも簡単に復旧させることができる。なお、係止突起145Bが絞り部146Cを通過したということは、第2の係合ベーン142に対する第2のブラケット146の位置調整が適正な位置からずれていたことを意味するので、ステム145Aを装着孔146Aに取り付けなおす場合は、第2のブラケット146の位置を再調整する。
【0035】
第3の実施形態における第1のブラケット145および第2のブラケット146の連結構造は、図9を参照して説明する。図9に示すステム145Aは、外周に環状の外溝145Eを有し、第2のブラケット146は、外溝145Eに対応する位置の装着孔146Aの内周面に環状の内溝146Eを有している。そして、外溝145Eと内溝146Eとにまたがって、OリングGが挿入されている。
【0036】
第3の実施形態の場合、第2の係合ベーン142に設定される移動量、すなわち、第1の係合ローラ147および第2の係合ローラ148を第1の係合ベーン141と第2の係合ベーン142の間に挟んだ状態を超えて、カムレール143からカムローラ144が第2の係合ベーン142を変位させる力を受けると、OリングGは、扁平してステム145Aと装着孔146Aの隙間に捩じ込まれる、あるいは切断され、第1のブラケット145のステム145Aが第2のブラケット146に対して相対的に移動する。
【0037】
第3の実施形態における第1のブラケット145および第2のブラケット146であれば、いずれも溝を形成するだけであるので、加工が簡単である。また、第1のブラケット145と第2のブラケット146の連結強度は、OリングGの材質および強度などを変更することで、容易に設定が可能である。また、わずかな変位であれば、OリングGの弾性変形によって吸収される。
【0038】
第4の実施形態における第1のブラケット145および第2のブラケット146の連結構造は、図10を参照して説明する。図10に示すステム145Aは、第3の実施形態の場合と同様に外溝145Eを有している。そして、第3の実施形態とは異なり、第4の実施形態の第2のブラケット146は、ステム145Aの外溝145Eに対応する位置にカシメられた変形部146Fを有している。図10に示すようにこの変形部146Fは、装着孔146Aの内面に突出する程度に変形しており、外溝145Eに入り込んでいる。
【0039】
この変形部146Fは、第2の係合ベーン142に設定された移動量、すなわち第1の係合ローラ147および第2の係合ローラ148を第1の係合ベーン141および第2の係合ベーン142で挟んだ状態を超えて、カムレール143からカムローラ144が第2の係合ベーン142を変位させる力を受けると、変形部146Fが外溝145Eから外れるように構成されている。第4の実施形態の連結構造によれば、他の実施形態の連結構造に比べて容易に製造できる。また、ステム145Aが移動した後も、ステム145Aの外溝145E以外の部分が変形部146Fに押えられているので、移動した位置に保持される。
【0040】
第5の実施形態における第1のブラケット145および第2のブラケット146の連結構造は、図11を参照して説明する。第1のブラケット145は、ステム145Aの上端に第1の磁石145Mが取り付けられており、ステム145Aの軸に沿う方向に磁極が形成されている。この実施形態の場合、第1の磁石145Mは永久磁石であって、図11に示すように、S極が上にN極が下に形成されている。第2のブラケット146は、ステム145Aに外嵌する装着孔146Aの上端に第2の磁石146Mが取り付けられている。第2の磁石146Mは永久磁石であって、第1の磁石145Mと引き合う磁極、この実施形態の場合、S極が形成された側が第1の磁石145Mに対峙するように配置される。
【0041】
本実施形態において第1の磁石145Mは、ステム145Aの上端に形成された細径部分に外装され、ナットで固定されている。第2の磁石146Mは、装着孔146Aの上端に加工されたネジ部に螺合している。第1の磁石145Mおよび第2の磁石146Mの固定方法は、これらの方法に限らない。カムレール143に沿ってカムローラ144が変位すると第1のブラケット145と第2のブラケット146は第1の磁石145Mと第2の磁石146Mで連結されているので、第2の係合ベーン142が移動し、第1の係合ベーン141とともに第1の係合ローラ147および第2の係合ローラ148を挟む。
【0042】
第2の係合ベーン142に設定された移動量を超える変位をカムレール143からカムローラ144が受ける、すなわち、第1の係合ベーン141および第2の係合ベーン142が第1の係合ローラ147および第2の係合ローラ148を挟んだ状態よりもさらにカムレール143からカムローラ144が押し上げられことによって第2の係合ベーン142に変位が加わると、第1の磁石145Mが第2の磁石146Mから引き離される。このように、第5の実施形態の場合、第1の磁石145Mおよび第2の磁石146Mによって、第1のブラケット145と第2のブラケット146とが連結されている。
【0043】
したがって、第1の磁石145Mと第2の磁石146Mとが離されることがあっても、ドア装置10が閉じられると、カムローラ144がスロープ143Aを下る途中で第1の磁石145Mと第2の磁石146Mが磁力で引き合い、図11に示す状態に戻る。第1の磁石145Mと第2の磁石146Mとが離間するような変位を受けたかどうかは、第1の磁石145Mと第2の磁石146Mの間に伸縮性が無く切れやすい紙テープのような封印をしておけばよい。メンテナンスの際にこの封印が切れていれば、過度の負荷がかかったことが分かる。
【0044】
第6の実施形態における第1のブラケット145および第2のブラケット146の連結構造は、図12を参照して説明する。第6の実施形態において第2の磁石146Mは、コイルによって構成される電磁石である。また、第2のブラケット146は、第2の係合ベーン142に連結された部分の近傍に、歪みを検出するセンサ151を有している。第2の磁石146Mおよびセンサ151は、制御装置15に接続されている。
【0045】
制御装置15は、センサ151で検出された信号を受信し、この信号を基に過大な力がカムローラ144にかかっていると判断したときに、コイルに流す電流を制御する。そして第2の磁石146Mの磁力を変化させることによって、第2の係合ベーン142、カムレール143、第1の係合ローラ147、第2の係合ローラ148、平行リンク149などに負荷がかかるのを抑制する。
【0046】
センサ151を取り付ける部位は、第2のブラケット146に限らず、第2の係合ベーン142、平行リンク149、第1の係合ベーン141および平行リンク149が取り付けられるベースであってもよい。センサ151は、一般に歪ゲージを採用する。
【0047】
第6の実施形態におけるドア装置10は、センサ151で検出した信号を基に、第2の磁石146Mの磁力を変化させるので、第1の磁石145Mと第2の磁石146Mとが離れた場合でも、第1の係合ベーン141および第2の係合ベーン142で第1の係合ローラ147および第2の係合ローラ148を挟む力を安定して維持することができる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
10…ドア装置、11…籠ドア装置、114…籠ドアパネル、12…乗場ドア装置、124…乗場ドアパネル、13…ロック機構、131…フック、132…受部、14…係合装置、141…第1の係合ベーン、142…第2の係合ベーン、143…カムレール、144…カムローラ、145…第1のブラケット、145A…ステム、145B…係合突起、145E…外溝、145M…第1の磁石、146…第2のブラケット、146A…装着孔、146B…把持部(締り嵌め部分)、146C…絞り部、146E…内溝、146F…変形部。146M…第2の磁石、151…センサ、147…第1の係合ローラ、148…第2の係合ローラ、149…平行リンク、G…Oリング、101…乗籠、102…乗場、100…エレベータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗籠に設置された籠ドア装置と、各階に設置された乗場ドア装置と、前記乗場ドア装置の乗場ドアパネルを閉じた状態に保持するロック機構と、乗籠が着床した階の前記乗場ドア装置に前記籠ドア装置を連結する係合装置とを備え、
前記係合装置は、
籠ドア装置の籠ドアパネルに固定された第1の係合ベーンと、
前記第1の係合ベーンに対して平行リンクで連結され移動する第2の係合ベーンと、
前記籠ドアパネルを吊下げるハンガーレールに沿って取り付けられるカムレールと、
前記カムレールに転接するカムローラと、
前記カムローラを支持する第1のブラケットと、
前記第2の係合ベーンに固定されて前記第1のブラケットを保持し前記第2の係合ベーンに設定された移動量を超える変位を前記カムレールから前記カムローラが受けた場合に前記第1のブラケットを放す第2のブラケットと
を備えることを特徴とするドア装置。
【請求項2】
前記第1のブラケットは、柱状のステムを有し、
前記第2のブラケットは、前記ステムに対して締り嵌めで外嵌する
ことを特徴とする請求項1に記載のドア装置。
【請求項3】
前記第1のブラケットは、外周に係止突起が形成された柱状のステムを有し、
前記第2のブラケットは、前記ステムに外嵌する内周面に前記係止突起の外径よりも小さい内径に形成された絞り部を有し、
前記絞り部は、前記カムレールから離れる方向に前記カムローラが変位するのを抑制し、前記第2の係合ベーンに設定された移動量を超える変位を前記カムレールから前記カムローラが受けた場合に前記係止突起を通過させる
ことを特徴とする請求項1に記載のドア装置。
【請求項4】
前記第1のブラケットは、外周に環状の外溝が形成された柱状のステムを有し、
前記第2のブラケットは、前記ステムに外嵌し前記外溝に対応する内周面に形成された環状の内溝を有し、
前記外溝と前記内溝にまたがって装着されるOリングをさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載のドア装置。
【請求項5】
前記第1のブラケットは、外周に環状の外溝が形成された柱状のステムを有し、
前記第2のブラケットは、前記ステムに外嵌し前記外溝に入り込んで前記第1のブラケットを保持する変形部を有し、
前記変形部は、前記第2の係合ベーンに設定された移動量を超える変位を前記カムレールから前記カムローラが受けた場合に前記外溝から外れる
ことを特徴とする請求項1に記載のドア装置。
【請求項6】
前記第1のブラケットは、端部に第1の磁石が取り付けられた柱状のステムを有し、
前記第2のブラケットは、前記ステムに外嵌し前記第1の磁石に対峙する部位に前記第1の磁石と引き合う磁極が形成された第2の磁石を有し、
前記第1の磁石が前記第2の磁石に吸着されることで前記第1のブラケットが前記第2のブラケットに保持され、前記第2の係合ベーンに設定された移動量を超える変位を前記カムレールから前記カムローラが受けた場合に前記第1の磁石が前記第2の磁石から外れる
ことを特徴とする請求項1に記載のドア装置。
【請求項7】
前記第2の磁石は、コイルによって構成される
ことを特徴とする請求項6に記載のドア装置。
【請求項8】
前記第2のブラケットは、前記第2の係合ベーンに連結された部分の近傍に歪を検出するセンサを有し、
前記センサで検出された信号を受信し、前記信号を基に前記コイルに流す電流を制御する制御装置を備える
ことを特徴とする請求項7に記載のドア装置。
【請求項9】
前記ロック機構は、
前記乗場ドアパネルに回動自在に取り付けられたフックと、
前記乗場ドアパネルが閉じられた状態で前記フックと係合する受部と、
を有し、
前記係合装置は、
前記フックの回動中心と同軸に設けられ前記乗籠がいずれかの階に着床した状態で前記第1のベーンおよび前記第2のベーンの間に配置される第1の係合ローラと、
前記フックに取り付けられ前記乗籠がいずれかの階に着床した状態で前記第1のベーンおよび前記第2のベーンの間に配置される第2の係合ローラと、
をさらに備え、
前記第1の係合ローラおよび前記第2の係合ローラを前記第1のベーンおよび前記第2のベーンで挟んだ状態で前記カムレールから前記カムローラが変位を受けた場合に前記第2のブラケットが前記第1のブラケットを放す
ことを特徴とする請求項1に記載のドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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