説明

エレベータのボタン装置

【課題】エレベータの乗場又はかごの操作盤等に設けられ、階床表示のための数字等の文字が印字された階床毎のボタンを安価に製作できるエレベータのボタン装置を得る。
【解決手段】ボタン1の表面を押すことにより指定階をエレベータ制御部に電気的に伝送するものにおいて、スイッチ3と、スイッチの壁側とは反対側の一端面上に設けられたアクチュエーター4と、アクチュエーターの壁側とは反対側の一端面上に設けられた透明材料からなるボタンキャップ5とを備え、アクチュエーター4の表面にインク層を設け、このインク層にレーザーを照射し、不要なインク層を除去することにより、指定階の階床文字を成形し、成形された階床文字の表面上にボタンキャップ5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの乗場又はかご操作盤に設けられ、階床表示のための数字等の文字が印字されたエレベータのボタン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータのボタン装置としては、例えば、図7〜図9に示すような構造のものがあった。
図において、エレベータの乗場又はかごの操作盤等の取付壁に設けられたボタン11は、取付壁に取り付けられるハウジング12と、このハウジング12内に設けられたスイッチ13と、ハウジング12の前面側に設けられたアクチュエーター14と、このアクチュエーター14の前面開口部を覆うように設けられ、前面開口部の内周縁に形成された段差14aを利用して貼り付けられた文字板15と、この文字板15の前面部及びアクチュエーター14の前面開口部の外周側部をそれぞれ覆うように設けられた透明材料からなる断面コ字状のボタンキャップ16とから構成されている。そして、上記文字板15は階床毎に版下を設け、文字板15の表面に階床表示のための数字等の文字をシルク印刷して製作している。また、文字板15をアクチュエーター14に貼り付ける際、ボタン11の照光面積を広範囲に確保するため、アクチュエーター14上の文字板15を貼り付ける段差14aの面積は最小限のものでしかない。
また、他の従来技術としては、薄形で組立て性が良く、低コストのエレベータ用タッチボタン装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−178657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエレベータのボタン装置では、文字板15の表面に階床表示のための数字等の文字をシルク印刷して製作しているので、製作のためのイニシャルコストが嵩むという問題があった。また、文字板15をアクチュエーター14に貼り付ける際、ボタン11の照光面積を広範囲に確保するため、アクチュエーター14上の文字板15を貼り付ける段差14aの面積は最小限のものでしかないので、接着強度を確保するために貼り付け作業に時間がかかっていた。また、文字板15をアクチュエーター14に貼る際に文字のセンター合わせをする必要があり、面倒な作業となり、貼り付け作業に時間がかかっていた。更に、文字板15の端面からの光漏れを防ぐために、アクチュエーター14には段差14aを設けているが、この段差14aがボタン11の厚さを大きくする要因となっていた。
また、特許文献1記載のものでは、透光性シートの裏面に階床表示のための数字等の文字或いは記号からなる表示図形が印刷によって設けられているので、上記従来のボタン装置と同様の問題があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、エレベータの乗場又はかごの操作盤等に設けられ、階床表示のための数字等の文字が印字された階床毎のボタンを安価に製作できるエレベータのボタン装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータのボタン装置は、ボタンの表面を押すことにより指定階をエレベータ制御部に電気的に伝送するものにおいて、スイッチと、スイッチの壁側とは反対側の一端面上に設けられたアクチュエーターと、アクチュエーターの壁側とは反対側の一端面上に設けられた透明材料からなるボタンキャップとを備え、アクチュエーターの表面にインク層を設け、このインク層にレーザーを照射し、不要なインク層を除去することにより、指定階の階床文字を成形し、成形された階床文字の表面上にボタンキャップを設けたものである。
【0007】
また、ボタンキャップの裏面にインク層を設け、このインク層にレーザーを照射し、不要なインク層を除去することにより、指定階の階床文字を成形し、ボタンキャップ、指定階の階床文字、アクチュエーター、スイッチの順に階層的に構成されたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、階床毎に文字板の版下を設けなくても良いので、イニシャルコストを低減することができる。また、文字板機能がボタンキャップ又はアクチュエーターに集約されるため、部品点数を削減することができ、文字板の貼り付け作業が不要となるため、更なるコスト削減が可能となる。また、薄型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータのボタン装置を示す底面図、図2はこの発明の実施の形態1におけるエレベータのボタン装置のボタンキャップを示す正面図、図3は図2のA−A線に沿ったボタンキャップの断面図である。
図において、エレベータの乗場又はかごの操作盤等の取付壁に設けられたボタン1は、取付壁に取り付けられるハウジング2と、このハウジング2内に設けられたスイッチ3と、ハウジング2の前面側に設けられたアクチュエーター4と、このアクチュエーター4の前面中央の矩形突出部を覆うように設けられた透明樹脂材料からなる断面コ字状のボタンキャップ5とから構成されている。そして、上記透明樹脂材料からなるボタンキャップ5は、図2、図3に示すように、その裏面全面にインク層5aによる図柄等をインモールド成形しておき、インク層5aにレーザーを照射して、不要なインク層を除去することにより、階床表示のための数字等の階床文字部5bをボタンキャップ5裏面にレーザーマーキングするものである。
【0010】
この実施の形態1によれば、上記のような構造を採用することで、従来のように階床毎に文字板の版下を設けなくても良いので、イニシャルコストを低減することができる。また、文字板機能がボタンキャップ5に集約されるため、部品点数を削減することができ、文字板の貼り付け作業が不要となるため、更なるコスト削減が可能となる。また、従来では文字板端面からの光漏れ対策のために、アクチュエーターに段差を設けなくてはならず、段差分だけボタン構造が厚くなっていたが、インモールド成形でボタンキャップの裏面全面を図柄等で覆うため、段差が不要となり、薄型化を図ることができる。また、段差が無いので、意匠性も向上できる。
【0011】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2におけるエレベータのボタン装置を示す底面図、図5はこの発明の実施の形態2におけるエレベータのボタン装置のアクチュエーターを示す正面図、図6は図5のB−B線に沿ったアクチュエーターの断面図である。
図において、エレベータの乗場又はかごの操作盤等の取付壁に設けられたボタン1は、取付壁に取り付けられるハウジング2と、このハウジング2内に設けられたスイッチ3と、ハウジング2の前面側に設けられたアクチュエーター4と、このアクチュエーター4の前面中央の矩形突出部を覆うように設けられた透明樹脂材料からなる断面コ字状のボタンキャップ5とから構成されている。そして、上記アクチュエーター4は、図5、図6に示すように、その前面中央の矩形突出部の表面全面にインク層4aによる図柄等をインモールド成形しておき、インク層4aにレーザーを照射して、不要なインク層を除去することにより、階床表示のための数字等の階床文字部4bをアクチュエーター4表面にレーザーマーキングするものである。
【0012】
この実施の形態2によれば、上記のような構造を採用することで、従来のように階床毎に文字板の版下を設けなくても良いので、イニシャルコストを低減することができる。また、文字板機能がアクチュエーター4に集約されるため、部品点数を削減することができ、文字板の貼り付け作業が不要となるため、更なるコスト削減が可能となる。また、従来では文字板端面からの光漏れ対策のために、アクチュエーターに段差を設けなくてはならず、段差分だけボタン構造が厚くなっていたが、インモールド成形でアクチュエーターの表面全面を図柄等で覆うため、段差が不要となり、薄型化を図ることができる。また、段差が無いので、意匠性も向上できる。
【0013】
実施の形態3.
上記実施の形態1、2では、ボタンキャップ5又はアクチュエーター4に、インク層5a又は4aによる図柄等をインモールド成形しておき、インク層5a又は4aにレーザーを照射して、不要なインク層を除去することにより、階床表示のための数字等の階床文字部5b又は4bをボタンキャップ5裏面又はアクチュエーター4表面にレーザーマーキングするものとしているが、この実施の形態3は、インモールド成形の代わりに、ボタンキャップ5又はアクチュエーター4をレーザーマーキングで変色する樹脂材料で構成するものである。そして、ボタンキャップ5裏面又はアクチュエーター4表面の階床表示のための数字等の階床文字部にレーザーを照射して、照射部分のみを変色させることにより、2色の色分けによって階床文字部を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータのボタン装置を示す底面図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエレベータのボタン装置のボタンキャップを示す正面図である。
【図3】図2のA−A線に沿ったボタンキャップの断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2におけるエレベータのボタン装置を示す底面図である。
【図5】この発明の実施の形態2におけるエレベータのボタン装置のアクチュエーターを示す正面図である。
【図6】図5のB−B線に沿ったアクチュエーターの断面図である。
【図7】従来のエレベータのボタン装置を示す正面図である。
【図8】従来のエレベータのボタン装置を示す底面図である。
【図9】従来のボタン装置の一部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 ボタン
2 ハウジング
3 スイッチ
4 アクチュエーター
5 ボタンキャップ
4a、5a インク層
4b、5b 階床文字部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボタンの表面を押すことにより指定階をエレベータ制御部に電気的に伝送するエレベータのボタン装置において、
スイッチと、
前記スイッチの壁側とは反対側の一端面上に設けられたアクチュエーターと、
前記アクチュエーターの壁側とは反対側の一端面上に設けられた透明材料からなるボタンキャップとを備え、
前記アクチュエーターの表面にインク層を設け、このインク層にレーザーを照射し、不要なインク層を除去することにより、前記指定階の階床文字を成形し、成形された階床文字の表面上に前記ボタンキャップを設けたことを特徴とするエレベータのボタン装置。
【請求項2】
ボタンの表面を押すことにより指定階をエレベータ制御部に電気的に伝送するエレベータのボタン装置において、
スイッチと、
前記スイッチの壁側とは反対側の一端面上に設けられたアクチュエーターと、
前記アクチュエーターの壁側とは反対側の一端面上に設けられた透明材料からなるボタンキャップとを備え、
前記ボタンキャップの裏面にインク層を設け、このインク層にレーザーを照射し、不要なインク層を除去することにより、前記指定階の階床文字を成形し、ボタンキャップ、指定階の階床文字、アクチュエーター、スイッチの順に階層的に構成されたことを特徴とするエレベータのボタン装置。
【請求項3】
ボタンの表面を押すことにより指定階をエレベータ制御部に電気的に伝送するエレベータのボタン装置において、
スイッチと、
前記スイッチの壁側とは反対側の一端面上に設けられたアクチュエーターと、
前記アクチュエーターの壁側とは反対側の一端面上に設けられた透明材料からなるボタンキャップとを備え、
前記アクチュエーターをレーザーマーキングで変色する樹脂材料で構成するとともに、前記アクチュエーターの表面にレーザーを照射して、照射部分のみを変色させることにより前記指定階の階床文字を形成し、この階床文字の表面上に前記ボタンキャップを設けたことを特徴とするエレベータのボタン装置。
【請求項4】
ボタンの表面を押すことにより指定階をエレベータ制御部に電気的に伝送するエレベータのボタン装置において、
スイッチと、
前記スイッチの壁側とは反対側の一端面上に設けられたアクチュエーターと、
前記アクチュエーターの壁側とは反対側の一端面上に設けられた透明材料からなるボタンキャップとを備え、
前記ボタンキャップをレーザーマーキングで変色する樹脂材料で構成するとともに、ボタンキャップの裏面にレーザーを照射して、照射部分のみを変色させることにより前記指定階の階床文字を形成し、ボタンキャップ、指定階の階床文字、アクチュエーター、スイッチの順に階層的に構成されたことを特徴とするエレベータのボタン装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−137542(P2006−137542A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328559(P2004−328559)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】