説明

エレベータの安全装置

【課題】簡素かつ省スペースな構成で、容易に非常止め装置の動作後の復帰を行うことができるエレベータの安全装置を得る。
【解決手段】昇降体に設けられ、連結軸11周りの回転によって昇降体に対する制動力を発生する非常止め装置1と、昇降体に設けられ、非常止め装置1を復帰させるためのトルクを発生するアシストモータ2と、アシストモータ2が発生したトルクを連結軸11に伝達する連結軸側ギア31およびモータ側ギア32とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロープ式エレベータにおいて用いられるエレベータの安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロープ式エレベータにおいて、非常止め装置の動作後に非常止め装置を復帰させる場合に、巻上機のトルクでかごを吊り上げることにより、非常止め装置を復帰させる方法が知られている。
【0003】
また、かごを停止させる停止装置を駆動する作動レバーの回動に伴って、保持手段から離脱した連動体を、復帰手段によって保持手段が保持する所定の状態に復帰させるエレベータの非常止め装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、強い摩擦力を発生させることによりエレベータを制動する非常止め装置と、非常止め装置を動作させる駆動部と、エレベータの移動速度が危険速度に達した場合に駆動部を解放させるカムラッチ機構と、カムラッチ機構を作動させる調速機と、昇降路に設けられた解除カムと係合して非常止め装置の解除動作を行うための解除アームとを備えたエレベータの安全装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−144389号公報
【特許文献2】特開2004−99330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
巻上機のトルクでかごを吊り上げることにより、非常止め装置を復帰させる場合には、巻上機の必要トルクが大きくなるので、巻上機のサイズが大きくなるという問題がある。
【0007】
また、特許文献1に記載されたエレベータの非常止め装置では、かごの停止位置が、保守員がアクセスできない位置である場合には、保守員が復帰作業を行うことができないという問題がある。
また、特許文献2に記載されたエレベータの安全装置では、非常止め装置を解除するための機構が複雑になるという問題がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡素かつ省スペースな構成で、容易に非常止め装置の動作後の復帰を行うことができるエレベータの安全装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るエレベータの安全装置は、昇降体に設けられ、作動軸周りの回転によって昇降体に対する制動力を発生する非常止め装置と、昇降体に設けられ、非常止め装置を復帰させるためのトルクを発生するアシストモータと、アシストモータが発生したトルクを作動軸に伝達する動力伝達手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るエレベータの安全装置によれば、昇降体に設けられ、作動軸周りの回転によって昇降体に対する制動力を発生する非常止め装置と、昇降体に設けられ、非常止め装置を復帰させるためのトルクを発生するアシストモータと、アシストモータが発生したトルクを作動軸に伝達する動力伝達手段と、を備えている。
そのため、簡素かつ省スペースな構成で、容易に非常止め装置の動作後の復帰を行うことができるエレベータの安全装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)〜(c)は、この発明の実施の形態1に係るエレベータの安全装置を示す平面図、左側面図および正面図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係るエレベータの安全装置を示す側面図である。
【図3】(a)、(b)は、この発明の実施の形態3に係るエレベータの安全装置の連結軸側ギアを抜粋して示す正面図および側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明に係るエレベータの安全装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1(a)〜(c)は、それぞれこの発明の実施の形態1に係るエレベータの安全装置を示す平面図、左側面図および正面図である。図1(a)〜(c)において、エレベータの安全装置は、非常止め装置1、アシストモータ2、並びに連結軸側ギア31(第1ギア)およびモータ側ギア32(第2ギア)から構成されている。
【0014】
非常止め装置1は、かごまたは釣り合い錘である昇降体を案内するガイドレール4に対応して昇降体の両側に設けられており、それぞれの非常止め装置1を互いに連結する連結軸11(作動軸)の軸周りの回転によって昇降体に対する制動力を発生する。
【0015】
また、非常止め装置1は、連結軸11の端部に取り付けられたレバー12と、レバー12に取り付けられ、調速機(図示せず)と連動する引き上げ棒13と、レバー12の連結軸11と反対側に取り付けられたコロ14とを有している。
【0016】
ここで、非常止め装置1の動作について説明する。まず、かごの異常増速を調速機が検出すると、調速機と連動する引き上げ棒13が引き上がる。続いて、引き上げ棒13の引き上がりに伴い、レバー12が連結軸11を支点として上方に回転する。このとき、レバー12が上方に回転することにより、コロ14がガイドレール4を噛み込むことで、かごが停止される。
【0017】
アシストモータ2は、支持部材を介して昇降体に取り付けられ、動作した非常止め装置1を復帰させるためのトルクを発生する。連結軸側ギア31は、連結軸11に取り付けられ、モータ側ギア32は、アシストモータ2の回転軸に取り付けられ、連結軸側ギア31と噛合している。ここで、連結軸側ギア31およびモータ側ギア32によって、アシストモータ2が発生したトルクを連結軸11に伝達する動力伝達手段が構成されている。
【0018】
この動力伝達手段により、非常止め装置1の動作後に非常止め装置1を復帰させる際、巻上機(図示せず)によるトルクを連結軸11に作用させる場合に、エレベータの制御盤(図示せず)からアシストモータ2を動作させ、巻上機によるトルクにアシストモータ2の回転トルクを付加することにより、連結軸11の回転トルクを補助する。なお、エレベータの制御盤には、管理室に設けられた遠隔制御装置から指令が伝達される。
【0019】
このような構成とすることにより、非常止め装置1の動作後に非常止め装置1を復帰させる際、アシストモータ2から所定のトルクが連結軸11に付加されて回転トルクが補助されるので、従来のものよりも少ない巻上機のトルクで連結軸11を回転させることが可能となり、巻上機に必要なトルクを小さくすることができる。
【0020】
以上のように、実施の形態1によれば、このエレベータの安全装置は、昇降体に設けられ、作動軸周りの回転によって昇降体に対する制動力を発生する非常止め装置と、昇降体に設けられ、非常止め装置を復帰させるためのトルクを発生するアシストモータと、アシストモータが発生したトルクを作動軸に伝達する動力伝達手段と、を備えている。これにより、巻上機の必要トルクを抑えながら、作動軸を回転させることができる。
そのため、簡素かつ省スペースな構成で、容易に非常止め装置の動作後の復帰を行うことができるエレベータの安全装置を得ることができる。
【0021】
また、遠隔制御装置からエレベータの制御盤を介してアシストモータ2に指令を出すことにより、遠隔操作が可能となる。また、取り付けが簡単なので、非常止め装置の復帰アシスト機能の後付けも可能である。
さらに、昇降体の通常走行時、アシストモータ2の電力を遮断している場合には、アシストモータ2の回転軸に抵抗が生じる。そのため、かごの振動等によって発生するレバー12の振れを抑制することができ、非常止め装置1の誤動作を防止することができる。
【0022】
なお、上記実施の形態1では、動力伝達手段としてギアを例に挙げて説明したが、これに限定されず、動力伝達手段は、連結軸11とアシストモータ2の回転軸とを繋ぐベルトであってもよい。
この場合も、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0023】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2に係るエレベータの安全装置を示す側面図である。図2において、アシストモータ2の回転軸に取り付けられたモータ側ギア33(第2ギア)の歯数は、連結軸11に取り付けられた連結軸側ギア31の歯数よりも少なくされている。
【0024】
なお、その他の構成は、上述した実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
このように、モータ側ギア33の歯数を連結軸側ギア31の歯数よりも少なくすることにより、アシストモータ2が発生したトルクを増大させて連結軸11に伝達することができる。
【0025】
以上のように、実施の形態2によれば、第2ギアの歯数は、第1ギアの歯数よりも少なくされている。これにより、アシストモータが発生したトルクを増大させて作動軸に伝達することができる。
そのため、アシストモータの容量を小さくすることができる。
【0026】
実施の形態3.
図3(a)、(b)は、この発明の実施の形態3に係るエレベータの安全装置の連結軸側ギア34(第1ギア)を抜粋して示す正面図および側面図である。図3(a)、(b)において、連結軸側ギア34は、ギア部材34a、34bをボルトセット35で締結した構造を有している。
【0027】
連結軸側ギア34をこのような構造としたことで、連結軸11をギア部材34a、34bで挟み込み、ギア部材34a、34bをボルトセット35で締結することにより、連結軸11に特殊な加工を施すことなく、後からでも容易に連結軸11に連結軸側ギア34を取り付けることができる。
【0028】
以上のように、実施の形態3によれば、第1ギアは、少なくとも2つのギア部材から構成されている。これにより、第1ギアを作動軸に容易に取り付けることができる。
そのため、既存のエレベータについて、非常止め装置の復帰アシスト機能を容易に追加することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 非常止め装置、2 アシストモータ、4 ガイドレール、11 連結軸、12 レバー、13 引き上げ棒、14 コロ、31、34 連結軸側ギア、32、33 モータ側ギア、34a、34b ギア部材、35 ボルトセット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降体に設けられ、作動軸周りの回転によって前記昇降体に対する制動力を発生する非常止め装置と、
前記昇降体に設けられ、前記非常止め装置を復帰させるためのトルクを発生するアシストモータと、
前記アシストモータが発生したトルクを前記作動軸に伝達する動力伝達手段と、
を備えたことを特徴とするエレベータの安全装置。
【請求項2】
前記動力伝達手段は、
前記連結軸に設けられた第1ギアと、
前記アシストモータに設けられ、前記第1ギアと噛合する第2ギアと、
を有することを特徴とする請求項1に記載のエレベータの安全装置。
【請求項3】
前記第2ギアの歯数は、前記第1ギアの歯数よりも少ないことを特徴とする請求項2に記載のエレベータの安全装置。
【請求項4】
前記第1ギアは、少なくとも2つのギア部材から構成されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のエレベータの安全装置。
【請求項5】
前記アシストモータは、遠隔制御装置からの指令によって遠隔操作されることを特徴とする請求項1から請求項4までの何れか1項に記載のエレベータの安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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