説明

エレベータの戸の脚

【課題】本発明は、戸の脚本体をより長い期間交換せずに使用することができ、経済的に優れているとともに、環境にも良いエレベータの戸の脚を得ることを目的とするものである。
【解決手段】戸の脚本体11は、取付金具19と、取付金具19の下部に固定され、敷居溝に挿入された摺動部材20とを有している。取付金具19の下部は、摺動部材20に埋設された埋設部19aである。取付金具19の埋設部19aの表面及び裏面と摺動部材20との間には、隙間21が設けられている。摺動部材20が敷居溝10aの壁面との摩擦により摩耗すると、必要枚数のスペーサ板22が隙間21に挿入される。スペーサ板22は、隙間21に押し込まれることにより、隙間21を拡げて摺動部材20の幅寸法を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、かごドアや乗場ドアの下端部に取り付けられ、敷居溝に挿入されるエレベータの戸の脚に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの戸の脚は、ドアパネルの下端部に固定された補強枠に複数本のボルトにより固定されている。また、戸の脚は、エレベータドアの開閉時に敷居溝内を摺動される。このため、戸の脚の両側面は、敷居溝の壁面との摩擦により経年的に摩耗する。そして、摩耗がある程度以上進むと、戸の脚は新品と交換される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−143611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のエレベータの戸の脚は、摩耗が進むとすぐに新品と交換され廃棄されるため、経済的ではなかった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、戸の脚本体をより長い期間交換せずに使用することができ、経済的に優れているとともに、環境にも良いエレベータの戸の脚を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータの戸の脚は、エレベータドアの下端部に取り付けられる取付金具と、取付金具に固定され、敷居溝に挿入される摺動部材とを有し、取付金具と摺動部材との間に隙間が設けられている戸の脚本体、及び隙間に押し込まれることにより、隙間を拡げて摺動部材の幅寸法を大きくするスペーサ板を備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明のエレベータの戸の脚は、摺動部材がある程度摩耗したら、取付金具と摺動部材との間の隙間にスペーサ板を押し込み、摺動部材の幅寸法を大きくすることができるので、戸の脚本体をより長い期間交換せずに使用することができ、経済的に優れているとともに、環境にも良い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1によるエレベータのかごを示す斜視図である。
【図2】図1の戸の脚本体を示す正面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図2の戸の脚本体を示す斜視図である。
【図5】図4の戸の脚本体を示す平面図である。
【図6】図5の摺動部材の側面が摩耗した状態を示す平面図である。
【図7】図6の戸の脚本体の隙間にスペーサ板を挿入する様子を示す斜視図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】図7のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】図7のスペーサ板を示す斜視図である。
【図11】図8のXI−XI線に沿う断面図である。
【図12】図11のスペーサ板の挿入途中の様子を示す断面図である。
【図13】図12の戸の脚本体にスペーサ板を追加挿入する様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるエレベータのかごを示す斜視図である。図において、かご枠1には、かご室2が支持されている。かご室2の前面には、かご出入口が設けられている。かご出入口は、エレベータドアである第1及び第2のかごドア3,4により開閉される。
【0010】
かご室2の前面の上部には、桁5が固定されている。桁5には、第1のかごドア3の開閉を案内する第1のドアレール6と、第2のかごドア4の開閉を案内する第2のドアレール7が固定されている。各かごドア3,4の上端部には、ドアハンガ8が固定されている。各ドアハンガ8には、ドアレール6,7上を転動する複数のハンガローラ9が設けられている。
【0011】
第1及び第2のかごドア3,4は、第1及び第2のドアレール6,7から吊り下げられている。また、第1及び第2のかごドア3,4は、かご室2の上部に設けられたドアモータ(図示せず)の駆動力により開閉動作される。
【0012】
かご室2の前面の下部には、かご敷居10が固定されている。かご敷居10は、かごドア3,4の下端部の開閉方向への移動を案内するとともに、かごドア3,4の下端部の振れを防止する。また、かご敷居10の上面には、かごドア3,4の開閉方向に沿って2本の敷居溝10aが設けられている。
【0013】
かごドア3,4の下端部には、複数の戸の脚本体11がかごドア3,4の幅方向に間隔をおいて取り付けられている。各戸の脚本体11の下端部は、敷居溝10aに挿入されている。
【0014】
また、かご室2の前面のかご敷居10の下部には、エプロン12が固定されている。さらに、かご枠1の下部には、一対のかご吊り車13が設けられている。かご吊り車13には、かごを吊る複数本の懸架手段14が巻き掛けられている。懸架手段14としては、ロープ又はベルトが用いられる。
【0015】
図2は図1の戸の脚本体11を示す正面図、図3は図2のIII−III線に沿う断面図である。各かごドア3,4は、ドアパネル15と、ドアパネル15の下端部に固定された補強材であるドア下端枠16とを有している。各戸の脚本体11は、ドア下端枠16に固定された取付座17に複数本(ここでは2本)の脚取付ボルト18で固定されている。取付座17には、脚取付ボルト18が螺着されるねじ穴が設けられている。
【0016】
戸の脚本体11は、取付座17に固定された金属製で平板状の取付金具19と、取付金具19の下部に固定され、敷居溝10aに挿入された樹脂製の摺動部材20とを有している。摺動部材20は、かごドア3,4の開閉動作時に敷居溝10a内を摺動される。
【0017】
取付金具19の下部は、摺動部材20に埋設された埋設部19aである。また、取付金具19の上端部近傍には、戸の脚取付ボルト18が貫通する複数の長孔19bが設けられており、かごドア3,4の幅方向への戸の脚本体11の取付位置の微調整が可能になっている。さらに、取付金具19の中央部には、スペーサ固定ねじ挿通孔19cが設けられている。
【0018】
図4は図2の戸の脚本体11を示す斜視図、図5は図4の戸の脚本体11を示す平面図である。摺動部材20の長さ方向(摺動方向:図2の左右方向)の両端部では、幅方向(長さ方向及び高さ方向に直角な方向:図3の左右方向)の寸法が徐々に小さくされている。即ち、摺動部材20の外形は船形である。
【0019】
取付金具19の埋設部19aの表面及び裏面と摺動部材20との間には、所定の厚さの平板状の隙間21が設けられている。この例では、隙間21は、摺動部材20の高さ方向全体に渡って連続して設けられている。即ち、隙間21は、摺動部材20を上下方向に貫通している。
【0020】
埋設部19aは、その幅方向(図2の左右方向)の両端部のみで摺動部材20に接着され固定されている。そして、隙間21は、埋設部19aの幅方向の中央部と摺動部材20との間に設けられている。即ち、埋設部19aは、隙間21の幅寸法gの範囲では摺動部材20に接着されておらず、その他の領域で摺動部材20に接着されている。
【0021】
図6は図5の摺動部材20の側面が摩耗した状態を示す平面図である。摺動部材20は、敷居溝10aの壁面との摩擦により、図6に示すように経年的に摩耗する。これにより、摺動部材20の幅寸法が減少し、敷居溝10aと摺動部材20との間の隙間が大きくなってしまう。
【0022】
このような場合、この実施の形態1の戸の脚では、図7に示すように、T字形の平板であるスペーサ板22が必要な枚数だけ隙間21に挿入される。スペーサ板22は、隙間21に押し込まれることにより、隙間21を拡げて摺動部材20の幅寸法を大きくする。
【0023】
図7は図6の戸の脚本体11の隙間21にスペーサ板22を挿入する様子を示す斜視図、図8は図7のVIII−VIII線に沿う断面図、図9は図7のIX−IX線に沿う断面図、図10は図7のスペーサ板22を示す斜視図、図11は図8のXI−XI線に沿う断面図、図12は図11のスペーサ板22の挿入途中の様子を示す断面図、図13は図12の戸の脚本体11にスペーサ板22を追加挿入する様子を示す断面図である。
【0024】
スペーサ板22の下端部は、隙間21への挿入を容易にするために刃状に尖っている。即ち、スペーサ板22の一方の面の下端部が他方の面に対して刃状に傾斜されている。また、スペーサ板22には、スペーサ板22を取付金具19に固定するためのスペーサ固定ねじ23を通すスペーサ固定ねじ挿通孔22aが設けられている。スペーサ板22のスペーサ固定ねじ挿通孔22aと取付金具19のスペーサ固定ねじ挿通孔19cとにスペーサ固定ねじ23を通し、スペーサ固定ねじ23にナット24を締め込むことにより、スペーサ板22は取付金具19に固定される。
【0025】
さらに、スペーサ板22には、摺動部材20の上面に当接して隙間21への挿入方向へのスペーサ板22の移動を規制する一対の肩部22bが設けられている。
【0026】
このようなエレベータの戸の脚では、戸の脚本体11が新品のときには、戸の脚本体11のみがかごドア3,4に取り付けられる。そして、摩耗により摺動部材20の幅が狭くなったら、スペーサ板22を隙間21に必要枚数だけ差し込むことにより、摺動部材20の幅を初期の寸法又はそれに近い寸法に戻す。これにより、摺動部材20が摩耗しても戸の脚本体11を継続して使用することができる。
【0027】
従って、戸の脚本体11をより長い期間交換せずに使用することができ、経済的に優れている。また、廃棄物を少なくすることができるので、環境にも良い。
【0028】
さらに、スペーサ板22の下端部が刃状に尖っているので、スペーサ板22の挿入を容易にすることができる。
さらにまた、取付金具19及びスペーサ板22には、スペーサ固定ねじ挿通孔19c,22aが設けられているので、簡単な構成によりスペーサ板22を取付金具19に固定することができる。
また、スペーサ板22に肩部22bを設けたので、挿入方向へのスペーサ板22の位置決めが容易であるとともに、スペーサ板22の脱落を防止することができる。
【0029】
なお、敷居溝10aの幅寸法によっては、新品時からスペーサ板22を隙間21に挿入しておき、摺動部材20の摩耗時にはスペーサ板22をさらに追加するようにしてもよい。
また、スペーサ板22の挿入枚数は、取付金具19の表側と裏側とで必ずしも同じでなくてもよく、摺動部材20の摩耗状態に応じて適宜枚数を決めればよい。
さらに、上記の例では、スペーサ板22の枚数で摺動部材20の幅寸法を調整したが、厚さの異なる複数種類のスペーサ板22を容易しておき、スペーサ板22の厚さを選択することで摺動部材20の幅寸法を調整してもよい。
さらにまた、上記の例では、かごドア3,4の戸の脚について説明したが、エレベータドアである乗場ドアに取り付けられる戸の脚にもこの発明は適用できる。
また、上記の例では、片開き式のドア装置を示したが、中央開き式のドア装置にもこの発明は適用できる。
【符号の説明】
【0030】
3 第1のかごドア(エレベータドア)、4 第2のかごドア(エレベータドア)、10 かご敷居、10a 敷居溝、11 戸の脚本体、19 取付金具、19a 埋設部、19c スペーサ固定ねじ挿通孔、20 摺動部材、21 隙間、22 スペーサ板、22a スペーサ固定ねじ挿通孔、22b 肩部、23 スペーサ固定ねじ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータドアの下端部に取り付けられる取付金具と、前記取付金具に固定され、敷居溝に挿入される摺動部材とを有し、前記取付金具と前記摺動部材との間に隙間が設けられている戸の脚本体、及び
前記隙間に押し込まれることにより、前記隙間を拡げて前記摺動部材の幅寸法を大きくするスペーサ板
を備えていることを特徴とするエレベータの戸の脚。
【請求項2】
前記取付金具は、前記摺動部材に埋設された平板状の埋設部を有し、
前記埋設部は、その幅方向両端部で前記摺動部材に接着されており、
前記隙間は、前記埋設部の幅方向の中央部と前記摺動部材との間に設けられていることを特徴とする請求項1記載のエレベータの戸の脚。
【請求項3】
前記スペーサ板の下端部は、刃状に尖っていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータの戸の脚。
【請求項4】
前記取付金具及び前記スペーサ板には、前記スペーサ板を前記取付金具に固定するためのスペーサ固定ねじを通すスペーサ固定ねじ挿通孔が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のエレベータの戸の脚。
【請求項5】
前記スペーサ板には、前記摺動部材の上面に当接して前記隙間への挿入方向への前記スペーサ板の移動を規制する肩部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のエレベータの戸の脚。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−1307(P2012−1307A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137542(P2010−137542)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】