エレベータの避難運転システム
【課題】 火災発生時に建物内に取り残された人を効率的、且つ速やかに救出可能なエレベータの避難運転システムを提供する。
【解決手段】 実施形態によるエレベータの避難運転システムは、検出手段(2-1〜2-z)と、荷重検出手段(11)と、制御手段(32)とを有している。検出手段(2-1〜2-z)は、各階のホール又は昇降路内に設置され、火災発生を検出する。荷重検出手段(11)は、火災発生時に通常時のかごの積載荷重の許容範囲より高い積載荷重を検出する。制御手段(32)は、検出手段から検出信号が供給された場合、荷重検出手段の検出信号に基づき、通常の乗車人数よりも多くの利用者を乗車させる。
【解決手段】 実施形態によるエレベータの避難運転システムは、検出手段(2-1〜2-z)と、荷重検出手段(11)と、制御手段(32)とを有している。検出手段(2-1〜2-z)は、各階のホール又は昇降路内に設置され、火災発生を検出する。荷重検出手段(11)は、火災発生時に通常時のかごの積載荷重の許容範囲より高い積載荷重を検出する。制御手段(32)は、検出手段から検出信号が供給された場合、荷重検出手段の検出信号に基づき、通常の乗車人数よりも多くの利用者を乗車させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、火災発生時におけるエレベータの避難運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、建物の高層化に伴い、建物内で火災が発生した場合、建物内に取り残された人を速やかに救出するために、エレベータを運転することが考えられている。
【0003】
このようなエレベータの避難運転において、火災発生時、かご内に多人数の避難者が乗込むことが想定されるが、常に満員状態になるとは限らない。また、火災発生時、かごが満員となることを前提とした場合、積載可能な範囲内において、火災発生階以外の階(非火災階)からの乗り場呼び(ホール呼び)にそれぞれ応答することとなる。このため、各階にかごが停止して乗合せ輸送するという、平常時における乗合せ運転の形態となり、迅速な避難運転が困難となる。したがって、従来の避難運転は、積載荷重の規定値を低い値に設定し、非火災階と避難階とを往復運転することを主体としたものとなっている。
【0004】
しかし、エレベータの昇降路は一般的に吹き抜け構造であるため、火災発生時に建物内に煙が充満した場合、昇降路にも煙が充満する。したがって、エレベータの往復運転は数回程度しか行うことができないと予想される。このため、一度の避難者数を少なく制限した場合、エレベータを救助活動に有効活用できるとは言えない。
【0005】
また、従来技術において、乗り場呼びがない場合で、かご内の避難者が一人など少ない場合においても、避難階へのかご呼びが登録されると避難階へ直行運転される。このため、非火災階で乗り場呼びが登録されるタイミングと避難者の人数によっては、少ない人数でエレベータが非火災階と避難階との間を往復運転されるため、効率的な救助活動ができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−276964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、火災発生時に建物内に取り残された人を効率的、且つ速やかに救出可能なエレベータの避難運転システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係るエレベータの避難運転システムは、検出手段と、荷重検出手段と、制御手段とを有している。検出手段は、各階のホール又は昇降路内に設置され、火災発生を検出する。荷重検出手段は、火災発生時に通常時のかごの積載荷重の許容範囲より高い積載荷重を検出する。制御手段は、検出手段から検出信号が供給された場合、荷重検出手段の検出信号に基づき、通常の乗車人数よりも多くの利用者を乗車させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る避難用エレベータの全体図を示すものであり、最上階の構成例を示す斜視図。
【図2】図1のA−A線に沿った断面から見たかご内の斜視図。
【図3】図1に示す矢印B方向より見たホールの構成を示す斜視図。
【図4】図1に示す矢印C方向より見たかごの斜視図。
【図5】図4に示す矢印D方向より見た荷重検出装置の一例を示す図。
【図6】実施形態に係るエレベータの運転装置を示すブロック図。
【図7】図6に示す制御部の火災発生時における動作を示すフローチャート。
【図8】実施形態における火災時における荷重検知解除リレーのシーケンスを示す図。
【図9】実施形態における扉開タイマを制御するリレーのシーケンスを示す図。
【図10】実施形態における扉開・扉閉リレーのシーケンスを示す図。
【図11】実施形態における表示・音声出力部を制御するリレーのシーケンスを示す図。
【図12】実施形態における扉開タイマの動作時間を変更前と比較して示す図。
【図13】実施形態における建物内のかご内、及び乗り場に設けられた表示器の表示とエレベータの行き先階の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、エレベータが例えば最上階に停止している構成を示した図であり、他の階の構成もほぼ同様である。各階のホールには、ホール呼び釦装置1と、建物内の火災を感知する火災感知器2が設けられている。昇降路SFT内には、かご3が待機している。また、ホールの脇には、避難用の階段FEが設けられている。
【0012】
図2は、図1のA−A線に沿った断面であり、かご内3の構成を示している。
【0013】
かご内3には、かご内操作盤6が設けられている。このかご内操作盤6は、かごの呼び登録を行う行き先階登録釦4−1、かごの扉の開閉操作を行う扉開閉釦4−2、本実施形態に係る火災救出時の扉動作の運転モードを示す報知装置としての表示・音声出力部5−1、及びエレベータが出発(移動)するまでの残時間を示す表示部5−2を有している。
【0014】
図3は、図1に示す矢印B方向より見たホールの構成を示している。ホール呼び釦装置1は、ホール呼び登録釦7と、本実施形態に係る火災救出時の扉動作の運転モードを示す表示、音声出力部8−1、及びエレベータが出発(移動)するまでの残時間を示す表示部8−2を有している。
【0015】
図4は、図1に示す矢印C方向より見たかご3の下部を示している。かご3の下部と下梁10には、図5に示す荷重検出装置11が設けられている。かご3は、下梁10に対して移動可能とされており、かご3の底部と下梁30との距離は、かご3の積載荷重に応じて変化される。
【0016】
図5は、図4に示す矢印D方向より見た荷重検出装置11の一例を示している。かご3の床9の裏面には、荷重検出装置11を構成する例えばスイッチWLSが設けられている。下梁10には、スイッチWLSの操作子を押圧可能な押圧部12が設けられている。荷重検出装置11は、後述するように、火災救出時においてかご内の積載荷重が130%であることを検出するものである。すなわち、かご3の乗客が増加してかご3が下降し、かご内3内の積載荷重が130%に達すると、スイッチWLSの操作子が押圧部12に当接し、スイッチWLSがオンする。
【0017】
図6は、実施形態に係るエレベータの運転装置を示すものであり、図1乃至図5と同一部分には同一符号を付している。
【0018】
図6において、機械室内に設置された制御装置30は、入出力部31、制御部32、モータ制御部33を有している。入出力部31には、各階に設けられたホール呼び釦装置1−1、1−2〜1−zから出力される呼び登録信号、各階に設けられた火災感知器2−1、2−2〜2−zから出力される火災検出信号、かご3の下部に設けられた荷重検出装置11、及び後述するパルス検出器35から出力される位置検出信号が供給される。この入出力部31に供給された各信号は、制御部32に供給される。この制御部35は、入出力部31から供給される信号に基づき、エレベータ全体の運転を制御するものであり、通常時の運転制御、及び火災発生時の運転制御を行う。制御部32の出力信号は、例えばモータ制御部33に供給される。このモータ制御部33には、例えば巻上機を構成するモータ34が接続されており、このモータ34は、モータ制御部33により駆動される。このモータ34にはモータの位置検出器としてのパルス検出器35が設けられ、このパルス検出器35から出力される位置検出信号は入出力部31に供給される。
【0019】
また、制御部から出力されるドア(扉とも記す)の開閉信号は、入出力部31を介してかご3に設けられたドア制御部36に供給される。このドア制御部36は、ドアモータ37を制御し、ドアを開閉駆動する。
【0020】
上記構成において、エレベータの運転制御について説明する。
【0021】
(通常時の動作)
例えばホール呼び釦装置1−1、1−2〜1−zからの呼び登録信号は、入出力部31を介して制御部32に供給される。制御部32は、この呼び登録信号に基づき、応答階、着床階を判定する。制御部33は、この判定結果をモータ制御部33に供給し、モータ制御部33は、巻上機のモータ34を駆動制御する。この結果、かごが応答階に移動される。
【0022】
次に、かごが着床階に近づいた場合、パルス検出器35により検出された位置信号と予め設定された階床位置が制御部32により比較され、これらの差が一定距離に達した時点で、かごの移動速度が減速され、かごが応答階に着床、停止される。この時、制御部32から入出力部31を通して、かご3上に設けられたドア制御部36にドア開閉操作用の信号が送られる。ドア制御部36は、この信号に基づきドアモータの回転速度を制御し、ドアを開閉させる。
【0023】
(火災発生時の動作)
次に、図7乃至図13を参照して、火災発生時の動作について説明する。
【0024】
図7は、火災発生時における制御部32の動作を示し、図8乃至図12は、制御部32を構成するリレーのシーケンスを示している。図7と図8乃至図12において同一部分には同一符号を付している。また、図8乃至図12において、各リレーのスイッチは、定常時の状態を示している。
【0025】
火災が発生した場合、各ホール側に設けられた火災感知器2−1、2−2〜2−zのいずれかから火災感知を示す信号が発生され、制御装置30の入出力部31を介して制御部32に供給される(S1)。すなわち、火災発生時、各階に設置された火災感知器2−1、2−2〜2−zのいずれかが作動すると、図8に示す火災感知器2−1、2−2〜2−zに対応して設けられた火災スイッチR1−1、R1−2〜R1−zのうちの対応するスイッチがオンとなる。すると、これらスイッチR1−1、R1−2〜R1−zに接続されたリレーFIREがオンとなる。
【0026】
次に、積載荷重の許容範囲が変更される(S2)。リレーFIREがオンとなることにより、図示せぬ標準の積載荷重に対して、積載荷重が110%に達した時に、エレベータのドアが閉まる動作が解除され、無効となる。また、リレーFIREのオンにより、図9に示す常閉接点FIREがオフし、常開接点FIREがオンする。
【0027】
次いで、かご呼びが無いかどうかが判別され(S3−1)、かご呼びが無い場合で、ホール呼びが有る場合(S3−2)、かごは、応答階に運転され、着床、停止され、ドアが開放される(S4)。すなわち、ホール呼びが検出されたことにより、リレーHがオンとなり、その接点Hがオンとなる。図9に示す、着床リレーELは、本実施形態以外の着床リレーELの着床条件が成立したときにオンするリレーであるため、動作条件は省略するが、現在着床中であるためオンとなっている。したがって、扉を開放開始するリレーDOSがオンとなる。
【0028】
リレーDOSのオンによりその接点DOSがオンとなる。前述したように、リレーFIREのオンにより、その常閉接点がオフ、常開接点がオンとなっているため、扉開短縮タイマがオンとされる(S5)。このため、上記火災感知器が作動している場合、ドアを開放状態に保持する時間が、扉開短縮タイマに切替わる。扉開短縮タイマは、通常の扉開タイマの時間よりも短く設定されている。このため、扉を開放状態に保持する時間は、通常時より短くなり、早く扉が閉まるようになる。したがって、火災感知器が作動している場合、かご呼び、ホール呼びに対応して一度ドアは開くが、扉の開放時間は、通常時より短い。
【0029】
図12は、扉開短縮タイマと、扉開タイマの時間の一例を示している。扉開タイマの時間は、例えば30秒に設定されているのに対して、扉開短縮タイマの時間は、例えば10秒に設定されている。
【0030】
上記ドアが開放され、扉開短縮タイマがオンとされた状態において、かご内に利用者としの避難者が乗り込み可能となる。かご内の積載荷重が110%以下である場合、図10に示す常閉接点FWRはオンである。扉開短縮タイマにより駆動される接点STMはオンとなっているため、扉開用のリレーDOもオンである。このため、その常開接点DOがオンしているため、ドアモータ37が図示実線で示す矢印方向に駆動され、ドアが開放状態に保持される(S7)。このとき、エレベータは、時間優先モードとなる。
【0031】
また、リレーDOの常閉接点DOはオフしているため、扉閉用のリレーDCはオフとされている。したがって、扉閉釦が操作された場合においても、扉開が保持される。すなわち、扉閉釦の操作が無効とされる(S8)。
【0032】
上記かご内の積載荷重が110%以下である時間優先モードにおいて、扉開短縮タイマに設定された時間が経過した場合、図10に示す接点STMがオフとなる(S8−1)。このため、リレーDOがオフとなり、その常開接点DO及び、常閉接点DOが図10に示す状態となる。したがって、リレーDCがオンとなり、その常開接点DCがオンとなる。このため、ドアモータ37は、図示破線で示す矢印方向に駆動され、ドアが閉じられる(S11)。この後、かごが避難階に移動され、着床、停止される(S12)。
【0033】
また、上記ステップS5に示す扉開短縮タイマがオンの状態において、避難者が多く、かご内の積載荷重が110%に達した場合においても、ドアは開いたままである。すなわち、火災発生時において、積載荷重が110%に達した場合、図8に示すスイッチ1WSがオンし、リレー1WRがオンする。このため、リレー1WRの接点1WRがオンとなり、リレーFWRがオンとなる。すると、図10に示す常閉接点FWRがオフとなり、扉開短縮タイマがオンのまま、リレーDOがオフとされる(S6)。したがって、エレベータは荷重優先モードとなる。荷重優先モードは、かごの積載荷重が許容範囲としての110%〜130%以下の間である。
【0034】
荷重優先モードにおいて、リレーDOがオフとされることにより、その常閉接点DOがオンし、常開接点DOがオフする。このため、扉閉用リレーDCがオンとなる。このため、ドアモータ37は、図示破線で示す矢印方向に駆動され、ドアが閉じられる(S11)。この後、かごが避難階に移動され、着床、停止される(S12)。
【0035】
また、上記荷重優先モードにおいて、積載荷重が130%を越えた場合、スイッチWLSが作動し、リレーWRがオンとなり、常閉接点WRがオフとなる。このため、リレーFWRがオフとなり、常閉接点FWRがオンとなる。この後、扉開短縮タイマが、オフとなると、その接点STMがオフとなり、扉開用リレーDOがオフとなる。このため、扉閉用リレーDCがオンとなる。したがって、かごの積載荷重が130%を超えるような、多人数の避難者が居る場合においても、かごを運行することにより、迅速な避難が可能となる。
【0036】
また、かごの積載荷重が110%〜130%以下である荷重優先モードが作動している(S6)。この場合、図11に示す接点FIRE、FWR、及び扉開タイマの接点LTMがオン状態である。このため、荷重優先モード用のリレーLDがオンとなる。このため、リレーLDの接点LDがオンとなり、表示出力部41、及び音声出力部42の入力端子2が有効とされる。このため、表示出力部41から「積載超過」であることを示す信号、及び「出発までの残り時間を示す信号」が出力され、図2に示すかご3内の表示・音声出力部5−1に「積載超過」の文字が点灯され、表示部5−2に出発までの時間(約5秒)が、例えばカウントダウン表示される。また、音声出力部42からは、「積載超過」であることを示す信号が表示・音声出力部5−1、8−2に出力され、かご内、及びホールにアナウンスが行われる。したがって、かご内、及びホール内の避難者にエレベータが出発動作となることを知らせることができる(S9−1)。
【0037】
また、ホール側に避難者がいる場合、ホール側の表示出力部41に「積載超過」の文字が点灯しているため、これより、ホール内の利用者は、積載荷重が許容範囲を超えたため、エレベータが避難階に移動することを認識できる。したがって、ホール内の利用者は、エレベータを待たずに避難階段を用いて避難することができる。
【0038】
一方、扉開短縮タイマがオンしている状態において(S5)、かごの積載荷重の許容範囲が110%以下である場合、時間優先モードが作動している(S7)。この場合、図11に示す接点FIRE、及び扉開短縮タイマの接点STMがオンしているため、時間優先モード用のリレーTMがオンとなり、その接点TMがオンとなる。このため、表示出力部41、及び音声出力部42の入力端子3が有効とされる。したがって、表示出力部41から「積載不足」を示す信号が出力され、図2に示すかご3内の表示・音声出力部5−1、及び図3に示すホールの表表示・音声出力部8−1に「積載不足」の文字が点灯される。さらに、音声出力部42からは、「積載荷重が不足の為、時間モードが動作中である」ことを示す信号が表示・音声出力部5−1、8−1に出力され、かご3、及びホール内に音声情報としてアナウンスされ、利用者に知らせることができる(S10−1)。
【0039】
また、時間優先モードが作動している場合、かご内、及びホール側の表示部5−2、8−2には、「待機中」の文字が点灯され、音声出力部42より、時間優先により出発までの時間(約10秒)が、例えばカウントダウンにより報知される。
【0040】
また、ホール側の避難者は、積載荷重が許容範囲を超えず、エレベータが避難階までの待機時間を確認できる。このため、身体障害者を先に避難誘導させるなどの優先順番を的確に判断したり、他に避難者を探したりするなどの救助活動が可能かどうかを適確に判断することができる。
【0041】
さらに、扉開短縮タイマがオンしている状態において、積載荷重が110%以下である場合、時間優先モードで扉開している。この状態において、図11に示すかご内の扉閉釦4が押された場合(S8)、表示出力部41、及び音声出力部42の入力端子1が有効とされる。この場合、表示出力部41から、「積載不足」であることを示す信号が出力され、音声出力部42から、「積載不足、扉閉無効、時間優先モードが動作中である」の信号が出力される。このため、かご内及びホール内の音声・表示出力部5−1、8−1により、これらの情報が、利用者に対して、表示、及びアナウンスされるため、利用者は、扉閉釦4の操作が無効とされていることを認識することができる。
【0042】
尚、ステップS3−1において、積載荷重が110%以下の場合において、かご呼びが有る場合、制御がステップS11に移行され、エレベータはドアを閉じ、避難階に着床・停止する(S12)。
【0043】
図13は、火災発生時における建物内のかご内及びホールに設けられた表示出力部41(音声出力部42)の表示の一例を示したものである。図13において、最上階は例えば10階であり、避難階は例えば1階であり、10階が火災発生階である場合を示している。また、例えば9階、5階、3階を中間階としている。
【0044】
火災発生時において、火災感知器からの信号により10階で火災が発生したことが検出された場合、火災発生階としての10階では、かごの行き先が10階と表示される。このため、10階に居る避難者は、かごが10階に向かってくることを確認できる。
【0045】
また、建物内のその他の階の表示出力部には、火災検出器の検出信号、及び安全性に基づき判定した結果が各階に表示及びアナウンスされる。すなわち、中間階9階、6階、5階の表示出力部には、かごが6階に来ることが表示され、3階の表示出力部には、かごが1階に来ることが表示される。このため、9階、5階の避難者は、階段により6階に行くことによって、かごに乗車可能であることが分かり、3階の避難者は、かごが1階であるため、階段により1階に避難すべきであることが分かる。
【0046】
このように、避難者を誘導することにより、建物内の中間階及び下方階にいる避難者をある程度の人数に分けて、特定の階に誘導することができる。このため、かごに乗車可能な人数を適正化することができ、エレベータを用いて、迅速かつ有効に避難者を避難させることが可能である。
【0047】
上記実施形態によれば、火災発生時、かごの積載荷重の許容範囲を通常時より大きく設定している。このため、火災発生時に、多人数の避難者を有効的に避難させることができる。
【0048】
また、火災発生時、扉の開放時間を通常時より短縮している。このため、かごの積載荷重が許容範囲に満たない場合、即、扉を閉じてかごを避難階に移動させることができる。したがって、かごを迅速に運行することができるため、避難者の避難及び救助を高速に行うことが可能である。
【0049】
また、かごの積載荷重を超えているかどうか、及びまだ乗ることが可能かどうかを表示出力部41に表示している。このため、かごの積載荷重が許容範囲を超えたことにより、かごが避難階に移動する場合、ホール側に残った避難者に対して、エレベータではなく、避難階段を使用することを促す効果が期待できる。したがって、避難時に緊急状態に慌てることなく、的確な避難手段(エレベータ、又は避難階段)を選択させることができる。
【0050】
その他、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…ホール呼び釦装置、2…火災感知器、3…かご、4…扉開閉釦、5−1…表示・音声出力部(かご操作盤)、5−2…出発残り時間表示(かご操作盤)、6…かご内操作盤、7…ホール呼び登録釦、8−1…表示・音声出力部(ホール呼び釦装置)、8−2…出発残り時間表示(ホール呼び釦装置)、9…床、10…下梁、11…荷重検出装置。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、火災発生時におけるエレベータの避難運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、建物の高層化に伴い、建物内で火災が発生した場合、建物内に取り残された人を速やかに救出するために、エレベータを運転することが考えられている。
【0003】
このようなエレベータの避難運転において、火災発生時、かご内に多人数の避難者が乗込むことが想定されるが、常に満員状態になるとは限らない。また、火災発生時、かごが満員となることを前提とした場合、積載可能な範囲内において、火災発生階以外の階(非火災階)からの乗り場呼び(ホール呼び)にそれぞれ応答することとなる。このため、各階にかごが停止して乗合せ輸送するという、平常時における乗合せ運転の形態となり、迅速な避難運転が困難となる。したがって、従来の避難運転は、積載荷重の規定値を低い値に設定し、非火災階と避難階とを往復運転することを主体としたものとなっている。
【0004】
しかし、エレベータの昇降路は一般的に吹き抜け構造であるため、火災発生時に建物内に煙が充満した場合、昇降路にも煙が充満する。したがって、エレベータの往復運転は数回程度しか行うことができないと予想される。このため、一度の避難者数を少なく制限した場合、エレベータを救助活動に有効活用できるとは言えない。
【0005】
また、従来技術において、乗り場呼びがない場合で、かご内の避難者が一人など少ない場合においても、避難階へのかご呼びが登録されると避難階へ直行運転される。このため、非火災階で乗り場呼びが登録されるタイミングと避難者の人数によっては、少ない人数でエレベータが非火災階と避難階との間を往復運転されるため、効率的な救助活動ができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−276964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、火災発生時に建物内に取り残された人を効率的、且つ速やかに救出可能なエレベータの避難運転システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係るエレベータの避難運転システムは、検出手段と、荷重検出手段と、制御手段とを有している。検出手段は、各階のホール又は昇降路内に設置され、火災発生を検出する。荷重検出手段は、火災発生時に通常時のかごの積載荷重の許容範囲より高い積載荷重を検出する。制御手段は、検出手段から検出信号が供給された場合、荷重検出手段の検出信号に基づき、通常の乗車人数よりも多くの利用者を乗車させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る避難用エレベータの全体図を示すものであり、最上階の構成例を示す斜視図。
【図2】図1のA−A線に沿った断面から見たかご内の斜視図。
【図3】図1に示す矢印B方向より見たホールの構成を示す斜視図。
【図4】図1に示す矢印C方向より見たかごの斜視図。
【図5】図4に示す矢印D方向より見た荷重検出装置の一例を示す図。
【図6】実施形態に係るエレベータの運転装置を示すブロック図。
【図7】図6に示す制御部の火災発生時における動作を示すフローチャート。
【図8】実施形態における火災時における荷重検知解除リレーのシーケンスを示す図。
【図9】実施形態における扉開タイマを制御するリレーのシーケンスを示す図。
【図10】実施形態における扉開・扉閉リレーのシーケンスを示す図。
【図11】実施形態における表示・音声出力部を制御するリレーのシーケンスを示す図。
【図12】実施形態における扉開タイマの動作時間を変更前と比較して示す図。
【図13】実施形態における建物内のかご内、及び乗り場に設けられた表示器の表示とエレベータの行き先階の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、エレベータが例えば最上階に停止している構成を示した図であり、他の階の構成もほぼ同様である。各階のホールには、ホール呼び釦装置1と、建物内の火災を感知する火災感知器2が設けられている。昇降路SFT内には、かご3が待機している。また、ホールの脇には、避難用の階段FEが設けられている。
【0012】
図2は、図1のA−A線に沿った断面であり、かご内3の構成を示している。
【0013】
かご内3には、かご内操作盤6が設けられている。このかご内操作盤6は、かごの呼び登録を行う行き先階登録釦4−1、かごの扉の開閉操作を行う扉開閉釦4−2、本実施形態に係る火災救出時の扉動作の運転モードを示す報知装置としての表示・音声出力部5−1、及びエレベータが出発(移動)するまでの残時間を示す表示部5−2を有している。
【0014】
図3は、図1に示す矢印B方向より見たホールの構成を示している。ホール呼び釦装置1は、ホール呼び登録釦7と、本実施形態に係る火災救出時の扉動作の運転モードを示す表示、音声出力部8−1、及びエレベータが出発(移動)するまでの残時間を示す表示部8−2を有している。
【0015】
図4は、図1に示す矢印C方向より見たかご3の下部を示している。かご3の下部と下梁10には、図5に示す荷重検出装置11が設けられている。かご3は、下梁10に対して移動可能とされており、かご3の底部と下梁30との距離は、かご3の積載荷重に応じて変化される。
【0016】
図5は、図4に示す矢印D方向より見た荷重検出装置11の一例を示している。かご3の床9の裏面には、荷重検出装置11を構成する例えばスイッチWLSが設けられている。下梁10には、スイッチWLSの操作子を押圧可能な押圧部12が設けられている。荷重検出装置11は、後述するように、火災救出時においてかご内の積載荷重が130%であることを検出するものである。すなわち、かご3の乗客が増加してかご3が下降し、かご内3内の積載荷重が130%に達すると、スイッチWLSの操作子が押圧部12に当接し、スイッチWLSがオンする。
【0017】
図6は、実施形態に係るエレベータの運転装置を示すものであり、図1乃至図5と同一部分には同一符号を付している。
【0018】
図6において、機械室内に設置された制御装置30は、入出力部31、制御部32、モータ制御部33を有している。入出力部31には、各階に設けられたホール呼び釦装置1−1、1−2〜1−zから出力される呼び登録信号、各階に設けられた火災感知器2−1、2−2〜2−zから出力される火災検出信号、かご3の下部に設けられた荷重検出装置11、及び後述するパルス検出器35から出力される位置検出信号が供給される。この入出力部31に供給された各信号は、制御部32に供給される。この制御部35は、入出力部31から供給される信号に基づき、エレベータ全体の運転を制御するものであり、通常時の運転制御、及び火災発生時の運転制御を行う。制御部32の出力信号は、例えばモータ制御部33に供給される。このモータ制御部33には、例えば巻上機を構成するモータ34が接続されており、このモータ34は、モータ制御部33により駆動される。このモータ34にはモータの位置検出器としてのパルス検出器35が設けられ、このパルス検出器35から出力される位置検出信号は入出力部31に供給される。
【0019】
また、制御部から出力されるドア(扉とも記す)の開閉信号は、入出力部31を介してかご3に設けられたドア制御部36に供給される。このドア制御部36は、ドアモータ37を制御し、ドアを開閉駆動する。
【0020】
上記構成において、エレベータの運転制御について説明する。
【0021】
(通常時の動作)
例えばホール呼び釦装置1−1、1−2〜1−zからの呼び登録信号は、入出力部31を介して制御部32に供給される。制御部32は、この呼び登録信号に基づき、応答階、着床階を判定する。制御部33は、この判定結果をモータ制御部33に供給し、モータ制御部33は、巻上機のモータ34を駆動制御する。この結果、かごが応答階に移動される。
【0022】
次に、かごが着床階に近づいた場合、パルス検出器35により検出された位置信号と予め設定された階床位置が制御部32により比較され、これらの差が一定距離に達した時点で、かごの移動速度が減速され、かごが応答階に着床、停止される。この時、制御部32から入出力部31を通して、かご3上に設けられたドア制御部36にドア開閉操作用の信号が送られる。ドア制御部36は、この信号に基づきドアモータの回転速度を制御し、ドアを開閉させる。
【0023】
(火災発生時の動作)
次に、図7乃至図13を参照して、火災発生時の動作について説明する。
【0024】
図7は、火災発生時における制御部32の動作を示し、図8乃至図12は、制御部32を構成するリレーのシーケンスを示している。図7と図8乃至図12において同一部分には同一符号を付している。また、図8乃至図12において、各リレーのスイッチは、定常時の状態を示している。
【0025】
火災が発生した場合、各ホール側に設けられた火災感知器2−1、2−2〜2−zのいずれかから火災感知を示す信号が発生され、制御装置30の入出力部31を介して制御部32に供給される(S1)。すなわち、火災発生時、各階に設置された火災感知器2−1、2−2〜2−zのいずれかが作動すると、図8に示す火災感知器2−1、2−2〜2−zに対応して設けられた火災スイッチR1−1、R1−2〜R1−zのうちの対応するスイッチがオンとなる。すると、これらスイッチR1−1、R1−2〜R1−zに接続されたリレーFIREがオンとなる。
【0026】
次に、積載荷重の許容範囲が変更される(S2)。リレーFIREがオンとなることにより、図示せぬ標準の積載荷重に対して、積載荷重が110%に達した時に、エレベータのドアが閉まる動作が解除され、無効となる。また、リレーFIREのオンにより、図9に示す常閉接点FIREがオフし、常開接点FIREがオンする。
【0027】
次いで、かご呼びが無いかどうかが判別され(S3−1)、かご呼びが無い場合で、ホール呼びが有る場合(S3−2)、かごは、応答階に運転され、着床、停止され、ドアが開放される(S4)。すなわち、ホール呼びが検出されたことにより、リレーHがオンとなり、その接点Hがオンとなる。図9に示す、着床リレーELは、本実施形態以外の着床リレーELの着床条件が成立したときにオンするリレーであるため、動作条件は省略するが、現在着床中であるためオンとなっている。したがって、扉を開放開始するリレーDOSがオンとなる。
【0028】
リレーDOSのオンによりその接点DOSがオンとなる。前述したように、リレーFIREのオンにより、その常閉接点がオフ、常開接点がオンとなっているため、扉開短縮タイマがオンとされる(S5)。このため、上記火災感知器が作動している場合、ドアを開放状態に保持する時間が、扉開短縮タイマに切替わる。扉開短縮タイマは、通常の扉開タイマの時間よりも短く設定されている。このため、扉を開放状態に保持する時間は、通常時より短くなり、早く扉が閉まるようになる。したがって、火災感知器が作動している場合、かご呼び、ホール呼びに対応して一度ドアは開くが、扉の開放時間は、通常時より短い。
【0029】
図12は、扉開短縮タイマと、扉開タイマの時間の一例を示している。扉開タイマの時間は、例えば30秒に設定されているのに対して、扉開短縮タイマの時間は、例えば10秒に設定されている。
【0030】
上記ドアが開放され、扉開短縮タイマがオンとされた状態において、かご内に利用者としの避難者が乗り込み可能となる。かご内の積載荷重が110%以下である場合、図10に示す常閉接点FWRはオンである。扉開短縮タイマにより駆動される接点STMはオンとなっているため、扉開用のリレーDOもオンである。このため、その常開接点DOがオンしているため、ドアモータ37が図示実線で示す矢印方向に駆動され、ドアが開放状態に保持される(S7)。このとき、エレベータは、時間優先モードとなる。
【0031】
また、リレーDOの常閉接点DOはオフしているため、扉閉用のリレーDCはオフとされている。したがって、扉閉釦が操作された場合においても、扉開が保持される。すなわち、扉閉釦の操作が無効とされる(S8)。
【0032】
上記かご内の積載荷重が110%以下である時間優先モードにおいて、扉開短縮タイマに設定された時間が経過した場合、図10に示す接点STMがオフとなる(S8−1)。このため、リレーDOがオフとなり、その常開接点DO及び、常閉接点DOが図10に示す状態となる。したがって、リレーDCがオンとなり、その常開接点DCがオンとなる。このため、ドアモータ37は、図示破線で示す矢印方向に駆動され、ドアが閉じられる(S11)。この後、かごが避難階に移動され、着床、停止される(S12)。
【0033】
また、上記ステップS5に示す扉開短縮タイマがオンの状態において、避難者が多く、かご内の積載荷重が110%に達した場合においても、ドアは開いたままである。すなわち、火災発生時において、積載荷重が110%に達した場合、図8に示すスイッチ1WSがオンし、リレー1WRがオンする。このため、リレー1WRの接点1WRがオンとなり、リレーFWRがオンとなる。すると、図10に示す常閉接点FWRがオフとなり、扉開短縮タイマがオンのまま、リレーDOがオフとされる(S6)。したがって、エレベータは荷重優先モードとなる。荷重優先モードは、かごの積載荷重が許容範囲としての110%〜130%以下の間である。
【0034】
荷重優先モードにおいて、リレーDOがオフとされることにより、その常閉接点DOがオンし、常開接点DOがオフする。このため、扉閉用リレーDCがオンとなる。このため、ドアモータ37は、図示破線で示す矢印方向に駆動され、ドアが閉じられる(S11)。この後、かごが避難階に移動され、着床、停止される(S12)。
【0035】
また、上記荷重優先モードにおいて、積載荷重が130%を越えた場合、スイッチWLSが作動し、リレーWRがオンとなり、常閉接点WRがオフとなる。このため、リレーFWRがオフとなり、常閉接点FWRがオンとなる。この後、扉開短縮タイマが、オフとなると、その接点STMがオフとなり、扉開用リレーDOがオフとなる。このため、扉閉用リレーDCがオンとなる。したがって、かごの積載荷重が130%を超えるような、多人数の避難者が居る場合においても、かごを運行することにより、迅速な避難が可能となる。
【0036】
また、かごの積載荷重が110%〜130%以下である荷重優先モードが作動している(S6)。この場合、図11に示す接点FIRE、FWR、及び扉開タイマの接点LTMがオン状態である。このため、荷重優先モード用のリレーLDがオンとなる。このため、リレーLDの接点LDがオンとなり、表示出力部41、及び音声出力部42の入力端子2が有効とされる。このため、表示出力部41から「積載超過」であることを示す信号、及び「出発までの残り時間を示す信号」が出力され、図2に示すかご3内の表示・音声出力部5−1に「積載超過」の文字が点灯され、表示部5−2に出発までの時間(約5秒)が、例えばカウントダウン表示される。また、音声出力部42からは、「積載超過」であることを示す信号が表示・音声出力部5−1、8−2に出力され、かご内、及びホールにアナウンスが行われる。したがって、かご内、及びホール内の避難者にエレベータが出発動作となることを知らせることができる(S9−1)。
【0037】
また、ホール側に避難者がいる場合、ホール側の表示出力部41に「積載超過」の文字が点灯しているため、これより、ホール内の利用者は、積載荷重が許容範囲を超えたため、エレベータが避難階に移動することを認識できる。したがって、ホール内の利用者は、エレベータを待たずに避難階段を用いて避難することができる。
【0038】
一方、扉開短縮タイマがオンしている状態において(S5)、かごの積載荷重の許容範囲が110%以下である場合、時間優先モードが作動している(S7)。この場合、図11に示す接点FIRE、及び扉開短縮タイマの接点STMがオンしているため、時間優先モード用のリレーTMがオンとなり、その接点TMがオンとなる。このため、表示出力部41、及び音声出力部42の入力端子3が有効とされる。したがって、表示出力部41から「積載不足」を示す信号が出力され、図2に示すかご3内の表示・音声出力部5−1、及び図3に示すホールの表表示・音声出力部8−1に「積載不足」の文字が点灯される。さらに、音声出力部42からは、「積載荷重が不足の為、時間モードが動作中である」ことを示す信号が表示・音声出力部5−1、8−1に出力され、かご3、及びホール内に音声情報としてアナウンスされ、利用者に知らせることができる(S10−1)。
【0039】
また、時間優先モードが作動している場合、かご内、及びホール側の表示部5−2、8−2には、「待機中」の文字が点灯され、音声出力部42より、時間優先により出発までの時間(約10秒)が、例えばカウントダウンにより報知される。
【0040】
また、ホール側の避難者は、積載荷重が許容範囲を超えず、エレベータが避難階までの待機時間を確認できる。このため、身体障害者を先に避難誘導させるなどの優先順番を的確に判断したり、他に避難者を探したりするなどの救助活動が可能かどうかを適確に判断することができる。
【0041】
さらに、扉開短縮タイマがオンしている状態において、積載荷重が110%以下である場合、時間優先モードで扉開している。この状態において、図11に示すかご内の扉閉釦4が押された場合(S8)、表示出力部41、及び音声出力部42の入力端子1が有効とされる。この場合、表示出力部41から、「積載不足」であることを示す信号が出力され、音声出力部42から、「積載不足、扉閉無効、時間優先モードが動作中である」の信号が出力される。このため、かご内及びホール内の音声・表示出力部5−1、8−1により、これらの情報が、利用者に対して、表示、及びアナウンスされるため、利用者は、扉閉釦4の操作が無効とされていることを認識することができる。
【0042】
尚、ステップS3−1において、積載荷重が110%以下の場合において、かご呼びが有る場合、制御がステップS11に移行され、エレベータはドアを閉じ、避難階に着床・停止する(S12)。
【0043】
図13は、火災発生時における建物内のかご内及びホールに設けられた表示出力部41(音声出力部42)の表示の一例を示したものである。図13において、最上階は例えば10階であり、避難階は例えば1階であり、10階が火災発生階である場合を示している。また、例えば9階、5階、3階を中間階としている。
【0044】
火災発生時において、火災感知器からの信号により10階で火災が発生したことが検出された場合、火災発生階としての10階では、かごの行き先が10階と表示される。このため、10階に居る避難者は、かごが10階に向かってくることを確認できる。
【0045】
また、建物内のその他の階の表示出力部には、火災検出器の検出信号、及び安全性に基づき判定した結果が各階に表示及びアナウンスされる。すなわち、中間階9階、6階、5階の表示出力部には、かごが6階に来ることが表示され、3階の表示出力部には、かごが1階に来ることが表示される。このため、9階、5階の避難者は、階段により6階に行くことによって、かごに乗車可能であることが分かり、3階の避難者は、かごが1階であるため、階段により1階に避難すべきであることが分かる。
【0046】
このように、避難者を誘導することにより、建物内の中間階及び下方階にいる避難者をある程度の人数に分けて、特定の階に誘導することができる。このため、かごに乗車可能な人数を適正化することができ、エレベータを用いて、迅速かつ有効に避難者を避難させることが可能である。
【0047】
上記実施形態によれば、火災発生時、かごの積載荷重の許容範囲を通常時より大きく設定している。このため、火災発生時に、多人数の避難者を有効的に避難させることができる。
【0048】
また、火災発生時、扉の開放時間を通常時より短縮している。このため、かごの積載荷重が許容範囲に満たない場合、即、扉を閉じてかごを避難階に移動させることができる。したがって、かごを迅速に運行することができるため、避難者の避難及び救助を高速に行うことが可能である。
【0049】
また、かごの積載荷重を超えているかどうか、及びまだ乗ることが可能かどうかを表示出力部41に表示している。このため、かごの積載荷重が許容範囲を超えたことにより、かごが避難階に移動する場合、ホール側に残った避難者に対して、エレベータではなく、避難階段を使用することを促す効果が期待できる。したがって、避難時に緊急状態に慌てることなく、的確な避難手段(エレベータ、又は避難階段)を選択させることができる。
【0050】
その他、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…ホール呼び釦装置、2…火災感知器、3…かご、4…扉開閉釦、5−1…表示・音声出力部(かご操作盤)、5−2…出発残り時間表示(かご操作盤)、6…かご内操作盤、7…ホール呼び登録釦、8−1…表示・音声出力部(ホール呼び釦装置)、8−2…出発残り時間表示(ホール呼び釦装置)、9…床、10…下梁、11…荷重検出装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各階のホール又は昇降路内に設置され、火災発生を検出する検出手段と、
火災発生時に通常時のかごの積載荷重の許容範囲より高い積載荷重を検出する荷重検出手段と、
前記検出手段から検出信号が供給された場合、前記荷重検出手段の検出信号に基づき、通常の乗車人数よりも多くの利用者を乗車させる制御手段と、
を具備することを特徴とするエレベータの避難運転システム。
【請求項2】
前記かご内に設けられ、扉を閉じることを指示する扉閉釦をさらに具備し、
前記制御手段は、前記荷重検出手段の検出信号に基づき、かごの積載荷重が前記許容範囲の下限値に達しない場合、前記扉閉釦の操作を無効とし、積載荷重が前記基準値に達した場合、前記扉閉釦の操作を有効とし、前記かごを運転することを特徴とする請求項1記載のエレベータの避難運転システム。
【請求項3】
前記制御手段は、通常時より短い時間が設定されたタイマをさらに具備し、
前記制御手段は、火災発生時、前記荷重検出手段の検出信号に基づき、前記かごの積載荷重が前記許容範囲の下限値に達しない場合で、前記タイマが設定時間以内である時、前記扉閉釦の操作を無効とし、前記タイマが設定時間経過した場合、前記扉閉釦の操作を有効とし、前記かごを運転することを特徴とする請求項2記載のエレベータの避難運転システム。
【請求項4】
前記荷重検出手段は、第1の荷重検出手段及びこれより高い荷重を検出する第2の荷重検出手段を有し、
前記制御手段は、前記かごの積載荷重が前記第1の荷重検出手段により検出された積載荷重以下である場合、前記タイマを用いた時間優先モードによりかごの運転を制御し、前記かごの積載荷重が前記第1の荷重検出手段により検出された積載荷重より大きく前記第2の荷重検出手段により検出された積載荷重以下である場合、積載荷重を優先した荷重優先モードにより前記かごの運転を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のエレベータの避難運転システム。
【請求項5】
前記かご内、及び各階の乗り場に設けられた報知手段をさらに具備し、
前記制御手段は、前記検出手段及び前記荷重検出手段の検出信号に基づき、少なくともかごの積載状況を報知することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエレベータの避難運転システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記検出手段からの検出信号に基づき救助階を決定し、この決定された救助階を前記報知手段により報知し、避難者を救助階に誘導することを特徴とする請求項5記載のエレベータの避難運転システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記検出手段からの検出信号に基づき、階毎に前記報知手段に異なる救助階を報知することを特徴とする請求項6記載のエレベータの避難運転システム。
【請求項1】
各階のホール又は昇降路内に設置され、火災発生を検出する検出手段と、
火災発生時に通常時のかごの積載荷重の許容範囲より高い積載荷重を検出する荷重検出手段と、
前記検出手段から検出信号が供給された場合、前記荷重検出手段の検出信号に基づき、通常の乗車人数よりも多くの利用者を乗車させる制御手段と、
を具備することを特徴とするエレベータの避難運転システム。
【請求項2】
前記かご内に設けられ、扉を閉じることを指示する扉閉釦をさらに具備し、
前記制御手段は、前記荷重検出手段の検出信号に基づき、かごの積載荷重が前記許容範囲の下限値に達しない場合、前記扉閉釦の操作を無効とし、積載荷重が前記基準値に達した場合、前記扉閉釦の操作を有効とし、前記かごを運転することを特徴とする請求項1記載のエレベータの避難運転システム。
【請求項3】
前記制御手段は、通常時より短い時間が設定されたタイマをさらに具備し、
前記制御手段は、火災発生時、前記荷重検出手段の検出信号に基づき、前記かごの積載荷重が前記許容範囲の下限値に達しない場合で、前記タイマが設定時間以内である時、前記扉閉釦の操作を無効とし、前記タイマが設定時間経過した場合、前記扉閉釦の操作を有効とし、前記かごを運転することを特徴とする請求項2記載のエレベータの避難運転システム。
【請求項4】
前記荷重検出手段は、第1の荷重検出手段及びこれより高い荷重を検出する第2の荷重検出手段を有し、
前記制御手段は、前記かごの積載荷重が前記第1の荷重検出手段により検出された積載荷重以下である場合、前記タイマを用いた時間優先モードによりかごの運転を制御し、前記かごの積載荷重が前記第1の荷重検出手段により検出された積載荷重より大きく前記第2の荷重検出手段により検出された積載荷重以下である場合、積載荷重を優先した荷重優先モードにより前記かごの運転を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のエレベータの避難運転システム。
【請求項5】
前記かご内、及び各階の乗り場に設けられた報知手段をさらに具備し、
前記制御手段は、前記検出手段及び前記荷重検出手段の検出信号に基づき、少なくともかごの積載状況を報知することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエレベータの避難運転システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記検出手段からの検出信号に基づき救助階を決定し、この決定された救助階を前記報知手段により報知し、避難者を救助階に誘導することを特徴とする請求項5記載のエレベータの避難運転システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記検出手段からの検出信号に基づき、階毎に前記報知手段に異なる救助階を報知することを特徴とする請求項6記載のエレベータの避難運転システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−46339(P2012−46339A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191337(P2010−191337)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
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