説明

エレベータケージの位置を検出するシステムおよび方法

【課題】ベルトの振動によって損なわれない、または僅かしか損なわれないエレベータケージの位置検出のためのシステムおよび方法を提供すること。
【解決手段】エレベータケージ(1)の位置を検出するためのシステムはケージが懸架されるベルト(2)とベルトの位置を検出するための検出器を含み、ベルトは第1側(2.1)に検出器の歯車(3A)が機械的に確実に係合する歯列(10)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータケージの位置を検出するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昇降路中で異なる位置の間にエレベータケージを動かすために、ケージは可撓性支持体および/または駆動手段で懸架される。最近では、従来の鋼ケーブルとは別にベルトが、それ自体を支持体および/または駆動手段として確立し、例えば、エレベータケージを釣合い錘と結合し、および/またはケージの上昇と下降の牽引力を伝達する。
【0003】
エレベータケージの位置、したがってその昇降路中の位置の認識はケージの制御に必要である。エレベータケージの速度または加速度は、位置の時間による微分によって求めることができ、同様に制御(例えば起動もしくは制動工程または最大速度/最大加速度の監視)に用いることもができるが、例えば、駆動手段によってケージに加えられる力の指数(quotient)として実際のケージの総重量および得られる加速度を求めるために用いることもできる。
【0004】
エレベータケージの位置を求めるために、EP1278693B1は、エレベータケージに配置されて、昇降路中に張られた別の歯付きベルトと確実に機械的に協働する回転トランスミッタを提案する。この提案は追加の歯付きベルトを必要とする欠点がある。
【0005】
したがって、WO2004/106208A1は支持ベルト自体のコード化と昇降路に配置された検出器によるその位置の検出を提案する。コード化は、当該明細書によれば、ベルトに埋め込まれた磁性材料によって、ベルトに配置したワイヤを変化させること(特に拡大)によって、またはベルト中の追加のケーブルによって行い、適切な検出器によって非接触で検出されるのが好ましい。WO2004/106209A1はノイズの問題を理由にベルト中の溝に対して明確に報告している。
【0006】
WO2004/106209A1に提案されたコード化の検出において、ベルトはエレベータケージの動きに対応して動くばかりでなく、例えば、システムの慣性、ケージ乗客の動き、またはエレベータケージの案内の固着/滑り効果によって誘起される長手方向、横断方向、および/または捩れ振動によって、検出器に対してさらに動くことができる。それらのベルトの追加の動きは、エレベータケージの位置の変化として検出器に誤って検出され、または位置の決定を誤らせる。これらの誤りは、速度または加速度が位置から求められるとき、増幅される。
【0007】
WO2004/106209A1から知られるシステムのさらに他の欠点は、提案された検出器、特に光学または磁気システムが電気的エネルギーを必要とし、したがって、損傷、例えば、火災の場合にはもはや機能することができないので、例えば、エレベータを手動で駆動することによってエレベータケージを、その助けを得て所定の位置(例えば次の階または地上階の緊急脱出位置)へ安全に動かすことが不可能になることである。
【0008】
最後に、WO2004/106209A1に提案されたシステムは、一方で磁性または光学コード化が消失し、他方、その検出に必要な感受性のある検出器が損傷することがあるので、昇降路中の一般的な環境条件、特にベルトの汚染または磨耗において最適ではない。
【特許文献1】欧州特許第1278693B1号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/106208A1号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/106209A1号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、WO2004/106209A1から前進して、ベルトの振動によって損なわれない、または僅かしか損なわれないエレベータケージの位置検出のためのシステムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本目的を達成するために、請求項1の導入部に記載のシステムが請求項1の特徴によって開発される。請求項11は対応する方法を保護の下に置く。
【0011】
本発明によるエレベータケージの位置を検出するシステムは、エレベータケージが懸架されるベルトと、ベルトの位置を検出するための検出器とを含む。本発明によれば、ベルトは第1の側に検出器の歯車が機械的に確実に係合する歯列を有する。
【0012】
それによって、ベルトの長手方向の長手振動、ベルトの長手軸周りの捩れ振動、およびベルトの横断軸方向の横断方向振動は、一方で、それらがベルトの歯列に歯車を機械的に確実に係合することによって緩衝または防止され、他方、前述の捩れまたは横断振動で発生する歯列の回転方向以外の方向へのベルトの相対的な動きが歯車の角位置の変化を起こさず、または僅かな変化しか起こさないので、ベルトの検出された位置を損なわず、または僅かしか損なわない。
【0013】
さらに、歯車によるベルト位置の機械的な形状結合による測定は、必ずしも電気的エネルギーを必要としない。したがって、本発明の好ましい実施形態によるシステムは、例えば、火災状況の結果としてのエネルギー停止の場合にさえベルト位置の測定が可能であり、したがって、エレベータケージを手動で緊急脱出位置に制御することができる。
【0014】
したがって、ベルト位置を機械的に測定する歯車は、実質上、昇降路において一般的な環境条件、特に塵芥、湿気などに関して知られている光学的または磁気検出器より抵抗性がある。その上、例えばエレベータケージを上昇させる電動機などの近傍に起こり得る電場または磁場によって妨害されない。さらに、例えば、昇降路中の警報灯を点灯するとき、光の状態の変化は、光学システムとは対照的に、歯車による位置の検出に影響を与えない。
【0015】
「歯列」は主としてベルトの横断方向軸に部分的に伸びる突起(歯)と窪み(歯間隙)の交互配置、特に直線、傾斜、二重または複数の歯列であると理解され、歯列または歯車は個別突起およびそれと相補的な歯であるのが好ましく、例えば、円形に分割されたサイクロイド状またはインボリュート状断面を有することができる。それらの歯列、特にはす歯状歯列またはインボリュート歯または円形歯を備える歯列は、運転中に発生するベルトの振動および騒音を有利に低減することができる。また、それらは特に正確な位置の測定を可能にする。
【0016】
張力要素、例えば、1個以上の案内ローラーまたはバネ力によって荷重をかけた張力器などはベルトを歯車に対して偏らせ、機械的な確実な係合を保証することができる。位置の測定を損なうベルトの振動はそれによってさらに低減し、または完全に抑制することができる。
【0017】
ベルトは単一または複数撚りのワイヤおよび/または合成材料糸のいくつかのケーブルまたはストランドを含むことができ、これは張力支持体として働き、例えば、弾性合成材料のベルト本体に包まれる。その場合、歯列はこの合成材料包体の一次形成によって作ることができる。好ましい開発において、本目的のための合成材料包体は歯列を有する1層以上の異なる材料、特に異なる合成材料の層を含むことができ、これは硬質であり、形状安定性および/または耐磨耗性であることが好ましい。
【0018】
好ましい実施形態において、歯車は絶対または相対角位置に相当する位置信号を発生する回転トランスミッタ、特にインクリメンタル回転トランスミッタまたは角度コード器に結合する。相対角位置に相当する位置信号を出力する回転トランスミッタは特に単純で経済的および/または堅牢に作ることができる。また、ケージの絶対位置はそれらの回転トランスミッタで完全な回転を合計することによって間接的に求めることができる。
【0019】
絶対角位置、したがってゼロ位置からの歯車の(部分)回転数を直接示す回転トランスミッタを用いることが有利である。したがって、例えば、回転トランスミッタの軸に巻きつけた紐はベルトの絶対位置を示すことができる。同様に、回転トランスミッタの完全な回転が歯車の数回転に相当するように、歯車を速度ステップアップ伝動式に回転トランスミッタに結合させることができる。回転トランスミッタはグレイコードを使用できることが特に有利である。特に好ましい実施形態において、絶対角位置を求めるために、回転トランスミッタは、各々1個以上の平行コードトラックを有して互いに速度ステップダウン伝動式に結合された2個以上のコードディスクを含む複数回転トランスミッタを含む。
【0020】
絶対角位置の出力は、位置、特に前に行われた歯車の完全な回転を記憶する必要がないという利点を有する。したがって、例えば、エネルギーの停止の後、ベルトの位置は、最初に参照位置まで再び動く必要がなく、絶対角位置の認識によって直接求めることができる。
【0021】
例えば、回転トランスミッタがそれぞれの階から始まるベルトの位置を示す、すなわち、ケージが1つの階を動いた後に再び同じ位置を示す混合形態も可能である。ベルトまたはケージの絶対位置は含まれる階の合計による論理システムの演算で再び求めることができる。それは、停止の場合に、最も近い階の扉に対するケージの位置を求めてケージを緊急脱出位置に確実に動かすには十分である。
【0022】
本発明によるシステムは、位置信号からエレベータケージの位置を求めるための演算ユニットをさらに含む。前に説明したように、これは回転トランスミッタから絶対または相対角位置を得ることができる。その場合の角位置は、歯車または回転トランスミッタによって行われた回転法2πで示され、絶対角位置は参照位置に対して行われた回転全体を示し、したがって、2πの倍数とすることができる。
【0023】
システムを動作させるためには、較正することが好ましく、演算ユニットが特にベルトの基準位置を記憶する。次いで、この基準位置から進んで、演算ユニットは、例えば、歯車の基準円半径を乗じることによって、回転トランスミッタの絶対角位置からのエレベータケージの理論的位置を求める。演算ユニットが相対角位置しか受け取らないならば、それは実施された完全な回転を合計してこれを相対角位置に加えた後、再びこの和に歯車の基準円半径を乗じる。
【0024】
ベルトは、ベルトの位置変化が直接エレベータケージの位置変化に一致しないように、例えば、ステップアップ伝動式またはステップダウン伝動式転換の滑車装置の形でエレベータケージに連結されて、すなわち、固定または偏向される。例えば、ベルトが自由ローラーによってエレベータケージに対して連結されるならば、演算ユニットは位置信号またはベルトの位置変化を半分にした後、そこから昇降路中のエレベータケージの位置を計算する。
【0025】
これらのベルトの位置とエレベータケージの間のシステム的な差以外に、ベルトが、例えば静的または動的負荷に起因して長手方向に伸びるならば、さらに他の偏差が起きる。したがって、好ましい開発において、演算ユニットは位置信号を補正する補正ユニットを含む。これに関して、例えば、エレベータケージの実際の重量を考慮する補正値は、このような場合に起きるベルトの伸びを表計算された値として記憶することができる。
【0026】
例えば、これが最大許容総重量に一致することが実際のケージ重量検出用デバイスによって確認され、また、試験または計算からベルトが公称重量に比較して10%伸びることが判れば、補正ユニットは、演算ユニットによって角位置に基づいて求められる理論的ケージ位置を10%補正する。
【0027】
同様に、例えば、エレベータケージによって起動される接触スイッチなど、さらに他の測定デバイスによって求められるケージ位置を、位置測定の補正に考慮することができる。したがって、例えば、演算ユニットによってベルトの位置に基づいて計算される理論的ケージ位置と、それらの測定デバイスによって検出される実際のケージ位置間の偏差は、例えばベルトの伸びに起因することがあり、補正ユニットで検出し記憶することができる。演算ユニットによって求められるケージ位置は、続いてこの記憶された偏差によって補正することができ、この偏差値は新しいケージ位置がさらに他の測定デバイスによって検出される度に直ちに更新することが有利である。
【0028】
実施形態の好ましい形によれば、ベルトは第1の側から離れた第2の側を有し、それによってベルトは駆動輪または駆動軸によって摩擦結合によって駆動される。
【0029】
特に好ましい実施形態において、ベルトはその第2側にベルトの長手方向に配列された少なくとも1つの楔リブまたは平坦面を有し、それによってベルトは駆動輪または駆動軸に接触するように配置される。それによって、より低いベルト張力で同じ駆動能力を有利に実現することができる。それらの低いベルト張力の場合、強いベルト振動が発生し、従来の検出器での位置測定を損なう欠点がある。しかし、第1ベルト側の歯列と第2ベルト側の楔リブの本発明による組み合わせは、前述のように、それらのベルト振動によって損なわれないベルトの位置測定を可能にする。それらの楔リブは駆動または偏向輪上のベルトを有利に横方向に案内する。それによって、ベルトの側部への動きが防止され、検出器による問題のない位置検出が可能になる。
【0030】
特に好ましい実施形態において、少なくとも1つの駆動および/または偏向輪と係合または接触する第2側の反対側の平ベルトの第1側に歯列を形成することができる。したがって、検出器の歯車に対して歯列の横断方向に発生する変位に対して、影響の少ない比較的広い歯列を実現することが可能である。さらに、駆動および/または偏向輪は歯列に向かってベルトを締め付け、したがって、歯の係合の信頼性と精度を高める。
【0031】
あるいは、歯列は平ベルトの狭い側に形成することもでき、1個以上の駆動および/または偏向輪に係合する側に対してほぼ直角に配列されるのが好ましい。平ベルトは、慣性の高い面モーメントのため曲げに関してその横方向に剛性があるので、それらの歯は形状がより安定することができ、位置測定を損なうベルトの変形は少ない。
【0032】
最後に、平ベルトとして作られるのが好ましいベルトは、歯列を有するその第1側を少なくとも1個の駆動および/または偏向輪の係合または接触させることもできる。第1側の反対側の第2側は偏向輪上の摩擦を低減するために平坦にすることができ、または同様に駆動または偏向輪中に案内プロファイルを有することができ、例えば、同様に歯列または1つ以上の楔リブを有することができる。ベルトは、1個以上の駆動および/または偏向輪と、歯列を有するその第1側によってのみ係合することができ、または、楔リブを有するのが好ましいその反対側の第2側によってのみ係合することができ、または、その第1と第2側によって係合することができる。
【0033】
特に好ましい実施形態において、ベルトは偏向および/または駆動輪の配置の周りを常に第1側と反対の同じ第2側でループを形成するので、歯列を保持するその第1側はこれらの偏向および/または駆動輪と接触しない。これは歯列を保護し、したがってシステムの使用期間を延長する。
【0034】
特に本目的のために、ベルトは、偏向および/または駆動輪配置の2つの輪の間でその長手軸の周りに捩ることができる。例えば、ベルトが2つの連続輪の周りで同じ面内であるが反対方向にループを作るならば、それが同じ(第2)側によって2個の輪の周りにループを作るように、ベルトはこれらの2個の輪の間でその長手軸の周りに180°捩ることができる。2つの連続輪の軸がそれに反して平行ではなく、例えば互いに直角に配列されているならば、ベルトは適切な角度、この場合90°捩ることができる。
【0035】
特に、ベルトに張力を加えないがこれを案内するだけの偏向輪は、一方でそれによって歯列の負荷がほとんどなく、他方、特に、例えば、二重螺旋歯列の場合、ベルトは横方向に十分案内されるので、歯列を設けたベルトの第1側と係合することができる、
本発明の一実施形態において、検出器はエレベータケージが動く昇降路中に慣性的に固定して配置される。これは検出器が発生した位置信号を慣性的に固定されたエレベータ制御に単純に伝達できる利点を有する。
【0036】
電気エネルギー供給が停止した場合、機械的に確実にベルトと協働してその位置を機械的に測定する本発明による歯車を設けた検出器は、電気エネルギーなしで位置測定が可能であり、したがって、ケージの緊急脱出位置への移動を手動によって駆動できることが好ましい。したがって、例えば、電力の停止の場合、通行人の脱出のために、位置を視覚的に指示する検出器を観察しながら、駆動エンジンの駆動輪を手動で回転することができる。それらの検出器はベルトの絶対位置を示すことが好ましい。この検出器の観察によって、脱出の場合、手動で上昇または降下されているケージが所定の緊急脱出位置(例えば、地上階)に達したときを確立することができる。
【0037】
歯車は駆動輪とエレベータケージの懸架の間に慣性固定式に配置され、釣合い錘領域のベルトの伸びが位置測定を損なわないことが好ましい。
【0038】
本発明の他の実施形態において、検出器はエレベータケージに配置される。したがって、位置はエレベータケージ内で直接可能である。他方、ベルトは通常1個以上の案内ローラーによってエレベータケージで案内され、それによって歯車に向かって有利に偏らせることができる。
【0039】
本発明のさらに他の目的、利点、および特徴は従属請求項および以下に説明する実施例から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1は昇降路7中を縦に移動可能なエレベータケージ1を備えるエレベータ装置を示す。ケージを上昇および降下させるために、ベルト2はその一端を昇降路(図示されない)中に固定され、そこからケージ1の屋根に配置された2個の偏向輪5、および電動機(図示されない)によって駆動される駆動輪4を通り、釣合い錘6の偏向輪まで走る。
【0041】
ベルトは平ベルトとして作られ、ポリウレタンのベルト本体中に張力支持体として数本のケーブルが配置される。それは駆動輪4および偏向輪5の周りに第2フラップ2.2(図1に黒く示される)でループを作る。これはベルトの長手方向に伸びるいくつかの楔リブを有し、駆動輪4と偏向輪5の相補溝に係合する。それによって、ベルト張力は大きく低減され、同時に駆動輪4の十分な駆動能力が確保される。
【0042】
ベルトが駆動輪4と隣り合う輪5の周りに逆向きにループを作る(図1において、釣合い錘6から出発するベルト2は、駆動輪4の周りを数学的に負に曲がり、隣り合う偏向輪5の周りを数学的に正に曲がる)ので、ベルト2はこれらの2個の輪4、5の間でその長手軸の周りに180°捩られ、いずれの場合も楔リブを設けられたその第2の平坦側2.2は輪4、5の案内面に係合する。
【0043】
検出器(図示されない)の歯車3Aが係合する歯列は、ベルト2の第2平坦側2.2の反対側の第1の平坦な側2.1(図1に白く示される)上に形成される。歯車3Aは、駆動輪4の近傍に昇降路7中に慣性的に固定して配置されるので、ベルト2は駆動輪4と歯車3Aによって案内される。歯車および駆動輪が、特に実質上ベルト厚さに一致する間隙に分離されて互いに十分近接して隣り合って配置されるならば、駆動輪はベルトを駆動輪に有利に押圧し、したがって、歯の上の飛び越しを防止し、位置検出の精度を高める。
【0044】
歯車3Aは、歯車の相対角位置、すなわち、その回転法2πを測定する回転トランスミッタ(図示されない)に接続され、相当する信号を演算ユニットに送達する。これは、その信号(すなわち、逆に回転の減算)に応答して既に発生した完全な回転を加え、得られる総角度(相対角位置プラス完全な回転)に歯車3Aの基準円半径を乗じることによって、ベルト2の絶対位置を求める。続いて演算ユニットはベルト2の滑車装置構成を考慮してこの値を半分にし、そこから昇降路7中のケージ1の位置を求める。
【0045】
ケージ1が昇降路扉の近傍に配置された接触スイッチ(図示されない)を起動する度に、補正ユニットはこの実際のケージ1の位置を検出し、ベルト位置から確かめた理論値と比較する。ベルト位置から確かめた値が、例えば、ベルトの伸びまたは歯車3Aの歯列の飛び越しによって、このようにして求めたケージ1の実際の位置から偏るならば、補正ユニットはこの偏差を記憶し、続いてそれを歯車の位置から求めた理論的なケージ位置に加える。
【0046】
ベルト位置は機械的な導出によって比較的正確に高い解像度で求められるので、時間で一次または二次微分することによってベルトの速度または加速度を正確に求めることも可能であり、特に、変化しないベルトの伸びを考慮する必要はない。これは、最大に発生する速度と加速度の値の監視、所定の速度プロファイルの走行(running down)、およびベルト2上の駆動輪4によって掛けられる張力の指数からケージの総質量および得られる加速度の推定を可能にする。
【0047】
図2は、図1に相当する本発明の第2実施形態によるエレベータケージの位置を検出するシステムを備えるエレベータ設備を示す。この場合、同じ要素には同じ参照符号が与えられるので、その説明のための前の記述を参照することができ、第1実施形態との相違点だけが以下に説明される。
【0048】
第2実施形態において、歯車3Bはケージ1に回転自在に配置され、1つの偏向輪5の近傍のベルト2の第1側2.1上の歯列に係合するので、ベルトは偏向輪5と歯車3Bの間を追加で案内される。
【0049】
歯車3Bは、エレベータケージ1の可能な最上部位置と最下部位置間の動きがコード化ディスクの完全な1回転に相当し、その間に歯車3Bが数回完全に回転するように、回転トランスミッタ(図示されない)に逓減伝動式に結合される。したがって、コード化ディスクの絶対角位置はベルト2の絶対位置を直接再生し、そこから、第1実施形態の場合のようにケージ1の位置を求めることができる。
【0050】
図3は、エレベータケージの支持および駆動手段ならびにその位置検出として働く前述のベルト2の部分を示す。ベルトは実質上平ベルトの形を有する。これは、第1側2.1に、図1および図2に示すように、その長手方向を横断して配列された歯を備える歯列(10)を有し、検出器の歯車が確実に係合する。ベルトはその第2平坦側2.2上に、ベルトの長手方向に伸びて駆動輪4と偏向輪5の相補溝に係合するいくつかの楔リブ8を有する。張力支持体はベルト2のベルト本体に一体化され、ワイヤケーブルまたは合成繊維で実施されるのが好ましく、参照符号5で示される。ベルト本体の強度はベルトに発生する張力を伝達するのに十分ではないので、張力支持体が必要である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態によるエレベータケージの位置を検出するためのシステムを備えるエレベータ装置を示す概略図である。
【図2】本発明の第2実施形態によるエレベータケージの位置を検出するためのシステムを備えるエレベータ装置を示す図1に相当する概略図である。
【図3】エレベータケージの位置検出に使用可能なベルトの部分図である。
【符号の説明】
【0052】
1 エレベータケージ
2 ベルト
2.1 第1側
2.2 第2側
3A、3B 歯車
4 駆動輪
5 偏向輪
6 釣合い錘
7 昇降路
8 楔リブ
10 歯列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータケージが懸架されるベルト(2)と、ベルトの位置を検出するための検出器とを含み、ベルトが、第1側(2.1)に検出器の歯車(3A、3B)が機械的に確実に係合する歯列(10)を有することを特徴とする、エレベータケージ(1)の位置を検出するためのシステム。
【請求項2】
歯車が、絶対角位置または相対角位置に相当する位置信号を発生する回転トランスミッタに結合することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
位置信号からエレベータケージの位置を求める演算ユニットをさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
演算ユニットが位置信号を補正するための補正ユニットを含むことを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
ベルト(2)が、第1側(2.1)から離れた第2側(3.2)を有し、それによってベルト(2)が摩擦結合によって駆動輪(4)または駆動軸によって駆動されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
ベルト(2)が、第1側から離れた第2側(2.2)上に1つ以上の楔リブ(8)または平坦面を有し、それによってベルト(2)が駆動輪(4)または駆動軸に接触するように配置されることを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
ベルトが偏向および/または駆動輪(4、5)の配置の周りに同じ側でループを作ることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
ベルトが偏向および/または駆動輪配置の2個の輪の間で、その長手軸の周りに特に180°捩られることを特徴とする、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
検出器が、エレベータケージの動く昇降路(7)に慣性的に固定されて配置されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
検出器がエレベータケージに配置されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
歯車(3A、3B)の角位置を検出するステップと、この角位置からエレベータケージの位置を求めるステップとを含む請求項1から10のいずれか一項に記載のシステムによるエレベータケージ(1)の位置を検出する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−94625(P2008−94625A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−261637(P2007−261637)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(390040729)インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト (166)
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】