説明

エレベータシステム

【課題】睡眠中の子供を連れた利用者の利便性を向上させることが可能なエレベータシステムを提供することである。
【解決手段】エレベータシステム10は、睡眠中の子供の存在を登録するための登録釦31と、登録釦31が操作されたことを条件としてスリーピングモードを起動し実行する各手段を有する制御装置50と、を備える。制御装置50は、案内音の音量を低減する音量変更手段51と、かご内照明装置23の照度を低減する照度変更手段52と、乗りかご12内および乗場13の一般利用者100に対して、睡眠中の子供の存在を知らせる報知手段53と、ドアの閉扉速度を遅くするドア開閉速度変更手段54と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータシステムに関し、より詳しくは、子供(幼児)を連れた利用者の利便性を改良するエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デパート等では、ベビーカーや車椅子優先のエレベータが設定されている。このようなエレベータには、特定利用者の優先エレベータであることが乗場(例えば、乗場ドア)に表示されている。また、車椅子の利用者が操作可能な低い位置に操作釦が設置される等、特有の設備が備えられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一般乗客が通過したか車椅子が通過したかを判別する車椅子判別手段を備えたエレベータが開示されている。そして、特許文献1には、車椅子用乗場釦が操作されたとき、戸開待機時間を延長すると共に戸閉速度を遅く設定すること、車椅子が乗りかご内に乗り込んでいることを検出しているとき、乗場インフォメーションの音声又は表示により乗場で乗りかごを待つ一般乗客に車椅子が乗りかご内に乗車していることを知らせること等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10‐87242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のエレベータを含む従来のエレベータには、ベビーカーの利用者、子供(幼児)を連れた利用者の利便性を向上させる設備は搭載されていない。
【0006】
従来のエレベータの問題点としては、乗りかごが乗場に到着した際に出力される到着チャイムや音声ガイド等の案内音が例示できる。案内音は、利用者に対して乗りかごが乗場に到着したこと等を知らせて利便性を向上させるものであるが、当該案内音により睡眠中の子供が起きることがよくあり、子供を連れた利用者にとっては不便な場合がある。
【0007】
即ち、本発明の目的は、睡眠中の子供を連れた利用者の利便性を向上させることが可能なエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエレベータシステムは、少なくとも乗場又は乗りかご内に設置され、睡眠中の子供の存在を登録するための登録釦と、登録釦が操作されたことを条件として、案内音の音量を低減する音量変更手段を有する制御装置と、を備えることを特徴とする。
当該構成によれば、登録釦が操作されたことを条件として、つまり乗場又は乗りかご内に睡眠中の子供がいる場合に、案内音の音量が低減される。したがって、睡眠中の子供が案内音によって起きることを防止できる。また、案内音を低減するスリーピングモードは、登録釦が操作された場合に限定して実行されるため、登録釦が操作されないときには通常の大きな案内音が出力されるので、一般利用者(睡眠中の子供を連れた利用者以外)の利便性も十分に維持することができる。即ち、当該構成によれば、一般利用者の利便性を維持しながら、睡眠中の子供を連れた利用者の利便性を向上させることが可能である。
【0009】
また、制御装置は、登録釦が操作されたことを条件として、乗りかご内に設置された照明装置の照度を低減する照度変更手段を有することが好ましい。即ち、スリーピングモードにかご内照明装置の照度低減手順を追加することが好ましい。
当該構成によれば、登録釦が操作されたことを条件として、かご内照明装置の照度が低減される。したがって、睡眠中の子供がかご内照明装置の明るさによって起きることを防止できる。
【0010】
また、制御装置は、登録釦が操作されたことを条件として、少なくとも乗場の利用者又は乗りかご内の利用者に対して、睡眠中の子供の存在を知らせる報知手段を有することが好ましい。即ち、スリーピングモードに睡眠中の子供の存在を知らせる手順を追加することが好ましい。
当該構成によれば、乗場又は乗りかご内に睡眠中の子供がいる場合に、睡眠中の子供の存在を乗場又は乗りかご内の利用者に知らせることができる。したがって、利用者に静かな行動を促し、睡眠中の子供が利用者から発せられる会話等の音によって起きることを防止できる。
【0011】
また、制御装置は、登録釦が操作されたことを条件として、ドアの閉扉速度を遅くするドア開閉速度変更手段を有することが好ましい。即ち、スリーピングモードにドアの閉扉速度を遅くする手順を追加することが好ましい。
当該構成によれば、乗場又は乗りかご内に睡眠中の子供がいる場合に、ドアの閉扉速度を遅くできる。したがって、睡眠中の子供を連れた利用者、特にベビーカーを持った利用者の乗降が容易になる。
【0012】
また、本発明に係るエレベータシステムは、乗場又は乗りかご内に設置され、睡眠中の子供の存在を検出する検出装置と、検出装置により睡眠中の子供が検出されたことを条件として、案内音の音量を低減する音量変更手段を有する制御装置と、を備える構成とすることもできる。
【0013】
なお、音量変更手段は、案内音の指向性を制御して、乗りかごの床部近傍、つまりベビーカーに乗った睡眠中の子供の高さにおける案内音の音量を下げてもよい。例えば、かご内スピーカから音楽が流れている場合には、子守唄に切り替えてもよいし、子守唄の種類によっては、音量レベルを維持できる場合も想定される。また、照度変更手段は、かご内照明装置の照射方向を変更して乗りかごの床部近傍における光量を低減してもよい。
また、一般利用者の利便性をできるだけ確保する観点から、例えば、登録釦の操作場所に応じて、案内音の音量低減やかご内照明装置の照度低減を実行するタイミングを変更してもよい。音量変更手段等は、例えば、アドレス付きの登録釦の操作信号を取得することで登録釦が操作された乗場を特定でき、乗りかごの位置を取得することで、登録釦が操作された乗場と乗りかごとの位置関係を把握できる。そして、乗りかごが、登録釦が操作された乗場に到着した時点から、案内音の音量低減等を実行できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るエレベータシステムによれば、睡眠中の子供を連れた利用者の利便性を向上させることが可能である。また、スリーピングモードは、登録釦が操作された場合又は検出装置により睡眠中の子供が検出された場合に限定して実行されるため、一般利用者の利便性も十分に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態であるエレベータシステムの全体構成を模式的に示す図である。
【図2】図1のシステムにおいて、乗りかご内を示す図である。
【図3】図1のシステムにおいて、乗場を示す図である。
【図4】図1のシステムにおいて、スリーピングモードの制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を用いて、本発明に係るエレベータシステムの実施形態につき、以下詳細に説明する。なお、以下では、上部機械室14を有するロープ式のエレベータシステム10を例示して説明するが、本発明の適用はこれに限定されず、機械室レスエレベータや油圧式エレベータにも適用することができる。また、本発明は、複数のエレベータが併設されたシステムにも適用することができる。
【0017】
図1に例示するエレベータシステム10は、高層建造物(例えば、高層マンション等)に設置されたシステムである。図1では、エレベータシステム10の構成等を説明するために、乗りかご12が下階側に進み、乗りかご12内、乗場13A、および乗場13Cに一般利用者100がおり、乗場13Bに睡眠中の子供102を連れた利用者101(以下、対象利用者101とする)がいる様子を例示している。
なお、本明細書において、「一般利用者100」とは、対象利用者101以外の利用者を意味する。「睡眠中の子供102」とは、対象利用者101がベビーカー等に乗せて移動可能な子供、具体的には、就学前の幼児・乳幼児(赤ちゃん)を想定する。
【0018】
図1に示すように、エレベータシステム10は、昇降路11内において、乗りかご12が各階床に設置された乗場13の間を昇降する昇降装置(エレベータ)と、その動作を制御する制御装置50とで構成されるシステムである。なお、昇降装置には、利用者が乗りかご12の昇降を操作するための操作盤(例えば、乗場操作盤27)等が含まれる。
【0019】
昇降路11は、建造物内等に鉛直方向に貫通して設けられた乗りかご12の昇降通路である。昇降路11の最下部には、図示しないピットが設けられ、昇降路11の上部には、上部機械室14が設けられる。上部機械室14には、乗りかご12を昇降させる巻上げ機15や制御装置50が設置されている。巻上げ機15のシーブには、一端が乗りかご12の上部、他端がカウンターウエイト(図示せず)に連結された主ロープ16が巻きかけられている。ゆえに、巻上げ機15を駆動させることで主ロープ16が巻上げられ又は送り出されて、乗りかご12が昇降路11内を昇降することになる。
【0020】
乗りかご12は、利用者が乗り込むことのできる室内スペースを有し、巻上げ機15の駆動により昇降路11内を昇降する。乗りかご12内の壁面には、制御装置50と接続されたかご内操作盤17が設置されている。かご内操作盤17は、行き先階釦18、ドア開閉釦19、乗りかご12の方向等を表示するかご内インジケータ20、およびかご内表示部21等を有している。
【0021】
また、乗りかご12には、音声ガイド等を出力するためのかご内スピーカ22、かご内照明装置23、かごドア24(図2参照)、かごドア24を開閉するかごドア開閉装置25等が設置されている。
【0022】
乗場13は、各階床に設けられた乗りかご12の乗降口である。乗場13の壁面は、かごドア24に追従して開閉する乗場ドア26(図3参照)および制御装置50と接続された乗場操作盤27が設置されている。乗場操作盤27は、呼び登録釦28、乗りかご12の位置等を表示する乗場インジケータ29、乗場表示部30、および登録釦31等を有している。なお、本明細書において、「ドア」と言うときには、かごドア24および乗場ドア26を意味する。
【0023】
ここで、図2および図3を参照し、乗りかご12内および乗場13の設備(構成要素)、特に、かご内表示部21、かご内スピーカ22、乗場表示部30、および登録釦31について詳述する。
【0024】
図2に示すように、乗りかご12内の壁面には、かごドア24の近傍にかご内操作盤17が設置されている。そして、かご内操作盤17は、例えば、その上部にかご内表示部21を有している。
かご内表示部21は、登録釦31が操作されたことを条件として後述する報知手段53の機能によって作動し、乗りかご12に睡眠中の子供が乗ってくること又は睡眠中の子供が乗っていることを、乗りかご12内の利用者に知らせるための表示装置である。表示装置の機種や設置場所は、特に限定されず、例えば、「赤ちゃんが寝ています。お静かにお願いします。」等のメッセージ(案内・情報)を表示する液晶表示装置や電光掲示板、又は「赤ちゃん」と印字されたランプが点灯する表示装置であってもよい。
【0025】
かご内スピーカ22は、音声ガイドを出力するための装置であって、例えば、かご内操作盤17の上方に位置する壁面に設置されている。かご内スピーカ22から出力される音声ガイドとしては、乗りかご12の運転方向や停止階、ドアの開閉等の情報が例示できる。また、かご内スピーカ22から館内放送やBGMを流すこともできる。さらに、乗りかご12又は乗場13には、乗りかご12が乗場13に到着したことを知らせる図示しない到着チャイムを設置することができる。
なお、本明細書では、かご内スピーカ22から出力される音声ガイド(BGM等を含む)や到着チャイムから出力されるチャイム音を、「案内音」と称して説明する。
【0026】
また、かご内照明装置23は、通常、乗りかご12内の天井部に設置される。かご内照明装置23は、デザイン等に応じて種々の機種や個数、配置を選定することができ、例えば、乗りかご12内を均等に照らす照明設備や乗りかご12内の一部を明るく照らすスポットライトなどを用いることができる。
【0027】
図3(a)に示すように、乗場13の壁面には、乗場ドア26の近傍に乗場操作盤27が設置されている。そして、乗場操作盤27は、例えば、呼び登録釦28と乗場インジケータ29との間に、乗場表示部30および登録釦31を有している。
乗場表示部30は、かご内表示部21と同様に、登録釦31が操作されたことを条件として報知手段53の機能によって作動し、睡眠中の子供が乗りかご12に乗っていることを、乗場13で待つ利用者に知らせるための表示装置である。なお、表示装置としては、例えば、かご内表示部21と同様のものを用いることができ、機種や設置場所等は特に限定されない。
【0028】
登録釦31は、睡眠中の子供の存在を登録するための釦である。即ち、対象利用者101は、登録釦31を操作することで、スリーピングモードを起動させることができる。ここで、スリーピングモードとは、登録釦31が操作されたことを条件として実行される制御モードであって、睡眠中の子供を起こさないようにするための制御モードである。なお、登録釦31の形状や設置場所等は特に限定されないが、操作し易いように、乗場操作盤27に組み込まれていることが好ましい。
【0029】
図3(b)に示すように、乗場操作盤27と、乗場インジケータ29とが別々に配置された形態であってもよい。例えば、乗場操作盤27は、乗場ドア26の側方に位置する壁面に配置され、乗場インジケータ29は乗場ドア26の上方に位置する壁面に配置される。そして、乗場操作盤27に登録釦31を配置し、乗場インジケータ29に乗場表示部30を配置することができる。
乗場表示部30に表示されるメッセージとしては、例えば、「眠っている赤ちゃんが乗っています。」など、乗場13で待つ一般利用者100に対して、睡眠中の子供が乗りかご12に乗っていることを認識させることができるものであれば特に限定されない。
【0030】
制御装置50は、昇降装置を構成する各要素の動作を統一的に制御する装置である。例えば、制御装置50は、かご内操作盤17の操作に基づき、巻上げ機15に指令を与えて乗りかご12の昇降運転を制御する等の機能を有する。
さらに、制御装置50は、スリーピングモードを実行するための手段として、音量変更手段51と、照度変更手段52と、報知手段53と、ドア開閉速度変更手段54と、を有する。
【0031】
なお、制御装置50は、CPUと、上記各手段の機能を実行する際に使用される制御パラメータ等の入力に用いられる入力部と、入力した制御パラメータ、制御プログラムなどを記憶する記録部と、入出力ポートなどを備える装置であって、コンピュータによって構成することができる。各機能は、ソフトウェアを実行することで実現でき、具体的には、対応するエレベータ制御プログラムを実行することにより実現できる。
【0032】
音量変更手段51は、登録釦31が操作されたことを条件として、案内音の音量を低減する機能を有する。つまり、音量変更手段51は、登録釦31が操作されたときに、登録釦31の操作信号を取得し、かご内スピーカ22や到着チャイムに対して音量低減の制御指令を出力する。なお、案内音の音量は、子供の眠りを妨げないレベルまで低減することが好ましいが、案内音の出力を一時的に中止してもよい。音量低減のレベル等(かご内照明装置23の照度低減レベル、ドアの閉扉速度の低減レベルについても同様)は、予め定められており、例えば、制御装置50の記憶部に記憶されている。
【0033】
また、音量変更手段51は、登録釦31の操作と同時(略同時)に、案内音の音量を下げることもできるが、一般利用者100の利便性をできるだけ確保する観点から、登録釦31の操作場所等に応じて音量低減の実行時期を変更することが好ましい。登録釦31の操作信号は、操作された登録釦31を特定する情報(アドレス)、つまり登録釦31が操作された乗場13の位置情報を含むことができ、音量変更手段51は、登録釦31が操作された乗場13(以下、登録釦31が操作された乗場13を乗場13Bとし、乗場13Bに関連する設備の符号にBを付して説明する)を特定することができる。
【0034】
音量変更手段51は、例えば、乗りかご12の位置情報を取得し、乗りかご12が乗場13Bに到着するまでの間は、案内音の音量を通常運転状態に維持する。そして、乗りかご12が乗場13Bに到着したことを判定して、案内音の音量を予め定めたレベルまで下げ、スリーピングモードが解除されるまで当該低音量レベルを維持する。ここで、乗場13Bにおける到着チャイム音や到着予報のチャイム音は、登録釦31の操作情報を取得した時点で、その音量を低減又は消音しておくことができる。
また、案内音の指向性を制御して、乗りかご12の床部近傍、つまりベビーカーに乗った睡眠中の子供102の高さにおける音量を下げてもよい。
【0035】
照度変更手段52は、登録釦31が操作されたことを条件として、乗りかご12内に設置されたかご内照明装置23の照度を低減する機能を有する。つまり、照度変更手段52は、登録釦31が操作されたときに、登録釦31の操作信号を取得し、かご内照明装置23に対して照度低減の制御指令を出力する。なお、かご内照明装置23の照度は、子供の眠りを妨げないレベルまで低減されるが、かご内照明装置23が複数設置されている場合には、一部のかご内照明装置23を消灯してもよい。
また、スポットライトのような照明装置においては、その照射方向を変更する等して乗りかご12の床部近傍における光量を低減してもよい。
【0036】
また、照度変更手段52は、登録釦31の操作と同時(略同時)に、かご内照明装置23を暗くすることもできるが、一般利用者100の利便性をできるだけ確保する観点から、登録釦31の操作場所等に応じて照度低減の実行時期を変更することが好ましい。例えば、照度変更手段52は、乗場13Bを特定し、乗りかご12の位置情報を取得して、乗りかご12が乗場13Bに到着するまでの間は、かご内照明装置23の照度を通常運転状態に維持することができる。そして、乗りかご12が乗場13Bに到着したことを判定して、かご内照明装置23の照度を予め定めたレベルまで下げ、スリーピングモードが解除されるまで当該低照度レベルを維持する。例えば、乗場13Bでドアの開扉が開始した時点や完了した時点で、かご内照明装置23を暗くすることができる。
【0037】
報知手段53は、登録釦31が操作されたことを条件として、乗りかご12内および乗場13の一般利用者100に対して、睡眠中の子供の存在を知らせる機能を有する。つまり、報知手段53は、登録釦31の操作信号を取得し、乗りかご12に設置されたかご内表示部21および乗場13に設置された乗場表示部30に対して、予め定めたメッセージを表示させるための制御指令を出力する。
【0038】
また、報知手段53は、登録釦31の操作と同時(略同時)に、全ての乗場13の乗場表示部30を作動させることもできるが、登録釦31の操作場所等に応じて作動させる乗場表示部30を変更することが好ましい。例えば、報知手段53は、乗場13Bを特定して、乗場13Bより下階側の乗場13(乗場13C等)の乗場表示部30に対して選択的に制御指令を出力し、乗場13Bより上階側の乗場13(乗場13A等)の乗場表示部30を作動させない。また、呼び登録釦28が操作された乗場13の乗場表示部30のみを作動させることもできる。
【0039】
ドア開閉速度変更手段54は、登録釦31が操作されたことを条件として、ドアの閉扉速度を遅くする機能を有する。つまり、ドア開閉速度変更手段54は、登録釦31の操作信号を取得し、かごドア開閉装置25に対してドアの閉扉速度を遅くするための制御指令を出力する。併せて、ドア開閉速度変更手段54は、ドアの開放時間を延長することが好ましい。
【0040】
また、ドア開閉速度変更手段54は、登録釦31の操作と同時(略同時)に、ドアの閉扉速度を遅くすることもできるが、一般利用者の利便性をできるだけ確保する観点から、登録釦31の操作場所等に応じて、実行時期や実行する乗場13を変更することが好ましい。例えば、ドア開閉速度変更手段54は、乗場13Bを特定し、乗りかご12の位置情報を取得して、乗りかご12が乗場13Bに到着するまでの間は、ドアの閉扉速度を通常運転状態に維持することができる。そして、乗りかご12が乗場13Bに到着したことを判定して、乗場13Bにおけるドアの閉扉速度を予め定めたレベルまで下げる。
【0041】
ドア開閉速度変更手段54は、乗場13Bより下階側の全ての乗場13(乗場13C等)におけるドアの閉扉速度を遅くすることもできるが、行き先階釦18が操作されている乗場13のみ、或いは対象利用者101が降りる乗場13(以下、乗場13Xとする)のみにおいて、ドアの閉扉速度を遅くすることが好ましい。
乗場13Xを特定する方法としては、乗場13Bに到着後、乗場13Cに到着するまでの間に操作された行き先階釦18に対応する乗場13を、乗場13Xとして登録する方法がある。また、対象利用者101に乗場13Xを登録させる方法(登録操作方法は案内表示等で知らせる)、例えば、登録釦31に隣接して行き先階を登録するためのテンキー等を設置する、又は行き先階釦18を特殊操作(長押し等)させる等の方法が挙げられる。
【0042】
なお、対象利用者101が乗りかご12から降りたときや乗りかご12の運転方向が反転したときに、スリーピングモードを解除して通常運転モードを復旧することができる。対象利用者101が乗りかご12から降りたことは、上記乗場13Xの特定方法や乗りかご12内に設置された監視カメラを用いる方法によって把握できる。例えば、音量変更手段51、照度変更手段52等が、乗場13Xの登録情報を取得し、乗りかご12の位置情報を取得する。そして、乗りかご12が乗場13Xを過ぎたことを判定して、スリーピングモードを解除し通常運転モードを復旧する。つまり、乗場13Xにおいてドアの閉扉が完了した時点で通常運転モードを復旧する。
【0043】
ここで、図4の制御手順フローチャートを参照して、上記構成を備えるエレベータシステム10による制御方法を説明する。なお、制御方法の説明は、図1に示す状態(乗りかご12が下階側に進み、乗場13Bに対象利用者101がいる状態)を例示して行う。
【0044】
まず初めに、登録釦31の操作信号を取得する(S10)。対象利用者101は、登録釦31Bを操作することによりスリーピングモードを起動することができる。操作信号の取得は、例えば、制御装置50の各手段の機能によってそれぞれ実行される。
また、登録釦31の操作信号には、操作された登録釦31を特定する情報(アドレス)が含まれ、制御装置50の各手段は、登録釦31が操作された乗場13Bを特定することができる。さらに、制御装置50の各手段は、乗りかご12の位置情報も取得する。
【0045】
次に、乗場13Bより下階側の乗場13の乗場表示部30およびかご内表示部21を作動させて、「睡眠中の子供が乗っていること」や「睡眠中の子供が乗ってくること」を一般利用者100に知らせる(S11)。例えば、乗場13Cの乗場表示部30Cには、「眠っている赤ちゃんが乗っています。」等のメッセージを出力することができる。なお、この手順は、報知手段53の機能によって実行される。報知手段53は、乗場13Bを特定し、乗りかご12の位置を取得して、制御指令を出力する乗場表示部30を決定する。
【0046】
次に、乗りかご12が乗場13Bに到着したか否かを判定(到着判定)する(S12)。なお、この手順は、例えば、音量変更手段51、照度変更手段52、およびドア開閉速度変更手段54の機能によって実行される。音量変更手段51等は、乗場13Bを特定し、乗りかご12の位置を取得して、到着判定を行う。
【0047】
そして、S12で乗りかご12が乗場13Bに到着したと判定されたときには、かご内スピーカ22および到着チャイム等の案内音の音量を低減させる(S13)。なお、乗場13Bにおける到着チャイム音や到着予報のチャイム音は、登録釦31の操作情報を取得した時点で、その音量を低減又は消音しておくことができる。
さらに、かご内照明装置23の照度を低減させる(S14)。かご内照明装置23を暗くするタイミングとしては、例えば、乗場13Bでドアの開扉が完了した時点とすることができる。S13およびS14の手順は、それぞれ音量変更手段51および照度変更手段52の機能によって実行される。
【0048】
また、乗場13Bにおけるドアの閉扉速度を遅くする(S15)。この手順は、ドア開閉速度変更手段54の機能によって実行される。なお、ドアの閉扉速度の低減は、乗場13B以下の特定乗場13で実行され、例えば、行き先階釦18が操作されている乗場13、又は上記方法によって特定された乗場13Xにおいて実行される。また、ドアの閉扉速度を遅くすることに加えて、ドアの開放時間を延長することが好ましい。
【0049】
最後に、スリーピングモードの解除条件を満たすか否かを判定する(S16)。スリーピングモードの解除条件を満たすと判定されたときには、スリーピングモードを解除して通常運転モードを復旧する(S17)。S16およびS17の手順は、例えば、制御装置50の各手段の機能によってそれぞれ実行される。
なお、スリーピングモードの解除条件としては、上記のように、対象利用者101が乗りかご12から降りたことや乗りかご12の運転方向が反転したことが挙げられる。
【0050】
以上のように、エレベータシステム10は、睡眠中の子供の存在を登録するための登録釦31と、登録釦31が操作されたことを条件としてスリーピングモードを起動し実行する各手段を有する制御装置50と、を備える。制御装置50は、案内音の音量を低減する音量変更手段51と、かご内照明装置23の照度を低減する照度変更手段52と、乗りかご12内および乗場13の一般利用者100に対して、睡眠中の子供の存在を知らせる報知手段53と、ドアの閉扉速度を遅くするドア開閉速度変更手段54と、を有する。
上記構成を備えるエレベータシステム10によれば、案内音を小さくし、かご内照明装置23を暗くして、一般利用者100に静かな行動を促すことができるので、睡眠中の子供102が起きないようにすることができる。また、エレベータシステム10では、上記のように、スリーピングモードの起動条件、実行範囲を限定しているので、一般利用者100の利便性を十分に維持しながら、対象利用者101の利便性を向上させることが可能である。
【0051】
なお、上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で設計変更することができる。
例えば、上記では、登録釦31の操作により上記スリーピングモードが起動されるものとして説明したが、乗りかご12内又は乗場13に、睡眠中の子供の存在を検出する検出装置を備え、検出装置により睡眠中の子供が検出されたときに、上記スリーピングモードを起動させてもよい。即ち、検出装置により睡眠中の子供が検出されたことを条件として、音量変更手段51の機能によりかご内スピーカ22等から出力される案内音の音量を低減すること、照度変更手段52の機能によってかご内照明装置23の照度を低減すること、報知手段53の機能によって睡眠中の子供の存在を知らせること、およびドア開閉速度変更手段54の機能によってドアの閉扉速度の遅くすることを実行することができる。
検出装置としては、例えば、画像センサが例示できる。画像センサを用いて、子供の表情(目を瞑っているか?)や動きを検出して睡眠中か否かを判定することができる。
【0052】
また、上記では、報知手段53により作動される装置として、かご内表示部21および乗場表示部30を例示したが、当該装置は、音声により睡眠中の子供の存在を知らせるスピーカ等であってもよい。
また、上記では、ドア開閉速度変更手段54は、スリーピングモードにおいてドアの閉扉速度を遅くするとして説明したが、ドアの開閉速度を遅くしてもよい。
また、登録釦31および検出装置は、少なくとも乗場13に設置されていることが好ましいが、乗りかご12内のみに設置されていてもよい。また、乗場13および乗りかご12内の両方に設置されていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 エレベータシステム、11 昇降路、12 乗りかご、13 乗場、14 上部機械室、15 巻上げ機、16 主ロープ、17 かご内操作盤、18 行き先階釦、19 ドア開閉釦、20 かご内インジケータ、21 かご内表示部、22 かご内スピーカ、23 かご内照明装置、24 かごドア、25 かごドア開閉装置、26 乗場ドア、27 乗場操作盤、28 呼び登録釦、29 乗場インジケータ、30 乗場表示部、31 登録釦、50 制御装置、51 音量変更手段、52 照度変更手段、53 報知手段、54 ドア開閉速度変更手段、100 一般利用者、101 睡眠中の子供を連れた利用者(対象利用者)、102 睡眠中の子供。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも乗場又は乗りかご内に設置され、睡眠中の子供の存在を登録するための登録釦と、
登録釦が操作されたことを条件として、案内音の音量を低減する音量変更手段を有する制御装置と、
を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータシステムにおいて、
制御装置は、登録釦が操作されたことを条件として、乗りかご内に設置された照明装置の照度を低減する照度変更手段を有することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエレベータシステムにおいて、
制御装置は、登録釦が操作されたことを条件として、少なくとも乗場の利用者又は乗りかご内の利用者に対して、睡眠中の子供の存在を知らせる報知手段を有することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載のエレベータシステムにおいて、
制御装置は、登録釦が操作されたことを条件として、ドアの閉扉速度を遅くするドア開閉速度変更手段を有することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項5】
乗場又は乗りかご内に設置され、睡眠中の子供の存在を検出する検出装置と、
検出装置により睡眠中の子供が検出されたことを条件として、案内音の音量を低減する音量変更手段を有する制御装置と、
を備えることを特徴とするエレベータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−121690(P2012−121690A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273979(P2010−273979)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】