説明

エレベータシステム

【課題】エレベータシステムにおいて、乗りかごから降りようとする乗客と、乗りかごに乗ろうとする乗客によるエレベータホールの混雑を緩和することである。
【解決手段】エレベータシステム10は、1つの乗りかご20の互いに隣接する側壁に、乗り口扉30と降り口扉40が設けられる。乗りかご20の乗り口扉30に対応する乗場扉150が設けられる乗り口壁面130と、降り口扉40に対応する乗場扉160が設けられる降り口壁面140は、エレベータホール100において張り出すように配置される。エレベータホール100は、乗りかご20に乗ろうとする乗客8のための領域110と、降りようとする乗客6のための領域120が区別されて、案内板192が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータシステムに係り、特に、乗りかごが2つの開閉扉を有し、各階の乗場においても、乗りかごの2つの開閉扉に対応して2つの開閉扉を備えるエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、建物を縦方向に縦貫する昇降路の中を、運行指示に従って乗りかごを昇降させる昇降装置である。エレベータを備える建物には、各階において、エレベータに乗降するためのエレベータホールと呼ばれるスペースが設けられる。エレベータホールには、エレベータをその階に呼ぶための呼びボタンと、エレベータがその階に到着したときに開閉する乗場扉が設けられる。乗場扉の近傍には、エレベータが現在どの階にいるかを示す表示ランプ、エレベータがその階に到着することを知らせる点滅ランプ等が設けられることが多い。
【0003】
一般的なエレベータは、乗りかごに1つの開閉扉が設けられ、乗りかごが運行指示に従って所定の乗降階に到着すると、その開閉扉が開き、これに同期してその乗降階の乗場扉が開閉する。これによって、乗りかごの乗客の中でその乗降階で降りることを希望して予め乗りかごの中に設けられる降り階登録ボタンを用いて、乗りかごがその乗降階に止まることを指示した乗客は、開かれた扉を通ってその乗降階に行くことができる。また、その乗降階から他の階に行くことを希望して、その乗降階のエレベータホールの呼びボタンを用いて、乗りかごがその乗降階に止まることを指示した乗客は、開かれた扉を通って、乗りかごに乗り込むことができる。乗り込んだ乗客は、乗りかごの中に設けられる降り階登録ボタンを用いて、希望の階に乗りかごが止まることを指示できる。
【0004】
このように、一般的なエレベータは、乗りかごの1つの開閉扉を用いて、乗客の乗降が行われる。ところで、特別な用途においては、乗りかごに2つの開閉扉が設けられるものがある。
【0005】
例えば、特許文献1には、寝台用、荷物用、自動車用として、対向する出入り口を2個設けるエレベータが述べられている。このようなエレベータでは、荷物等をかご内に搬入する際にその荷物で前方の視野が妨げられることがあるのでかご床面を確認できるミラーをかご天井に設ける必要があるが、荷物搬入出の邪魔にならないように、小さなミラーとなることを指摘している。ここでは、第1出入口のドアが開くと、そこから出入する物体に対し邪魔にならない方向にミラーが移動し、第1出入口のドアが閉じると元の位置にミラーが戻り、同様に、第2出入口のドアが開くと、そこから出入する物体に対し邪魔にならない方向にミラーが移動し、第2出入口のドアが閉じると元の位置にミラーが戻ることが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、乗りかごの正面および背面の互いに対向する側壁にそれぞれドアが設けられたいわゆる2ドア方式のエレベータでは、2方向の各ドアの開閉がそれぞれ個別に操作できる必要があるので、かご内操作盤が各ドアに対応して間隔をあけて2個設けられていたことが述べられている。ここでは、1つのかご内操作盤に2つの各かご内操作の機能をまとめ、具体的には、行先階登録ボタンを共通として、開閉ボタンを各ドアごとにそれぞれ設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−278326号公報
【特許文献2】特開平11−199161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、一般的なエレベータは、乗りかごの1つの開閉扉を用いて、乗客の乗降が行われる。換言すれば、乗りかごがその階に到着して、乗りかごの開閉扉とその階の乗場扉が開くと、乗りかごの中の乗客が降りようとし、一方でエレベータホールの乗客が乗り込もうとして、一時的に混雑する状況が発生する。特に、エレベータホールに多くの乗車待ちの乗客がいる場合には、乗場扉付近の乗車待ちの乗客が横方向に広がって待機している状況が発生する。
【0009】
このような状況で、乗りかごがその階に到着して、乗りかごの開閉扉とその階の乗場扉が開くと、この横方向に広がった乗車待ちの乗客が我先に乗りかごに乗り込もうとして、混雑がひどくなり、また、乗りかごの中の乗客がその階に降りようとすることを妨げる。あたかも、ラッシュアワー時の電車の乗降と同様な事態が生じることになる。
【0010】
従来技術の2つの開閉扉を有する乗りかごは、対向する側壁にそれぞれ開閉扉が設けられる。したがって、一方側の扉から乗り込んで、これに対向する他方側の扉から降りるので、同じ開閉扉で乗り込むことと降りることがないので、上記の状況が発生しない。このように、乗りかごの対向する側壁にそれぞれ開閉扉を有するエレベータシステムは、乗りかごを挟んで、正面側が乗り口、裏側が降り口となる。したがって、駅、荷物集積場等の特別な構造の施設に利用できるが、その制約のため、エレベータホールで乗ることも降りることもできる一般的なエレベータシステムにそのまま適用することができない。
【0011】
本発明の目的は、乗りかごから降りようとする乗客と、乗りかごに乗ろうとする乗客によるエレベータホールの混雑を緩和できるエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るエレベータシステムは、2つのかご扉が設けられる乗りかごと、2つのかご扉に対応して各乗降階において2つの乗場扉が設けられるエレベータシステムであって、乗りかごは、乗りかごの複数の側壁の内の1つの側壁に設けられる乗り口扉と、乗り口扉が設けられる側壁に隣接する他の側壁に設けられる降り口扉と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、1つの乗りかごに対し、特定の乗降階について、乗るための呼びと、降りるための呼びの双方がある場合には、乗りかごが特定の乗降階に到達したときに、最初に、降りるための呼びに対応して乗りかごの降り口扉とこれに対応する乗場扉を開き、つぎに、予め定められた所定の余裕時間をおいて、乗るための呼びに対応して乗りかごの乗り口扉とこれに対応する乗場扉を開き、特定の乗降階について、乗るための呼び、または、降りるための呼びのいずれか一方がある場合には、乗りかごが特定の乗降階に到達したときに、呼びに対応するかご扉と乗場扉を開く扉開閉制御部を備えることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、各乗降階のエレベータホールのレイアウトについて、乗りかごの乗り口扉に対応する乗場扉が設けられる乗り口壁面に垂直な方向と、乗りかごの降り口扉に対応する乗場扉が設けられる降り口壁面に垂直な方向とが異なる方向を向くように、乗り口壁面と降り口壁面とをエレベータホールに張り出して配置し、乗り口壁面の前に集まるエレベータに乗る乗客と、降り口壁面の乗場扉から降りる乗客とを分離することが好ましい。
【0015】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、各乗降階のエレベータホールのレイアウトについて、偶数台のエレベータが配置される場合には、互いに隣接して配置される2つのエレベータについての乗り口壁面を互いに向かい合うように配置することが好ましい。
【0016】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、エレベータホールに、乗り口と降り口を区別して案内する案内表示を設けることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、案内表示は、乗り口の乗場扉の色と、降り口の乗場扉の色とを異ならせる表示であることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、案内表示は、エレベータホールの乗り口壁面の前の床の色と、降り口壁面の前の床の色とを異ならせる表示であることが好ましい。
【0019】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、乗りかごは、呼び登録用ボタンが乗りかご内の対向する隅にそれぞれ配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
上記構成により、エレベータシステムにおいて、乗りかごは、乗りかごの複数の側壁の内の1つの側壁に設けられる乗り口扉と、乗り口扉が設けられる側壁に隣接する他の側壁に設けられる降り口扉とを備える。従来技術のように乗りかごの互いに対向する2つの側壁にそれぞれ開閉扉を設けるのでなく、隣接する側壁の1つに、乗りかごに乗るための専用の乗り口扉を設け、もう1つに、乗りかごから降りるための専用の降り口扉を設ける。したがって、降りようとする乗客と乗ろうとする乗客とは別々の扉を利用するので、エレベータホールにおいて、降りようとする乗客の流れと、乗ろうとする乗客の流れとはぶつかることがない。これにより、乗りかごから降りようとする乗客と、乗りかごに乗ろうとする乗客によるエレベータホールの混雑を緩和できる。
【0021】
また、エレベータシステムにおいて、1つの乗りかごに対し、特定の乗降階について、乗るための呼びと、降りるための呼びの双方がある場合には、降りるための呼びに対応して乗りかごの降り口扉とこれに対応する乗場扉を先に開き、その後に、乗るための呼びに対応して乗りかごの乗り口扉とこれに対応する乗場扉を開く。このようにすることで、乗りかごの中においても、乗りかごから降りようとする乗客と、乗りかごに乗ろうとする乗客による混雑を緩和できる。
【0022】
また、エレベータシステムにおいて、各乗降階のエレベータホールのレイアウトは、乗りかごの乗り口扉に対応する乗場扉が設けられる乗り口壁面に垂直な方向と、乗りかごの降り口扉に対応する乗場扉が設けられる降り口壁面に垂直な方向とが異なる方向を向くようにして、乗り口壁面と降り口壁面とをエレベータホールに張り出して配置する。これによって、エレベータホールにおいて、降りようとする乗客の流れと、乗ろうとする乗客の流れは、全く異なる方向を向く。したがって、乗りかごから降りようとする乗客と、乗りかごに乗ろうとする乗客によるエレベータホールの混雑を緩和できる。
【0023】
また、エレベータシステムにおいて、偶数台のエレベータが配置される場合には、互いに隣接して配置される2つのエレベータについての乗り口壁面を互いに向かい合うように配置する。これにより、乗ろうとする乗客は分散せずに集まるので、乗りかごから降りようとする乗客とぶつかる機会を効果的に抑制できる。
【0024】
また、エレベータシステムにおいて、エレベータホールに、乗り口と降り口を区別して案内する案内表示を設ける。案内表示としては、乗り口の乗場扉の色と、降り口の乗場扉の色とを異ならせる。また、案内表示は、エレベータホールの乗り口壁面の前の床の色と、降り口壁面の前の床の色とを異ならせる。このようにすることで、乗ろうとする乗客を効果的に乗り口の方に誘導でき、乗りかごから降りようとする乗客とぶつかる機会を効果的に抑制できる。
【0025】
また、エレベータシステムにおいて、乗りかごは、呼び登録用ボタンが乗りかご内の対向する隅にそれぞれ配置される。これにより、乗りかごが混雑しても、近くの呼び登録用ボタンを利用できるので、特に、降り口扉から離れたところにいて、降りようとする乗客にとって、便利である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る実施の形態のエレベータシステムについて、エレベータホールから見た様子を説明する図である。
【図2】図1のエレベータシステムについての平面図である。
【図3】本発明に係る実施の形態のエレベータシステムにおいて、乗るための呼びと降りるための呼びの双方があるときの降り口扉と乗り口扉の開閉の関係を説明する図である。
【図4】図3と比較して、降りるための呼びのみがあるときの降り口扉の開閉の様子を説明する図である。
【図5】図3と比較して、乗るための呼びのみがあるときの降り口扉の開閉の様子を説明する図である。
【図6】本発明に係る実施の形態のエレベータシステムにおいて、4台の乗りかごの場合の構成を説明する図である。
【図7】本発明に係る実施の形態のエレベータシステムにおいて、別の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、乗りかごの平面形状が矩形である場合を説明するが、これは説明のための例示であって、隣接する側壁の一方に乗り口扉、他方に降り口扉が設けられていれば、他の平面形状であってもよい。例えば、多角形の平面形状を有する乗りかごであってもよい。また、隣接する側壁は、90度の角度をなすものとして説明するが、これは説明のための例示であって、0度と180度を除く90度以外の角度であればよい。
【0028】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0029】
図1は、エレベータシステム10の構成について、エレベータホール100から見た様子を用いて説明する図である。図2は、図1の平面図である。このエレベータシステム10は、1つの乗りかご20に2つの開閉扉を有し、エレベータホール100において、その1つの開閉扉から乗りかご20から乗客6が降り、もう1つの開閉扉には、乗車待ちの乗客8が乗りかごに乗り込むことができるものである。
【0030】
エレベータシステム10は、建物12において、縦方向に縦貫する昇降路14に乗りかご20が、昇降路15に乗りかご22がそれぞれ配置され、図示されていない制御装置からの運行指示に従って、乗りかご20,22が昇降する昇降システムである。昇降路14,15にそれぞれ配置される釣り合い重り16,17は、乗りかご20,22の運行時のバランスを取るための重りである。釣り合い重り16と乗りかご20は、建物12の最上部に設けられる滑車を介してロープで接続される。同様に、釣り合い重り17と乗りかご22も、建物12の最上部に設けられる滑車を介してロープで接続される。
【0031】
乗りかご20,22は、構成要素の配置が対称的となっていることを除けば、同じ内容であるので、乗りかご20に代表させてその内容を説明する。
【0032】
乗りかご20は、平面形状がほぼ正方形で、4つの側壁を有し、乗客を収容する昇降かごである。
【0033】
4つの側壁の1つに設けられる乗り口扉30は、乗りかご20に乗ろうとする乗客のための開閉扉である。乗り口扉30が設けられ側壁に隣接する側壁に設けられる降り口扉40は、乗りかご20から降りようとする乗客のための開閉扉である。乗りかご20の平面形状が正方形であるので、乗り口扉30と降り口扉40とは、その扉面が互いに直交する方向に配置される。これを、乗り口扉30から乗客6が乗り込む方向と、降り口扉40から乗客6が降りる方向についてみると、乗り込む方向と降りる方向は、互いに直交する。換言すれば、乗り口扉30の扉面に垂直な方向と、降り口扉40の扉面に水中置くな方向とは、互いに直交する。
【0034】
乗り口扉30の開閉と、降り口扉40の開閉は、図示されていない制御装置によって、降り口扉40の開扉が乗り口扉30の開扉よりも優先するように制御される。その詳細については後述する。
【0035】
乗り口扉30と降り口扉40は、上記の開扉制御を除けば、同じ構成を有するので、元々は相互に区別できない開閉扉である。乗り口扉30が乗りかご20に乗ろうとする乗客8のための専用の開閉扉であり、降り口扉40が乗りかご20から降りようとする乗客6のための専用の開閉扉として機能するのは、上記の開扉制御と、エレベータホール100における案内表示によるものである。案内表示の詳細については後述する。
【0036】
乗りかご20に設けられる操作盤50,60は、行き先階登録ボタンを含み、乗りかご20の中の乗客によって運行指示が与えられる機能を有する。操作盤50,60は、乗りかご20の4つの隅のうち、互いに対向する関係にある2つの隅の近傍にそれぞれ配置される。図2の例では、降り口扉40が設けられる側壁の端部に操作盤60が設けられ、乗り口扉30が設けられる側壁の端部に操作盤50が設けられる。このように配置することで、乗りかご20内が混雑している場合等において、降り口扉40から離れたところにいる乗客でも、操作盤60まで行かなくても、操作盤50を操作することで、容易に行き先登録をすることができる。
【0037】
次に、エレベータホール100について、そのレイアウトを中心に説明する。建物12において、各階のエレベータホール100のレイアウトは同じである。図1は、建物12における3階のエレベータホール100の様子を示す図である。図1の状態は、乗りかご20がちょうど3階に到着して、乗客6が乗りかご20から降り、まもなく乗客8が乗りかご20に乗ろうとするときである。建物12において、各階のエレベータホールのレイアウトは、図1、図2と同様である。
【0038】
エレベータホール100は、乗りかご20の乗り口扉30と降り口扉40、乗りかご22の乗り口扉32と降り口扉42の合計4つの開閉扉の全てが、片側の壁側に面するように、全体のレイアウトが配置される。ここで、乗りかご20,22は正方形の平面形状を有し、乗りかご20の乗り口扉30と降り口扉40とは互いに隣接してその扉面に垂直な方向が互いに直交し、同様に、乗りかご20の乗り口扉30と降り口扉40とは互いに隣接してその扉面に垂直な方向が互いに直交する。
【0039】
したがって、エレベータホール100のレイアウトは、以下のようにされる。すなわち、乗場扉150は、乗りかご20の乗り口扉30に対応する開閉扉である。乗場扉150が設けられる壁面を乗り口壁面130と呼ぶことにする。乗場扉160は、乗りかご20の降り口扉40に対応する開閉扉である。乗場扉160が設けられる壁面を降り口壁面140と呼ぶことにする。乗り口扉30の扉面に垂直な方向と降り口扉40の扉面に垂直な方向とが互いに直交することに対応して、乗り口壁面130に垂直な方向と、降り口壁面140に垂直な方向とは、互いに異なる方向を向く。具体的には互いに直交する方向を向く。
【0040】
同様に、乗場扉152は、乗りかご22の乗り口扉32に対応する開閉扉である。乗場扉152が設けられる壁面を乗り口壁面132と呼ぶことにする。乗場扉162は、乗りかご22の降り口扉42に対応する開閉扉である。乗場扉162が設けられる壁面を降り口壁面142と呼ぶことにする。乗り口扉32の扉面に垂直な方向と降り口扉42の扉面に垂直な方向とが互いに直交することに対応して、乗り口壁面132に垂直な方向と、降り口壁面142に垂直な方向とは、互いに異なる方向を向く。具体的には互いに直交する方向を向く。
【0041】
乗りかご20に対応する降り口壁面140と乗り口壁面130は、エレベータホール100において張り出すように配置される。同様に、乗りかご22に対応する降り口壁面142と乗り口壁面132は、エレベータホール100において張り出すように配置される。このようにして、そして、乗場扉160,150,152,162が、エレベータホール100の片側の壁側に面するように配置される。
【0042】
乗り口壁面130において、乗場扉150の上部の壁面に設けられる運行表示板170と、乗り口壁面132において、乗場扉152の上部の壁面に設けられる運行表示板172は、それぞれ乗りかご20,22が現在どの階にいるかを表示する機能を有する。図1の例では、乗りかご20は3階にいることと、乗りかご22は1階にいることが示されている。
【0043】
降り口壁面140において、乗場扉160の上部の壁面に設けられる表示ランプ180と、降り口壁面142において、乗場扉162の上部の壁面に設けられる表示ランプ182は、それぞれ乗りかご20,22がその階にいるか否かを表示する機能を有する。図1の例では、乗りかご20は3階にいることと、乗りかご22は3階にいないことが示されている。
【0044】
乗り口壁面130と乗り口壁面132の間の壁面に設けられる呼びボタン190は、乗客8によって、乗りかご20または乗りかご22をこの階、すなわち3階に呼ぶ指令を与えるための押しボタンである。呼びボタン190は、この階から降階するか、この階から昇階するかを区別するため、2種類のボタンが用意される。図1では、この階から昇階する指示を与える押しボタンが点灯しているので、3階から上層階へ行くために乗りかご20または乗りかご22が呼ばれていることが示されている。
【0045】
乗り口壁面130と降り口壁面140の間の壁面と、乗り口壁面132と降り口壁面142の間の壁面にそれぞれ設けられる案内板192,193は、乗り口扉30,32に対応する乗場扉150,152がどちら方向にあるのか、降り口扉40,42に対応する乗場扉160,162がどちら方向にあるのかを案内する表示板である。すなわち、案内板192,193は、エレベータホール100において、乗り口がどちら方向にあるのか、降り口がどちら方向にあるのかを案内する機能を有する。
【0046】
エレベータホール100において、乗り口壁面130,132に面する領域110の床面の色は、降り口壁面140,142に面する領域120,122の床面の色と異なる色が用いられる。図1,2では、領域110に縞線をつけることでそのことを示した。また、乗り口壁面130,132に設けられる乗場扉150,152の扉面の色は、降り口壁面140,142に設けられる乗場扉160,162の扉面の色と異なる色が用いられる。図1,2では、乗場扉150,152の扉面に縞線をつけることでそのことを示した。これらの色の相違も、エレベータホール100において、乗り口がどちら方向にあるのか、降り口がどちら方向にあるのかを案内する機能を有する。
【0047】
このように、案内板192,193の方向表示、領域110と領域120,122における床面の色の相違の表示、乗場扉150,152と乗場扉160,162における扉面の色の相違の表示によって、乗りかご20,22に乗ろうとする乗客8は、乗り口とされる乗場扉150,152に効果的に誘導される。これによって、乗り口扉30,32が乗りかご20,22に乗ろうとする乗客8のための専用の開閉扉であり、降り口扉40,42が乗りかご20,22から降りようとする乗客6のための専用の開閉扉として機能することになる。
【0048】
次に、乗り口扉30,32の開閉と、降り口扉40,42の開閉制御について図3から図5を用いて説明する。図3から図5の横軸は時間で、縦軸は上方から下方に向かって、降り呼びの有無、乗り呼びの有無、降り口扉の開閉、乗り口扉の開閉についてのそれぞれの状態である。
【0049】
乗り呼びの有無は、エレベータホール100における呼びボタン190によって与えられる指示である。図1の例では、3階のエレベータホール100で呼びボタン190において、昇階呼びを示す押しボタンが押されているので、3階における乗り呼びがある状態である。
【0050】
降り呼びの有無は、乗りかご20,22の操作盤50,52,60,62によって与えられる指示である。図1の例では、3階のエレベータホール100に乗りかご20から乗客6が降りているので、その直前においては、3階における降り呼びがあったことになる。
【0051】
以下では、乗りかご20が時間t0で、建物12のN階に到着する場合を例として説明する。図3は、N階に対して、降り呼びがあり、乗り呼びもある場合で、N階=3階として、図1の場合がこれに相当する。図4は、N階に対して、降り呼びがあり、乗り呼び画無い場合である。図4は、N階に対して、降り呼びが無く、乗り呼びがある場合である。
【0052】
図3のように、N階に対して、降り呼びがあり、乗り呼びもある場合には、時間t0で乗りかご20がN階に到着し着床すると、まず乗りかご20の降り口扉40と、これに対応する乗場扉160が開く。これによって、N階に降りようとする乗客6は、開いた降り口扉40と乗場扉160から、N階のエレベータホール100の領域120に降りることになる。つぎに、予め定められた所定の余裕時間をおいて時間t1になると、乗りかご20の乗り口扉30とこれに対応する乗場扉150が開く。これによって、エレベータホール100の領域110において乗車待ちの乗客8が、開いた乗り口扉30と乗場扉150から乗りかご20に乗ることになる。
【0053】
このように、乗りかご20がN階に着床すると、エレベータホール100の降り口のための領域120において、降り口扉40と乗場扉160が開き、所定の余裕時間をおいて、エレベータホール100の乗り口のための領域110において、乗り口扉30と乗場扉150が開く。この制御は、図示されていない制御装置の扉開閉制御部の機能によって実行される。これによって、乗りかご20におけるN階に降りようとする乗客6を、N階のエレベータホール100の降り口のための領域120に確実に誘導することができる。
【0054】
図4のように、N階に対して、降り呼びのみがある場合は、時間t0で乗りかご20がN階に到着し着床すると、乗りかご20の降り口扉40と、これに対応する乗場扉160が開く。これによって、N階に降りようとする乗客6は、開いた降り口扉40と乗場扉160から、N階のエレベータホール100の領域120に降りることになる。乗り口扉30とこれに対応する乗場扉150は開かない。これによって、乗りかご20におけるN階に降りようとする乗客6を、N階のエレベータホール100の降り口のための領域120に確実に誘導することができる。
【0055】
図5のように、N階に対して、乗り呼びのみがある場合は、時間t0で乗りかご20がN階に到着し着床すると、乗りかご20の乗り口扉30と、これに対応する乗場扉150が開く。降り口扉40とこれに対応する乗場扉160は開かない。これによって、エレベータホール100の乗り口のための領域110の乗車待ちの乗客8は乗りかご20に乗ることができる。なお、床の色の相違に気付かず、また案内板192の表示を見落として領域120で待っていた乗客がいるとしても、その乗客は、乗りかご20に乗ることができない。もっとも、呼びボタン190は領域110にあって、領域120にないので、そのような乗客がいることはほとんどないと考えられる。
【0056】
上記では、建物12に2台のエレベータが備えられるものとして説明したが、1台のエレベータでもよく、また、3台以上の場合でも、エレベータホール100のレイアウトを降り口のための領域と乗り口のための領域とを区別するようにできる。このようにすることで、同じエレベータホール100において、乗りかごに乗ろうとする乗客の流れと、乗りかごから降りる乗客の流れとを分離し、ぶつかったりすることを効果的に防止し、乗りかごに対する乗降をスムーズなものとできる。
【0057】
図6は、4台の乗りかご20,22,24,26が運行するエレベータシステム11のエレベータホール102のレイアウトの例である。このように、偶数台のエレベータが配置される場合には、互いに隣接して配置される2つのエレベータについての乗り口壁面を互いに向かい合うように配置することがよい。図6の例では、乗りかご20,22についての乗り口壁面を互いに向かい合わせ、乗りかご24,26についての乗り口壁面を互いに向かい合わせる。これにより、両端の降りるための領域120,126は、まとめられないが、乗り口のための領域110,112と、降り口のための領域124が、それぞれ2台の乗りかごに共通の領域として、効果的にまとめることができる。
【0058】
上記では、1つの乗りかごについての乗り口壁面と降り口壁面とをエレベータホールに張り出して配置するものとして説明した。図7は、乗り口壁面と降り口壁面を張り出さないレイアウトのエレベータホール104を有するエレベータシステム13の例を示す図である。ここでは、乗りかご28の乗り口壁面と乗りかご29の乗り口壁面が、まっすぐな1つの壁面とされる。これによって、乗り口のための領域114は、図1のように三角形の領域でなく、一般的なエレベータホールのように、幅が一様な通路的なものとなっている。また、乗りかご28の降り口壁面と、乗りかご29の降り口壁面は、この乗り口のための領域114から直角方向に延びる通路的な領域128,129に面するように配置される。
【0059】
このように、図7のエレベータシステム13によれば、エレベータホール104のレイアウトを、従来から一般的に用いられるエレベータホールのレイアウトにかなり近いものとできる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係るエレベータシステムは、複数のエレベータを備える建物におけるエレベータシステムに利用できる。
【符号の説明】
【0061】
6,8 乗客、10,11,13 エレベータシステム、12 建物、14,15 昇降路、16,17 釣り合い重り、30,32 乗り口扉、40,42 降り口扉、50,52,60,62 操作盤、100,102,104 エレベータホール、110,112,114 (乗り口のための)領域、120,122,124,126,128,129 (降り口のための)領域、130,132 乗り口壁面、140,142 降り口壁面、160,150,152,162 乗場扉、170,172 運行表示板、180,182 表示ランプ、190 呼びボタン、192,193 案内板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのかご扉が設けられる乗りかごと、2つのかご扉に対応して各乗降階において2つの乗場扉が設けられるエレベータシステムであって、
乗りかごは、
乗りかごの複数の側壁の内の1つの側壁に設けられる乗り口扉と、
乗り口扉が設けられる側壁に隣接する他の側壁に設けられる降り口扉と、
を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータシステムにおいて、
1つの乗りかごに対し、特定の乗降階について、乗るための呼びと、降りるための呼びの双方がある場合には、乗りかごが特定の乗降階に到達したときに、最初に、降りるための呼びに対応して乗りかごの降り口扉とこれに対応する乗場扉を開き、つぎに、予め定められた所定の余裕時間をおいて、乗るための呼びに対応して乗りかごの乗り口扉とこれに対応する乗場扉を開き、
特定の乗降階について、乗るための呼び、または、降りるための呼びのいずれか一方がある場合には、乗りかごが特定の乗降階に到達したときに、呼びに対応するかご扉と乗場扉を開く扉開閉制御部を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベータシステムにおいて、
各乗降階のエレベータホールのレイアウトについて、乗りかごの乗り口扉に対応する乗場扉が設けられる乗り口壁面に垂直な方向と、乗りかごの降り口扉に対応する乗場扉が設けられる降り口壁面に垂直な方向とが異なる方向を向くように、乗り口壁面と降り口壁面とをエレベータホールに張り出して配置し、乗り口壁面の前に集まるエレベータに乗る乗客と、降り口壁面の乗場扉から降りる乗客とを分離することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のエレベータシステムにおいて、
各乗降階のエレベータホールのレイアウトについて、
偶数台のエレベータが配置される場合には、互いに隣接して配置される2つのエレベータについての乗り口壁面を互いに向かい合うように配置することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項5】
請求項3に記載のエレベータシステムにおいて、
エレベータホールに、乗り口と降り口を区別して案内する案内表示を設けることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のエレベータシステムにおいて、
案内表示は、乗り口の乗場扉の色と、降り口の乗場扉の色とを異ならせる表示であることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項7】
請求項5に記載のエレベータシステムにおいて、
案内表示は、エレベータホールの乗り口壁面の前の床の色と、降り口壁面の前の床の色とを異ならせる表示であることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項8】
請求項3に記載のエレベータシステムにおいて、
乗りかごは、
呼び登録用ボタンが乗りかご内の対向する隅にそれぞれ配置されることを特徴とするエレベータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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