説明

エレベータドアの制御装置

【課題】各階床でトルク指令の異常を精度良く検出するために必要なメモリの容量を小さくすることができるエレベータドアの制御装置を提供する。
【解決手段】エレベータドアが基準階で開閉した際に、エレベータドアを開閉させるモータへのトルク指令のパターンに基づいて、基準階の異常検出トルクパターンを算出するための基準トルク指令パターンを記憶する第1保存部25と、エレベータドアが各階で開閉した際に、トルク指令のパターンを加速区間、一定速区間、減速区間に分けて、各階の各区間におけるトルク指令のピーク値及び各階の各区間の切替位置の少なくとも一方を補正用データとして記憶する第2保存部26と、各区間において、基準階の補正用データと前記基準階以外の階の補正用データとを比較して、各区間における基準階の基準トルク指令パターンから、各区間における基準階以外の階の異常検出トルクパターンを算出するための基準トルク指令パターンを生成する生成部27と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータドアの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータドアの制御装置として、各階床でトルク指令パターンを複数回収集し、各階床の基準トルク指令パターンを求め、各階床の異常検出トルクパターンを生成するものが提案されている。この制御装置によれば、各階床でトルク指令の異常を精度良く検出することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4443411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のものにおいては、基準トルク指令パターンを各階床分記憶する必要がある。このため、基準トルク指令パターンを記憶するメモリの容量が大きい。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、各階床でトルク指令の異常を精度良く検出するために必要なメモリの容量を小さくすることができるエレベータドアの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータのドア制御装置は、エレベータドアが基準階で開閉した際に、前記エレベータドアを開閉させるモータへのトルク指令のパターンに基づいて、前記基準階の異常検出トルクパターンを算出するための基準トルク指令パターンを記憶する第1保存部と、前記エレベータドアが各階で開閉した際に、トルク指令のパターンを加速区間、一定速区間、減速区間に分けて、前記各階の各区間におけるトルク指令のピーク値及び前記各階の各区間の切替位置の少なくとも一方を補正用データとして記憶する第2保存部と、前記各区間において、前記基準階の補正用データと前記基準階以外の階の補正用データとを比較して、前記各区間における前記基準階の基準トルク指令パターンから、前記各区間における前記基準階以外の階の異常検出トルクパターンを算出するための基準トルク指令パターンを生成する生成部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、各階床でトルク指令の異常を精度良く検出するために必要なメモリの容量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータドアの制御装置が利用されるかごドアの正面図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエレベータドアの制御装置のブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるエレベータドアの制御装置が利用されるエレベータドアの速度パターンとトルクパターンとを示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1におけるエレベータのドア制御装置による異常検出トルクパターンの生成手順を説明するためのフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1におけるエレベータのドア制御装置によるメモリの使用量を説明するための図である。
【図6】この発明の実施の形態2におけるエレベータのドア制御装置のブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態2におけるエレベータドアの制御装置が利用されるエレベータドアの速度パターンとトルクパターンとを示す図である。
【図8】この発明の実施の形態2におけるエレベータのドア制御装置による異常検出トルクパターンの生成手順を説明するためのフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態2におけるエレベータのドア制御装置によるメモリの使用量を説明するための図である。
【図10】この発明の実施の形態3におけるエレベータのドア制御装置のブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態3におけるエレベータのドア制御装置による異常検出トルクパターンの生成手順を説明するためのフローチャートである。
【図12】この発明の実施の形態3におけるエレベータのドア制御装置によるメモリの使用量を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータドアの制御装置が利用されるかごドアの正面図である。
【0011】
図1は戸閉したかごドア1が矢印方向に開こうとしている状態を示したものである。図1に示すように、かごドア1の上部には、ガイドローラ2が設けられる。かごの出入口(図示せず)の上方には、ガイドレール3が設けられる。ガイドレール3の上面には、ガイドローラ2が回転移動自在に配置される。
【0012】
ガイドレール3の両端の上方には、プーリ4が設けられる。プーリ4には、突出ベルト5が巻き回される。下側の突出ベルト5には、連結具6の一方の上端が固定される。連結具6の一方の下端は、かごドア1の一方の上端の対向位置に連結される。上側の突出ベルト5には、連結部の他方の上端が固定される。連結具6の他方の下端は、かごドア1の他方の上端の対向位置に固定される。
【0013】
プーリ4の軸には、減速機構として、減速プーリ7が軸支される。減速プーリ7の斜め上方には、モータ8が配置される。減速プーリ7とモータ8の中心軸とには、ベルト9が巻き回される。モータ8近傍には、パルスエンコーダ10が設けられる。パルスエンコーダ10は、制御装置11に接続される。
【0014】
制御装置11は、モータ8を回転させる。この回転時のトルクは、ベルト9、減速プーリ7、プーリ4、突出ベルト5、連結具6を介して、かごドア1に伝達される。このトルクにより、かごドア1がガイドレール3に沿って開閉する。かごドア1に連動して、乗場ドア(図示せず)も開閉する。
【0015】
乗場ドアの意匠は、各階床で異なる。これに伴い、乗場ドアの質量も各階床で異なる。このため、制御装置11は、パルスエンコーダ10により検出されたモータ8の回転速度に基づいて、モータ8の回転を修正する。
【0016】
次に、図2を用いて、制御装置11を具体的に説明する。
図2はこの発明の実施の形態1におけるエレベータドアの制御装置のブロック図である。
【0017】
図2において、12は制御基板である。制御基板12は、3相(U、V、W)のモータ8を駆動する機能を備える。具体的には、制御基板12は、コンバータ13、インバータ14、平滑コンデンサ15、ゲート信号発生装置16、第1電流センサ17、第2電流センサ18を備える。
【0018】
コンバータ13は、直流電力を出力する機能を備える。すなわち、コンバータ13は、直流電源として機能する。インバータ14は、コンバータ13から出力された直流電力を交流電力に変換する機能を備える。すなわち、コンバータ13とインバータ14とは、モータ8を駆動するパワー回路として機能する。
【0019】
平滑コンデンサ15は、コンバータ13から出力された直流電力を安定化する機能を備える。ゲート信号発生装置16は、インバータ14にゲート信号を出力する機能を備える。第1電流センサ17は、U相電流を検出する機能を備える。第2電流センサ18は、V相電流を検出する機能を備える。
【0020】
19は制御マイコンである。制御マイコン19は、エレベータドアの運転状況を管理するとともに、制御基板12によるモータ8の駆動を制御する機能を備える。具体的には、制御マイコン19は、入出力ポート20、速度指令発生部21、速度アンプ22、電流アンプ23、PWMユニット24備える。
【0021】
入出力ポート20は、外部との間で信号を入出力する機能を備える。例えば、入出力ポート20には、かご呼び等のエレベータドアの外部信号、パルスエンコーダ10の出力パルス、階床情報n、第1電流センサ17からのU相電流信号、第2電流センサ18からのV相電流信号が入力される。
【0022】
速度指令発生部21、速度アンプ22、電流アンプ23、PWMユニット24は、ドア開閉制御手段として機能する。具体的には、速度指令発生部21は、通常動作時の速度指令V*を生成する機能を備える。速度アンプ22は、エレベータドアの動作中の開閉速度Vが速度指令V*と一致するように、トルク指令Tr*を生成する機能を備える。電流アンプ23は、U相、V相電流信号に基づいて、トルク指令Tr*を増幅する機能を備える。PWMユニット24は、増幅されたトルク指令Tr*に基づいて、PWM 信号を生成し、ゲート信号発生装置16に送出する機能を備える。
【0023】
制御マイコン19は、トルク指令Tr*の異常を検出する機能を備える。具体的には、制御マイコン19は、第1基準トルク指令パターン生成部25、トルク指令ピーク保存部26、第2基準トルク指令パターン生成部27、異常検出トルクパターン生成部28、過負荷検出動作判断部29を備える。
【0024】
第1基準トルク指令パターン生成部25は、階床情報nとトルク指令Tr*とに基づいて、基準階の基準トルク指令パターンTpを生成する機能を備える。具体的には、第1基準トルク指令パターン生成部25は、エレベータドアが基準階で標準速度で開閉した際に、トルク指令Tr*を複数回収集して演算処理した基準階の基準トルク指令パターンTpを記憶する保存部として機能する。
【0025】
トルク指令ピーク保存部26は、階床情報nとトルク指令Tr*とに基づいて、トルク指令Tr*のピーク値Tpkを生成する機能を備える。具体的には、トルク指令ピーク保存部26は、エレベータドアが各階で開閉した際に、各階のトルク指令Tr*のパターンを加速区間、一定速区間、減速区間に分けて、各階の各区間におけるトルク指令Tr*のピーク値Tpkを補正用データとして記憶する機能を備える。
【0026】
第2基準トルク指令パターン生成部27は、階床情報nと基準階の基準トルク指令パターンTpとトルク指令Tr*のピーク値Tpkとに基づいて、基準階以外の階の基準トルク指令パターンTpnを生成する機能を備える。
【0027】
異常検出トルクパターン生成部28は、基準階の基準トルク指令パターンTp又は基準階以外の階の基準トルク指令パターンTpnに基づいて、各階の異常検出トルクパターンTerを生成する機能を備える。過負荷検出動作判断部29は、異常検出トルクパターンTerとトルク指令Tr*とに基づいて、過負荷検出動作を判断する機能を備える。
【0028】
このような制御装置11においては、過負荷検出動作判断部29が過負荷を検出した場合、速度指令発生部21、速度アンプ22、電流アンプ23、PWMユニット24は、エレベータドアを停止させる。
【0029】
次に、図3を用いて、各階の異常検出トルクパターンTerの生成方法を説明する。
図3はこの発明の実施の形態1におけるエレベータドアの制御装置が利用されるエレベータドアの速度パターンとトルクパターンとを示す図である。
【0030】
図3の上段は、エレベータドアの標準的な速度パターンを示したものである。図3の上段の横軸は時間である。図3の上段の縦軸は速度である。
【0031】
図3の上段に示すように、エレベータドアは、開閉開始直後、加速する。この区間は加速区間として設定される。その後、エレベータドアは、一定速となる。この区間は一定速区間として設定される。その後、エレベータドアは、減速して停止する。この区間は減速区間として設定される。
【0032】
図3の中段は、基準階の基準トルク指令パターンTpと異常検出トルクパターンTerとを示したものである。図3の中段の横軸はエレベータドアの位置である。図3の中段の縦軸はトルクである。
【0033】
第1基準トルク指令パターン生成部25は、基準トルク指令パターンTpとして、各ドア位置に対応した複数のトルク指令Tr*を記憶する。異常検出トルクパターン生成部28は、これらのトルク指令Tr*に異常検出マージンを加え、基準階の異常検出トルクパターンTerを生成する。この際、トルク指令ピーク保存部26は、基準階の各区間におけるトルク指令Tr*のピーク値Tpkを記憶する。
【0034】
図3の下段は、基準階以外の階の基準トルク指令パターンTpnと異常検出トルクパターンTerとを示したものである。図3の下段の横軸はエレベータドアの位置である。図3の下段の縦軸はトルクである。
【0035】
基準階以外の階でも、トルク指令ピーク保存部26は、各区間におけるトルク指令Tr*のピーク値Tpkを記憶する。第2基準トルク指令パターン生成部27は、各区間に対し、基準階のトルク指令Tr*のピーク値Tpkと基準階以外の階のトルク指令Tr*のピーク値Tpkとの差をトルク指令パターン補正値ΔTeとして生成する。
【0036】
第2基準トルク指令パターン生成部27は、トルク指令パターン補正値ΔTeを用いて、各区間における基準階の基準トルク指令パターンTpから、次の(1)式で示される基準階以外の階の基準トルク指令パターンTpnを生成する。
【0037】
Tpn(x)=Tr*(x)+Tr*(x)×ΔTe/Tpk (1)
ただし、Tpn(x)は、ドア位置xに対応した基準階以外の階のトルク指令パターンである。Tr*(x)は、ドア位置xに対応した基準階のトルク指令である。Tpkは、基準階のトルク指令Tr*のピーク値である。
【0038】
このように、トルク指令パターン補正値ΔTeの割合は、基準階のトルク指令パターンTpに対して一様に用いられるのではない。すなわち、トルク指令パターン補正値ΔTeの割合は、基準階のトルク指令パターンTpの大きさによって変化するように用いられる。
【0039】
異常検出トルクパターン生成部28は、基準階以外の階の基準トルク指令パターンTpnに異常検出マージンを加え、基準階以外の階の異常検出トルクパターンTerを生成する。
【0040】
次に、図4を用いて、各階の異常検出トルクパターンTerの生成手順を具体的に説明する。
図4はこの発明の実施の形態1におけるエレベータのドア制御装置による異常検出トルクパターンの生成手順を説明するためのフローチャートである。
【0041】
ステップS1では、制御マイコン19は、基準階の基準トルク指令パターンTpと現在の階床のトルク指令Tr*のピーク値Tpkとの学習が完了しているか否かを判定する。当該学習が未完了の場合は、ステップS2に進む。ステップS2では、制御マイコン19は、当該学習を完了させる。
【0042】
当該学習が完了している場合は、ステップS3に進む。ステップS3では、制御マイコン19は、当該階が基準階以外か否かを判定する。当該階が基準階の場合は、ステップS4に進む。ステップS4では、異常検出トルクパターン生成部28は、基準階の基準トルク指令パターンTpに異常検出マージンを加え、異常検出トルクパターンTerを設定する。
【0043】
ステップS3で当該階が基準階以外の場合は、ステップS5に進む。ステップS5では、制御マイコン19は、加速区間か否かを判定する。加速区間の場合は、ステップS6に進む。ステップS6では、第2基準トルク指令パターン生成部27は、加速区間における基準階のトルク指令Tr*のピーク値Tpkと現在の階床のトルク指令Tr*のピーク値Tpkから、加速区間におけるトルク指令パターン補正値ΔTeを生成する。
【0044】
その後、ステップS7に進み、第2基準トルク指令パターン生成部27は、加速区間におけるトルク指令パターン補正値ΔTeを用いて、加速区間における基準階の基準トルク指令パターンTpから、加速区間における現在の階床の基準トルク指令パターンTpnを生成する。その後、ステップS8に進み、異常検出トルクパターン生成部28は、加速区間における現在の階床の基準トルク指令パターンTpnに異常検出マージンを加え、加速区間における異常検出トルクパターンTerを設定する。
【0045】
ステップS5で加速区間でない場合は、ステップS9に進む。ステップS9では、制御マイコン19は、一定速区間か否かを判定する。一定速区間の場合は、ステップS10に進む。ステップS10では、第2基準トルク指令パターン生成部27は、一定速区間における基準階のトルク指令Tr*のピーク値Tpkと現在の階床のトルク指令Tr*のピーク値Tpkから、一定速区間におけるトルク指令パターン補正値ΔTeを生成する。
【0046】
その後、ステップS11に進み、第2基準トルク指令パターン生成部27は、一定速区間におけるトルク指令パターン補正値ΔTeを用いて、一定速区間における基準階の基準トルク指令パターンTpから、一定速区間における現在の階床の基準トルク指令パターンTpnを生成する。その後、ステップS12に進み、異常検出トルクパターン生成部28は、一定速区間における現在の階床の基準トルク指令パターンTpnに異常検出マージンを加え、一定速区間における異常検出トルクパターンTerを設定する。
【0047】
ステップS9で一定速区間でない場合は、ステップS13に進む。ステップS13では、第2基準トルク指令パターン生成部27は、減速区間における基準階のトルク指令Tr*のピーク値Tpkと現在の階床のトルク指令Tr*のピーク値Tpkから、減速区間におけるトルク指令パターン補正値ΔTeを生成する。
【0048】
その後、ステップS14に進み、第2基準トルク指令パターン生成部27は、減速区間におけるトルク指令パターン補正値ΔTeを用いて、減速区間における基準階の基準トルク指令パターンTpから、減速区間における現在の階床の基準トルク指令パターンTpnを生成する。その後、ステップS15に進み、異常検出トルクパターン生成部28は、減速区間における現在の階床の基準トルク指令パターンTpnに異常検出マージンを加え、減速区間における異常検出トルクパターンTerを設定する。
【0049】
次に、図5を用いて、各階のトルク指令パターンTp、Tpnを生成するためのデータ量を説明する。
図5はこの発明の実施の形態1におけるエレベータのドア制御装置によるメモリの使用量を説明するための図である。図5の上段は各階床分のトルク指令パターンを記憶する場合のデータ量を示す図である。図5の下段は本実施の形態のデータ量を説明するための図である。
【0050】
本実施の形態においては、基準階のトルク指令パターンTpのデータ量をXbyte、各区間における各階のトルク指令Tr*のピーク値Tpkのデータ量をYbyteとすると、Z階床分のトルク指令パターンの生成に必要なデータ量は、(X+3*Y*Z)byteである。
【0051】
これに対し、各階に対し、トルク指令パターンのデータ量をXbyte要するとすると、Z階床分のトルク指令パターンのデータ量は、(X*Z)byteである。
【0052】
すなわち、比較例に必要なデータ量に対する本実施の形態に必要なデータ量の割合は、(X+3*Y*Z)/(X*Z)となる。例えば、X=100(byte)、Y=1(byte)、Z=100(階床)とすると、比較例に必要なデータ量は、10kbyteである。これに対し、本実施の形態に必要なデータ量は、0.4kbyteである。すなわち、本実施の形態は、比較例と比較して、データ量を1/25に減少させることができる。
【0053】
以上で説明した実施の形態1によれば、基準階の基準トルク指令パターンTpと各階の各区間におけるトルク指令Tr*のピーク値Tpkを用いて、各階の異常検出トルクパターンTerが生成される。このため、各階床の乗場ドアの質量が異なる場合であっても、各階床でトルク指令Tr*の異常を精度良く検出するために必要なRAM等のメモリの容量を小さくすることができる。
【0054】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2におけるエレベータのドア制御装置のブロック図である。なお、実施の形態1と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
実施の形態1においては、トルク指令ピーク保存部26が各階の各区間におけるトルク指令Tr*のピーク値Tpkを補正用データとして記憶していた。一方、実施の形態2においては、トルク指令パターン状態切替え位置保存部30が各階の各区間の切替位置Tpsを補正用データとして記憶する。第2基準トルク指令パターン生成部27は、基準階の基準トルク指令パターンTpと各階の各区間の切替位置Tpsに基づいて、基準階以外の階の基準トルク指令パターンTpnを生成する。
【0056】
次に、図7を用いて、各階の異常検出トルクパターンTerの生成方法を説明する。
図7はこの発明の実施の形態2におけるエレベータドアの制御装置が利用されるエレベータドアの速度パターンとトルクパターンとを示す図である。
【0057】
図7の上段は、基準階と基準階以外の階の速度パターンを示したものである。図7の上段の横軸は時間である。図7の上段の縦軸は速度である。図7の下段は、基準階と基準階以外の階の基準トルク指令パターンTp、Tpnと異常検出トルクパターンTerとを示したものである。図7の下段の横軸はエレベータドアの位置である。図7の下段の縦軸はトルクである。
【0058】
図7の上段に示すように、基準階以外の階の速度パターンが基準階の速度パターンとずれる場合もある。本実施の形態においては、図7の下段に示すように、第2基準トルク指令パターン生成部27は、各区間において、基準階以外の階の切替位置Tpsと基準階の切替位置Tpsの差をトルク指令パターン補正値Δxとして生成する。
【0059】
第2基準トルク指令パターン生成部27は、各区間の切替位置Tpsにおいて、トルク指令パターン補正値Δxがなくなるように、基準階の基準トルク指令パターンTpを修正して、基準階以外の階の基準トルク指令パターンTpnを生成する。具体的には、第2基準トルク指令パターン生成部27は、基準階の各区間の切替位置Tpsが基準階以外の階の各区間の切替位置Tpsに一致するように、基準階の基準トルク指令パターンTpを修正する。
【0060】
次に、図8を用いて、各階の異常検出トルクパターンTerの生成手順を具体的に説明する。
図8はこの発明の実施の形態2におけるエレベータのドア制御装置による異常検出トルクパターンの生成手順を説明するためのフローチャートである。
【0061】
ステップS21では、制御マイコン19は、基準階の基準トルク指令パターンTpと現在の階床の各区間の切替位置Tpsとの学習が完了しているか否かを判定する。当該学習が未完了の場合は、ステップS22に進む。ステップS22では、制御マイコン19は、当該学習を完了させる。
【0062】
当該学習が完了している場合は、ステップS23に進む。ステップS23では、制御マイコン19は、当該階が基準階以外か否かを判定する。当該階が基準階の場合は、ステップS24に進む。ステップS24では、異常検出トルクパターン生成部28は、基準階の基準トルク指令パターンTpに異常検出マージンを加え、異常検出トルクパターンTerを設定する。
【0063】
ステップS23で当該階が基準階以外の場合は、ステップS25に進む。ステップS25では、制御マイコン19は、加速区間か否かを判定する。加速区間の場合は、ステップS26に進む。ステップS26では、第2基準トルク指令パターン生成部27は、基準階の加速区間終了位置と現在の階床の加速区間終了位置とから、加速区間におけるトルク指令パターン補正値Δxを生成する。すなわち、第2基準トルク指令パターン生成部27は、基準階の加速区間と一定速区間との切替位置Tpsと現在の階床の加速区間と一定速区間の切替位置Tpsとから、加速区間におけるトルク指令パターン補正値Δxを生成する。
【0064】
その後、ステップS27に進み、第2基準トルク指令パターン生成部27は、加速区間におけるトルク指令パターン補正値Δxを用いて、加速区間における基準階の基準トルク指令パターンTpから、加速区間における現在の階床の基準トルク指令パターンTpnを生成する。その後、ステップS28に進み、異常検出トルクパターン生成部28は、加速区間における現在の階床の基準トルク指令パターンTpnに異常検出マージンを加え、加速区間における異常検出トルクパターンTerを設定する。
【0065】
ステップS25で加速区間でない場合は、ステップS29に進む。ステップS29では、制御マイコン19は、一定速区間か否かを判定する。一定速区間の場合は、ステップS30に進む。ステップS30では、第2基準トルク指令パターン生成部27は、基準階の一定区間終了位置と現在の階床の一定区間終了位置とから、一定速区間におけるトルク指令パターン補正値Δxを生成する。すなわち、第2基準トルク指令パターン生成部27は、基準階の一定速区間と減速区間との切替位置Tpsと現在の階床の一定速区間と減速区間の切替位置Tpsとから、一定速区間におけるトルク指令パターン補正値Δxを生成する。
【0066】
その後、ステップS31に進み、第2基準トルク指令パターン生成部27は、一定速区間におけるトルク指令パターン補正値Δxを用いて、一定速区間における基準階の基準トルク指令パターンTpから、一定速区間における現在の階床の基準トルク指令パターンTpnを生成する。その後、ステップS32に進み、異常検出トルクパターン生成部28は、一定速区間における現在の階床の基準トルク指令パターンTpnに、異常検出マージンを加え、一定速区間における異常検出トルクパターンTerを設定する。
【0067】
ステップS29で一定速区間でない場合は、ステップS33に進む。ステップS33では、第2基準トルク指令パターン生成部27は、基準階の減速区間終了位置と現在の階床の減速区間終了位置とから、減速区間におけるトルク指令パターン補正値Δxを生成する。
【0068】
その後、ステップS34に進み、第2基準トルク指令パターン生成部27は、減速区間におけるトルク指令パターン補正値Δxを用いて、減速区間における基準階の基準トルク指令パターンTpから、減速区間における現在の階床の基準トルク指令パターンTpnを生成する。その後、ステップS35に進み、異常検出トルクパターン生成部28は、減速区間における現在の階床の基準トルク指令パターンTpnに異常検出マージンを加え、減速区間における異常検出トルクパターンTerを設定する。
【0069】
次に、図9を用いて、各階のトルク指令パターンTp、Tpnを生成するためのデータ量を説明する。
図9はこの発明の実施の形態2におけるエレベータのドア制御装置によるメモリの使用量を説明するための図である。図9の上段は各階床分のトルク指令パターンを記憶する場合のデータ量を示す図である。図9の下段は本実施の形態のデータ量を説明するための図である。
【0070】
実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、比較例に必要なデータ量に対する本実施の形態に必要なデータ量の割合は、(X+3*Y’*Z)/(X*Z)となる。例えば、X=100(byte)、Y’=1(byte)、Z=100(階床)とすると、比較例に必要なデータ量は、10kbyteである。これに対し、本実施の形態に必要なデータ数は、0.4kbyteである。すなわち、本実施の形態は、比較例と比較して、データ量を1/25に減少させることができる。
【0071】
以上で説明した実施の形態2によれば、基準階の基準トルク指令パターンTpと各階の各区間に切替位置Tpsを用いて、各階の異常検出トルクパターンTerが生成される。このため、各階床において、エレベータドアの各区間の切替位置Tpsが異なる場合であっても、各階床でトルク指令Tr*の異常を精度良く検出するために必要なメモリの容量を小さくすることができる。
【0072】
実施の形態3.
図10はこの発明の実施の形態3におけるエレベータのドア制御装置のブロック図である。なお、実施の形態1及び2と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0073】
実施の形態3においては、第2基準トルク指令パターン生成部27は、実施の形態1における補正値ΔTeと実施の形態2における補正値Δxを組み合わせて、基準階以外の階の基準トルク指令パターンTpnを生成する。
【0074】
次に、図11を用いて、各階の異常検出トルクパターンTerの生成手順を具体的に説明する。
図11はこの発明の実施の形態3におけるエレベータのドア制御装置による異常検出トルクパターンの生成手順を説明するためのフローチャートである。
【0075】
ステップS41では、制御マイコン19は、基準階の基準トルク指令パターンTp、現在の階床のトルク指令Tr*のピーク値Tpk、現在の階床の各区間の切替位置Tpsの学習が完了しているか否かを判定する。当該学習が未完了の場合は、ステップS42に進む。ステップS42では、制御マイコン19は、当該学習を完了させる。
【0076】
当該学習が完了している場合は、ステップS43に進む。ステップS43では、制御マイコン19は、当該階が基準階か否かを判定する。当該階が基準階の場合は、ステップS44に進む。ステップS44では、異常検出トルクパターン生成部28は、基準階の基準トルク指令パターンTpに異常検出マージンを加え、異常検出トルクパターンTerを設定する。
【0077】
ステップS43で当該階が基準階以外の場合は、ステップS45に進む。ステップS45では、制御マイコン19は、加速区間か否かを判定する。加速区間の場合は、ステップS46に進む。ステップS46では、第2基準トルク指令パターン生成部27は、加速区間における基準階のトルク指令Tr*のピーク値Tpkと現在の階床のトルク指令Tr*のピーク値Tpkから、加速区間におけるトルク指令パターン補正値ΔTeを生成する。その後、ステップS47に進み、第2基準トルク指令パターン生成部27は、基準階の加速区間終了位置と現在の階床の加速区間終了位置とから、加速区間におけるトルク指令パターン補正値Δxを生成する。
【0078】
その後、ステップS48に進み、第2基準トルク指令パターン生成部27は、加速区間におけるトルク指令パターン補正値ΔTe、ΔTxを用いて、加速区間における基準階の基準トルク指令パターンTpから、加速区間における現在の階床の基準トルク指令パターンTpnを生成する。その後、ステップS49に進み、異常検出トルクパターン生成部28は、加速区間における現在の階床の基準トルク指令パターンTpnに異常検出マージンを加え、加速区間における異常検出トルクパターンTerを設定する。
【0079】
ステップS45で加速区間でない場合は、ステップS50に進む。ステップS50では、制御マイコン19は、一定速区間か否かを判定する。一定速区間の場合は、ステップS51に進む。ステップS51では、第2基準トルク指令パターン生成部27は、一定速区間における基準階のトルク指令Tr*のピーク値Tpkと現在の階床のトルク指令Tr*のピーク値Tpkから、一定速区間におけるトルク指令パターン補正値ΔTeを生成する。その後、ステップS52に進み、第2基準トルク指令パターン生成部27は、基準階の一定速区間終了位置と現在の階床の一定速区間終了位置とから、一定速区間におけるトルク指令パターン補正値Δxを生成する。
【0080】
その後、ステップS53に進み、第2基準トルク指令パターン生成部27は、一定速区間におけるトルク指令パターン補正値ΔTe、Δxを用いて、一定速区間における基準階の基準トルク指令パターンTpから、一定速区間における現在の階床の基準トルク指令パターンTpnを生成する。その後、ステップS54に進み、異常検出トルクパターン生成部28は、一定速区間における現在の階床の基準トルク指令パターンTpnに、異常検出マージンを加え、一定速区間における異常検出トルクパターンTerを設定する。
【0081】
ステップS50で一定速区間でない場合は、ステップS55に進む。ステップS55では、第2基準トルク指令パターン生成部27は、減速区間における基準階のトルク指令Tr*のピーク値Tpkと現在の階床のトルク指令Tr*のピーク値Tpkから、減速区間におけるトルク指令パターン補正値ΔTeを生成する。その後、ステップS56に進み、第2基準トルク指令パターン生成部27は、基準階の減速区間終了位置と現在の階床の減速区間終了位置とから、減速区間におけるトルク指令パターン補正値Δxを生成する。
【0082】
その後、ステップS57に進み、第2基準トルク指令パターン生成部27は、減速区間におけるトルク指令パターン補正値ΔTe、Δxを用いて、減速区間における基準階の基準トルク指令パターンTpから、減速区間における現在の階床の基準トルク指令パターンTpnを生成する。その後、ステップS58に進み、異常検出トルクパターン生成部28は、減速区間における現在の階床の基準トルク指令パターンTpnに異常検出マージンを加え、減速区間における異常検出トルクパターンTerを設定する。
【0083】
次に、図12を用いて、各階のトルク指令パターンTp、Tpnを生成するためのデータ量を説明する。
図12はこの発明の実施の形態3におけるエレベータのドア制御装置によるメモリの使用量を説明するための図である。図12の上段は各階床分のトルク指令パターンを記憶する場合のデータ量を示す図である。図12の下段は本実施の形態のデータ量を説明するための図である。
【0084】
本実施の形態においては、比較例に必要なデータ量に対する本実施の形態に必要なデータ量の割合は、{X+(3*Y+3*Y’)*Z}/(X*Z)となる。例えば、X=100(byte)、Y=Y’=1(byte)、Z=100(階床)とすると、比較例に必要なデータ量は、10kbyteである。これに対し、本実施の形態に必要なデータ数は、0.7kbyteである。すなわち、本実施の形態は、比較例と比較して、データ量を1/14に減少させることができる。
【0085】
以上で説明した実施の形態3によれば、実施の形態1及び2よりも必要なメモリの容量が増えるものの、実施の形態1及び2よりも高精度な異常検出トルクパターンTerを設定することができる。
【0086】
なお、実施の形態1〜3において、乗場ドアの交換、エレベータドアの標準速度の変更があった場合は、その都度、基準階の基準トルク指令パターンTp、各階のトルク指令Tr*のピーク値Tpk、各階の各区間の切替位置Tpsを学習すればよい。
【符号の説明】
【0087】
1 かごドア
2 ガイドローラ
3 ガイドレール
4 プーリ
5 突出ベルト
6 連結具
7 減速プーリ
8 モータ
9 ベルト
10 パルスエンコーダ
11 制御装置
12 制御基板
13 コンバータ
14 インバータ
15 平滑コンデンサ
16 ゲート信号発生装置
17 第1電流センサ
18 第2電流センサ
19 制御マイコン
20 入出力ポート
21 速度指令発生部
22 速度アンプ
23 電流アンプ
24 PWMユニット
25 第1基準トルク指令パターン生成部
26 トルク指令ピーク保存部
27 第2基準トルク指令パターン生成部
28 異常検出トルクパターン生成部
29 過負荷検出動作判断部
30 トルク指令パターン状態切替え位置保存部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータドアが基準階で開閉した際に、前記エレベータドアを開閉させるモータへのトルク指令のパターンに基づいて、前記基準階の異常検出トルクパターンを算出するための基準トルク指令パターンを記憶する第1保存部と、
前記エレベータドアが各階で開閉した際に、トルク指令のパターンを加速区間、一定速区間、減速区間に分けて、前記各階の各区間におけるトルク指令のピーク値及び前記各階の各区間の切替位置の少なくとも一方を補正用データとして記憶する第2保存部と、
前記各区間において、前記基準階の補正用データと前記基準階以外の階の補正用データとを比較して、前記各区間における前記基準階の基準トルク指令パターンから、前記各区間における前記基準階以外の階の異常検出トルクパターンを算出するための基準トルク指令パターンを生成する生成部と、
を備えたことを特徴とするエレベータドアの制御装置。
【請求項2】
前記第2保存部は、前記補正用データとして、前記各階の前記各区間におけるトルク指令のピーク値を記憶し、
前記生成部は、前記基準階のトルク指令のピーク値と前記基準階以外の階のトルク指令のピーク値との差を用いて、前記基準階以外の階の基準トルク指令パターンを生成することを特徴とする請求項1記載のエレベータドアの制御装置。
【請求項3】
前記第2保存部は、前記補正用データとして、前記各階の各区間の切替位置を記憶し、
前記生成部は、前記基準階の前記各区間の切替位置が前記基準階以外の階の各区間の切替位置に一致するように、前記基準階の基準トルク指令パターンを修正したパターンを用いて、前記基準階以外の階の基準トルク指令パターンを生成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータドアの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−197152(P2012−197152A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63035(P2011−63035)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】