説明

エレベータドア装置

【課題】敷居溝の落下孔では除去できない敷居上の閉鎖障害物を取り除くことができ、閉鎖不能によるエレベータの運転休止を抑制することが可能なエレベータドア装置を提供することである。
【解決手段】乗場ドア装置10cは、三方枠15cと、乗場ドアパネル13と、敷居14と、を備え、三方枠15cの戸当り面16cと乗場ドアパネル13の戸当り面16とが一致して乗降口12を閉じるサイドオープン型のドア装置であって、戸当り面16cの下端部に、内側に向かって退避可能な可動部50cを有する。可動部50cは、可動板51cと、固定部52cと、支持部53cと、押しバネ54cとから構成される。また、敷居14には排出口55cが形成され、排出口55cの下部には、収容部56cが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ乗場に設置される乗場ドア装置及び乗りかごに設置されるかごドア装置を含むエレベータドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータには、乗りかご(以下、かごとする)及びエレベータ乗場(以下、乗場とする)に、それぞれエレベータドア装置(かごドア装置及び乗場ドア装置)が設置される。いずれのドア装置も、乗降口を開閉するドアパネル、ドア枠、及び敷居等から構成されている。一般的に、ドアパネルの開閉装置は、かご上に設置されており、かごが乗場に到着すると開閉装置が作動してかごドアパネルが開閉され、かごドアパネルの動きに連動して乗場ドアパネルが開閉する。故に、かごが乗場に到着しないときには、乗場ドアパネルが開放されることはなく、かごドアパネルも、着床検知センサによりかごが乗場に着床したことが検知されないと開放されない。また、エレベータは、ドアパネルの全閉が検知されない場合、かごの昇降運転を禁止する。
【0003】
上記ドアパネルは、通常、上吊り構造であるが、安定した開閉動作を確保するために、乗降口の下縁に沿って敷居が設けられている。ドアパネルには、敷居に形成された敷居溝に係合するガイドシュが設置され、ドアパネルは敷居に沿って開閉動作する。この敷居溝には、泥、小石、埃等のゴミやコイン等の落し物が入り込むことがあって、これらの障害物によりドアパネルが閉まらず、エレベータの運転が禁止されるケースが想定される。
【0004】
このような状況に鑑みて、敷居上に存在するドアパネルの閉鎖の障害となる物(以下、閉鎖障害物とする)を取り除く装置が幾つか提案されている。例えば、特許文献1には、ドアの中央に位置する敷居溝に長方形の落下孔を設けて、その落下孔から閉鎖障害物を昇降路に落とすエレベータドアの敷居が開示されている。また、特許文献2には、落下孔の直下にゴミ受け箱を設置したもの、特許文献3には、落下孔を断面L字形の切欠き孔により形成したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5‐16784号公報
【特許文献2】実開平5‐1778号公報
【特許文献3】実開平7‐24863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記各特許文献に開示された技術によれば、敷居溝に入り込んだサイズの小さな閉鎖障害物を、落下孔から落下させて取り除くことが可能である。しかしながら、落下孔に入らない、又は敷居溝に入らないサイズの閉鎖障害物は取り除くことができない。
【0007】
本発明の目的は、敷居溝の落下孔では除去できないサイズの閉鎖障害物も取り除くことができ、閉鎖不能によるエレベータの運転休止を高度に抑制することが可能なエレベータドア装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエレベータドア装置は、乗降口の側縁に設けられるドア枠と、乗降口を開閉するドアパネルと、ドアパネルをガイドする敷居と、を備え、ドア枠の戸当り面とドアパネルの戸当り面とが一致して乗降口を閉じるサイドオープン型のエレベータドア装置において、ドア枠及びドアパネルの少なくとも一方は、戸当り面の下端部に、内側に向かって退避可能な可動部を有することを特徴とする。ここで、可動部が退避可能な内側の方向とは、戸当り面の裏側の方向であって、乗場ドアパネルの可動部については、乗場ドアパネルの閉鎖動作方向と逆の方向であり、ドア枠の可動部については、乗場ドアパネルの閉鎖動作方向である。
【0009】
上記構成によれば、ドアパネルの閉鎖動作時において、敷居上に存在する閉鎖障害物がドアパネルとドア枠の間に挟まり戸当り面に押し当てられると、可動部が内側に向かって退避するので、閉鎖不能によるエレベータの運転休止を抑制することが可能になる。なお、可動部は、敷居上に存在する閉鎖障害物が当る位置に設けられる必要があるから、戸当り面の下端部、即ち、敷居の位置から所定長さ上方の位置に亘る部分に設けられる。
【0010】
また、上記構成によれば、閉鎖障害物に押されて可動部が移動した場合でも、乗場又はかごに居る利用者から見るとドアパネル(ドア枠)の状態は通常のドアパネル(ドア枠)と同じである。なお、可動部を押す敷居上の閉鎖障害物は、例えば、乗場とかごの隙間からピットに落下して敷居上から取り除かれる。
【0011】
また、サイドオープン型のエレベータドア装置において、可動部は、ドア枠の戸当り面に設けられ、可動部の退避方向に位置する床には、閉鎖障害物を敷居上から取り除くための排出口が設けられることが好ましい。また、排出口の下方には、排出口から落下する閉鎖障害物を捕捉するための収容部が設けられることが好ましい。ここで、可動板の退避方向に位置する床とは、乗場床、かご床、及び敷居が含まれる。
【0012】
上記構成によれば、排出口によって閉鎖障害物を敷居上から取り除き易くなる。例えば、乗場とかごの隙間が小さなエレベータであっても、排出口から当該隙間よりも大きな閉鎖障害物を排除することが可能になる。また、収容部を設けた構成によれば、閉鎖障害物は収容部に捕捉されてピットまで落下しないので、当該閉鎖障害物を回収することが容易になる。
【0013】
また、本発明に係るエレベータドア装置は、乗降口を開閉する2枚のドアパネルと、ドアパネルをガイドする敷居と、を備え、2枚のドアパネルの戸当り面が一致して乗降口を閉じるセンターオープン型のエレベータドア装置において、少なくとも一方のドアパネルは、戸当り面の下端部に、内側に向かって退避可能な可動部を有することを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、センターオープン型のエレベータドア装置において、敷居上に閉鎖障害物が存在する場合にもドアパネルを全閉することが可能になる。
【0015】
また、可動部は、板表面が戸当り面の下端部を形成し、当該板表面が昇降路側に向くように回転移動することで内側に向かって退避する可動板と、可動板を内側から外側に向かって付勢する付勢部材と、を含み、可動板は、板表面が敷居上に存在する閉鎖障害物により押されると、付勢部材の付勢力に抗して当該板表面が昇降路側に向いて所定位置まで回転移動することが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、付勢部材によって可動板の板表面が戸当り面の一部を形成する配置に維持されるので安全性が高く、当該板表面が押されたときには可動板が内側に退避するので敷居上に閉鎖障害物が存在してもドアパネルを全閉することが可能になる。なお、可動板は、板表面が敷居上に存在する閉鎖障害物により押されると、付勢部材の付勢力に抗して当該板表面が昇降路側に向いて所定位置まで回転移動する。したがって、閉鎖障害物は、昇降路側に傾いた可動板によって押されることになるから、昇降路側に移動し、例えば、乗場とかごの隙間から落下し易くなる。
【0017】
また、センターオープン型のエレベータドア装置において、可動部は、板表面が戸当り面の下端部を形成し、当該板表面が昇降路側に向くように移動することで内側に向かって退避する可動板と、可動板の昇降路側に位置する部分から下方に突出し、敷居の溝内に導入される下方突起と、敷居の溝内に設けられ、ドアパネルが所定位置まで閉じられたときに下方突起と接触係合して下方突起の位置を固定する敷居溝突起と、を含み、可動板は、ドアパネルが所定位置まで閉じられると、下方突起を支点として板表面が向くように移動する構成とすることができる。
【0018】
上記構成によれば、ドアパネルが所定位置まで閉じられると、閉鎖障害物の存在に関わらず、可動板の板表面が昇降路側に向くように移動する。例えば、板表面が敷居に沿う位置まで可動板の向きが変化すれば、敷居上に存在する閉鎖障害物を昇降路側に押し出し、乗場とかごの隙間から容易に落下させて除去することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るエレベータドア装置によれば、敷居溝の落下孔では除去できないサイズの閉鎖障害物も取り除くことができ、閉鎖不能によるエレベータの運転休止を高度に抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一般的なセンターオープン型の乗場ドア装置を示す図である。
【図2】本発明に係る第1実施形態におけるセンターオープン型乗場ドア装置を示す図である。
【図3】第1実施形態の乗場ドア装置の要部拡大図である。
【図4】第1実施形態の乗場ドア装置において、敷居上の閉鎖障害物を取り除く様子を示す図である。
【図5】本発明に係る第2実施形態におけるセンターオープン型乗場ドア装置を示す要部拡大図である。
【図6】第2実施形態の乗場ドア装置において、敷居上の閉鎖障害物を取り除く様子を示す図である。
【図7】本発明に係る第3実施形態におけるサイドオープン型乗場ドア装置を示す図である。
【図8】第3実施形態の乗場ドア装置の要部拡大図である。
【図9】第3実施形態の乗場ドア装置の変形例を示す要部拡大図である。
【図10】図9に示す乗場ドア装置において、敷居上の閉鎖障害物を取り除く様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を用いて、本発明に係るエレベータドア装置の実施の形態につき、以下詳細に説明する。図1は、一般的なセンターオープン型(以下、CO型とする)の乗場ドア装置10を示す図である。図2〜図4は、第1実施形態である乗場ドア装置10aを、図5及び図6は、第2実施形態である乗場ドア装置10bを、図7〜図10は、第3実施形態であるサイドオープン型(以下、SO型とする)の乗場ドア装置10cを、それぞれ示す図である。
【0022】
エレベータドア装置を含むエレベータは、昇降路において、かごが各階床に設置された乗場の間を昇降する昇降機である。昇降路の最下部には、ピットが設けられ、昇降路の上には、上部機械室が設けられる。上部機械室には、かごを昇降させる巻上げ機やエレベータの各要素の動作を統一的に制御する制御装置が設置されている。かごには、かごが乗場に着床したときに開閉するかごドアパネル、及びかごドアパネルを開閉するかごドア開閉装置が設置されている。
【0023】
エレベータドア装置は、上記のように、かごドア装置及び乗場ドア装置を含む。かごドア装置は、かごの乗降口を開閉するかごドアパネル、及び乗降口の縁に設けられる出入口柱や敷居等から構成される。なお、以下では、エレベータドア装置として、乗場ドア装置(10a、10b、10c)を例に挙げて説明するが、かごドア装置についても、乗場ドア装置(10a、10b、10c)と同様の構成を適用することができる。
【0024】
まず初めに、図1を用いて、一般的な乗場ドア装置10の全体構成について説明する。ここで、図1は、乗場ドア装置10を昇降路側から見た正面図であり、かごが乗場に停止したときに、対向するかごドアパネルに設置された係合部材30の位置を一点鎖線で示している。
【0025】
図1に示すように、乗場ドア装置10は、CO型のドア装置であって、乗場壁11に形成された乗降口12に設けられる2枚の乗場ドアパネル13と、乗降口12の下縁に沿って設けられる敷居14と、乗降口12の側縁及び上縁に設けられる三方枠15と、乗場ドアパネル13の開閉機構部等を備えている。ここで、乗降口12とは、乗場と昇降路とを隔てる乗場壁11に形成される開口部であって、昇降路を走行するかごに乗り降りするための開口部である。
【0026】
乗場ドアパネル13は、乗降口12を開閉する板状の部材である。CO型の乗場ドア装置10は、乗降口12の中央で互いの側端部が一致する2枚の乗場ドアパネル13を備える。各乗場ドアパネル13の互いに接触する側端部は、例えば、コの字状に折り曲げ加工されて戸当り面16が形成される。即ち、戸当り面16は、2枚の乗場ドアパネル13において対向する平坦な面であって、この戸当り面16同士が一致することにより乗降口12(乗場ドアパネル13)が全閉状態になる。
【0027】
乗場ドアパネル13には、ハンガープレート17が取り付けられ、当該プレート17のハンガーローラ18によって、乗場ドアパネル13が乗場ドアレール19に懸架される。また、乗場ドアパネル13は、当該パネル13の下方に設けられた敷居14に沿って開閉動作する。乗場ドアパネル13の上方には、左右に設けられた滑車20と、2つの滑車20に巻き掛けられた連動ベルト21とから構成される連動機構が設けられる。そして、連動ベルト21の上側の一部が左側のハンガープレート17に、連動ベルト21の下側の一部が右側のハンガープレート17に、それぞれ取り付けられる。
【0028】
乗場ドアパネル13の上部には、係止片22と、係止片22が係止される係止部23と、係止片22に設けられる第1当接部24及び第2当接部25と、有するロック装置26が設置されている。具体的に、乗場ドアパネル13の開放動作時には、まず、係合部材30により第1当接部24が外側に押されて変位することにより、ロック装置26のロックが外れる(係止片22が係止部23から外れる)仕組みになっている。さらに、係合部材30により第1当接部24及び第2当接部25が押されることにより乗場ドアパネル13が開放される。このように、かごドアパネルの係合部材30から第1当接部24及び第2当接部25を介して右側の乗場ドアパネル13に伝達される駆動力は、連動機構により左側の乗場ドアパネル13にも伝達される。
【0029】
一方、乗場ドアパネル13の閉鎖動作時には、係合部材30により第1当接部24及び第2当接部25が内側に押されることにより乗場ドアパネル13が閉じられる。このときに、係止片22が係止部23に係止されロック装置26がロック状態となる。なお、ロック装置26がロックされない場合には、乗場ドアパネル13の閉鎖が不十分であって、エレベータの運転が禁止される。
【0030】
敷居14は、乗場ドアパネル13をガイドするための部材であって、乗場ドアパネル13の下方に設置される。具体的に、敷居14は、乗降口12の下縁において、乗降口12の幅を超えて両側に延び、両側に延びた部分は、少なくとも乗場ドアパネル13分の長さを有している。敷居14には、乗場ドアパネル13に設置されるドアシュ29が入り込む敷居溝27が形成されている。そして、敷居溝27には、溝内に入り込んだ泥、小石、埃等のゴミやコイン等の落し物をピットに落下させるための落下孔28が設けられている。
【0031】
図2〜図4を用いて、乗場ドア装置10aの構成及び作用について説明する。乗場ドア装置10a(乗場ドア装置10b、10c)は、敷居14上に存在する閉鎖障害物100(図4参照)を除去して、乗場ドアパネル13aの閉鎖不能によるエレベータの運転休止を高度に抑制できるエレベータドア装置である。なお、図2は、ロック装置26や連動機構等を省略し、CO型の乗場ドア装置10aを簡素化して示した図である。以下では、乗場ドア装置10と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する(乗場ドア装置10b、10cについても同様)。
【0032】
ここで、閉鎖障害物100とは、敷居14上に存在する乗場ドアパネル13aの閉鎖の障害となる物であって、例えば、物泥、小石、埃等のゴミやコイン等の利用者の落し物が挙げられる。なお、本明細書において、閉鎖障害物100は、敷居溝27の幅よりも大きく落下孔28により取り除くことができない物として説明する。
【0033】
図2に示すように、乗場ドア装置10aは、上記乗場ドア装置10と同様に、乗場ドアパネル13aと、敷居14と、三方枠15と、図示しない開閉機構部等を備えている。さらに、乗場ドア装置10aは、敷居14上に存在する閉鎖障害物100(図4参照)による閉鎖不能を抑制するため、乗場ドアパネル13aの戸当り面16aの下端部に、閉鎖障害物100に押されて内側に退避可能な可動部50aを備える。なお、乗場ドア装置10aは、乗場ドアパネル13aを除き、乗場ドア装置10と同じ構成を採用することができる。
【0034】
乗場ドア装置10aは、図2に点線で示すように、乗降口12の中央で2枚の乗場ドアパネル13aの戸当り面16a同士が一致して乗降口12を閉鎖するCO型ドアである。可動部50aは、2枚の乗場ドアパネル13aの一方のみに設置することもできるが、閉鎖障害物100の除去性能を向上させるため、両方の乗場ドアパネル13aに設置することが好ましい(図4参照)。
【0035】
図3に、乗場ドアパネル13aの戸当り面16aに設けられた可動部50aを拡大して示す。図3に示すように、可動部50aは、可動板51aと、固定部52aと、支持部53aと、押しバネ54aとから構成され、戸当り面16aの一部を構成している。即ち、可動部50aにより、戸当り面16aの一部が内側に向かって退避することが可能になる。ここで、可動部50aが退避可能な内側の方向とは、戸当り面16aの裏側の方向であって、乗場ドアパネル13aの閉鎖動作方向と逆の方向(乗場ドアパネル13aの開放動作方向)である。
【0036】
可動部50aは、上記のように、戸当り面16aの下端部に設けられる。即ち、可動部50aは、敷居14上に存在する閉鎖障害物100が当る位置に設けられる必要があるから、戸当り面16aの下端部であって、敷居14の位置から所定長さ上方の位置に亘る部分に設けられる。ここで、所定長さとしては、想定する閉鎖障害物のサイズ等によっても異なるが、例えば、3〜10cmとすることができる。
【0037】
可動部50aは、例えば、戸当り面16aの下端部に開口を形成し、その開口を塞ぐようにして取り付けられる。乗場ドアパネル13aの側端部は、コの字状に折り曲げ加工されており、開口は、当該側端部において、戸当り面16aの下端部だけでなく、戸当り面16aから折り曲げ加工された先端部分に亘って形成されることが好ましい。開口は、場所によって高さ(上下方向に沿った長さ)を変化させず一定とすることができ、例えば、敷居14から3〜10cmの高さとすることができる。
【0038】
可動板51aは、平坦な板部材であって、板表面が戸当り面16aの下端部を形成するように配置される。即ち、可動板51aは、戸当り面16aの下端部に形成された上記開口を塞ぐように取り付けられて、戸当り面16aは、上端部から下端部まで平坦な平面となる。可動板51aのサイズは、当該開口に相当するサイズであることが好ましく、例えば、可動板51aのスムーズな退避を実現するために、当該開口よりもやや小さなサイズに設定される。
【0039】
可動板51aは、板表面が昇降路側に向くように回転移動可能であって、回転移動することにより内側に向かって退避する。可動板は、敷居14に沿って退避する構成とすることも可能であるが、可動板51aのように、板表面が昇降路側に向いて乗場ドアパネル13aの移動方向に対して交差するように傾けば、閉鎖障害物100を敷居14上から除去し易くなる。
【0040】
固定部52aは、可動板51a等の可動部50aの構成要素を乗場ドアパネル13aに固定する機能を有する。固定部52aは、例えば、ビス孔が形成された平坦な板部材であって、ビスを用いて乗場ドアパネル13aの裏面に締結される。固定部52aには、支持部53a(一部)が設けられ、固定部52aは支持部53aを介して可動板51aを乗場ドアパネル13aに退避可能に固定している。また、固定部52aには、一端が可動板51aに取り付けられた押しバネ54aの他端が取り付けられている。
【0041】
支持部53aは、固定部52aに対して可動板51aを回転可能に連結する機能を有し、可動板51aが回転移動するときに回転中心となる。支持部53aとしては、例えば、乗場ドアパネル13aの上下方向に沿った軸(回転軸)と、可動板51a及び固定部52aに設けられ該軸が挿入される筒状軸受けとから構成することができる。
【0042】
押しバネ54aは、可動板51aを内側から外側に向かって(裏側から表側に向かって)付勢する付勢部材である。押しバネ54aは、上記のように、一端が可動板51aの裏面に、他端が固定部52aに、それぞれ取り付けられ、可動板51aの配置を維持する機能を有する。即ち、可動板51aが振動等を受けても、押しバネ54aによって可動板51aの配置が維持される。なお、可動板51aの上端部に戸当り面16aの裏側に当るストッパを設けることもできる。
【0043】
図4に、乗場ドアパネル13aの閉鎖動作時において、敷居14上に存在する閉鎖障害物100を取り除く様子を示す。なお、図4は、可動部50aの上方を水平方向に切断した断面図であって、可動部50aを上方から見た図である。図4では、閉鎖障害物100は、乗降口12の中央付近に存在し、各乗場ドアパネル13aに設置された可動部50aに押されて昇降路側に移動している様子が示されている。
【0044】
図4に示すように、敷居14上に存在する閉鎖障害物100は、乗降口12の中央に向かって移動してくる乗場ドアパネル13aの戸当り面16aに接触して押される。閉鎖障害物100が当る戸当り面13aの下端部には、可動部50a(可動板51a)が設けられているから、可動板51aの板表面が閉鎖障害物100により押されることになる。
【0045】
可動板51aは、板表面が閉鎖障害物100により押されると、押しバネ54aの付勢力に抗して当該板表面が昇降路側に向いて所定位置まで回転移動する。ここで、所定位置とは、閉鎖障害物100の押圧力と、押しバネ54aの付勢力とによって決定され、例えば、閉鎖障害物100の重量が重くなると可動板51aの回転移動長さがより長くなる。このように、可動板51aは、閉鎖障害物100の影響で、板表面が昇降路側に向いて乗場ドアパネル13aの進行方向に対して交差する方向に傾く。
【0046】
また、乗場ドアパネル13aは、乗降口12の中央に向かって移動しているから、閉鎖障害物100は、傾いた可動板51aに押されて乗降口12の中央に向かって移動する。このとき、通常の戸当り面16では、閉鎖障害物100が敷居14に沿って移動し乗場ドアパネル13の間に挟まり乗場ドアパネル13が閉鎖不能となる。乗場ドア装置10aにおいて、可動板51aは、閉鎖障害物100に押されて内側に退避し昇降路側に傾くから、閉鎖障害物100は、例えば、板表面に沿って昇降路側に移動し、乗場(敷居14)とかご70との隙間から落下して敷居14上から除去される。
【0047】
以上のように、乗場ドア装置10aは、2枚の乗場ドアパネル13aの戸当り面16aが一致して乗降口12を閉じるCO型のエレベータドア装置であって、乗場ドアパネル13aは、戸当り面16aの下端部に、内側に向かって退避可能な可動部50aを有する。したがって、落下孔28では除去できないサイズの閉鎖障害物100も敷居14上から取り除くことができ、或いは閉鎖障害物100の影響を可動部50aの退避により吸収して、閉鎖不能によるエレベータの運転休止を高度に抑制することが可能になる。
【0048】
図5及び図6を用いて、乗場ドア装置10bの構成及び作用について説明する。図5は、乗場ドアパネル13bの戸当り面16bに設けられた可動部50bを拡大して示す図であり、図6は、上記図4に対応する図である。
【0049】
図5に示すように、乗場ドア装置10bは、上記乗場ドア装置10aと同様にCO型であり、乗場ドアパネル13b、敷居14等を備えている。また、乗場ドアパネル13bは、戸当り面16bの下端部に、内側に向かって退避する可動板51bを含む可動部50bが設けられている。なお、乗場ドア装置10bは、敷居14上に閉鎖障害物100が存在しない場合でも、乗場ドアパネル13bが所定位置まで閉じたときに可動板51bが昇降路側に向って回転することを特徴とする。
【0050】
図5に示すように、可動部50bは、戸当り面16bの下端部に設けられる可動板51bを有する。可動板51bは、板表面が昇降路側に向くように移動することで内側に向かって退避する板状の部材である。また、可動部50bは、可動板51bの移動を実現するための構成要素として、戸当り面16bの裏側であって可動板51bの上方に形成される支持レール54bと、敷居溝27に形成される敷居溝突起55bとを有する。
【0051】
可動板51bには、上方突起52b及び下方突起53bが設けられている。上方突起52bは、乗場ドアパネル13bの閉鎖動作方向に対して直交する方向に沿って配置された可動板51bにおいて、可動板51bの乗場側に位置する一端から上方に突出し、支持レール54bに係合する突起である。この上方突起52bが支持レール54bに係合することで、可動板51bの一端が支持レール54bに沿って昇降路側にスライドすることが可能になる。
【0052】
下方突起53bは、可動板51bの昇降路側に位置する他端から下方に突出し、敷居溝27に導入される突起である。下方突起53bは、その突出長さが敷居溝27に接触しない程度の長さであって、乗場ドアパネル13bの移動により敷居溝27内を移動する。そして、下方突起53bは、詳しくは図6に示すように、乗場ドアパネル13bが所定位置まで閉じられると、敷居溝27内に設けられた敷居溝突起55bと接触係合する。
【0053】
なお、支持レール54bや敷居溝突起55bの形態は、特に限定されないが、敷居溝突起55bは、下方突起53bと係合し易いように下方突起53bと接触する面に凹部を形成しておくことができる。また、可動板51bは、裏面の上記一端側に引張りバネが取り付けられ、引張りバネの不勢力により回転移動した可動板51bが元の状態(戸当り面16bの下端部を形成する配置)に戻り易いように構成されることが好ましい。
【0054】
図6に、敷居溝突起55bの配置、及び乗場ドアパネル13aの閉鎖動作時において、敷居14上に存在する閉鎖障害物100を取り除く様子を示す。図6(a)に示すように、敷居溝突起55bは、乗降口12の中央に各乗場ドアパネル13bに対応してそれぞれ設けられる。より具体的に、2つの敷居溝突起55bの配置は、2つ分の可動板51bの長さよりもやや短い間隔に設定される。故に、敷居溝突起55bがドアシュ29(図2参照)に接触することはない。
【0055】
図6(a)に示すように、乗場ドアパネル13bが所定位置まで閉じられると、敷居溝突起55bに下方突起53bが接触して、可動板51bの他端の位置が固定される。そして、可動板51bの一端は、下方突起53b(可動板51bの他端)を支点として支持レール54bに沿ってスライドし、図6(b)に示すように、板表面が敷居14に沿う位置まで可動板51bが回転移動する。したがって、敷居14上に存在する閉鎖障害物100は昇降路側に押し出され、乗場とかごの隙間(図4参照)から除去される。
【0056】
図7〜図10を用いて、乗場ドア装置10cの構成及び作用について説明する。図7は、ロック装置26や連動機構等を省略し、SO型の乗場ドア装置10cを簡素化して示した図である。
【0057】
図7に示すように、乗場ドア装置10cは、乗場ドアパネル13の戸当り面16と、三方枠15cの枠側戸当り面16cとが一致して閉扉するSO型である。SO型の乗場ドア装置10cも、乗場ドア装置10と同様に、乗場ドアパネル13、敷居14、三方枠15c、及び図示しないロック装置や連動機構等を備えている。ここで、敷居14は、三方枠15の戸当り面16cの裏側まで延びているものとして説明する。なお、乗場ドア装置10cでは、乗場ドアパネル13ではなく、三方枠15cの枠側戸当り面16cの下端部に可動部50cが設けられている。
【0058】
図8に、三方枠15cの枠側戸当り面16cに設けられた可動部50cを拡大して示す。図8に示すように、可動部50cは、取り付け位置が異なる以外は可動部50aと同様の構成とすることができ、可動板51cと、固定部52cと、支持部53cと、押しバネ54cとから構成される。固定部52cは、L字形状を有しており、敷居14、或いは三方枠15cの裏面や乗場壁11(図7参照)に取り付けられる。また、固定部52cの可動板51aに対向する面に押しバネ54cの他端が取り付けられている。
【0059】
可動板51cは、枠側戸当り面16cの下端部を構成し、敷居14上に存在する閉鎖障害物100(図10参照)に押されると内側に向かって退避可能な部材である。ここで、可動板51cが退避可能な内側の方向とは、戸当り面16cの裏側の方向であって、乗場ドアパネル13の閉鎖動作方向である。
【0060】
上記構成を備えた乗場ドア装置10cにおいて、敷居14上に閉鎖障害物100が存在し、乗場ドアパネル13の戸当り面16と三方枠15cの枠側戸当り面16cの間に閉鎖障害物100が挟まると、枠側戸当り面16cの下端部に設けられた可動板51cが内側に向かって退避する。したがって、閉鎖障害物100を乗場とかごの隙間から落して敷居14上から取り除く、或いは閉鎖障害物100の影響を可動部50cの退避により吸収して、閉鎖不能によるエレベータの運転休止を高度に抑制することが可能になる。なお、乗場ドア装置10cにおいては、特に、後述の排出口55cを備える場合には、枠側戸当り面16cのみに可動部50cを設ければ十分な閉鎖障害物100の除去効果が得られる。
【0061】
図9及び図10に、乗場ドア装置10c変形例を示す(図9では、押しバネ54cを省略している)。図9に示すように、可動板51cの退避方向に位置する敷居14には、閉鎖障害物100(図10参照)を敷居14上から取り除くための排出口55cが形成されている。ここで、排出口55cは、可動板51cのすぐ裏側に形成されることが好ましく、想定する閉鎖障害物100のサイズによって、排出口55cのサイズを任意に設定することができる。なお、乗場ドア装置10cにおいて、可動板51cは、支持部53cを有し板表面が昇降路側に向いて回転するものとして図示したが、特に、排出口55cを備える場合には、敷居14に沿って退避する構成とすることもできる。
【0062】
さらに、排出口55cの下部には、排出口55cから落下する閉鎖障害物100を収容する収容部56cが設けられている。収容部56cは、排出口55cの下方をカバーして、閉鎖障害物100等がピットまで落ちないように受け止める機能を有する。収容部56cの形態は、特に限定されないが、例えば、点検作業者がかごに乗って移動しながら収容部56cに収容された閉鎖障害物100等を回収し易いように、着脱自在の容器であることが好ましい。
【0063】
図10に、乗場ドアパネル13の閉鎖動作時において、敷居14上に存在する閉鎖障害物100を取り除く様子を示す。図10(a)に示すように、敷居14上に存在する閉鎖障害物100は、平坦な戸当り面16を有する乗場ドアパネル13に押されて、枠側戸当り面16cの方向に移動する。そして、図10(b)に示すように、枠側戸当り面16cに閉鎖障害物100が押し付けられると、枠側戸当り面16cの下端部に設けられた可動板51cが押しバネ54cの付勢力に抗して内側に回転移動する。
【0064】
乗場ドア装置10cにおいては、可動板51cの回転移動方向に位置する敷居14に排出口55cが形成され、排出口55cの下部には収容部56cが設けられるので、図10(b)に示すように、可動板51cを押した閉鎖障害物100は、排出口55cから落下して収容部56cに収容される。
【符号の説明】
【0065】
10、10a、10b、10c 乗場ドア装置、11 乗場壁、12 乗降口、13、13a、13b 乗場ドアパネル、14 敷居、15、15c 三方枠、16、16a、16b 戸当り面、16c 枠側戸当り面、17 ハンガープレート、18 ハンガーローラ、19 乗場ドアレール、20 滑車、21 連動ベルト、22 係止片、23 係止部、24 第1当接部、25 第2当接部、26 ロック装置、27 敷居溝、28 落下孔、29 ドアシュ、30 係合部材、31 戸当りゴム、50a、50b、50c 可動部、51a、51b、51c 可動板、52a、52c 固定部、52b 上方突起、53a、53c 支持部、54a、54c 押しバネ、53b 下方突起、54b 支持レール、55b 敷居溝突起、55c 排出口、56c 収容部、70 かご、100 閉鎖障害物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降口の側縁に設けられるドア枠と、
乗降口を開閉するドアパネルと、
ドアパネルをガイドする敷居と、
を備え、ドア枠の戸当り面とドアパネルの戸当り面とが一致して乗降口を閉じるサイドオープン型のエレベータドア装置において、
ドア枠及びドアパネルの少なくとも一方は、
戸当り面の下端部に、内側に向かって退避可能な可動部を有することを特徴とするエレベータドア装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータドア装置において、
可動部は、ドア枠の戸当り面に設けられ、
可動部の退避方向に位置する床には、閉鎖障害物を敷居上から取り除くための排出口が設けられることを特徴とするエレベータドア装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベータドア装置において、
排出口の下方には、排出口から落下する閉鎖障害物を捕捉するための収容部が設けられることを特徴とするエレベータドア装置。
【請求項4】
乗降口を開閉する2枚のドアパネルと、
ドアパネルをガイドする敷居と、
を備え、2枚のドアパネルの戸当り面が一致して乗降口を閉じるセンターオープン型のエレベータドア装置において、
少なくとも一方のドアパネルは、
戸当り面の下端部に、内側に向かって退避可能な可動部を有することを特徴とするエレベータドア装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載のエレベータドア装置において、
可動部は、
板表面が戸当り面の下端部を形成し、当該板表面が昇降路側に向くように回転移動することで内側に向かって退避する可動板と、
可動板を内側から外側に向かって付勢する付勢部材と、
を含み、可動板は、板表面が敷居上に存在する閉鎖障害物により押されると、付勢部材の付勢力に抗して当該板表面が昇降路側に向いて所定位置まで回転移動することを特徴とするエレベータドア装置。
【請求項6】
請求項4に記載のエレベータドア装置において、
可動部は、
板表面が戸当り面の下端部を形成し、当該板表面が昇降路側に向くように移動することで内側に向かって退避する可動板と、
可動板の昇降路側に位置する部分から下方に突出し、敷居の溝内に導入される下方突起と、
敷居の溝内に設けられ、ドアパネルが所定位置まで閉じられたときに下方突起と接触係合して下方突起の位置を固定する敷居溝突起と、
を含み、可動板は、ドアパネルが所定位置まで閉じられると、下方突起を支点として板表面が向くように移動することを特徴とするエレベータドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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