エレベーターのブレーキ装置
【課題】ブレーキスイッチの誤動作を防止し、アマチュアの動きを正確に検出することが可能なブレーキスイッチを備えたブレーキ装置を提供する。
【解決手段】モーターケース内に収納され、モーターの回転軸に連結されたブレーキドラムと、このドラムに対向配置されるブレーキシューと、このブレーキシューに固定されたアマチュアと、このアマチュアを駆動するための電磁コイルが収納され、前記モーターケースに固定されたコイルケースと、このコイルケースとアマチュア間に配置されたばねと、前記コイルケースに固定されたブレーキスイッチと、このブレーキスイッチをオン・オフするように、前記アマチュアに固定されたスイッチ駆動ピンと、を備え、前記ブレーキシューは、少なくとも1×10^6(10の6乗)N/mm以下のばね係数を有することを特徴とする。
【解決手段】モーターケース内に収納され、モーターの回転軸に連結されたブレーキドラムと、このドラムに対向配置されるブレーキシューと、このブレーキシューに固定されたアマチュアと、このアマチュアを駆動するための電磁コイルが収納され、前記モーターケースに固定されたコイルケースと、このコイルケースとアマチュア間に配置されたばねと、前記コイルケースに固定されたブレーキスイッチと、このブレーキスイッチをオン・オフするように、前記アマチュアに固定されたスイッチ駆動ピンと、を備え、前記ブレーキシューは、少なくとも1×10^6(10の6乗)N/mm以下のばね係数を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベーターのブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベーターのブレーキ装置は、モーターケース内に収納され、モーターの回転軸に連結されたブレーキドラム、このドラムに対向配置されるブレーキシューを含んでいる。このブレーキシューはアマチュアに固定されており、このアマチュアは、モーターケースに固定されたコイルケース内に収納された電磁コイルにより駆動される。この電磁コイルは、ブレーキを開放するときアマチュアをブレーキドラム表面から引き離す方向に吸引する。
【0003】
コイルケースとアマチュア間には、ブレーキの動作時に、アマチュアをブレーキドラム側に押し付けるように作用するばねが配置されている。また、コイルケースにはブレーキスイッチが固定されており、このスイッチは、アマチュアと一体となって動くスイッチ駆動ピンによりオン・オフ制御され、これによってブレーキの開閉を機械的に検出してブレーキ事故を防止するために設けられている。
【0004】
このようなブレーキ装置においては、ブレーキが閉じているときは、ばねの弾性力によりアマチュアを介してブレーキシューがドラム表面に押付けられ制動力を発生させている。他方、ブレーキが開放するときは、アマチュアがコイルケース側に引き寄せられるため、スイッチ駆動ピンもアマチュアと一体となって動き、ブレーキスイッチを押すことにより接点がオンし、再びブレーキが閉じるときはスイッチ駆動ピンがブレーキスイッチから離れ、接点がオフする構造となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のブレーキ装置においては、シューギャップ、つまりブレーキシューとブレーキドラムとのすき間が小さい場合には、スイッチ駆動ピンの動きも小さくなる。例えば、シューギャップは通常0.1mm程度であり、従ってスイッチ駆動ピンのストロークも0.1mm程度となる。一方ブレーキスイッチの接点間の距離は0.1〜0.2mmである。このため、ブレーキスイッチに対してストロークが不足し、ブレーキの開閉動作にともないブレーキスイッチがオンまたはオフできないという現象が起き、スイッチが誤動作する可能性がある。特に外気温の上昇などによりドラムが膨張し、シューギャップが減少した状態のときは、ストロークがさらに小さくなるためスイッチの誤動作の可能性が高くなる。
【0006】
従って、本発明はブレーキスイッチの誤動作を防止し、アマチュアの動きを正確に検出することが可能なブレーキスイッチを備えたブレーキ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、モーターケース内に収納され、モーターの回転軸に連結されたブレーキドラムと、このドラムに対向配置されるブレーキシューと、このブレーキシューに固定されたアマチュアと、このアマチュアを駆動するための電磁コイルが収納され、前記モーターケースに固定されたコイルケースと、このコイルケースとアマチュア間に配置されたばねと、前記コイルケースに固定されたブレーキスイッチと、このブレーキスイッチをオン・オフように、前記アマチュアに固定されたスイッチ駆動ピンと、を備え、前記ブレーキシューは、1×10^6(10の6乗)N/mm以下のばね係数を有することを特徴とするブレーキ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態を示す概略構成図。
【図2】第2の実施形態を示す概略構成図。
【図3】第3の実施形態を示す概略構成図。
【図4】第4の実施形態を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施形態を示すブレーキ装置の構造を示す構成図である。この装置は、モーターケース11内に収納され、モーター(図示せず)の回転軸に連結されたブレーキドラム12、このドラムに対向配置されるブレーキシュー13を含んでいる。ここでシュー13の材料として、比較的弾性率の低い摺動材を用いる。すなわち、ブレーキシュー13は、その厚さ、材質を調整してそのばね係数を例えば1×10^6(10の6乗)N/mmとする。このブレーキシュー13はブレーキの開閉にともなってブレーキドラム12の表面に接近しあるいはこれから離れるように動くアマチュア14に一体的に固定されている。モーターケース11にはコイルケース15が取り付けボルト16により固定されている。このコイルケース15内にはアマチュア14を吸着するための電磁コイル17が収納されている。この電磁コイル17は、ブレーキを開放するときアマチュア14をブレーキドラム12の表面から離れる方向に吸引する。
【0011】
コイルケース15とアマチュア14間には、ブレーキの動作時に、アマチュア14をブレーキドラム12の表面方向に移動するように作用するばね18が配置されている。このばね18はコイルケース15のアマチュア14側の面に形成された凹部19内に収納され、その一端がアマチュア14のブレーキシュー13が固定されている面と反対の面に接触している。このばね18の弾性力を例えば10kNとする。
【0012】
コイルケース15のアマチュア14と反対側の面には、Z字状に曲折された固定板20により間隔を置いてブレーキスイッチ21が固定されている。このブレーキスイッチ21は、表面に押しボタン22が設けられた押しボタンスイッチである。このブレーキスイッチ21は、アマチュア14に固定され、アマチュア14と一体となって動くスイッチ駆動ピン23によりオン・オフ制御される。すなわち、スイッチ駆動ピン23は、一端がアマチュア14のブレーキシュー13と反対の面に固定され、他端がブレーキスイッチ21の押しボタン22に接触しあるいはその近傍に配置される棒状の駆動体である。
【0013】
このように構成されたブレーキ装置の動作について説明する。このブレーキ装置においては、ブレーキが閉じているときは、ばね18の弾性力によりアマチュア14を介してブレーキシュー13がブレーキドラム12の表面に押付けられ制動力を発生させている。他方、ブレーキが開放するときは、アマチュア14がコイルケース15側に引き寄せられるため、スイッチ駆動ピン17もアマチュア14と一体となって動き、ブレーキスイッチ21の押しボタン22を押すことにより接点がオンし、再びブレーキが閉じるときはスイッチ駆動ピン17がブレーキスイッチ21のボタン22から離れ、接点がオフする。
【0014】
ここでブレーキシュー13の材料として、前述のように比較的弾性率の低い摺動材を用いているため、シューギャップが小さい場合でもブレーキが閉じたときにブレーキシュー13がばね18の弾性力によりたわむため、アマチュア14およびスイッチ駆動ピン23のストロークをシューギャップより大きくすることができる。例えば、ばね18の弾性力が前述のように10kN、ブレーキシュー13のばね係数を1×10^6(10の6乗)N/mmとし、その厚さを10mmとすると、ブレーキシュー13のたわみ量は0.1mmとなる。従って、ブレーキが閉じたときのアマチュア14のブレーキドラム12の表面側への移動量、すなわちスイッチ駆動ピン23のストロークは、当初のシューギャップ0.1mmに加えてブレーキシュー13のたわみ量0.1mmとなり、併せて0.2mmとなる。この結果、ブレーキスイッチ21の誤動作のリスクを低くすることができる。
【0015】
なお、上記実施形態においては、ブレーキシュー13のばね係数を1×10^6(10の6乗)N/mmとしたが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、1×10^6(10の6乗)N/mm以下であれば、同様な効果が得られる。なお、このばね係数は低すぎるとブレーキシューとしての機能を発揮できなくなるため、少なくとも1×10^5(10の5乗)N/mm以上であることが望ましい。
【0016】
図2は本発明の第2の実施形態であるブレーキ装置の構成を示す概略構成図である。この実施形態においては、アマチュア14とブレーキシュー13との間に弾性体25をはさむことにより、アマチュア14およびスイッチ駆動ピン23のストロークを増大させ、ブレーキスイッチ21の誤動作のリスクを低くしている。弾性体25としては、例えば厚さ1〜2mm程度のニトリルゴムあるいはフッ素ゴムなどのゴムを用いる。ゴムのばね係数としては前述と同様に例えば1×10^6N/mmとする。
【0017】
その他の構成は図1に示したブレーキ装置と同じであるため、対応する構成部分には同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0018】
この実施形態においては、ブレーキが閉じたときに、ばね18の弾性力により弾性体25が0.1〜0.2mm程度たわむため、アマチュア14およびスイッチ駆動ピン23のストロークをシューギャップより0.1〜0.2mm程度大きくすることができる。
【0019】
なお、上記の実施形態においては、ゴムのばね係数を1×10^6(10の6乗)N/mmとしたが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、1×10^6(10の6乗)N/mm以下であれば、同様な効果が得られる。しかし、この場合もあまり低すぎた場合、ブレーキ装置と賭しての機能が十分に発揮できなくなるため、1×10^5(10の5乗)N/mm以上であることが望ましい。
【0020】
図3は本発明の第3の実施形態であるブレーキ装置の構成を示す概略構成図である。この実施形態においては、コイルケース15の剛性を下げることにより、アマチュア14およびスイッチ駆動ピン23の相対的なストロークを増大させ、ブレーキスイッチ21の誤動作のリスクを低くしている。コイルケース15は通常鉄が用いられるが、鉄の代わりにアルミ(Al)あるいはSUSを用い、また、ケース15を形成する材料の肉厚を小さくしあるいは肉厚内に空洞を設けるなどの手段により、コイルケース15全体の剛性をそのばね係数が前述と同様に例えば1×10^6N/mm程度となるように下げる。
【0021】
その他の構成は図1に示したブレーキ装置と同じであるため、対応する構成部分には同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0022】
この実施形態においては、ブレーキが閉じたときにばね18の弾性力、例えば、前述と同様に10kNにより、コイルケース15が0.1mm程度たわみ、コイルケース15に固定されているブレーキスイッチ21が外側へ移動するため、ブレーキスイッチ21から見た相対的なアマチュア14およびスイッチ駆動ピン23のストロークをシューギャップより0.1mm程度大きくすることができる。
【0023】
なお、上記実施形態においては、コイルケース15のばね係数を1×10^6(10の6乗)N/mmとしたが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、1×10^6(10の6乗)N/mm以下であれば、同様な効果が得られるが、その下限は1×10^5(10の57乗)N/mmが望ましい。
【0024】
図4は本発明の第4の実施形態であるブレーキ装置の構成を示す概略構成図である。この実施形態においては、モーターケース11とコイルケース15との間の取り付けボルト16の材料と長さを調整することにより、アマチュア14およびスイッチ駆動ピン23の相対的なストロークを増大させ、ブレーキスイッチ21の誤動作のリスクを低くしている。すなわち、取り付けボルト16は通常鉄が用いられるが、鉄に代えてばね係数の小さな例えばアルミ(Al)を用い、M6サイズで長さが100mmのボルトを4本用いてコイルケース15をモーターケース11に固定する。
【0025】
その他の構成は図1に示したブレーキ装置と同じであるため、対応する構成部分には同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0026】
この実施形態においては、ブレーキが閉じたときに取り付けボルト16がばね18の弾性力、例えば、前述と同様に10kNにより、4本のボルト全体で約0.1mm伸びる。この結果、コイルケース15がブレーキドラム12とは反対側に移動し、コイルケース15に固定されているブレーキスイッチ21もブレーキドラム12とは反対側へ移動する。このため、ブレーキスイッチ21から見た相対的なアマチュア14およびスイッチ駆動ピン23のストロークをシューギャップより約0.1mm大きくすることができる。
【0027】
なお、上記実施形態においては、取り付けボルト16のばね係数を1×10^6(10の6乗)N/mmとしたが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、1×10^6(10の6乗)N/mm以下であれば、同様な効果が得られるがその下限は1×10^5(10の5乗)N/mmであることが望ましい。
【符号の説明】
【0028】
11 モーターケース
12 ブレーキドラム
13 ブレーキシュー
14 アマチュア
15 コイルケース
16 取り付けボルト
17 電磁コイル
18 ばね
19 凹部
20 固定板
21 ブレーキスイッチ
22 押しボタン
23 スイッチ駆動ピン
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベーターのブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベーターのブレーキ装置は、モーターケース内に収納され、モーターの回転軸に連結されたブレーキドラム、このドラムに対向配置されるブレーキシューを含んでいる。このブレーキシューはアマチュアに固定されており、このアマチュアは、モーターケースに固定されたコイルケース内に収納された電磁コイルにより駆動される。この電磁コイルは、ブレーキを開放するときアマチュアをブレーキドラム表面から引き離す方向に吸引する。
【0003】
コイルケースとアマチュア間には、ブレーキの動作時に、アマチュアをブレーキドラム側に押し付けるように作用するばねが配置されている。また、コイルケースにはブレーキスイッチが固定されており、このスイッチは、アマチュアと一体となって動くスイッチ駆動ピンによりオン・オフ制御され、これによってブレーキの開閉を機械的に検出してブレーキ事故を防止するために設けられている。
【0004】
このようなブレーキ装置においては、ブレーキが閉じているときは、ばねの弾性力によりアマチュアを介してブレーキシューがドラム表面に押付けられ制動力を発生させている。他方、ブレーキが開放するときは、アマチュアがコイルケース側に引き寄せられるため、スイッチ駆動ピンもアマチュアと一体となって動き、ブレーキスイッチを押すことにより接点がオンし、再びブレーキが閉じるときはスイッチ駆動ピンがブレーキスイッチから離れ、接点がオフする構造となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のブレーキ装置においては、シューギャップ、つまりブレーキシューとブレーキドラムとのすき間が小さい場合には、スイッチ駆動ピンの動きも小さくなる。例えば、シューギャップは通常0.1mm程度であり、従ってスイッチ駆動ピンのストロークも0.1mm程度となる。一方ブレーキスイッチの接点間の距離は0.1〜0.2mmである。このため、ブレーキスイッチに対してストロークが不足し、ブレーキの開閉動作にともないブレーキスイッチがオンまたはオフできないという現象が起き、スイッチが誤動作する可能性がある。特に外気温の上昇などによりドラムが膨張し、シューギャップが減少した状態のときは、ストロークがさらに小さくなるためスイッチの誤動作の可能性が高くなる。
【0006】
従って、本発明はブレーキスイッチの誤動作を防止し、アマチュアの動きを正確に検出することが可能なブレーキスイッチを備えたブレーキ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、モーターケース内に収納され、モーターの回転軸に連結されたブレーキドラムと、このドラムに対向配置されるブレーキシューと、このブレーキシューに固定されたアマチュアと、このアマチュアを駆動するための電磁コイルが収納され、前記モーターケースに固定されたコイルケースと、このコイルケースとアマチュア間に配置されたばねと、前記コイルケースに固定されたブレーキスイッチと、このブレーキスイッチをオン・オフように、前記アマチュアに固定されたスイッチ駆動ピンと、を備え、前記ブレーキシューは、1×10^6(10の6乗)N/mm以下のばね係数を有することを特徴とするブレーキ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態を示す概略構成図。
【図2】第2の実施形態を示す概略構成図。
【図3】第3の実施形態を示す概略構成図。
【図4】第4の実施形態を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施形態を示すブレーキ装置の構造を示す構成図である。この装置は、モーターケース11内に収納され、モーター(図示せず)の回転軸に連結されたブレーキドラム12、このドラムに対向配置されるブレーキシュー13を含んでいる。ここでシュー13の材料として、比較的弾性率の低い摺動材を用いる。すなわち、ブレーキシュー13は、その厚さ、材質を調整してそのばね係数を例えば1×10^6(10の6乗)N/mmとする。このブレーキシュー13はブレーキの開閉にともなってブレーキドラム12の表面に接近しあるいはこれから離れるように動くアマチュア14に一体的に固定されている。モーターケース11にはコイルケース15が取り付けボルト16により固定されている。このコイルケース15内にはアマチュア14を吸着するための電磁コイル17が収納されている。この電磁コイル17は、ブレーキを開放するときアマチュア14をブレーキドラム12の表面から離れる方向に吸引する。
【0011】
コイルケース15とアマチュア14間には、ブレーキの動作時に、アマチュア14をブレーキドラム12の表面方向に移動するように作用するばね18が配置されている。このばね18はコイルケース15のアマチュア14側の面に形成された凹部19内に収納され、その一端がアマチュア14のブレーキシュー13が固定されている面と反対の面に接触している。このばね18の弾性力を例えば10kNとする。
【0012】
コイルケース15のアマチュア14と反対側の面には、Z字状に曲折された固定板20により間隔を置いてブレーキスイッチ21が固定されている。このブレーキスイッチ21は、表面に押しボタン22が設けられた押しボタンスイッチである。このブレーキスイッチ21は、アマチュア14に固定され、アマチュア14と一体となって動くスイッチ駆動ピン23によりオン・オフ制御される。すなわち、スイッチ駆動ピン23は、一端がアマチュア14のブレーキシュー13と反対の面に固定され、他端がブレーキスイッチ21の押しボタン22に接触しあるいはその近傍に配置される棒状の駆動体である。
【0013】
このように構成されたブレーキ装置の動作について説明する。このブレーキ装置においては、ブレーキが閉じているときは、ばね18の弾性力によりアマチュア14を介してブレーキシュー13がブレーキドラム12の表面に押付けられ制動力を発生させている。他方、ブレーキが開放するときは、アマチュア14がコイルケース15側に引き寄せられるため、スイッチ駆動ピン17もアマチュア14と一体となって動き、ブレーキスイッチ21の押しボタン22を押すことにより接点がオンし、再びブレーキが閉じるときはスイッチ駆動ピン17がブレーキスイッチ21のボタン22から離れ、接点がオフする。
【0014】
ここでブレーキシュー13の材料として、前述のように比較的弾性率の低い摺動材を用いているため、シューギャップが小さい場合でもブレーキが閉じたときにブレーキシュー13がばね18の弾性力によりたわむため、アマチュア14およびスイッチ駆動ピン23のストロークをシューギャップより大きくすることができる。例えば、ばね18の弾性力が前述のように10kN、ブレーキシュー13のばね係数を1×10^6(10の6乗)N/mmとし、その厚さを10mmとすると、ブレーキシュー13のたわみ量は0.1mmとなる。従って、ブレーキが閉じたときのアマチュア14のブレーキドラム12の表面側への移動量、すなわちスイッチ駆動ピン23のストロークは、当初のシューギャップ0.1mmに加えてブレーキシュー13のたわみ量0.1mmとなり、併せて0.2mmとなる。この結果、ブレーキスイッチ21の誤動作のリスクを低くすることができる。
【0015】
なお、上記実施形態においては、ブレーキシュー13のばね係数を1×10^6(10の6乗)N/mmとしたが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、1×10^6(10の6乗)N/mm以下であれば、同様な効果が得られる。なお、このばね係数は低すぎるとブレーキシューとしての機能を発揮できなくなるため、少なくとも1×10^5(10の5乗)N/mm以上であることが望ましい。
【0016】
図2は本発明の第2の実施形態であるブレーキ装置の構成を示す概略構成図である。この実施形態においては、アマチュア14とブレーキシュー13との間に弾性体25をはさむことにより、アマチュア14およびスイッチ駆動ピン23のストロークを増大させ、ブレーキスイッチ21の誤動作のリスクを低くしている。弾性体25としては、例えば厚さ1〜2mm程度のニトリルゴムあるいはフッ素ゴムなどのゴムを用いる。ゴムのばね係数としては前述と同様に例えば1×10^6N/mmとする。
【0017】
その他の構成は図1に示したブレーキ装置と同じであるため、対応する構成部分には同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0018】
この実施形態においては、ブレーキが閉じたときに、ばね18の弾性力により弾性体25が0.1〜0.2mm程度たわむため、アマチュア14およびスイッチ駆動ピン23のストロークをシューギャップより0.1〜0.2mm程度大きくすることができる。
【0019】
なお、上記の実施形態においては、ゴムのばね係数を1×10^6(10の6乗)N/mmとしたが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、1×10^6(10の6乗)N/mm以下であれば、同様な効果が得られる。しかし、この場合もあまり低すぎた場合、ブレーキ装置と賭しての機能が十分に発揮できなくなるため、1×10^5(10の5乗)N/mm以上であることが望ましい。
【0020】
図3は本発明の第3の実施形態であるブレーキ装置の構成を示す概略構成図である。この実施形態においては、コイルケース15の剛性を下げることにより、アマチュア14およびスイッチ駆動ピン23の相対的なストロークを増大させ、ブレーキスイッチ21の誤動作のリスクを低くしている。コイルケース15は通常鉄が用いられるが、鉄の代わりにアルミ(Al)あるいはSUSを用い、また、ケース15を形成する材料の肉厚を小さくしあるいは肉厚内に空洞を設けるなどの手段により、コイルケース15全体の剛性をそのばね係数が前述と同様に例えば1×10^6N/mm程度となるように下げる。
【0021】
その他の構成は図1に示したブレーキ装置と同じであるため、対応する構成部分には同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0022】
この実施形態においては、ブレーキが閉じたときにばね18の弾性力、例えば、前述と同様に10kNにより、コイルケース15が0.1mm程度たわみ、コイルケース15に固定されているブレーキスイッチ21が外側へ移動するため、ブレーキスイッチ21から見た相対的なアマチュア14およびスイッチ駆動ピン23のストロークをシューギャップより0.1mm程度大きくすることができる。
【0023】
なお、上記実施形態においては、コイルケース15のばね係数を1×10^6(10の6乗)N/mmとしたが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、1×10^6(10の6乗)N/mm以下であれば、同様な効果が得られるが、その下限は1×10^5(10の57乗)N/mmが望ましい。
【0024】
図4は本発明の第4の実施形態であるブレーキ装置の構成を示す概略構成図である。この実施形態においては、モーターケース11とコイルケース15との間の取り付けボルト16の材料と長さを調整することにより、アマチュア14およびスイッチ駆動ピン23の相対的なストロークを増大させ、ブレーキスイッチ21の誤動作のリスクを低くしている。すなわち、取り付けボルト16は通常鉄が用いられるが、鉄に代えてばね係数の小さな例えばアルミ(Al)を用い、M6サイズで長さが100mmのボルトを4本用いてコイルケース15をモーターケース11に固定する。
【0025】
その他の構成は図1に示したブレーキ装置と同じであるため、対応する構成部分には同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0026】
この実施形態においては、ブレーキが閉じたときに取り付けボルト16がばね18の弾性力、例えば、前述と同様に10kNにより、4本のボルト全体で約0.1mm伸びる。この結果、コイルケース15がブレーキドラム12とは反対側に移動し、コイルケース15に固定されているブレーキスイッチ21もブレーキドラム12とは反対側へ移動する。このため、ブレーキスイッチ21から見た相対的なアマチュア14およびスイッチ駆動ピン23のストロークをシューギャップより約0.1mm大きくすることができる。
【0027】
なお、上記実施形態においては、取り付けボルト16のばね係数を1×10^6(10の6乗)N/mmとしたが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、1×10^6(10の6乗)N/mm以下であれば、同様な効果が得られるがその下限は1×10^5(10の5乗)N/mmであることが望ましい。
【符号の説明】
【0028】
11 モーターケース
12 ブレーキドラム
13 ブレーキシュー
14 アマチュア
15 コイルケース
16 取り付けボルト
17 電磁コイル
18 ばね
19 凹部
20 固定板
21 ブレーキスイッチ
22 押しボタン
23 スイッチ駆動ピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターケース内に収納され、モーターの回転軸に連結されたブレーキドラムと、このドラムに対向配置されるブレーキシューと、このブレーキシューに固定されたアマチュアと、このアマチュアを駆動するための電磁コイルが収納され、前記モーターケースに固定されたコイルケースと、このコイルケースとアマチュア間に配置されたばねと、前記コイルケースに固定されたブレーキスイッチと、このブレーキスイッチをオン・オフするように、前記アマチュアに固定されたスイッチ駆動ピンと、を備え、前記ブレーキシューは、1×10^6(10の6乗)N/mm以下のばね係数を有することを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
モーターケース内に収納され、モーターの回転軸に連結されたブレーキドラムと、このドラムに対向配置されるブレーキシューと、このブレーキシューに固定されたアマチュアと、このアマチュアを駆動するための電磁コイルが収納され、前記モーターケースに固定されたコイルケースと、このコイルケースとアマチュア間に配置されたばねと、前記コイルケースに固定されたブレーキスイッチと、このブレーキスイッチをオン・オフするように、前記アマチュアに固定されたスイッチ駆動ピンと、前記アマチュアとプレーキシューとの間に挿入された弾性体と、を備えることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項3】
モーターケース内に収納され、モーターの回転軸に連結されたブレーキドラムと、このドラムに対向配置されるブレーキシューと、このブレーキシューに固定されたアマチュアと、このアマチュアを駆動するための電磁コイルが収納され、前記モーターケースに固定されたコイルケースと、このコイルケースとアマチュア間に配置されたばねと、前記コイルケースに固定されたブレーキスイッチと、このブレーキスイッチをオン・オフするように、前記アマチュアに固定されたスイッチ駆動ピンと、を備え、前記コイルケースは1×10^6(10の6乗)N/mm以下のばね係数を有することにより、ブレーキスイッチのストロークを増大させることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項4】
モーターケース内に収納され、モーターの回転軸に連結されたブレーキドラムと、このドラムに対向配置されるブレーキシューと、このブレーキシューに固定されたアマチュアと、このアマチュアを駆動するための電磁コイルが収納され、前記モーターケースに固定されたコイルケースと、このコイルケースとアマチュア間に配置されたばねと、前記コイルケースに固定されたブレーキスイッチと、このブレーキスイッチをオン・オフするように、前記アマチュアに固定されたスイッチ駆動ピンと、を備え、前記コイルケースのモーターケースへの取り付けポルトは、1×10^6(10の6乗)N/mm以下のばね係数を有することにより、ブレーキスイッチのストロークを増大させることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項1】
モーターケース内に収納され、モーターの回転軸に連結されたブレーキドラムと、このドラムに対向配置されるブレーキシューと、このブレーキシューに固定されたアマチュアと、このアマチュアを駆動するための電磁コイルが収納され、前記モーターケースに固定されたコイルケースと、このコイルケースとアマチュア間に配置されたばねと、前記コイルケースに固定されたブレーキスイッチと、このブレーキスイッチをオン・オフするように、前記アマチュアに固定されたスイッチ駆動ピンと、を備え、前記ブレーキシューは、1×10^6(10の6乗)N/mm以下のばね係数を有することを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
モーターケース内に収納され、モーターの回転軸に連結されたブレーキドラムと、このドラムに対向配置されるブレーキシューと、このブレーキシューに固定されたアマチュアと、このアマチュアを駆動するための電磁コイルが収納され、前記モーターケースに固定されたコイルケースと、このコイルケースとアマチュア間に配置されたばねと、前記コイルケースに固定されたブレーキスイッチと、このブレーキスイッチをオン・オフするように、前記アマチュアに固定されたスイッチ駆動ピンと、前記アマチュアとプレーキシューとの間に挿入された弾性体と、を備えることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項3】
モーターケース内に収納され、モーターの回転軸に連結されたブレーキドラムと、このドラムに対向配置されるブレーキシューと、このブレーキシューに固定されたアマチュアと、このアマチュアを駆動するための電磁コイルが収納され、前記モーターケースに固定されたコイルケースと、このコイルケースとアマチュア間に配置されたばねと、前記コイルケースに固定されたブレーキスイッチと、このブレーキスイッチをオン・オフするように、前記アマチュアに固定されたスイッチ駆動ピンと、を備え、前記コイルケースは1×10^6(10の6乗)N/mm以下のばね係数を有することにより、ブレーキスイッチのストロークを増大させることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項4】
モーターケース内に収納され、モーターの回転軸に連結されたブレーキドラムと、このドラムに対向配置されるブレーキシューと、このブレーキシューに固定されたアマチュアと、このアマチュアを駆動するための電磁コイルが収納され、前記モーターケースに固定されたコイルケースと、このコイルケースとアマチュア間に配置されたばねと、前記コイルケースに固定されたブレーキスイッチと、このブレーキスイッチをオン・オフするように、前記アマチュアに固定されたスイッチ駆動ピンと、を備え、前記コイルケースのモーターケースへの取り付けポルトは、1×10^6(10の6乗)N/mm以下のばね係数を有することにより、ブレーキスイッチのストロークを増大させることを特徴とするブレーキ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2012−6697(P2012−6697A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142875(P2010−142875)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
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