説明

エレベーターの呼び登録装置

【課題】 本発明は、車椅子利用者や視覚障害者など、かご内のボタン操作が困難な乗客だけが、災害により閉じ込められた場合に、音声より救出操作が可能な音声呼び登録装置を得る。
【解決手段】 エレベーターの運行状態に基づいて、音声により呼び登録が可能であるか否かを判断する呼び登録可能判定手段と、運行状態に基づいて、音声により災害時用操作が可能であるか否かを判断する災害発生判定手段と、かご室内のマイクロホンより入力される音声信号を予め登録された呼び登録用音声信号データ及び災害時用音声信号データのいずれかと比較する音声認識手段と、呼び登録可能判定手段と災害発生判定手段の判定結果により、呼び登録モードと判定した場合は、音声認識手段に登録された呼び登録用音声信号データに切換え、災害時モードと判定した場合は、音声認識手段に登録された災害時用音声信号データに切換える操作モード切換え手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターのかご内において、乗客が音声によって呼びの登録を行うことができるエレベーターの呼び登録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターは、車椅子利用者や視覚障害者や高齢者、多くの荷物で両手がふさがっている者等、様々な乗客によって利用される。このため、乗客によっては、呼びを登録するためのボタン操作が困難であったり、不便と感じたりすることから、エレベーターの呼び登録を音声によって行うことができる呼び登録装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、前記のかご内でのボタン操作が困難な乗客が、音声によって呼び登録を行って乗車している状況にて、強い地震が発生して救出のために戸閉ボタンの操作が必要になった場合や、火災や停電時に避難階へ到着したが戸開時間中に降車できずに避難のために戸開ボタンの操作が必要になった場合など、かご内に閉じ込められて避難が遅れるといった可能性があった。
【0004】
上記の閉じ込められる問題に対し、乗りかご内での操作盤の操作不実行により乗客の閉じ込め状態を検出してドアが開扉するよう制御したり、インターホン装置を使ってかご内の音声を外部装置に出力する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0005】
また、かご内での操作を全て音声によって行う方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−247378号公報(第3頁左上4行目〜10行目及び第4図)
【特許文献2】特開2007−31086号公報(0026欄〜0028欄及び図1)
【特許文献3】特開平9−255243号公報(0006欄〜0010欄及び図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のエレベーターの呼び登録を音声によって行う呼び登録装置では、操作可能なキーワードを予め登録しておく必要があるため、前記の特許文献3のように、かご内での操作を全て音声によって行う場合は、登録するキーワードが多くなり、判定に時間がかかると共に、間違ったキーワードを選択する可能性が高くなり、誤認識による別操作を実行してしまうので、乗客は何度も音声登録の操作を行わなければならないという問題があった。
【0008】
また、乗場に出入口がない急行ゾーン内を通過する際に強い地震が発生した場合の救出時には、乗客を安全に救出するために、エレベーター外部からの制御に加え、かご内での戸閉ボタン操作があった場合のみ救出運転を実施するようになっており、車椅子の乗客が強い地震発生により転倒し、かご内でのボタン操作が困難になると、前記の特許文献2では、戸開はせずに外部へ報知をするものの、救出運転は開始できないので救助員が到着するまで乗客がかご内に閉じ込められるといった問題があった。
【0009】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、車椅子利用者や視覚障害者など、かご内のボタン操作が困難な乗客だけが、災害により閉じ込められた場合においても、乗客の音声により確実な乗客の救出操作を行うことができる信頼性の高いエレベーターの呼び登録装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るエレベーターの呼び登録装置では、エレベーター制御盤から入力されたエレベーターの運行状態に基づいて、かご室内での音声により呼びを登録することが可能であるか否かを判断する呼び登録可能判定手段と、運行状態に基づいて、音声により災害時用の操作をすることが可能であるか否かを判断する災害発生判定手段と、かご室内に設置された音声入力用のマイクロホンより入力される音声信号を予め登録された呼び登録用音声信号データ及び災害時用音声信号データのいずれかと比較する音声認識手段と、呼び登録可能判定手段と災害発生判定手段の判定結果により、呼び登録用の操作が可能な呼び登録モードであると判定した場合は、マイクロホンより入力される音声信号と比較する音声信号データを音声認識手段に登録された呼び登録用音声信号データに切換え、災害時用の操作が可能な災害時モードであると判定した場合は、マイクロホンより入力される音声信号と比較する音声信号データを音声認識手段に登録された災害時用音声信号データに切換える操作モード切換え手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係るエレベーターの呼び登録装置によれば、車椅子利用者や視覚障害者など、かご内のボタン操作が困難な乗客だけが、災害により閉じ込められた場合においても、乗客の音声により確実な乗客の救出操作を行える信頼性の高いエレベーターの呼び登録装置を得ることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベーターの呼び登録装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエレベーターの呼び登録装置を備えたエレベーターのかご内状態を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるエレベーター呼び登録装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1による災害時の救出操作用に使用する音声信号データとエレベーターへの制御指令データの一例を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態1による呼び登録時に使用する音声信号データとエレベーターへの制御指令データの一例を示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態2におけるエレベーターの呼び登録装置を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態2におけるエレベーター呼び登録装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態2による災害時の救出操作用に使用する音声信号データとエレベーターへの制御指令データとその制御指令データの出力先の一例を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態2による呼び登録時に使用する音声信号データとエレベーターへの制御指令データとその指令データの出力先の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
本実施の形態1におけるエレベーターの呼び登録装置について説明する。先ず、エレベーターの呼び登録装置の構成について説明する。
【0015】
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベーターの呼び登録装置を示す構成図、図2は図1の呼び登録装置を備えたエレベーターのかご内状態を示す図である。
【0016】
図1及び図2において、1はエレベーター昇降路内を昇降するかご、2はかご1の走行制御等、エレベーター全体の運行制御を司る制御盤である。かご1には、人感センサ(人検出装置)3、報知装置4、表示装置5、音声登録装置6が設けられている。
【0017】
人感センサ3は、所定の検出範囲にいる乗客を検出する機能を有している。具体的に、人感センサ3は、音声登録装置6の使用者となり得る乗客を検出するために備えられたものであり、例えば、その検出範囲が、かご1の出入口を横切るように設定される(図2参照)。なお、図2に示す例では、かご1の出入口を形成する縦柱に複数の人感センサ3を設置することにより、各検出範囲を上下に配置して、検出漏れを防止している。かかる構成であれば、乗客は、かご1の出入口を通過する際に、少なくとも何れかの人感センサ3によって、確実にその存在が検出される。
【0018】
報知装置4は、かご1内の乗客に対してエレベーターの停止やドアの開閉といったエレベーターの運行状態や、かご1内の乗客が音声によって呼びを登録する際のガイダンスなどを音声で報知する機能を有しており、スピーカ等によって構成される。
【0019】
表示装置5は、かご1内の乗客に対してエレベーターの走行位置や走行方向といったエレベーターの運行状態や、かご1内の乗客が音声によって呼びを登録する際のガイダンスなどを視覚的に報知する機能を有しており、液晶ディスプレイ等によって構成される。
【0020】
音声登録装置6は、かご1内の乗客が音声によって呼びを登録するために、かご1に設置されたものである。音声登録装置6は、例えば、マイクロホン(音声入力装置)7、音声認識装置8、によって主要部分が構成される。
【0021】
マイクロホン7は、音声入力用としてかご1に設置されたものである。即ち、音声によって呼びを登録したい乗客は、自分の行先階等の音声情報をこのマイクロホン7から入力する。なお、報知装置4や表示装置5は、音声登録装置6が使用可能であること、即ち、音声による呼び登録が可能なことをかご1内の乗客に対して報知する前記のような機能を有している。
【0022】
また、図2に示す例では、前記の報知装置4、表示装置5、マイクロホン7、をかご1内の操作盤9に配置している。さらに、戸開釦10、戸閉釦11、各行先釦12、インターホンの呼出ボタン21も設けられている。
【0023】
音声認識装置8は、本発明の主要部分を構成するものであり、マイクロホン7から入力された音声情報に基づいて呼びの登録を行う機能と、地震や火災や停電などの災害発生時には、救出用の操作を音声で実施する機能とを備えている。具体的に、音声認識装置8は、人検出手段13、呼び登録可能判定手段14、音声認識手段17、エレベーター制御手段18、災害発生判定手段15、操作モード切換え手段16によってその主要部分が構成されている。
【0024】
人検出手段13は、人感センサ3からの検出信号を受信し、音声登録装置6の利用者となり得る乗客の有無を検出する。
【0025】
呼び登録可能判定手段14は、音声によって呼びを登録することが可能か否かを判定する機能を有している。即ち、呼び登録可能判定手段14によって音声による呼び登録が不可と判定されている時に乗客がマイクロホン7から音声を入力しても、呼びの登録は行われない。この呼び登録可能判定手段14には、エレベーター制御盤2からエレベーターの運行状態に関するデータが入力される。なお、エレベーター制御盤2から入力されるデータには、例えば、エレベーターの戸開閉状況や、平常時の運転中か災害時の運転中かを判定するためのエレベーターの運行状態といった各種情報が含まれる。そして、呼び登録可能判定手段14は、それらの入力情報に基づいて、例えば、エレベーターが平常時の運転中且つ戸開状態で停止中である間、音声による呼び登録が可能な旨を判定する。
【0026】
災害発生判定手段15は、音声によって救出用の操作を実施する必要があるか否かを判定する機能を有している。即ち、災害発生判定手段15によって災害が発生しておらず音声による救出用操作をする必要がないと判定されている時に乗客がマイクロホン7から音声を入力しても、救出用の操作は実行されない。この災害発生判定手段15には、エレベーター制御盤2からエレベーターの運行状態に関するデータが入力される。なお、エレベーター制御盤2から入力されるデータには、呼び登録可能判定手段14と同様にエレベーターの運行状態に関する各種情報が含まれる。そして、災害発生判定手段15は、それらの入力情報に基づいて、例えば、エレベーターが強い地震により降口のない位置(急行ゾーン)にて戸閉状態で停止中である間、音声により救出運転を開始するための戸閉ボタン操作が可能な旨を判定する。通常、エレベーターでは管理センター等における救出運転用スイッチがONになっている場合にかごの扉が閉まっている状態で戸閉ボタン操作を行うとエレベーターのかご1を移動することができるシステムとなっている。そして、救出操作時には、エレベーターのかご1を所定時間(例えば、現地点から最寄階までかごが移動するのに必要な時間)戸閉ボタン操作を行う必要があるが、その場合には乗客は「しまれ」という音声信号データを繰り返し何度もマイクロホン7に入力するか、もしくは長い時間戸閉ボタン操作を行う制御指令をエレベーターに与えるような音声信号データを予め登録しておいても良い。
【0027】
操作モード切換え手段16は、前記の呼び登録可能判定手段14と災害発生判定手段15の判定結果よりどちらのモードで動作するかを判定し、マイクロホン7から入力される音声信号と比較する音声信号データを災害時モード用あるいは呼び登録モード用に切換える機能を有している。即ち、操作モード切換え手段16によってエレベーターが災害状態の運転中であると判定されている時に乗客がマイクロホン7から行きたい階数等を示す呼び登録用音声を入力しても、呼びの登録は行われない。また、操作モード切換え手段16によってエレベーターが平常時の運行中であり且つ呼び登録可能な状態であると判定されている時に乗客がマイクロホン7から戸開釦や戸閉釦により救出操作を行うための救出操作用音声を入力しても、救出操作は行われない。
【0028】
音声認識手段17は、音声登録装置6の音声認識機能を司る。なお、音声認識手段17による音声認識機能は、乗客がマイクロホン7に対して発した音声が、呼び登録や救出用の操作を要求したものであるかを判定することができれば、如何なる方法によるものであっても構わない。例えば、音声認識手段17は、マイクロホン7から入力された音声信号の中に、既登録の音声信号と所定の条件で一致するものがあるか否かを識別し、一致するものが存在すれば、その登録音声信号に対応する行先階を乗客の行先階として特定する。このような技術は、例えば、カーナビゲーションシステム等においても適用されている。そして、音声認識手段17の記憶部(図示略)にはマイクロホン7から入力された音声信号と比較するための、また操作モード切換え手段16により切換えられる災害時用音声信号データ及び呼び登録用音声信号データが記憶されている。
【0029】
エレベーター制御手段18は、音声認識手段17の処理結果に従って、呼び登録指令や救出用の操作に関する制御指令をエレベーターへ出力する機能を有している。即ちエレベーター制御手段18は、操作モード切換え手段16によって災害時の救出操作状態であると判定されている間に、音声認識手段17がマイクロホン7から入力された音声信号に基づいて戸開釦や戸閉釦などの救出用操作を特定すると、その特定結果に応じた指令をエレベーター制御盤2に出力し、救出時の操作を開始する。また、操作モード切換え手段16によって平常時の音声による呼び登録が可能な状態であると判定されている間に、音声認識手段17がマイクロホン7から入力された音声信号に基づいて乗客の行先階を特定すると、その特定結果に応じて呼び登録指令をエレベーター制御盤2に出力する。
【0030】
なお、エレベーター制御手段18の前記機能は、例えば、操作モード切換え手段16によって災害時の救出用操作や音声による呼び登録が可能と判定されている時のみ、マイクロホン7のスイッチをONにしたり、音声認識手段17の音声認識機能を有効にしたりすることにより、容易に実現できる。また、災害時の救出用操作や音声による呼び登録が可能か否かの判定を、エレベーター制御手段18において実施することにより、マイクロホン7からの音声入力と音声認識手段17の音声認識機能とを常時有効に設定しておいてもよい。
【0031】
ここで、前記の音声認証装置8に備えられた13から18に示す手段は、例えば、マイクロコンピュータ上のソフトウェアによって構成される。
【0032】
次に、図3と図4と図5も参照し、前記構成を有する呼び登録装置の動作について具体的に説明する。図3は、この発明の実施の形態1におけるエレベーター呼び登録装置の動作を示すフローチャートであり、前記音声登録装置6の具体的な処理フローを示している。図4は災害時の救出操作用に使用する音声信号データとエレベーターへの制御指令データの一例であり、図5は呼び登録時に使用する音声信号データとエレベーターへの制御指令データの一例である。
【0033】
音声登録装置6では、呼び登録可能判定手段14と災害発生判定手段15が、エレベーターの運行状況に関するデータをエレベーター制御盤2から取得する(S101)。この時取得するデータには、例えば、かご1の戸開閉状況、呼びの登録状況、エレベーターの運行状態といった各種情報が含まれる。
【0034】
また、音声登録装置6では、人検出手段13が、音声登録装置6の使用者状況に関するデータを人感センサ3から取得する(S102)。
【0035】
S101及びS102において各種情報を取得すると、操作モード切換え手段16は、災害発生判定手段15の判定結果より、エレベーターの運行状態が災害時の運転中であると判定した場合は切換えるべきモードを災害時モードと判定し(S103の災害時モード)、逆に、災害時の運転中ではないと判断した場合は、引き続き、呼び登録可能判定手段14の判定結果より、音声での呼び登録が可能な状態であると判定した場合は切換えるべきモードを呼び登録モードと判定し(S103の呼び登録モード)、逆に、音声での呼び登録が可能ではない状態であると判定した場合はその他モードと判定する(S103のその他モード)。
【0036】
S103において操作モード切換え手段16により、切換えるべきモードが災害時モードと呼び登録モードとのどちらでもないその他モードと判定されると、現在は音声登録装置6が使用できない状態であると判定し、表示装置5の表示内容を「音声操作受付終了」など音声登録装置6の使用時間が終了したことを通知するための表示に切換え(S112)、さらに、マイクロホン7のスイッチをOFFにして音声入力を終了することで(S113)、音声認識手段17は音声認識処理を終了する(S114)。
【0037】
なお、S114において音声認識処理を終了した後、音声登録装置6は、S101に戻り、S101からS103の各処理を行う。そして、音声登録装置6は、S103において音声登録装置6の稼働すべきモードの設定が再びなされると、S103より先にある表示装置5の表示内容切換えや、マイクロホン7のスイッチ切換えなどの各処理を行う。
【0038】
また、操作モード切換え手段16は、上記判定結果より音声認識手段17の記憶部に記憶された前記既登録の音声信号データを呼びの登録用と災害時の操作用とに切換える機能を有しており、S103においてエレベーターの運行状態が災害時の運転であれば、操作モード切換え手段16は人感センサからの使用者状況に関係なく切換えるべきモードを災害時モードであると判定し、音声認識手段17がマイクロホンより入力した音声と比較をする音声信号データを災害時モード用へ切換える(S104)。図4は、本実施の形態における災害時モードでの音声信号データとエレベーターへの制御指令の一例を示したものである。例えば、図4において、災害時モード用として登録された音声信号データである「ひらく」や「ひらけ」とマイクロホン7から入力された音声信号が一致した場合は、エレベーター制御手段18を出力先に設定する。
【0039】
さらに、表示装置5の表示内容を、「救出操作受付中」など音声登録装置6が災害時モードにて稼働していることを通知するための表示に切換える(S105)。
【0040】
音声登録装置6が稼働すべきモードを切換えた後、エレベーター制御手段18がマイクロホン7のスイッチをONにして音声入力を開始する(S108)。
【0041】
同時に、S108においてマイクロホン7からの音声入力が可能になると、音声認識手段17は音声認識処理を開始する(S109)。
【0042】
S110において音声認識手段17の音声認識処理結果が、S104にて切換えた音声信号データと一致しなかった場合はS101に戻り、S103にてその他モードと判定されるか、S110にて音声認識処理の結果がS104にて切換えた音声信号データと一致するまでS101からS110までの処理を繰り返す。
【0043】
逆に、S110にて前記音声認識手段17の音声認識処理結果がS104にて切換えた音声信号データと一致した場合には、エレベーター制御手段18が、音声認識手段17の認識結果にて一致した音声信号データに対応する制御指令(例えば、図4において「しまれ」と一致した場合は「戸閉釦押下」の指令)をエレベーター制御盤2へ出力する(S111)。
【0044】
その後、エレベーター制御盤2がエレベーターの制御を行うため、表示装置5の表示内容を「音声操作受付終了」など音声登録装置6の使用時間が終了したことを通知するための表示に切換え(S112)、さらに、マイクロホン7のスイッチをOFFにして音声入力を終了することで(S113)、音声認識手段17は音声認識処理を終了する(S114)。
【0045】
なお、S114において音声認識処理を終了した後は、S103にてその他モードと判定された場合と同様に、音声登録装置6は、S101に戻り、S101からS103の各処理を行う。そして、音声登録装置6は、S103において音声登録装置6の稼働すべきモードの設定が再びなされると、S103より先にある表示装置5の表示内容切換えや、マイクロホン7のスイッチ切換えなどの各処理を行う。
【0046】
一方、S103においてエレベーターの運行状態が災害時の運転ではなくて音声での呼び登録が可能な状態かつ人感センサから使用者を検出すると、操作モード切換え手段16は切換えるべきモードを呼び登録モードであると判定し、音声登録装置6は音声認識手段17がマイクロホンより入力した音声と比較をする音声信号データを呼び登録モード用へ切換える(S106)。図5は、本実施の形態における呼び登録モードでの音声信号データとエレベーターへの制御指令の一例を示したものである。例えば、図5において、呼び登録モード用として登録された音声信号データである「いっかい」や「さんかい」とマイクロホン7から入力された音声信号が一致した場合は、エレベーター制御手段18を出力先に設定する。なお、音声信号データには、「とうろく」や「きゃんせる」等の音声信号データを登録しておくこともできる。この場合、マイクロホン7から入力された音声信号と登録された「ろっかい」という音声信号データが一致した場合、六階の呼び登録はその時点では不確定な状態であるため、表示装置5あるいは報知装置4で乗客に音声入力を促す。そして、その後に乗客が再び入力し「とうろく」という音声信号データと一致したときに確定的に呼びを登録し、乗客が再び入力し「きゃんせる」という音声信号データと一致したときに呼びの取消を行う構成としても良い。
【0047】
さらに、表示装置5の表示内容を、「呼び登録受付中」など音声登録装置6が呼び登録モードにて稼働していることを通知するための表示に切換える(S107)。
【0048】
その後はS103にて災害時モードと判定された場合と同様に、マイクロホンのスイッチをONにし(S108)、音声認識手段17が音声認識処理を開始してから(S109)、S110にて音声認識処理の結果がS104にて切換えた音声信号データと一致するか、S103にてその他モードと判定されるまで、S101からS114までの処理を繰り返す。
【0049】
この発明の実施の形態1によれば、地震により車椅子が転倒しかご内での移動が困難となった乗客や、かご内のボタン操作が困難な視覚障害者の乗客だけが災害により閉じ込められた場合に、かご内のボタン操作を音声呼び登録装置を用いて行うことにより、確実な乗客の救出操作ができるようになる。
【0050】
また、災害時モードと呼び登録モードで登録音声信号を切換えるよう構成したので、キーワードを判定する時間を短縮することができるとともに、間違ったキーワードを選択する可能性が低くなり、ご認識により別操作を実行してしまう可能性を低くすることができる。
【0051】
実施の形態2.
実施の形態1においては、かご内のボタン操作のうち、エレベーター制御盤への指令についてのみ可能としており、かご内に設置されている各種外部への救出を呼び掛けるインターホンやカメラなどへの出力は行われないため、例えば、複数あるエレベーターをグルーピングして運行管理をしているエレベーターにおいて、停電時管制運転などのように予備電源にて1台ずつ動かすような状況になった場合では順番待ちが発生し、災害時モードであっても救出用の操作を受け付けられない状態になってしまう。
【0052】
図6はこの発明の実施の形態2におけるエレベーターの呼び登録装置を示す構成図であり、前記の問題を解決するための具体的構成を示している。なお、実施の形態1と同様の構成及び動作は適宜省略する。
【0053】
本実施の形態における音声登録装置6は、音声認識装置8内に、前述の1から18に示す各手段に加え、インターホン制御手段19とかご内に設置されているインターホンの呼出ボタン20が備えられている。
【0054】
インターホン制御手段19も他の各手段13から18と同様に例えば、マイクロコンピュータ上のソフトウェアによって構成される。
【0055】
インターホン制御手段19は、音声認識手段17の音声認識処理結果が操作モード切換え手段にて切換えた音声信号データと一致した場合に、制御対象(制御指令の出力先)を判定する機能を有している。
【0056】
エレベーター制御盤2、人感センサ3、報知装置4、表示装置5、マイクロホン7、については実施の形態1と同様である。
【0057】
次に、図7と図8と図9も参照し、前記構成を有する呼び登録装置の動作について具体的に説明する。図7は、この発明の実施の形態2におけるエレベーター呼び登録装置の動作を示すフローチャートであり、前記音声登録装置6の具体的な処理フローを示している。図8は災害時の救出操作用に使用する音声信号データとエレベーターへの制御指令データとその制御指令データの出力先の一例であり、図9は呼び登録時に使用する音声信号データとエレベーターへの制御指令データとその指令データの出力先の一例である。なお、図7のS201は図3のS101からS110までの処理と同様であり、S205はS110からS114までの処理と同様である。
【0058】
音声登録装置6は、音声認識手段17の音声認識処理結果が操作モード切換え手段にて切換えた音声信号データと一致した場合に、制御指令データの出力先として一致した制御指令に対応する制御対象データにより判定し(S201)、出力先がエレベーターであればエレベーター制御手段を出力先に設定する(S202)、または、出力先がインターホンならインターホン制御手段を出力先に設定する(S203)。(例えば、図8において、「しまれ」や「ひらけ」と一致した場合は「エレベーター制御手段18」を出力先として設定し、「たすけて」や「だれか」と一致した場合は「インターホン制御手段19」を出力先として設定する。また、図9において、「さんかい」や「ろっかい」と一致した場合は「エレベーター制御手段18」を出力先として設定する。)すなわち、音声認識手段17からインターホン制御手段19に出力され、インターホン制御手段19によりインターホン20が押下される。
【0059】
なお、本実施の形態では、出力先をエレベーターとインターホンとして説明した。
しかし、これは単に一例を示したものであり、前記以外の出力先としてかご内に設置された救出用の操作が可能な機器であれば、例えばかご内に設置された監視カメラの切換えや監視画像の表示を加工するなど、インターホン以外の機器とその制御方法を設定しても良い。
【0060】
この発明の実施の形態2によれば、エレベーター以外の機器に対する救出操作が可能となり、例えば停電時管制運転などのように複数あるエレベーターを予備電源にて1台ずつ動かすような状況では順番待ちが発生し、災害時モードであってもエレベーターでの救出用の操作を受け付けられない状態であっても、インターホン呼出などを行うことにより救出を求めるなどの救出操作ができるようになる。
【符号の説明】
【0061】
1 エレベーターのかご
2 エレベーター制御盤
3 人感センサ
4 報知装置
5 表示装置
6 音声登録装置
7 マイクロホン
8 音声認証装置
9 かご内の操作盤
10 戸開釦
11 戸閉釦
12 行先釦
13 人検出手段
14 呼び登録可能判定手段
15 災害発生判定手段
16 操作モード切換え手段
17 音声認識手段
18 エレベーター制御手段
19 インターホン制御手段
20 インターホン
21 インターホンの呼出釦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーター制御盤から入力されたエレベーターの運行状態に基づいて、かご室内での音声により呼びを登録することが可能であるか否かを判断する呼び登録可能判定手段と、
前記運行状態に基づいて、前記音声により災害時用の操作をすることが可能であるか否かを判断する災害発生判定手段と、
前記かご室内に設置された音声入力用のマイクロホンより入力される音声信号を予め登録された呼び登録用音声信号データ及び災害時用音声信号データのいずれかと比較する音声認識手段と、
前記呼び登録可能判定手段と前記災害発生判定手段の判定結果により、呼び登録用の操作が可能な呼び登録モードであると判定した場合は、前記マイクロホンより入力される音声信号と比較する音声信号データを前記音声認識手段に登録された前記呼び登録用音声信号データに切換え、災害時用の操作が可能な災害時モードであると判定した場合は、前記マイクロホンより入力される音声信号と比較する音声信号データを前記音声認識手段に登録された前記災害時用音声信号データに切換える操作モード切換え手段と、
を備えたことを特徴とするエレベーターの呼び登録装置。
【請求項2】
前記呼び登録モード、前記災害時モード又は前記呼び登録用の操作及び前記災害時用の操作が可能でないモードのいずれかのモードであることを判断する前記操作モード切換え手段により前記呼び登録モード又は前記災害時モードであると判断された場合に、前記マイクロホンのスイッチをONとするエレベーター制御手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のエレベーターの呼び登録装置。
【請求項3】
前記マイクロホンより入力される音声信号が、前記操作モード切換え手段により切換えられた前記災害時用音声信号データのうち出力先がインターホンである前記災害時用音声信号データと一致した場合に、エレベーターのかごに設置された前記インターホンを用いて外部へ呼出しをするインターホン制御手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベーターの呼び登録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−197126(P2012−197126A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60754(P2011−60754)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】