説明

エレベータ制御装置

【課題】ファンの交換回数を低減し、さらに、ファン故障による運転停止を避ける。
【解決手段】エレベータ制御装置1は、送風用の複数のファン3と、複数のファン3に電力を供給するファン制御部4とを備え、ファン制御部4は、複数のファン3の個々の電圧を検出する検出部4bを有しており、複数のファン3のうちの一部のファン3を停止させ、停止させたファン3の発電電圧を検出部4bにより検出し、検出した発電電圧に基づいて、停止させたファン3の劣化状態を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ制御装置に関し、例えば、ファンを制御するエレベータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ装置は、乗客や荷物などが積載された乗りかごを巻上機により目的階まで移動させる装置である。このエレベータ装置には、巻上機をドライブする電力変換器内の熱源(例えば電力素子)を冷却するファンが設置されている。このファンは寿命品であり、一定の稼動年数経過後、あるいは、ファン故障時に部品交換が行われる。特許文献1には、ファンの寿命を改善する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−101668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術を用いてファンの寿命が改善されたとしても、やはり一定の稼動年数経過後にファンを交換する必要がある。このため、交換時まだ寿命が来ていないファンを交換することもあり、この場合には、無駄な交換を行っていることになる。また、一定の稼動年数に到達する前にファンが故障することもあり、この場合には、定期交換以外にも、エレベータの運転を停止させる必要が生じてしまう。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、ファンの交換回数を低減することができ、さらに、ファン故障による運転停止を避けることができるエレベータ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、エレベータ制御装置において、送風用の複数のファンと、複数のファンに電力を供給するファン制御部とを備え、ファン制御部は、複数のファンの個々の電圧を検出する検出部を有しており、複数のファンのうちの一部のファンを停止させ、停止させたファンの発電電圧を検出部により検出し、検出した発電電圧に基づいて、停止させたファンの劣化状態を判定することである。
【0007】
本発明の実施の形態に係る第2の特徴は、エレベータ制御装置において、送風用のファンと、ファンに電力を供給するファン制御部とを備え、ファン制御部は、ファンの電圧又は電流を検出する検出部を有しており、検出部により検出した電圧又は電流に基づいて、ファンの劣化状態を判定することである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ファンの交換回数を低減することができ、さらに、ファン故障による運転停止を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係るエレベータ制御装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るエレベータ制御装置1は、エレベータの巻上機を駆動するための電力変換器2と、その電力変換器2を冷却する複数(図1では2つ)の冷却ファン3と、それらの冷却ファン3を制御するファン制御部4とを備えている。このエレベータ制御装置1は、エレベータの乗りかごが昇降する昇降路内あるいはその昇降路上部の機械室などに設けられている。
【0012】
電力変換器2は、エレベータの乗りかごを昇降させる巻上機の駆動モータに電力を供給する。この電力変換器2は、交流電力を直流電力に変換するコンバータや直流電力を交流電力に変換するインバータなどの各種の電力素子2aを有している。この熱源となる電力素子2aには、放熱用の放熱器2bが設けられている。
【0013】
放熱器2bは、電力素子2aに取り付けられた放熱板(ベース板)と、その放熱板に設けられた複数の放熱フィンを有している。この放熱器2bは電力素子2aに接触させて設けられており、電力素子2aにより発生した熱を放熱板及び各放熱フィンを介して放出する。
【0014】
冷却ファン3は、放熱器2bに風を供給してその放熱器2bを冷却する送風機である。したがって、冷却ファン3は放熱器2bの各放熱フィンに風を供給可能な位置に設けられる。図1では、冷却ファン3は、放熱器2bの各放熱フィンに直接風を当てる位置に設けられている。この他にも、例えば、冷却ファン3により吸気される風が放熱器2bの各放熱フィンを通過するように冷却ファン3が設けられてもよい。
【0015】
ファン制御部4は、各冷却ファン3に電力(駆動電圧)を供給するファン電源4aと、各冷却ファン3の電圧又は電流を検出する検出部4bと、その検出部4bによる検出結果に応じて冷却ファン3の劣化を判定する判定部4cとを備えている。
【0016】
このファン制御部4は、冷却ファン3の劣化状態を診断する第1の診断モードと第2の診断モードとを有している。これらの診断モードはエレベータの運転状態に応じて切り替えられる。このエレベータの運転状態は、エレベータの全般の制御を行う主制御部であるエレベータ制御装置1により把握されており、その情報はファン制御部4にも与えられる。そのファン制御部4を構成する判定部4cが診断モードを切り替えて、切り替えた診断モード(第1の診断モードあるいは第2の診断モード)に基づいて冷却ファン3の劣化を判定する。
【0017】
第1の診断モードでは、エレベータ停止中あるいは電力変換器2に対する負荷が低い場合(例えば、乗りかごの昇降がない状態)、各冷却ファン3のうちの一つの冷却ファン3を停止し、その停止状態の冷却ファン3を他の非停止状態の冷却ファン3による風圧により回転させる。このとき、ファン制御部4は、風圧により回転している冷却ファン3の発電電圧を検出部4bにより検出し、判定部4cにより過去の電圧(例えば、新品時の冷却ファン3の発電電圧)と比較し、冷却ファン3の劣化を判定する。
【0018】
ここで、例えば、風圧により回転している冷却ファン3の発電電圧が過去の電圧よりも低い場合には、その冷却ファン3が劣化していると判定する。あるいは、風圧により回転している冷却ファン3の発電電圧が所定の閾値(例えば許容値)よりも低い場合には、その冷却ファン3が劣化していると判定する。
【0019】
第2の診断モードでは、検出部4bによりファン通電中の各冷却ファン3の電圧あるいは電流を検出し、判定部4cにより冷却ファン3の回転数(回転速度)を推定して冷却ファン3の劣化を判定する。例えば、冷却ファン3の電圧あるいは電流が所定の閾値より小さい場合には、回転速度が許容値より低下しており、その冷却ファン3が劣化していると判定する。
【0020】
なお、全ての冷却ファン3が同一レベルで低下している場合、判定部4cは、放熱器2bの目詰まりが発生したと判定する。各冷却ファン3の劣化状態(劣化レベル)は、判定部4cによる判定の度にその判定部4cが備える記憶部に保存される。冷却ファン3により埃が放熱器2bの各放熱フィンに取り込まれ、最終的に目詰まりが発生することがあるため、前述のように放熱器2bの目詰まりの発生を検知することで、放熱器2bの清掃時期や交換時期を報知することができる。
【0021】
また、判定部4cにより冷却ファン3が劣化していると判定した場合、ファン制御部4は、冷却性能に影響が無い範囲でファン電源4aの駆動電圧を下げて運転を行う。これにより、冷却ファン3の寿命を延ばすことができる。また、ファン制御部4は、冷却ファン3の余寿命を表示あるいは発報する。この余寿命を算出する場合には、エレベータの稼働頻度や電力変換器への通電状況(エレベータの運転状態)などから冷却ファン3の周囲温度を推定し、冷却ファン3の寿命算出に盛り込む。
【0022】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、複数の冷却ファン3のうちの一部の冷却ファン3を停止させ、停止させた冷却ファン3の発電電圧を検出部4bにより検出し、検出した発電電圧に基づいて、停止させた冷却ファン3の劣化状態を判定することによって、冷却ファン3の正確な寿命を把握することが可能となり、適正な時期で冷却ファン3を交換することができる。さらに、冷却ファン3が故障する前に冷却ファン3を交換することが可能となり、故障した冷却ファン3の交換のためにエレベータの運転が停止することを抑止することができる。このように、冷却ファン3の交換回数を低減することができ、さらに、冷却ファン3の故障による運転停止を避けることができる。
【0023】
また、冷却ファン3の通電中、検出部4bにより検出した電圧又は電流に基づいて、冷却ファン3の劣化状態を判定することによって、前述と同様、冷却ファン3の正確な寿命を把握することが可能となり、適正な時期で冷却ファン3を交換することができる。さらに、冷却ファン3が故障する前に冷却ファン3を交換することが可能となり、故障した冷却ファン3の交換のためにエレベータの運転が停止することを抑止することができる。
【0024】
また、ファン制御部4は、複数の冷却ファン3の全てが同じ劣化状態にあるか否かを判定し、それらの冷却ファン3の全てが同じ劣化状態にあると判定した場合、放熱器2bの目詰まりが発生したと判断することから、冷却ファン3の劣化状態から放熱器2bの目詰まりを検知することが可能となり、その結果、放熱器2bの目詰まりに起因する放熱性能の低下を防止することができる。
【0025】
また、ファン制御部4は、判定した冷却ファン3の劣化状態に応じて、冷却ファン3の回転速度を制御することから、判定部4cにより冷却ファン3が劣化していると判定した場合、冷却性能に影響が無い範囲でファン電源4aの駆動電圧を下げることが可能となり、冷却ファン3の寿命を延ばすことができる。
【0026】
また、ファン制御部4は、判定した冷却ファン3の劣化状態から冷却ファン3の余寿命を求めて報知することから、正確な余寿命を求めることが可能となり、冷却ファン3の正確な交換時期を把握することができる。このとき、ファン制御部4は、エレベータの運転状態に応じて冷却ファン3の周囲温度を推定し、推定した周囲温度を用いることから、冷却ファン3のより正確な余寿命を得ることができる。
【0027】
なお、本発明は、前述の実施の形態に限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、前述の実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよく、さらに、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。また、エレベータ制御装置1を構成する各部はハードウェアだけで実現されてもよく、あるいは、その一部がソフトウェアであるプログラムが実行されることによって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 エレベータ制御装置
2b 放熱器
3 冷却ファン(ファン)
4 ファン制御部
4b 検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風用の複数のファンと、
前記複数のファンに電力を供給するファン制御部と、
を備え、
前記ファン制御部は、前記複数のファンの個々の電圧を検出する検出部を有しており、前記複数のファンのうちの一部のファンを停止させ、停止させた前記ファンの発電電圧を前記検出部により検出し、検出した前記発電電圧に基づいて、停止させた前記ファンの劣化状態を判定することを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項2】
送風用のファンと、
前記ファンに電力を供給するファン制御部と、
を備え、
前記ファン制御部は、前記ファンの電圧又は電流を検出する検出部を有しており、前記検出部により検出した前記電圧又は電流に基づいて、前記ファンの劣化状態を判定することを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項3】
前記ファンにより風が送られる放熱器をさらに備え、
前記ファン制御部は、前記複数のファンの全てが同じ劣化状態にあるか否かを判定し、前記複数のファンの全てが同じ劣化状態にあると判定した場合、前記放熱器の目詰まりが発生したと判断することを特徴とする請求項1記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
前記ファン制御部は、判定した前記ファンの劣化状態に応じて、前記ファンの回転速度を制御することを特徴とする請求項1、2又は3記載のエレベータ制御装置。
【請求項5】
前記ファン制御部は、判定した前記ファンの劣化状態から前記ファンの余寿命を求めて報知することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のエレベータ制御装置。

【図1】
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