説明

エレベータ昇降装置

【課題】リミットスイッチとそれを動作させるためのカムが設けられる数が少なくてすむエレベータ昇降装置を提供する。
【解決手段】油圧ジャッキ3と、ポンプ42と、油圧ジャッキ3からポンプ42に対して加わる負荷圧力を検知する圧力検知手段5と、エレベータかご2の上下位置を検出する上下位置検知手段23と、上下位置に基づいてエレベータかご2を所定階位置にて停止させる制御手段と、エレベータ2かごを最上位置にて当止させる上部バッファ12と、最下位置にて当止させる下部バッファ13と、を備える。エレベータかご2の所定距離の上昇が所定時間内に検出されない場合に、制御手段によってエレベータかご2が最上階位置へと移動されて停止される。圧力検知手段5にて検知される圧力が所定値以下となった場合に、前記制御手段によってエレベータかご2が最下階位置へと移動されて停止されるようになす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータ昇降装置(例えば特許文献1参照)は、図4に示すように、建物内に上下にわたって昇降路1が形成され、この昇降路1内にエレベータかご2が昇降自在に設けられてなるものである。また、エレベータかご2の昇降駆動をするためのタンク、ポンプ、モータ等をケーシング40内に備えた油圧ユニット4と、油圧ジャッキ3とからなる駆動装置が設けられる。昇降路1の底部に、上方に向けて一対のガイドレール11が立設され、このガイドレール11の間に油圧ジャッキ3が設置される。油圧ジャッキ3のロッドの上端部には、エレベータかご2のかご部22を支持するプラットホーム21が取付けられ、プラットホーム21はガイドレール11に上下にスライド自在となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−254741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のエレベータ昇降装置にあっては、エレベータかご2が昇降路1の天井面に衝突しないように、最上階位置を超えて上昇するエレベータかご2を最上位置にて機械的に当止させる上部バッファ12が設けられる。また、エレベータかご2が昇降路1の底面に衝突しないように、最下階位置を超えて下降するエレベータかご2を最下位置にて機械的に当止させる下部バッファ13が設けられる。
【0005】
さらに、エレベータかご2が最上位置または最下位置に到達した際に、エレベータかご2の駆動装置を電気的に停止させるリミットスイッチ(不図示)がエレベータかご2に設けられる。これに対応して昇降路1には、エレベータかご2が最上位置に到達した際に、前記リミットスイッチを動作させる上部ファイナルカム61と、エレベータかご2が最下位置に到達した際に、前記リミットスイッチを動作させる下部ファイナルカム62が設けられる。
【0006】
さらに、図示しないが、エレベータかご2には、メンテナンス作業等が行われる際に作業者が手動で駆動装置を電気的に停止させる手動用リミットスイッチも設けられている。
【0007】
このように、エレベータ昇降装置にはリミットスイッチが複数設けられ、リミットスイッチを動作させるためのファイナルカム61、62も設けられており、これらの機器の設置が煩雑となるとともにコストが増大してしまうものであった。
【0008】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、リミットスイッチとそれを動作させるためのカムが設けられる数が少なくてすむエレベータ昇降装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成とする。
【0010】
エレベータかごを昇降路内で上下に駆動させる油圧ジャッキと、この油圧ジャッキに油を供給するポンプと、このポンプを動作させるモータと、前記油圧ジャッキから前記ポンプに対して加わる負荷圧力を検知する圧力検知手段と、前記エレベータかごの上下位置を検出する上下位置検知手段と、この上下位置検知手段により検知される上下位置に基づいて前記エレベータかごを所定階位置にて停止させるように制御する制御手段と、前記エレベータかごを最上位置にて当止させる上部バッファと、前記エレベータかごを最下位置にて当止させる下部バッファと、を備えたエレベータ昇降装置であって、前記エレベータかごの所定距離の上昇が所定時間内に前記上下位置検知手段にて検出されない場合に、前記制御手段によって前記エレベータかごが最上階位置へと移動されて停止されるようになし、前記圧力検知手段にて検知される圧力が所定値以下となった場合に、前記制御手段によって前記エレベータかごが最下階位置へと移動されて停止されるようになすことを特徴とする。
【0011】
また、前記昇降路に沿って前記エレベータかごの昇降をガイドするガイドレールが設けられ、前記ガイドレールに前記上部バッファおよび前記下部バッファが設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエレベータ昇降装置は、リミットスイッチとそれを動作させるためのカムが設けられる数が少なくてすむものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成を示す側面図である。
【図2】同上においてかご部の上昇検知手段が設けられる部分の斜視図である。
【図3】同上においてかご部の階位置検知手段が設けられる部分の斜視図である。
【図4】従来のエレベータ昇降装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のエレベータ昇降装置について、添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0015】
エレベータ昇降装置は、図1に示すように、昇降路1と、エレベータかご2と、駆動装置と、を備えるものである。昇降路1は、建物やエレベータ用建屋内に上下複数階にわたって連通するように形成される、平面視略矩形状をした閉空間で、この内部をエレベータかご2が昇降するものである。図示しないが、昇降路1の側壁には、建物の階に対応する位置に建物側の開口部が形成され、この建物側の開口部の外側に乗り場が形成され、また建物側の開口部には開閉自在に扉が設けられる。
【0016】
昇降路1の底部からは、上方に向けて、エレベータかご2の昇降をガイドする一対(二本)のガイドレール11が立設される。なお、ガイドレール11は一対ではなく、任意の本数設けられてもよい。
【0017】
また、昇降路1には、エレベータかご2を最上位置にて当止させる上部バッファ12と、エレベータかご2を最下位置にて当止させる下部バッファ13とが設けられるもので、本実施形態ではガイドレール11にこれらが設けられている。これらバッファ12、13は、ばねをはじめとする弾性部材やオイルダンパ等が好適に用いられるが、特に限定されず、エレベータかご2の運動を力学的に受け止めるものであればよい。
【0018】
エレベータかご2は、本実施形態では図1に示すように、プラットホーム21と、プラットホーム21に載置されて支持されるかご部22と、で構成される平面視略矩形状をしたものである。プラットホーム21は、一対のガイドレール11間に架設され上下にスライド自在となる略矩形状をした側枠と、側枠の下端部から略水平方向に突出する略矩形状をした下枠と、からなる側面視略L字状をしたものである。なお、プラットホーム21の形状は限定されず、例えば上枠があって、側面視略L字状をしていなくてもよい。側枠の両端部に、ガイドレール11にスライド自在にはめ込まれる被ガイド部が設けられ、側枠は被ガイド部を介してガイドレール11間を上下にスライド自在となっている。そして、下枠にかご部22が載置されて固定される。かご部22は、内部に人荷を載せる矩形箱状をしたもので、一面に出入り開口部が形成され、出入り開口部に開閉自在に開閉扉が設けられる。
【0019】
駆動装置は、エレベータかご2を昇降駆動するもので、油圧ジャッキ3と油圧ユニット4とで構成される。
【0020】
油圧ジャッキ3は、複数段の筒状のロッド(シリンダ)を有し、各ロッドがそのすぐ外側のロッドに対して突没することで、上下に伸縮自在となるもので、最上段のロッド31はシリンダでなくてもよい。最下段のシリンダ32には、油が該シリンダ32に流出入するための油ポート(不図示)が形成される。
【0021】
この油圧ジャッキ3は、本実施形態では一対のガイドレール11の間に設置され、最上段のロッド31の上端部が、エレベータかご2のプラットホーム21の側枠の上部(好ましくは上端部)に固定される。
【0022】
油圧ユニット4は、タンク41と、ポンプ42と、モータ43と、送油経路44と、油圧ジャッキ3からポンプ42に対して加わる負荷圧力を検知する圧力検知手段5とをケーシング40内に収容してなるものである。本実施形態では、油圧ユニット4はさらにリリーフ弁45がケーシング40内に収容される。
【0023】
タンク41は、油圧ジャッキ3に供給される油を貯留する密閉された容器である。側壁に送油経路44と連通する開口が形成される。送油経路44は、タンク41と油圧ジャッキ3の油ポートとの間で油が搬送されるための経路で、可撓管が好適に用いられるが、可撓管でなくてもよく特に限定されない。ポンプ42は、送油経路44の途中に設けられ、モータ43により駆動されて油を搬送するものである。
【0024】
圧力検知手段5は、ひずみゲージを用いるセンサをはじめ、様々なセンサが用いられ、特に限定されない。圧力検知手段5にて検知される信号は、増幅、変換器を介して所定の信号に変換され、後述する制御手段により処理される。
【0025】
リリーフ弁45は、エレベータかご2が正常な速度範囲を超えて降下するのを防止するもので、油圧ジャッキ3からタンク41へ油が逆流するのを阻止することができる。なお、本実施形態ではタンク41、ポンプ42、モータ43、が油圧ユニット4としてケーシング40内に収容されているが、特にユニット化されていなくてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、エレベータかご2の上下位置と上下昇降速度の制御を、油圧ジャッキ3への油の供給量を調整することで行うもので、インバータ制御によりエレベータかご2の上下位置と上下昇降速度の制御を行っている。インバータ制御については既知であり詳細な説明は省略し、また、インバータ制御の具体的な形態については様々なものが適用可能で、特に限定されない。本実施形態では、インバータ制御を含む全体の制御のためのマイクロコンピュータを備えた制御手段がコントロールボックス内に設けられる。
【0027】
また、エレベータかご2の上下位置を検出する上下位置検知手段23が設けられる。上下位置検知手段23は、本実施形態では、図2に示すように、エレベータかご2の上部にローラ24を有するエンコーダが設けられて構成されている。ローラ24は、ガイドレール11を転動し、その回転がエンコーダの検知部に検知され、ローラ24の回転からエレベータかご2の上下位置が演算手段により演算されるもので、本実施形態では制御手段が算出手段を機能の一部として備えている。なお、上下位置検知手段23は上記エンコーダに限定されず、例えば圧電素子等からなり加速度を検知するピックアップと、このピックアップからの加速度情報を基に速度および位置を演算する演算部からなるもの等、様々なものが適宜用いられ、特に限定されない。
【0028】
制御手段は、エレベータかご2を所定階位置にて停止させるように制御するもので、これにあたり、上下位置検知手段23からの上下位置の情報を基にしてもよいが、本実施形態では階位置検知手段25からの情報を基に所定階位置での停止が行われている。
【0029】
階位置検知手段25は、図3に示すように、エレベータかご2の上部に赤外線センサ26が設けられるとともに、昇降路1に沿って遮蔽板29が設けられて構成されている。そして、エレベータかご2をいずれかの所定階位置に位置する時に、この階の遮蔽板29が赤外線センサ26の送信部27と受信部28との間に位置して赤外線の送受信が妨げられ、エレベータかご2がこの階の所定階位置に位置していることが検知される。
【0030】
制御手段は、所定時間内において、エレベータかご2の所定距離の上昇が上下位置検知手段23にて検出されない場合に、エレベータかご2を最上階位置へと移動させて停止させるものである。すなわち、前記の場合、エレベータかご2が上部バッファ12に当接してそれ以上の上昇が妨げられているとみなして、エレベータかご2を上部バッファ12から離して、最も近くて人が乗り降りできる最上階位置に移動させて停止させるものである。本実施形態では、5秒の所定時間以内に、エレベータかご2の10mmの所定距離の上昇が検出されない場合に、制御手段がエレベータかご2を最上階位置へと移動させて停止させる。なお、所定時間と所定距離は特に限定されない。
【0031】
これにより、エレベータかご2が上部バッファ12に当接しているのにさらにエレベータかご2を上昇させようとすることによる、上部バッファ12やエレベータかご2の損傷、油圧ジャッキ3やポンプ42やモータ43の損傷が抑えられる。
【0032】
また制御手段は、圧力検知手段5にて検知される圧力が所定値以下となった場合に、エレベータかご2を最下階位置へと移動させて停止させるものである。すなわち、前記の場合、エレベータかご2が下部バッファ13に当接して、油圧ジャッキ3からポンプ42に対して加わる負荷圧力が所定以下となっているとみなして、エレベータかご2を下部バッファ13から離して、最も近くて人が乗り降りできる最下階位置に移動させて停止させるものである。本実施形態では、圧力検知手段5にて検知される圧力が0.5MPa以下になると、制御手段がエレベータかご2を最下階位置へと移動させて停止させる。なお、圧力の所定値は0.5MPaに限定されない。
【0033】
これにより、エレベータかご2が下部バッファ13に当接しているのにさらにエレベータかご2を下降させようとすることによる、下部バッファ12やエレベータかご2の損傷、油圧ジャッキ3やポンプ42やモータ43の損傷が抑えられる。
【0034】
なお制御手段は、エレベータかご2が所定時間内に所定距離の上昇が検出されない場合に最上階位置へと移動させて停止させるのに代えて、圧力検知手段5にて検知される圧力が所定値以上となった場合に、エレベータかご2を最上階位置へと移動させて停止させるようにしてもよい。すなわち、前記の場合、エレベータかご2が上部バッファ12に当接して、油圧ジャッキ3からポンプ42に対して加わる負荷圧力が所定値(例えば2MPa)以上となっているとみなして、エレベータかご2を上部バッファ12から離して、最も近くて人が乗り降りできる最上階位置に移動させて停止させる。
【0035】
上記エレベータ昇降装置にあっては、従来設けられていたリミットスイッチと、上部ファイナルカム61と下部ファイナルカム62と(図4参照)が不要となる。これにより、リミットスイッチとそれを動作させるためのカムが無くてまたは設けられる数が少なくてすみ、これらの機器の設置の手間が省けてコストの増大も抑えられる。
【0036】
また制御手段は、エレベータかご2の上下位置の情報に基づいて、モータ43の回転速度を所定の速度とするフィードバック制御を行う。これにより、フィードバック制御が行われない場合と比べて、加減速が緩やかになって、エレベータかご2の昇降が滑らかに行われる。
【符号の説明】
【0037】
1 昇降路
11 ガイドレール
12 上部バッファ
13 下部バッファ
2 エレベータかご
21 プラットホーム
22 かご部
23 上昇検知手段
3 油圧ジャッキ
4 油圧ユニット
41 タンク
42 ポンプ
43 モータ
44 送油経路
45 リリーフ弁
5 圧力検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータかごを昇降路内で上下に駆動させる油圧ジャッキと、この油圧ジャッキに油を供給するポンプと、このポンプを動作させるモータと、前記油圧ジャッキから前記ポンプに対して加わる負荷圧力を検知する圧力検知手段と、前記エレベータかごの上下位置を検出する上下位置検知手段と、この上下位置検知手段により検知される上下位置に基づいて前記エレベータかごを所定階位置にて停止させるように制御する制御手段と、前記エレベータかごを最上位置にて当止させる上部バッファと、前記エレベータかごを最下位置にて当止させる下部バッファと、を備えたエレベータ昇降装置であって、前記エレベータかごの所定距離の上昇が所定時間内に前記上下位置検知手段にて検出されない場合に、前記制御手段によって前記エレベータかごが最上階位置へと移動されて停止されるようになし、前記圧力検知手段にて検知される圧力が所定値以下となった場合に、前記制御手段によって前記エレベータかごが最下階位置へと移動されて停止されるようになすことを特徴とするエレベータ昇降装置。
【請求項2】
前記昇降路に沿って前記エレベータかごの昇降をガイドするガイドレールが設けられ、前記ガイドレールに前記上部バッファおよび前記下部バッファが設けられることを特徴とする請求項1記載のエレベータ昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−107744(P2013−107744A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254572(P2011−254572)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(505356468)パナソニック ホームエレベーター株式会社 (23)
【Fターム(参考)】