説明

エレベータ装置

【課題】隣り合う2つの昇降路を備え、それぞれの昇降路に複数のかごが昇降し、これらのかごを各々個別に牽引する複数の主索と、それぞれのかごには隣り合う昇降路のかごと主索を介してほぼ釣り合うように結合された構成のエレベーター装置における運行効率の向上を図ること。
【解決手段】隣り合う2つの昇降路7A、7Bを備えそれぞれの昇降路に複数のかご1a、1b、1c、1d、1e、1f、1gが昇降し、これらのかごを各々個別に牽引する複数の主索2a、2b、2cと、それぞれのかごは隣り合う昇降路のかごと主索を介してほぼ釣り合うように結合され、主索ごとに定位置に固定した複数の巻上機3a、3b、3cで垂直方向に移動すると共に、昇降路途中に横移動機構12a、12b、12c、12dを有し、主索を巻き掛ける複数の綱車4a、4b、4cでロープドライブ系を複数構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば人や荷物などを昇降させるエレベータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図45は従来のエレベータ装置を示す構成図である。このエレベータ装置はかごの駆動方式がトラクション式の1:1ローピングのものである。図において、1は人や貨物を乗せるかご、2はかごを牽引する主索、3は巻上機、4は巻上機3で駆動され主索2を巻き掛けた綱車、5は主索2の折り曲げ位置を調整するそらせ車、6は主索2に結合され、かご1と釣合う釣合い錘、7はかご1,釣合い錘6,及び主索2で構成される可動部の移動空間である昇降路、8は主索2をガイドするガイドレールである。
かご1,主索2,巻上機3,綱車4,及び釣合い錘6で逆U字形のロープドライブ系を構成している。
【0003】
次に動作について説明する。主索2は綱車4及びそらせ車5に巻き掛けられており、主索2の一端にかご1が固定され、他端に釣合い錘6が固定されている。綱車4は巻上機3により駆動されて回転し、綱車4に巻きかけられた主索2とのトラクションにより動力が伝達される。かご1と釣合い錘6はかご1と釣合い錘6に設けたガイドシュー(図示せず)を介してガイドレール8に案内されて昇降路7内を昇降する。かご1の昇降は制御装置(図示せず)により巻上機3の駆動を制御して運行している。
【0004】
また、従来のエレベータ装置の他の例の構成図として図46がある(例えば、特許文献1参照。)。このエレベータ装置は、高層ビルなどの大量人数の輸送力が必要な場合に用いられるもので、かごを2段にして移動させるダブルデッキ方式を用いている。
【0005】
このエレベータ装置は、1つの昇降路7に、縦に連結した2つのかご1a,1bを入れ、この2つのかご1a,1bを1つの巻上機3で昇降させる。この装置では1つの昇降路7に複数のかご1a,1bを入れて駆動するため、少ない昇降路面積でエレベータの輸送量を上げることができる。
【0006】
また、従来のエレベータ装置の他の例として、2:1ローピング方式を用いたものの構成図を図47に示す。このエレベータ装置は、主索2の一端が固定端2aに結合され、かご1はそらせ車5を介して主索2に釣り下げられている。この装置では、主索2の移動に対して、かご1は1/2の移動となる。
【0007】
また、従来のエレベータ装置の他の例として、その模式的な側面図を図48に示す(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)。このエレベータ装置は、かごが循環する方式の循環式エレベータ装置である。図において、1はかご、2は主索、3は巻上機、4は巻上機3で駆動される綱車、5はそらせ車、7は昇降路であり、巻上機3と綱車4は接続されており、図では1つで表している。主索2は1つの輪状になっており、一定方向に回転し停止もする。輪状の主索2につながった複数のかご1は、主索2の回転に伴って一定方向に循環する。このように構成すると、かご1が次々に来るので、待ち時間が少なく、大量に人員を輸送することができる。
【0008】
【特許文献1】特公昭50−7337号公報
【特許文献2】実開昭55−54221号公報
【特許文献3】特開昭63−97587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のエレベータ装置は上記のように構成されているので、以下のような問題点があった。
高層ビル等のような大量の輸送力を必要とする建物では、エレベータの運転能力及びサービス向上の観点から、多数のエレベータを設置する必要があるが、図45,図47に示す従来のエレベータ装置では、複数台のかごを併設配置する場合、かご設置台数に対応した昇降路が必要となり、その分必要スペースが大きくなるという問題点があった。
【0010】
また、図46に示すダブルデッキ方式では、かご1a,1bは一定の距離をおいて上下2段に積み重ねられており、上のかごと下のかごで同じ階での乗車,降車が難しく、上のかごと下のかごで1回の停止では利用できない階が発生する。このため、利用者が不便であった。また、かご1a,1bの昇降は1つのロープドライブ系で作動されるため、2つのかご1a,1bは同時に昇降され、高層ビルなど要求される停止階に全て停止しようとすると、2つのかごを備えている割には輸送力はあまり向上しないという問題点があった。
【0011】
また、図48に示す循環式では、1本の主索2に多くのかご1がつながっているので、主索2の負担が大きく、ロープの安全な強度を保つことが難しいという問題点があった。
また、かご1の起動停止を行う場合に、巻上機3に非常に大きな負荷がかかり、安定した運行を行うことが難しいという問題点があった。
また、全てのかご1が完全に同じ移動を行うため、かご1の効率的な運転が難しく、さらに、1つのかご1のトラブルにより全てが停止するという問題点があった。
【0012】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、複数台のかごを動作させるためにエレベータ装置が併設される場合に、建物内に占める昇降路の平面スペースを縮減できるエレベータ装置を得ることを目的とするものである。
【0013】
また、1つのロープドライブ系に複数のかごを設けても、それぞれのかごで異なる距離だけ移動できるように構成して、違う階をサービスできるエレベータ装置を得ることを目的とするものである。
【0014】
また、複数のかごを備えても、主索や巻上機に大きな負荷がかからず、安定した運行が行えるエレベータ装置を得ることを目的としている。
【0015】
また、1つの昇降路に複数のかごを備えても、安全性の高い運行が行えるエレベータ装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明に係るエレベータ装置は、隣り合う2つの昇降路を備え、それぞれの昇降路に複数のかごが昇降し、これらのかごを各々個別に牽引する複数の主索と、それぞれのかごは隣り合う昇降路のかごと主索を介してほぼ釣り合うように結合され、主索ごとに定位置に固定した複数の巻上機で垂直方向に移動すると共に、昇降路途中に横移動機構を有し、主索を巻き掛ける複数の綱車とでロープドライブ系を複数構成した。
【0017】
この発明に係るエレベータ装置は、ロープドライブ系ごとにサービスするゾーン区域を分けたものである。
【0018】
この発明に係るエレベータ装置は、サービスゾーンまたは階までは停止せずに昇降するものである。
【0019】
この発明に係るエレベータ装置は、かごは各サービスゾーンの基準となる階まで停止しない急行運転を行い、規定のサービスゾーンからは乗客の呼びに応じて停止するものである。
【0020】
この発明に係るエレベータ装置は、かごは全昇降範囲において、各ゾーンの基準となる階しか停止しない急行運転を行うものである。
【発明の効果】
【0021】
この発明に係るエレベータ装置は、隣り合う2つの昇降路を備え、それぞれの昇降路に複数のかごが昇降し、これらのかごを各々個別に牽引する複数の主索と、それぞれのかごは隣り合う昇降路のかごと主索を介してほぼ釣り合うように結合され、主索ごとに定位置に固定した複数の巻上機で垂直方向に移動すると共に、昇降路途中に横移動機構を有し、主索を巻き掛ける複数の綱車とでロープドライブ系を複数構成したものであるので、効率的なかごの運行を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1によるエレベータ装置を図について説明する。図1は実施の形態1によるエレベータ装置を示す構成図である。図において、1aは高層階用かご、1bは中層階用かご、1cは低層階用かご、2aは高層階用主索、2bは中層階用主索、2cは低層階用主索、3aは高層階用巻上機、3bは中層階用巻上機、3cは低層階用巻上機、4aは高層階用綱車、4bは中層階用綱車、4cは低層階用綱車、5aは高層階用そらせ車、5bは中層階用そらせ車、5cは低層階用そらせ車、6aは高層階用釣合い錘、6bは中層階用釣合い錘、6cは低層階用釣合い錘、7はかご1,釣合い錘6,及び主索2で構成される可動部の移動空間である昇降路、8は主索2a,2b,2cをガイドするガイドレールである。この実施の形態では1つの昇降路7に例えば3つのかご1a,1b,1cを備えている。
【0023】
高層階用かご1aを牽引する高層階用主索2aと、この主索2aに結合されて高層階用かご1aと釣合う高層階用釣合い錘6aと、高層階用巻上機3aで駆動Jされ高層階用主索2aを巻き掛ける高層階用綱車4aとで逆U字形のロープドライブ系を構成し、昇降路7内で高層階用かご1aを昇降させる。高層階用かご1aの昇降は制御装置(図示せず)によって高層階用巻上機3aを駆動して制御している。中層階,低層階に関しても同様である。
また、低層階用のロープドライブ系の上に、中層階用のロープドライブ系が接触せずに昇降方向に被さるように重ねて構成されている。さらにその上に高層階用のロープドライブ系が接触せずに昇降方向に被さるように重ねて構成されている。このため、重ねられたロープドライブ系の重なりの上方に位置するロープドライブ系ほど逆U字形のふくらみが広がっている。
【0024】
このエレベータ装置を設置したとき、かご1の昇降方向をZ方向、かご1と主索2と釣合い錘6と空なる平面内でZ方向と直交する方向、例えばかご1への出入方向をY方向、Y,Zに直交する方向をX方向とし、ロープドライブ系の逆U字形で構成される平面を移動平面とする。さらに、かご1のドアのある方を前面、釣合い錘6のある側を後面とし、YZ面を側面、かごのZ方向の上方を上面、下方を下面とする。
また、図1で、FIは人や貨物が乗込む基準となる乗込み階、FHは高層階、FMは中層階、FLは低層階を示している。
この実施の形態では例えば高層階,中層階,低層階のロープドライブ系の移動平面はほぼ同一平面となっている。
また、このエレベータ装置の模式的な上面図を図2に示す。かごの大きさは、下方のかごをそれより上方のかごよりも大きく構成し、昇降路内に配置された複数のかご1a,1b,1cをXY平面に投影した時、下方のかごの少なくとも主索を結合する部分が上方のかごよりも突出している。
【0025】
また、ロープドライブ系の釣合い錘の移動する軌跡を移動線としたとき、複数のロープドライブ系の釣合い錘6a,6b,6cの移動線のすべてでほぼ平面を構成し、特にこの実施の形態ではZ軸に平行な平面を構成している。
さらに、複数のロープドライブ系のうちの少なくとも1つ、例えば高層階用主索2aの折り返し位置を昇降路7の全昇降行程(FL,FM,FH)の移動ができる位置に配置し、他のロープドライブ系、例えば中層階用主索2bの折り返し位置は全昇降行程の一部(FL,FM)の移動できる位置に配置する。また、例えば低層階用主索2cの折り返し位置は全昇降行程の一部(FL)の移動できる位置に配置する。
【0026】
低層階用、中層階用、高層階用のロープドライブ系のそれぞれは、従来とほぼ同様な構成をしており、その動作を以下に説明する。
それぞれの綱車4a,4b,4cはそれぞれの巻上機3a,3b,3cにより回転され、綱車4a,4b,4cに巻きかけられた主索2a,2b,2cとのトラクションにより動力が伝達される。かご1a,1b,1cと釣合い錘6a,6b,6cはそれぞれのかご1a,1b,1cと釣合い錘6a,6b,6cに設けたガイドシュー(図示せず)を介してガイドレール8に案内され、かご1a,1b,1cはガイドレール8に沿って垂直方向に昇降する。それぞれのかごの昇降はそれぞれの制御装置(図示せず)により巻上機3a,3b,3cの駆動を制御され運行している。
【0027】
この実施の形態のように、複数のロープドライブ系を1つの昇降路7に配置する場合は、巻上機3a,3b,3cの配置や主索2a,2b,2cのローピングが複雑になるのでこの構成について説明する。
図1のような構成では、一番上の高層用のロープドライブ系は問題にならないが、中層用と低層用では、昇降路8を通り、上のかご1に接触しないように主索2を配置しなければならない。
そこでこの実施の形態では、図2に示すようにかご1の大きさを変え、XY平面に投影した時、中層階用かご1bと低層階用かご1cと主索2b,2cの接続位置が順次後ろにずらして構成している。このため、かご1またはかごの一部が飛び出ており、中層階用主索2bと低層階用主索2cは高層階用主索2aの後面を通るように構成している。
【0028】
また、以下にこの実施の形態のエレベータ装置の運行方式について説明する。この実施の形態では、3つのロープドライブ系が高層階(FH),中層階(FM),低層階(FL)の各ゾーンをサービスするように構成されている。
図3は、この実施の形態に係るゾーニングサービスを行う場合の運行方式の一例を表わす説明図である。この例では、エレベータ利用者が最も多い出勤時を想定し、下りの利用客はいないものとしている。運行手順を以下に示す。
高層階用かご1aは、乗込み(t1)→行き急行運転(t2)→各階サービス(t3,t4)→帰り急行運転(t5)の順で運行する。
中層階用かご1bは、かご1a出発待(t1)→乗込み(t2)→行き急行運転(t3)→各階サービス(t4)→帰り急行運転(t5)に順で運行する。
低層階用かご1cは、かご1a,かご1b出発待(t1,t2)→乗込み(t3)→各階サービス(t4)→帰り急行運転(t5)の順で運行する。
【0029】
この実施の形態では、1つの昇降路内に複数の逆U字形のロープドライブ系をそれぞれが互いに非接触で被さるように重ねて構成しており、1つの昇降路内で複数のかごをそれぞれ独自に安全に安定して運転でき、昇降路面積当たりの輸送量も増加させることができるので、昇降路の総平面スペースを縮減できる。
特に1つの昇降路内に複数の逆U字形のロープドライブ系をそれぞれが互いに非接触で昇降できるように、被さるように重ねて構成するために、図1に示すように、そらせ車5a,5b,5cの位置を主索2a,2b,2cが接触しないように後部にずらしている。また、かごの大きさを変えて、中層階用主索2bと中層階用かご1bの結合部を高層階用主索2aと高層階用かご1aの結合部よりも後部にずらしており、さらに低層階用主索2cと低層階用かご1cの結合部を、中層階用の結合部よりも後部にずらしている。このため、スムーズに主索2を昇降できると共に、下方のかごの大きさを上方のかごの大きさよりも大きくしているので、下方のかご1の定員(容量)が多くなり、実際に多くの人が利用すると考えられる低層階ほど多くの人を輸送できるという効果もある。
【0030】
さらに、複数のロープドライブ系の移動平面が、ほぼYZ平面で1平面としているため、3つの釣合い錘6a,6b,6cの移動線がかごの後部でY方向にほぼ一平面上に並ぶように構成できる。従って、釣合い錘6a,6b.6cのガイドが兼用できると共にコンパクトにでき、装置が小型にできる。
また、昇降路7の全昇降行程を複数のゾーンに分割し、かごの上方から順に各ゾーンに割り当て、各ゾーンでかごを同時に作動させている。このため、1つの昇降路7で、多くの乗客を昇降させることができ、従来、複数の昇降路で行っていたゾーンサービスを1つの昇降路で行うことができる。例えば、図3に示した様な朝の出勤時では従来の2.5倍程度の人員を輸送することができる。
【0031】
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2によるエレベータ装置を図について説明する。図4は実施の形態2によるエレベータ装置を模式的に示す斜視図、図5(a)は上面図、図5(b)は側面図である。
1つの昇降路内に複数の逆U字形のロープドライブ系をそれぞれが互いに非接触で被さるように重ねており、この実施の形態では3つのロープドライブ系の逆U字で構成する移動平面を互いにほぼ平行に構成した。移動平面を互いに平行にしたので、低層階用のロープドライブ系と中層階用のロープドライブ系の逆U字のふくらみを同じにしても2つのロープドライブ系が接触しない。高層階用のロープドライブ系の逆U字のふくらみは、下方の2つよりも大きくしている。
【0032】
図6はかご1a,1b,1cの後部を拡大して示す斜視図であり、図において、15aは高層階用かご1aの後部2角に設けた切り欠き部、15bは中層階用かご1bの後部の一方の角に設けた切り欠き部である。
この切り欠き部によって、昇降路内に配置された複数のかご1a,1b,1cをXY平面に投影した時、下方のかごの少なくとも主索を結合する部分が上方のかごよりも突出している。このため、切り欠き部15a,15bにはそれよりも下方のかごに結合された主索が上方のかごに接触することなく通過できる。
【0033】
この実施の形態でも実施の形態1と同様、1つの昇降路内に複数の逆U字形のロープドライブ系をそれぞれが互いに非接触で被さるように重ねて構成しており、1つの昇降路内で複数のかごをそれぞれ独自に安全に安定して運転でき、昇降路面積当たりの輸送量も増加させることができるので、昇降路の総平面スペースを縮減できる。
さらに、複数のロープドライブ系の移動平面のそれぞれが互いにほぼ平行であるようにしたので、3つの釣合い錘6a,6b,6cの移動線がかごの後部でX方向のほぼ一平面上に並ぶように構成でき、釣合い錘6a,6b.6cのガイドが兼用できると共にコンパクトにでき、装置が小型にできる。さらに限られたスペースにおいては、各ロープドライブ系の間隔を広くすることができ、主索2同士の接触の危険性を小さくできる。
また、このように複数のロープドライブ系を配置すれば、巻上機や綱車4a,4b,4cが配置しやすい。
【0034】
実施の形態3.
以下、この発明の実施の形態3によるエレベータ装置を図について説明する。図7(a)は実施の形態3によるエレベータ装置を模式的に示す上面図、図7(b)は側面図である。
1つの昇降路内に複数の逆U字形のロープドライブ系をそれぞれが互いに非接触で被さるように重ねており、この実施の形態では3つのロープドライブ系の逆U字で構成する移動平面のそれぞれはZ軸にほぼ平行であると共に、移動平面のそれぞれが互いに交差するように構成した。また、このように構成したので、低層階用のロープドライブ系と中層階用のロープドライブ系の逆U字のふくらみを同じにしても2つのロープドライブ系が接触しない。高層階用のロープドライブ系の逆U字のふくらみは、下方の2つよりも大きくしている。
さらに、下方のかごに結合された主索が上方のかごに接触することなく通過できるように、下方のかごの後方には切り欠き部が設けられているのは、実施の形態2と同様である。
【0035】
この実施の形態でも実施の形態1と同様、1つの昇降路内に複数の逆U字形のロープドライブ系をそれぞれが互いに非接触で被さるように重ねて構成しており、1つの昇降路内で複数のかごをそれぞれ独自に安全に安定して運転でき、昇降路面積当たりの輸送量も増加させることができるので、昇降路の総平面スペースを縮減できる。
さらに、複数のロープドライブ系の移動平面のそれぞれが互いに交差するようにしたので、3つの釣合い錘6a,6b,6cの移動線がかごの後部でX方向のほぼ一平面上に並ぶように構成でき、釣合い錘6a,6b.6cのガイドが兼用できると共にコンパクトにでき、装置が小型にできる。
また、このように複数のロープドライブ系を配置すれば、巻上機や綱車4a,4b,4cが互いに離れており配置しやすい。
【0036】
実施の形態4.
以下、この発明の実施の形態4によるエレベータ装置を図について説明する。図8(a)は実施の形態4によるエレベータ装置を模式的に示す斜視図、図8(b)は上面図、図8(c)は側面図である。
1つの昇降路内に複数の逆U字形のロープドライブ系をそれぞれが互いに非接触で被さるように重ねており、この実施の形態では3つのロープドライブ系の逆U字で構成する移動平面のそれぞれはZ軸にほぼ平行であると共に、移動平面の少なくとも1つと直交するように構成した。例えば、この実施の形態では、高層階用のロープドライブ系の移動平面をYZ面とし、中層階用と低層階用のロープドライブ系の移動平面をYZ面と直交するXZ面とした。これにつれて、高層階用釣合い錘6aの移動する所を後部とし、中層階用釣合い錘6bと低層階用釣合い錘6cの移動する所を側面に来るように配置した。このように、かご1の後面と側面に釣合い錘を分けて配置することにより、主索2の配置余裕が大きく取れ、ロープドライブ系を構成しやすく、エレベータ装置の奥行方向も薄くできる。
なお、この実施の形態では、高層階用のロープドライブ系の移動平面をYZ面とし、高層階用釣合い錘6aをかご1の後面に配置したが、これに限るものではなく、他のロープドライブ系の移動平面をYZ面とし、その釣合い錘6をかご1の後面に配置してもよい。
【0037】
また、実施の形態2,3では、下方のかご1に結合された主索2が上方のかご1に接触することなく通過できるように、下方のかご1の後方には切り欠き部を設けたが、この実施の形態では図8(a)に示すように、3つのかご1の形状を同じにし、中層階用かご1bと低層階用かご1cの主索2との結合部が突出するように接続部16b,16cを設けている。このため、下方のかご1に結合された主索2が上方のかご1に接触することなく通過できる。
【0038】
この実施の形態でも実施の形態1と同様、1つの昇降路内に複数の逆U字形のロープドライブ系をそれぞれが互いに非接触であるように構成しており、1つの昇降路内で複数のかごをそれぞれ独自に安全に安定して運転でき、昇降路面積当たりの輸送量も増加させることができるので、昇降路の総平面スペースを縮減できる。
また、このように複数のロープドライブ系を配置すれば、巻上機や綱車4a,4b,4cが互いに離れており配置しやすい。
【0039】
実施の形態5.
図9はこの発明の実施の形態5によるエレベータ装置のかご1の後面を拡大して示す斜視図である。
この実施の形態では、中層階用かご1bと低層階用かご1cの主索2との結合部が突出するように接続部16b,16cを設けている。さらに接続部16b,16cは共にかごの後面に設けているため、主索2b,2cが接触しないようにX方向にずらしている。
このため、下方のかご1に結合された主索2が上方のかご1に接触することなく通過できる。
【0040】
また、図1に示したものでは主索を接触させないために、下方のかごを上方のかごよりも後にずらしているが、左右にずらしてもよい。
また、実施の形態2,3で示したように、上のかごの少なくとも一部を切り欠いてもよく、昇降路内に配置された複数のかごをXY平面に投影した時、下方のかごの少なくとも主索を結合する部分が上方のかごよりも突出しているように構成すれば、同様の効果を奏する。
さらに、かごの中央付近を主索が通れるようにかごに貫通路を設けた構造でもよい。
【0041】
実施の形態6.
以下、この発明の実施の形態6によるエレベータ装置を図について説明する。図10は実施の形態6によるエレベータ装置を示す構成図である。図において、20はリニアモータの構成部品を兼ねた釣合い錘、21はリニアモータの構成部品を兼ねた釣合い錘ガイドである。釣合い錘20と釣合い錘ガイド21でモータを構成しており、釣合い錘20は主索2と結合している。他の構成部品は図1のものと同様であり、特にこの実施の形態では、例えば中層階用ロープドライブ系と低層階用ロープドライブ系に釣合い錘20b,20cと釣合い錘ガイド21b,21cで構成されるリニアモータを用いる。
【0042】
この実施の形態でも実施の形態1と同様、1つの昇降路内に複数の逆U字形のロープドライブ系をそれぞれが互いに非接触で被さるように重ねて構成しており、1つの昇降路内で複数のかごをそれぞれ独自に安全に安定して運転でき、昇降路面積当たりの輸送量も増加させることができるので、昇降路の総平面スペースを縮減できる。
また、実施の形態1では、巻上機3a,3b,3cを上部に配置すると、巻上機の寸法が大きく、このため昇降路7の上部の巻上機を置いた機械室部が大きくなってしまう。これに対し、リニアモータを使えば、実施の形態1で巻上機3b,3cと綱車4b,4cを用いていた部分をそらせ車5b,5cにできるので、機械室の寸法が小さくでき、昇降路7を小さくすることができる。特に、複数のロープドライブ系を重ねあわせた構成では効果的である。
【0043】
実施の形態7.
以下、この発明の実施の形態7によるエレベータ装置を図について説明する。図11,図12は1つのかごの部分を拡大して示す説明図である。従来のエレベータ装置における主索2は、かご1の重心位置に配置できるため、主索2でかご1を引き上げてもモーメントは発生しない。ところが、実施の形態1〜6の中層用や低層用主索2b,2cでは、上方のかご1aを避けるために偏心してかご1に付けなければならないことがある。主索2を偏心してかご1に付けると、かごの昇降時に図11の矢印Aに示すような−θX方向のモーメントが発生し、かご1が傾斜する可能性がある。
そこでこの実施の形態では、偏心によるモーメントを補正するためにかご傾斜抑制機構を備えたものである。例えば、図12に示すように、主索2の位置に対してかご1の重さを補正するバランスウエイト22を設けている。
【0044】
かご1を主索2を牽引して昇降すると、矢印Aに示すような−θX方向のモーメントが発生し、かご1が傾斜しようとする。ところが、かご1の後面にバランスウエイト22が設けられているため、このモーメントAを打ち消す方向Bにバランスウエイト22の重さに応じたモーメントが発生する。このため、かご1が傾斜するのを抑制できる。
【0045】
実施の形態8.
以下、この発明の実施の形態8によるエレベータ装置を図について説明する。この実施の形態はかご傾斜抑制機構の変形例であり、図13は1つのかごの部分を拡大して示す説明図である。23はガイドレール8に沿ってかごを案内する強化ガイドシューであり、ガイドレール8を隔てて交差する位置に配置している。
ガイドシュー23は通常かご1とガイドレール8の間に設けられているものであり、この強化ガイドシュー23は牽引するときに生じるモーメントに対向する位置に配置され、モーメントを支えるまで強化されたものである。即ち、かご1を主索2により昇降させると、−θX方向のモーメントAが発生するので、モーメントAを支えるように左上と右下に強化ガイドシュー23を設けている。このためガイドシュー23により偏心によるモーメントAを支えて、かご1が傾斜するのを抑制できる。
また、必要に応じて、既存のガイドシューはそのまま設けられていてもよい。
【0046】
実施の形態9.
以下、この発明の実施の形態9によるエレベータ装置を図について説明する。この実施の形態はかご傾斜抑制機構の変形例であり、図14は1つのかごの部分を拡大して示す説明図である。25はモーメント保償リンクで、例えば平行リンクである。即ち、平行4辺形を用いた4節リンクを組み合わせたものを用いている。この方式では、25a〜25gで2段の4節リンクを構成しており、左側のピン部である26a,26bがかごと結合されており、右側のピン部にはガイドシュー23a,23bが取り付けられ,固定部であるガイドレール8に接触している。また、ガイドレール8を挟んで平行リンク25と反対側に、かご1に結合されたガイドシュー23cが備えられている。このガイドシュー23a,23b,23cも実施の形態8と同様、牽引するときに生じるモーメントに対向する位置に配置され、モーメントを支えるまで強化されたものである。
【0047】
このような構成にすると,モーメント力Aによりかご1が傾こうとしても、平行リンク25により平行が保たれる。このため、傾こうとする力はガイドシュー23a,23bを介したガイドレール8への押付力に変換される。従って、このままであればかご1は−Y方向に平行移動しようとするが、これをガイドシュー23cで移動しないように支えている。
この様に、平行リンク25はかご傾斜防止機構を構成し、主索2とかご1の結合部がかご1の重心に対して偏心していても、かご1が傾斜することなく安定して昇降することができる。
また、このモーメント補償リンク24は軽量で実現可能なため、実用に適している。
【0048】
さらに、実施の形態8の様なガイドシュー23でモーメント力を直接支える構成では、ガイドレール8にモーメント力Aが掛かり、ガイドレール8を介してさらにこれを固定している建物に力が加わってしまう。ところが、この実施の形態のような構成にすると、ガイドシュー23a,23bのガイドレール8への押さえつけ力をこれらの間に配置したガイドシュー23cで支える構成になるので,ガイドレール8にねじり力が作用せず、ガイドレール8を支える建物への影響が小さくできる。また、走行も安定する。
その上、実施の形態8では、ガイドレール8を挟みこむガイドシュー23の位置精度によりかご1の傾きが定まるので、ガイドシュー23の取り付けに高い位置精度が要求されるが、この実施の形態によれば、リンク機構は平行方向(Y方向)に収縮自在で,ガイドシュー25cで支える方式であり、高い機械精度が必要ではなく、コストが低減できる。
【0049】
実施の形態10.
以下、この発明の実施の形態10によるエレベータ装置を図について説明する。この実施の形態はかご傾斜抑制機構の変形例であり、図15は1つのかごの部分を拡大して示す説明図である。25はモーメント保償リンクで、例えばXリンクである。即ち、2つの棒部25a,25bでXリンクを構成しており、ピン26aがかご1と結合され、ピン26bはかご1に設けられた長穴27により、Y方向には固定され、Z方向には自由に動けるように固定されている。右側のピン部にはガイドシュー23a,23bが取り付けられ、ガイドレール8に接触している。また、ガイドレール8を挟んだ反対側に、かご1に結合されたガイドシュー23cが備えられている。
【0050】
このような構成にすると、実施の形態9と同様、モーメント力Aによりかご1が傾こうとしても,Xリンク25により平行が保たれ、傾こうとする力はガイドーシュー23a,23bを介したガイドレール8への押付力に変換される。従って、このままであればかご1は−Y方向に平行移動しようとするが、これをガイドシュー23cで移動しないように支えている。
【0051】
この様に構成すれば、実施の形態9と同様、Xリンク25はかご傾斜防止機構を構成し、主索2とかご1の結合部がかご1の重心に対して偏心していても、かご1が傾斜することなく安定して昇降することができる。また、ガイドレール8にねじり力が作用せず、ガイドレール8を支える建物への影響を小さくでき、機械精度も低減できる。さらに、実施の形態9に比べリンク機構の部品点数が少ないので、コストが低減できるという効果もある。
【0052】
実施の形態11.
以下、この発明の実施の形態11によるエレベータ装置を図について説明する。図16は実施の形態11によるエレベータ装置を模式的に示す斜視図、図17(a)は上面図、図17(b)は側面図である。この実施の形態では中層階と低層階の主索2b,2cをかご1b,1cの両側のバランスがとれる位置にそれぞれ2本ずつ設けている。さらにこの実施の形態では巻上機3b,3c、綱車4b,4c、そらせ車5b,5c、釣合い錘6b,6cもそれぞれ2個ずつ設けている。
【0053】
例えば、中層階用かご1bを昇降するとき、綱車4bは巻上機3bにより回転され、綱車4bに巻きかけられた主索2bとのトラクションにより動力が伝達される。かご1bと釣合い錘6bはそれぞれのかご1bと釣合い錘6bに設けたガイドシュー(図示せず)を介してガイドレール8に案内され、かご1bはガイドレール8に沿って垂直方向に昇降する。
この時、2本の主索2bは、かご1bの両側面で結合されており、X方向にバランスをとって昇降するように制御装置(図示せず)により2つの巻上機3bの駆動を制御する。低層階用かご1cに関しても同様である。
このように、2本の主索2でかご1を牽引するので、1本の主索2で牽引するのに比べ、偏心によるモーメントをできるだけ小さくすることができる。
【0054】
また、上記実施の形態では、巻上機3を主索2のそれぞれに設けているが、これに限らず、両側面の中層階用主索2bに対して1つの巻上機で構成することもできる。低層階用の巻上機に関しても同様である。
また、かご1を2本の主索2で牽引するばかりでなく、例えば4本で牽引するように構成してもよい。
この実施の形態でも実施の形態1と同様、1つの昇降路内に複数の逆U字形のロープドライブ系をそれぞれが互いに非接触で昇降可能に被さるように重ねて構成しており、1つの昇降路内で複数のかごをそれぞれ独自に安全に安定して運転でき、昇降路面積当たりの輸送量も増加させることができるので、昇降路の総平面スペースを縮減できる。
【0055】
実施の形態12.
図18は実施の形態12に係るかご1b,1cの部分を拡大して示す斜視図である。
実施の形態11では、中層階用主索2bと低層階用主索2cが昇降時に互いに接触しない干渉しないようにY方向にずらしており、このため完全な重心引き上げにできない。これに対しこの実施の形態では、図に示すように、低層階用の主索2cとかご1cの結合部を、中層階用の主索2bとかご1bの結合部よりもX方向に広げて構成している。そして、主索2b,2cはかご1b、1cの両側面で、X方向にはかご1b,1cの重心Gb,Gcを通る線上に結合されている。
他の各部の構成は実施の形態11と同様である。
このように、2つの引き上げ点をかご1の重心を通るように配置することにより、実施の形態11に比べて、より重心引き上げが可能となる。
【0056】
実施の形態13.
図19は実施の形態13に係るかご1b,1cの部分を拡大して示す斜視図である。
この実施の形態では、図に示すように、中層階用主索2bは、かご1bの両側面で、2本がY方向に斜めの位置に結合されると共に、この結合位置はかご1bの重心Gbを通る線上となっている。同様に、低層階用主索2cは、かご1cの両側面で、2本がY方向に斜めの位置に結合されると共に、この結合位置はかご1cの重心Gbを通る線上となっている。さらに、中層階用の結合部と低層階用の結合部はずらして構成している。
他の各部の構成は実施の形態11と同様である。
このように構成すれば、実施の形態12と同様、2つの引き上げ点をかご1の重心を通るように配置され、重心引き上げが可能となり、安定してかごを昇降できるエレベータ装置が得られる。
【0057】
実施の形態14.
図20はこの発明の実施の形態14に係るエレベータ装置を模式的に示す側面図である。図において、高層階用のロープドライブ系は実施の形態1におけるものと同様の構成のものである。中層階用のロープドライブ系は主索2bをかご1bの下に回し、そらせ車5bを介してかご1bを下から両側で支える2:1ローピングを構成する。また、低層階用かご1cにはロープドライブ系を構成せず、下からかご1cを油圧で持ち上げる油圧式エレベータ28を用いる。
【0058】
この実施の形態における中層階用のロープドライブ系は、かご1の両側において主索2で支える場合の他の実施の形態を示すものである。この様に主索2bをかご1bの下に回して下からかご1bの両側で支えれば、モーメントを発生させることなく駆動することができる。
さらに、低層階用かご1cには、油圧で持ち上げる油圧式エレベータを用いて構成しているので、高層階かご1a,中層階用かご1bと低層階用のロープドライブ系との干渉がなく、構成が簡単になる。また、高層階,中層階のかご1a,1bの重心引き上げが実施の形態11に比べて容易に行うことができる。
【0059】
また、この実施の形態でも、1つの昇降路内に高層階用の逆U字形のロープドライブ系と中層階用のU字形のロープドライブ系と低層階用の油圧ドライブ系を、それぞれが互いに非接触で昇降可能であるように構成しており、1つの昇降路内で複数のかごをそれぞれ独自に安全に安定して運転でき、かつ、ロービングが簡単なので昇降路が小さくでき、昇降路面積当たりの輸送量も増加させることができるので、昇降路の総平面スペースを縮減できる。
【0060】
なお、上記実施の形態では、逆U字形のロープドライブ系とU字形のロープドブイブ系と油圧式のものを用いたが、これに限るものではなく、リニアモータドライブ方式なども含めた他の組み合わせで構成してもよい。
【0061】
実施の形態15.
実施の形態1では、運行上、1階または基準となる乗込み階で、複数のかごの上方のかごの乗込みが完了するまで下方のかごはその下に待機する。そして、上方のかごの乗込みが完了しだいそのすぐ下のかごが乗込み階に移動するように運行している。
図21は実施の形態15によるエレベータ装置の運行時に、1階または基準となる乗込み階での乗込む様子を模式的に示す説明図である。図において、FIa,FIb,FIcは高層階用乗込み床,中層階用乗込み床,低層階用乗込み床であり、高層階用かご1a,中層階用かご1b,低層階用かご1cに乗込むための床である。
【0062】
図に示すように、1階または基準となる乗込み階では複数の乗込み床を設け、互いに例えば階段でつながっている。乗客は行きたい階に対応するかごの乗込み床から、かごに乗込むことができる。この場合、3つのかごに同時に乗込みを開始でき、3つのかごへの乗り込みが終わった時点で3台のかごが同時に運行開始できる。このため、図3に示した実施の形態1での運行のように、t2で中層階用かご1bへの乗込みを待ったり、t3で低層階用かご1cへの乗込みを待ったりする必要がなくなり、多輸送効率をさらに向上させることができる。
なお、この実施の形態では1階と基準となる乗込み階で複数の床は階段でつながっているものとしたが、これに限るものではなく、複数のかごに同時に乗込むことができるように構成すればよい。
【0063】
実施の形態16.
以下、この発明の実施の形態16によるエレベータ装置を図について説明する。
この発明は1つの昇降路に複数のかごを備え、それらのかごがそれぞれ独立的に移動可能である。このような構成のかごを運行するとき、従来には必要でなかった安全面での対応が必要となる。
この実施の形態は、安全に運行するためのものである。図22は実施の形態16に係るかごの移動開始時の制御の一例を示すフローチャートである。この制御は、例えば、巻上機3を制御している制御装置で実行できる。
【0064】
まず、ステップST1で制御対象のかごの移動方向に他のかご1があるかどうか判定する。他のかご1がない場合はステップST4で制御対象のかごの移動を開始する。ステップST1の判定で移動方向に他のかごがある場合、ステップST2でそのかごと制御対象のかごとの距離が一定距離以内かどうか判定する。かご間の距離は、制御装置が制御している巻上機と他のかごの巻上機の作動状態から知ることができる。また、一定距離とは、制御対象のかごが移動を開始しても十分安全な距離であり、移動速度に応じてさまざまな場合が考えられるが、例えばその速度で非常止めを動作させた場合の制動距離程度に設定している。
【0065】
ステップST2でかご間の距離が一定距離より大きいときは移動開始しても安全とみなし、ステップST4で制御対象のかごの移動を開始する。ステップST2でかご間の距離が一定距離以内のとき、ステップST3で時間待ちし、再びステップST2で判定を繰り返す。
このように、かごの移動開始前に移動してもよいかどうか判定し、そのかごの移動方向にある他のかごとの距離がある一定の距離以下の時は移動を開始しないように制御するすることにより、1つの昇降路に複数のかごを設けても安全に運行でき、輸送効率の高いエレベータ装置が得られる。
【0066】
実施の形態17.
以下、この発明の実施の形態17によるエレベータ装置を図について説明する。この実施の形態も実施の形態16と同様、かご同士の衝突を避け、安全に運行するためのものである。
図23は実施の形態17によるエレベータ装置の高層階用かご1aと中層階用かご1bを拡大して示す斜視図である。図において、30は例えばレーザなどで非接触でかご間の距離を測定する距離測定器である。
【0067】
距離測定器30は中層階用かご1bの上に設けられており、上方にレーザ光を発信し、上方にある高層階用かご1aで反射したレーザ光を受信して、その時間差で距離を測定するものである。
実施の形態16ではかご間の距離を巻上機からの情報を制御装置で算出して得て、この値に基づいて安全な運行の制御を行っている。この実施の形態ではさらに、かご間の距離を距離測定器30で測定する。この両方の値を用いて図22のフローチャートに基いてかごの移動開始時における安全性を監視している。距離測定器30を備えて実際にかご間の距離を測定しているので、制御装置で算出する値のみに頼るのではなく、信頼性が高まる。
なお、上記実施の形態では距離測定器30として、レーザによるものを用いたが、これに限るものではなく、例えば、超音波や磁気などを利用して距離を測定するものを用いてもよい。また、非接触な距離測定器でなく、例えばワイヤーでかご間を結ぶような直接的な距離測定手段でもよい。さらに、ガイドレール8や昇降路7などにリニアスケールを設けるような構成でもよい。
【0068】
実施の形態18.
以下、この発明の実施の形態18によるエレベータ装置の制御方法について説明する。この実施の形態は、1つの昇降路に複数のかごを設けたエレベータ装置を安全に運行するため、隣合うかご1間の距離や相対速度に応じて対応するかご1の移動速度を制御するものである。
実施の形態16で示すように、かご1間の距離や相対速度は、巻上機の情報から制御装置で算出して得たり、かごに設けた距離測定器30で測定して得ることができる。
【0069】
図24はこの時の制御の一例を示すフローチャートである。通常の運行では、かご1の定格走行速度として、予め加速ー定速ー減速の速度パターンを設定しておく。あるかご1が移動開始し、ステップST11で定格走行を開始する。ステップST12では巻上機4の巻上状態から隣合うかごとのかご間距離を計算する。さらに、ステップST13で巻上機4の巻上状態から隣合うかごとのかご間相対速度を計算する。このかご間相対速度に基いて、その相対速度でも安全なかご間距離を計算する(ステップST14)。
【0070】
次にステップST15において、ステップST12で得た実際のかご間距離と、ステップST14で得た相対速度からの安全距離を比較し、実際のかご間距離が大きい場合は、ステップST16で定格走行を命令する。
ステップST14で得た相対速度からの安全距離を比較し、実際のかご間距離が小さいまたは等しい場合は、危険であると判断し、ステップST17で相対速度が小さくなるようにかごを減速する。
【0071】
なお、かご間距離とかご間相対速度を求めるとき、上記実施の形態では巻上器の巻上状態から計算しているが、これに限るものではなく、距離測定器30や、速度計などのセンサーを使って計測しても同様の効果を奏する。
また、この実施の形態では隣合うかご間距離とその相対速度の両方に応じてかごの移動速度を制御しているが、隣合うかご間距離とその相対速度のどちらか一方に応じてかごの移動速度を制御するように構成してもよい。
上記のように、隣合うかご1間の距離や相対速度に応じて対応するかご1の移動速度を制御しているので、1つの昇降路に複数のかごを設けてもエレベータ装置を安全に運行できる。
特に、通常の運行では定格走行しているが、運行中に何らかの原因により、隣合うかご間の距離が接近したり、かごの速度が異常になった場合でも、この実施の形態によればかごの移動速度を制御することにより、安全にかつ効率的に運行できる。
【0072】
実施の形態19.
以下、この発明の実施の形態19によるエレベータ装置に係る制御方法について説明する。実施の形態16で示すように、かご間の距離は巻上機の情報から制御装置で算出して得たり、距離測定器30で測定して得ることができる。このかご間距離を用いて図22のフローチャートに基いてかごの移動開始時における安全性を監視している。
この実施の形態では、かごの移動開始時ばかりでなく、例えば運行中に何らかの原因でかご間の距離がかごの制動力から考えて危険である距離に接近した場合、緊急運行モードに切り替えて制御する。
【0073】
図25はこの時の制御の一例を示すフローチャートである。ステップST31で例えば上方かごとの距離を制御装置または距離測定器30で検出する。ステップST32で、このかご間距離は一定距離以内かどうか判断する。この時の一定距離とは、かご間の距離がかごの制動力から考えて危険である距離であり、例えばかごの高さ分程度を設定する。この判断で一定距離以上の場合は安全範囲であり、ステップST33で、運行を続行する。
【0074】
ステップST32の判断で一定距離以内の場合は危険範囲と見なし、緊急運行モードに切り替える。即ち、ステップST34で両かごとも緊急減速し、近くに待避所がある場合は待避する(ステップST35,36)。近くに待避所がない場合は、ステップST37で、危険回避不可能であり非常事態であるので、全かごの運行を停止する。待避した場合には危険が回避されたとき、再び正常に運行することも可能である。
【0075】
この実施の形態によれば、1つの昇降路に複数のかごを有するものにおいて、何らかの原因で、かご間の距離が危険である距離に接近したときでも、危険を避けることができ、安全性の高いエレベータ装置が得られる効果がある。
【0076】
実施の形態20.
以下、この発明の実施の形態20によるエレベータ装置の制御方法について説明する。図26は実施の形態20によるエレベータ装置の高層階用かご1aと中層階用かご1bを拡大して示す斜視図である。図において、32は例えば数mの棒で先端にセンサを有するかご近接検知器であり、機械的に他のかごが近づいているのを検出する。かご近接検地器は、一方のかごにセンサを設け、もう一方のかごに上または下に数m伸ばしたフィンを設けて、フィンがセンサ内に入ることにより、検出する方式でもよい。また、従来のピット部で行われているようなリミットスイッチを動作させる方式でもよい。
かご間の距離は、制御装置が制御している巻上機と他のかごの巻上機の作動状態から知ることができるのであるが、更なる安全性の意味から、この実施の形態では距離測定器30とかご近接検知器32を備えている。
【0077】
距離測定器30に関しては実施の形態17で説明したので、ここではかご近接検知器32について説明する。かご間の距離を制御して安全性を監視しているのであるが、この実施の形態は、制御装置での制御が異常になり、制御できなくなる場合のものである。距離測定器30の出力も信用できなくなった場合、かご近接検知器32で機械的にかご間が異常に接近していることを検知する。
【0078】
何らかの原因で、かご間の距離が危険である限界の距離に近づいた時、この近接検知と連動して、かごが機械的に停止する非常停止機構を作動する。
図27はエレベータ装置の非常停止機構の構成の一例を示す説明図であり、エレベータ装置の1つのロープドライブ系をYZ面を模式的に示している。図において、33は巻上機4に対して作動するディスクブレーキ、34はかご1とガイドレール8間に設けられている非常止めである。
【0079】
この実施の形態ではディスクブレーキ33と非常止め34の2つの非常停止機構を設けている。機械的に他のかご1が接近しているのを検知したとき、これと連動してディスクブレーキ33は巻上機4の回転を強制的に止め、かご1を停止させる。また、かご1に固定されている非常止め34は、ガイドレール8をつかむようにしてガイドレール8と結合し、かご1の動きを停止させる。
【0080】
この実施の形態によれば、1つの昇降路に複数のかごを有するものにおいて、何らかの原因で、かご間の距離が危険である距離に接近したときでも、かごを停止させて危険を避けることができ、安全性の高いエレベータ装置が得られる効果がある。
なお、この実施の形態では、ディスクブレーキ33と非常止め34の2つの非常停止機構を設けているが、どちらか1つでもよい。
【0081】
なお、実施の形態1〜20では、昇降路の全昇降行程を複数のゾーンに分けてかごを割り当て、サービスするような運行方式として説明したが、これに限るものではなく、例えば、スカイロビー方式などの運行方式でもよく、サービス方式を特定しない呼びに応じた運行を行う方式でもよい。
また、実施の形態16〜20で安全面における信頼性を高めるものについて記載したが、これらの安全装置は、上記のどれかでもよく、組み合わせて備えてもよく、また、無くてもよい。
【0082】
実施の形態21.
以下、この発明の実施の形態21によるエレベータ装置を図について説明する。図28,図29はそれぞれ実施の形態21によるエレベータ装置を模式的に示す側面図である。実施の形態1では、高層階用のロープドライブ系は昇降路の全昇降行程の移動ができる位置に主索2aの折り返し位置を配置し、他のロープドライブ系は全昇降行程の一部が移動できる位置に主索2b,2cの折り返し位置を配置しているが、この実施の形態では、全てのロープドライブ系が昇降路の全昇降行程の移動ができる位置に主索2a,2b,2cの折り返し位置を配置している。
【0083】
実施の形態1のようなゾーンサービス運行方式では、かご1の移動範囲が決まっており、希望する階に合わせてかご1を選ばなければならない。これに対してこの実施の形態のように構成すれば、乗客がかごに乗ったら、乗客の要求に応じて、複数のかご1の全てが上下のかご1と接触しない範囲で、独自に移動することができる。
また、実施の形態1では巻上機3,綱車4,そらせ車5を収納する機械室を各位置に設けなければならないが、この構成では1つの機械室に全てを格納することができる。
【0084】
なお、図28は、逆U字形のロープドライブ系をYZ平面に投影した時、逆U字形のロープドライブ系は、昇降方向に互いに非接触に被さるように重ねて構成すると共に、ロープドライブ系で構成される平面を移動平面とした時、複数のロープドライブ系の移動平面をほぼ同一平面であるように構成したものの例を示している。
また、図29は、複数のロープドライブ系の移動平面のそれぞれはZ軸にほぼ平行であると共に、移動平面のそれぞれが他の移動平面の少なくとも1つとほぼ直交するように構成したものの例を示す。
このように、どちらの構成でも、全てのロープドライブ系が昇降路の全昇降行程の移動ができるように主索2a,2b,2cの折り返し位置を配置している。
【0085】
実施の形態22.
以下、この発明の実施の形態22によるエレベータ装置を図について説明する。図30は実施の形態22によるエレベータ装置を模式的に示す側面図である。
この実施の形態では、1つの昇降路7の全昇降行程を複数のゾーン、例えば高層階(FH),中層階(FM),低層階(FL)の3つのゾーンに分割し、昇降路に納められた複数のかごの移動範囲は、上方に位置しているものから順にゾーンの上方から割り当てられる。即ち、高層階用かご1aは高層階ゾーン(FH)を移動し、中層階用かご1bは中層階ゾーン(FM)を移動し、低層階用かご1cは低層階ゾーン(FL)を移動する。
【0086】
上記のように、全昇降行程のうちの一部のみ要求があれば停止し、他の階は停止しないゾーンサービス運行方式においては、1つの昇降路に納められた複数のかご1の上に位置しているかご1から分割されたゾーンの上方の階をサービスするようにしている。
また、図に示すように、2つの昇降路7を備え、高層階用かご1a同士、中層階用かご1b同士、低層階用かご1c同士を接続し、一方のかごを他方のかごの釣合い錘として利用している。また、巻上機3,綱車4,そらせ車5を、ゾーンごとに共用している。もちろん従来のように、昇降路が1つで、釣合い錘を設けた方式でもよい。
【0087】
このように各かご1でサービス区域を完全に分けて運行すると、かご同士が異常接近するという危険が起こることなく安全で、構成が簡単なエレベータ装置が得られる効果がある。
【0088】
実施の形態23.
以下、この発明の実施の形態23によるエレベータ装置を図について説明する。図31は実施の形態23によるエレベータ装置の運行におけるフロア呼びボタンを説明するための説明図である。この運行方式は図28に示すように各かご1の構成は昇降路の全行程を昇降できるように構成しており、すべての巻上機3,綱車4,そらせ車5を1つの機械室Mに収納している。その運行方式はゾーンサービス方式を用い、高層階用かご1aでは21F〜30Fの高層階(FH)の範囲を対象とし、中層階用かご1bでは11F〜20Fの中層階(FM)の範囲を対象とし、低層階用かご1cでは1F〜10Fの低層階(FL)の範囲を対象としている。基準となる乗込み階(FI)は1Fとしている。また、図中、イは21F〜30Fのフロア呼びボタンの構成例、ロは11F〜20Fのフロア呼びボタンの構成例、ハは2F〜10Fのフロア呼びボタンの構成例を示している。□にはその階に応じた番号が書かれている。例えば、25Fのフロア呼びボタンには、上昇を指示する△の□には26Fと書かれ、下降を指示する▽の□には24Fと書かれる。
【0089】
従来のエレベータ装置の各階での呼びボタンには上下を示すボタンしかない場合が多い。ところがこの発明のように、1つの昇降路で複数のかごを運行し、例えばゾーンサービス方式を用いる場合には、上方または下方のどのゾーンに行きたいかが分からないとかごの割り振りが難しい。そこで、図31のイ,ロ,ハに示すように各階での呼びボタンに、各ゾーンの呼びボタンを配置して、乗込み客が各自の目的ゾーンのボタンが押せるように構成すると、効率的なかごの運行を行うことができる。
【0090】
さらに、この呼びボタンに、特別に頻繁に使用されると思われる1階(FI)行きの呼びボタンを設けるとより効率的に運行できる。
このボタンは、全階を押せるようにしてもよい。また、各ゾーンへの乗り換えができるように各かご1のサービスゾーンが少なくとも1階分重なるように構成してもよい。例えば、21Fは中層階かごも高層階かごも停止できるようにしてもよい。
さらに、高層階にいる人が低層階に行きたい場合や逆の場合の運行として、高層用かごが下降中に低層階の少なくとも一部に停止できるようにしたり、低層部のかごが高層階まで上昇できるようにしてもよい。
【0091】
なお、上記エレベータ装置において、1階または基準乗込み階の下に、かご1を保管する空間を設けてもよい。この空間は、昇降路7の下部に設けると、構成が簡単にできる。また、昇降路7の途中に複数設ければ、運行中は非常時の避難所として用いることができる。
また、1つの昇降路7に設ける複数のかご1は3個に限るものではなく、2個でも3個以上でもよい。
また、各かご1に巻上機3や釣合い錘6をそれぞれ設けているが、どれかを兼用した構成にしてもよい。
また、巻上機3,綱車4,及び主策2で駆動手段を構成するものについて主に説明しているが、図10に示したようにリニアモータを用いた方式でもよく、ギヤ駆動など方式でもよい。
また、主策2がワイヤーロープでなくてもチェーンでもよいし、他の伝達手段でもよい。
また、かご1が昇降路7から待避でき、下方のかご1が上方のかご1を追越しできる機構を設けると、さらに運行効率を上げることができる。
さらに、実施の形態1〜23では1つの動作をする所には1つのかご1しか設けていないが、ダブルデッキのようにかごを2つ連ねて構成してもよい。即ち、図1において、3箇所×2個=6個のかごで構成でき、さらに輸送量が増す。もちろん2個以上でもよいし、一部分だけダブルデッキにしても良い。
【0092】
実施の形態1〜23のようにして構成したエレベータ装置は、従来のエレベータ装置の構成部品をほとんど変更することなく構成でき、狭いエレベータ設置面積で多くの人員を輸送することができる。また、複数のかごで違う階をサービスできるので、大量の輸送時でも従来とほぼ同等のサービスを行うことができる。従って、高層ビルなど大量の輸送力を必要とする建物で、輸送サービスを落とすことなくエレベータ設置面積を小さくすることができ、ビルの床面積の有効利用ができる。
【0093】
実施の形態24.
以下、この発明の実施の形態24によるエレベータ装置を図について説明する。図32,33は実施の形態24によるエレベータ装置を模式的に示す側面図である。
実施の形態1〜23に関するエレベータ装置は1:1ローピングと呼ばれ、かごが1移動すれば釣合い錘も1移動するローピングの方法である。この実施の形態ではこれ以外のローピング方法として、図47に示すような、主索の片側が固定端につながれている2:1ローピングを用いたエレベータ装置に関する実施の形態について説明する。この方式では、主索1の移動に対して、かごは1/2の移動となる。
【0094】
図32はかごに乗り込む時の状態を示し、図33はかごが上方階に停止した時の状態を示している。図において、FIは乗込み階、FS1,FS2はFIよりも上層の階で、例えば低層階,中層階である。主索2の一端部2aは固定部に結合され、他端部2bは綱車4を経て釣合い錘6と結合している。第1のかご1aは主索2に直接的に結合されている。また、第2のかご1bはそらせ車5を介して間接的に主索2に釣り下げられている。
【0095】
図に示すように、乗込み階FIに第1のかご1aが固定された状態から、巻上機3によって綱車4を回転すると、トラクションにより主索2に動力が伝達され、かご1a,1bが上昇する。例えば、図33の矢印Aに示すように、第2のかご1bを乗込み階FIから低層階FS1に移動させると、第1のかご1aは矢印Bに示すように乗込み階FIから中層階FS2に移動する。即ち、第2のかご1bが1だけ移動するのに対し第1のかご1aは2だけ移動することになる。
このように、主索2の一端を固定し、主索2にそらせ車5を介して、第2のかご1bを結合すれば、主索2に直接的に結合した第1のかご1aと第2のかご1bとで、巻上機3による昇降距離は異なる。
【0096】
以上のようにこの実施の形態では、1つの駆動モータで駆動しているにもかかわらず、1つの昇降路で2つのかご1a,1bが同時に駆動でき、かつ、2つのかご1a,1bで違う階をサービスできる。このため、1つの昇降路で大量の乗客が輸送でき、低層階FS1,中層階FS2をそれぞれ高層ビルなどのスカイロビー階とし、スカイロビー階まで直行で往復するシャトルエレベータとして用いることができる。
また、従来のエレベータ装置の構成部品をほとんど変更することなく構成でき、狭いエレベータ設置面積で多くの人員を輸送することができる。また、1つの巻上機で複数のカゴが違う階をサービスできるので、従来のダブルデッキエレベータに比べ効率よくサービスできる。
また、巻上機を複数使うと、それぞれのかごの自由度が上がり、より一層サービスが向上する。このため、高層ビルなど大量の輸送力を必要とする建物で、輸送サービスを落とすことなくエレベータ設置面積を小さくすることができ、ビルの床面積の有効利用ができる。
【0097】
実施の形態25.
以下、この発明の実施の形態25によるエレベータ装置を図について説明する。図34は実施の形態25によるエレベータ装置を模式的に示す側面図である。
この実施の形態は2:1ローピングによる方式を用い、かごを3個設けたものである。第2のかご1bと固定部を第2の主索2cで結合し、この第2の主索2cにそらせ車5を介して第3のかご1cが間接的に釣り下げられている。他の構成は図32と同様である。
【0098】
実施の形態24と同様、乗込み階FIに第1のかご1aが固定された状態から、巻上機3によって綱車4を回転すると、トラクションにより主索2に動力が伝達され、かご1a,1b,1cが上昇する。例えば、第2のかご1bを乗込み階FIから低層階FS1に移動させると、第1のかご1aは乗込み階FIから高層階FS3に移動し、第3のかご1cは乗込み階FIから低層階FS0に移動する。この低層階FS0は、乗込み階FIから低層階FS1までの中央の階である。即ち、第1のかご1aが1移動すると第2のかご1bは1/2の移動となり、第3のかご1cは1/4の移動となる。
このように、主索2の一端を固定し、主索2にそらせ車5を介して、第2のかご1bを結合し、さらに第2のかご1bにそらせ車5を介して第3のかご1cを結合すれば、主索2に直接的に結合した第1のかご1aと第2のかご1bと第3のかご1cとで、巻上機3による昇降距離は異なる。
【0099】
この実施の形態によれば、実施の形態24と同様の効果を奏し、さらにかご2台に比べてかごを3台備えており、より輸送量を向上できる。
また、同様にしてもっと多くのかごを結合することもできる。
【0100】
実施の形態26.
以下、この発明の実施の形態26によるエレベータ装置を図について説明する。図35は実施の形態26によるエレベータ装置を模式的に示す側面図である。
図において、3bは巻上機で、図32の固定端2aになっている部分に配置されている。乗込み階FIに第1のかご1aが固定された状態から、巻上機3aによって綱車4aを回転すると、トラクションにより主索2に動力が伝達され、かご1a,1bが上昇する。例えば、第2のかご1bを乗込み階FIから低層階FS1に移動させると、第1のかご1aは乗込み階FIから中層階FS2に移動する。さらに綱車4bを回転すると、第2のかご1bを低層階FS1から中層階FS2の間の任意の位置に移動できる。
【0101】
このように、主索2の両端に巻上機3a,3bを設け、主索2にそらせ車5を介して、第2のかご1bを結合すれば、主索2に直接的に結合した第1のかご1aと第2のかご1bとで、巻上機3a,3bによる昇降距離は異なる。
図32に示したものは、巻上機4によりかご1aの移動距離を定め、かご1bはその半分の行程しか移動できなかったが、この実施の形態では、かご1bもさらに別に移動させることができるようになる。このように、駆動モータの数は増えるが、かご1bの自由度が上がるという効果がある。
【0102】
実施の形態27.
以下、この発明の実施の形態27によるエレベータ装置を図について説明する。図36は実施の形態27によるエレベータ装置を模式的に示す側面図である。
図において、3b,4bは巻上機,綱車であり、第2のかご1bは綱車4bを介して第1のかご1aに結合されている。即ち、第1のかご1aは直接的に主索2に結合され、第2のかご1bは綱車4bを介して間接的に主索2に結合されている。
【0103】
このように構成したかご1a,1bの動作について説明する。第2のかご1bは、巻上機3aによって第1のかご1aの昇降につれて同じ距離だけ移動する。さらに第2のかご1bは巻上機3bによって独自に昇降することができる。このように、主索2に直接的に結合した第1のかご1aと第2のかご1bとで、異なる昇降距離が得られる。従って、実施の形態26と同様の効果を奏する。
【0104】
なお、実施の形態24〜27では1つの動作をする所には1つのかごしか設けていないが、ダブルデッキのようにかごを2つ連ねる、つまり、図32では2個×2=4個のかごで構成する方式でもよい。さらに1つの動作をする所に2個以上のかごを設けてもよい。
【0105】
実施の形態28.
以下、この発明の実施の形態28によるエレベータ装置を図について説明する。図37は実施の形態28によるエレベータ装置に係る運行時の動作を示す説明図である。
この実施の形態でも、1つの昇降路内で、1つの巻上機を用いて複数のかごを駆動する構成とし、例えば3個のかご1a,1b,1cと3個の釣合い錘6a,6b,6cを備えている。かご1a,1b,1cと釣合い錘6a,6b,6cのそれぞれは主索2に着脱可能に構成されている。例えば、かご1a,1b,1cまたは釣合い錘6a,6b,6cの主索2と結合する部分にクラッチ機構を設け、主索2と結合するときは主索2を摩擦力によって挟み込むように構成し、主索2と離脱するときは、クラッチ機構をはなせばよい。
また、35は例えば基準乗込み階の近傍に配置されたかご移動機構で、昇降路の運行位置とかご1を収納するかご収納室36との間で、かご1を移動する。
【0106】
また、主索2に結合している全てのかご1と釣合い錘6は常にほぼ釣合って動作するように構成している。例えば、かご1を主索2に係合,離脱するのにほぼ同期して、これと釣り合うように釣合い錘6が主索2に係合,離脱する。
【0107】
かごが出発前には、3個のかごとも乗込み階FIの下に設けられているかご収納室36に収納されている。この時、釣合い錘6aは高層階の基準位置に配置され、釣合い錘6b,6cはそれぞれ中層階,低層階の基準位置に配置されている。出発時にはかご移動機構35でかご1aをかご収納室36から乗込み階FIの位置に移動する。
【0108】
かご1aが乗込み階(FI)に停止している間に、かご1aは主索2に係合する。さらにこれと同期して釣合い錘6aが主索2に係合し、図37(a)で示すような構成になる。かご1aが低層階(FI−FS1)を移動する間は、図37(a)に示すように、かご1aと釣合い錘6aが主索2に係合されてロープドライブ系を構成している。かご1aが乗込み階(FI)を出発して移動している間に、かご移動機構35でかご1bをかご収納室36から乗込み階FIの位置に移動する。
【0109】
かご1aが低層階の最上階(FS1)に停止すると、かご1bは主索2に係合する。さらにこれと同期して釣合い錘6bが主索2に係合し、図37(b)で示すような構成になる。かご1aが中層階(FS1−FS2)を移動し、かご1bが低層階(FI−FS1)を移動する間は、図37(b)に示すように、かご1a,1bと釣合い錘6a,6bが主索2に係合されて、2個のかごと2個の釣合い錘でロープドライブ系を構成している。かご1bが乗込み階(FI)を出発して移動している間に、かご移動機構35でかご1cをかご収納室36から乗込み階FIの位置に移動する。
【0110】
同様にして、かご1aが中層階の最上階(FS2)に停止し、かご1bが低層階の最上階(FS1)に停止すると、かご1cは主索2に係合する。さらにこれと同期して釣合い錘6cが主索2に係合し、図37(c)で示すような構成になる。かご1aが高層階(FS2−FS3)を移動し、かご1bが中層階(FS1−FS2)を移動し、かご1cが低層階(FI−FS1)を移動する間は、図37(c)に示すように、かご1a,1b,1cと釣合い錘6a,6b,6cが主索2に係合されて、3個のかごと3個の釣合い錘でロープドライブ系を構成している。
【0111】
この実施の形態でも、駆動する巻上機3は1つで、複数のかご1を運行することができ、さらに複数のかごでそれぞれ違う階をサービスすることができる。
このようにして構成したエレベータ装置は、実施の形態24〜27と同様、高層ビルなど大量の輸送力を必要とする建物で、輸送サービスを落とすことなくエレベータ設置面積を小さくすることができ、ビルの床面積の有効利用ができる。
【0112】
なお、上記実施の形態では1つの昇降路7に設けられた3個のかご1と釣合い錘6が全て主索2に着脱可能であるように構成したが、これに限るものではなく、複数のかごと釣合い錘の一部は主索2に着脱可能にし、他のかごと釣合い錘は主索2に予め固定して構成してもよい。
また、上記実施の形態ではかご1や釣合い錘6と主索2との着脱はかご1が所定の停止階に停止している時に行っているが、これに限るものではなく、昇降しているときに行ってもよいが、安全性を考えると、停止しているときに行うのが望ましい。
また、基準となる乗込み階の下にかご収納室36を設けて、運行していないときは収納するように構成したが、これに限るものではない。かご収納室36はその建物のスペースに応じて、最上階の上でもよいし、昇降路の途中に設けてもよいし、また、設けなくてもよい。
上記のようにかご収納室36に収納するように構成すると、朝夕の昇降人数の多いときと、日中の昇降人数の少ないときに応じて、かご1の運行個数を可変にできる。
【0113】
実施の形態29.
以下、この発明の実施の形態29によるエレベータ装置を図について説明する。図38は実施の形態29によるエレベータ装置を模式的に示す側面図である。上記実施の形態1〜28に記載したエレベータ装置の構成は、かごが昇降路で上昇及び下降する構成であり、主索は往復の移動を行っていたが、この実施の形態は輪状の主索を回転させてかごを循環させる構成のものである。
図において、1a〜1hは循環する例えば8個のかご、2aは高層部を一巡する主索、2bは中層部を一巡する主索、2cは低層部を一巡する主索、3aは高層部主索用の巻上機、3bは中層部主索用の巻上機、3cは低層部主索用の巻上機、4aは高層部主索用の綱車、4bは中層部主索用の綱車、4cは低層部主索用の綱車、5aは高層部主索用のそらせ車、5bは中層部主索用のそらせ車、5cは低層部主索用のそらせ車、7Aはかご1が上昇する昇路、7Bはかご1が下降する降路、10a,10b,10cは主索2a,2b,2cの下側のそらせ車、11a〜11hはかご1a〜1hのそれぞれに設けられ、主索2や副索と着脱可能な結合機構で、例えばロープ掴み換え機構である。また、12aは上部かご横移動機構、12bは下部かご横移動機構であり、LAは高層階のロープドライブ系が形成するループA、LBは中層階のロープドライブ系が形成するループB、LCは低層階のロープドライブ系が形成するループCである。矢印Uはかごの上昇方向を示し、矢印Dはかごの下降方向を示している。
【0114】
以下、この実施の形態に係るエレベータ装置の構造を図について説明する。ループA(LA)では、かご1g,1eが主索2aとロープ掴み換え機構11g,11eを介して繋がって釣合っている。また、ループB(LB)では、かご1h,1dが主索2bとロープ掴み換え機構11h,11dを介して繋がって釣合っている。さらに、ループC(LC)では、かご1a,1cが主索2cとロープ掴み換え機構11a,11cを介して結合され、釣合っている。
また、かご1b,1fは、それぞれロープ掴み換え機構11b,11fを介して横移動機構12a,12bの移動用ロープに結合している。
【0115】
次に、この実施の形態の動作について説明する。
ループC(LC)では、かご1aは巻上機3cの駆動力により綱車4cによってU方向に上昇し、同時に、このかご1aと釣合っているかご1cはD方向に下降する。この移動とほぼ同期して、ループB(LB)ではかご1hとかご1dが移動し、ループA(LA)ではかご1gとかご1eが移動する。
この垂直移動の間に、かご1bは横移動機構12bにより、下降方向から上昇方向へ横移動する。これと共に、かご1fは横移動機構12aにより、上昇方向から下降方向へ横移動する。即ち、かご1b,1fはそれぞれこれまで移動した方向と逆の方向側へ横移動する。
【0116】
かご1aは停止階(FS1)まで到達したら停止し、乗客の乗り降りを行う。この間にかご1aのロープ掴み換え機構11aが動作し、低層用主索2cから中層用主索2bに掴み換える。同様にして、かご1h,1e,1dが停止階に停止すると共に次の主索2へのロープ掴み換えを行う。
この時、かご1c,かご1gは、それぞれ降車階(FI),最上階(FS3)に到着し、乗客が降りると同時に、ロープ掴み換え機構11c,11gが動作し、主索2c,主索2aからかご横移動機構12b,12aの移動用ロープに掴み換える。
次に、横移動を終了したかご1b,1fは横移動用ロープから主索2c,2aへ掴み換えを行う。
【0117】
このように、昇降行程の一部を巡回する複数の輪状の主索を設け、これらの一部を交差させ、1つの主索には釣り合うように1対のかごを結合し、これらのかごは主索と着脱を繰り返して主索を掴み変えながら昇降する。このため、多くのかごを従来程度の負荷で運転でき、少ない設置面積で多くの輸送量が得られ、低コストに構成でき、安全に運行できる効果がある。
特に、従来の図48に示した輪状のエレベータ装置に比べ、1つの主索2に結合するかご1の数を少なくできるので、主索や巻上機に大きな負荷がかかるのを防止できる。
【0118】
また、この実施の形態では、1つのロープドライブ系で、互いにほぼ釣合う重さのかごがほぼ同期してその主索に着脱するので、釣合い錘が必要ではなく、構成が複雑化するのを防ぐことができ、安全なエレベータ装置が得られる。
また、すべてのかご1は、ほぼ同時に主索2に着脱するので、バランスが崩れるのを防ぐことができ、かご1間の距離を一定に保つことができ、安全なエレベータ装置が得られる。
また、この実施の形態では、8個のかご1を備えており、かごの数はこれに限るものではないが、少なくとも主索2の本数の2倍以上備えれば、1つの輪状のロープドライブ系で1対のかご1を結合することができる。例えば、また、昼の間の乗客が少ないときはかごの数を最低個数(主索の本数×2個)とし、朝夕の乗客の多いときにこれよりも多く結合してもよい。
また、この実施の形態では、輪状のロープドライブ系を3個設けているが、これに限るものではなく、いくつで構成してもよい。
【0119】
また、以下にこの実施の形態のエレベータ装置の運行方式について説明する。この実施の形態では、3つの輪状のロープドライブ系が高層階(FH),中層階(FM),低層階(FL)の各ゾーンに分けてをサービスするように構成されている。
図39は、この実施の形態に係るゾーニングサービスを行う場合の運行方式の一例を表わす説明図である。
【0120】
運行手順を以下に示す。
t1(モード1からモード2)
:かごAは、急行運転,FS1に停止,ドアを開けて、途中利用者を降車さ せ、主索2cから2bにロープ掴み換えて、ドアを閉める。
:かごBは、横移動し、ドアを開けて利用者を乗り込ませ、横移動用ロープ から主索2cにロープを掴み換えて、ドアを閉める。
t2(モード2からモード3)
:かごAは、急行運転,FS2に停止,ドアを開けて、途中利用者を降車さ せ、主索2bから2aにロープ掴み換えて、ドアを閉める。
:かごBは、急行運転,FS1に停止,ドアを開けて、途中利用者を降車さ せ、主索2cから2bにロープ掴み換えて、ドアを閉める。
:かごCは、横移動し、ドアを開けて利用者を乗り込ませ、横移動用ロープ から主索2cにロープを掴み換えて、ドアを閉める。
t3(モード3、モード4からモード1)
:かごA,かごB,かごCは低、中、高層各階サービスを行う。
:かごDは、横移動し、ドアを開けて利用者を乗り込ませ、横移動用ロープ から主索2cにロープを掴み換えて、ドアを閉める。
【0121】
上記のように運行すれば、スムーズに多くの乗客にサービスできる。
さらに、かごが次々に来るので、輸送力が非常に向上し、高層ビルなど大量の輸送力を必要とする建物で、輸送サービスを落とすことなくエレベータ設置面積を小さくすることができ、ビルの床面積の有効利用ができる。
なお、この実施の形態による運行方式はゾーンサービス方式の運行例を示しているが、ビルの途中に設けられた停止階のみに停止するシャトルエレベータとして用いてもよい。
【0122】
また、循環式エレベータの様に1本の主索に多くのかごが繋がっているわけではなく、上記実施の形態ではそれぞれの主索には2つのかごだけである。従って、かご+釣合い錘で駆動する場合の負荷と同じで、巻上機やロープなど構成部品は従来と同じ負荷を駆動するもので良く、新たな高負荷用構成部品を必要とせず、低コストにできる。
【0123】
実施の形態30.
以下、この発明の実施の形態30によるエレベータ装置を図について説明する。図40は実施の形態30によるエレベータ装置を模式的に示す側面図である。実施の形態29では、昇降路の上端部と下端部に横移動機構12a,12bを設けているが、この実施の形態では、図に示すように途中の交差部付近にも横移動機構12c,12dを設けている。横移動機構12cは、高層階用主索2aと中層階用主索2bの交差部に設けられ、中層階用主索2bの上昇方向から下降方向へ横移動できる。この横移動機構12cでは、各かご1に設けられている結合機構11で主索2から移動用ロープに掴み換えて移動できる。横移動機構12dも同様、中層階用主索2bと低層階用主索2cの交差部に設けられ、低層階用主索2cの上昇方向から下降方向へ横移動できる。
【0124】
この実施の形態でも実施の形態29と同様、昇降行程の一部を巡回する複数の輪状の主索を設け、これらの一部を交差させ、1つの主索には1対のかごを結合し、これらのかごは主索と着脱を繰り返して主索を掴み変えながら昇降するので、多くのかごを従来程度の負荷で運転でき、少ない設置面積で多くの輸送量が得られ、低コストに構成でき、安全に運行できる効果がある。
さらに、このように構成すると、かごの途中での昇降の反転や、かごの追越しも可能になり、運行の自由度が上がるので、よりいっそう輸送量を上げ、多様なサービスができる。
【0125】
なお、この横移動機構12は昇降路の上端部,下端部,交差部付近の少なくともどこか1つに設けることにより、追い越しが必要な時や緊急時にかごを待避させる待避部として用いることができ、運行の自由度を上げることができる。
【0126】
また、実施の形態28と同様に、エレベータの昇降路の近傍にかご1を保管するかご収納室を設け、かごの一部を昇降路から外しておくことにより、乗客が多いときと少ないときで、かごの数を可変にすることもできる。
【0127】
実施の形態31.
以下、この発明の実施の形態31によるエレベータ装置を図について説明する。図41は実施の形態31によるエレベータ装置の構成を示す斜視図である。この実施の形態では、輪状の主索2a,2b,2cを交差部でX方向にずれるように配置している。さらにかご1と主索2を着脱可能に結合する結合機構11の部分を拡大した斜視図を図42に示す。結合機構11は主索2のずれに対応して13A,13Bの2個のクラッチ機構で構成され、移動時はクラッチ機構13A,13Bのどちらか一方が主索2を掴んだ状態で結合している。
【0128】
例えば、図42に示すように、かご1が停止階FS3から停止階FS2に移動し、停止階FS2で主索2aから主索2bに掴み換える動作について説明する。停止階FS2では、かご1が停止し、クラッチ機構13Bが主索2aを掴んだ状態でクラッチ機構13Aが次の主索2bを掴む。この後、クラッチ機構13Bはこれまで結合していた主索2aを離し、かご1は主索2bと結合する。
【0129】
この実施の形態でも実施の形態29と同様、複数のかごが主索と着脱を繰り返して主索を掴み換えながら昇降するので、少ない設置面積で多くの輸送量が得られる。
さらに、この実施の形態のように2つの結合機構13A,13Bを設けて主策2を掴み換えるように構成すれば、安全に複数の主策2間を移動できる効果がある。
【0130】
なお、結合機構及び掴み換えの動作はこの実施の形態にかぎるものではなく、他のものを用いてもよい。
また、上記実施の形態では、かご1が停止階に停止したときに主策2を掴み換えるように構成しているが、停止階を設けずに移動しながら主策2を掴み換えるように構成してもよい。この時、安全性を考慮すれば、かごの速度を減速して掴み換えるようにするのが望ましい。
【0131】
実施の形態32.
以下、この発明の実施の形態32によるエレベータ装置を図について説明する。図43は実施の形態32によるエレベータ装置の運行時の動作を示す説明図である。
この実施の形態では、かご1を収納するかご収納室36を昇降路の上端部と下端部に設け、かご収納室36と昇降路端部のかご位置との間で、かご1をかご移動機構35によって移動する。また、昇降路の全昇降工程を複数に分割し、交差部を有するようにロープドライブ系を重ね合わせて構成する。上端部と下端部にかご1を収納できるようにすることにより、実施の形態31のような横移動は行わず、1巡する輪状の主索2a,2b,2cで掴み換えを行いながら、全てのかご1がある一方方向に上昇が終わったら、逆側の方向に下降する。
【0132】
かごが出発前には、昇降路の一方の4個のかごは下端部のかご収納室36に収納され、他方の4個のかごは上端部のかご収納室36に収納されている。上端部に収納されているかご1は順次かご収納室36から、かご移動機構35によって、昇降路端部のかご位置に移動する。この様子は図43の向かって左端に示す。次に、ループA(LA)の主索2a,ループB(LB)の主索2b,ループC(LC)の主索2cを掴み換えながら下降して、かご収納室36に移動する。下端部に収納しているかご1に関しても同様にして、主索2を掴み換えながら上端部のかご収納室36に達する。この様子を図43の真中に示す。
【0133】
全てのかご1が逆側のかご収納室36に収納された後、主索2の回転方向を逆にしてかごの移動方向を逆側にし、同様の運行を行う。この様子を図43の向かって右端に示す。
【0134】
この実施の形態でも、輪状のロープドライブ系を組み合わせて、複数のかご1を運行することができ、さらに複数のかごでそれぞれ違う階をサービスすることができる。
このようにして構成したエレベータ装置は、高層ビルなど大量の輸送力を必要とする建物で、輸送サービスを落とすことなくエレベータ設置面積を小さくすることができ、ビルの床面積の有効利用ができる。
また、かご1の動作が比較的単純であり、制御装置の構成が比較的単純にできる。
また、かご1をかご収納室36に収納するように構成すると、朝夕の昇降人数の多いときと、日中の昇降人数の少ないときに応じて、かご1の運行個数を可変にできる。
【0135】
実施の形態33.
以下、この発明の実施の形態33によるエレベータ装置を図について説明する。図44は実施の形態33によるエレベータ装置に係るかごの部分を拡大して示す斜視図である。図において、37は衝撃力吸収機構であり、1つの昇降路に設けられた複数のかご1の上部又は下部に設けられている。
この衝撃力吸収機構37は、例えばかご1同士が衝突した場合の衝撃を吸収する機能を有し、1昇降路で複数のかごを動作させる場合の安全対策として設けられている。
【0136】
具体的には、衝撃力吸収機構37は、従来の昇降路の底に設けられているようなばね式や油入式の緩衝器のような構成でもよいし、ゴムや薄い金属などの弾性体でもよい。また、磁石の反発力を利用した構成でもよいし、空圧や摩擦力を利用した方式でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】この発明の実施の形態1によるエレベータ装置を示す構成図である。
【図2】実施の形態1によるエレベータ装置を模式的に示す上面図である。
【図3】実施の形態1によるゾーニングサービスを行う場合の運行方式の一例を表わす説明図である。
【図4】この発明の実施の形態2によるエレベータ装置を模式的に示す斜視図である。
【図5】実施の形態2によるエレベータ装置を模式的に示す上面図及び側面図である。
【図6】実施の形態2に係るかご1a,1b,1cの後部を拡大して示す斜視図である。
【図7】この発明の実施の形態3によるエレベータ装置を模式的に示す上面図及び側面図である。
【図8】この発明の実施の形態4によるエレベータ装置を模式的に示す斜視図,上面図,及び側面図である。
【図9】この発明の実施の形態5に係るかご1の後面を拡大して示す斜視図である。
【図10】この発明の実施の形態6によるエレベータ装置を示す構成図である。
【図11】この発明の実施の形態7に係る1つのかごの部分を拡大して示す説明図である。
【図12】実施の形態7に係る1つのかごの部分を拡大して示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態8に係る1つのかごの部分を拡大して示す説明図である。
【図14】この発明の実施の形態9に係る1つのかごの部分を拡大して示す説明図である。
【図15】この発明の実施の形態10に係る1つのかごの部分を拡大して示す説明図である。
【図16】この発明の実施の形態11によるエレベータ装置を模式的に示す斜視図である。
【図17】実施の形態11によるエレベータ装置を模式的に示す上面図及び側面図である。
【図18】この発明の実施の形態12に係るかご1b,1cの部分を拡大して示す斜視図である。
【図19】この発明の実施の形態13に係るかご1b,1cの部分を拡大して示す斜視図である。
【図20】この発明の実施の形態14によるエレベータ装置を模式的に示す側面図である。
【図21】この発明の実施の形態15によるエレベータ装置の運行時に、1階または基準となる乗込み階での乗込む様子を模式的に示す説明図である。
【図22】この発明の実施の形態16に係るかごの移動開始時の制御の一例を示すフローチャートである。
【図23】この発明の実施の形態17に係るエレベータ装置の高層階用かご1aと中層階用かご1bを拡大して示す斜視図である。
【図24】この発明の実施の形態18に係る制御の一例を示すフローチャートである。
【図25】この発明の実施の形態19に係る制御の一例を示すフローチャートである。
【図26】この発明の実施の形態20に係る高層階用かご1aと中層階用かご1bを拡大して示す斜視図である。
【図27】実施の形態20に係る非常停止機構の構成の一例を示す説明図である。
【図28】この発明の実施の形態21によるエレベータ装置を模式的に示す側面図である。
【図29】実施の形態21によるエレベータ装置を模式的に示す側面図である。
【図30】この発明の実施の形態22によるエレベータ装置を模式的に示す側面図である。
【図31】この発明の実施の形態23によるエレベータ装置の運行におけるフロア呼びボタンを説明するための説明図である。
【図32】この発明の実施の形態24によるエレベータ装置を模式的に示す側面図である。
【図33】実施の形態24に係る動作を説明する側面図である。
【図34】この発明の実施の形態25によるエレベータ装置を模式的に示す側面図である。
【図35】この発明の実施の形態26によるエレベータ装置を模式的に示す側面図である。
【図36】この発明の実施の形態27によるエレベータ装置を模式的に示す側面図である。
【図37】この発明の実施の形態28によるエレベータ装置に係る運行時の動作を示す説明図である。
【図38】この発明の実施の形態29によるエレベータ装置を模式的に示す側面図である。
【図39】実施の形態29に係るゾーニングサービスを行う場合の運行方式の一例を表わす説明図である。
【図40】この発明の実施の形態30によるエレベータ装置を模式的に示す側面図である。
【図41】この発明の実施の形態31によるエレベータ装置の構成を示す斜視図である。
【図42】実施の形態31に係るかご1と主索2の結合機構部を拡大して示す説明図である。
【図43】実施の形態32によるエレベータ装置の運行時の動作を示す説明図である。
【図44】この発明の実施の形態33によるエレベータ装置に係るかごの部分を拡大して示す斜視図である。
【図45】従来のエレベータ装置の一例を示す構成図である。
【図46】従来のエレベータ装置の他の例を示す構成図である。
【図47】従来のエレベータ装置のさらに他の例を示す構成図である。
【図48】従来のエレベータ装置のさらに他の例を模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0138】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h かご
2,2a,2b,2c 主索
3,3a,3b,3c 巻上機
4,4a,4b,4c 綱車
5,5a,5b,5c そらせ車
6,6a,6b,6c 釣合い錘
7 昇降路
11a,11b,,,,,,11h 結合機構
12a,12b,12c,12d 横移動機構
15a,15b 切り欠き部
16b,16c かご1b,1cと主索2b,2cとの接続部
20b,20c 釣合い錘
21b,21c 釣合い錘ガイド
22 バランスウエイト
23 強化ガイドシュー
25 モーメント保償リンク
28 油圧式エレベータ
30 距離測定器
32 かご近接検知器
33 ディスクブレーキ
34 非常止め
35 かご移動機構
36 かご収納室
37 衝撃力吸収機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う2つの昇降路を備え、それぞれの昇降路に複数のかごが昇降し、これらのかごを各々個別に牽引する複数の主索と、それぞれのかごは隣り合う昇降路のかごと主索を介してほぼ釣り合うように結合され、主索ごとに定位置に固定した複数の巻上機で垂直方向に移動すると共に、昇降路途中に横移動機構を有し、主索を巻き掛ける複数の綱車とでロープドライブ系を複数構成したエレベータ装置。
【請求項2】
ロープドライブ系ごとにサービスするゾーン区域を分けたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
サービスゾーンまたは階までは停止せずに昇降することを特徴とする請求項1記載のエレベータ装置。
【請求項4】
かごは各サービスゾーンの基準となる階まで停止しない急行運転を行い、規定のサービスゾーンからは乗客の呼びに応じて停止することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
かごは全昇降範囲において、各ゾーンの基準となる階しか停止しない急行運転を行うことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【公開番号】特開2007−238331(P2007−238331A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101568(P2007−101568)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【分割の表示】特願2003−285686(P2003−285686)の分割
【原出願日】平成5年12月17日(1993.12.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】