説明

エレベータ

【課題】乗り場ドアの脱落を防止できる溝内レールを備えたエレベータを提供する。
【解決手段】エレベータ11は、乗り場ドア26と、乗り場ドア26の下部から突出するガイドシュー本体35と、ガイドシュー本体35の先端に設けられるとともにガイドシュー本体35よりも幅広に形成される摺動部36と、乗り場ドア26の下方の位置で摺動部36を内側に保持するとともに、開閉する乗り場ドア26を案内する敷居溝28と、溝内レール31と、を具備する。溝内レール31は、敷居溝28の底部28Aに密着する底壁31Aと、底壁31Aの両端部から立ち上がるとともに敷居溝28の側部28Bに密着した側壁31Bと、側壁31Bの底壁31Aに隣接した一方の端部41とは反対側の他方の端部42に設けられるとともに、摺動部36の上部と係合して摺動部36が敷居溝28から浮き上がることを阻止する係合壁31Cと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敷居溝内にレールを備えたエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗り場ドアのドアシューをガイドする敷居溝に、着脱可能なアタッチメントを取り付けたエレベータ用敷居が開示されている。このエレベータ用敷居は、敷居溝の内径を規定寸法よりも大きく形成している。そして、規定寸法の内径を有するアタッチメントを敷居溝内に着脱可能に嵌め込んでいる。
【0003】
このエレベータ用敷居では、アタッチメントの磨耗が所定量に達した時点で新規のアタッチメントと取り替えて初期寸法を確保するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−206344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のアタッチメントでは、基準値を超える大きな荷重が乗り場ドアに加えられた場合には、変形したドアシューがアタッチメントから外れる可能性がある。また、最悪の場合には乗り場ドアが脱落する恐れがあった。よって、従来のエレベータ用敷居には、依然として改良の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、乗り場ドアの脱落を防止できる溝内レールを備えたエレベータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の一つの形態に係るエレベータは、乗り場ドアと、前記乗り場ドアの下部から突出するガイドシュー本体と、前記ガイドシュー本体の先端に設けられるとともに前記ガイドシュー本体よりも幅広に形成される摺動部と、前記乗り場ドアの下方の位置で前記摺動部を内側に保持するとともに、開閉する前記乗り場ドアを案内する敷居溝と、前記敷居溝の底部に密着する底壁と、前記底壁の両端部から立ち上がるとともに前記敷居溝の側部に密着した側壁と、前記側壁の前記底壁に隣接した一方の端部とは反対側の他方の端部に設けられるとともに、前記摺動部の上部と係合して前記摺動部が前記敷居溝から浮き上がることを阻止する係合壁と、を有する溝内レールと、を具備する。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、乗り場ドアの脱落を防止できる溝内レールを備えたエレベータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係るエレベータを示す断面図。
【図2】図1に示すエレベータの乗り場ドアおよび敷居溝付近を拡大して示した斜視図。
【図3】図2に示す乗り場ドアおよび敷居溝の縦方向に沿った断面図。
【図4】図3に示す敷居溝および溝内レールの幅寸法を示した断面図。
【図5】第2の実施形態に係るエレベータの乗り場ドアおよび敷居溝の縦方向に沿った断面図。
【図6】第3の実施形態に係るエレベータの乗り場ドアおよび敷居溝付近を拡大して示した斜視図。
【図7】図6に示すエレベータの乗り場ドアおよび敷居溝の縦方向に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1から図4を参照して、エレベータの第1の実施形態について説明する。
【0011】
図1に示すように、第1の実施形態のエレベータ11は、昇降路12と、昇降路12内を昇降する乗りかご13と、昇降路12の上方に設けられた機械室14と、一端で乗りかご13に固定されるメインロープ15と、メインロープ15が巻きかけられる巻上機17と、メインロープ15の他端に固定されるつり合い重り16と、を備えている。
【0012】
図1から図3に示すように、エレベータ11は、つり合い重り16の上方で巻上機17に隣接して設けられたそらせシーブ18と、乗りかご13の昇降をガイドするメインレール21と、つり合い重り16の昇降をガイドするカウンターレール22と、乗りかご13に制御信号および電力を供給するテールコード23と、乗りかご13とつり合い重り16とを接続するコンペンセーティングロープ24、などを備えている。エレベータ11は、昇降路12の底部に設けられる図示しない乗りかご用バッファおよびつり合い重り用バッファを備えている。エレベータ11の昇降路12に隣接して、建物の各階には乗り場25が設けられている。エレベータ11は、さらに、これら各乗り場25と隣接する位置に、乗り場ドア26と、乗り場ドア26の下方に設けられた敷居27と、この敷居27に設けられる敷居溝28と、敷居溝28の内側に設けられた溝内レール31と、をそれぞれ有している。
【0013】
図1に示すように、コンペンセーティングロープ24は、メインロープ15とは独立に設けられている。コンペンセーティングロープ24は、乗りかご13の下部と、つり合い重り16の下部とを連結している。コンペンセーティングロープ24は、乗りかご13の高さ位置によって生じるメインロープ15やテールコード23の重量アンバランスを補償する。
【0014】
乗りかご13は、乗りかご本体32と、乗りかご本体32に取り付けられるかごドア33と、を有している。図2、図3に示すように、敷居27は、鉄板を板金曲げ加工したもの、またはアルミニウムを押出し加工したもので形成されている。敷居溝28は、乗り場ドア26の下方に設けられている。敷居溝28は、乗り場ドア26の開閉を案内することができる。
【0015】
図3に示すように、乗り場ドア26は、ドア本体34(引き戸)と、ドア本体34の下部に設けられるガイドシュー本体35と、ガイドシュー本体35の先端に設けられる摺動部36と、を含んでいる。ガイドシュー本体35は、例えば金属板によって形成されており、ねじ37を介してドア本体34に固定されている。摺動部36は、例えば、フッ素樹脂等、敷居溝28との間の摩擦力を低減する板材で構成され、ガイドシュー本体35に取り付けられている。摺動部36は、ガイドシュー本体35から厚み方向に突出するようにガイドシュー本体35に固定されている。
【0016】
敷居溝28は、底部28Aと、底部28Aの両側から立ち上がった側部28Bと、を有している。敷居溝28は、その内側に摺動部36を保持することができる。
【0017】
図3に示すように、溝内レール31は、金属材料によって断面略「C」字状をなしている。この溝内レール31は、例えば、アルミニウムを押出し加工することで形成される。溝内レール31は、敷居溝28の底部28Aに密着する底壁31Aと、底壁31Aの両端部から立ち上がった側壁31Bと、側壁31Bの底壁31Aに隣接した一方の端部41とは反対側の他方の端部42に設けられる係合壁31Cと、を有している。側壁31Bは、敷居溝28の側部28Bに密着している。係合壁31Cは、かぎ形状に形成されている。係合壁31Cは、摺動部36の上部と係合して摺動部36が敷居溝28から浮き上がることを阻止することができる。
【0018】
溝内レール31は、例えばねじ止め等によって敷居溝28の底部28Aに固定される。なお、溝内レール31は、敷居溝28の長さよりも若干短い長さを有しており、敷居溝28の端部には、図示しない隙間が形成されている。最初に摺動部36を溝内レール31の内側に導入する際には、この隙間を利用して摺動部36を溝内レール31の内側に配置する。また、溝内レール31の製造方法は、上記押出し加工に限定されるものではなく、例えば、鉄等の金属板に曲げ加工を行って形成してもよい。
【0019】
この溝内レール31の側壁31Bは、図4に示すように、一方の端部41から他方の端部42に向けて(すなわち、開放部に向かうにつれて)拡開している。このため、底壁31Aと側壁31Bとがなす角度Dは、90°よりも大きくなっている。底壁31Aの幅Bは、敷居溝28の幅Cよりも僅かに小さくなっており、溝内レール31を敷居溝28の内側に円滑に嵌めいれることができる。一方、側壁31Bの係合壁31C近傍における幅Bは、敷居溝28の幅Cよりも僅かに大きくなっている。これによって、溝内レール31を敷居溝28内でつっぱらせることができ、敷居溝28に嵌った溝内レール31は、敷居溝28から容易に外れないようになっている。
【0020】
第1の実施形態によれば、エレベータ11は、乗り場ドア26と、乗り場ドア26の下部に設けられるガイドシュー本体35と、ガイドシュー本体35の先端に設けられるとともにガイドシュー本体35から厚み方向に突出して設けられる摺動部36と、乗り場ドア26の下方の位置で摺動部36を内側に保持するとともに、開閉する乗り場ドア26を案内する敷居溝28と、敷居溝28の底部28Aに密着する底壁31Aと、底壁31Aの両端部から立ち上がるとともに敷居溝28の側部28Bに密着した側壁31Bと、側壁31Bの底壁31Aに隣接した一方の端部41とは反対側の他方の端部42に設けられるとともに、摺動部36の上部と係合して摺動部36が敷居溝28から浮き上がることを阻止する係合壁31Cと、を有する溝内レール31と、を具備する。
【0021】
この構成によれば、溝内レール31によって摺動部36が敷居溝28から浮き上がるのが防止されるため、乗り場ドア26に極めて大きな衝撃が加えられた場合でも、乗り場ドア26が敷居溝28から外れて乗り場ドア26が脱落してしまう事態を防止することができる。これによって、エレベータ11の安全性をより一層向上することができる。
【0022】
また、側壁31Bは、一方の端部41から他方の端部42に向けて拡開している。この構成によれば、溝内レール31を敷居溝28内でつっぱらせることができ、敷居溝28から溝内レール31が容易に脱落してしない構造にすることができる。なお、第1の実施形態では、溝内レール31を金属材料で形成しているが、これに限定されるものではなく、溝内レール31を合成樹脂によって形成してもよい。
【0023】
続いて図5を参照して、エレベータ11の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態のエレベータ11は、溝内レール31の材質および形状が異なる点で第1の実施形態のものと異なっているが、他の部分は第1の実施形態と共通している。このため、主として異なる部分について説明し、共通する部分については共通の符号を付して説明を省略する。第2の実施形態のエレベータ11は、図1に示すエレベータ11と同様の構成を有する。
【0024】
溝内レール31は、例えば、合成樹脂を押出し加工することで形成される。溝内レール31は、敷居溝28の底部28Aに密着する底壁31Aと、底壁31Aの両端部から立ち上がった側壁31Bと、側壁31Bの底壁31Aに隣接した一方の端部41とは反対側の他方の端部42に設けられる係合壁31Cと、を有している。側壁31Bは、敷居溝28の側部28Bに密着している。係合壁31Cは、側壁31Bの他方の端部42から内側に向けて斜め上方向に突出している。係合壁31Cは、摺動部36の上部と係合して摺動部36が敷居溝28から浮き上がることを阻止することができる。溝内レール31は、敷居27と同じ色で塗装されており、体裁が良好になっている。
【0025】
第2の実施形態によれば、溝内レール31は、合成樹脂によって一体に形成される。この構成によれば、溝内レール31の材質が柔らかくなり、摺動部36を敷居溝28内から取り外したい場合に、乗り場ドア26を上方に引き抜くことで係合壁31Cに変形を生じさせ、敷居溝28内から摺動部36を取り外すことができる。なお、第2の実施形態では、溝内レール31を合成樹脂で形成しているが、これに限定されるものではなく、溝内レール31を金属材料によって形成してもよい。
【0026】
図6、7を参照して、エレベータの第3の実施形態について説明する。第3の実施形態のエレベータ11は、敷居溝28の数および溝内レール31の使用方法が異なる点で第1の実施形態のものと異なっているが、他の部分は第1の実施形態と共通している。このため、主として異なる部分について説明し、共通する部分については共通の符号を付して説明を省略する。
【0027】
第3の実施形態にかかるエレベータ11では、乗り場ドア26は、片開きの2枚扉であり、高速ドア43と、低速ドア44とを含んでいる。エレベータ11は、敷居27に一対に設けられた第1の敷居溝28および第2の敷居溝28を有している。第1の敷居溝28は、高速ドア43に対応している。また、第2の敷居溝28は、低速ドア44に対応している。
【0028】
高速ドア43は、開閉時のストロークが大きくなっており、第1の敷居溝28の全長に渡ってスライドすることができる。これに対して、低速ドア44は、開閉時のストロークが小さくなっており、第2の敷居溝28の全長に対して半分の長さだけスライドする。
【0029】
図6に示すように、本実施形態では、第1から第3の溝内レール51〜53が用いられる。第1から第3の溝内レール51〜53は、第1の実施形態のものとそれぞれ同一の形態を有する。ただし、第2の溝内レール52および第3の溝内レール53は、第1の実施形態の溝内レール31の半分の長さである。
【0030】
第1の溝内レール51は、第1の敷居溝28の内側に配置されている。第1の溝内レール51は、底壁51Aを第1の敷居溝28の底部28Aに密着させた状態で敷居溝28内に配置されている。これによって、高速ドア43の摺動部36が第1の敷居溝28内から浮き上がることがなく、高速ドア43が第1の敷居溝28から脱落してしまう事態が防止される。
【0031】
また、第2の溝内レール52および第3の溝内レール53は、第2の敷居溝28の内側に直列的に配置されている。第2の溝内レール52は、係合壁52Cを第2の敷居溝28の底部28Aに密着させた状態で第2の敷居溝28に装着されている。第2の溝内レール52は、第2の敷居溝28のうち、低速ドア44がスライドしない領域に配置されており、この領域を蓋状に覆っている。
【0032】
第3の溝内レール53は、第1の溝内レール51と同じ向き、すなわち底壁を第1の敷居溝28の底部28Aに密着させる向きで敷居溝28内に配置されている。第3の溝内レール53は、低速ドア44が実際にスライドする領域に配置されており、低速ドア44の摺動部36が第2の敷居溝28から浮き上がることを防止する。
【0033】
第3の実施形態によれば、溝内レール52は、係合壁52Cを敷居溝28の底部28Aに密着させた状態で敷居溝28に装着可能である。この構成によれば、敷居溝28のうち、乗り場ドア26がスライドしない位置において、敷居溝28内に異物が挟まることを防止することができる。また、乗り場ドア26が閉じた状態において、敷居溝28周囲の意匠性を向上することができる。
【0034】
本発明のエレベータは、前記実施の形態に限定されるものではない。このほか、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
11…エレベータ、12…昇降路、26…乗り場ドア、28…敷居溝、31…溝内レール、31A…底壁、31B…側壁、31C…係合壁、35…ガイドシュー本体、36…摺動部、41…一方の端部、42…他方の端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り場ドアと、
前記乗り場ドアの下部から突出するガイドシュー本体と、
前記ガイドシュー本体の先端に設けられるとともに前記ガイドシュー本体から厚み方向に突出して設けられる摺動部と、
前記乗り場ドアの下方の位置で前記摺動部を内側に保持するとともに、開閉する前記乗り場ドアを案内する敷居溝と、
前記敷居溝の底部に密着する底壁と、前記底壁の両端部から立ち上がるとともに前記敷居溝の側部に密着した側壁と、前記側壁の前記底壁に隣接した一方の端部とは反対側の他方の端部に設けられるとともに、前記摺動部の上部と係合して前記摺動部が前記敷居溝から浮き上がることを阻止する係合壁と、を有する溝内レールと、
を具備することを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
前記側壁は、前記一方の端部から前記他方の端部に向けて拡開したことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記溝内レールは、前記係合壁を前記敷居溝の底部に密着させた状態で前記敷居溝に装着可能であることを特徴とする請求項2に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記溝内レールは、合成樹脂によって一体に形成されることを特徴とする請求項2に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記溝内レールは、金属素材によって一体に形成されることを特徴とする請求項2に記載のエレベータ。
【請求項6】
前記溝内レールは、曲げ加工または押出しにより形成されることを特徴とする請求項5に記載のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−131970(P2011−131970A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291244(P2009−291244)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】