説明

エレベータ

【課題】故障号機から出力されるかご位置パルスが異常である場合、故障号機のかごの正確な停止位置を取得できない。
【解決手段】一実施形態によれば、かご5、24と、反射板39、40と、側壁面17、51に光軸を向けた光ビームを投光し、側壁面17、51及び反射板40、39により反射された光を受光する反射型のセンサ6、36と、センサ6、36をオンオフ駆動し、受信光の光量の変化及びこの受信光の入射角の変化を検知するセンサ制御回路37、38と、各かご5、24を昇降駆動し各かご位置信号を出力する巻上機7、28と、エレベータ号機1、2の運転制御を行い、かご24を被救出かごとし、かご5を救出かごとして救出運転を行う運転制御部9、27とを備え、運転制御部9はセンサ6から投射光ビームを出力させながらかご5を走行させ、センサ6が光量の変化及び入射角の変化を検知した位置でかご5を停止させるエレベータが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一実施形態はエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のエレベータ号機が併設されたエレベータでは、何れかのエレベータ号機において例えば故障といった異常により乗客の閉じ込めが発生した場合、隣接する号機(エレベータ号機)のかごが、故障した号機のかごの停止位置へ着床する。隣接号機のかごが故障号機のかごに閉じ込められた人をサイド救出扉より救出するオペレーション(自動救出運転)を実行するようにしている。従来、エレベータは、故障号機がかご位置を示すかご位置パルス信号を救出号機に通知し、救出号機のかごが故障号機のかご位置に移動することで位置合わせを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−119102号公報
【特許文献2】特開2008−120558号公報
【特許文献3】特開2004−123315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の従来技術では、故障号機から出力されるかご位置パルス信号が異常である場合、故障号機のかごの正確な停止位置を取得できない。故障号機からかご位置パルス信号が出力されなくなった場合、このかごの停止位置を取得できない。救出号機の運転制御装置は故障号機からのかご位置パルス信号を用いてこの救出号機のかごの位置を故障号機のかごの位置に正確に合わせることができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するため、本発明の一実施形態によれば、同一の昇降路空間に設けられた複数の昇降路を昇降し、それぞれ救出口を有する複数のかごと、これらのかご毎に各かご外側に設けられた光の反射板と、前記複数のかご毎に設けられ、それぞれ前記昇降路空間内の側壁面に光軸を向けた光ビームを隣の昇降路を横切って投光し、前記側壁面および前記反射板により反射された光を受光する反射型のセンサと、これらのセンサをオンオフ駆動し、各センサによる受信光の光量の変化及び前記受信光の入射角の変化を検知する前記かご毎に設けられたセンサ制御回路と、前記各かごを昇降駆動するとともに各かごのかご位置信号を出力する前記複数の昇降路毎に設けられた巻上機と、前記巻上機および前記センサ制御回路との間で制御信号を授受し各エレベータ号機の運転制御を行い、それぞれ前記かご位置信号の異常を出力する異常号機のかごを被救出かごとし、何れかの正常号機のかごを救出かごとして救出運転を行う機能を持つ複数の運転制御部と、を備え、これらの運転制御部のうち、前記救出かごの運転制御部は、この救出かごの前記センサから投射光ビームを出力させながら前記救出かごを走行させ、前記センサ制御回路が前記光量および前記入射角の変化を検知した位置で前記救出かごを停止させることを特徴とするエレベータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の実施の形態に係るエレベータの概略的な構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るエレベータによる受信光の光量の変化及び入射角の変化の検知方法を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るエレベータに用いられる運転制御装置の構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るエレベータによるかご位置信号の異常検知時の制御を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係るエレベータによる自動救出運転方法を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係るエレベータによる受信光の光量変化の検知方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態に係るエレベータについて、図1乃至図6を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0008】
図1は本発明の実施の形態に係るエレベータの概略的な構成図である。本実施形態に係るエレベータは、エレベータ号機1と、エレベータ号機2とを同一の昇降路空間3に併設している。
【0009】
エレベータ号機1は、昇降路空間3内の昇降路4aを昇降し救出口を有するかご5と、このかご5に設けられ、側壁面17に光軸を向けた光電式センサ6(反射式のセンサ)と、この光電式センサ6をオンオフ駆動するセンサ制御回路37と、かご5を昇降駆動する巻上機7と、センサ制御回路37の動作を監視しかご5内の動作を制御するかご側制御装置8と、これらの巻上機7及びかご側制御装置8との間で制御信号を授受し、エレベータ号機1の運転制御を行う運転制御装置9(運転制御部)と、巻上機7により回転駆動されるメインシーブ10と、それぞれメインシーブ10に巻掛けられかご5を吊下げるメインロープ11(ロープ)と、メインロープ11により吊下げられかご5の昇降方向と逆方向に移動するカウンターウェイト(C/W)12とを備えている。
【0010】
かご5は、上部に2つのカーシーブ13を設けたかご枠14と、このかご枠14により囲まれるかご室15と、非常時に救出口となるサイド救出扉16と、反射面を側壁面17に向けた状態でかご枠14に設けられた赤外線の反射板39とを備える。かご枠14の外に図示しないテールコードが導かれ、かご側制御装置8及び運転制御装置9間で通信可能にされている。かご室15には情報を報知するための表示器やスピーカが設けられている。サイド救出扉16は例えば踏板や、この踏板を開閉自在に支持するアーム及び蝶番などを有し、隣接するかご24のサイド救出扉が開放されたときに踏板を倒した状態にして救出扉間を橋渡しする。反射板39はかご24に取付けられた光電式のセンサからの光ビームを反射する。
【0011】
光電式センサ6は、昇降路空間3内の側壁面17に水平に投射光ビームを隣の昇降路4bを横切って投光する投光器と、側壁面17からの反射光及びかご24の反射板40からの反射光を受光する受光器とを有する。光電式センサ6はかご枠14の下端部に設けられている。光電式センサ6の取付け位置の高さは、かご24の高さとかご5の高さとが同じであるときに、投射光ビームがかご24のかご枠31の下端部を照射する位置に合わせられている。
【0012】
図2は光電式センサ6による受信光の光量の変化及び入射角の変化の検知方法を説明するための図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。光電式センサ6は、光の窓を有する筐体6aと、赤外線の波長領域を持つ光ビームを出力する投光器41と、投光器41が出射する光ビームを収束し対象43に投光するレンズ44と、対象43により反射された光を集光するレンズ45と、レンズ45からの光を受光し赤外線の波長領域に受信感度を有する受光器46と、受光器46の出力電流の差分による演算を行う演算回路50と、これらの投光器41、受光器46及び演算回路50を電気的に接続する基板47とを備える。対象43とは、位置Bに示すようにかご5がかご24の横に並んだときのこのかご24の検出板40と、位置Aに示すようにかご24が存在しないときの側壁面17とを指す。
【0013】
レンズ44から右を見て検出板40が存在しない場合、光ビームは側壁面17により反射してレンズ45に集まる。レンズ44から右を見て検出板40が存在する場合、光ビームはこの検出板40により反射してレンズ45に集まる。受光器46は、高さ方向中央を通る面を境にして上下に分割配置された第1受光部48、第2受光部49を有する。第1受光部48は1以上のフォトダイオードからなる。第2受光部49も1以上のフォトダイオードからなる。即ち受光器46は2分割型のフォトダイオード構成を有する。これらの第1受光部48及び第2受光部49上には、反射光の光スポットが形成される。第1受光部48は主に検出板40からの強度の大きい反射光を受光する。第2受光部49は側壁面17から反射光を受光する。演算回路50は、光電式センサ6の状態が、第2受光部49の受光強度が大きく第1受光部48の受光強度が小さい状態と、第2受光部49の受光強度が小さく第1受光部48の受光強度が大きい状態とのうちの何れかであるかをモニタしている。演算回路50は出力電流により状態を常時モニタしている。
【0014】
図1のセンサ制御回路37は、側壁面17からの反射光及び隣接かご24からの反射光を含む受信光の光量の変化及び受信光の入射角の変化を検知する。センサ制御回路37は受信光の光量及び入射角の変化が生じたことをかご側制御装置8へ通知する。
【0015】
また、巻上機7はメインロープ11を巻上げ及び巻戻す昇降駆動を行い、かご5のかご位置パルス信号(かご位置信号)を出力する。この巻上機7は、モータ軸を有する巻上モータ18と、このモータ軸に取付けられたパルス発生器19とを有する。この巻上モータ18のモータ軸にはメインシーブ10が取付けられている。このメインシーブ10に巻掛けられるメインロープ11は、2つのカーシーブ13と、それぞれカウンターウェイト12の上部に設けられたカウンターウェイトシーブ20との間に掛渡されており、メインロープ11の両端部は昇降路空間3の上端のロープヒッチ21に固定されている。パルス発生器19はパルスジェネレータ及び符号化器からなりかご位置パルスを運転制御装置9へ出力するようになっている。
【0016】
かご側制御装置8は、運転制御装置9からの指令により、センサ制御回路37を介して光電式センサ6に検出動作を始めさせる。
【0017】
図3は運転制御装置9の構成例を示す図である。同図には運転制御装置9の周辺機器も示されており、既述の符号はそれらと同じ要素を表す。運転制御装置9は、かご側制御装置8及び各階の乗場呼び登録装置22からの信号によりかご5の運行を制御する運行制御部9aと、この運行制御部9aに対して、巻上機10からのかご位置パルス信号及び記憶部9bに記憶された各階床の高さ情報に基づき演算したかご5のかご位置信号を出力するかご位置検出部9cと、信号ケーブル23を介してかご5のかご位置信号をエレベータ号機2側の運転制御装置9へ送信し、エレベータ号機2側のかご位置信号を受信する送受信部9dとを備えている。
【0018】
この運行制御部9aは自動救出オペレーションの実行を統括する。運行制御部9aはかご5を救出かご又は被救出かごとして割当てる。かご位置検出部9cはかご5の移動に合わせてかご位置パルスの数を計数しており、この計数値と、出発前のかご5のかご位置情報とによって、走行中のかご5のかご位置情報を演算出力している。送受信部9dが隣接する運転制御装置27からかご位置パルス信号を受信しないこと、あるいは異常値を受信することなどによって、エレベータ号機2側のかご位置パルス信号の出力の異常を運行制御部9a又はかご位置検出部9cは検知する。
【0019】
また、図1において、エレベータ号機1に隣接するエレベータ号機2は、昇降路4bを昇降し救出口を有するかご24と、このかご24に設けられ、側壁面51に光軸を向けた光電式センサ36と、この光電式センサ36をオンオフ駆動し、受信光の光量の変化及びこの受信光の入射角の変化を検知するセンサ制御回路38と、かご24を昇降駆動する巻上機25と、センサ制御回路38の動作を監視しかご24内の動作を制御するかご側制御装置26と、これらの巻上機25及びかご側制御装置26との間で制御信号を授受し、エレベータ号機2の運転制御を行う運転制御装置27(運転制御部)と、巻上機25により回転駆動されるメインシーブ28と、それぞれメインシーブ28に巻掛けられかご24を吊下げるメインロープ29(ロープ)と、メインロープ29により吊下げられかご24の昇降方向と逆方向に移動するカウンターウェイト30とを備えている。
【0020】
かご24は、かご枠31と、このかご枠31により囲まれるかご室32と、非常時の救出口であるサイド救出扉33と、反射面を側壁面51に向けた反射板40とを備える。かご枠31外にテールコードにより、かご側制御装置26及び運転制御装置27間で通信可能になっている。かご室32には表示器やスピーカが設けられており、表示器やスピーカをかご側制御装置26が制御する。
【0021】
光電式センサ36も、側壁面51に水平に投射光ビームを隣の昇降路4aを横切って投光する投光器41と、反射光を受光する受光器46とを有する。光電式センサ36は赤外線の光ビームを送受信し、かご枠31の下端部に設けられている。
【0022】
センサ制御回路38は、側壁面51からの反射光及び隣接かご5からの受信光の光量の変化及び受信光の入射角の変化を検知する。センサ制御回路38は受信光の光量及び入射角の変化が生じたことをかご側制御装置26へ通知する。
【0023】
巻上機25は、メインシーブ10が取付けられた巻上モータ34と、巻上モータ34のモータ軸に取付けられたパルス発生器35とを有する。パルス発生器35は、モータ軸の回転速度に応じて変調されたパルスの数やパルス幅を持つかご位置パルス信号を運転制御装置27へ出力している。
【0024】
運転制御装置27はかご24のかご位置パルス信号が取得できる間、軽度の故障であると判定し、かご24を最寄階又は特定指定階(避難階)へ移動させる運転を実行する。運転制御装置27はかご位置パルス信号を受信できない場合、重度の故障が発生したと判定し、かご24を被救出かごとして割当てる。運転制御装置27は運転制御装置9の構成と実質同じ構成を有し、これらの機能以外の機能について運転制御装置27は運転制御装置9の機能と実質同じ機能を実行する。
【0025】
図4は本実施形態に係るエレベータによるかご位置パルス信号の異常検知時の制御を説明するためのフローチャートである。以下、エレベータ号機1が正常であり、エレベータ号機2側に異常が発生するものとして説明する。
【0026】
上述の構成の本実施形態に係るエレベータが稼動中、ステップA1において、運転制御装置9、27はそれぞれエレベータの運転モードを通常運転モードに設定する。エレベータ号機1、2の運行が開始する。パルス発生器19はモータ軸の一回転毎に数千個など決められた個数のかご位置パルス信号を出力する。通常運転時では、運転制御装置9はパルス発生器19よりかご5のかご位置パルス信号を通知される。運転制御装置9は、かご呼び及び乗場呼びに応じて巻上機7を回転させる。運転制御装置9はかご5のかご位置パルス信号を運転制御装置27へ送信し、この運転制御装置27よりかご24のかご位置パルス信号を受信する。また、このステップA1において、運転制御装置27はパルス発生器35よりかご24のかご位置パルス信号を通知される。運転制御装置27はかご呼び及び乗場呼びに応じて巻上機7を回転駆動する。運転制御装置27はかご24のかご位置パルス信号を運転制御装置9へ送信し、この運転制御装置9よりかご5のかご位置パルス信号を受信する。ステップA1では、運転制御装置9、27は何れも異常の発生の有無を常時監視している。
【0027】
ステップA2において、運転制御装置9は、例えばかご位置パルス情報や、かごドアの故障や、停電、電源系の異常についての有無により異常の発生の有無を判断する。
【0028】
ステップA3においてエレベータ号機2の異常を運転制御装置9が検知した場合、Yesルートを通り、ステップA4において、運転制御装置9は、隣接号機のかご24のかご位置パルス信号を取得できるかどうかを判定する。かご位置パルス信号を取得できる場合、運転制御装置9、27は軽度の故障と判定し、Yesルートを通り、ステップA5において、かご24を最寄階又は特定指定階へ移動させる運転を開始する。このステップA5において、故障号機のかご24にメンテナンス員が乗車する。運転制御装置27はかご24を走行させる。メンテナンス員は乗客を救出する作業を行う。
【0029】
ステップA4において、運転制御装置9が運転制御装置27よりかご位置パルス信号を取得できない場合、重度の故障と判定し、Yesルートを通り、運転制御装置9は、ステップA6において光電式センサ6を用いた救出運転を開始する。運転制御装置9はかご24を被救出かごとし、かご5を救出かごとして割当てる。運転制御装置9はかご5の昇降速度を低速度に設定する。
【0030】
図5は本実施形態に係るエレベータによる自動救出運転方法を説明するためのフローチャートである。
【0031】
ステップB1において、運転制御装置9は自動救出運転を開始すると、全てのかご呼び、ホール呼びをキャンセルする。運転制御装置9はかご5を避難階へ直行させる。避難階は例えば玄関階である。予め保持された避難階情報を記憶部9cから運転制御装置9は読出す。
【0032】
ステップB2において、運転制御装置9は避難階での戸閉を行う。運転制御装置9からの指令を受けると、かご側制御装置8は光電式センサ6への電源を投入する。光電式センサ6は、昇降路空間3の側壁面17へ向けて投射光ビームを送信し始める。
【0033】
昇降路4aからの光ビームは隣接する昇降路4bへ出力され、側壁面17において反射した反射ビームが光電式センサ6に届く。運転制御装置9はかご5の低速運転を開始する。かご5は、光ビームの送信及び反射光の受信を行いながら、低速度、例えば点検運転時の走行速度と同等の低速度で上昇し始める。
【0034】
ステップB3において、運転制御装置9は、センサ制御回路37、かご側制御装置8を介して受信光の受光量の変化及び受信光の入射角の変化の有無を判定する。かご5が避難階から上昇中、受光量の変化、受信光の入射角の変化が生じない間、Noルートを通り、変化の有無の判定処理を続ける。
【0035】
ステップB3において、光量及び入射角の変化を運転制御装置9が検知すると、Yesルートを通り、運転制御装置9はかご24からの反射光を受信したと判定し、ステップB4において、検知された位置にてかご5を停止させる。
【0036】
図6は光量変化の検知方法の一例を説明するための図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。投光器41は投光しつつ上昇を開始する。側壁面17により反射された光を受光部46が集光する。第2受光部49上に光スポットが形成されている。図2、図6のように、高さ方向中央の位置F1に光スポットが形成される。第1受光部48および第2受光部49の受光量による出力電流の大きさは等しい。例えば演算回路50が、第1受光部48からの出力電流の大きさから、第2受光部49からの出力電流の大きさを差し引く演算を行う。センサ制御回路37は演算回路50からの差分値と、予め保持する閾値とにより反射光が側壁面17からのものであると判定する。
【0037】
次に、かご5の高さがかご24の高さと同じになると、光電式センサ6は検出板40により反射された光を受光する。第1受光部48上に光スポットが移動する。図2のように、光スポットは受光器46上で位置F1から位置F2まで距離ΔLだけ移動する。距離ΔLに応じて第1受光部48の受光量を示す出力電流と、第2受光部49の受光量を示す出力電流との差を演算回路50は求める。レンズ44の位置と、その位置における検出板40からの反射光の光量との関係を、演算回路50は三角測量法を用いた演算式により求める。三角測量法の演算式や位置及び受光量の値の間を対応づけたメモリテーブルを参照することにより検出板40から反射光を受光したことをセンサ制御回路37は検知する。センサ制御回路37はかご側制御装置8へ検知を通知する。
【0038】
引き続き図5のステップB5において、運転制御装置9は例えばかご室15内の表示器へ作業開始を表示させること、あるいはスピーカから作業開始を音声出力するなどして作業開始を報知する。メンテナンス員は現状のかご5の停止位置を確認した上で、かご5のサイド救出扉16を開く。昇降路空間3にメンテナンス員が入って踏板をかご24のサイド救出扉33に橋渡し、かご5、24間で手摺りなどを踏板の上方に掛渡す。メンテナンス員による誘導によって、かご24内の乗客はかご5へと移動する。安全な救出作業により全ての乗客が救出される。
【0039】
ステップB6において、メンテナンス員はかご側制御装置8を操作し、運転制御装置9に救出完了を通知する。ステップB6では、運転制御装置9はかご5を避難階へ直行させる。避難階において運転制御装置9は戸開する。乗客は安全に移動する。自動救出オペレーションが完了する。
【0040】
以上の説明は、かご5が救出かごであり、異常が発生したエレベータ号機2のかご24が被救出かごである場合の例である。異常がエレベータ号機1側に発生した場合、本実施形態に係るエレベータは運転制御装置9、27の動作を相互に入れ替えて動作させる。運転制御装置27がかご24の光電式センサ36を駆動し、この光電式センサ36は昇降路空間3内の他の側壁面51へ向けて投射光ビームを走査することによって、かご5、24をそれぞれ被救出かご、救出かごとしてかご5内の乗客を救出する救出オペレーションを実行する。
【0041】
災害時の停電の発生や、あるいは故障によりパルス発生器19、35の何れかからのかご位置パルス信号が使用できなくなったときでも、本実施形態に係るエレベータによれば、光電式センサ6、36による走査によって正確に故障号機のかご位置を把握することができ、自動で故障号機のかご5、24の何れの乗客の救出を行うことができる。
【0042】
受信光の光量の変化及び入射角の変化を用いて検出するため、検出物体の色が変化しても光電式センサ6の動作への影響は少ない。光電式センサ6は、予め設定した距離よりも後方に存在する背景物体を検出しない。光電式センサ6は、反射板40の検出中、他の物体の動きによる影響を受けない。光電式センサ6は安定した検出動作を続けられる。
【0043】
仮に投光器及び受光器をそれぞれかご5、かご24に別々に設け、かご24の受光器がかご5からの投射光ビームを受信してかご24の存在を検知する手法を用いると、かご24側の電気系障害の発生により、かご24のかご位置を取得不能な状況に陥ることが起こりうる。自動救出オペレーションによってかご24に閉じ込められた乗客を救出できない。これに対して、本実施形態に係るエレベータによれば、一つのかご5に投光及び受光の機能を設けているため、万一の電気系障害が発生したとしても、救出号機は故障号機のかご高さ位置を取得することができる。
【0044】
また、光電式センサ6、36は赤外線を用いて検出を行っているため、昇降路空間3内のほこりや塵が存在していても、反射光が散乱せずに反射光レベルを維持できる。これにより、ほこりや塵による赤外線の散乱に対する検出精度の劣化の影響を受けにくく正確な救出オペレーションを実行できる。
【0045】
また、光電式センサ6、36はそれぞれかご枠14、31の下端部に設けられていたが、光電式センサ6、36はそれぞれかご枠14、31の上端部に設けてもよい。この場合、運転制御装置9、27は、かご5、24を上階から下降させる。受信光の光量及び入射角の変化をセンサ制御回路37が検知してかご5を停止させることによって、運転制御装置9はかご5の床面とかご24の床面とを一致させる。運転制御装置27による制御の例もこれと同様である。
【0046】
あるいは光電式センサ6、36はそれぞれかご室15、32を構成する側板の外壁面側に取付けてもよい。この場合、運転制御装置9及び転制御装置27は、かご高さに対する光電式センサ6、36の取付け高さや反射板39、40の高さに応じてかご高さレベルの位置合わせを行う。
【0047】
このように、かご5の光電式センサ6及びかご24の光電式センサ36は、側壁面17からの反射光の受光レベルと、反射板40からの反射光の受光レベルとの比を大きくとれるため、検出が確実に行える。
【0048】
このようにして、エレベータ号機2から出力されるかご位置パルス信号が異常となったとしても、エレベータ号機1の運転制御部9は救出に使うかご5の位置をかご24に正確に合わせられる。
【0049】
(変形例)
上記実施形態では、かご5を点検運転時の低速度で走行させるため、光量の変化等を検知後、短い時間でかご5を停止させることができていた。本発明の実施の形態に係るエレベータは、かご5の走行速度を、ノーマル速度で移動させながら自動救出運転を実行するようにしてもよい。本発明の一実施形態の変形例に係るエレベータは、光電式センサ6、36をそれぞれかご枠14、29の各上端部に設置する。この点以外の構成は、図1のエレベータと同様である。
【0050】
このような構成により、運転制御装置9は自動救出運転のオペレーションを開始する。避難階にかご5を直行させた後、運転制御装置9はかご5側に光電式センサ6を駆動させる。光電式センサ6は、昇降路空間3の側壁面17へ向けて光ビームを送信し反射光を受信する。この状態で、運転制御装置9はかご5を、点検運転時の速度よりも速いノーマル速度で上昇させて、かご24の下端部を検出する動作を行う。図4のフローチャートのステップB3で受信光の光量や入射角に変化が生じた後、かご5はすぐには停止することができないため、運転制御装置9は、光電式センサ6のかご5の床面に対する位置とこの床面との間の距離を上昇し終えるタイミングでかご5を停止させるように制御する。例えば2メートル程度かご5は走行する。
【0051】
光電式センサ6が光量の変化等を検出した瞬間のかご5の位置から、約2メートルをかご5が上昇しその後かご5が停止する。2メートル程度の余裕をもってかご5を停止させるため、運転制御装置9はノーマル速度でかご5を走行させることができる。かご24のかご位置検出に要する時間の短縮が図れるようになる。
【0052】
また、運転制御装置9、27の動作を相互に入れ替えて動作させてもよい。
【0053】
換言すれば、この変形例では、エレベータ号機1、2がそれぞれ着検板を使って各階への着床制御を行う場合と同じ動作により運転制御装置9が制御を行える。
【0054】
また、光電式センサ6、36はそれぞれかご枠14、31の上端部に設けられていたが、光電式センサ6、36をそれぞれかご枠14、31の下端部に設けてもよい。この場合、運転制御装置9、27は、かご5、24を上階から下降させる。光電式センサ6のかご5の床面に対する位置とこの床面との間の距離を下降し終えるタイミングでかご5を停止させる制御が行われる。
【0055】
あるいは光電式センサ6、36を各かご側板の外壁面側に取付けて、かご高さに対する光電式センサ6、36の取付け高さに応じてかご高さレベルの位置合わせを行ってもよい。反射板を壁面に設けてもよい。
【0056】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記の実施形態では、エレベータ号機1、2の間で、かご位置パルス信号を直接、送受信していたが、エレベータ号機1、2の上位装置である群管理制御装置を経由してかご位置パルス信号を運転制御装置9、27間で送受信してもよい。
【0057】
また、エレベータ号機の数は3以上でもよい。3以上の運転制御装置は互いに自機のかご位置パルス信号を通知し合い、何れかのエレベータ号機からのかご位置パルス信号の異常となった場合、他のエレベータ号機の運転制御装置あるいは群管理制御装置が救出号機を割当てる。その後のエレベータの動作は上記実施形態の例と同じである。
【0058】
また、光電式センサ6の投光器41は可視光帯域の波長を持つレーザ光源を用いてもよく、受光器46は発光帯域に対応させた受光素子を用いる。光電式センサ6は光を集めるためのレンズや、ミラーなどを備えてもよい。
【0059】
光電式センサ6の代わりに、超音波を送受信する超音波式のセンサを用いてもよい。この超音波式センサは、超音波の発振器と、反射波の受信器と、超音波の発信から受信までの時間差を利用して対向するかご5による音波の音圧レベルの強度変化を検出する検出器と、ビーム収束用のレンズとを備える。
【0060】
かご5、24はそれぞれサイド救出扉16、33をかご側部に設けていたが、かご5、24は救出口をかご室背面側やかご室の天井側に設けてもよい。
【0061】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1,2…エレベータ号機、3…昇降路空間、4a、4b…昇降路、5,24…かご、6,36…光電式センサ(反射式のセンサ)、7,25…巻上機、8,26…かご側制御装置(かご側制御部)、9,27…運転制御装置(運転制御部)、9a…運行制御部、9b…記憶部、9c…かご位置検出部、9d…送受信部、10,28…メインシーブ、11,29…メインロープ、12,30…カウンターウェイト、13…カーシーブ、14,31…かご枠、15,32…かご室、16,33…サイド救出扉(救出口)、17,51…側壁面、18,34…巻上モータ、19,35…パルス発生器、20…カウンターウェイトシーブ、21…ロープヒッチ、22…乗場呼び登録装置、23…信号ケーブル、37,38…センサ制御回路、39,40…反射板、41…投光器、43…対象、44,45…レンズ、46…受光器、47…基板、48…第1受光部(フォトダイオード)、49…第2受光部(フォトダイオード)、50…演算回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の昇降路空間に設けられた複数の昇降路を昇降し、それぞれ救出口を有する複数のかごと、
これらのかご毎に各かご外側に設けられた光の反射板と、
前記複数のかご毎に設けられ、それぞれ前記昇降路空間内の側壁面に光軸を向けた光ビームを隣の昇降路を横切って投光し、前記側壁面および前記反射板により反射された光を受光する反射型のセンサと、
これらのセンサをオンオフ駆動し、各センサによる受信光の光量の変化及び前記受信光の入射角の変化を検知する前記かご毎に設けられたセンサ制御回路と、
前記各かごを昇降駆動するとともに各かごのかご位置信号を出力する前記複数の昇降路毎に設けられた巻上機と、
前記巻上機および前記センサ制御回路との間で制御信号を授受し各エレベータ号機の運転制御を行い、それぞれ前記かご位置信号の異常を出力する異常号機のかごを被救出かごとし、何れかの正常号機のかごを救出かごとして救出運転を行う機能を持つ複数の運転制御部と、を備え、
これらの運転制御部のうち、前記救出かごの運転制御部は、この救出かごの前記センサから投射光ビームを出力させながら前記救出かごを走行させ、前記センサ制御回路が前記光量および前記入射角の変化を検知した位置で前記救出かごを停止させることを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
前記センサは赤外線を投受光することを特徴とする請求項1記載のエレベータ。
【請求項3】
前記センサは、かご枠の上端部又は下端部に設けられたことを特徴とする請求項1記載のエレベータ。
【請求項4】
前記センサは、前記光ビームの投光器と、前記受信光の光スポットが移動する方向に沿ってそれぞれ配列された複数のフォトダイオードを有する受光器とを有し、
前記センサ制御回路は、これらのフォトダイオードからの出力電流の大きさにより前記被救出かごの存在を検知することを特徴とする請求項1記載のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−144328(P2012−144328A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3901(P2011−3901)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】