説明

エンジンの吸気制御装置

【課題】吸気制御弁によってエンジンの体積効率を向上させ、エンジン出力を高めながら、これに伴うノッキングの発生を抑制できるエンジンの吸気制御装置を提供する。
【解決手段】吸気弁40上流の吸気通路14内に該吸気通路を遮断可能な吸気制御弁50を有すると共に、エンジン運転状態に応じて吸気制御50弁の作動状態を制御する吸気制御弁制御手段60を備え、吸気制御弁制御手段60は、エンジンの低負荷運転領域では、吸気制御弁50を常時開放する制御弁非作用モードを実施し、エンジンの高負荷運転領域では、吸気行程の開始以降から吸気行程の終了付近までの期間内のみで吸気制御弁50を開放して、吸気圧力脈動を発生させる制御弁作用モードを実施し、この時には、吸気圧力脈動により生じる圧力差が最大となる開放タイミングよりも進角させた進角開放タイミングで吸気制御弁50の開放を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気圧力脈動を発生させる吸気制御弁をそなえたエンジンの吸気制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(以下、エンジンともいう)において、エンジン単体での燃費向上のためには、圧縮比を高めることが有効であるが、圧縮比を高めると、高負荷域でノッキングが発生してしまう。このノッキングを回避するには、例えば遅閉カムを採用するなどして吸気弁の閉弁タイミングを遅延させて、高負荷域では実際の実圧縮比を減らして運転する必要が生じる。
【0003】
しかし、吸気弁の閉弁タイミングを遅延させることによって実圧縮比を低減させると、筒内〜吸気ポート側への吸気の吹き返しが発生し、これにより筒内の新気量が確保できなくなり、体積効率が低下して、通常の吸気弁の閉弁タイミングに比べてエンジンの出力トルクが低下してしまう。
この出力トルク低下を改善する方法として、例えば特許文献1等には、各気筒の吸気弁とサージタンクの間のインテークマニホールド等の吸気通路にこの吸気通路を遮断可能な吸気制御弁(インパルスバルブとも言う)を設け、この吸気制御弁を吸気行程中に適切なタイミングで開閉制御することにより、気筒別の吸気通路内に圧力脈動を生じさせ、機関の充填効率を向上させる技術が記載されている。この技術では、機関の低負荷時等の過給が不要な状況では吸気制御弁は常に開状態とする常時開モードを実行し、機関の高負荷時等の過給が必要な状況では吸気制御弁の開閉制御により充填効率を高める充填効率向上モードを実行する。
【0004】
特許文献1には、さらに、加速時等に常時開モードから充填効率向上モードへと移行した最初のサイクルでは、過給効果により機関の充填効率は高められるものの、残留ガスの掃気効果は得られないことから、混合気の温度は高くなり高負荷かつ高温な状態が発生し、一時的なノッキング発生の懸念がある点に着目し、このモード過渡期におけるノッキング発生のおそれを回避する技術も提案されている。
【0005】
この技術は、充填効率向上モードでは、吸気行程の途中から吸気制御弁を開き、吸気行程の終期に吸気制御弁を閉じ、この弁閉時期は、圧力振動が最大圧となる時点に設定すれば大きな過給効果を得られるが、常時開モードから充填効率向上モードへと移行した最初のサイクルでは、充填効率向上モードにおける通常の開閉時期に比較して、吸気制御弁の閉時期を僅かに遅角して、シリンダ内の過給圧を定常時の目標過給圧よりも低くし、負荷の増大を抑え、ノッキングの発生を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4396253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本願発明者らの研究により、充填効率向上モードにおいて、インパルスバルブによって最大限に体積効率を向上させると、上記のモード過渡期でなくてもノッキングが発生しうることが判明した。本願発明者らは、このようなノッキングの発生現象について研究を重ねた結果、圧縮上死点温度が過剰に大きくなることがノッキングの原因であることを究明した。
【0008】
つまり、体積効率を向上させるためには、インパルスバルブの開時期を遅らせてインパルス反応(圧力変動)を強めれば、圧力脈動が強まり充填効率を向上させることができより有効である。しかし、充填効率を高め過ぎると圧縮上死点温度が過剰に大きくなり、これに起因してノッキングが発生するものと考えられる。
この点、特許文献1の技術もノッキングの発生を抑えるものではあるが、特許文献1の技術のように、インパルスバルブの閉時期を僅角するには限度があり、この手法によってかかるノッキングの発生を抑えることは困難である。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑み創案されたもので、吸気制御弁(インパルスバルブ)によってエンジンの体積効率を向上させ、エンジン出力を高めるようにしながら、これに伴って生じ易いノッキングの発生を抑制することができるようにした、エンジンの吸気制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のエンジンの吸気制御装置は、吸気弁上流の気筒別の吸気通路内に該吸気通路を遮断可能な吸気制御弁を有すると共に、エンジンの運転状態に応じて前記吸気制御弁の作動状態を制御する吸気制御弁制御手段を備えたエンジンの吸気制御装置において、前記吸気制御弁制御手段は、前記エンジンの低負荷運転領域では、前記吸気制御弁を常時開放する制御弁非作用モードを実施し、前記エンジンの高負荷運転領域では、吸気行程の開始以降から該吸気行程の終了付近までの期間内で前記吸気制御弁を開放して、吸気圧力脈動を発生させる制御弁作用モードを実施し、前記制御弁作用モードの実施時には、前記吸気圧力脈動により生じる圧力差が最大となる開放タイミングよりも進角させた進角開放タイミングで前記吸気制御弁の開放を行なうことを特徴としている。
【0011】
前記エンジンのノッキングを検出するノッキング検出手段を備え、前記吸気制御弁制御手段は、前記ノッキング検出手段により前記エンジンのノッキングが検出されると、前記進角開放タイミングで前記吸気制御弁の開放を行ない、前記ノッキング検出手段により前記エンジンのノッキングが検出されないと、前記吸気圧力脈動により生じる圧力差が最大となる開放タイミングで前記吸気制御弁の開放を行なうことが好ましい。
【0012】
あるいは、前記高負荷運転領域が、高負荷側であってノッキングが発生しうる第1高負荷運転領域と、低負荷側であってノッキングが発生しにくい第2高負荷運転領域とに区分され、前記吸気制御弁制御手段は、前記エンジンの前記第1高負荷運転領域では、前記進角開放タイミングで前記吸気制御弁の開放を行ない、前記エンジンの前記第2高負荷運転領域では、前記吸気圧力脈動により生じる圧力差が最大となる開放タイミングで前記吸気制御弁の開放を行なうことも好ましい。
【0013】
前記進角開放タイミングは、前記吸気弁の最大リフトタイミングよりも進角させたタイミングであることが好ましい。
前記エンジンは、前記吸気制御弁の開放タイミングを進角させていくと前記エンジンの体積効率が遅角側の第1のピーク値よりも低い第2のピーク値を有するように遷移する特性を有し、前記進角開放タイミングは、前記第2のピーク値を与える開放タイミング又はこの近傍のタイミングであることが好ましい。
【0014】
前記制御弁作用モードによる前記吸気制御弁の閉鎖タイミングは、前記吸気行程の下死点若しくは前記下死点から僅かに遅角したタイミングであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエンジンの吸気制御装置によれば、吸気制御弁制御手段が、エンジンの低負荷運転領域では、吸気制御弁を常時開放する制御弁非作用モードを実施するので、吸気制御弁の影響を受けることなくエンジンが作動するが、エンジンの高負荷運転領域では、吸気行程の開始以降から該吸気行程の終了付近までの期間内のみで吸気制御弁を開放して、吸気圧力脈動を発生させる制御弁作用モードを実施するので、吸気圧力脈動を利用して、エンジンの充填効率を高めること、したがって、体積効率を高めることができる。
【0016】
制御弁作用モードでは、吸気圧力脈動を利用して体積効率を高める際、これに伴って、着火前の気筒内の温度が上昇し、これに起因してノッキングを生じやすいが、吸気行程の開始時点以降において、吸気圧力脈動により生じる圧力差が最大となる開放タイミングよりも進角させた進角開放タイミングで吸気制御弁の開放を行なうため、吸気圧力脈動により生じる圧力差が緩和されて、着火前の気筒内の温度上昇が抑制され、ノッキングの発生を抑制することができる。また、かかる進角開放タイミングで吸気制御弁の開放を行なっても、吸気圧力脈動による体積効率の向上効果は十分に得られる。
【0017】
ノッキング検出手段によりエンジンのノッキングが検出されると、進角開放タイミングで吸気制御弁の開放を行ない、エンジンのノッキングが検出されないと、吸気圧力脈動により生じる圧力差が最大となる開放タイミングで前記吸気制御弁の開放を行なえば、ノッキングの発生を抑制しながら、吸気圧力脈動による体積効率の向上効果をより一層得ることができる。
【0018】
また、高負荷運転領域を、高負荷側であってノッキングが発生しうる第1高負荷運転領域と、低負荷側であってノッキングが発生しにくい第2高負荷運転領域とに区分し、第1高負荷運転領域では、進角開放タイミングで吸気制御弁の開放を行ない、第2高負荷運転領域では、吸気圧力脈動により生じる圧力差が最大となる開放タイミングで吸気制御弁の開放を行なっても、ノッキングセンサに頼らずに、ノッキングの発生を抑制しながら、吸気圧力脈動による体積効率の向上効果をより一層得ることができる。
【0019】
進角開放タイミングを、吸気弁の最大リフトタイミングよりも進角させたタイミングとすれば、確実にノッキングの発生を抑制しながら、吸気圧力脈動による体積効率の向上効果を得られる。
エンジンは、吸気制御弁の開放タイミングを進角させていくとエンジンの体積効率が遅角側の第1のピーク値よりも低い第2のピーク値を有するように遷移する特性を有しており、進角開放タイミングを、かかる第2のピーク値を与える開放タイミング又はこの近傍のタイミングとすれば、ノッキングの発生抑制効果と、吸気圧力脈動による体積効率の向上効果とをより確実に得ることができる。
【0020】
制御弁作用モードによる吸気制御弁の閉鎖タイミングを、吸気行程の下死点若しくは前記下死点から僅かに遅角したタイミングとすれば、ノッキングの発生を抑制しながら、吸気圧力脈動による体積効率の向上効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る吸気制御装置を備えたエンジンのシステム構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る吸気制御装置による吸気制御弁の制御モードの割り付けを示すマップである。
【図3】本発明の一実施形態に係る吸気制御装置の吸気制御弁(インパルスバルブ)による効果を説明する図である。
【図4】吸気制御弁(インパルスバルブ)の開弁タイミング(開弁角)による体積効率の向上特性を示す図である。
【図5】吸気制御弁(インパルスバルブ)の開弁タイミング(開弁角)に応じた筒内圧の変動特性を示す図である。
【図6】吸気制御弁(インパルスバルブ)の開弁タイミング(開弁角)による着火前筒内温度の特性を示す図である。
【図7】吸気制御弁(インパルスバルブ)の開弁タイミング(開弁角)に応じた筒内温度の変動特性を示す図である。
【図8】吸気制御弁(インパルスバルブ)の開弁タイミング(開弁角)による筒内残留EGR量の特性を示す図である。
【図9】吸気制御弁(インパルスバルブ)の開弁タイミング(開弁角)によるプレチャンバー内圧の特性を示す図である。
【図10】実施例にかかる吸気制御弁(インパルスバルブ)の開閉タイミングとこれに対応した筒内圧の変動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて本発明にかかる一実施形態を説明する。
図1〜図10は本実施形態にかかる吸気制御装置及びそれを備えたエンジン(内燃機関)を示すもので、これらの図に基づいて説明する。なお、本実施形態では4サイクルガソリンエンジンに本装置を適用した例を示すが、本発明はガソリンエンジンに限らずディーゼルエンジン等への適用も可能である。
【0023】
〔吸気制御装置及びエンジンの構成〕
図1は実施形態に係る吸気制御装置を備えたエンジンのシステム構成図である。図1に示すように、エンジン2は、シリンダブロック2Aに設けられた複数のシリンダ(気筒)4と、各シリンダ4内を摺動するピストン6と、ピストン6とコネクティングロッド8を介して接続されたクランクシャフト10とを備えている。各シリンダ4内は下方をピストン6によって上方をシリンダヘッド2Bによって画成された燃焼室12を備え、燃焼室12には、吸気通路14及び排気通路16が接続されている。燃焼室12の中心部上面には、点火プラグ18が配置されている。
【0024】
吸気通路14は、上流側から吸気管22,吸気マニホールド24,吸気ポート26が接続され構成されており、吸気ポート26が燃焼室12に接続されている。吸気管22と吸気マニホールド24との間の吸気マニホールド24上流端部にはサージタンク28が備えられている。サージタンク28の上流の吸気管22の下流端部には、吸気通路面積を任意に調整可能なバタフライバルブ型のスロットルバルブ30がそなえられている。このスロットルバルブ30は、モータ等のスロットルバルブ駆動装置により開度が制御されるいわゆる電子制御スロットルバルブである。また、吸気ポート26には、燃料噴射弁20が配設され、エンジン負荷つまり吸入空気量に応じた量の燃料が噴射される。
【0025】
排気通路16は、上流側から排気ポート32,排気マニホールド34,排気管36が接続され構成されており、排気ポート32が燃焼室12に接続される。排気管36には、排気浄化触媒38が備えられている。吸気ポート26の燃焼室12への開口部には、ポペットバルブからなる吸気バルブ40が装備されており、排気ポート32の燃焼室12への開口部には、ポペットバルブからなる排気バルブ42が装備されている。
【0026】
これらの吸気バルブ40及び排気バルブ42は、図示しない動弁機構によってクランクシャフト10の回転に同期して開閉駆動される。吸気バルブ40は、ピストン6の吸気上死点の少し前に開弁し、吸気下死点の少し後に閉弁する。排気バルブ42も、ピストン6の排気下死点の少し前に開弁し、排気上死点の少し後に閉弁する。そして、排気バルブ42と吸気バルブ40とが同時に開弁するバルブオーバラップ期間が設けられている。
【0027】
各気筒の吸気マニホールド24には、吸気マニホールド24において吸気通路14を遮断し得る吸気制御弁50が設けられている。吸気制御弁50は、吸気制御弁駆動装置52によって1サイクル中の任意の時期に応答性良く開閉可能であり、例えば電磁石により開閉するフラップ弁あるいはバタフライバルブ型の弁などから構成されている。吸気制御弁50の配設位置は、吸気管長が慣性過給効果を得る上で最適となるように設定されている。
【0028】
この吸気制御弁50は、圧力脈動を利用して燃焼室12への空気の充填効率を向上させエンジン2の体積効率を向上させるものであるので、インパルスバルブとも呼ぶ。詳細は後述するが、エンジン2の出力が要求される高負荷運転時に、インパルスバルブ50を、その気筒の吸気行程の開始以降から吸気行程の終了付近までの期間内のみ開放して、吸気圧力脈動を発生させる。なお、インパルスバルブ50から、吸気バルブ40により閉鎖される吸気ポート26の燃焼室12への開口部までの吸気通路14の部分を、プレチャンバー(副室)54と呼ぶ。
【0029】
このインパルスバルブ50の開閉や、スロットルバルブ30の開度や、燃料噴射弁20からの燃料噴射量や、点火プラグ18の点火時期等を制御するエンジンECU(エンジンElectronic Control Unit)60が備えられている。エンジンECUは、周知のマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成される電子制御ユニットである。
【0030】
このエンジンECU60には、アクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出するアクセルポジションセンサ62からのアクセル開度情報、クランクシャフト10のクランク角度を検出するクランク角センサ64からのクランク角情報、ノッキングによるシリンダブロック2Bの振動を検出するノックセンサ(ノッキング検出手段)66の検出情報や、図示しないエアフローセンサからの吸入空気量情報などの信号が入力され、これらの入力された情報に基づいて、エンジンECU60は各部を制御する。なお、ノッキング検出手段は、ノッキングを検出する物であればノックセンサ66に限らない。
【0031】
つまり、エンジンECU60はアクセル開度情報に基づいてスロットルバルブ30の開度を制御し、吸入空気量情報に基づいて燃料噴射弁20からの燃料噴射量を制御し、クランク角情報に基づいて演算されるエンジン回転数Neとアクセル開度情報に基づいて演算されるエンジン負荷(ここでは、平均有効圧Peを用いる)とに基づいて、点火時期を制御する。また、後述の制御弁非作用モードによる運転時に、ノックセンサ66からノッキングの検出情報が入力されたら点火時期を遅角制御する。そして、インパルスバルブ50に対しては、エンジンECU60は、エンジン回転数Neとエンジン負荷Peとに基づいて、制御モードを設定して開閉を制御する。この場合、エンジンECU60は、吸気制御弁制御手段(インパルスバルブ制御手段)として機能する。
【0032】
〔吸気制御弁(インパルスバルブ50)の制御〕
ここで、本装置の特徴であるインパルスバルブ50の開閉制御について説明する。
図2はインパルスバルブ50の制御モードの割り付けを示すマップであり、図2に示すように、エンジン回転数Neとエンジン負荷Peとにより規定されるエンジン運転領域のうち、エンジン回転数Neが低中回転でエンジン負荷Peが高い領域(低回転高負荷領域)を、インパルスバルブ50を充填効率向上のために作用させる制御弁作用モード(充填効率向上モード)とし、その他の領域を、インパルスバルブ50を常時開放して特に作用させない制御弁非作用モード(常時開モード)とする。
【0033】
制御弁作用モード(充填効率向上モード)では、吸気行程の開始以降から吸気行程の終了付近までの期間内のみでインパルスバルブ50を開放して、その他の期間ではインパルスバルブ50を閉鎖して、エンジンの充填効率を向上させ、高いエンジン負荷(負荷要求)Peに対応する。
ここで、インパルスバルブ50によるエンジンの充填効率の向上原理を説明する。
【0034】
図3は、インパルスバルブ50をクランク角A1(吸気上死点後120度)からクランク角A2(吸気下死点の直後)にかけて開放した場合の、気筒内(筒内、シリンダ4内)及びプレチャンバー54内の各圧力のクランク角変化に対する変動を、ベース(インパルスバルブ50のない場合、これはインパルスバルブ50を常時開とした制御弁非作用モードに対応する)の気筒内圧力と対比して示す図である。
【0035】
図3に一点鎖線で示すように、インパルスバルブ50を閉鎖していると、排気行程においては、プレチャンバー54内は前回の吸気行程終了時の圧力をほぼ維持するのに対して、気筒4内圧力は排気と共に低下し、プレチャンバー54内よりも低圧になる。バルブオーバラップ期間になると、吸気バルブ40が開放するため、プレチャンバー54内から気筒4内への流れが起こり、気筒4内がプレチャンバー54内と同圧になるまで圧力上昇し、この後、排気バルブ42が閉鎖しピストン6が下がるに従って、気筒4内及びプレチャンバー54内に負圧が発生し、気筒内圧力及びプレチャンバー54内圧力は次第に減少する(区間a参照)。
【0036】
吸気行程途中のクランク角A1からインパルスバルブ50を開弁すると、インパルスバルブ50の上流と下流との圧力差によって吸気が高速で気筒内に流入する(区間b参照)。この際に発生する負圧波が上流のサージタンク28で反射し、正圧波となって気筒4内に伝達した時にインパルスバルブ50を閉鎖する。これにより、気筒4内への吸気量が増大され充填効率が向上し、体積効率向上を実現する。さらに、プレチャンバー54内に閉じ込められた正圧により(区間c参照)、上記のように次サイクルのバルブオーバラップ期間における気筒4内からプレチャンバー54内への排気の吹き返しを抑制することができる。
【0037】
このようなインパルスバルブ50による体積効率の向上は、インパルスバルブ50の閉弁角(インパルスバルブ50を閉弁するクランク角、閉弁タイミング)を固定し、開弁角(インパルスバルブ50を開弁するクランク角、開弁タイミング)を変更すると、図4に示すように、開弁角によって体積効率向上効果は異なるが、吸気行程内のいずれの開弁角でも体積効率向上効果は得られる。なお、開弁角による体積効率の差は、図5に示すように、サージタンク28からの反射波を筒内に閉じ込める度合いによるものと考えられる。
【0038】
図5において、A〜A12の各曲線は、インパルスバルブ50の開弁角を変更した場合のそれぞれの気筒内の圧力変化の特性を示し、開弁角Aは吸気上死点後略20度であり、開弁角Aは吸気上死点後略30度であり、以降、A,A,・・・とクランク角で略10度ずつ遅らせた開弁角であり、開弁角A12は吸気上死点後略130度である。なお、インパルスバルブ50の閉弁角はクランク角A2(吸気下死点の直後)に固定している。
【0039】
インパルスバルブ50が閉じていると、排気バルブ42が閉鎖しピストン6が下がるに従って、気筒4内及びプレチャンバー54内に負圧が発生し、気筒内圧力は次第に減少するが、開弁角A,Aのように開弁角が早いと、気筒内圧力があまり減少しない段階で、したがって、インパルスバルブ50の上流と下流との圧力差が大きくならない段階で、吸気が気筒4内に流入する。この場合、吸気脈動はあまり強くないので、この際に発生する負圧波も比較的弱く、気筒内圧力は上昇後、下降,上昇を伴って振動し、その後、ピストン6の上昇に伴って気筒内圧力も上昇して行く。開弁角を遅くしていくにしたがって、インパルスバルブ50の開弁時のインパルスバルブ50の上流と下流との圧力差が大きくなり、吸気脈動も強まり、気筒内圧力は大きく上昇した後、下降し、ピストン6の上昇に伴って再び上昇する。
【0040】
いずれの開弁角A〜A12でも、インパルスバルブ50のない場合(これは、ベース、及び、インパルスバルブ50を常時開とした制御弁非作用モードに対応する)よりも、吸気弁40を閉じた後の気筒内圧力(この気筒内圧力が体積効率に対応する)が高まり、開弁角を遅くするにしたがって、吸気弁40を閉じた後の気筒内圧力が高まる傾向にある。
【0041】
ただし、開弁角A,A,A(70度〜90度程度)では、それよりも早い開弁角A〜Aよりも吸気弁40を閉じた後の気筒内圧力が低くなっている。これは、吸気脈動によって気筒内圧力が低くなった段階で吸気弁40が閉鎖するためと考えられる。逆に、比較的早い開弁角A〜Aでは、吸気脈動によって気筒内圧力が低くなった後、再び上昇した段階で吸気弁40が閉鎖するために、吸気弁40を閉じた後の気筒内圧力が高まるものと考えられる。
【0042】
この傾向が、図4にも示されている。つまり、図4に示すように、インパルスバルブ50の開弁角A〜A12に応じて体積効率の上昇量は異なり、比較的遅い開弁角A〜A12の付近に体積効率が最も上昇する第1のピークがあり、比較的早い開弁角A〜Aの付近に体積効率が二番目に上昇する第2のピークがある。
この一方で、インパルスバルブ50による体積効率の向上に伴い、着火前筒内温度が上昇するためノッキングが発生しやすくなる。図6はインパルスバルブ50の開弁角に応じた着火前筒内温度を示すもので、図6に示すように、インパルスバルブ50の開弁角を遅らせるほど着火前筒内温度が上昇する傾向があり、開弁角が120度或いは130度といった体積効率向上が最大級の条件では、着火前筒内温度がインパルスバルブ50のないものに較べて数10℃近く上昇しノッキングが極めて発生しやすくなる。
【0043】
一方、インパルスバルブ50の開弁角を小さくする(開弁を早期にする)と、負圧の発生が抑制され、インパルスバルブ50の開閉時の圧力差による温度上昇が少なくなる。
また、これに加えて、排気行程でインパルスバルブ50が閉じていることからプレチャンバー54内を高圧に維持することができバルブオーバラップ中の排気の吸気側への吹き戻しを回避できる。その結果、内部EGR(=残留EGRガス)を減少させることができ、これによって、EGRガスによる温度上昇を防いで吸気上死点での気筒4内の温度を低下させることができる。
【0044】
図7はインパルスバルブ50の各開弁角A〜A12(A〜A12は図5と同様のもの)について、クランク角に応じた気筒4内温度の変化を示す図である。
吸気上死点における温度を見ると、温度が高いグループdと、温度が中程度のグループeと、温度が低いグループfとに分類できる。
グループdは、インパルスバルブ50のない場合及び開弁角A,A,A(70度〜90度程度)の場合であり、これらはいずれも吸気弁40を閉じた後の気筒内圧力が比較的低い。これは、排気行程において、吸気ポート26或いはプレチャンバー54内の圧力が低いため、バルブオーバラップ中の排気の吸気側への吹き戻しが発生して気筒4内温度が高まるものと考えられる。
【0045】
グループeは、比較的早い開弁角A〜Aの場合であり、前述のように、これらはいずれも吸気弁40を閉じた後の気筒内圧力が比較的高くなり、排気行程において、プレチャンバー54内の圧力が比較的高く維持されるため、バルブオーバラップ中の排気の吸気側への吹き戻しが抑制され気筒4内温度が抑えられるものと考えられる。
グループfは遅い開弁角A〜A12の場合であり、前述のように、これらはいずれも吸気弁40を閉じた後の気筒内圧力が大幅に高くなり、排気行程において、プレチャンバー54内の圧力が高く維持されるため、バルブオーバラップ中の排気の吸気側への吹き戻しが確実に抑制され気筒4内温度が大きく抑えられるものと考えられる。
【0046】
一方、インパルスバルブ50の開弁後の各温度挙動を見ると、吸気上死点における温度が低い場合ほど開弁後の温度上昇が急になっており、圧縮行程末期(クランク角が300度以降)における気筒4内温度は、結果的には、グループfが最も高く、ついで、グループdとなり、グループeが最も低くなることがわかる。
図8はインパルスバルブ50の開弁角に対する内部EGR(=の特性を示す図であり、図9はインパルスバルブ50の開弁角に対するプレチャンバー54内の圧力の特性を示す図である。これらの図からも、グループeはプレチャンバー54内の圧力がある程度確保されるため、残留EGRガス量が少なく、グループdはプレチャンバー54内の圧力が低くなるため、残留EGRガス量が多く、グループfはプレチャンバー54内の圧力がきわめて高く、残留EGRガス量もきわめて低いことがわかる。
【0047】
ここで、このインパルスバルブ開弁角に応じた吸気行程における気筒4内の温度挙動を考察する。
まず、吸気行程開始時には、バルブオーバラップによって、気筒4内及びプレチャンバー54内の圧力が高いほど、排気が掃気されて内部EGRが減少するので、気筒4内温度は低くなる。
【0048】
インパルスバルブ50を使用しない場合は、吸気弁40の開弁期間中は圧力がほぼ大気圧なので、その後、ピストン6が下降して新気が入るのに従って、気筒4内に残っていた高温の残留EGRガスが薄められて気筒4内の温度が低下する。この温度(筒内温度T)の推移は新気の量(新規の体積V2)と残留EGRの量(残留EGRの体積V1)との体積比と、残留EGRの温度T1及び新規の温度T2とで決まり、下式のように摸擬できる。
T=V1/V2×T1+(1−V1/V2)×T2
一方、インパルスバルブ50の使用時には、吸気行程初期はインパルスバルブ50が閉じているので、閉じた系でのポリトロープ(≒断熱)変化をし、筒内温度Tと筒内容積Vとの積は一定(TV=const)となる。したがって、ピストン6の下降に伴う筒内容積Vの増加(=断熱膨張)により、筒内温度Tが低下する。膨張初期には筒内温度Tの低下率はインパルスバルブ50未使用時よりも少ないが、膨張が進むにつれて筒内温度Tの低下がインパルスバルブ50未使用時よりも大きくなる。
【0049】
ただ、インパルスバルブ50を閉じたまま負圧を増大させ、インパルスバルブ50の前後(上下流)に圧力差を設けた状態でインパルスバルブ50を開くと、吸気弁40の弁体部分の外径に応じて流路面積が小さくなる分、そこで損失が発生し、不可逆な断熱変化になる。そのため、インパルスバルブ50の前後(上下流)の圧力が同等になり、新気量の移行が停止した場合でも、筒内の温度はインパルスバルブ50前(インパルスバルブ50よりも上流のインテークマニホールド24等)の温度よりも高くなり、また、インパルスバルブ50の前の温度は、バルブが閉じた状態での温度よりも低下する。そのため、インパルスバルブ50使用時は、未使用時(=圧力差を設けない)よりも圧力差に応じて温度が上がってしまうものと考えられる。
【0050】
ただし、気体の自由膨張の場合、つまり、気体の流入に際して損失がない場合は、気体の温度変化は起こらない。
また、気体の温度が上がるもう一つの理由としては、作動流体である気体による比熱比の違いの影響がある。例えば、酸素Oの比熱比は1.4であり、二酸化炭素COの比熱比は1.29であって、負圧を増大させた時点の筒内の気体は主に既燃ガスであり、既燃ガスは新気(空気)中の酸素Oが二酸化炭素CO2、に置き換わったものであるから、比熱比が空気よりも小さく、温度低下が少ないが、この反面、インパルスバルブ50の開放後は、気筒4内には未燃ガス(=空気)が入ってくるため,温度上昇は既燃ガスより大きくなると考えられる。
【0051】
このため、インパルスバルブ50の開弁を遅くしてインパルスバルブ50の開放時におけるインパルスバルブ50の前後圧力差を大きくすると、即ち、体積効率の大幅な向上を図ると、着火前筒内温度が上がってしまうものと考えられる。
このような着火前筒内温度の上昇が、エンジン2のノッキングを招くので、制御弁作用モード(充填効率向上モード)による運転時には、ノックセンサ66からノッキングの検出情報がエンジンECU60に入力されれば、吸気制御弁制御手段としてのエンジンECU60は、インパルスバルブ50の開弁角を、体積効率が第2のピーク(図4)となる上記のグループe(開弁角A〜A、つまり、吸気上死点後略20度〜略60度、特に、吸気上死点後略30度〜略50度が好ましい)のように、着火前筒内温度が低く且つ一定の体積効率の向上効果が得られるタイミングとして、体積効率は最大ではないがノッキングの発生は抑えられるように設定する。一方、制御弁作用モード(充填効率向上モード)による運転時には、ノックセンサ66からノッキングの検出情報がエンジンECU60に入力されなければ、吸気制御弁制御手段としてのエンジンECU60は、インパルスバルブ50の開弁角を、体積効率が第1のピーク(図4)となる上記のグループf(開弁角A〜A12、つまり、吸気上死点後略90度〜略130度、特に、吸気上死点後略110度〜略130度が好ましい)のように、体積効率の向上効果が最も得られるタイミングとする。
【0052】
換言すれば、エンジンECU60は、ノッキングの発生時には、インパルスバルブ50の通常手法である大きな負圧を作って圧力差を設けた上でインパルスバルブ50を開弁させ、発生した負圧波が上流のサージタンクで反射し、正圧波となって筒内に伝達した時にバルブを閉弁する振幅の大きな圧力波の半波長(腹〜腹)を利用するのではなく,比較的小さな負圧で振幅の小さい脈動を作るとともに、脈動の2回目以降の波の腹(正圧の部分)でインパルスバルブを閉じるように制御することにより、一定の体積効率の向上効果を得ながら、ノッキングの発生を抑えるようにインパルスバルブ50の開弁タイミングを制御するのである。
【0053】
〔作用及び効果〕
本発明の一実施形態にかかるエンジンの吸気制御装置は、上述のように構成されているので、エンジンECU(吸気制御弁制御手段)60は、エンジン2の中低回転高負荷運転領域では、制御弁作用モード(充填効率向上モード)を実施し、インパルスバルブ50の開弁を制御し吸気圧力脈動を利用して、エンジン2の充填効率を高めて、体積効率を高めるので、エンジン出力を容易に高めることができ、エンジンの負荷要求に十分且つ速やかに応じることができる。
【0054】
一方、エンジン2の中低回転高負荷運転領域でなければ、制御弁非作用モード(常時開モード)を実施し、インパルスバルブ50の開弁を常時開放するので、インパルスバルブ50の影響を受けることなく通常の特性で気筒4内に吸気を送ることができ、エンジン2が作動する。
そして、制御弁作用モードでは、吸気圧力脈動を利用して体積効率を高める際、これに伴って、着火前の気筒内の温度が上昇し、これに起因してノッキングを生じやすいが、ノックセンサ66の情報に基づいて、ノッキングが生じたら、図10に2種類の太破線で示すように、インパルスバルブ50の開放タイミングを吸気圧力脈動により生じる圧力差が最大となるインパルスバルブ50の開放タイミングよりも進角させ、特に、インパルスバルブ50の開放タイミングを、体積効率が第2のピーク(図4)となる上記のグループe(開弁角A〜A、つまり、吸気上死点後略20度〜略60度、特に、吸気上死点後略30度〜略50度が好ましい)のように、着火前筒内温度が低く且つ一定の体積効率の向上効果が得られるタイミングA01,A02とするので、一定の体積効率向上効果を得ながらノッキングの発生を抑えることができる。
【0055】
また、エンジン2のノッキングが検出されないと、図10に細破線で示すように、インパルスバルブ50の開放タイミングを、体積効率が第1のピーク(図4)となる上記のグループf(開弁角A〜A12、つまり、吸気上死点後略90度〜略130度、特に、吸気上死点後略110度〜略130度が好ましい)のように、吸気圧力脈動により生じる圧力差が最大となる開放タイミングA1とするので、吸気圧力脈動による体積効率の向上効果をより一層得ることができる。
【0056】
〔その他〕
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はかかる実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、かかる実施の形態を適宜変形して実施しうるものである。
例えば、上記実施形態では、ノックセンサ66の情報に基づいて、ノッキングが発生したらインパルスバルブ50の開放タイミングを進角させているが、これに限らない。例えばノックセンサ66に頼ることなく、予めノッキングの発生する運転条件を試験等により求めておき、各種センサから得られた運転条件がノッキング発生条件を満たした時にインパルスバルブ50の開放タイミングを進角させてもよい。または、ノッキングの発生に依らず制御弁作用モード(充填効率向上モード)の際には、常時、上記のグループeのように、吸気圧力脈動により生じる圧力差が最大となるインパルスバルブ50の開放タイミングよりも進角させるようにしてもよい。
【0057】
また、図2に、二点鎖線で示すように、制御弁作用モード(充填効率向上モード)の運転領域を、高負荷側であってノッキングが発生しうる第1高負荷運転領域a1と、低負荷側であってノッキングが発生しにくい第2高負荷運転領域a2とに区分し、第1高負荷運転領域a1では、進角開放タイミングでインパルスバルブ50の開放を行ない、第2高負荷運転領域a2では、吸気圧力脈動により生じる圧力差が最大となる開放タイミングでインパルスバルブ50の開放を行なっても、ノッキングセンサ66に頼らずに、ノッキングの発生を抑制しながら、吸気圧力脈動による体積効率の向上効果を得ることができる。
【0058】
もちろん、この技術にノッキングセンサ66を適用し、第2高負荷運転領域a2であっても、ノッキングセンサ66によりノッキングの発生が検出されたら、進角開放タイミングでインパルスバルブ50の開放を行なうようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
2 エンジン
4 シリンダ(気筒)
6 ピストン
10 クランクシャフト
12 燃焼室
14 吸気通路
16 排気通路
18 点火プラグ
20 燃料噴射弁
22 吸気管
24 吸気マニホールド
26 吸気ポート
28 サージタンク
30 スロットルバルブ
40 吸気バルブ
42 排気バルブ
50 インパルスバルブ(吸気制御弁)
54 プレチャンバー(副室)
60 エンジンECU(吸気制御弁制御手段)
62 アクセルポジションセンサ(APS)
64 クランク角センサ
66 ノックセンサ(ノッキング検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気弁上流の気筒別の吸気通路内に該吸気通路を遮断可能な吸気制御弁を有すると共に、エンジンの運転状態に応じて前記吸気制御弁の作動状態を制御する吸気制御弁制御手段を備えたエンジンの吸気制御装置において、
前記吸気制御弁制御手段は、
前記エンジンの低負荷運転領域では、前記吸気制御弁を常時開放する制御弁非作用モードを実施し、
前記エンジンの高負荷運転領域では、吸気行程の開始以降から該吸気行程の終了付近までの期間内で前記吸気制御弁を開放して、吸気圧力脈動を発生させる制御弁作用モードを実施し、
前記制御弁作用モードの実施時には、前記吸気圧力脈動により生じる圧力差が最大となる開放タイミングよりも進角させた進角開放タイミングで前記吸気制御弁の開放を行なう
ことを特徴とする、エンジンの吸気制御装置。
【請求項2】
前記エンジンのノッキングを検出するノッキング検出手段を備え、
前記吸気制御弁制御手段は、前記ノッキング検出手段により前記エンジンのノッキングが検出されると、前記進角開放タイミングで前記吸気制御弁の開放を行ない、前記ノッキング検出手段により前記エンジンのノッキングが検出されないと、前記吸気圧力脈動により生じる圧力差が最大となる開放タイミングで前記吸気制御弁の開放を行なう
ことを特徴とする、請求項1記載のエンジンの吸気制御装置。
【請求項3】
前記高負荷運転領域が、高負荷側であってノッキングが発生しうる第1高負荷運転領域と、低負荷側であってノッキングが発生しにくい第2高負荷運転領域とに区分され、
前記吸気制御弁制御手段は、前記エンジンの前記第1高負荷運転領域では、前記進角開放タイミングで前記吸気制御弁の開放を行ない、前記エンジンの前記第2高負荷運転領域では、前記吸気圧力脈動により生じる圧力差が最大となる開放タイミングで前記吸気制御弁の開放を行なう
ことを特徴とする、請求項1記載のエンジンの吸気制御装置。
【請求項4】
前記進角開放タイミングは、前記吸気弁の最大リフトタイミングよりも進角させたタイミングである
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジンの吸気制御装置。
【請求項5】
前記エンジンは、前記吸気制御弁の開放タイミングを進角させていくと前記エンジンの体積効率が遅角側の第1のピーク値よりも低い第2のピーク値を有するように遷移する特性を有し、
前記進角開放タイミングは、前記第2のピーク値を与える開放タイミング又はこの近傍のタイミングである
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジンの吸気制御装置。
【請求項6】
前記制御弁作用モードによる前記吸気制御弁の閉鎖タイミングは、前記吸気行程の下死点若しくは前記下死点から僅かに遅角したタイミングである
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンジンの吸気制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−53608(P2013−53608A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194300(P2011−194300)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】