説明

エンジンの遮音構造

【課題】エンジンの構成部品の騒音透過を効果的に抑制する。
【解決手段】エンジン10の外殻を構成する構成部品11の騒音透過を妨げるために、構成部品11内部に空間部21を設け、空間部21内の空気を吸引して空間部21内を真空に近づけるために、空間部21をバキューム系16と接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの遮音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの構成部品の表面には、騒音低減のために、遮音材を有する遮音カバーが取り付けられる場合がある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1においては、エンジンのシリンダブロックに遮音カバーを取り付けるようにしており、特許文献2においては、エンジンのオイルパンに遮音カバーを取り付けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−254081号公報
【特許文献2】特開2000−18094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンジンの構成部品に遮音カバーを取り付けた構造では、遮音カバーにより騒音低減は可能であるが、音の伝達を完全に遮断することはできず、騒音が構成部品及び遮音カバーを透過するという課題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、エンジンの構成部品の騒音透過を効果的に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明は、エンジンの外殻を構成する構成部品の騒音透過を妨げるために、前記構成部品内部に空間部を設け、前記空間部内の空気を吸引して前記空間部内を真空に近づけるために、前記空間部をバキューム系と接続するものである。
【0008】
前記構成部品は、オイルパンであり、前記オイルパンは、オイル貯留部を構成する底部及び側壁部と、前記オイルパンを前記エンジンのシリンダブロックの下部に取り付けるためのフランジ部とを有し、前記空間部は、前記底部及び前記側壁部内部に設けられていても良い。
【0009】
前記バキューム系は、前記エンジンによって駆動されるバキュームポンプを有するものであっても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エンジンの構成部品の騒音透過を効果的に抑制することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンの遮音構造の模式的な断面図である。
【図2】オイルパンを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0013】
本実施形態に係るエンジンの遮音構造は、エンジンの外殻を構成する構成部品(以下、構成部品という)の内、オイルパンに適用したものである。
【0014】
図1に示すように、エンジン10は、オイルパン11と、シリンダブロック12と、シリンダヘッド13と、ヘッドカバー14とから主に構成されている。
【0015】
オイルパン11は、例えば、アルミニウム合金製のものである。なお、オイルパン11は、アルミニウム合金製のものには限定はされず、他の金属材料製のものや樹脂材料製のものであっても良い。
【0016】
図1及び図2に示すように、オイルパン11は、オイル貯留部17を構成する底部18(浅底部18a、深底部18b)及び側壁部19と、オイルパン11をシリンダブロック12の下部に取り付けるためのフランジ部20とから主に構成されている。
【0017】
本実施形態に係るエンジン10の遮音構造においては、図1に示すように、オイルパン11の内部に空間部21を設け、その空間部21をバキュームライン15を介してバキューム系16と接続している。空間部21をバキューム系16と接続するのは、バキューム系16によって空間部21内の空気を吸引して、空間部21内を真空に近づけるためである。
【0018】
具体的には、空間部21は、オイルパン11の底部18(浅底部18a、深底部18b)及び側壁部19の内部に形成されている。即ち、空間部21は、オイル貯留部17とは対照的に、閉塞された空間としてオイルパン11の内部に設けられている。
【0019】
また、バキュームライン15は、オイルパン11の底部18に接続され、空間部21に連通する第一のバキュームパイプ(第一バキューム管)22と、第一バキュームパイプ22とバキューム系16とを接続する第二バキュームパイプ(第二バキューム管)23とから主に構成されている。第一バキュームパイプ22及び第二バキュームパイプ23は、金属材料製(例えば、アルミニウム合金)又は樹脂材料製のものである。なお、第一バキュームパイプ22は、オイルパン11に一体に形成されていても良い。
【0020】
また、バキューム系16は、エンジン10によって駆動されるバキュームポンプ(真空ポンプ)24を有している。即ち、空間部21は、第一バキュームパイプ22及び第二バキュームパイプ23を介してバキュームポンプ24と接続されている。
【0021】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0022】
本実施形態に係るエンジン10の遮音構造によれば、オイルパン11の内部に空間部21を設け、その空間部21を第一バキュームパイプ22及び第二バキュームパイプ23(バキュームライン15)を介してバキュームポンプ24(バキューム系16)と接続し、バキュームポンプ24によって空間部21内の空気を吸引して空間部21内を真空に近づけることで、オイルパン11(構成部品)の騒音透過を妨げることが可能となる。
【0023】
即ち、バキュームポンプ24によって空間部21内の空気を吸引して、空間部21を真空に近い状態(疑似真空)とすることで、その空間部21(真空層)によって音の伝達を遮断して、オイルパン11の透過音を遮音カバーと比較して大幅に低減することができる。
【0024】
また、本実施形態に係るエンジン10の遮音構造では、空間部21をバキュームポンプ24(バキューム系16)と接続しているので、経年による真空消失が発生しない。
【0025】
即ち、エンジン10(バキュームポンプ24)の運転時には常に空間部21を真空に近い状態にできるので、経年による構成部品(本実施形態では、オイルパン11)の騒音透過が発生しない。
【0026】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0027】
例えば、本発明は、オイルパン11には限定はされず、シリンダブロック12、シリンダヘッド13及びヘッドカバー14等にも適用することができる。即ち、シリンダブロック12の側壁部12a(図1参照)、シリンダヘッド13の側壁部13a(図1参照)、ヘッドカバー14の頂部14a(図1参照)に、空間部21を設けても良い。
【0028】
また、空間部21を真空とした状態を保持すべく、バキュームライン15に逆止弁又は開閉弁(図示せず)を設けても良い。開閉弁をバキュームライン15に設ける場合、エンジン10の運転時には開閉弁を開とし、エンジン10の停止時には閉とする。
【符号の説明】
【0029】
10 エンジン
11 オイルパン(構成部品)
16 バキューム系
17 オイルパンのオイル貯留部
18 オイルパンの底部
19 オイルパンの側壁部
20 オイルパンのフランジ部
21 空間部
24 バキュームポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの外殻を構成する構成部品の騒音透過を妨げるために、前記構成部品内部に空間部を設け、前記空間部内の空気を吸引して前記空間部内を真空に近づけるために、前記空間部をバキューム系と接続することを特徴とするエンジンの遮音構造。
【請求項2】
前記構成部品は、オイルパンであり、
前記オイルパンは、オイル貯留部を構成する底部及び側壁部と、前記オイルパンを前記エンジンのシリンダブロックの下部に取り付けるためのフランジ部とを有し、
前記空間部は、前記底部及び前記側壁部内部に設けられている
請求項1に記載のエンジンの遮音構造。
【請求項3】
前記バキューム系は、前記エンジンによって駆動されるバキュームポンプを有する請求項1又は2に記載のエンジンの遮音構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−19269(P2013−19269A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150680(P2011−150680)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】