説明

エンジンオン・オフ作動を提供する車両用の空調暖房システム

【課題】長距離輸送車両用またはオフロード車両用の暖房・換気・空調(HVAC)システムを提供する。
【解決手段】HVACシステムは、エンジンの作動状態に関わりなく作動され得る。すなわち、HVACシステムは、エンジンが作動している間およびエンジンがノーアイドリング(オフ)状態にある間も、長距離輸送車両の室内を空調すべく作動し得る。概ね、HVACシステムは、車両内に既存の1つ以上の典型的な空調構成部材を効率的に共有する。1つの事例では、HVACシステムは、ベルト駆動式コンプレッサが休止しているとき、電動コンプレッサを作動する。別の場合では、HVACシステムは、ベルト駆動式のコンプレッサおよび凝縮器が休止しているとき、電動コンプレッサおよびノーアイドリング凝縮器の両方を作動する。更に別の実施の形態では、HVACシステムは、蒸発器を共有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本件特許出願は、今では米国特許明細書第6,889,762号となっている2002年4月29日出願の米国特許出願10/134,875号の継続出願である、2005年3月24日付けで出願された同時係属中の米国特許出願11/088,441号の一部継続出願である。そのすべての教示内容および開示内容は、参照することにより全体として本文に組み込まれるものとする。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概ね長距離輸送車両用およびオフロード車両用の空調システムに関し、より詳細には、可変速度のモータ駆動式コンプレッサおよび制御装置を利用する車両搭載式の暖房、換気および空調(HVAC)システムに関する。
【背景技術】
【0003】
世界的な経済の拡大は、原材料および完成製品を求める輸送需要に対応することを強いられてきた。実際に、資格のある大型トレーラードライバーに対する需要は、市場の需要を満たす人員を補充して訓練する業界の処理能力を遥かに上回っていた。結果として、既存の要員および車両を活用しようとする輸送業界の要求は、市場の需要を満たす試みにおいて、道路上および車両内において費やされる時間を増加させることになった。
【0004】
ハイウェイの安全性を維持することを目指して、ドライバーが運転に費やし得る時間を管理する連邦規則が設定されることになった。そのような最大限の時間に到達すると、ドライバーは、車両を道路から外して休息を取るように要求される。料金所、計量所および休憩施設に止められているトラックの台数が、そのような規則に対する遵法性を示している。しかし、これらの場所は、しばしば、ドライバーが休息するためのいかなる場所を提供するものではなく、車両内に居続けることを余儀なくしている。
【0005】
輸送業界の需要に応じて、かつドライバーが休息するように強要される場所を認識して、長距離輸送車両のメーカーは、車両の設計および製造において人間工学的要素における力点を増大させ続けてきた。実際に、現代の長距離輸送車両の内部は、車両の操作中にドライバーに掛かるストレスおよび疲労を最小限にする多くの機能を内包している。これらの機能は、例えば、シートにおける振動ダンパーおよび腰部サポートと、遮音性の向上と、暖房・換気・空調(HVAC)システムとを含み、ドライバーに快適な環境を提供する。必要とされる休息時間に適応させるために、そして、典型的には1人が運転する間にもう1人が寝ている2人の人員を含む運転チームの利用の増加を認識して、多くの長距離輸送車両は、仮眠室を含んでいる。この仮眠室は、温度制御されるものでもあり、その中で過ごす時間が滞在者に落ち着きを提供するように温度制御される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
残念ながら、現在の最新技術の暖房空調システムは、エンジンベルト駆動式コンプレッサを空調システム用として利用し、車両の全体にわたって冷媒を循環させ圧送して、客室を冷房する。エンジンベルト駆動式ポンプもまた利用され、暖房が必要とされるときに客室の全体にわたってエンジンの廃熱を循環させる。このようなシステムは、車両の作動中に温度制御された環境を提供するためには理想的に適している一方で、エンジンが停止するときには冷房も暖房も作動し得ない。
【0007】
現在の最新技術の車両HVACシステムが、車両のエンジンが停止している間作動し得ないことの結果として、長距離輸送車両の運転手は、休息しようとするとき、少しも理想的ではない2つの状況の間で選択することを強いられる。第1に、彼らは、車両のエンジンを連続的に作動させて、休息する間の暖房または空調を有し得るように選択するかもしれない。代替的に、彼らは、エンジンを停止することを選択して温度制御されない環境で休息しようとするかもしれないが、温度は、しばしば、必要な休息時間に達したときに車両の居場所によっては、高低の極値にまで達し得る。第1選択肢は、ドライバーに快適な休息環境を提供することによって安全性を向上させるが、エンジンが連続して作動され、単に暖房または空調システムを作動させるためにのみ余分な燃料を燃焼させるので、長距離輸送車両を稼動させるコストを大きく増大させる。同様にして、第2選択肢は、エンジンが停止されるので車両を稼動させるコストを増大させないが、ドライバーは、極端な温度環境では十分に休息を取ることができず、その結果として、長距離輸送車両の稼動の安全性を潜在的に低下させる。
【0008】
従って、当該分野では、エンジン作動中だけでなくエンジンオフ状態すなわちノーアイドリング状態においても車両内部の空調を提供し得る、車両の暖房、換気および空調(HVAC)システムの需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記に照らして、本発明は、エンジンの作動状態に関わりなく作動され得る、長距離輸送車両用の新規かつ改善した暖房・換気・空調(HVAC)システムを提供する。すなわち、本件発明は、エンジンが作動している間およびエンジンがノーアイドリング(オフ)状態にある間も、長距離輸送車両の室内を空調すべく作動され得る、新規かつ改善したHVACシステムを提供する。概ね、HVACシステムは、車両内に既に備わっている1つ以上の典型的な空調構成部材を効率的に共有する。1つの事例では、HVACシステムは、ベルト駆動式コンプレッサが休止しているとき、電動コンプレッサを作動する。もう1つの実施の形態では、HVACシステムは、ベルト駆動式のコンプレッサおよび凝縮器が休止しているとき、電動コンプレッサおよびノーアイドリング凝縮器の両方を作動する。更にもう1つの実施の形態では、HVACシステムは、蒸発器を共有する。
【0010】
1つの態様では、本発明は、1次空調ループおよび電動コンプレッサを含むエンジンを有する車両用の空調システムを提供する。1次空調ループは、車両のエンジンが作動しているときに作動するベルト駆動式コンプレッサを有する。電動コンプレッサは、1次空調ループに熱的に接続され、車両のエンジンが作動していないときに作動可能である。
【0011】
もう1つの態様では、本発明は、1次空調ループおよび2次空調ループを含むエンジンを有する車両用の空調システムを提供する。1次空調ループは、車両のエンジンが作動しているときに作動可能であり、蒸発器を含む。2次空調ループは、車両のエンジンが作動していないときに作動可能であり、蒸発器を1次空調ループと共有する。
【0012】
更にもう1つの態様では、本発明は、車両のエンジンが作動しているときに作動可能な1次空調ループと、車両のエンジンが作動していないときに作動可能な2次空調ループとを有する車両を冷房する方法を提供する。当該方法は、1次および2次空調システムの間で少なくとも1つの空調構成部材を共有するステップを含む。
【0013】
本発明の他の側面、目的および利点は、以下の詳細な説明および添付図面からより明らかとなるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書の中に組み込まれかつその一部を形成する添付図面は、本発明のいくつかの側面を例示し、その説明と共に、本発明の原理を説明するように機能する。
【0015】
本発明を、特定の好適な実施の形態と併せて説明するが、これらの実施の形態に限定するものではない。逆に、添付の特許請求の範囲により定義されるように、本発明の精神および範囲により、全ての代替、改変、および均等物を含めるよう意図する。
【0016】
図1は、単純化したブロック図の形態において、長距離輸送またはオフロード用の商業車両に対して特に適用可能である空調システムの1つの実施の形態を示している。従来の車両空調システムとは異なり、本発明のシステム10は、ブラシレスDCモータ12を利用して、可変速度コンプレッサ14を駆動する。この可変速度のブラシレスDCモータ駆動式コンプレッサ14は、冷媒−液体または冷媒−空気熱交換器16を介して、任意選択的な冷媒の受容器兼乾燥器18に冷媒を循環させる。冷媒は、その後、膨張装置20および冷媒−空気熱交換器22を通過して、客室を冷房する。
【0017】
本発明の1つの実施の形態では、2次並行冷却液ループは、膨張装置24および冷媒−空気熱交換器26を介して設けられる。そのような2次並行冷却液ループは、しばしば、長距離輸送車両の運転台の仮眠室を直接冷房するために使用される。それ故、熱交換器26は、典型的には、熱交換器22より小型である。何故なら、冷房対象空間の容量が運転台の主要なドライバー/乗客用の区画と比較して削減されるからである。図1では示されていないが、2つの冷媒冷却液ループは、弁によって選択的に接続されていてもよい。このような弁を含むことは、例えば、運転台の主要な客室に人がいないときには仮眠室のみを空調することができ、その逆の場合も可能にして、システムの効率を向上させる。冷媒は、その後、コンプレッサ14へ戻る前に、機能的な冷媒アキュムレータ28を通過する。
【0018】
ブラシレスDCモータ12によって駆動される可変速度コンプレッサ14を利用することによって、車両の空調システムは、エンジンオン状態およびエンジンオフ(ノーアイドリング)状態の両方において作動され得る。更に、可変速度コンプレッサ14を設けることは、そのシステムがエンジンオフ作動の間、低出力容量で作動することを許容し、そのシステムによって利用可能な車両のバッテリ34からの貯蔵エネルギーの量を節約する。この作動に関する制御は、様々なシステムパラメータおよび車両上の電源の利用可能性をモニターするインテリジェント発電管理制御装置30によって提供される。
【0019】
このようにして、車両の空調システムは、現在、車両のエンジンが作動している間に利用可能である車両の主要な発電システム32によって、または、エンジンがオフである間はバッテリ貯蔵システム34に貯蔵された電力を利用する電気システムによって電力供給を受けることが可能である。更に、インテリジェント発電管理制御装置30は、発電機セットまたは燃料電池のような、支援的電力36又は補助電力ユニット38からの電力を利用する能力をも有する。
【0020】
本発明のシステム10では、電動コンプレッサ14の使用は、その出力を最大出力容量から低出力容量まで調節する能力を提供する。これは、エンジン作動中の路上の高負荷と、エンジン停止中に客室の冷房を続ける低出力容量との両方のために使用することができる単一の空調システムの使用を許容する。この調整は、低出力容量の電源のみが利用可能であるときにコンプレッサの速度を低下させるインテリジェント発電制御装置30によって提供される。この調整は、そのような電源から利用可能である稼動の持続時間を延長する。すなわち、コンプレッサの速度を低下させることによって、その電力需要もまた、同様に低下する。
【0021】
図2に示したように、本発明のシステムの1つの代替的な実施の形態は、HVACシステムの全体において高圧冷却液ループ46および低圧冷却液ループ40を含んでいる。高圧冷却液ループ46は、コンプレッサ14によって駆動され、永続的な接続部を持つ固定式配管を有するモジュール式の密封冷媒出力セルとして構築されてもよい。低圧冷却液ループ40は、低圧冷却液ポンプ42を利用し、高圧冷却液ループ46とこの2次ループ40の間における熱交換媒体として機能する冷媒−液体熱交換器44を介して、低圧冷却液を循環させる。このような構成は、本件出願の譲受人に対して譲渡されたModular Low Pressure Delivery Vehicle Air Conditioning System(モジュール式低圧吐出し型の車両空調システム)という表題の米国特許明細書第6,276,161号に説明されている。その開示内容および教示内容は、参照することによりそれら全体が本明細書に組み込まれるものとする。このような構成では、1次高圧冷却液ループ46は、固定式配管とその構成部材間における永続的な接続部とを有する単一の統合モジュールとして製造されてもよい。上記の特許において説明したように、このような構成は、高圧継手を通る冷媒漏洩の可能性を最小限にする。
【0022】
図2に示したように、2次低圧冷却液ループ40は、車両の内部に配設された処理液−空気熱交換器48を使用して、客室に冷房を提供する。車両客室の暖房を提供するために、冷却液ヒータ50が、2次低圧冷却液ループ40において利用されてもよい。このような暖房作用の間、インテリジェント発電管理制御装置30は、2次ループ冷却液ポンプ42および冷却液ヒータ50を作動させることのみを必要として、この機能性を提供する。すなわち、この作動モードでは可変速度のモータ駆動式コンプレッサ14に動力を供給する必要がなく、それによって、エンジンオフ作動の間における電力消費を更に削減し、このような操作が利用可能である時間を延ばす。
【0023】
図3で示した1つの代替的な実施の形態では、空気ヒータ52が、車両HVACシステムの排気ダクト54に設けられてもよい。これは、燃料燃焼式ヒータ(FFH)または抵抗型ヒータであってもよい。この構成では、インテリジェント発電管理制御装置30は、高圧冷却液ループ及び低圧冷却液ループのいずれをも作動させる必要がなく、その代わりに、循環ファン56および空気ヒータ52のみを作動させて、必要な暖房を車両客室に提供する。この構成は、追加的な電力消費の節約をもたらし、暖房モードにおけるシステムのより長い継続作動を可能にする。冷房モードでは、コンプレッサは、高圧冷媒−空気熱交換器または低圧液体−空気熱交換器58を介して冷媒を循環させるべく作動される。モードドアおよび/または温度制御ドア60は、ダクト54を通る空気の流れを制御して、当該分野では周知であるように車両の客室の中に流入する空気の温度を調整する。
【0024】
簡潔に上述し、かつ図4で示したように、本発明のシステムは、インテリジェント発電管理制御装置30を利用して、可変速度のブラシレスDCモータ駆動式コンプレッサ14の速度、従って出力容量を調節する。この出力制御は、例えば、エンジンオン作動の間、あるいは車両発電システム32または支援的電力システム36のような無制限の入力電源での作動の間における最大のコンプレッサの速度および出力容量62と、例えば、電力バッテリ貯蔵システム34または電気的な補助出力ユニット発電システム38のような制限された電力供給源を利用する作動期間における最小のコンプレッサの速度および出力容量64との間においてコンプレッサ14を調節することができる。これらの2つのポイント62、64の間における任意の速度および出力容量における作動は、インテリジェント発電管理制御装置30によって制御されるようにして利用可能である。更に、この制御装置30は、追加の電源または様々な電源が利用可能になるとき、および最適なシステム性能を維持すべくシステムパラメータが変化するとき、コンプレッサ14の調節を変化させてもよい。
【0025】
例えば、制御装置30は、車両の客室の温度をユーザー選択温度に維持するために車両が運転されている間、コンプレッサ14を最大の速度及び出力容量で作動させてもよい。車両を駐車して、エンジンを停止すると、制御装置30は、車両発電システム32が作動しなくなったことを検出し、電力バッテリ貯蔵システム34からの電力を利用して、コンプレッサの駆動を開始する。制御装置30は、その後、コンプレッサの速度および出力容量を低下させて、バッテリから過剰な電力を取り出さないようにする。コンプレッサの速度および出力容量は、制御装置30によって決定される要求に応じて増大してもよい。しかし、制御装置30は、車両を始動させるために不十分な量の利用可能な電力しか残らないことになる量の電力がバッテリ貯蔵システム34から放出されることを許容せず、或いは、システムの寿命を低下させる量の電力がバッテリ貯蔵システムから放出されることを許容しない。そのようなポイントに接近すると、制御装置30は、追加的な電源が利用可能になるかまたはバッテリが再充電されるまで、コンプレッサ14に対して出力される電力を使用不能にし、それによって、HVACシステムを停止させる。1つの実施の形態では、このポイントは、負荷がかかっている状態でおよそ11.5ボルトDCに設定されるが、エンジンの始動に必要な程度およびバッテリ寿命に基づいた適切な他の設定ポイントであってもよい。
【0026】
システムがバッテリ貯蔵システム34からの電力で作動している一方で、車両が支援的電力システム36に接続されている場合には、制御装置30が、この新しい電源の利用可能性を検出する。制御装置30は、その後、バッテリシステム34を切り離して、この電源の利用を開始し、内部の温度を維持するために必要なだけコンプレッサの速度および出力容量を増大させる。代わりに、車両上の補助電源ユニットが始動される場合には、インテリジェント発電管理制御装置30は、コンプレッサ14を駆動するために電源を切り換えて、バッテリ貯蔵システム34を切り離し、必要に応じてコンプレッサ14の調節を増大させる。しかし、システムが車両発電システム32または支援的電力システム36からの電力で作動されるときとは異なって、制御装置30は、補助電源ユニット電力系統38の電力の取り込みおよび出力容量に基づいてコンプレッサ14の調節を低下させてもよい。すなわち、制御装置30は、補助電源ユニット電力系統38およびバッテリ貯蔵システム34が車両上における他の機能のために必要とされ得る制限的な電源であると認識する。それ故、制御装置30は、これらの電源を使い果たす前にHVACシステムを無作動状態にすることによって、これらの電源のある部分の保護を確保する。
【0027】
図5に示すように、インテリジェント発電管理制御装置30は、その調節制御機能を実行するために様々なシステムパラメータをモニターする。外部の温度66および車両内部の温度68の両方が制御装置30によってモニターされ、内部の設定温度に到達して維持するコンプレッサ出力容量を決定する。典型的には、内外の温度の差が大きければ大きいほど、その差を維持するために必要な出力容量もまた大きくなる。外部の周囲温度66が降下し、或いは車両内部の設定温度68が上昇するとき、制御装置30は、コンプレッサの速度および出力容量を低下させ得ることになり、ユーザーが選択した内部温度を維持する。
【0028】
更に、制御装置30は、コンプレッサの速度および出力容量の調節において、コンプレッサの電力消費70およびシステム全体の電力消費72をモニターする。この情報は、制御装置30によって使用され、コンプレッサ14を調節して、制限的な電源が利用されている場合に利用可能な電源が予め定められた電力容量を越えて使われないことを確保する。制御装置30は、モニターされた電力消費が適切なレベルを上回る場合には、コンプレッサの速度および出力容量を低下させることができる。更に、これらのパラメータは、過負荷障害からのシステム保護をするためにも利用される。
【0029】
更に、制御装置30は、コンプレッサ速度74と、冷媒システムの圧力および温度76とを含む冷房システムのシステムパラメータをもモニターする。コンプレッサ速度信号74は、コンプレッサ調節に関する閉ループ式の比例、積分、微分(PID)制御において利用される。冷媒システムの圧力および/または温度は、制御パラメータとして利用され、コンプレッサの速度および出力容量を調整し、電力の利用が最適化される。すなわち、コンプレッサの調節は、一旦システム内において内部客室を十分に冷房できる温度に到達したならば、低減されてもよい。実際に、コンプレッサは、客室を冷房する熱交換器が適当な冷房を提供するに足る十分な温度である間、完全に停止されてもよい。一旦この熱交換器の温度が適当な冷房を提供するに足る十分な温度を越えて上昇したならば、制御装置30は、今一度コンプレッサ14を始動させて、この温度を低下させてもよい。このようにして、利用可能な電源からの取り込みは、システムを駆動するために利用可能な限られた電源により、適切な乗客の冷房を提供するという目標を達成しつつ、最小限にされる。システムパラメータは、更に、室内を冷房する能力を低下させ、電力消費を増大させるシステム内の故障を検出する能力を制御装置30に提供する。
【0030】
システム状態の表示および制御入力は、客室内のユーザー入力/出力ディスプレイ78を介して、制御装置30と運転手との間に設けられてもよい。このようなディスプレイ78が利用されるとき、ユーザーからの制御パラメータの伝達は、制御装置30に対して逐次データリンクによって提供されてもよい。同様にして、システム制御および状態情報の表示もまた、制御装置30によってディスプレイ78に対してこの逐次データリンクによって提供されてもよい。ユーザーからの制御パラメータは、典型的には、オフモード、暖房モードおよび冷房モードを含むHVACシステムの所望の作動モードを含む。同様にして、温度の設定もまた、この入出力装置78によって入力され得る。
【0031】
本発明の1つの実施の形態では、ユーザーは、更に、可変速度コンプレッサを駆動するためにいずれの利用可能な電源が利用されるべきであるかを選択してもよい。制御装置30は、更に、1つの電源が使い切りそうなときに利用可能な電源の間における切り換えを提供してもよく、或いは、そのような自動的な電源の移行を提供する前にユーザーの許可を照会してもよい。ファン速度および室内の選択も、ユーザー入出力ディスプレイ制御部78によって制御されてもよい。システム状態情報も、内部および外部の温度、ファン速度、モード選択、残りの利用可能な電力、選択された電源、利用可能な電源、状態および警告メッセージ等を含めて、ユーザー入出力ディスプレイ78上に表示されてもよい。
【0032】
本発明の1つの実施の形態では、システムは、ディスプレイ/制御部78を介して、以下のパラメータの調節を許容する。コンプレッサの最小制御出力、コンプレッサの最大制御出力、最大の電流引き込み、室内ユニットの最小速度出力、バッテリ遮断電圧、コンプレッサの冷房制御パラメータkp(比例ゲイン)、ki(積分ゲイン)およびkd(微分ゲイン)、並びに屋内ファンの暖房制御パラメータKp(比例ゲイン)、Ki(積分ゲイン)およびKd(微分ゲイン)である。これらのパラメータは、PID制御方程式のために、比例、積分および微分すなわちレートのゲインを提供する。この実施の形態では、以下のパラメータがディスプレイ78に伝達される。作動モード、設定温度、運転室温度、排気温度、バッテリ電圧、バッテリ電流、およびコンプレッサ指令速度である。
【0033】
作動に際して、インテリジェント発電管理制御装置30は、ユーザー入力を処理し、HVACシステムの作動モードを決定する。エンジンオフ(ノーアイドリング)状態において暖房モードがユーザーによって指令されると、制御装置30は、例えば図2で示した冷却液ヒータ50または図3で示した空気ヒータ52のようなヒータをオンに切り換えるように指令する。これらのヒータは、適宜、燃料燃焼式ヒータまたは電気抵抗式ヒータであってもよい。制御装置30は、更に、パルス幅変調(PWM)PID制御ループを介して内部ファン速度を制御し、車両内温度を設定温度に維持する。しかし、ユーザーが冷房モードを選択するならば、凝縮器ファンおよびポンプ出力がオンに切り換えられ、室内ファンが100%に設定される。先ず初めに、コンプレッサ速度は、最小の設定出力容量および速度に設定される。制御装置30は、その後、ある一定の状況となった場合以外は、コンプレッサ14の速度および出力容量を調節し、運転室温度をPID制御によってユーザー設定温度に維持する。これらの状況とは、供給電流が予め定めた電流限度を上回る場合にコンプレッサ速度を低下させる高電流/高負荷限度を含む。1つの実施の形態では、この電流限度は、40アンペアに設定される。
【0034】
同様にして、要求されたコンプレッサ速度が最小であり、排気温度が設定温度より低い場合には、排気温度が予め定めた時間以上にわたって設定温度より高くなるまで、コンプレッサ速度はゼロに設定される。更に、圧力検知が冷房内部の故障を表示した場合にも、要求されたコンプレッサ速度はゼロに設定される。コンプレッサは、コンプレッサが作動することを許容される前、所定の時間にわたって作動しないようにされる。最後に、バッテリ電圧が予め定めた負荷数値より下に降下した場合にも、制御装置30は、電力が制御装置30に対して循環され、或いは代替的な電源が利用可能になるまで、すべての出力がないようにする。
【0035】
本発明のシステムは、車両のHVACシステムに組み込まれるときに大きな利点を提供するが、HVACシステムを既に搭載している多くの現行の既存車両もまたそのようなシステムから恩恵を受けることになる。しかし、車両の現行のHVACシステムを取り除いて、本発明のシステムを搭載し直すコストは、ひどく高く付くことであろう。従って、本発明の代替的な1つの実施の形態では、システムの各構成部品は、エンジンオン作動の間にのみ作動可能である現行の既存のHVACシステムに加えて、車両に設置されるようにモジュール化される。この実施の形態では、客室の温度が、エンジンを作動させることなく制御され得ることになる。
【0036】
そのようなシステムの設置が、図6の例示的配置において示される。この図6から理解され得るように、システム10は、可変速度のブラシレスDCコンプレッサおよび統合した冷却液ヒータを有する密閉冷媒システムを提供する。この密閉ユニットは、車両の内部または外部における様々な場所に設置されてもよい。図6では、密閉モジュールの設置が、エンジンおよび客室の外部に位置するものとして示されている。客室内部に、熱交換器およびファンを含む内部HVACユニット80が、客室の空調を提供すべく設置される。この内部ユニット80は、冷却液ヒータが密閉システム10に包含されない場合には、空気ヒータを包含してもよい。この実施の形態では、インテリジェント発電管理制御装置30もまた、客室内に設置される。この制御装置30によって、ユーザーは、本発明のシステムを制御し、読み取り情報を受信し得ることになる。
【0037】
図7を参照すると、1つの実施の形態において、空調システム100が示されている。空調システム100は、一般に、エンジン(図示せず)を有する車両102(例えば長距離輸送車両)において使用される。以下で更に十分に説明されるように、空調システム100は、車両102のエンジンが作動しているときにはいくつかの構成部材を利用し、車両のエンジンが作動していないときには他の構成部材を利用する。少なくとも1つの状況では、空調システム100内部の1つ以上の構成部材が、「エンジンオン」および「エンジンオフ」の各システムの間で共有される。
【0038】
図7において示されたように、空調システム100は、概ね、1次空調ループ104および電動コンプレッサ106を含む。1次空調ループ104は、通常、車両102のメーカーによって設置される。1次空調ループ104は、例えば、ベルト駆動式コンプレッサ108、凝縮器110、膨張弁112および蒸発器114のような典型的な空調構成部材を含む。これらの構成部材は、高圧冷媒ライン116によって互いに熱的に接続されている。従って、冷媒は、様々な状態において、かつ様々な温度および圧力で、1次空調ループ104内を循環することができるようになっている。
【0039】
1次空調ループ104は、更に、凝縮器110に近接して配設されたベルト駆動式空気流動装置118(例えばファン)を含む。ベルト駆動式空気流動装置118は、凝縮器110に対して空気を流動させ、冷媒から熱を取り出して除去する。1次空調ループ104は、更に、蒸発器114に近接して配設された電動空気流動装置120を含む。電動空気流動装置120は、車両102の内部122から熱が吸収されるように蒸発器114に対して空気を流動させる。
【0040】
図7で示したように、ベルト駆動式コンプレッサ108および凝縮器110は、防火壁124の片側に、かつ車両102のエンジンルーム126の内部に配設される。他方、膨張弁112および蒸発器114は、防火壁124の反対側に、車両102の内部122に熱的に連通して配設される。高圧ライン116が防火壁124を貫通する場所において、高圧継手(図示せず)が、車両102の製造によって設置される。
【0041】
1つの実施の形態では、車両102の内部122は、運転室128および仮眠室130に分割される。これらの実施の形態では、しばしば、追加的な仮眠室蒸発器132が1次空調ループ104の中に包含される。図7で示したように、仮眠室蒸発器132は、高圧ライン116によって蒸発器114に熱的に接続されている。追加的な電動空気流動装置134が、仮眠室蒸発器132に近接して配設され、仮眠室130から熱が吸収されるように仮眠室蒸発器に対して空気を流動させる。
【0042】
蒸発器114は、運転室128に熱的に連通して配置され、その領域を冷房するが、その一方で、仮眠室蒸発器132は、仮眠室130に熱的に連通して配置され、その領域を冷房する。仮眠室蒸発器132および蒸発器114の使用は、車両102の内部122全体が冷房されることを可能にする。必要に応じて、運転室128が冷房されない間に車両の仮眠室130が冷房され、その逆の場合もまた同様に冷房される。このようにして選択的な冷房を提供するために、膨張装置(例えば冷却液流量制御弁)、自動調温制御装置または他の同様な装置が採用されて、冷媒を送る。従って、冷媒は、蒸発器114および仮眠室蒸発器132の一方または両方に対して、平等或いは不平等に供給される。
【0043】
いくつかの状況では、仮眠室130が冷房される唯一の部屋である。これが生じる場合には、仮眠室130は、通常、例えばドアまたはカーテンによって、運転室128から遮断される。その後、蒸発器114に送られる冷媒の量と比較してすべて或いは大部分の冷媒が、仮眠室蒸発器132に送られる。更に、電動空気流動装置120が休止したままである一方で、電動空気流動装置134だけが作動される。例えば、車両102のエンジンが作動せず、車両のドライバーが夜間に仮眠室で睡眠を取るときには、このようにして仮眠室130だけを冷房することが必要になる。この場合には仮眠室130である内部122の一部のみを選択的に冷房することの結果、電力供給源は、人がいない領域のために不必要に流出されない。
【0044】
1つの実施の形態では、1次空調ループ104は、更に、受容器兼乾燥器136(まとめて「乾燥器」と呼ぶ)を含む。乾燥器136は、水分を吸着する化学物質である乾燥剤を内包する。乾燥剤は、少量の水と冷媒が偶然に結合してしまう場合に、腐食性の酸が形成されることを防止する。必要であれば、乾燥器136は、更に、液体冷媒のための一時的な保持タンクとしても機能する。
【0045】
1つの実施の形態では、1次空調ループ104は、更に、アキュムレータ138を含む。アキュムレータ138および乾燥器136は、概ね同様の目的のために機能するが、乾燥器136は、典型的には、凝縮器110の出口に接続される。対照的に、アキュムレータ138は、蒸発器114の出口に取り付けられ、液体冷媒がコンプレッサ(例えば、コンプレッサ106、108)の中に引き込まれることを防止する。
【0046】
更に図7を参照すると、電動コンプレッサ106は、1次空調ループ104に熱的に接続して示されている。実際には、電動コンプレッサ106は、ベルト駆動式コンプレッサ108に対して並列に配置される。弁140、142は、コンプレッサ106、108の各々の上流において高圧冷媒ライン116に配設される。これらの弁140、142は、1つの実施の形態では、ソレノイド弁である。
【0047】
弁140、142は、コンプレッサ106、108の各々に対する冷媒の流れを選択的に許容し、或いは制限する。例えば、車両102のエンジンが作動しているとき、弁140は開弁して弁142は閉弁し、冷媒がベルト駆動式コンプレッサ108に送られる。この状況では、電動コンプレッサ106は休止している。対照的に、車両102のエンジンが作動していないとき、弁142は開弁して弁140は閉弁し、冷媒が電動コンプレッサ106に送られる。この状況では、ベルト駆動式コンプレッサ108は休止している。各々の事例において、1次空調ループ104の中を流れる冷媒は、コンプレッサ106、108の一方によって圧縮され、車両102の内部122の冷房が行われ得ることになる。
【0048】
エンジンが作動するときにはベルト駆動式空気流動装置118のみが作動するので、電動空気流動装置144は、電動コンプレッサ108に依拠するときにはいつでも空気を循環させるべく用いられる。電動空気流動装置144は、ノーアイドリング作動の間、ベルト駆動式空気移動装置118に取って代わり、凝縮器110に対して空気を循環させる。
【0049】
車両102のエンジンが作動していないとき、電動コンプレッサ106は、例えば、凝縮器110、蒸発器114、膨張弁112、乾燥器136等のような多数の空調構成部材を1次空調ループ104と共有する。従って、車両102の内部122を冷房するノーアイドリングシステムは、1次空調ループ104によって既に直ちに利用可能である空調構成部材を二重に要求する必要がない。追加の構成部材が必要とされないので、車両における空調システム全体は、より安価になり、機械的な故障等も受けにくくなる。
【0050】
1つの実施の形態では、電動コンプレッサ106は、制御装置146に操作可能に接続されている。図1で示した制御装置30のように、制御装置146は、電動コンプレッサ106の速度を制御することが可能である。1つの実施の形態では、その制御は、コンプレッサに結合する電源の出力容量に基づく。前述のように、制御装置146に対して投入される電力の様々な供給源は、例えば、補助電源装置、支援的電力、車両発電システムおよびバッテリからのものである。他の実施の形態では、制御は、冷房需要に基づく。
【0051】
ここで、図8を参照すると、1つの実施の形態では、熱交換器148が使用され、図7の1次空調ループ104を高圧冷却液ループ150と低圧冷却液ループ152とに分割する。図2に関して上述したように、これは、高圧ライン116を防火壁124に通すときに高圧継手を使用する必要性を排除する。従って、より信頼性があり、かつ漏洩に影響されにくい低圧冷却液ライン154が、低圧冷却液ループ152の中における各構成部材を熱的に結合させる。
【0052】
図示したように、1つの実施の形態では、低圧冷却液ループ152は、冷却液ポンプ156を含む。冷却液ポンプ156が利用され、低圧の状況下において冷却液を循環する。低圧冷却液ループ152がコンプレッサを有しておらず冷媒を加圧して流動するために、冷却液ポンプ156が使用される。1つの実施の形態では、低圧冷却液ループ152は、更に、冷却液を暖める冷却液ヒータ158を含む。これは、車両102が低温環境に置かれたとき特に有益である。
【0053】
図9において示されたように、1つの実施の形態では、1次空調ループ104は、電動コンプレッサ106およびノーアイドリング凝縮器160の両者を含む。ノーアイドリング凝縮器160は凝縮器110と同じ基本的な機能を有するが、そのノーアイドリング凝縮器は、車両102のエンジンが作動していないときにも作動可能である。言い換えれば、車両102のエンジンが作動していないときには、ノーアイドリング凝縮器160に依拠するのである。
【0054】
電動コンプレッサ106およびノーアイドリング凝縮器160は、例えば、蒸発器114、膨張弁112、乾燥器136等のような多数の空調構成部材を1次空調ループ104と共有する。ここでもまた、車両102の内部122を冷房するノーアイドリングシステムは、二重の空調構成部材を内包し或いは使用する必要がない。何故なら、そのような構成部材が1次空調ループ104の中において既に直ちに利用可能だからである。
【0055】
1つの実施の形態では、電動コンプレッサ106およびノーアイドリング凝縮器160は、互いに直列に熱的に結合し、更に、これもまた互いに直列に熱的に結合するベルト駆動式コンプレッサ108および凝縮器110の組合せに対しては並列に熱的に結合する。それ故、弁140、142は、コンプレッサ108及び凝縮器110と、コンプレッサ106及び凝縮器160とに対する冷媒の流れを選択的に許容し、或いは制限する。例えば、車両102のエンジンが作動しているとき、弁140は開弁して弁142は閉弁し、冷媒がベルト駆動式コンプレッサ108および凝縮器110に送られる。この状況では、電動コンプレッサ106および凝縮器160は休止している。他方、車両102のエンジンが作動していないとき、弁142は開弁して弁140は閉弁し、冷媒が電動コンプレッサ106および凝縮器160に送られる。この状況では、ベルト駆動式コンプレッサ108および凝縮器110は休止している。各々の事例において、1次空調ループ104の中を流れる冷媒は、コンプレッサ106、108の一方によって圧縮され、車両102の内部122の冷房が行われ得ることになる。
【0056】
ここで、図10を参照すると、1つの実施の形態では、熱交換器148が使用され、図9の1次空調ループ104を高圧冷却液ループ150と低圧冷却液ループ152とに分割する。ここでもまた、このことは、高圧ライン116を防火壁124に通すときに高圧継手を使用する必要性を排除する。従って、低圧冷却液ライン154が使用され、低圧冷却液ループ152の中における各構成部材を熱的に結合させる。
【0057】
図11に移って参照すると、1つの実施の形態では、1次空調ループ104は、マルチ循環流路式蒸発器162を2次空調ループ164と共有する。このような実施の形態では、2次空調ループ164は、電動コンプレッサ166、制御装置168、膨張弁170、ノーアイドリング凝縮器172、ノーアイドリング凝縮器に隣接して配設された電動ファン174、および乾燥器176を含む点に関し、図1で示したシステム10と非常に類似している。しかし、2次空調ループ164は、図1のシステム10の中では見出されないマルチ循環流路式蒸発器162をさらに含む。1つの実施の形態では、蒸発器162は、二重循環流路マルチ式冷媒蒸発器である。
【0058】
図11において示したように、2次空調ループ164およびマルチ循環流路式蒸発器162の一部は、密封したハウジング178の中に配設される。蒸発器162の他の部分は、ハウジング178から突出し、内部122に熱的に連通し、車両の中に見れる既存の冷媒ラインに接続することも可能である。従って、モジュール式の2次空調ループ164は、容易かつ簡便に車両102に対して取り付けられ或いは中に配設される(例えば、車両102の側方室の中、バッテリ室の中等)。
【0059】
1つの実施の形態では、電動空気流動装置180は、ハウジング178の内部に配置されて、蒸発器162に対して空気を流動させ、その一方で、もう1つの電動空気流動装置182は、ハウジングの外部に配設されて、同様に作動する。従って、空気は、車両102のエンジンが作動しているときおよびそれが作動していないときにも、蒸発器162の少なくとも幾分かの部分を横断して循環され、運転室128および/または仮眠室130の内部122を空調する。
【0060】
既存の車両102への2次空調ループ164の設置(すなわち車両にループを後付けすること)は、典型的な単一循環流路式の仮眠室蒸発器を車両の仮眠室130から取り外して、それを廃棄し、それに続いて既存の冷媒ライン(例えば冷媒ライン116)を二重循環流路式蒸発器162の循環流路に接続することによっていとも簡単に実行される。設置の容易さの故に、ノーアイドリング空調システムは、車両の構成部材および構造に実質的な変更または修正を必要とすることなく、車両102の中に迅速かつ容易に設置される。
【0061】
図11で示したように、マルチ循環流路式蒸発器162は、仮眠室130に熱的に連通する。例え、そうであっても、マルチ循環流路式蒸発器162は、もう1つの実施の形態では、車両102の運転室128または内部122の全体に熱的に連通する。
【0062】
ここで、図12を参照すると、1つの実施の形態では、熱交換器148が使用され、図11の1次空調ループ104を高圧冷却液ループ150と低圧冷却液ループ152とに分割する。ここでもまた、このことは、高圧ライン116を防火壁124に通すときに高圧継手を使用する必要性を排除する。従って、低圧冷却液ライン154が使用され、低圧冷却液ループ152の中における各構成部材を熱的に接続する。図12において示したように、熱交換器148の使用の故に、マルチ循環流路式蒸発器162は、図11で示したような高圧冷却液ライン116の代わりに低圧冷却液ライン154に接続される。
【0063】
1つの実施の形態では、2次空調ループ164(図11および図12)内のコンプレッサ166、または1次空調ループ104(図7から図10)に熱的に接続されたコンプレッサ106は、周波数駆動装置によって駆動される交流(AC)コンプレッサである。それ故、コンプレッサに入力される周波数が変化すると、コンプレッサの速度すなわち出力もまたそれに対応して変化する。これは、上述のように、電源の出力を削減し、或いは節約する。
【0064】
本発明の様々な実施の形態に関する上述の説明は、例示および説明の目的のために提示された。それは、網羅的であること、或いは本発明を実施の形態に開示されたものの通りに限定することを意図していない。上述の教示内容に照らして、数多くの修正または変更が可能である。上述の実施の形態は、本発明の原理およびその実用的な応用に関する最適の実例を提示するために選択して説明されたのであり、それによって当業者が様々な実施の形態においてかつ企図された特定の用途に適する様々な修正を加えて本発明を利用することを可能にする。すべてのそのような修正および変更は、それらに対して、公正、合法かつ公平に権利が付与される幅に従って解釈されるとき、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲内に含まれるのである。
【0065】
本明細書中で引用する公報、特許出願および特許を含むすべての文献は、各文献を個々に具体的に示し、参照して組み込んだのと同様に、また、その開示内容のすべて記載されているのと同様に、ここで参照して組み込まれる。
【0066】
本発明の説明に関連して(特に特許請求の範囲に関連して)用いられる名詞および同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数および複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」および「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「〜を含むが限定しない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の記載は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に記載されているのと同様に、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例または例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中の如何なる言い回しも、本発明の実施に不可欠である、特許請求の範囲に記載されていない要素を示すものとは解釈されないものとする。
【0067】
本明細書中では、発明を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本発明の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読んだ上で、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを期待しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で発明が実施されることを予定している。従って本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載の内容の修正および均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、好ましい実施の形態で考えられるすべての変形における上記要素のいずれの組合せも本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の教示内容に従って構築した空調システムの中における冷却液の流れおよびシステム構成部材の相互接続を示す単純化した単線ブロック図である。
【図2】長距離輸送車両の客室の暖房および冷房の両方を提供することが可能であるHVACシステムを形成する本発明の代替的な実施の形態を示す図である。
【図3】本発明の教示内容に従って構築した空気ヒータを組み込んでいるHVACシステムの代替的な実施の形態を示す単純化した空気流の線図である。
【図4】本発明の実施の形態のインテリジェント発電管理制御装置によって提供される代替的な電源利用およびコンプレッサ出力容量調節を示す単純化したブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態のインテリジェント発電管理制御装置によって提供される制御パラメータの利用およびコンプレッサ出力容量調節を示す単純化したブロック図である。
【図6】本発明の1つの実施の形態に従った長距離輸送車両内における構成部材の配置を示す単純化した概略図である。
【図7】長距離輸送車両内において1次冷却液ループに熱的に接続された電動コンプレッサを示す単純化した概略図である。
【図8】長距離輸送車両内において図7の1次ループを高圧冷却液ループと低圧冷却液ループとに分割する熱交換器を示す単純化した概略図である。
【図9】長距離輸送車両内において1次冷却液ループに熱的に接続された電動コンプレッサおよびノーアイドリング凝縮器を示す単純化した概略図である。
【図10】長距離輸送車両内において図9の1次ループを高圧冷却液ループと低圧冷却液ループとに分割する熱交換器を示す単純化した概略図である。
【図11】蒸発器を共有する長距離輸送車両の1次および2次空調ループを示す単純化した概略図である。
【図12】長距離輸送車両内において図11の1次ループを高圧冷却液ループと低圧冷却液ループとに分割する熱交換器を示す単純化した概略図である。
【符号の説明】
【0069】
14 コンプレッサ
16、22、26 熱交換器
30 制御装置
42 ポンプ
44、48 熱交換器
50 冷却液ヒータ
58 熱交換器
100 空調システム
102 車両
104 1次空調ループ
106 電動コンプレッサ
108 ベルト駆動式コンプレッサ
110 凝縮器
114 蒸発器
118 ベルト駆動式空気流動装置
120 電動空気流動装置
128 運転室
130 仮眠室
132 仮眠室蒸発器
134 電動空気流動装置
140、142 弁
144 電動空気流動装置
146 制御装置
148 熱交換器
150 高圧冷却液ループ
152 低圧冷却液ループ
156 ポンプ
158 冷却液ヒータ
160 ノーアイドリング凝縮器
162 二重循環流路マルチ式蒸発器
164 2次空調ループ
180、182 電動空気流動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを有する車両用の空調システムであって、
前記車両の前記エンジンが作動しているときに作動可能であるベルト駆動式コンプレッサを含む1次空調ループと;
前記1次空調ループに熱的に接続された電動コンプレッサであって、前記車両の前記エンジンが作動していないときに作動可能である電動コンプレッサとを備える;
空調システム。
【請求項2】
前記ベルト駆動式コンプレッサは前記電動コンプレッサが作動しているときに作動しないようにされ、前記電動コンプレッサは前記ベルト駆動式コンプレッサが作動しているときに作動しないようにされた、請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記ベルト駆動式コンプレッサおよび前記電動コンプレッサは、互いに並列に熱的に接続された、請求項1に記載の空調システム。
【請求項4】
前記1次空調ループは凝縮器を含み、前記空調システムは、前記エンジンが作動していないときに前記凝縮器に対して空気を流動させる電動空気流動装置を更に備える、請求項1に記載の空調システム。
【請求項5】
前記空調システムは少なくとも1つの弁を更に備え、前記弁は、前記車両の前記エンジンが作動しているときには前記ベルト駆動式コンプレッサに、前記車両の前記エンジンが作動していないときには前記電動コンプレッサに冷媒を送る、請求項1に記載の空調システム。
【請求項6】
前記電動コンプレッサは制御装置に動作可能に接続され、前記制御装置が前記電動コンプレッサの速度を制御する、請求項1に記載の空調システム。
【請求項7】
前記1次空調ループは、前記車両の運転室内部に熱的に連通する運転室蒸発器と、前記車両の仮眠室内部に熱的に連通する仮眠室蒸発器とを含む、請求項1に記載の空調システム。
【請求項8】
前記1次空調ループは、熱交換器によって高圧冷却液ループと低圧冷却液ループとに分割される、請求項1に記載の空調システム。
【請求項9】
前記低圧冷却液ループは、ポンプと少なくとも1つの蒸発器とを含み、前記少なくとも1つの蒸発器が前記車両の内部に熱的に連通する、請求項8に記載の空調システム。
【請求項10】
前記低圧冷却液ループは冷却液ヒータを含む、請求項9に記載の空調システム。
【請求項11】
前記電動コンプレッサおよび前記1次空調ループに熱的に接続されたノーアイドリング凝縮器を更に備え、前記ノーアイドリング凝縮器は、前記車両の前記エンジンが作動していないときに作動可能である、請求項1に記載の空調システム。
【請求項12】
前記1次空調ループからの凝縮器は前記ノーアイドリング凝縮器が作動しているときに作動しないようにされ、前記ノーアイドリング凝縮器は前記1次空調ループからの前記凝縮器が作動しているときに作動しないようにされた、請求項11に記載の空調システム。
【請求項13】
前記電動コンプレッサおよび前記ノーアイドリング凝縮器は、互いに直列に熱的に接続され、互いに直列に熱的に接続された前記ベルト駆動式コンプレッサおよび前記凝縮器の組合せに対しては並列に熱的に接続された、請求項11に記載の空調システム。
【請求項14】
電動空気流動装置が、前記ノーアイドリング凝縮器に近接して配設され、前記車両の前記エンジンが作動していないとき前記ノーアイドリング凝縮器に対して空気を流動させる、請求項11に記載の空調システム。
【請求項15】
前記ノーアイドリング凝縮器および前記電動コンプレッサは制御装置に作動可能に接続され、前記制御装置が前記電動コンプレッサの出力を制御する、請求項11に記載の前記空調システム。
【請求項16】
前記1次空調ループは熱交換器によって高圧冷却液ループと低圧冷却液ループとに分割され、前記低圧冷却液ループは、前記車両の内部の部分に熱的に連通する蒸発器と、冷却液ポンプと、冷却液ヒータとを含む、請求項11に記載の空調システム。
【請求項17】
長距離輸送車両用またはオフロード車両用の空調システムであって、
前記車両のエンジンが作動しているときに作動可能である1次空調ループであって、蒸発器を含む1次空調ループと;
前記車両の前記エンジンが作動していないときに作動可能である2次空調ループであって、前記蒸発器を前記1次空調ループと共有する2次空調ループとを備える;
空調システム。
【請求項18】
前記蒸発器は二重循環流路マルチ式冷媒蒸発器である、請求項17に記載の空調システム。
【請求項19】
前記2次空調ループおよび前記蒸発器の一部がハウジング内に密閉された、請求項17に記載の空調システム。
【請求項20】
前記蒸発器は前記車両の仮眠室の内部に熱的に連通する、請求項17に記載の空調システム。
【請求項21】
前記2次空調ループは、周波数駆動装置によって駆動される交流(AC)コンプレッサを含む、請求項17に記載の空調システム。
【請求項22】
前記2次空調ループ内の電動コンプレッサが制御装置に作動可能に接続され、前記制御装置が前記電動コンプレッサの前記速度を制御する、請求項17に記載の空調システム。
【請求項23】
前記車両のエンジンが作動しているときに作動可能である1次空調ループと、前記車両のエンジンが作動していないときに作動可能である2次空調ループとを有する車両の冷房方法であって:
前記1次空調システムと前記2次空調システムとの間で少なくとも1つの空調構成部材を共有するステップを備える;
車両の冷房方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの空調構成部材は、二重循環流路マルチ式冷媒蒸発器である、請求項23に記載の車両の冷房方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの空調構成部材が蒸発器および凝縮器の両者である、請求項23に記載の車両の冷房方法。
【請求項26】
前記1次空調ループおよび前記2次空調ループの一方に対してのみ冷媒を選択的に膨張供給するステップを更に備える、請求項23に記載の車両の冷房方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−201411(P2008−201411A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−37068(P2008−37068)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(508051137)バーグストローム・インコーポレーテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Bergstrom, Inc.
【住所又は居所原語表記】2390 Blackhawk Road P.O.Box 6007 Rockford Illinois 61125−6007 United States of America
【Fターム(参考)】