説明

エンジンフード

【課題】側板部の膨出を確実に防止した上で、通気口の開口面積を大きくして冷却風の吸排気量を増加させることができるエンジンフードを提供する。
【解決手段】エンジン12の上方に位置する天井板部30と、この天井板部30に連設される前後の長辺側板部31,32および左右の短辺側板部33,34と、冷却風が通る通気口35〜37とを備えるエンジンフード23において、天井板部30に固着された梁部材38と前側の長辺側板部31とを繋ぐ拘束部材40を設けるとともに、同梁部材38と後側の長辺側板部32の補強部材39とを繋ぐ拘束部材41を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の作業機械のエンジンルームに装備されて好適なエンジンフードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、油圧ショベルにおいて、エンジンルームは、上部旋回体の後部に設けられている。エンジンルームは、エンジンや冷却装置などを収容する。エンジンルームの上部を開閉可能とするために、エンジンルームの骨組を構成するエンジンルームフレームにヒンジを介してエンジンフードが取り付けられている。
【0003】
次に、油圧ショベルに装備される従来のエンジンフードの構造について、図9(a)(b)を用いて説明する。
【0004】
図9(a)(b)に示されるエンジンフード100は、図示されないエンジンの上方に位置する長方形状の天井板部101を備えている。
天井板部101の各長辺には、天井板部101と略直角を成す長辺側板部102,103が連設されている。また、天井板部101の各短辺には、天井板部101と略直角を成す短辺側板部104,105が連設されている。
【0005】
天井板部101には、冷却風の排気に供する複数の通気口106が設けられている。左側の短辺側板部104には、冷却風の排気に供する複数の通気口107が設けられている。右側の短辺側板部105には、冷却風の吸気に供する複数の通気口108が設けられている。
【0006】
図示されないエンジンに付設の冷却ファンが回転駆動されると、右側の短辺側板部105の通気口108を通して外部から冷却風がエンジンルーム内に取り込まれる。エンジンルーム内に取り込まれた冷却風は、ラジエータ等の冷却装置での冷却の用に供された後、天井板部101の通気口106および左側の短辺側板部104の通気口107のそれぞれを通して外部に放出される。
【0007】
エンジンフード100を備えるクーリングシステムにおいては、通気口106〜108の開口面積を大きくすることにより、冷却性能の向上を図ることができる。
【0008】
なお、エンジンフードに、冷却風の通気口としての吸気口および排気口を設けるようにしたものは、例えば特許文献1にて知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−85010号公報
【0010】
エンジンフード100は、金属板材にプレス加工機による深絞り加工を施すことにより成形される。したがって、エンジンフード100には、深絞り加工に伴う残留応力が生じる。この残留応力は、深絞り加工時に素材に加えられた外力と反対の力である。つまり、エンジンフード100には、長辺側板部102,103および短辺側板部104、105をそれぞれ外側に広げるような内部応力が残る。
【0011】
通気口106〜108は、プレス加工後の成形品にレーザ光線などを用いた熱切断加工機による穿孔により形成される。
【0012】
ところで、冷却風の吸排気量を増加させるために、例えば通気口106〜108の個数を増やすなどの手段にて通気口106〜108の開口面積を大きくすると、それに比例してエンジンフード100の剛性が低下する。剛性が低下すると、深絞り加工に伴う残留応力の影響や、通気口106〜108の形成時の入熱の影響により、残留応力が開放されて、特に長辺側板部102,103が外側に膨らむような変形が生じてしまう。この変形の修正のために、多大な工数が必要となる。
【0013】
このため、従来のエンジンフード100では、冷却風の吸排気量の向上を図るために思うように通気口の開口面積を大きくすることができないという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、側板部の膨出を確実に防止した上で、通気口の開口面積を大きくして冷却風の吸排気量を増加させることができるエンジンフードを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、第1発明によるエンジンフードは、
エンジンの上方に位置する天井板部と、この天井板部に連設される側板部と、冷却風が通る通気口とを備えるエンジンフードにおいて、
前記天井板部に対する前記側板部の位置を拘束する拘束部材を設けることを特徴とするものである。
【0016】
次に、第2発明によるエンジンフードは、
エンジンの上方に位置する天井板部と、この天井板部に連設され、互いに対向する一対の側板部と、冷却風が通る通気口とを備えるエンジンフードにおいて、
前記一対の側板部の互いの位置を拘束する拘束部材を設けることを特徴とするものである。
【0017】
第1発明または第2発明において、前記拘束部材と前記側板部との間に、前記側板部を補強する補強部材が介在されるのが好ましい(第3発明)。
【0018】
第1発明乃至第3発明において、前記拘束部材に、エンジンと前記天井板部との間を仕切る傘部材が取り付けられるのが好ましい(第4発明)。
【0019】
第4発明において、前記傘部材に吸音部材もしくは遮音部材が取り付けられるのが好ましい(第5発明)。
【発明の効果】
【0020】
第1発明においては、天井板部に対する側板部の位置を拘束する拘束部材が設けられる。これにより、通気口の開口面積を大きくした際の剛性低下を補うことができるのは勿論のこと、その剛性低下に伴う側板部の膨出を確実に防止することができる。したがって、通気口の開口面積を大きくして冷却風の吸排気量を増加させることができる。
第2発明においては、互いに対向する一対の側板部の互いの位置を拘束する拘束部材が設けられる。これにより、通気口の開口面積を大きくした際の剛性低下を補うことができるのは勿論のこと、その剛性低下に伴う側板部の膨出を確実に防止することができる。したがって、第1発明と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るエンジンフードを具備する油圧ショベルの側面図
【図2】図1のA−A線断面図
【図3】図2のB−B線断面図
【図4】第1の実施形態に係るエンジンフードの外面側の全体斜視図
【図5】第1の実施形態に係るエンジンフードの内面側の全体斜視図
【図6】図5のC−C線断面図
【図7】第2の実施形態に係るエンジンフードの内面側の全体斜視図
【図8】図7のD−D線断面図
【図9】従来のエンジンフードの構造説明図で、外面側の全体斜視図(a)および内面側の全体斜視図(b)
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明によるエンジンフードの具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下に述べる実施の形態は、油圧ショベルに装備されるエンジンフードに本発明が適用された例であるが、勿論これに限定されるものではない。また、以下において、特に断りのない限り、前後左右方向は、上部旋回体の前後左右方向に一致させている。
【0023】
〔第1の実施形態〕
<油圧ショベルの概略説明>
図1に示される油圧ショベル1は、履帯式走行装置を具備する下部走行体2と、下部走行体2上に旋回自在に設置される上部旋回体3とを備えている。
上部旋回体3は、その骨組を構成するレボフレーム4を有している。レボフレーム4の前部中央部分には、ブーム5、アーム6およびバケット7が互いに回動自在に連結されてなる作業機8が取り付けられている。レボフレーム4の前部左側部分には、運転室を構成するキャブ9が設置されている。レボフレーム4の後部には、エンジンルーム10が設けられている。レボフレーム4の最後部には、カウンタウェイト11が搭載されている。
【0024】
<エンジンルームの概略説明>
図2に示されるように、エンジンルーム10は、エンジン12や冷却装置13などを収容する動力室である。エンジンルーム10は、その骨組を構成するエンジンルームフレーム14を備えている。エンジンルームフレーム14は、主として、レボフレーム4に立設される支柱部材15と、この支柱部材15によって支持される四角枠状部材16とにより構成されている。エンジンルームフレーム14には、隔壁板17、左外装パネル18、右外装パネル19、左サイドカバー20、右サイドカバー21、アンダカバー22およびエンジンフード23がそれぞれ取り付けられている。
エンジンルーム10は、エンジンルームフレーム14に取り付けられた上記部品17〜23と、カウンタウェイト11(図3参照)とで囲まれた空間24を有している。
【0025】
<エンジンルームの構成部品の説明>
図3に示されるように、隔壁板17は、上部旋回体3の略中心部に設置されるメインコントロールバルブ25とエンジン12とを仕切る板である。
図2に示されるように、左外装パネル18は、エンジンルーム10の左側部の上面を構成するパネルである。左外装パネル18には、冷却風の排気に供する複数の通気口26が設けられている。
右外装パネル19は、エンジンルーム10の右側部の上面を構成するパネルである。右外装パネル19には、冷却風の吸気に供する複数の通気口27が設けられている。
左サイドカバー20は、エンジンルームフレーム14の左側開口を開閉可能に塞ぐカバーであり、エンジンルーム10の左側面を構成する。
右サイドカバー21は、エンジンルームフレーム14の右側開口を開閉可能に塞ぐカバーであり、エンジンルーム10の右側面を構成する。右サイドカバー21には、冷却風の吸気に供する複数の通気口28が設けられている。
アンダカバー22は、エンジンルーム10の下面を構成するカバーである。
エンジンフード23は、エンジンルームフレーム14に取着される左外装パネル18と右外装パネル19との間の上側開口29を開閉可能に塞ぐフードであり、エンジンルーム10の上部を構成する。
【0026】
次に、エンジンフードの構造について、図4〜図6を用いて説明する。
【0027】
<エンジンフードの概略説明(1)>
図4に示されるように、エンジンフード23は、エンジン12(図2参照)の上方に位置する長方形状の天井板部30を備えている。天井板部30の前後の各長辺には、天井板部30と略直角を成す長辺側板部31,32が連設されている。天井板部30の左右の各短辺には、天井板部30と略直角を成す短辺側板部33,34が連設されている。
【0028】
<エンジンフードの概略説明(2)>
エンジンフード23は、金属板材にプレス加工機による深絞り加工を施すことにより成形される。天井板部30、長辺側板部31,32および短辺側板部33,34は、互いに継ぎ目がなく、一体的に構成されている。なお、深絞り加工後に、成形品の金型からの離型を容易にするため、成形品に抜き勾配が付される。このため、天井板部30と長辺側板部31,32との成す角および天井板部30と短辺側板部33,34との成す角は、それぞれ90°よりも若干大きく設定される。また、天井板部30と長辺側板部31,32と短辺側板部33,34との互いの交わりの角部には、それぞれ丸味が付されている。
【0029】
<通気口の配置の説明>
天井板部30の略左半分には、冷却風の排気に供する複数の通気口35が設けられている。左側の短辺側板部33には、冷却風の排気に供する複数の通気口36が設けられている。図5に示されるように、右側の短辺側板部34には、冷却風の吸気に供する複数の通気口37が設けられている。なお、これら通気口35〜37は、プレス加工後の成形品にレーザ光線などを用いた熱切断加工機による穿孔により形成される。
【0030】
<通気口の形状の説明>
図4および図5に示されるように、左右の短辺側板部33,34に設けられる通気口36,37は、矩形状に形成されている。これに対し、天井板部30に設けられる通気口35は、細長い長円形状に形成されている。天井板部30の通気口35を細長い長円形状とすることにより、天井板部30上に落下する枯葉等の小片落下物がエンジンルーム10内に侵入しにくくすることができる。
【0031】
<天井板部の梁部材の説明>
図5および図6に示されるように、天井板部30の裏面には、梁部材38が固着されている。梁部材38は、天井板部30の前後方向中央位置で左右方向に延びる断面Tの字形状の棒状部材で構成されている。天井板部30の裏面に梁部材38の上面を突き合わせた状態で、梁部材38が天井板部30に溶接により接合されている。
【0032】
<長辺側板部の補強部材の説明>
後側の長辺側板部32の裏面には、補強部材39が固着されている。補強部材39は、長辺側板部32の下部位置で左右方向に延びる断面略コの字形状の部材で構成されている。補強部材39の開放側の面と長辺側板部32の裏面とを向い合わせた状態で、補強部材39が長辺側板部32に溶接で接合されている。長辺側板部32に補強部材39を設けることにより、長辺側板部32の膨出をより確実に防止することができるのは勿論のこと、後述する蝶番47の取付強度を確実に確保することができる。
【0033】
<拘束部材の説明>
梁部材38と前側の長辺側板部31との間には、両者を繋ぐ拘束部材40が配設されている。拘束部材40は、天井板部30に対する前側の長辺側板部31の位置を拘束する。拘束部材40は、断面コの字形状の棒状部材で構成され、開放側を上方に向けた状態で梁部材38および前側の長辺側板部31のそれぞれに溶接により接合されている。また、梁部材38と後側の長辺側板部32の補強部材39との間には、両者を繋ぐ拘束部材41が配設されている。拘束部材41は、天井板部30に対する後側の長辺側板部32の位置を拘束する。拘束部材41も拘束部材40と同様に、断面コの字形状の棒状部材で構成され、開放側を上方に向けた状態で梁部材38および補強部材39のそれぞれに溶接により接合されている。
【0034】
<拘束部材の配置等の説明>
拘束部材40および拘束部材41はいずれも、左右方向に所定間隔を存して2本ずつ配置されている。拘束部材40は、梁部材38から前側の長辺側板部31の下部位置に向かって下り傾斜で延設されている。また、拘束部材41は、梁部材38から補強部材39に向かって下り傾斜で延設されている。
なお、拘束部材40および拘束部材41が全体として山形形状にされているのは、エンジン12やその周辺機器との干渉を避け、エンジンルーム10内の有効スペースをより広く確保するためである。
【0035】
<傘部材の説明>
拘束部材40,41には、傘部材42がボルト43によって固定されている。傘部材42は、エンジン12(図3参照)と天井板部30との間を仕切る板状部材で構成されている。この傘部材42により、天井板部30の通気口35を通ってエンジン12へと落下する雨等を遮ることができる。
前述したように、拘束部材40,41はいずれも、梁部材38を起点として下り傾斜で延設されている。このため、傘部材42には、拘束部材40,41と同様の傾斜が付されることになる。これにより、傘部材42で遮った雨等をエンジン12の外側に効率良く確実に流れ落とすことができる。
【0036】
<傘部材の好配置例の説明>
傘部材42は、エンジン12における他の構成部品と比べて特に高温となる構成部品(以下、「高温部品」という。)の上方に配置されるのが好ましい。こうすることにより、高温部品が雨等で急冷されてひび割れが生じる等の不具合の発生を確実に防ぐことができる。なお、高温部品としては、例えばターボチャージャーや排気マニホールドなどが挙げられる。
【0037】
<吸音部材の説明>
傘部材42の表裏それぞれの板面には、吸音部材(遮音部材でも可)44が取り付けられている。これにより、エンジン12等からの騒音を効果的に吸収することができ、騒音を低減することができる。
吸音部材44は、押えピン45によって傘部材42に固定される。なお、押えピン45による固定に代えて、両面テープや接着剤等の固定手段を用いて吸音部材44を傘部材42に貼り付けるようにしてもよい。吸音部材44としては、低・中周波数域で吸音効果に優れた材料で比較的厚肉に形成されたものを用いるのが好ましい。本実施形態では、吸音部材44として、PET(ポリエチレンテレフタレート)不織布を主材として構成されるものが用いられる。なお、吸音部材44と同様の吸音部材46がエンジンフード23の裏面の適宜箇所に貼り付けられている。
【0038】
<エンジンフードの開閉構造の説明(1)>
図5に示されるように、後側の長辺側板部32には、左右方向に所定間隔を存して2個の蝶番47が配置されている。図3に示されるように、エンジンフード23とエンジンルームフレーム14とは、蝶番47によって接続されている。エンジンフード23を蝶番47のヒンジ部分を中心として上下方向に回動することにより、上側開口29(図2参照)に対しエンジンフード23を開閉することができる。
【0039】
<エンジンフードの開閉構造の説明(2)>
エンジンフード23とエンジンルームフレーム14との間には、ガススプリング48が配置されている。ガススプリング48は、エンジンフード23の開操作をアシストするとともに、エンジンフード23の開状態を保持するものである。
エンジンフード23の拘束部材41には、ガススプリング48の取付用の第1ブラケット49が設けられている。エンジンルームフレーム14の支柱部材15には、ガススプリング48の取付用の第2ブラケット50が設けられている。ガススプリング48の一端部(上端部)は、第1ブラケット49にピン51を介して連結されている。ガススプリング48の他端部(下端部)は、第2ブラケット50にピン52を介して連結されている。
こうして、エンジンフード23の開操作方向に付勢力を発するガススプリング48を設けることにより、エンジンフード23の開操作を容易に行うことができるとともに、エンジンフード23の開状態を容易に保持することができる。
なお、エンジンフード23の閉状態の保持と解除を容易にするため、エンジンルームフレーム14の四角枠状部材16に設けられる図示されない掛け金に掛け止め可能な止め金具53がエンジンフード23の前側の長辺側板部31に取り付けられている。
【0040】
<冷却風の流れ経路の説明>
以上に述べたように構成される本実施形態のエンジンフード23においては、図2に示されるように、エンジン12に付設の冷却ファン12aが回転駆動されると、右側の短辺側板部34の通気口37や、右外装パネル19の通気口27、右サイドカバー21の通気口28を通して外部から冷却風Qがエンジンルーム10内に取り込まれる。エンジンルーム10内に取り込まれた冷却風Qは、ラジエータ等の冷却装置13での冷却の用に供された後、天井板部30の通気口35、左側の短辺側板部33の通気口36および左外装パネル18の通気口26のそれぞれを通して外部に放出される。
【0041】
<冷却性能を向上させるための手段の例示とその背反事項>
冷却性能を向上させるために、例えば、少ない冷却風量に対応できるサイズの大きいラジエータまたはフィンピッチのより細かいラジエータを採用することも考えられるが、装置の大型化やコスト高を招いてしまう。そのため、本実施形態では、エンジンフード23における通気口35〜37の個数を増やす、あるいは通気口35〜37を大きくするなどして、通気口35〜37の開口面積を従来よりも大きくすることにより、冷却性能の向上を図るようにしている。しかし、通気口35〜37の開口面積を大きくすると、それに比例してエンジンフード23の剛性が低下する。剛性が低下すると、深絞り加工に伴う残留応力の影響や、通気口35〜37の形成時の入熱の影響により、残留応力が開放されて、特に長辺側板部31,32が外側に膨らむような変形が生じてしまう。
【0042】
<第1の実施形態のエンジンフードの作用効果の説明>
そこで、本実施形態のエンジンフード23においては、天井板部30に対する長辺側板部31,32の位置を拘束する拘束部材40,41が設けられる。これにより、通気口35〜37の開口面積を大きくした際の剛性低下を補うことができるのは勿論のこと、その剛性低下に伴う長辺側板部31,32の膨出を確実に防止することができる。したがって、通気口35〜37の開口面積を大きくて冷却風の吸排気量を増加させることができ、これによって冷却性能の向上を図ることができる。
なお、通気口35〜37の個数を増やすなどして開口面積を大きくすると、通気口35〜37を通して外部に漏れ出すエンジン12等の騒音が増えるという懸念がある。本実施形態のエンジンフード23では、エンジン12の上方に配置される傘部材42に吸音部材44が取り付けられているので、この吸音部材44でエンジン12等の騒音をより効果的に吸収することができる。したがって、騒音が増大するようなことはない。
ところで、本実施形態のエンジンフード23においては、前側に拘束部材40が、後側に拘束部材41がそれぞれ設けられる例を示したが、これに限定されるものではなく、前後の拘束部材40,41のいずれか一方のみでも、長辺側板部31,32の膨出を防ぐ効果がある。
【0043】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係るエンジンフードについて図7および図8を用いて以下に説明する。なお、本実施形態において、先の実施形態と同一または同様のものについては、図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、先の実施形態と異なる点を中心に説明することとする。
【0044】
<本実施形態のエンジンフードの特徴点の説明>
先の実施形態のエンジンフード23においては、天井板部30に対する長辺側板部31,32の位置を拘束する拘束部材40,41が設けられている。これに対し、本実施形態のエンジンフード23Aにおいては、互いに向き合う前側の長辺側板部31と後側の長辺側板部32との互いの位置を拘束する拘束部材60が設けられている。
【0045】
<拘束部材の説明>
拘束部材60は、左右方向に所定間隔を存して2本配置されている。拘束部材60は、断面コの字形状の棒状部材で構成され、開放側を下方に向けた状態で前側の長辺側板部31および後側の長辺側板部32の補強部材39のそれぞれに溶接により接合されている。拘束部材60は、水平部60aと、第1傾斜部60bと、第2傾斜部60cとを有している。水平部60aは、天井部30との間に隙間Sを持って前後方向に水平に延設されている。第1傾斜部60bは、水平部60aの前端部位から前側の長辺側板部31の下部に向かって下り傾斜で延設されている。第2傾斜部60cは、水平部60aの後端部位から後側の長辺側板部32の補強部材39に向かって下り傾斜で延設されている。
なお、拘束部材60が水平部60a、第1傾斜部60bおよび第2傾斜部60cを有する山形形状にされているのは、エンジン12やその周辺機器との干渉を避け、エンジンルーム10内の有効スペースをより広く確保するためである。
【0046】
<傘部材の説明>
左右の拘束部材60における互いの水平部60aには、傘部材42が溶接接合によって固定されている。左右の拘束部材60における互いの第2傾斜60cにも、傘部材42が溶接接合によって固定されている。
前述したように、拘束部材60の第2傾斜部60cは、水平部60の後端部位から後側の長辺側板部32の補強部材39に向かって下り傾斜で延設されている。このため、第2傾斜部60cに固定されている傘部材42には、第2傾斜部60cと同様の傾斜が付されることになる。これにより、雨等をエンジン12の外側に確実に流れ落とすことができる。
【0047】
<第2の実施形態のエンジンフードの作用効果の説明>
本実施形態のエンジンフード23Aにおいては、前側の長辺側板部31と後側の長辺側板部32との互いの位置を拘束する拘束部材60が設けられる。これにより、通気口35〜37の開口面積を大きくした際の剛性低下を補うことができるのは勿論のこと、その剛性低下に伴う長辺側板部31,32の膨出を確実に防止することができる。したがって、第1の実施形態のエンジンフード23と同様の作用効果を得ることができる。
【0048】
以上、本発明のエンジンフードについて、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、各実形態に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のエンジンフードは、側板部の膨出を確実に防止した上で、通気口の開口面積を大きくして冷却風の吸排気量を増加させることができるという特性を有していることから、作業機械のエンジンルームの上部構成部材の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 油圧ショベル
10 エンジンルーム
12 エンジン
13 冷却装置
23,23A エンジンフード
30 天井板部
31 長辺側板部(前)
32 長辺側板部(後)
33 短辺側板部(左)
34 短辺側板部(右)
35,36 通気口(排気)
37 通気口(吸気)
39 補強部材
40,41,60 拘束部材
42 傘部材
44 吸音部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの上方に位置する天井板部と、この天井板部に連設される側板部と、冷却風が通る通気口とを備えるエンジンフードにおいて、
前記天井板部に対する前記側板部の位置を拘束する拘束部材を設けることを特徴とするエンジンフード。
【請求項2】
エンジンの上方に位置する天井板部と、この天井板部に連設され、互いに対向する一対の側板部と、冷却風が通る通気口とを備えるエンジンフードにおいて、
前記一対の側板部の互いの位置を拘束する拘束部材を設けることを特徴とするエンジンフード。
【請求項3】
前記拘束部材と前記側板部との間に、前記側板部を補強する補強部材が介在される請求項1または2に記載のエンジンフード。
【請求項4】
前記拘束部材に、エンジンと前記天井板部との間を仕切る傘部材が取り付けられる請求項1〜3のいずれかに記載のエンジンフード。
【請求項5】
前記傘部材に吸音部材もしくは遮音部材が取り付けられる請求項4に記載のエンジンフード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−12446(P2011−12446A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157275(P2009−157275)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】