説明

エンジンルーム内の仕切構造

【課題】エンジンルーム内への補機の配置レイアウトの自由度を向上できる仕切構造を提供すること。
【解決手段】建設機械のエンジンルーム44内の仕切構造は、エンジンルーム44内のクーリングユニット6とクーリングユニット6を冷却するファン5との間に設けられ、エンジンルーム44内をクーリングユニット6側とエンジン42側とに仕切る仕切部材9を備え、仕切部材9は、クーリングユニット6横で折曲した折曲部92を有し、折曲部92で補機配置スペースSを形成する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械のエンジンルーム内の仕切構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、油圧ショベル等の建設機械は、ラジエータやオイルクーラ等のクーリングユニットと、このクーリングユニットへの送風を行うファンとを備えている。エンジンルーム内では、ファンの回転駆動により外部からの空気がクーリングユニットに送られてクーリングユニットが冷やされ、クーリングユニットでの熱交換により、エンジンの冷却水や作動油が冷却される。冷やされた冷却水や作動油は、再びエンジンや油圧機器に送られて、エンジンを冷却したり、油圧機器を作動させたりする。
【0003】
このようなクーリングユニットの冷却を効果的に行うために、エンジンルーム内をクーリングユニット側とエンジン側とに仕切る構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の仕切構造では、エンジンルーム内に仕切り板を設けることで、エンジンルーム内をエンジン側とクーリングユニット側とに仕切っている。このような仕切構造により、エンジン側の高温の空気をクーリングユニット側に逆流させないようにして、クーリングユニットの冷却効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−336694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジンルーム内には、エンジンやクーリングユニットの他に多くの補機が収容されている。これらの補機は、互いの関連性やメンテナンス性を考慮した配置とする必要があるが、エンジンルーム内のスペースは限られている。このため、クーリングユニットの周辺部分にも、冷却効率に影響のない範囲で、補機の配置スペースを確保することが必要になる。
【0006】
しかしながら、特許文献1の仕切構造では、クーリングユニット横に仕切板が設けられているため、クーリングユニット周辺の補機の配置が制限されてしまい、補機の配置レイアウトの自由度が十分でないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、エンジンルーム内への補機の配置レイアウトの自由度を向上できる仕切構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の仕切構造は、建設機械のエンジンルーム内の仕切構造であって、前記エンジンルーム内のクーリングユニットと前記クーリングユニットを冷却するファンとの間に設けられ、前記エンジンルーム内を前記クーリングユニット側とエンジン側とに仕切る仕切部材を備え、前記仕切部材は、前記クーリングユニット横で折曲した折曲部を有し、前記折曲部で補機配置スペースを形成することを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記仕切部材は、前記補機配置スペースに配置された補機を囲むように前記折曲部から段折された段折部を有することが望ましい。
【0010】
本発明において、前記エンジンルームには、カウンタウェイトが設けられ、前記カウンタウェイトは、前記補機配置スペースに面する部分が切り欠かれた補機収容部を有し、前記折曲部は、前記補機配置スペースを挟んで前記補機収容部と対向していることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の仕切構造によれば、エンジンルーム内をクーリングユニット側とエンジン側とに仕切る仕切部材を備え、仕切部材は、クーリングユニット横で折曲した折曲部を有し、折曲部で補機配置スペースを形成するので、クーリングユニット横の補機配置スペースに配置した補機と仕切部材とが干渉するのを防止できる。従って、クーリングユニット横にも補機を配置することができるので、エンジンルーム内における補機の配置レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0012】
本発明において、仕切部材が、補機配置スペースに配置された補機を囲むように折曲部から段折された段折部を有する場合、仕切部材からエンジン側に配置すべき補機とクーリングユニット側に配置すべき補機とがクーリングユニット近傍に並設されていても、これらの補機をエンジン側とクーリングユニット側とに仕切って配置することができる。従って、補機の耐熱特性にかかわらず、クーリングユニット近傍に補機を配置することができるので、補機の配置レイアウトの自由度をより一層向上できる。
【0013】
本発明において、エンジンルームに設けられたカウンタウェイトは、補機配置スペースに面する部分が切り欠かれた補機収容部を有し、折曲部が、補機配置スペースを挟んで補機収容部と対向している場合、折曲部および補機収容部間に、より大きな補機配置スペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る建設機械を示す側面図。
【図2】建設機械に搭載された旋回体の内部を示す平面図。
【図3】旋回体内に設けられた冷却用仕切部材を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の実施形態に係る油圧ショベル(建設機械)1が示されている。この油圧ショベル1は、走行装置2、作業機3、および旋回体4を備えて構成される。
走行装置2は、旋回体4の下部に設けられ、旋回体4を水平方向に回転自在に支持している。この走行装置2は、左右一対のクローラ式の走行体21を備えている。
【0016】
作業機3は、旋回体4を構成するメインフレームに対して上下方向に揺動自在に軸支されるブーム31と、ブーム31の先端に揺動自在に設けられるアーム32と、アーム32の先端に設けられるバケット33と、ブーム31を駆動するブームシリンダ34と、アーム32を駆動するアームシリンダ35と、バケット33を駆動するバケットシリンダ36とを備えて構成される。
【0017】
作業機3には、旋回体4内部に設けられた油圧回路から圧油が供給され、各シリンダ34〜36を圧油によって伸縮させることにより、バケット33を上下方向に移動させたり、バケット33の姿勢を変更したりすることができ、掘削作業、地均し作業、土砂積み込み作業等の様々な作業を行うことができる。
【0018】
旋回体4は、前方側に設けられた作業機3と、略中央部に設けられたキャブ41と、後方側に設けられたエンジン42と、図示を略したが、エンジン42によって駆動される油圧ポンプを含む油圧回路とを搭載している。この旋回体4の後方部には、旋回体4の左右方向に沿った支持軸Pを中心に回動自在とされた、開閉式のエンジンフード43が設けられている。
【0019】
図2に示すように、旋回体4は、内部にエンジンルーム44を有し、エンジンルーム44は、周囲を中央側隔壁45、左右の側壁46、カウンタウェイト47、およびエンジンフード43(図1参照)にて覆われている。エンジンルーム44内には、センターフレーム48に支持されてエンジン42が収容され、エンジン42の近傍には、クーリングユニット6を冷却するためのファン5が設けられている。
【0020】
ファン5は、エンジン42を駆動源とする図示しないファンモータの出力軸に接続され、かつファンモータによって回転駆動される。このファン5は、周囲をファンシュラウド51で覆われており、ファンシュラウド51の互いに対向する面には、それぞれ開口511,512が設けられている。これらファン5およびファンシュラウド51を間に挟んで、エンジン42の反対側にクーリングユニット6が設けられている。
【0021】
クーリングユニット6は、ラジエータ61、アフタクーラ62、およびオイルクーラ63を備えている。クーリングユニット6において、ラジエータ61、アフタクーラ62、およびオイルクーラ63は、エンジンルーム44内の一箇所に集中して配置され、かつ旋回体4の前後方向に沿って直線状に並設されている。このような配置により、クーリングユニット6の設置スペースを低減するとともに、クーリングユニット6のメンテナンス性を向上させている。
【0022】
ファン5およびクーリングユニット6横の補機配置スペースSには、燃料フィルタ7およびオイルフィルタ8が設けられている。ファン5およびクーリングユニット6とエンジンフード43との間に設けられた補機配置スペースSは、カウンタウェイト47に臨んでおり、カウンタウェイト47は、補機配置スペースSに面する部分が切り欠かれた補機収容部471を有している。この補機収容部471により、より大きな補機配置スペースSが確保される。
また、図示を略するが、クーリングユニット6からエンジン42とは反対側のスペースには、バッテリや電子機器等の耐熱性の低い補機が配置されている。
【0023】
ファン5およびクーリングユニット6間には、仕切部材9が設けられ、エンジンルーム44内をエンジン42側とクーリングユニット6側とに仕切っている。仕切部材9は、中央側隔壁45に接続されて中央側隔壁45から延びる接続部91と、この接続部91から折曲した折曲部92と、折曲部92からさらに折曲し接続部91に対して段折した段折部93とを備え、接続部91、折曲部92、および段折部93が、連続する一体成形品として形成されている。
【0024】
このうちの接続部91には、図3に示すように、ファンシュラウド51の開口511,512に対応する位置に貫通孔911が設けられ、この貫通孔911とファンシュラウド51の開口511,512とにより、クーリングユニット6側とエンジン42側とが連通されている。クーリングユニット6側の側壁46に設けられた図示しない通気孔からエンジンルーム44に流入した外気は、ファン5の回転駆動により、クーリングユニット6の周囲を通ってクーリングユニット6を冷却した後、貫通孔911および開口511,512を通り抜け、エンジン42側に流れ込む。
【0025】
また、段折部93の対向する一辺側は、図3に示すように、端部に向かうに従って他辺側に近付くように傾斜しており、エンジンフード43を閉じた際に、段折部93がエンジンフード43と干渉しないようになっている。また、段折部93の他辺側には、角部が切り欠かれた切欠部931が設けられている。
【0026】
図2に示すように、このような仕切部材9は、接続部91がファン5およびクーリングユニット6間に位置し、折曲部92がクーリングユニット6側に折曲してクーリングユニット6およびフィルタ7,8間に位置するように、エンジンルーム44内に配置されている。また、段折部93は、折曲部92からカウンタウェイト47側に段折した状態で配置され、切欠部931にカウンタウェイト47が入り込んだ状態となっている。
【0027】
すなわち、仕切部材9は、中央側隔壁45から延び、クーリングユニット6横で折曲して補機配置スペースSを形成し、さらに補機配置スペースSに配置されたフィルタ7,8を囲むように段折して端部がカウンタウェイト47上にかかるように、エンジンルーム44内に延設されている。
【0028】
また、図示を省略するが、仕切部材9とエンジンフード43との間の隙間は、仕切部材9やエンジンフード43に設けられたスポンジ等の弾性部材によりシールされており、エンジン42側の高温の空気が、仕切部材9およびエンジンフード43間の隙間からクーリングユニット6側に流れ込まないようになっている。
【0029】
以上のような仕切構造では、仕切部材9が、エンジンルーム44内をエンジン42側とクーリングユニット6側とに仕切るので、エンジン42側の高温の空気がクーリングユニット6側に逆流するのを防止できる。
また、仕切部材9は、接続部91から折曲した折曲部92を有するので、仕切部材9がファン5およびクーリングユニット6横の補機配置スペースSと干渉するのを回避することができる。従って、ファン5およびクーリングユニット6とエンジンフード43との間にも、補機を配置することができる。
【0030】
さらに、仕切部材9は、折曲部92および段折部93による階段形状を有しているため、ファン5およびクーリングユニット6横に、フィルタ7,8やバッテリ等の耐熱特性の異なる複数の補機が並設されている場合でも、これらの補機を耐熱特性に応じてエンジン側とクーリングユニット側とに仕切って配置することができる。従って、補機の作動が円滑に行われるように各補機を配置することができる。
【0031】
加えて、カウンタウェイト47において、折曲部92と対向する部分を切り欠いて補機収容部471としているので、折曲部92および段折部93で囲まれた空間と補機収容部471内の空間とで、より大きな補機配置スペースSを確保することができる。
【0032】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、仕切部材9は、接続部91、折曲部92、および段折部93が連続する一体成形品として形成されていたがこれに限られず、それぞれ別部材で形成された接続部91、折曲部92、および段折部93を一体に構成してもよい。
【0033】
前記実施形態では、仕切部材9は、折曲部92が接続部91からクーリングユニット6側に折曲していたがこれに限られない。要するに、折曲部92は、ファン5およびクーリングユニット6近傍に補機配置スペースSを形成するように折曲していればよく、例えば、折曲部92が、エンジン42側に折曲していてもよい。
【0034】
また、前記実施形態では、仕切部材9が段折部93を有していたがこれに限られない。例えば、エンジン42側に配置すべき補機を、ファン5およびクーリングユニット6横からカウンタウェイト47に沿ってエンジン42とは反対側に並設する場合は、段折部93を設けずに、折曲部92をカウンタウェイト47や側壁46まで延設してもよい。
【0035】
前記実施形態では、仕切部材9は、ファン5およびクーリングユニット6間に設けられていたがこれに限られない。仕切部材9は、エンジンルーム44内をエンジン42側とクーリングユニット6側とに仕切る位置に設けられていればよく、例えば、エンジン42およびファン5間に設けられてもよい。
【0036】
前記実施形態では、仕切構造は、油圧ショベル1において用いられていたがこれに限られない。要は、エンジンルーム44内をエンジン42側とクーリングユニット6側とに仕切る構造となっていればよく、例えば、エンジンおよび電動モータを併用したハイブリッド型のショベルや、ダンプトラック、ホイルローダ等の他の建設機械に用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、油圧ショベルやハイブリッド型のショベルに利用できる他、エンジンルーム内にクーリングユニットを有する他の建設機械にも利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…油圧ショベル(建設機械)、5…ファン、6…クーリングユニット、9…仕切部材、44…エンジンルーム、47…カウンタウェイト、92…折曲部、93…段折部、471…補機収容部、S…補機配置スペース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のエンジンルーム内の仕切構造であって、
前記エンジンルーム内のクーリングユニットと前記クーリングユニットを冷却するファンとの間に設けられ、前記エンジンルーム内を前記クーリングユニット側とエンジン側とに仕切る仕切部材を備え、
前記仕切部材は、前記クーリングユニット横で折曲した折曲部を有し、前記折曲部で補機配置スペースを形成する
ことを特徴とする仕切構造。
【請求項2】
請求項1に記載の仕切構造において、
前記仕切部材は、前記補機配置スペースに配置された補機を囲むように前記折曲部から段折された段折部を有する
ことを特徴とする仕切構造。
【請求項3】
請求項1に記載の仕切構造において、
前記エンジンルームには、カウンタウェイトが設けられ、
前記カウンタウェイトは、前記補機配置スペースに面する部分が切り欠かれた補機収容部を有し、
前記折曲部は、前記補機配置スペースを挟んで前記補機収容部と対向している
ことを特徴とする仕切構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−190566(P2011−190566A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54882(P2010−54882)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000184643)コマツユーティリティ株式会社 (106)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】