説明

エンジン冷却装置

【課題】バイパス路の開閉構造を簡略化することができるエンジン冷却装置を提供する。
【解決手段】エンジンE、ラジエータ、冷却液循環路、循環ポンプ4を有し、冷却液循環路が、ラジエータを通過した冷却液を循環ポンプに還流させる第1還流路7、冷却液をラジエータを迂回して循環ポンプに還流させる第2還流路8、第1還流路と第2還流路とを循環ポンプの吸入口4bに接続する吸入路9、循環ポンプから吐出された冷却液をジャケット1に流入させる吐出路10、吐出路と吸入路とを連通するバイパス路11、第1還流路を開閉可能な第1弁体12、バイパス路を開閉可能な第2弁体13、感温部材15が吸入路の冷却液で冷却されることにより、第1弁体を閉じ操作可能、かつ、第2弁体を開き操作可能で、感温部材が吸入路の冷却液で加熱されることにより、第1弁体を開き操作可能、かつ、第2弁体を閉じ操作可能な感温操作部16を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却液を流通させるジャケットを備えたエンジンと、冷却液を冷却するラジエータと、前記ジャケットと前記ラジエータとに亘って冷却液を循環させる冷却液循環路と、前記エンジンの駆動力により前記冷却液循環路の冷却液を循環させる循環ポンプとを有し、前記冷却液循環路が、前記ラジエータを通過した冷却液を前記循環ポンプに還流させる第1還流路と、前記ジャケットを通過した冷却液を、前記ラジエータを迂回して前記循環ポンプに還流させる第2還流路と、前記第1還流路と前記第2還流路とを合流させて前記循環ポンプの吸入口に接続する吸入路と、前記循環ポンプから吐出された冷却液を前記ジャケットに流入させる吐出路と、前記吐出路と前記吸入路とを連通するバイパス路と、前記第1還流路を開閉可能な第1弁体と、前記バイパス路を開閉可能な第2弁体と、感温部材が前記吸入路の冷却液で設定温度未満に冷却されることにより前記第1弁体を閉じ操作可能で、前記感温部材が前記吸入路の冷却液で設定温度以上に加熱されることにより前記第1弁体を開き操作可能な感温操作部と、を備えるエンジン冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記エンジン冷却装置は、エンジンの駆動力により冷却液循環路の冷却液を循環させる循環ポンプを有しているので、エンジンの暖機運転を開始するに伴って循環ポンプも駆動される。
循環ポンプの駆動により、ジャケットとラジエータとに亘って冷却液が循環すると、エンジンの温度上昇が遅くなり、暖機運転を短時間で効率良く行えない。
冷却液の流動が規制されている状態で循環ポンプを駆動すると、循環ポンプの負荷が大きくなるおそれがある。また、循環ポンプに動力を伝達させるベルト等が滑り、異音が発生するおそれがある。
【0003】
このため、吐出路と吸入路とを連通するバイパス路と、第1還流路を開閉可能な第1弁体と、バイパス路を開閉可能な第2弁体と、感温部材が吸入路の冷却液で設定温度未満に冷却されることにより第1弁体を閉じ操作可能で、感温部材が吸入路の冷却液で設定温度以上に加熱されることにより第1弁体を開き操作可能な感温操作部とを備えている。
【0004】
つまり、冷却液温度が十分に上昇していない暖機運転の開始初期には、第1弁体の閉じ操作で第1還流路を閉じておくとともに、第2弁体の開き操作でバイパス路を開いておく。
バイパス路を開いた状態で循環ポンプを駆動すると、吐出路から吐出された冷却液がバイパス路を通して吸入路に戻るので、循環ポンプの負荷を小さくすることができる。また、循環ポンプに動力を伝達させるベルト等が滑ることによる異音の発生を抑制することができる。
これにより、循環ポンプの駆動で第2還流路を通した冷却液の循環を許容しながら、第1還流路を通した冷却液の循環を停止して、エンジンの温度上昇を早めることができ、暖機運転を短時間で効率良く行える。
【0005】
従来のエンジン冷却装置は、第1弁体を備えたサーモスタットバルブと、バイパス路を開閉可能な第2弁体を備えた電磁弁と、ジャケット内の冷却液の温度を検出する温度センサと、温度センサからの信号に基づいて電磁弁を開閉操作する制御装置とを設けてある
(例えば、特許文献1参照)。
サーモスタットバルブが、感温部材が吸入路の冷却液でサーモスタット用設定温度未満に冷却されることにより第1弁体を閉じ操作可能で、感温部材が吸入路の冷却液でサーモスタット用設定温度以上に加熱されることにより第1弁体を開き操作可能な感温操作部を備えている。
【0006】
したがって、吸入路の冷却液温度がサーモスタット用設定温度未満の暖機運転の開始時には、第1還流路が第1弁体で閉じ状態に保持され、かつ、バイパス路が電磁弁の第2弁体で開き状態に保持される。
制御装置は、温度センサによる検出温度(ジャケット内の冷却液の温度)が電磁弁用設定温度未満のときは、吐出路から吐出された冷却液がバイパス路を通して吸入路に戻るように、電磁弁の操作でバイパス路を開き状態に保持する。
ジャケットを通過して加熱された冷却液は、第2還流路を通って吸入路に流入する状態で、ラジエータを迂回して循環する。
【0007】
制御装置は、温度センサによる検出温度が電磁弁用設定温度以上に上昇すると、吐出路から吐出された冷却液の全部がジャケットに流入するように、電磁弁の操作でバイパス路を閉じる。
感温操作部は、第2還流路を通って吸入路に流入した冷却液で感温部材が設定温度以上に加熱されると、冷却液がジャケットとラジエータとに亘って循環するように、第1弁体を開き操作して第1還流路を開き状態に切り替え、暖機運転が終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−301032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のエンジン冷却装置は、バイパス路を開閉するために、電磁弁、温度センサ、温度センサからの信号に基づいて電磁弁を駆動する制御装置、及び、それらを互いに電気的に接続する接続回路などを設ける必要がある。
このため、バイパス路の開閉構造が複雑化するおそれがある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、バイパス路の開閉構造を簡略化することができるエンジン冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるエンジン冷却装置の第1特徴構成は、冷却液を流通させるジャケットを備えたエンジンと、冷却液を冷却するラジエータと、前記ジャケットと前記ラジエータとに亘って冷却液を循環させる冷却液循環路と、前記エンジンの駆動力により前記冷却液循環路の冷却液を循環させる循環ポンプとを有し、前記冷却液循環路が、前記ラジエータを通過した冷却液を前記循環ポンプに還流させる第1還流路と、前記ジャケットを通過した冷却液を、前記ラジエータを迂回して前記循環ポンプに還流させる第2還流路と、前記第1還流路と前記第2還流路とを合流させて前記循環ポンプの吸入口に接続する吸入路と、前記循環ポンプから吐出された冷却液を前記ジャケットに流入させる吐出路と、前記吐出路と前記吸入路とを連通するバイパス路と、前記第1還流路を開閉可能な第1弁体と、前記バイパス路を開閉可能な第2弁体と、感温部材が前記吸入路の冷却液で設定温度未満に冷却されることにより、前記第1弁体を閉じ操作可能、かつ、前記第2弁体を開き操作可能で、前記感温部材が前記吸入路の冷却液で設定温度以上に加熱されることにより、前記第1弁体を開き操作可能、かつ、前記第2弁体を閉じ操作可能な感温操作部と、を備える点にある。
【0011】
本構成のエンジン冷却装置は、感温部材が吸入路の冷却液で設定温度未満に冷却されることにより、第1弁体を閉じ操作可能、かつ、第2弁体を開き操作可能で、感温部材が吸入路の冷却液で設定温度以上に加熱されることにより、第1弁体を開き操作可能、かつ、第2弁体を閉じ操作可能な感温操作部を備えている。
【0012】
すなわち、感温操作部は、感温部材が吸入路の冷却液で設定温度未満に冷却されている暖機運転の開始初期には、第1弁体を閉じ操作して第1循環路を閉じ状態に保持するとともに、第2弁体を開き操作してバイパス路を開き状態に保持することができる。
第2循環路を通して吸入路に流入する冷却液の温度が上昇し、感温部材が吸入路の冷却液で設定温度以上に加熱されると、第1弁体を開き操作して第1循環路を開き状態に保持するとともに、第2弁体を閉じ操作してバイパス路を閉じ状態に保持することができる。
【0013】
したがって、本構成のエンジン冷却装置であれば、従来のような電磁弁や温度センサ,制御装置,それらの接続回路などを設けることなく、従来から装備されている第1弁体の感温操作部を利用して、バイパス路をタイミング良く開閉することができ、バイパス路の開閉構造を簡略化することができる。
【0014】
本発明の第2特徴構成は、前記ジャケットとして、シリンダヘッドに冷却液を流通させるヘッド用ジャケット及びシリンダブロックに冷却液を流通させるブロック用ジャケットを備え、前記吐出路が、冷却液を前記ヘッド用ジャケットに流入させる第1吐出路と、冷却液を前記ブロック用ジャケットに流入させる第2吐出路とに分岐され、前記第2吐出路を開閉可能な第3弁体を設け、前記感温操作部は、前記第2弁体の閉じ操作に連係して前記第3弁体を開き操作可能で、前記第3弁体の閉じ操作に連係して前記第2弁体を開き操作可能に設けてある点にある。
【0015】
本構成であれば、感温部材が設定温度未満に冷却されている暖機運転の開始初期には、第2弁体が開き操作され、第1弁体と第3弁体が閉じ操作される。
このため、第1循環路と第2吐出路とを閉じ状態に保持して、第1吐出路を通してヘッド用ジャケットに流入した冷却液の第2還流路を通した循環が許容され、ヘッド用ジャケットに流入して加熱された冷却液が吸入路に戻る。
【0016】
感温部材が吸入路の冷却液で設定温度以上に加熱されると、第1弁体と第3弁体が開き操作され、第2弁体が閉じ操作される。
このため、吐出路から吐出された冷却液の全量が第1吐出路と第2吐出路とに分配されて第1循環路と第2循環路とを通して循環する。
【0017】
したがって、本構成のエンジン冷却装置であれば、シリンダヘッドの過度な温度上昇を抑制することができるとともに、ヘッド用ジャケットで加熱されて温度が高い冷却液をブロック用ジャケットに流入させて、シリンダブロックの温度上昇を促進することができ、暖機運転を短時間で効率良く行える。
【0018】
本発明の第3特徴構成は、前記感温操作部は、前記第2弁体を開閉操作する第1操作部材と、前記第3弁体を開閉操作する第2操作部材とを各別に備え、
前記第1操作部材により前記第2弁体を閉じ操作した後、前記第2操作部材による前記第3弁体の開き操作が開始されるように、前記第1操作部材と前記第2操作部材とを連係してある点にある。
【0019】
シリンダブロックの温度上昇は、燃焼室に近いシリンダヘッドの温度上昇よりも遅く進行するので、ヘッド用ジャケットを経由した冷却液の第1還流路を通した循環を開始すると同時に、ブロック用ジャケットを経由した冷却液の第1還流路を通した循環も開始すると、所定温度に上昇する前のシリンダブロックを冷却することになって、暖機運転の運転効率が低下するおそれがある。
【0020】
本構成であれば、ヘッド用ジャケットを経由した冷却液の第1還流路を通した循環の開始よりも、ブロック用ジャケットを経由した冷却液の第1還流路を通した循環の開始を遅らせて、所定温度に上昇する前のシリンダブロックの冷却を防止することができる。
【0021】
すなわち、第1操作部材による第2弁体の閉じ操作は、感温操作部が吸入路の冷却液で設定温度以上に加熱されることにより行われるので、第1弁体の開き操作も同時に行われる。
このため、第2弁体の閉じ操作でバイパス路を閉じ状態に保持したときは、第1弁体の開き操作で第1循環路が開き状態に保持される。
【0022】
第1操作部材による第2弁体の閉じ操作でバイパス路を閉じ状態に保持したときは、吐出路から吐出された冷却液の全量を第1吐出路と第2吐出路とに分配可能となるが、第2操作部材による第3弁体の開き操作が開始されるまでは、冷却液が第2吐出路に流入することがない。
【0023】
このため、第1操作部材により第2弁体を閉じ操作した後、第2操作部材による第3弁体の開き操作が開始されるまでは、吐出路から吐出された冷却液の全量を第1吐出路に流入させて、ヘッド用ジャケットを経由した冷却液を第1還流路を通して循環させることができるので、シリンダヘッドの温度上昇を効率良く抑制することができる。
【0024】
そして、第2操作部材による第3弁体の開き操作が開始されると、吐出路から吐出された冷却液を第1吐出路と第2吐出路とに分配流入させることができるようになり、ブロック用ジャケットを経由した冷却液も第1還流路を通して循環させて、シリンダブロックの温度上昇を抑制することができる。
【0025】
したがって、本構成のエンジン冷却装置であれば、第1操作部材による第2弁体の閉じ操作によりバイパス路を閉じ状態に保持した後、第2操作部材による第3弁体の開き操作が開始されるまでの時間を適宜設定することにより、所定温度に上昇する前のシリンダブロックの冷却を防止することができる。
【0026】
本発明の第4特徴構成は、前記バイパス路を直線状に配設し、前記第2操作部材を、前記バイパス路の内側に同芯状に配設した軸部材で構成してある点にある。
【0027】
本構成であれば、バイパス路を開き状態に保持したときに、バイパス路に流入した冷却液が第2操作部材(軸部材)の軸芯方向に沿ってバイパス路を通過する。
このため、バイパス路における冷却液の通過抵抗を軽減することができる。
【0028】
本発明の第5特徴構成は、前記冷却液循環路を、前記循環ポンプを備えたポンプブロックに形成してある点にある。
【0029】
本構成であれば、冷却液循環路を構成するための配管が不要で、エンジンに対する組み付け構造の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】エンジン冷却装置の概略図である。
【図2】循環ポンプの内部を示す断面図である。
【図3】感温操作部の説明図である。
【図4】感温操作部の説明図である。
【図5】感温操作部の説明図である。
【図6】第2実施形態における感温操作部の説明図である。
【図7】第2実施形態における感温操作部の説明図である。
【図8】第3実施形態における感温操作部の説明図である。
【図9】第3実施形態における感温操作部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明によるエンジン冷却装置の概略図を示す。
エンジン冷却装置は、冷却液を流通させるジャケット1を備えたエンジンEと、冷却液を冷却するラジエータ2と、ジャケット1とラジエータ2とに亘って冷却液を循環させる冷却液循環路3、及び、エンジンEの駆動力により冷却液循環路3の冷却液を循環させる循環ポンプ4を備えたポンプブロックAとを有している。
【0032】
エンジンEは、ジャケット1として、シリンダヘッドE1に冷却液を流通させるヘッド用ジャケット1a及びシリンダブロックE2に冷却液を流通させるブロック用ジャケット1bを備え、ヘッド用ジャケット1aの出口側とブロック用ジャケット1bの出口側とを合流させる合流路5を備えている。
合流路5は、ラジエータ2とヒータ6とに配管で分岐して接続されている。ヒータ6は、ジャケット1を通過した冷却液との熱交換で空気を加熱する。
【0033】
図2は、ポンプブロックAの内部を示す。
ポンプブロックAは、循環ポンプ4のポンプハウジング4aに、後述する第1〜第3弁体12,13,14などを内装してあるバルブハウジング31、及び、ラジエータ2からの戻り路2aを形成してあるインレットハウジング32を一体に連結して構成してある。
冷却液循環路3は、ラジエータ2を通過した冷却液を循環ポンプ4に還流させる第1還流路7と、ジャケット1を通過した冷却液を、ラジエータ2を迂回して循環ポンプ4に還流させる第2還流路8と、第1還流路7と第2還流路8とを合流させて循環ポンプ4の吸入口4bに接続する吸入路9と、循環ポンプ4から吐出された冷却液をジャケット1に流入させる吐出路10と、吐出路10と吸入路9とを連通するバイパス路11と、第1還流路7を開閉可能な第1弁体12と、バイパス路11を開閉可能な第2弁体13とを備えている。
【0034】
第1還流路7及び第2還流路8は、吸入路9に合流するように形成されている。
第1還流路7にはラジエータ2からの戻り路2aが接続され、第2還流路8には、ヒータ6からの戻り路6aが接続される。
【0035】
吐出路10は、冷却液をヘッド用ジャケット1aに流入させる第1吐出路10aと、冷却液をブロック用ジャケット1bに流入させる第2吐出路10bとに分岐され、第2吐出路10bを開閉可能な第3弁体14を設けてある。
第1吐出路10a及び第2吐出路10bは、吐出路10から分岐するように形成されている。
【0036】
第1還流路7とバイパス路11と第2吐出路10bとが共通の軸芯に沿った直線状に配設されている。
ポンプハウジング4aをバルブハウジング31を介してエンジンEに連結固定することにより、第1吐出路10aがヘッド用ジャケット1aに接続され、第2吐出路10bがブロック用ジャケット1bに接続される。
吸入路9には、感温部材15が吸入路9の冷却液で加熱・冷却されることにより、第1〜第3弁体12,13,14を開閉操作可能な感温操作部16を内装してある。
【0037】
感温操作部16は、図3〜図6に示すように、感温部材15としてのサーモワックスを収容してある円筒状の収容部17と、収容部17を支持する支持軸18と、弁体を開閉操作するための軸部材からなる操作部材19とを備えている。
【0038】
収容部17の上部に収容部17の外径よりも小径のボス20が一体に設けられ、このボス20に支持軸18が挿通されている。
支持軸18の先端部は、インレットハウジング32に形成した凹入部30に保持されている。
サーモワックス15は、設定温度未満に冷却されるに伴って容積が小さくなり、設定温度以上に加熱されるに伴って容積が大きくなる。
【0039】
支持軸18のボス20からの突出量aは、サーモワックス15の全体が設定温度未満に冷却されたときが最も小さくなり、サーモワックス15が設定温度以上に加熱されるに伴って徐々に大きくなり、サーモワックス15の全体が設定温度以上に加熱されたときが最も大きくなり、逆に、サーモワックス15が設定温度以上から設定温度未満に冷却されるに伴って徐々に小さくなる。
【0040】
第1弁体12がボス20に抜け止め状態で遊嵌されている。
吸入路9の内部にスプリング受け部材21が固定され、第1弁体12とスプリング受け部材21との間に、第1圧縮コイルスプリング22が装着されている。
第1還流路7の出口側に、下向きの第1弁座23が形成されている。
第1弁体12は、第1圧縮コイルスプリング22の付勢力で第1弁座23に圧接されることにより、第1還流路7を閉じ状態に保持する。
【0041】
操作部材19は、第2弁体13を開閉操作する第1操作部材19aと、第3弁体14を開閉操作する第2操作部材19bとを各別に備えている。
第1操作部材19aは収容部17の下端側に同芯状に一体固定され、第2操作部材19bはバイパス路11と第2吐出路10bとに亘って同芯状に挿通されている。
【0042】
第2弁体13は第1操作部材19aに抜け止め状態で遊嵌され、第2弁体13と収容部17の下部との間に第2圧縮コイルスプリング24が装着されている。
バイパス路11の出口側に、上向きの第2弁座25が形成されている。
第2弁体13は、第2圧縮コイルスプリング24の付勢力で第2弁座25に圧接されることにより、バイパス路11を閉じ状態に保持する。
【0043】
第3弁体14は第2操作部材19bの下端側に抜け止め状態で遊嵌され、第2操作部材19bの上部に形成した大径軸部26と、バイパス路11の入口側内周部に一体形成した鍔部27とに亘って第3圧縮コイルスプリング28が装着されている。
第2吐出路10bの入口側に下向きの第3弁座29が形成されている。
第3弁体14は、第3圧縮コイルスプリング28の付勢力で第3弁座29に圧接されることにより、第2吐出路10bを閉じ状態に保持する。
【0044】
第3圧縮コイルスプリング28の付勢力により、第3弁体14が閉じ位置に復帰するように付勢されているとともに、第2操作部材19bがバイパス路11の内側と第2吐出路10bの内側とに亘って同芯状に挿通保持される。
【0045】
感温操作部16は、サーモワックス15が吸入路9の冷却液で設定温度未満に冷却されることにより、第1弁体12を閉じ操作可能、かつ、第2弁体13を開き操作可能で、サーモワックス15が吸入路9の冷却液で設定温度以上に加熱されることにより、第1弁体12を開き操作可能、かつ、第2弁体13を閉じ操作可能に設けられている。
【0046】
すなわち、サーモワックス15の全体が設定温度未満に冷却されているときは、図3に示すように、第1弁体12が第1圧縮コイルスプリング22の付勢力で閉じ位置に操作されて第1還流路7が閉じ状態に保持され、かつ、第2弁体13が開き操作されてバイパス路11が開き状態に保持されている。
【0047】
そして、図3(図2)に示す状態からサーモワックス15が設定温度以上に加熱されるに伴って、収容部17が支持軸18に対して下向きに相対移動して突出量aが大きくなる。
【0048】
突出量aが大きくなると、図4に示すように、第1弁体12が開き操作されて第1還流路7が開き状態に保持され、第1弁体12の開き操作よりも遅れたタイミングで第2弁体13が閉じ操作されて、バイパス路11が閉じ状態に保持される。
【0049】
また、感温操作部16は、第2弁体13の閉じ操作に連係して第3弁体14を開き操作可能で、第3弁体14の閉じ操作に連係して第2弁体13を開き操作可能に設けてある。
すなわち、第2弁体13が閉じ操作された図4に示す状態から突出量aが更に大きくなると、図5に示すように、第1操作部材19aが第2操作部材19bに接当して第3圧縮コイルスプリング28の付勢力に抗して押し下げ、第3弁体14を開き操作して第2吐出路10bを開き状態に保持する。
【0050】
したがって、第2弁体13が閉じ操作された後、第1操作部材19aが第2操作部材19bに接当するまでの間は、第3弁体14が開き操作されず、第1操作部材19aにより第2弁体13を閉じ操作した後、所定時間が経過すると、第2操作部材19bによる第3弁体14の開き操作が開始されるように、第1操作部材19aと第2操作部材19bとを連係してある。
【0051】
よって、第2弁体13の閉じ操作によりバイパス路11を閉じ状態に保持した後、第3弁体14の開き操作が開始されるまでの時間を、第1操作部材19aが第2操作部材19bに接当するまでの時間として適宜設定することにより、所定温度に上昇する前のシリンダブロックE2の冷却を防止することができる。
感温操作部16は、サーモワックス15の全体が設定温度以上に加熱された状態から設定温度未満に冷却されるにともなって、上述とは逆の動作を行うので、その説明は省略する。
【0052】
〔第2実施形態〕
図6,図7は、本発明によるエンジン冷却装置の別実施形態を示す。
本実施形態では、バイパス路11に形成した上向きの第2弁座25に圧接される第2弁体13を第2操作部材19bに遊嵌し、第2圧縮コイルスプリング24を第2弁体13と第2操作部材19bの大径軸部26とに亘って装着して、感温操作部16を構成してある。
第2弁座25は、バイパス路11の出口側に吸入路9の側ほど内径が大きくなる円錐台形状の凹面部33を形成して、その凹面部33の底面に形成してある。
【0053】
本実施形態によれば、第2圧縮コイルスプリング24の付勢力により、第2弁体13が第2弁座25に圧接されてバイパス路11が閉じ状態に保持され、かつ、第3弁体14が第3弁座29に圧接されて第2吐出路10bが閉じ状態に保持される。
したがって、本実施形態では第1実施形態で示した第3圧縮コイルスプリング28を備えていない。
第2圧縮コイルスプリング24の付勢力は、第2操作部材19bが第1操作部材19aで押し下げられるに伴って増大する。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0054】
感温操作部16の動作を説明する。
サーモワックス15の全体が設定温度未満に冷却されているときは、図6に示すように、第1圧縮コイルスプリング22の付勢力で第1弁体12が閉じ位置に操作されて第1還流路7が閉じ状態に保持され、かつ、第1操作部材19aと第2操作部材19bは初期状態では互いに接当する状態に位置設定されている。
この状態では、吐出路10からバイパス路11への冷却液の流入圧により第2弁体13を開き操作可能である。
尚、第2弁体13の面積は、第3弁体14の面積に比べて大きいため、冷却液の圧力によって第2弁体13が先に開き操作され、第3弁体14は閉じ状態に維持される。
【0055】
そして、サーモワックス15が設定温度以上に加熱されるに伴って、図7に示すように、支持軸18のボス20からの突出量aが大きくなるように収容部17が支持軸18に対して下向きに相対移動する。
【0056】
そして、図7に示すように、第1弁体12が開き操作されて第1還流路7が開き状態に保持されるとともに、第2操作部材19bが第1操作部材19aで押し下げられて、第2圧縮コイルスプリング24の付勢力が増大しながら、第3弁体14が開き操作される。
【0057】
第3弁体14が開き操作された状態では、吐出路10からバイパス路11への冷却液の流入圧では第2弁体13が開き操作されないように、第2圧縮コイルスプリング24の付勢力が増大される。
本実施形態においても、感温操作部16は、サーモワックス15の全体が設定温度以上に加熱された状態から設定温度未満に冷却されるにともなって、上述とは逆の動作を行うので、その説明は省略する。
【0058】
〔第3実施形態〕
図8,図9は、本発明によるエンジン冷却装置の別実施形態を示す。
本実施形態では、第1操作部材19aと第2操作部材19bとを同芯状に一体に固定して、感温操作部16を構成してある。
【0059】
本実施形態によれば、サーモワックス15が設定温度未満に冷却されるにともなって、第3弁体14が第3弁座29に圧接されて第2吐出路10bが閉じ状態に保持される。
したがって、本実施形態では第1実施形態で示した第3圧縮コイルスプリング28を備えていない。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0060】
感温操作部16の動作を説明する。
サーモワックス15の全体が設定温度未満に冷却されているときは、図8に示すように、第1圧縮コイルスプリング22の付勢力で第1弁体12が閉じ位置に操作されて第1還流路7が閉じ状態に保持され、かつ、第2弁体13が開き操作され、第3弁体14が閉じ操作されている。
【0061】
そして、サーモワックス15が設定温度以上に加熱されるに伴って、図9に示すように、支持軸18のボス20からの突出量aが大きくなるように収容部17が支持軸18に対して下向きに相対移動する。
【0062】
そして、図9に示すように、第1弁体12が開き操作されるとともに、第3弁体14が開き操作された後、第2弁体13が第2弁座25に接当し、突出量aの更なる増大により、第2圧縮コイルスプリング24の付勢力で閉じ位置に保持される。
本実施形態においても、感温操作部16は、サーモワックス15の全体が設定温度以上に加熱された状態から設定温度未満に冷却されるにともなって、上述とは逆の動作を行うので、その説明は省略する。
【0063】
〔その他の実施形態〕
本発明によるエンジン冷却装置は、バイメタルなどを感温部材として用いるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、冷却液を流通させるジャケットを備えた各種エンジンの冷却装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 ジャケット
1a ヘッド用ジャケット
1b ブロック用ジャケット
2 ラジエータ
3 冷却液循環路
4 循環ポンプ
4b 吸入口
7 第1還流路
8 第2還流路
9 吸入路
10 吐出路
10a 第1吐出路
10b 第2吐出路
11 バイパス路
12 第1弁体
13 第2弁体
14 第3弁体
15 感温部材
16 感温操作部
19a 第1操作部材
19b 第2操作部材
A ポンプブロック
E エンジン
E1 シリンダヘッド
E2 シリンダブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液を流通させるジャケットを備えたエンジンと、
冷却液を冷却するラジエータと、
前記ジャケットと前記ラジエータとに亘って冷却液を循環させる冷却液循環路と、
前記エンジンの駆動力により前記冷却液循環路の冷却液を循環させる循環ポンプとを有し、
前記冷却液循環路が、
前記ラジエータを通過した冷却液を前記循環ポンプに還流させる第1還流路と、
前記ジャケットを通過した冷却液を、前記ラジエータを迂回して前記循環ポンプに還流させる第2還流路と、
前記第1還流路と前記第2還流路とを合流させて前記循環ポンプの吸入口に接続する吸入路と、
前記循環ポンプから吐出された冷却液を前記ジャケットに流入させる吐出路と、
前記吐出路と前記吸入路とを連通するバイパス路と、
前記第1還流路を開閉可能な第1弁体と、
前記バイパス路を開閉可能な第2弁体と、
感温部材が前記吸入路の冷却液で設定温度未満に冷却されることにより、前記第1弁体を閉じ操作可能、かつ、前記第2弁体を開き操作可能で、前記感温部材が前記吸入路の冷却液で設定温度以上に加熱されることにより、前記第1弁体を開き操作可能、かつ、前記第2弁体を閉じ操作可能な感温操作部と、を備えるエンジン冷却装置。
【請求項2】
前記ジャケットとして、シリンダヘッドに冷却液を流通させるヘッド用ジャケットとシリンダブロックに冷却液を流通させるブロック用ジャケットとを備え、
前記吐出路が、冷却液を前記ヘッド用ジャケットに流入させる第1吐出路と、冷却液を前記ブロック用ジャケットに流入させる第2吐出路とに分岐され、
前記第2吐出路を開閉可能な第3弁体を設け、
前記感温操作部は、前記第2弁体の閉じ操作に連係して前記第3弁体を開き操作可能で、前記第3弁体の閉じ操作に連係して前記第2弁体を開き操作可能に設けてある請求項1記載のエンジン冷却装置。
【請求項3】
前記感温操作部は、前記第2弁体を開閉操作する第1操作部材と、前記第3弁体を開閉操作する第2操作部材とを各別に備え、
前記第1操作部材により前記第2弁体を閉じ操作した後、前記第2操作部材による前記第3弁体の開き操作が開始されるように、前記第1操作部材と前記第2操作部材とを連係してある請求項2記載のエンジン冷却装置。
【請求項4】
前記バイパス路を直線状に配設し、
前記第2操作部材を、前記バイパス路の内側に同芯状に配設した軸部材で構成してある請求項3記載のエンジン冷却装置。
【請求項5】
前記冷却液循環路を、前記循環ポンプを備えたポンプブロックに形成してある請求項1〜4のいずれか1項記載のエンジン冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−47503(P2013−47503A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186552(P2011−186552)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】