説明

エンジン用電子式制御ユニット

【課題】ユニットの組立作業を困難にすることなく、かつ表示器の表示部の可視角度を狭くすることなく表示器をユニットに組み込んで、エンジンの稼働状態を表示する機能を持たせた注型樹脂モールド型のエンジン用電子式制御ユニットを提供する。
【解決手段】エンジンを制御する制御部を構成する電子部品3を収容するケース1の開口端側に位置させてケースの側壁101aに切り欠き部103を設ける。透明または半透明な樹脂モールド部8により表示器5を被覆し、表示器5の表示面をケース1の外部に向け、かつ樹脂モールド部8の表示器5を被覆した部分を切り欠き部103に嵌合させた状態で配置する。表示器5を被覆した樹脂モールド部8に達するレベルまでケース内に樹脂11を注型する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを動作させるために制御が必要な要素の少なくとも1つを制御対象として該制御対象を制御するエンジン用電子式制御ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの点火装置、燃料噴射装置、排気バルブなど、エンジンを動作させるために必要な要素の少なくとも1つを制御対象として該制御対象を制御する制御装置として、マイクロプロセッサを用いて制御対象を制御する電子式制御ユニット(ECU)が用いられている。この種の制御ユニットは、点火装置の点火コイルの一次電流を制御する点火回路や、燃料噴射装置のインジェクタを駆動するインジェクタ駆動回路等、制御対象の電気回路部分の構成要素と、マイクロプロセッサを用いて制御対象の動作を制御するために必要な演算や、制御対象に与える制御信号の発生タイミングの制御等を行う制御部の構成要素とをケース内に収容してユニット化したものである。
【0003】
エンジン用の制御ユニットを雨水にさらされる環境に配置する場合、例えば船外機に適用する場合や、自動二輪車やバギー車等に適用する場合には、ユニットに耐候性を持たせる必要があるため、ユニットを構成するマイクロプロセッサなどの電子部品を収容したケース内にエポキシ樹脂などの絶縁樹脂を注型して、この注型樹脂により構成部品をモールドしている。
【0004】
このように、構成部品が注型樹脂によりモールドされる注型樹脂モールド型の電子式制御ユニットにLED表示器などの表示器を設けて、エンジンの動作を示す各種の情報(例えばエンジンの実稼働時間)を表示する機能を持たせることにより、エンジンのメンテナンス時期(エンジンオイルの交換時期等)の管理等を容易にすることが考えられている。
【0005】
表示機能を持たせた注型樹脂モールド型の車両用の電子制御ユニットとして、特許文献1に示されたものがある。特許文献1に示された電子回路ユニットにおいては、ケースの底部の一部に窓部を形成して、この窓部の内側に隔壁により囲まれた表示器収容空間を形成し、表示器を取り付けた配線基板をケース内に収容して、表示器を上記表示器収容空間内に収容している。また表示器を囲むようにして配線基板に取り付けたパッキンを表示器収容空間を構成する隔壁に当接させることにより、表示器収容空間を樹脂が注型されるケース内の空間から隔絶し、これにより表示器収容空間に注型樹脂が流れ込むのを阻止した状態にして、ケース内に樹脂を注型している。そして、表示器収容空間を外部に開口させる窓部を塞ぐように透明レンズを取り付け、このレンズを通して表示器の表示部を外部から観察し得るようにしている。
【特許文献1】特開平9−321446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示された構造では、配線基板をケース内に収容する際に、該基板に取り付けられた表示器を表示器収容空間内に正しく位置させるとともに、表示器収容空間内に注型樹脂が流れ込むのを防止するために、表示器の周囲を囲むようにして配線基板に取り付けられたパッキンを、表示器収容空間のケース内への開口端側で隔壁に正しく当接させる必要があるため、配線基板の位置決め作業が難しく、この位置決めのために、ユニットの組立に要する工数が増加して、製造コストが高くなるという問題があった。
【0007】
また特許文献1に示された構造では、表示器の表示部が窓部よりも奥の位置に配置されるため、表示部の視認が可能になる視野角(表示部の可視角度)が狭くなってしまうという問題もあった。
【0008】
本発明の目的は、ユニットの組立作業を困難にすることなく、かつ表示器の表示部の可視角度を狭くすることなく表示器をユニットに組み込んで、エンジンの動作状態を示す情報を表示する機能を持たせることができるようにした注型樹脂モールド型のエンジン用電子式制御ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エンジンを制御する制御部を構成する電子部品とエンジンの稼働状態を示す情報を表示する表示器とを備えた制御装置本体を、一端が開口した箱形のケース内に表示器の表示を外部から目視し得る状態で収容して、該ケース内に樹脂を注型してなるエンジン用電子式制御ユニットを対象とする。
【0010】
本発明においては、ケースの開口端側に位置させて、ケースの側壁に切り欠き部または窓部が設けられている。表示器は、情報を表示する表示面を有して、表示器の表示の視認を妨げないように少なくとも表示面を覆う部分を透明または半透明な状態にした樹脂モールド部により被覆されている。表示器は、表示面をケースの外部に向け、かつ樹脂モールド部を切り欠き部または窓部に嵌合させた状態で配置されていて、ケースの開口端と反対側に向いた前記樹脂モールド部の端部に注型樹脂が達するレベルまでケース内に樹脂が注型されている。
【0011】
上記のように、表示器を樹脂モールド部で被覆した構造にしておくと、表示器の部分を注型樹脂で覆わなくても表示器に耐候性を持たせることができる。従って、ケース内への樹脂の注型は、ケースの開口端と反対側に向いた樹脂モールド部の端部に達するレベルまで行えばよく、切り欠き部または窓部からの注型樹脂の漏れを防止するための措置を講じる必要がない。そのため、表示器を支持した配線基板をケース内に収容する際には、表示器を被覆した樹脂モールド部をケースに設けた切り欠き部または窓部に嵌合させる点のみに配慮すればよく、ケース内での配線基板の位置決めを厳密に行う必要がないため、組立作業を容易にすることができる。
【0012】
また、上記のように構成すると、樹脂モールド部の表示器の表示面を被覆した部分をケースの切り欠き部または窓部を通して外部に露呈させることができるため、表示器の表示面の可視角を広くすることができ、表示器の表示内容の視認を容易にすることができる。
【0013】
本発明の更に具体的な態様では、制御部を構成する電子部品が実装されたメイン配線基板と、一端側の一面に前記表示器の駆動回路を構成する部品が取り付けられたサブ配線基板とが設けられる。表示器は、表示面をサブ配線基板と反対側に向けた状態で、サブ配線基板の前記一端側の他面に取り付けられていて、表示器の表示の視認を妨げないように少なくとも表示器の表示面を覆う部分を透明または半透明な状態にした樹脂モールド部により駆動回路の構成部品及びサブ配線基板の一部とともに被覆されている。樹脂モールド部の表示器を被覆した部分は、切り欠き部または窓部に嵌合し得る形状に形成されている。また駆動回路をメイン配線基板の回路に接続するためにメイン配線基板側に突出した多数のリード端子を有するコネクタがサブ配線基板の他端に取り付けられる。サブ配線基板は、メイン配線基板の一端側にその板面をメイン配線基板の板面と直交させた状態で配置されて、コネクタのリード端子がメイン配線基板に設けられた配線パターンに半田付けされ、これにより、駆動回路がメイン配線基板側の回路に電気的に接続されるとともにサブ配線基板がメイン配線基板に機械的に接続される。メイン配線基板及びサブ配線基板は、表示器の表示面をケースの外部に向け、かつ樹脂モールド部の表示器を被覆した部分を切り欠き部または窓部に嵌合させた状態でケース内に挿入され、ケースの開口端と反対側に向いた樹脂モールド部の端部に注型樹脂が達するレベルまでケース内に樹脂が注型される。
【0014】
上記のように、メイン配線基板にサブ配線基板を介して表示器を支持するようにしておくと、メイン配線基板よりも高い位置に表示器を配置することができ、サブ配線基板の寸法を適当に設定しておくことにより、メイン配線基板及びサブ配線基板をケース内に収容した際に、表示器をメイン配線基板及びメイン配線基板に実装された電子部品よりも高い位置に配置することができる。そのため、メイン配線基板から表示器の樹脂モールド部までの高さが、メイン配線基板に実装された電子部品の高さよりも高くなるようにサブ配線基板の寸法及び樹脂モールド部の寸法を設定しておいて、表示器の樹脂モールド部に達するレベルまでケース内に樹脂を注型することにより、表示器の樹脂モールド部を嵌合させるケースの切り欠き部または窓部からの樹脂の漏れを心配することなく、メイン配線基板と該メイン配線基板に実装された部品とを注型樹脂でモールドすることができる。
【0015】
本発明の他の好ましい態様では、表示器が、情報を表示する表示面を有して、表示器の表示の視認を妨げないように少なくとも表示器の表示面を覆う部分を透明または半透明な状態にした樹脂モールド部により被覆される。樹脂モールド部の表示面と直角をなす側面にケースの側壁部に形成された切り欠き部の縁部を嵌合させる溝部が設けられ、表示器は、表示面をケースの外部に向け、かつ溝部に切り欠き部の縁部を嵌合させて樹脂モールド部を切り欠き部に嵌合させた状態で配置される。そして、表示器を被覆した樹脂モールド部のケース内に位置する部分が注型樹脂により覆われた状態になるレベルまでケース内に樹脂が注型される。
【0016】
上記のように、樹脂モールド部の表示器を被覆した部分の表示面と直角をなす側面に、ケースの側壁に設けられた切り欠き部の縁部を嵌合させる溝部を設けて、この溝部にケースの側壁に設けられた切り欠き部の縁部を嵌合させた状態にすると、その嵌合をきつくしておくことにより、切り欠き部を完全に塞ぐことができるため、切り欠き部からの樹脂の漏れを生じさせることなく、表示器のケース内に位置する部分が注型樹脂により覆われた状態になるレベルまでケース内に樹脂を注型して、ユニットの耐候性を高めることができる。
【0017】
本発明の更に具体的な態様では、制御部を構成する電子部品が実装されたメイン配線基板と、一端側の一面に表示器の駆動回路を構成する部品が取り付けられたサブ配線基板とが設けられ、表示器は、表示面をサブ配線基板と反対側に向けた状態で、サブ配線基板の一端側の他面に取り付けられて、前記表示器の表示の視認を妨げないように少なくとも前記表示器の表示面を覆う部分を透明または半透明な状態にした樹脂モールド部により、前記駆動回路の構成部品及びサブ配線基板の一部とともに被覆される。樹脂モールド部の表示器を被覆した部分は、表示面と直交する側面を有し、該側面に切り欠き部の縁部を嵌合させる溝部が形成されている。駆動回路をメイン配線基板の回路に接続するためにメイン配線基板側に突出した多数のリード端子を有するコネクタがサブ配線基板の他端に取り付けられ、サブ配線基板は、メイン配線基板の一端側にその板面をメイン配線基板の板面と直交させた状態で配置されて、コネクタのリード端子がメイン配線基板に設けられた配線パターンに半田付けされることにより、駆動回路がメイン配線基板側の回路に電気的に接続されるとともにサブ配線基板がメイン配線基板に機械的に接続されている。メイン配線基板及びサブ配線基板は、表示器の表示面をケースの外部に向け、溝部に切り欠き部の縁部を嵌合させて樹脂モールド部の表示器を被覆した部分を切り欠き部に嵌合させた状態で前記ケース内に挿入され、表示器を被覆した樹脂モールド部のケース内に位置する部分が注型樹脂で覆われた状態になるレベルまでケース内に樹脂が注型される。
【0018】
上記のように構成した場合にも、切り欠き部からの樹脂の漏れを生じさせることなく、表示器のケース内に位置する部分が注型樹脂により覆われた状態になるレベルまでケース内に樹脂を注型して、ユニットの耐候性を高めることができる。
【0019】
上記表示器が表示する情報は、例えばエンジンの実稼働時間である。このように、エンジンの実稼働時間を表示するようにしておくと、エンジンオイルの交換時期等のメインテナンス時期の把握を容易にして、エンジンの保守を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、請求項1及び2に記載された発明によれば、表示器を樹脂モールド部で被覆した構造にすることにより、表示器の部分を注型樹脂で覆わなくても表示器に耐候性を持たせることができるようにして、ケースの開口端と反対側に向いた樹脂モールド部の端部に注型樹脂が達するレベルまでケース内に樹脂を注型するようにしたので、組立の際に切り欠き部または窓部からの注型樹脂の漏れを防止するための措置を講じる必要がない。従って、表示器を支持した配線基板をケース内に収容する際には、表示器を被覆した樹脂モールド部をケースに設けた切り欠き部または窓部に嵌合させる点のみを配慮すればよく、ケース内での配線基板の位置決めを厳密に行う必要がないため、組立作業を容易にして、製造コストの低減を図ることができる。
【0021】
また、本発明によれば、表示器を被覆した樹脂モールド部の表示面を被覆した部分をケースの切り欠き部または窓部を通して外部に露呈させることができるため、表示器の表示面の可視角を広くすることができ、表示器の表示内容の視認を容易にすることができる。
【0022】
また請求項3及び4に記載された発明によれば、樹脂モールド部の表示器を被覆した部分の表示面と直角をなす側面に、ケースの側壁に設けられた切り欠き部の縁部を嵌合させる溝部を設けて、この溝部にケースの側壁に設けられた切り欠き部の縁部を嵌合させる構造にしたので、その嵌合をきつくしておくことにより、切り欠き部を完全に塞ぐことができ、切り欠き部からの樹脂の漏れを生じさせることなく、表示器を被覆した樹脂モールド部が注型樹脂により覆われた状態になるレベルまでケース内に樹脂を注型して、ユニットの耐候性を高めることができる。
【0023】
請求項5に記載された発明によれば、表示器にエンジンの実稼働時間を表示させるようにしたので、エンジンオイルの交換時期等のメインテナンス時期の把握を容易にして、エンジンの保守を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1ないし図5は本発明の第1の実施形態を示したもので、図1は同実施形態に係わるユニットの構造を示した縦断面図、図2は同実施形態に係わるユニットの外観を示した斜視図、図3は同ユニットで用いる表示器をサブ配線基板に取り付けた状態を示した斜視図、図4は同ユニットで用いる表示器をサブ配線基板に取り付けた状態を図3とは異なる方向から見て示した斜視図、図5は同実施形態においてサブ配線基板に取りつけられた表示器を樹脂モールド部により被覆した後、サブ配線基板をメイン配線基板に取り付けた状態を示した斜視図である。
【0025】
図1及び図2において、1はケース、2は制御装置本体である。制御装置本体2は、エンジンを制御する制御部を構成する電子部品3を実装した矩形状のメイン配線基板4と、エンジンの稼働状態を示す情報を表示する表示器5を支持した矩形状のサブ配線基板6とを備えていて、サブ配線基板6がその板面をメイン配線基板の板面と直交させた状態で、メイン配線基板4に結合されている。制御装置本体2は、表示器5の表示を外部から目視し得る状態でケース1内に収容され、ケース1内に注型された樹脂11により、メイン配線基板4が電子部品3とともにモールドされている。
【0026】
本発明においては、ケース1の開口端側に位置させて、ケース1の側壁部に切り欠き部103または窓部が設けられる。表示器5は、情報を表示する表示面5aを有して、表示器の表示の視認を妨げないように少なくとも表示面5aを覆う部分8a1を透明または半透明な状態にした樹脂モールド部8により被覆される。
【0027】
表示器5は表示面5aをケース1の外部に向け、かつ樹脂モールド部8を切り欠き部103または窓部に嵌合させた状態で配置され、ケース1の開口端と反対側に向いた樹脂モールド部の端部8bに注型樹脂が達するレベルまでケース内1に樹脂11が注型される。
【0028】
本実施形態の構成を更に詳細に説明すると、ケース1は、4つの側壁部101aないし101dと底壁部102とを有して底壁部と反対側の一端が開口した箱形の形状に形成されている。ケース1の1つの側壁部101aの開口端側に寄った位置には、ケースの開口方向に開口したU字形の切り欠き部103が形成されている。
【0029】
メイン配線基板4は、その裏面をケース1の底壁部102に対向させた状態で、ケース1内に収容し得る大きさに形成されていて、その表面に制御部を構成する電子部品3が実装されている。各電子部品3は、メイン配線基板4側に突出したリード端子を有し、各電子部品のリード端子は、メイン配線基板4に設けられたスルーホールを通して該メイン配線基板の裏面側に設けられた配線パターンに半田付けされている。
【0030】
図4に示したように、サブ配線基板6の一端側の一面には、表示器5の駆動回路を構成するドライバIC7が取り付けられ,サブ配線基板6の一端側の他面に表示器5が取り付けられている。表示器5は、デジタル表示などの情報表示を行うことができるものであれば如何なるものでもよく、表示させる情報の内容に応じて適宜の表示器を用いることができるが、図示の例では、表示器5として、発光ダイオード(LED)を発光素子として用いた7マトリクス方式のLED表示器が用いられ、その表示面5aに4桁の数字を表示できるようになっている。
【0031】
表示器5は、その表示面5aをサブ配線基板6と反対側に向けた状態で、サブ配線基板6上に配置され、表示器5の背面から導出されたリード端子5bがサブ配線基板6に設けられたスルーホールを通してサブ配線基板6の一面に形成された配線パターン(図示せず。)に半田付けされている。表示器の端子5bはサブ配線基板の一面に形成された配線パターンを通してドライバICに接続されている。
【0032】
表示器5は、樹脂モールド部8により、ドライバIC7及びサブ配線基板6の一部とともに被覆されている。表示器の表示の視認を妨げないようにするため、樹脂モールド部8は、少なくとも表示器の表示面5aを覆う部分8a1を透明な状態、または表示を視認するのに支障を来さない範囲で半透明な状態にして設けられる。図示の例では、樹脂モールド部8全体が透明な樹脂により形成されている。樹脂モールド部8の表示器5を被覆した部分8aは、切り欠き部103に嵌合し得る形状(図示の例では、直方体状)に形成されている。
【0033】
表示器に無用な負担を掛けないようにするため、樹脂モールド部8は、樹脂でモールドすべき部分を金型内に挿入して、該金型内に、射出成形を行う場合よりも低温の溶融した熱可塑性樹脂を低圧で注入する方法(ホットメルトモールディング法)により形成するのが好ましい。
【0034】
ドライバIC(駆動回路)7をメイン配線基板4の回路に接続するために、メイン配線基板4側に突出した多数のリード端子9aを有するコネクタ9がサブ配線基板6の他端に取り付けられている。サブ配線基板6は、メイン配線基板4の一端側にその板面をメイン配線基板4の板面と直交させた状態で配置されて、コネクタ9のリード端子9aがメイン配線基板4に設けられた配線パターンに半田付けされることにより、表示器5の駆動回路(ドライバIC7)がメイン配線基板4側の回路に電気的に接続されるとともに、サブ配線基板6がメイン配線基板4に機械的に接続されている。このようにサブ配線基板6をメイン配線基板4に接続した状態で、樹脂モールド部8のサブ配線基板を被覆した部分のメイン配線基板側の端部8bが、樹脂モールド部8の表示器5を被覆した部分8aのメイン配線基板側の端部8b′よりも、メイン配線基板4側に寄った位置に配置されるように樹脂モールド部8が設けられている。即ち、配線基板4及び6をケース内に収容した際に樹脂モールド部8のサブ配線基板6を被覆した部分のメイン配線基板側の端部8bが切欠き部103よりも、ケースの底部側に寄った位置に配置されるように、樹脂モールド部8が設けられている。
【0035】
メイン配線基板4及びサブ配線基板6は、表示器5の表示面5aをケース1の外部に向け、かつ樹脂モールド部8の表示器5を被覆した部分8aを切り欠き部または窓部に嵌合させた状態でケース1内に挿入され、ケース1の開口端と反対側に向いた樹脂モールド部8の端部(樹脂モールド部8のサブ配線基板6をモールドした部分のメイン配線基板4側の端部)8b(図1参照)に注型樹脂が達するレベルまでケース1内に樹脂11(図1参照)が注型されている。
【0036】
メイン配線基板の回路により構成される制御部は、エンジンの実稼働時間を積算して記憶する実稼働時間積算記憶手段を有し、この記憶手段に記憶されているエンジンの実稼働時間のデジタル値をドライバIC7に与えて、表示器5に表示させる。このように、エンジンの実稼働時間を表示するようにしておくと、エンジンオイルの交換時期等のメインテナンス時期の把握を容易にして、エンジンの保守を容易にすることができる。エンジンの実稼働時間は、例えば、エンジンに取りつけられている発電機がしきい値以上の出力電圧を発生している間計測動作を行うタイマを設けて、該タイマの計測値を読み取ることにより計測することができる。
【0037】
上記の実施形態のように、表示器5を樹脂モールド部で被覆した構造にしておくと、表示器5の部分を注型樹脂で覆わなくても表示器に耐候性を持たせることができる。従って、ケース1内への樹脂の注型は、ケースの開口端と反対側に向いた樹脂モールド部の端部に達するレベルまで行えばよく、切り欠き部103からの注型樹脂の漏れを防止するための措置を講じる必要がない。そのため、表示器を支持した配線基板をケース内に収容する際には、表示器5を被覆した樹脂モールド部8をケース1に設けた切り欠き部に嵌合させる点のみに配慮すればよく、ケース1内での配線基板の位置決めを厳密に行う必要がないため、組立作業を容易にすることができる。
【0038】
また、上記のように構成すると、樹脂モールド部8の表示器5の表示面5aを被覆した部分8a1をケースの切り欠き部103を通して外部に露呈させることができるため、表示器5の表示面の可視角を広くすることができ、表示器の表示内容の視認を容易にすることができる。
【0039】
上記の実施形態では、ケースの側壁部101aに切り欠き部103を設けているが、切り欠き部を設ける代わりに、ケースの開口端寄りに位置させて、ケースの側壁部101aに窓部を設けて、表示器を被覆した樹脂モールド部5をこの窓部内に嵌合させた状態で配置するようにしてもよい。
【0040】
次に図6及び図7は本発明の第2の実施形態を示したもので、この実施形態においても、ケース1の側壁にケース1の開口端に開口した切り欠き部103が設けられている。表示器5は、情報を表示する表示面5aを有し、表示器の表示の視認を妨げないように少なくとも表示器の表示面5aを覆う部分を透明または半透明な状態にした樹脂モールド部8により表示器5が被覆されている。樹脂モールド部8は直方体状を呈するように形成され、樹脂モールド部8の表示面5aと直角をなす側面に、切り欠き部103の縁部を嵌合させる溝部8cが形成されている。
【0041】
表示器5は、表示面5aをケース1の外部に向け、かつ溝部8cに切り欠き部103の縁部を嵌合させて樹脂モールド部を切り欠き部103に嵌合させた状態で配置され、注型樹脂11により表示器5を被覆した樹脂モールド部8のケース1内に位置する部分が覆われた状態になるレベルまでケース内に樹脂11が注型されている。
【0042】
図示の例では、樹脂モールド部8の表示器5を被覆した部分が直方体状を呈するように形成されていて、該樹脂モールド部8が、表示器5の表示面5aと直交する側面を有し、この側面に前記切り欠き部103の縁部を嵌合させる溝部が形成されている。ドライバIC7をメイン配線基板(図6及び図7には図示せず。)の回路に接続するためにメイン配線基板側に突出した多数のリード端子9aを有するコネクタ9がサブ配線基板6の他端に取り付けられている。
【0043】
サブ配線基板6は、メイン配線基板の一端側にその板面をメイン配線基板の板面と直交させた状態で配置されて、コネクタ9のリード端子がメイン配線基板に設けられた配線パターンに半田付けされている。これにより、ドライバIC(表示器の駆動回路)がメイン配線基板側の回路に電気的に接続されるとともにサブ配線基板6がメイン配線基板に機械的に接続されている。メイン配線基板及びサブ配線基板は、表示器5の表示面5aをケースの外部に向け、溝部8cに切り欠き部103の縁部を嵌合させて、樹脂モールド部8の表示器5を被覆した部分を切り欠き部に嵌合させた状態でケース内に挿入されている。そして、ケース1内に注型された樹脂11で表示器5を被覆した樹脂モールド部8のケース内に位置する部分が覆われた状態になるレベルまで、ケース1内に樹脂が注型される。
【0044】
上記のように、樹脂モールド部8の表示器5を被覆した部分の表示面と直角をなす側面に、ケースの側壁に設けられた切り欠き部103の縁部を嵌合させる溝部8cを設けて、この溝部8cにケースの側壁に設けられた切り欠き部103の縁部を嵌合させた状態にすると、その嵌合をきつくしておくことにより、切り欠き部103を完全に塞ぐことができる。そのため、切り欠き部103からの樹脂の漏れを生じさせることなく、樹脂モールド部の表示器を被覆する部分のケース内に位置する部分が覆われた状態になるレベルまでケース内に樹脂を注型して、ユニットの耐候性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係わるユニットの構造を示した縦断面図である。
【図2】図2は同実施形態に係わるユニットの外観を示した斜視図である。
【図3】図3は同ユニットで用いる表示器をサブ配線基板に取り付けた状態を示した斜視図である。
【図4】図4は同ユニットで用いる表示器をサブ配線基板に取り付けた状態を図3とは異なる方向から見て示した斜視図である。
【図5】図5は同実施形態においてサブ配線基板に取りつけられた表示器を樹脂モールド部により被覆した後サブ配線基板をメイン配線基板に取り付けた状態を示した斜視図である。
【図6】図6は本発明の第2の実施形態に係わるユニットで用いる表示器をサブ配線基板に取り付けた状態を示した斜視図である。
【図7】図7は本発明の第2の実施形態に係わるユニットの外観を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 ケース
101a ケースの側壁部
103 切り欠き部
2 制御装置本体
3 制御部を構成する電子部品
4 メイン配線基板
5 表示器
5a 表示面
6 サブ配線基板
7 表示器を駆動するドライバIC
8 樹脂モールド部
9 コネクタ
11 注型樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを制御する制御部を構成する電子部品と前記エンジンの稼働状態を示す情報を表示する表示器とを備えた制御装置本体を、一端が開口した箱形のケース内に前記表示器の表示を外部から目視し得る状態で収容して、該ケース内に樹脂を注型してなるエンジン用電子式制御ユニットにおいて、
前記ケースの開口端側に位置させて、前記ケースの側壁に切り欠き部または窓部が設けられ、
前記表示器は、情報を表示する表示面を有して、前記表示器の表示の視認を妨げないように少なくとも前記表示面を覆う部分を透明または半透明な状態にした樹脂モールド部により被覆され、
前記表示器は前記表示面を前記ケースの外部に向け、かつ前記樹脂モールド部を前記切り欠き部または窓部に嵌合させた状態で配置され、
前記ケースの開口端と反対側に向いた前記樹脂モールド部の端部に注型樹脂が達するレベルまで前記ケース内に樹脂が注型されていること、
を特徴とするエンジン用電子式制御ユニット。
【請求項2】
エンジンを制御する制御部を構成する電子部品と、前記エンジンの稼働状態を示す情報を表示する表示器とを備えた制御装置本体を、一端が開口した箱形のケース内に前記表示器の表示を外部から目視し得る状態で収容して、該ケース内に樹脂を注型してなるエンジン用電子式制御ユニットにおいて、
前記ケースの開口端側に位置させて、前記ケースの側壁に切り欠き部または窓部が設けられ、
前記制御部を構成する電子部品が実装されたメイン配線基板と、一端側の一面に前記表示器の駆動回路を構成する部品が取り付けられたサブ配線基板とが設けられ、
前記表示器は、表示面を前記サブ配線基板と反対側に向けた状態で、前記サブ配線基板の前記一端側の他面に取り付けられていて、前記表示器の表示の視認を妨げないように少なくとも前記表示器の表示面を覆う部分を透明または半透明な状態にした樹脂モールド部により前記駆動回路の構成部品及びサブ配線基板の一部とともに被覆され、
前記樹脂モールド部の前記表示器を被覆した部分は、前記切り欠き部または窓部に嵌合し得る形状に形成され、
前記駆動回路を前記メイン配線基板の回路に接続するために前記メイン配線基板側に突出した多数のリード端子を有するコネクタが前記サブ配線基板の他端に取り付けられ、
前記サブ配線基板は、前記メイン配線基板の一端側に、その板面を前記メイン配線基板の板面と直交させた状態で配置されて、前記コネクタのリード端子が前記メイン配線基板に設けられた配線パターンに半田付けされることにより、前記駆動回路が前記メイン配線基板側の回路に電気的に接続されるとともに前記サブ配線基板が前記メイン配線基板に機械的に接続され、
前記メイン配線基板及びサブ配線基板は、前記表示器の表示面を前記ケースの外部に向け、かつ前記樹脂モールド部の表示器を被覆した部分を前記切り欠き部または窓部に嵌合させた状態で前記ケース内に挿入され、
前記ケースの開口端と反対側に向いた前記樹脂モールド部の端部に注型樹脂が達するレベルまで前記ケース内に樹脂が注型されていること、
を特徴とするエンジン用電子式制御ユニット。
【請求項3】
エンジンを制御する制御部を構成する電子部品と、前記エンジンの稼働状態を示す情報を表示する表示器とを備えた制御装置本体を、一端が開口した箱形のケース内に前記表示器の表示部を外部から視認し得る状態で収容して、該ケース内に樹脂を注型してなるエンジン用電子式制御ユニットにおいて、
前記ケースの側壁に前記ケースの開口端に開口した切り欠き部が設けられ、
前記表示器は、情報を表示する表示面を有して、前記表示器の表示の視認を妨げないように少なくとも前記表示器の表示面を覆う部分を透明または半透明な状態にした樹脂モールド部により被覆され、
前記樹脂モールド部の前記表示面と直角をなす側面に前記切り欠き部の縁部を嵌合させる溝部が設けられ、
前記表示器は、前記表示面を前記ケースの外部に向け、かつ前記溝部に前記切り欠き部の縁部を嵌合させて前記樹脂モールド部を前記切り欠き部に嵌合させた状態で配置され、 前記表示器を被覆した樹脂モールド部のケース内に位置する部分が注型樹脂により覆われた状態になるレベルまで前記ケース内に樹脂が注型されていること、
を特徴とするエンジン用電子式制御ユニット。
【請求項4】
エンジンを制御する制御部を構成する電子部品と、前記エンジンの稼働状態を示す情報を表示する表示器とを備えた制御装置本体を、一端が開口した箱形のケース内に前記表示器の表示を外部から目視し得る状態で収容して、該ケース内に樹脂を注型してなるエンジン用電子式制御ユニットにおいて、
前記ケースの開口端側に位置させて、前記ケースの側壁に切り欠き部が設けられ、
前記制御部を構成する電子部品が実装されたメイン配線基板と、一端側の一面に前記表示器の駆動回路を構成する部品が取り付けられたサブ配線基板とが設けられ、
前記表示器は、表示面を前記サブ配線基板と反対側に向けた状態で、前記サブ配線基板の前記一端側の他面に取り付けられて、前記表示器の表示の視認を妨げないように少なくとも前記表示器の表示面を覆う部分を透明または半透明な状態にした樹脂モールド部により、前記駆動回路の構成部品及びサブ配線基板の一部とともに被覆され、
前記樹脂モールド部の前記表示器を被覆した部分は、前記表示面と直交する側面を有して該側面に前記切り欠き部の縁部を嵌合させる溝部が形成され、
前記駆動回路を前記メイン配線基板の回路に接続するために前記メイン配線基板側に突出した多数のリード端子を有するコネクタが前記サブ配線基板の他端に取り付けられ、
前記サブ配線基板は、前記メイン配線基板の一端側にその板面を前記メイン配線基板の板面と直交させた状態で配置されて、前記コネクタのリード端子が前記メイン配線基板に設けられた配線パターンに半田付けされることにより、前記駆動回路が前記メイン配線基板側の回路に電気的に接続されるとともに前記サブ配線基板が前記メイン配線基板に機械的に接続され、
前記メイン配線基板及びサブ配線基板は、前記表示器の表示面を前記ケースの外部に向け、前記溝部に前記切り欠き部の縁部を嵌合させて前記樹脂モールド部の前記表示器を被覆した部分を前記切り欠き部に嵌合させた状態で前記ケース内に挿入され、
前記表示器を被覆した樹脂モールド部のケース内に位置する部分が注型樹脂で覆われた状態になるレベルまで前記ケース内に樹脂が注型されていること、
を特徴とするエンジン用電子式制御ユニット。
【請求項5】
前記表示器が表示する情報は、前記エンジンの実稼働時間である請求項1ないし4のいずれか1つに記載のエンジン用電子式制御ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−160030(P2008−160030A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350085(P2006−350085)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】