説明

エンドトキシンの不活化方法および不活化処理装置

【課題】本発明は、エンドトキシンを効果的に不活化しうる方法および簡便にエンドトキシンフリー水を製造する方法を提供することを課題とする。詳しくは、エンドトキシンを不活化する条件において、種々の素材からなる実験器具や試薬、医薬の有効成分などに対して可能な限り影響を及ぼすことなく、エンドトキシンを効果的に不活化する方法を提供することを課題とする。さらには、このようなエンドトキシンを不活化するためのエンドトキシン不活化装置およびエンドトキシンフリー水の製造装置を提供することを課題とする。
【解決手段】エンドトキシンの不活化条件として高飽和水蒸気条件下で処理を行うことによる。従来の方法では不活化に強力な加熱処理が必要であったのに比べて、圧力や温度に関してマイルドな条件であるソフト水熱プロセスにおいて、十分にエンドトキシンを不活化しうることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高飽和水蒸気条件下で処理することを特徴とするエンドトキシンの新規不活化方法およびエンドトキシンフリー水の新規製造方法に関する。更に本発明は、高飽和水蒸気条件下で処理するための、エンドトキシンの新規不活化処理装置、およびエンドトキシンフリー水の新規製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンドトキシン(細胞内毒素)はグラム陰性菌の外膜における構成成分の一つである。化学構造的には、菌の抗原性を担う多糖(O抗原)、コア糖鎖、アミノ糖と脂肪酸からなるリピドAで構成されるリポ多糖である(図7参照)。エンドトキシンは複雑で多岐にわたる生理活性を示す物質であり、生体レベルにおいて、発熱活性、エンドトキシンショックの誘発、シュワルツマン反応、エピネフリン反応、骨髄反応、血液凝固、白血球の減少および増加、血小板減少、血糖低下、血清鉄減少、補体活性化、アジュバント作用、免疫賦活作用、免疫抑制作用、抗腫瘍作用、放射線障害保護、トレランスの誘導あるいは副腎皮質ホルモンの放出などの作用を有する。これらの中でも発熱活性は特徴的なものであり、極めて微量で強い発熱活性を示す(非特許文献1)。
【0003】
人工透析治療および医薬品等の製造過程などでは、複雑かつ多岐な生理活性を有するエンドトキシンの混入はあってはならないことであり、品質管理上、その検出と除去に厳重な注意が払われている。エンドトキシンは両親媒性でミセルを形成するため、分子形態が均一でなく、低分子化しても活性を示し、化学的処理にも比較的安定である。従って、器具や試料中のエンドトキシンの完全除去または不活化には困難が伴う。例えば、ガラスやステンレス等の耐熱性器具や、塩化ナトリウムなどの無機物に混在するエンドトキシンを不活性化するには、乾熱条件250℃、30分以上といった、有機物を炭化するような強力な加熱の処理が必要である(非特許文献2)。
【0004】
既存の滅菌法によるエンドトキシンの不活化として、γ線処理(185TBq60Co-γ線照射装置)、電子線処理(ダイナミトロン型電子照射装置)、酸化アセチレンガス処理(Biological indicator evaluator resistometer for ethylene oxide 指標体抵抗評価装置)、高圧蒸気処理(Biological indicator evaluator resistometer for moist heat指標体抵抗評価装置)、過酸化水素低温ガスプラズマ処理(Sterrad R100装置)、過酸化水素/過酢酸低温ガスプラズマ処理(Plazlyte R装置)などが報告されている(非特許文献3)。これらの滅菌法では、エンドトキシンの7〜9割を初期の段階で不活化できるが、残りの部分の不活化は困難であった。
【0005】
また、脂肪乳剤等を加熱処理することによりエンドトキシンを失活させる方法(特許文献1)、水酸化四級アンモニウムなどで処理する事によりエンドトキシンを不活化する方法(特許文献2)、酸もしくは塩基を含む有機溶媒で処理することによりエンドトキシンを不活化する方法(特許文献3)、界面活性剤処理によりエンドトキシン活性を低減させる方法(特許文献4)、逆浸透膜処理装置などを用いてエンドトキシンを除去する方法(特許文献5)、などが報告されている。
【0006】
エンドトキシンは、アルカリまたは酸に対して感受性であることがわかっている。アルカリ条件下では、リピドAの結合脂肪酸が遊離する。酸性条件下では、コア多糖が容易に切断され、水に難溶性のリピドAに変換し、リピドA分子内において容易にグルコシド結合のリン酸の脱離が起こる。エンドトキシンを化学修飾する方法として、アセチル化、サクシニル化、フタリル化といったアルキル化反応がある。エンドトキシンに関する研究が進展しているにもかかわらず、エンドトキシンを合目的に不活化、除去する普遍的な方法は未だ確立されるにいたっていない。
【非特許文献1】「第十四改正 日本薬局方解説書」広川書店刊行 2001年、p.B−76〜B−79
【非特許文献2】中野昌康・小玉正智/編「エンドトキシン―新しい治療・診断・検査―」講談社発行、1997年8月1日、p.139〜145
【非特許文献3】「医療用具におけるエンドトキシンの測定と不活化(より安全に、より高度な品質を求めて)」平成14年9月 東京都立産業技術研究所
【特許文献1】特開2004-155771号公報
【特許文献2】特開2000-72659号公報
【特許文献3】特開2002-155103号公報
【特許文献4】特開2003-342294号公報
【特許文献5】特開2007-252396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、エンドトキシンを効果的かつ簡便に不活化しうる方法、およびエンドトキシンフリー水を簡便に製造する方法を提供することを課題とする。詳しくは、エンドトキシンを不活化する条件において、種々の素材からなる実験器具や医療用具、試薬や医薬品に対して可能な限り影響を及ぼすことなく、エンドトキシンを効果的に不活化する方法、および既存のエンドトキシン吸着・ろ過フィルタ処理等をすることなくエンドトキシンフリー水を製造する方法を提供することを課題とする。さらには、このようなエンドトキシンを不活化するためのエンドトキシン不活化装置、およびエンドトキシンフリー水の製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者らはエンドトキシンの不活化条件として高飽和水蒸気条件下で処理を行うことに着目し、鋭意研究を重ねた結果、従来の方法では不活化に強力な加熱処理が必要であったのに比べて、圧力や温度に関してマイルドな条件下(以下、「ソフト水熱プロセス」という。)において、十分にエンドトキシンを不活化しうることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち本発明は、以下よりなる。
1.高飽和水蒸気条件下で処理することを特徴とする、エンドトキシンの不活化方法。
2.高飽和水蒸気条件下で、処理温度が130〜150℃である、前項1に記載の不活化方法。
3.高飽和水蒸気条件下で、処理時間が10〜120分間である、前項1または2に記載の不活化方法。
4.高飽和水蒸気条件において、蒸気飽和度が100%以上であり、かつ液相である、前項1〜3のいずれか1に記載の不活化方法。
5.前項1〜4のいずれか1に記載の方法を用いて、エンドトキシンフリー水を製造する方法。
6.前項1〜4のいずれか1に記載の不活化方法に使用し、以下を備えてなる、エンドトキシン不活化処理装置:
1)エンドトキシン含有可能性のある被処理物の処理部;
2)前記処理部に供給する水蒸気を発生するスチーム発生部;
3)前記処理部の内部温度を制御して、所定の高飽和水蒸気条件を制御しうるヒータ制御部。
7.さらに、以下を備えてなる、前項6に記載のエンドトキシン不活化処理装置。
A)前記処理部の内部圧力を制御して、所定の高飽和水蒸気条件を制御しうるコントロール弁;
B)高飽和水蒸気条件を導く過程および/または高飽和水蒸気条件下で発生しうる凝結水を排除するためのスチームトラップ部。
8.前項5に記載の製造方法に使用し、以下を備えてなる、エンドトキシンフリー水の製造装置。
1)エンドトキシン含有可能性のある被処理水の処理部;
2)前記処理部に供給する水蒸気を発生するスチーム発生部;
3)前記処理部の内部温度を制御して、所定の高飽和水蒸気条件を制御しうるヒータ制御部。
9.さらに、以下を備えてなる、前項8に記載のエンドトキシンフリー水の製造装置。
A)前記処理部の内部圧力を制御して、所定の高飽和水蒸気条件を制御しうるコントロール弁;
B)高飽和水蒸気条件を導く過程および/または高飽和水蒸気条件下で発生しうる凝結水を排除するためのスチームトラップ部。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエンドトキシンの不活化方法によれば、従来不活化処理が十分でなかったエンドトキシンを効果的に不活化することができる。また、本発明のエンドトキシンの不活化方法は、水を用いるため、環境に負荷をもたらす化学物質を使用しておらず、安全かつ簡便である。
本発明のエンドトキシンの不活化処理装置を用いれば、本発明のエンドトキシンの不活化方法により、効果的に不活化処理を行うことができる。さらに、本発明の不活化処理装置において、流通系を採用し、内部圧力を制御するためのコンロトール弁および凝結水を排除するためのスチームトラップ部を備えることで、被処理物、例えばチューブ、カテーテルのように液を流す医療用具、および輸血セットや注射筒、注射針、血液回路等を滅菌処理終了とともに乾燥した状態で取り扱うことができることや、処理工程中での処理内部で、非平衡系のため化学変化の平衡が更新されることにより、反応速度が減衰しないなど、より効果的に処理することができる。
さらに従来の滅菌法では、高い濃度でエンドトキシンを含有する被処理水については十分にエンドトキシンを不活化することができなかったが、本発明のエンドトキシンフリー水の製造方法によれば、高い濃度でエンドトキシンを含有する被処理水からエンドトキシンフリー水を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
飽和水蒸気量と温度との関係は、下記の気体の状態方程式に基づき、図1に示す曲線を導き出すことができ、気体の状態を導き出すことができる。(図1の塗りつぶし部分は、「ソフト水熱プロセス」に相当する。)
気体の状態方程式:PV=nRT(PV=G/M・RT)
(P:圧力(MPa)、V:体積(dm3)、n:モル数(mol)、M:H2Oの分子量(18.015)、R:ガス定数(8.31×10-3dm3・MPa/K・mol)、T:温度K[℃+273℃])
【0012】
本発明において、「高飽和水蒸気」とは、高蒸気飽和度の飽和水蒸気および飽和水蒸気圧より高い圧力の水蒸気をいう。本発明におけるエンドトキシンの不活化方法は、高飽和水蒸気条件下で処理するものであり、水熱プロセスによるものである。水熱プロセスとは、高温高圧水蒸気を反応媒体とした化学反応をいう。高蒸気飽和度とは、文字通り高飽和水蒸気状態で、より高い水蒸気を含む状態をいい、具体的には蒸気飽和度が100%以上の状態をいう。なお、蒸気飽和度は、次の式により表される。
蒸気飽和度(%)={水蒸気密度(kg/m3)/当該温度(圧力)時の飽和水蒸気密度(kg/m3)}×100
【0013】
気体の状態方程式により求められた飽和水蒸気の水分量から、飽和水蒸気水分量の50%の水分量(乾燥水蒸気、dry steam:DS)、飽和水蒸気水分量の100%水分量(飽和水蒸気、saturated vapour:SV)、飽和水蒸気水分量の1000%水分量(加圧熱水、super-heated water:SW)の各容量の水を5ml密閉系の容器に加え、温度条件を変えたときの蒸気飽和度を求めた値を、表1に示した。
【0014】
【表1】

【0015】
本発明のエンドトキシンの不活化方法、およびエンドトキシンフリー水の製造方法における蒸気飽和度の条件は、エンドトキシンが不活化される条件を適宜設定することができるが、好ましくは100%以上の液相である。密閉型の装置を用いる場合は100%以上の液相の条件が好ましいが、流通型の装置を用いる場合は、蒸気飽和度が100%以上であればよい。流通型において被処理物を乾燥させるには蒸気飽和度は100%で、液相でないことが好ましい。ここで液相とは、蒸気飽和度が100%を超える場合において、水が完全に液体のみで存在する条件である。なお蒸気飽和度が100%の場合は、気体と液体が混在する状態であり、蒸気飽和度が100%未満の場合は、完全に気体のみで存在する状態である。
【0016】
本発明の不活化方法における温度条件は、高飽和水蒸気条件下で処理できるのであれば、特に限定されないが、例えばソフト熱水プロセスに該当する106〜150℃で処理することができる。被処理物として、プラスチック素材のものを用いる場合には、該プラスチックが変質や変性しない条件を適宜決定すればよく、例えば140℃以下とすることができる。エンドトキシンの不活化に必要な温度条件として、好ましくは125℃より高い、より好ましくは130℃以上の温度条件を設定することができる。例えば、130℃〜150℃の温度条件が好ましい。
【0017】
処理時間は、不活化すべきエンドトキシンが不活化される条件であればよく、特に限定されないが、10〜120分間、好ましくは20〜90分間、より好ましくは60〜90分間処理することができる。
【0018】
本発明において、不活化される物質はエンドトキシンである。不活化処理に供される被処理物は、エンドトキシンを含むことが望ましくない全てのものであり、実験器具、医療用具、試薬、医薬品、実験動物飼育機材、床敷、水などが例示される。
エンドトキシンフリー水の製造方法において、エンドトキシンの不活化処理に供される被処理物は、被処理水である。被処理水は、エンドトキシンを含むことが望ましくない精製水、もしくは水溶液である。例えば、精製水もしくは水溶液は、水道水等の原水にフィルタ、軟化装置、活性炭装置等による前処理を施した後に逆浸透膜処理した精製水もしくは水溶液を意味する。精製水は、原水中の汚濁物質や微生物などをフィルタで除去し、イオン交換により軟水化や純水化を行い、活性炭処理により塩素等の酸化剤を除去し、逆浸透膜処理により得られる。しかし、かかる精製水もしくは水溶液には、エンドトキシンが基準値以下に除去されないまま含まれている。
【0019】
エンドトキシン(細胞内毒素)は、化学構造的には、菌の抗原性を担う多糖(O抗原)、コア糖鎖、アミノ糖と脂肪酸からなるリピドAで構成されるリポ多糖(LPS)である(図7)。不活化され得るエンドトキシンの系としては、乾燥系、水系の二つが考えられる。乾燥系としては、医療用具などに付着したエンドトキシンが挙げられる。水系としては透析液などの溶液中に存在するエンドトキシンが挙げられ、好ましくは水溶液中もしくは精製水中に含まれるエンドトキシンが含まれる。
【0020】
エンドトキシンは、O抗原が親水性を持ち、リピドAが疎水性を有している。このため、エンドトキシンは水溶液中で、疎水性のリピドA側が水分子にはじかれ、付き合わせるようにしてミセルを形成している。または親水性の多糖部分を外側に疎水性のリピドAを内側にしたサンドイッチ状のラメラ、最小単位のダイマ(二量体)で存在している。かかる分子量の大きさが生物活性に影響していると考えられている。
【0021】
日本薬局方では、医薬品を対象としたエンドトキシン測定の試験法が規定されている。エンドトキシン測定の試験法としては、リルムス試験が採用され、ライセート試薬が用いられる。なお、エンドトキシン測定の試験の前段階として、ライセート試薬の表示感度確認試験がゲル化法で、信頼性確認試験や信頼性確認試験が比濁法や比色法で可能である。本発明において、エンドトキシンを不活化する対象の被処理物としては、医薬品のみならず医療用具も含まれる。本発明では、エンドトキシン活性の減少率として、LRV(log reduction value:対数減少率)を用いる。対数減少率はエンドトキシンの減少値を対数で表したものであり、エンドトキシンの減少値は以下の計算式によって算出される。
減少値=不活化処理前のエンドトキシン濃度/不活化処理後のエンドトキシン濃度
【0022】
日本や米国などの各国の薬局方(JP、USPなど)では、最終製品のエンドトキシンの許容レベルについて記載されている。例えば、日本薬局方および厚生労働省基準では最小0.5EU/mL未満、米国薬局方(USP)ガイドラインでは、エンドトキシン許容レベルについて、未処理時のエンドトキシン濃度に比べて処理後のエンドトキシン濃度のLRVが>3×log(対数目盛りで3以上、すなわち1/1000以下に減少)であることが記載されている。
【0023】
「エンドトキシンフリー水」とは、エンドトキシンの濃度が、不活化処理前の被処理水に比べて減少した精製水もしくは水溶液を指す。ここで水溶液とは、注射液あるいは透析液など、直接血管を通して生体に適用される製剤を含む。さらに具体的には、「エンドトキシンフリー水」とはエンドトキシンが実質的に含まれていない、あるいは所定濃度以下である精製水もしくは水溶液をいう。所定濃度とは、医療に用いた場合に人体への悪影響が無視できる程度の量を指し、典型的な用途における所定濃度は各国の法令やガイドラインにより規定されている。例えば日本薬局方や厚生労働省基準によれば、0.5EU(エンドトキシン単位)/mL未満、米国基準では未処理時の1/1000以下(LRV>3.0)とされている。
【0024】
エンドトキシンフリー水の製造方法は、エンドトキシン含有可能性のある被処理水を、本発明のエンドトキシン不活化方法に供する工程を含む。本発明の製造方法によれば、不活化処理前の、エンドトキシン含有可能性のある精製水もしくは水溶液におけるエンドトキシン濃度がいかなる濃度であっても、エンドトキシンフリー水を製造可能である。本発明によれば、高濃度でエンドトキシンを含有する精製水もしくは水溶液、例えば800EU/mL(100ng/mL)以上の濃度でエンドトキシンを含有する精製水もしくは水溶液を用いて、エンドトキシンフリー水を製造することも可能である。
【0025】
ソフト水熱プロセスによるエンドトキシンの不活化は、次の二つのメカニズムによると推定される(図8参照)。
1.ソフト水熱プロセスにより、誘電率は常温常圧時80から30以下に低下する。水は、常温常圧時では疎水性物質とは文字通りなじまないが、誘電率が低下することにより、親油性となる。したがって水分子と疎水性リピドAがなじみやすくなり、リピドAの乖離分散が進行する。エンドトキシンは分子サイズ50,000〜100,000の高分子ミセルで強い発熱活性を示し、高分子化することにより毒素活性が亢進するといわれている。本発明は、界面活性剤等を用いることなく、水だけでエンドトキシンの不活化を可能とする。
2. ソフト水熱プロセスにより、イオン積は常温常圧時14から13以下に低下する。水の反応媒体としての特性は、イオン反応の好適場となり加水分解のような化学反応が進む。 したがって、 LPS糖鎖、およびエンドトキシンの示す生物活性中心であるリピドAの加水分解により、完全にエンドトキシンが不活化すると考えられる。エンドトキシンは、アルカリまたは酸に対して感受性であることがわかっている。アルカリ条件化では、リピドAの結合脂肪酸が遊離することによる。一方、酸性条件化では、コア多糖が容易に切断され、水に難溶性のリピドAに変換し、リピドA分子内においても容易にグルコシド結合のリン酸の脱離が起こる。本発明は、酸、塩基および有機溶媒を用いることなく、水だけでエンドトキシンの不活化を可能とする。
【0026】
本発明は、上記条件によりエンドトキシンを不活化しうるエンドトキシン不活化処理装置もしくはエンドトキシンフリー水の製造装置にも及ぶ。具体的には、少なくとも以下の1)〜3)の部位を備えてなる、エンドトキシン不活化処理装置もしくはエンドトキシンフリー水の製造装置が挙げられる。
1)エンドトキシン含有可能性のある被処理物もしくはエンドトキシン含有可能性のある被処理水の処理部。
2)前記処理部に供給する水蒸気を発生するスチーム発生部。
3)前記処理部の内部温度を制御して、所定の高飽和水蒸気条件を制御しうるヒータ制御部。
【0027】
上記1)において、「被処理物の処理部」もしくは「被処理水の処理部」とは、被処理物もしくは被処理水が、高飽和水蒸気条件に供される空間を有する部位をいい、例えば被処理物もしくは被処理水が設置される部位をいう。具体的には、例えば図2の2「処理装置」に該当する。上記において、「エンドトキシン含有可能性のある被処理物」とは、心臓血管系、リンパ系、脳脊髄液(髄液)に直接あるいは間接に接触する実験器具や医療器具などが含まれる。例えば、医療や実験に使用するための器具であって、何ら試料等が含まれていないもの、具体的にはチューブ類、カテーテル類のように液を流す透析器、透析回路、および輸血セット、輸液セットや注射筒、注射針、血液回路、人工心臓弁、人工血管なども本発明の被処理物とすることができる。「エンドトキシン含有可能性のある被処理水」とは、例えば、水道水等の原水にフィルタ、軟化装置、活性炭装置等による前処理を施した後に逆浸透膜処理した精製水もしくは水溶液である。
【0028】
上記2)において、スチーム発生部は、本発明の高飽和水蒸気状態に導くために必要な部位であり、例えば図2の5「スチーム発生装置」に該当する。
上記3)において、ヒータ制御部は、上記説明の如く被処理物の処理部の内部温度を制御して、所定の高飽和水蒸気条件を制御しうる部位であり、例えば図2の26「ヒータ」および27「温度調節器」に該当する。
【0029】
本発明のエンドトキシン不活化装置もしくはエンドトキシンフリー水の製造装置は、さらに以下のA)およびB)の部位を備えることが好適である。
A)前記処理部の内部圧力を制御して、所定の高飽和水蒸気条件を制御しうるコントロール弁;
B)高飽和水蒸気条件を導く過程および/または高飽和水蒸気条件下で発生しうる凝結水を排除するためのスチームトラップ部。
【0030】
上記A)およびB)を備えたエンドトキシン不活化装置またはエンドトキシンフリー水の製造装置を、便宜上、「流通型」と呼ぶ場合がある。上記流通型と反して、A)およびB)を備えない装置を、便宜上、「密閉型」と呼ぶ場合がある。
上記A)のコントロール弁は、例えば図2の32に該当し、B)のスチームトラップ部は例えば図2の41に該当する。
【0031】
「密閉型」であっても、エンドトキシンの不活化処理が実施できることは、後述の実施例においても示すとおりであるが、「流通型」とすることで、さらに優れた効果が期待される。「密閉型」の場合では、処理部内での化学変化の平衡が特定され、平衡の近傍では反応速度が減衰するが、「流通型」では化学変化の平衡が暫時更新され、反応速度は減衰せず、効率よく処理可能な装置を提供することができる。
【0032】
さらには、「流通型」では、被処理物である実験器具、医療器具、具体的にはチューブ、カテーテルのように液を流す医療用具、および輸血セットや注射筒、注射針、血液回路などが、本発明の方法により処理されると同時に乾燥状態とすることができる。例えば、従来の高圧蒸気滅菌であるオートクレーブ処理の場合は、処理直後は被処理物に凝結水による水分が付着した状態で、被処理物をそのままでは実験に供することができず、実験器具は一度乾燥状態にするための工程(例えば、真空工程)を必要とするが、本発明の「流通型」の装置であれば、エンドトキシンを不可逆的に不活化した状態で、処理直後に乾燥状態を維持できる点で優れている。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明のエンドトキシンの不活化方法、エンドトキシンフリー水の製造方法および、これらの方法に用いる装置について、実施例を示して具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の理解をより確実にするためのものであって、本発明はこれらにより限定されるものではないことは明らかである。なお、エンドトキシン不活化装置とエンドトキシンフリー水製造装置は共通の装置を用いることができる。
【0034】
(実施例1)ソフト水熱プロセスによるエンドトキシンの不活化
下記(1)〜(4)の各条件で処理した後の試料についてのエンドトキシンの不活化効果を調べた。各々、乾燥水蒸気(DS)、飽和水蒸気(SV)、加圧熱水(SW)。流通型の各条件である。
(1)乾燥水蒸気(蒸気飽和度50%):120℃・0.20MPa・30分間
130℃・0.27MPa・30分間
140℃・0.36MPa・30分間
130℃・0.27MPa・60分間
130℃・0.27MPa・90分間
(2)飽和水蒸気(蒸気飽和度100%):120℃・0.20MPa・30分間
130℃・0.27MPa・30分間
140℃・0.36MPa・30分間
130℃・0.27MPa・60分間
130℃・0.27MPa・90分間
(3)加圧熱水(蒸気飽和度1000%):120℃・0.20MPa・30分間
130℃・0.27MPa・30分間
140℃・0.36MPa・30分間
130℃・0.27MPa・60分間
130℃・0.27MPa・90分間
(4)流通型(蒸気飽和度100%):120℃・0.20MPa・30分間
130℃・0.27MPa・30分間
140℃・0.36MPa・30分間
130℃・0.27MPa・60分間
130℃・0.27MPa・90分間
【0035】
(材料と方法)
エンドトキシン標準品:USP RSE E.coli(生化学バイオビジネス株式会社製)2000EU/mL
*EUは力価 1EU=125pg (E.coli UKT-B株)
エンドトキシン測定用試薬:Endospecy ES-24S kit(生化学バイオビジネス株式会社製)Standard Endotoxin CSE- kit(生化学バイオビジネス株式会社製)
蒸留水:Endotoxin Free Water(大塚蒸留水)(株式会社大塚製薬工場)
【0036】
USP RSE (2000EU/ml) 10μl をスクリュウキャップ付のバイアル(5ml)に滴下し、安全キャビネット内で24時間自然乾燥させた後に蒸留水(Endotoxin Free Water)を滴下し、バイアル内を所定の蒸気飽和度として、所定条件の水熱プロセスにより処理を行った。
水熱プロセスによる処理後のエンドトキシンは、分析範囲になるように蒸留水(Endotoxin Free Water)で希釈しvortex mixerでよく攪拌した後に、200μlをエンドトキシン緩衝液200μlで溶解したES-24Sに添加し、2秒間攪拌してから、EG Reader SV-12(生化学バイオビジネス株式会社製)で定量した。
【0037】
(結果)
結果を表2と、図3〜6に示す。なお、コントロール(+)は、ソフト水熱プロセスなどの処理を経ていないものである。
【表2】

【0038】
図3は、時間が一定(30分間)の場合に、各条件下で処理を行った場合のエンドトキシン濃度の比較を示す。SWと流通型で処理した場合は、顕著なエンドトキシン濃度の減少が見られた。図3の結果を、LRVで表したものが図4である。SW・130℃、SW・140℃、流通型・140℃で、USPガイドラインを満たすエンドトキシンの不活化が確認された。
【0039】
図5は、温度が一定(130℃)の場合に、各条件下で処理を行った場合のエンドトキシン濃度の比較を示す。SV、SW、流通型で処理した場合は、顕著なエンドトキシン濃度の減少が見られた。図5の結果を、LRVで表したものが図6である。SW・30分間、SW・60分間、流通型・60分間、SV・90分間、SW・90分間、流通型・90分間で、USPガイドラインを満たすエンドトキシンの不活化が確認された。
【0040】
(実施例2)流通型エンドトキシン不活化装置
本発明に使用する流通型のエンドトキシン不活化装置を図2に示し、詳細に説明する。
【0041】
図2は処理システムの配管系を示す全体構成図である。これらの図を参照して説明すると、処理システム1は処理装置2とスチーム発生装置5を有しており、これらの間には水蒸気供給管7および窒素ガス供給管8が配置されている。処理装置2は、装置架台21の上に横置き状態で設置された圧力容器からなる処理器(蒸煮器)22を有し、この処理器22の一端に水蒸気供給管7および窒素ガス供給管8が連通している。
【0042】
処理器22の他端にはクラッチ式の開閉蓋22aが取り付けられており、処理器22の内部22bは開閉蓋22aを閉じると気密状態に保持される。処理器22の内部22bには円筒状の被処理物設置部23が同軸状態に配置されており、被処理物設置部23に実験器具等の被処理物を搭載可能である。
開閉蓋22aを開けると、被処理物設置部23をスライドレール24に沿って処理器22から引き出すことが可能となっている。また、処理器22の内部22bにはその中心を軸線方向にスチーム吹き出し管25が延びており、このスチーム吹き出し管25の端が水蒸気供給管7に接続されている。
【0043】
処理器22の圧力容器における円筒状胴部の外周を取り巻く状態にヒータ26が取り付けられており、ヒータ26の駆動は温度調節器27によって制御される。温度調節器27は被処理物設置部23に搭載された被処理物の温度を検出するための温度センサ28による検出結果に基づき、ヒータ26を駆動して、処理器22の内部温度を所定の値に保持する。
【0044】
また、処理器22には、その内部22bから排出ガスを外部に放出するための排気管29が接続されており、この排気管29には処理器22の側から、フィルタ30、圧力計31、コントール弁32、気液分離装置33および脱臭装置34が接続され、これらを経由して処理器22の内部22bを大気開放可能である。処理器22の内部22bの圧力は圧力計35に表示されると共に、圧力調節器36によって検出される。圧力調節器36は検出された圧力に基づき、コントロール弁32を開閉して処理器22からのガス排出量を調節することにより、処理室22の内部圧力を所定の値となるように調節する。また、処理器22の内部22bは安全弁37を介して大気開放可能となっており、当該安全弁37によって内部圧力の異常上昇が回避される。
【0045】
本例の処理器22にはドレイン管38も接続されている。ドレイン管38にはフィルタ39が挿入されており、フィルタ39の下流側の部分で二又に分岐し、一方の側がストップ弁40およびスチームトラップ41を介して大気開放され、他方の側がストップ弁42を介して大気開放されている。
【0046】
次に、スチーム発生装置5は、純水あるいはイオン交換水を貯留した水タンク51と水ポンプ52とスチーム発生器53とオーバーフロー式の冷却器54と保圧弁55を備えており、これらが装置架台56に搭載されている。水タンク51内の水はフィルタ58が挿入された循環パイプ57aを介して水ポンプ52に供給され、水ポンプ52から吐出された水は循環パイプ57bを介してスチーム発生器53に供給される。スチーム発生器53は、循環パイプ57bに連通しているコイル状の通路57cを備え、この通路57cを外側から電気炉53aによって加熱することにより、当該通路57cを通過する間に水が水蒸気に変わる。電気炉53aは温度調節器53bによって制御される。発生した水蒸気は循環パイプ57dを通って冷却器54および保圧弁55が挿入されている循環パイプ57eを介して水タンク51に戻る。ここで、循環パイプ57dにはストップ弁59を介して水蒸気供給管7が連通している。ストップ弁59を開くと、スチーム発生器53で発生した飽和水蒸気が水蒸気供給管7を経由して処理器22に供給され、余剰の水蒸気のみが循環パイプ57d、57eを介して還流することになる。処理装置2の側に供給される飽和水蒸気の圧力は保圧弁55によって調節される。また、循環パイプ57dには圧力計60および安全弁61が接続されている。
【0047】
さらに、スチーム発生装置5には窒素ガス供給管62が取り付けられており、この窒素ガス供給管62はマスフローメータ63、ストップ弁64および逆止弁65を介して、処理装置2の側に接続された窒素ガス供給管8に接続されている。窒素ガス供給管62の上流端62aは、減圧弁66が挿入されている上流側配管67を介して窒素ガスタンク68に連通している。さらに、窒素ガス供給管62の上流端62aは、減圧弁69が挿入された排出側配管70を介して、処理装置22の側に搭載されているコントロール弁32の上流側に連通している。
【0048】
ここで、上記構成の処理装置2およびスチーム発生装置5の間に架け渡されている水蒸気供給管7および窒素ガス供給管8は、それぞれ、ラインヒータ9、10によって覆われており、これらを介して処理装置2の側に供給される水蒸気および窒素ガスを加熱できるようになっている。また、水蒸気供給管7には安全弁としてのストップ弁11が接続されている。さらに、窒素ガス供給管8は、その下流側の端部が第1ストップ弁12を介して処理器22に接続されていると共に、当該第1ストップ弁12よりも上流側の部位が第2ストップ弁13を介して水蒸気供給管7の下流側の部位に連通している。
【0049】
上記構成の処理システム1による被処理物の処理動作を説明する。基本的な処理動作は次の通りである。まず、処理器22に、チューブやチップなどの実験器具や医療器具等、エンドトキシンの不活化処理を所望する被処理物を投入し、処理器22に飽和水蒸気を供給する。ヒータ26によって処理器22の内部温度が所定の温度に到達した後は、コントロール弁32を調節して、処理器22の内部22bを飽和水蒸気圧より高い圧力の水蒸気が充填された状態、すなわち、飽和水蒸気または高飽和水蒸気の雰囲気に所定時間保持する。
次に、スチーム発生装置5からの飽和水蒸気の供給を止めた後、窒素を処理器22に供給してその内部の処理済被処理物を冷却しながら、処理器22の内部圧力を大気圧にする。内部圧力が大気圧になったことが確認された後は、安全のためにストップ弁42(ドレインバルブ)を開き、しかる後に処理器22を開けて、処理済みの被処理物を取り出す。
【0050】
上記構成の処理システム1によるエンドトキシンフリー水の製造を説明する。処理システム1において処理器22に、飛散を防ぐために精製水もしくは水溶液を密閉容器に入れて、被処理物の処理動作と同様の操作をすることができる。あるいは、エンドトキシン不活化の反応媒体である飽和水蒸気または高飽和水蒸気自体が、エンドトキシンフリー水となるため、気液分離装置33により分離された水をエンドトキシンフリー水として製造することもできる。すなわち、処理システム1において、所定の温度、圧力、および時間に晒された反応媒体自体がエンドトキシンフリー水となり、流通型であるが故に連続的にエンドトキシンフリー水を製造することができる。ここで気液分離装置33は凝縮器としての作用を有するといえる。
【0051】
なお、処理に用いる窒素は、空気と置き換えてもよく、被処理物の特性により不活性ガスとして窒素を用いる。また、被処理物の種類により、33の気液分離装置、および34の脱臭装置を適宜取り付ける。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上詳述したように、本発明のエンドトキシンの不活化方法によれば、従来不活化処理が十分でなかったエンドトキシンについて効果的に不活化処理を行うことができる。また、従来の方法に比べて、マイルドな条件下でエンドトキシンの不活化を行うことができ、有利である。従来の乾熱条件によるエンドトキシンの不活化処理は、金属やガラス製等の耐熱性容器・器具類にしか適用できないが、本発明の方法はプラスチック製等の器具、容器も適用可能である。また、本発明によれば器具のみならず、溶液中のエンドトキシンを除去することも可能であり、医薬品等の製品自体や製造環境において、医薬品GMPおよび治験薬GMPにより要求されるエンドトキシン管理に利用することが可能である。
【0053】
また、以上詳述したように、本発明のエンドトキシンフリー水の製造方法によれば、従来不活化処理が十分でなかったエンドトキシンフリー水について効果的に不活化処理を行うことができる。また、従来のフィルタ等による濾過方法に比べて、簡便、確実、安価にエンドトキシンフリー水の製造を行うことができ、非常に有利である。
【0054】
本発明のエンドトキシン不活化処理装置を用いれば、効果的に不活化処理およびエンドトキシンフリー水の製造を行うことができる。本発明のエンドトキシンの不活化処理装置に関し、「密閉型」でも不活化処理が実施できるが、「流通型」とすることで、密閉型よりもさらに優れた効果が期待される。「密閉型」の場合では、処理部内での化学変化の平衡が特定され、平衡の近傍では反応速度が減衰するが、「流通型」では化学変化の平衡が暫時更新され、反応速度は減衰せず、効率よく処理可能な装置を提供することができる。
【0055】
さらには、「流通型」では、被処理物である実験器具、医療器具、具体的にはチューブ、カテーテルのように液を流す医療用具、および輸血セットや注射筒、注射針、血液回路などが本発明の方法により処理されると同時に、乾燥状態とすることができる。例えば、従来の高圧蒸気滅菌であるオートクレーブ処理の場合は、処理直後は被処理物が凝結水により水分が付着した状態で、そのままでは実験に供することができず、実験器具は一度乾燥状態にするための工程を必要とするが、本発明の流通型の装置であれば、処理直後に乾燥状態を維持できる点で優れている。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の高飽和水蒸気条件における飽和水蒸気量と温度の関係を示す図である。
【図2】本発明のエンドトキシン不活化に使用可能な装置の一例を示す図である。(実施例2)
【図3】時間が一定(30分間)で、各条件下で処理を行った場合のエンドトキシン濃度の比較を示す図である。(実施例1)
【図4】図3の結果を、LRVで表した図である。(実施例1)
【図5】温度が一定(130℃)で、各条件下で処理を行った場合のエンドトキシン濃度の比較を示す図である。(実施例1)
【図6】図5の結果を、LRVで表した図である。(実施例1)
【図7】エンドトキシンの化学構造を示す図である。
【図8】エンドトキシンのソフト水熱プロセスによる不活化のメカニズムを示す図である。
【符号の説明】
【0057】
以下図2に示す各符号について、説明する。
1 処理システム
2 処理装置
5 スチーム発生装置
7 水蒸気供給管
8 窒素ガス供給管
9、10 ラインヒータ
12、13 ストップ弁
22 処理器
22a 開閉蓋
22b 内部
23 被処理物設置部
25 スチーム吹き出し管
26 ヒータ
27 温度調節器
28 温度センサ
29 排気管
32 コントロール弁
33 気液分離装置(凝縮器)
34 脱臭装置
36 圧力調節器
38 ドレインパイプ
40、42 スチームトラップ部
51 水タンク
52 水ポンプ
53 スチーム発生器
53a 電気炉
53b 温度調節器
54 冷却器
55 保圧弁
57a、57b、57d、57e 循環パイプ
57c コイル状通路
68 窒素ガスタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高飽和水蒸気条件下で処理することを特徴とする、エンドトキシンの不活化方法。
【請求項2】
高飽和水蒸気条件下で、処理温度が130〜150℃である、請求項1に記載の不活化方法。
【請求項3】
高飽和水蒸気条件下で、処理時間が10〜120分間である、請求項1または2に記載の不活化方法。
【請求項4】
高飽和水蒸気条件において、蒸気飽和度が100%以上であり、かつ液相である、請求項1〜3のいずれか1に記載の不活化方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載の方法を用いて、エンドトキシンフリー水を製造する方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1に記載の不活化方法に使用し、以下を備えてなる、エンドトキシン不活化処理装置:
1)エンドトキシン含有可能性のある被処理物の処理部;
2)前記処理部に供給する水蒸気を発生するスチーム発生部;
3)前記処理部の内部温度を制御して、所定の高飽和水蒸気条件を制御しうるヒータ制御部。
【請求項7】
さらに、以下を備えてなる、請求項6に記載のエンドトキシン不活化処理装置。
A)前記処理部の内部圧力を制御して、所定の高飽和水蒸気条件を制御しうるコントロール弁;
B)高飽和水蒸気条件を導く過程および/または高飽和水蒸気条件下で発生しうる凝結水を排除するためのスチームトラップ部。
【請求項8】
請求項5に記載の製造方法に使用し、以下を備えてなる、エンドトキシンフリー水の製造装置。
1)エンドトキシン含有可能性のある被処理水の処理部;
2)前記処理部に供給する水蒸気を発生するスチーム発生部;
3)前記処理部の内部温度を制御して、所定の高飽和水蒸気条件を制御しうるヒータ制御部。
【請求項9】
さらに、以下を備えてなる、請求項8に記載のエンドトキシンフリー水の製造装置。
A)前記処理部の内部圧力を制御して、所定の高飽和水蒸気条件を制御しうるコントロール弁;
B)高飽和水蒸気条件を導く過程および/または高飽和水蒸気条件下で発生しうる凝結水を排除するためのスチームトラップ部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−75619(P2010−75619A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250264(P2008−250264)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年4月1日 日本医療機器学会 発行の、「医療機器学 第78巻 第4号(2008年4月号)」に発表 及び、 平成20年4月23日 東北大学大学院医学系研究科附属動物実験施設大会総務局 発行の、「日本実験動物科学技術2008講演要旨集」に発表
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(000148380)株式会社前田製作所 (14)
【Fターム(参考)】