説明

エンドプレート付き溝型鋼の端部構造

【課題】鋼材の端部に溶接レスでエンドプレートを形成するエンドプレート付き溝型鋼の端部構造を提供する。
【解決手段】押さえ部材6が、係合部材5と溝型鋼の内側に折り曲げられたウェブの長手方向端部折り曲げ部9に挟持され、押さえ部材6により、左右それぞれのフランジ4,4の長手方向端部折り返し部8,8の戻りが防止される。また、係合部材5と、押さえ部材6と、ウェブ2の長手方向端部折り曲げ部9のそれぞれに貫通する孔があけられており、この孔に締結部材11を通して他の鋼材のウェブやフランジと接合することができ、さらに、締結部材による締め付けにより、係合部材5と押さえ部材6とウェブの長手方向端部折り曲げ部9が固定され、左右それぞれのフランジ4,4の長手方向端部折り返し部8,8と相まって溝型鋼端部にエンドプレートがしっかりと形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドプレート付き溝型鋼の端部構造に関する。詳しくは、溶接レスで溝型鋼の端部にエンドプレートを取り付ける端部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材どうしを接合する際、一方の鋼材の端部にエンドプレートを取り付け、エンドプレートを介してもう一方の鋼材のウェブやフランジとボルトで固定する。
【0003】
鋼材の端部にエンドプレートを取り付ける場合、鋼材端部にあう断面のエンドプレートを用意し、鋼材とエンドプレートを溶接で固定されることが一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−150116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、鋼材の端部にエンドプレートを溶接で取り付けると、溶接後に部材の防錆塗装を施す必要がある。また、溶接作業により品質に影響を与えるため、品質の安定が図れない。また、作業環境が苛酷であり、特殊技能を要するため、作業者の確保が困難といった問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑み、鋼材の端部に溶接レスでエンドプレートを形成するエンドプレート付き溝型鋼の端部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、ウェブとウェブを挟む左右のフランジからなる溝型鋼の端部にエンドプレートを形成する溝型鋼の端部構造であって、
左右それぞれのフランジの長手方向端部が内側に折り返され、
両端部にそれぞれ係合部を有する係合部材が、両端部の係合部をフランジとフランジの長手方向端部折り返し部の隙間にそれぞれ挿入されて溝型鋼内部に収納され、
左右それぞれのフランジの長手方向端部折り返し部の変形を防止する押さえ部材が、係合部材と溝型鋼の内側に折り曲げられたウェブの長手方向端部折り曲げ部に挟持され、
該係合部材と、該押さえ部材と、該ウェブの長手方向端部折り曲げ部のそれぞれに貫通する孔があけられていることを特徴とするエンドプレート付き溝型鋼の端部構造により解決される。
【0008】
このエンドプレート付き溝型鋼の端部構造では、押さえ部材が、係合部材と溝型鋼の内側に折り曲げられたウェブの長手方向端部折り曲げ部に挟持され、押さえ部材により、左右それぞれのフランジの長手方向端部折り返し部の変形が防止される。また、該係合部材と、該押さえ部材と、該ウェブの長手方向端部折り曲げ部のそれぞれに貫通する孔があけられており、この孔に締結部材を通して他の鋼材のウェブやフランジと接合することができ、さらに、締結部材による締め付けにより、係合部材と押さえ部材とウェブの長手方向端部折り曲げ部が固定され、左右それぞれのフランジの長手方向端部折り返し部と相まって溝型鋼端部にエンドプレートがしっかりと形成される。
【0009】
本構造により、鋼材のエンドプレートを溶接レスで実現することができるため、溶接作業の課題である、・溶接後に部材の防錆塗装を施す必要がある。・溶接作業により品質に影響を与えるため、品質の安定性が図れない。・作業環境が苛酷であり、特殊技能を要するため、作業者の確保が困難である。といった課題を解決することができる。また、この解決を簡単な部材の組み合わせと、鋼材同士を接合するときのボルト接合を利用して実現するため、低コストで実現することができる。
【0010】
上記のエンドプレート付き溝型鋼の端部構造において、フランジの長手方向端部折り返し部が、溝型鋼の内側に折り曲げられたウェブの長手報告端部折り曲げ部に当接する当接面を有するとよい。
【0011】
フランジの長手方向端部折り返し部が当接面を有しているので、溝型鋼の内側に折り曲げられたウェブの長手方向折り曲げ部としっかりと密着するので、押さえ部材を安定的に狭持することができ、溝型鋼端部のエンドプレートを精度よくしっかりと構成することができる。
【0012】
また、上記のエンドプレート付き溝型鋼の端部構造において、該係合部材と、該押さえ部材と、ウェブの長手方向端部折り曲げ部のそれぞれに貫通する孔に締結部材が挿通され、締結部材により係合部材と押さえ部材とフランジの長手方向端部の折り返し部が締結されているとよい。
【0013】
締結部材により、係合部材と押さえ部材とウェブの長手方向端部折り曲げ部が締結され一体化され、左右それぞれのフランジの長手方向端部折り返し部と相まって、溝型鋼の端部にエンドプレートが溶接レスで形成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のとおりであるから、鋼材の端部に溶接レスでエンドプレートを形成するエンドプレート付き溝型鋼の端部構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図(イ)は本発明の実施形態であるエンドプレート付き溝型鋼の端部構造を示す正面図、図(ロ)は同側面図、図(ハ)は同底面図である。
【図2】図(イ)はエンドプレート付き溝型鋼の端部構造を示す斜視図、図(ロ)は各部材に分割して示す分解斜視図である。
【図3】図3は、エンドプレート付き溝型鋼を被締結部材に固定した状態を示す正面図である。
【図4】図(イ)〜(ハ)は、図5乃至図6とともに、エンドプレート付き溝型鋼の端部構造の形成方法を順次に示す斜視図である。
【図5】図(ニ)、図(ホ)は、図4、図6とともに、エンドプレート付き溝型鋼の端部構造の形成方法を順次に示す斜視図である。
【図6】図(ヘ)、図(ト)は、図4乃至図5とともに、エンドプレート付き溝型鋼の端部構造の形成方法を順次に示す斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態である、係合部材、押さえ部材、ウェブの長手方向端部が締結部材により一体化されているエンドプレート付き溝型鋼の端部構造を示す正面図である。
【図8】本発明のエンドプレート付き溝型鋼の端部構造が形成される部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1〜図3に示す本発明の実施形態であるエンドプレート付き溝型鋼の端部構造1において、2は溝型鋼、5は係合部材、6は押さえ部材である。溝型鋼2は、ウェブ3とその両端部に連続する左右のフランジ4,4からなる断面視コの字型をしており、エンドプレートを取り付ける側の端部で、ウェブ3と左右のフランジ4,4はその境界部で分断され、左右のフランジ4,4はそれぞれ溝型鋼2の内部側に折り返されている。左右のフランジ4,4の折り返しは、溝型鋼2の内側に水平に張り出す当接面部7,7と当接面部の内方端部から溝型鋼2のエンドプレート取付側と反対方向に突出する折り返し部8,8とからなる。
【0018】
溝型鋼2の内側へ折り返されたフランジの長手方向端部折り返し部8,8とフランジ4,4の隙間に断面視コの字型の係合部材5が挿入され、係合部材5とフランジの折り返し部8,8で3面を囲まれた空間に、溝型鋼2の内部に収納される直方体の押さえ部材6が配置され、係合部材5とフランジ4,4の長手方向端部折り返し部8,8とウェブ3の溝型鋼の内側に折り曲げられたウェブの長手方向端部折り曲げ部9で狭持されている。折り曲げられたウェブの長手方向端部折り曲げ部9は、左右のフランジ4,4を折り返した溝型鋼2の内側に水平に張り出す当接面部7,7と当接し、溝型鋼端部側に折り曲げられたウェブとしっかりと密着するので、押さえ部材を安定的に狭持することができる。係合部材5は、中央部51とその両端部から一方の側に突出する係合部52からなる。押さえ部材6の幅寸法は、溝型鋼の内側に折り返されたフランジの長手方向端部折り返し部8,8間の寸法と略等しく設定されており、押さえ部材6により、フランジ4,4の長手方向端部折り返し部8,8が変形することを防ぐ。また、折り曲げられたウェブの長手方向端部折り曲げ部9により押さえ部材6の脱落を防止する。そして、係合部材5、押さえ部材6、ウェブの長手方向端部折り曲げ部9により溝型鋼端部のエンドプレートが形成される。
【0019】
係合部材5、押さえ部材6、ウェブの長手方向端部折り曲げ部9には、ボルト11を挿通するための孔5a,6a,9aがそれぞれあけられている。
【0020】
エンドプレート付き溝型鋼の端部構造1は次のようにして形成される。
【0021】
図4(イ)〜(ハ)に示すように、ウェブ2とウェブ2を挟む左右のフランジ4,4とからなる溝型鋼2のエンドプレート形成側端部のウェブ2とフランジ4,4の境界部を分断する。また、フランジ4,4の端部側を一部切断する。ウェブ2とフランジ4,4の境界面の分断寸法およびフランジ4,4の端部側の一部切断寸法は、溝側鋼2の形状及び、フランジ4,4の折り返し寸法、押さえ部材の厚み等により決定される。
【0022】
図5(ニ)に示すように、フランジ4,4は、溝型鋼2の内側に水平に張り出す当接面部7,7と当接面部の内方端部から溝型鋼2のエンドプレート取付側と反対方向に突出するフランジの長手方向端部折り返し部8,8を形成するように、2段階に折り返される。また、ウェブ2の長手方向端部折り曲げ部9には、孔9aが開けられる。なお、孔9aを開ける工程は、図4(イ)〜(ロ)など、フランジ4,4を折り曲げる前の工程で行われてもよい。
【0023】
溝型鋼2の内側へ折り返されたフランジの長手方向端部折り返し部8,8とフランジ4,4の隙間に、図5(ホ)に示すように、中央部51とその両端部から一方の側に突出する係合部52を有する断面視コの字型であって、中央部に断面視コの字型の係合部材5が挿入される。そして、図6(ヘ)に示すように、押さえ部材6を係合部材5とフランジの折り返し部8,8で3面を囲まれた空間に直方体の押さえ部材6が配置され、係合部材5とフランジ4,4の長手方向端部折り返し部8,8とウェブ3の溝型鋼の内側に折り曲げられたウェブ3の長手方向端部折り曲げ部9で狭持される。
【0024】
なお、この状態では、係合部材5は、フランジ4,4とフランジの長手方向端部折り返し部8,8との隙間に挿入されているだけであり、固定されておらず、係合部材5、押さえ部材6ともに、取り外すことができる。
【0025】
溝型鋼のエンドプレート構造としては次のように実施する。
【0026】
図3に示すように、溝型鋼2と被締結部材10を締結する場合、上記に示したエンドプレート付き溝型鋼の端部構造により、ボルト11により締結することで溝型鋼2と被締結部材10は締結することができる。溝型鋼2と被締結部材10を締結するボルト11により、溝型鋼2端部の係合部材5、押さえ部材6、ウェブ3の長手方向端部折り曲げ部9は一体化される。つまり、溝型鋼2と被締結部材10がボルト11により接合されると同時に、溝型鋼2端部の係合部材5、押さえ部材6、ウェブ3の長手方向端部折り曲げ部9も一体化され、溝型鋼2の端部にエンドプレートが形成される。つまり、溝型鋼の端部にエンドプレートを一時的に未固定の状態で形成し、該溝型鋼を被締結部材と固定することで、溝型鋼が被締結部材と固定されると同時に、溝型鋼端部のエンドプレートも溝型鋼と一体化される。なお、12、13はそれぞれナットとワッシャである。
【0027】
このエンドプレート付き溝型鋼の端部構造では、押さえ部材が、係合部材と溝型鋼の内側に折り曲げられたウェブの長手方向端部折り曲げ部に挟持されているため、押さえ部材により、左右それぞれのフランジの折り返しの戻りが防止される。また、係合部材と、押さえ部材と、ウェブの長手方向端部折り曲げ部のそれぞれに貫通する孔があけられているので、この孔に締結部材を通して他の鋼材のウェブやフランジと接合することができ、さらに、締結部材の締め付けにより、押さえ部材と係合部材とが固定され、左右それぞれのフランジの折り返しと相まって鋼材端部のエンドプレートはしっかりと固定される。
【0028】
本構造により、鋼材のエンドプレートを溶接レスで実現することができるため、溶接作業の課題である、・溶接後に部材の防錆塗装を施す必要がある。・溶接作業により品質に影響を与えるため、品質の安定性が図れない。・作業環境が苛酷であり、特殊技能を要するため、作業者の確保が困難である。といった課題を解決することができる。また、この解決を簡単な部材の組み合わせと、鋼材同士を接合するときのボルト接合を利用して実現するため、低コストで実現することができる。
【0029】
図7に示す本発明の第2の実施形態であるエンドプレート付き溝型鋼の端部構造は、上記に示したエンドプレート付き溝型鋼の端部構造において、被締結部材へ接合する前に、溝型鋼2端部の係合部材5、押さえ部材6、ウェブ3の長手方向端部折り曲げ部9を締結部材であるボルト11とナット12により締結したものである。締結部材で一体化しておくことにより、被締結部材と溝型鋼を一体化することなく、溝型鋼2の端部にエンドプレートを形成することができる。
【0030】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、係合部材5を溝型鋼2の内側へ折り返されたフランジの長手方向端部折り返し部8,8とフランジ4,4の隙間に挿入し、係合部材5が固定されていない場合について示したが、係合部材5をフランジの長手方向端部折り返し部8,8とフランジ4,4の隙間に挿入した後、折り曲げ部8,8を変形させる等して、係合部材5と一体化させてもよい。
【0031】
また、係合部材5や押さえ部材6の取り付けは溝型鋼2を加工する工場で行われてもよいし、溝型鋼と被締結部材を締結する施工現場で行われてもよいのはいうまでもない。
【0032】
また、エンドプレートを形成する対象となる溝型鋼は、長尺方向全体を通して溝型である必要はなく、例えば、図8に示すようにウェブと、ウェブを挟む左右のフランジと、フランジの外方端部から突出するリブからなるC型鋼であって、エンドプレートが形成される端部側において、リブが取り除かれて溝型になっている鋼材であってもよい。
【0033】
また、係合部材、押さえ部材の形状についても特に限定はなく、組み立て性、生産性等を考慮して適宜変更されてよい。
【符号の説明】
【0034】
1・・・エンドプレート付き溝型鋼の端部構造
2・・・溝型鋼
3・・・ウェブ
4・・・フランジ
5・・・係合部材
6・・・押さえ部材
7・・・当接面部
8・・・折り返し部
9・・・ウェブの長手方向端部の折り返し部
10・・・被締結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブとウェブを挟む左右のフランジからなる溝型鋼の端部にエンドプレートを形成する溝型鋼の端部構造であって、
左右それぞれのフランジの長手方向端部が内側に折り返され、
両端部にそれぞれ係合部を有する係合部材が、両端部の係合部をフランジとフランジの長手方向端部折り返し部の隙間にそれぞれ挿入されて溝型鋼内部に収納され、
左右それぞれのフランジの長手方向端部折り返し部の変形を防止する押さえ部材が、係合部材と溝型鋼の内側に折り曲げられたウェブの長手方向端部折り曲げ部に挟持され、
該係合部材と、該押さえ部材と、該ウェブの長手方向端部折り曲げ部のそれぞれに貫通する孔があけられていることを特徴とするエンドプレート付き溝型鋼の端部構造。
【請求項2】
フランジの長手方向端部折り返し部が、溝型鋼の内側に折り曲げられたウェブの長手方向端部折り曲げ部に当接する当接面を有する請求項1に記載のエンドプレート付き溝型鋼の端部構造。
【請求項3】
前記孔に締結部材が挿通され、該締結部材で前記係合部材と前記押さえ部材と前記ウェブの長手方向端部折り曲げ部が締結されている請求項1乃至2に記載のエンドプレート付き溝型鋼の端部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−180602(P2010−180602A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24373(P2009−24373)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】