説明

エンボス加工装置

【課題】 エンボス加工が施されたシート状材料の凹凸形状の凹凸の度合いをより大きくすることができ、その結果シート状材料の凹凸模様をより鮮明なものとすることができ、さらに、各凹凸形状間に位置ズレが生じることを抑止することができるエンボス加工装置を提供すること。
【解決手段】 連続的に搬送されるシート状材料Sに凹凸形状の模様を付けるエンボス加工装置は、エンボスロール10と、エンボスロール10の周方向に沿ってこのエンボスロール10に順次当接するよう設けられた複数の受けロール20、21、22とを備えている。エンボスロール10は、凹凸形状の模様が施された凹凸面を外周に有している。各受けロール20、21、22は、エンボスロール10との間でシート状材料Sを挟圧することによりこのシート状材料Sに凹凸形状の模様を付けるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に搬送されるシート状材料に凹凸形状の模様を付けるエンボス加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧シート、内装材等のシート状材料の意匠性を向上させることを目的として、シート状材料の表層に幾何学模様や木目状等の凹凸形状を付けるエンボス加工装置が知られている(例えば、特許文献1、2等参照)。
図4に示すように、このような従来のエンボス加工装置は、凹凸形状の模様が施された凹凸面を外周に有するエンボスロール50と、このエンボスロール50に当接するよう設けられた受けロール51とを備えている。図4に示すエンボス加工装置においては、エンボスロール50と受けロール51との当接部分(ニップ部N)にシート状材料Sを送り、このシート状材料Sをエンボスロール50と受けロール51とにより挟圧することによって、シート状材料Sに凹凸形状の模様を付けるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−143466号公報
【特許文献2】特公平7−122233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図4に示すような従来のエンボス加工装置においては、エンボスロール50の周方向におけるニップ部Nの長さが短く、シート状材料Sに対して十分な加工時間(挟圧時間)を確保することが困難である。図5(a)(b)に示すように、シート状材料Sに対する加工時間が不十分である場合は、シート状材料Sに形成される凹凸形状の凹凸の高低差が小さくなってしまう。このことにより、シート状材料Sの凹凸模様が不鮮明なものとなってしまい、意匠性が低下してしまうという問題がある。
【0005】
シート状材料Sに対する加工時間を大きくするために、エンボスロール50の回転速度を低下させたり、上述の特許文献2に示すような複数のエンボス加工装置を直列に並べてシート状材料Sに対する挟圧回数を増やしたりする方法が知られている。
しかしながら、前者の方法においては、シート状材料Sの搬送速度も低下してしまうのでエンボス加工装置の生産性を低下させてしまうこととなる。
また、後者の方法においては、一のエンボス加工装置のニップ部Nと他のエンボス加工装置のニップ部Nとの間のシート状材料Sに張力(テンション)が加えられるので、この張力によるシート状材料Sの伸び等によって、各エンボス加工装置によりシート状材料Sに付けられる各々の凹凸形状間に位置ズレが発生する場合がある。このため、このような各凹凸形状間の位置ズレを解消するために位置ズレ補正装置を別途設置する必要があり、装置全体としてのコストが大きくなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、エンボス加工が施されたシート状材料の凹凸形状の凹凸の度合いをより大きくすることができ、その結果シート状材料の凹凸模様をより鮮明なものとすることができ、さらに、各凹凸形状間に位置ズレが生じることを抑止することができるエンボス加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエンボス加工装置は、連続的に搬送されるシート状材料に凹凸形状の模様を付けるエンボス加工装置において、凹凸形状の模様が施された凹凸面を外周に有するエンボスロールと、前記エンボスロールの周方向に沿って当該エンボスロールに順次当接するよう複数設けられ、前記エンボスロールとの間でシート状材料を挟圧することによりこのシート状材料に凹凸形状の模様を付けるための受けロールと、を備えたことを特徴とする。
このようなエンボス加工装置によれば、当該エンボス加工装置に送られたシート状材料は、各受けロールとエンボスロールとの間に形成された複数のニップ部において順次挟圧され、このことによりエンボスロールの凹凸面が複数回押し付けられることとなる。その結果、受けロールが1つしか設けられていないエンボス加工装置と比較して、シート状材料に対してエンボスロールの凹凸面を押し付ける回数を増やすことができるので、エンボス加工装置から送り出されたシート状材料の凹凸形状の凹凸の度合いをより大きくすることができ、シート状材料の凹凸模様をより鮮明なものとすることができる。また、各受けロール間においてシート状材料はエンボスロールの外周面に沿って搬送されるので、このシート状材料に対してテンションカットが行われ、その結果各受けロールとエンボスロールとの間で各々付けられる凹凸形状間に位置ズレが生じることを抑止することができる。
【0008】
本発明のエンボス加工装置においては、前記エンボスロールにおいて、粗い凹凸面と、この粗い凹凸面よりも微細な凹凸形状となっている微細凹凸面とが外周に混在していることが好ましい。
このようなエンボス加工装置によれば、単に一種類の凹凸形状の模様をシート状材料に付ける場合と比較して、シート状材料に付けられる凹凸模様の意匠性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエンボス加工装置によれば、エンボス加工が施されたシート状材料の凹凸形状の凹凸の度合いをより大きくすることができ、その結果シート状材料に付けられる凹凸模様をより鮮明なものとすることができる。また、各凹凸形状間に位置ズレが生じることを抑止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図3は、本発明によるエンボス加工装置の実施の形態を示す図である。
このうち図1は、本実施の形態のエンボス加工装置の構成を示す側面図であり、図2は、図1のエンボス加工装置のエンボスロール(絵柄ロール)の外周面の詳細な構成を示す拡大側面図であり、図3(a)〜(c)は、図1のエンボス加工装置において、各々第1〜第3の受けロールから送り出された直後のシート状材料の凹凸の度合いを示す説明図である。
【0011】
エンボス加工装置は、図1に示すように、凹凸形状の模様が施された凹凸面を外周に有するエンボスロール(絵柄ロール)10と、エンボスロール10の周方向に沿って当該エンボスロール10に順次当接するよう設けられた第1の受けロール20、第2の受けロール21および第3の受けロール22とを備えている。また、第1の受けロール20、第2の受けロール21および第3の受けロール22には、それぞれ押圧用シリンダー30、31、32が取り付けられている。
このようなエンボス加工装置の各構成要素について以下に詳述する。
【0012】
図1に示すエンボス加工装置によるエンボス加工の対象となるシート状材料Sとしては、例えば厚さ約100μmの耐熱中性紙の一方の表面全域を厚さ約30μmの樹脂で覆ったものが用いられる。
【0013】
エンボスロール10は、外周層が鉄や剛性クロムメッキ等の剛性材料から構成されており、その直径は例えば200mm〜400mmの範囲内の大きさとなっている。図2に示すように、このエンボスロール10において、粗い凹凸面と、この粗い凹凸面よりも微細な凹凸形状となっている微細凹凸面とが外周に混在している。ここで、エンボスロール10の粗い凹凸面の凹凸の高低差(図2の高さa)は例えば約100μmとなっており、一方、エンボスロール10の微細凹凸面の凹凸の高低差(図2の高さb)は例えば数μmあるいは10〜20μmの範囲内の大きさとなっている。
シート状材料Sにエンボス加工を施す際には、エンボスロール10は図1の矢印方向に回転するようになっている。
【0014】
第1の受けロール20、第2の受けロール21および第3の受けロール22は、それぞれ連続的に搬送されるシート状材料Sをエンボスロール10との間で挟圧することによりこのシート状材料Sに凹凸形状の模様を付けるようになっている。ここで、第1の受けロール20の外周層は例えばナイロンやアルミニウム等の金属から形成されている。一方、第2の受けロール21および第3の受けロール22の外周層はそれぞれ例えばシリコンゴム等の弾性体から形成されている。各受けロール20、21、22の直径はエンボスロール10の直径の半分の大きさとなっている。
【0015】
図1に示すように、第1の受けロール20、第2の受けロール21および第3の受けロール22は、エンボスロール10の回転方向(図1の矢印方向)に沿って順次設置されている。外部から搬送されたシート状材料Sはまずエンボスロール10と第1の受けロール20との当接部分(ニップ部N1)に送られ、この第1の受けロール20から送り出されたシート状材料Sはエンボスロール10の外周面に沿って搬送されて次にエンボスロール10と第2の受けロール21との当接部分(ニップ部N2)に送られ、この第2の受けロール21から送り出されたシート状材料Sはエンボスロール10の外周面に沿って更に搬送されてエンボスロール10と第3の受けロール22との当接部分(ニップ部N3)に送られるよう、各受けロール20、21、22が設置されている。
図1に示すように、各受けロール20、21、22の軸は、エンボスロール10の軸を中心とした同心円上にあることが好ましく、また、エンボスロール10の軸に対して第1の受けロール20と第2の受けロール21とのなす角度αおよび第2の受けロール21と第3の受けロール22とのなす角度βはそれぞれ約60°となっていることが好ましい。
【0016】
各押圧用シリンダー30、31、32は、それぞれ各受けロール20、21、22に対してエンボスロール10の径方向外方に延びるよう取り付けられている。各押圧用シリンダー30、31、32は、それぞれ各受けロール20、21、22をエンボスロール10に対して例えば100kg/cmの圧力で押圧するようになっている。
各押圧用シリンダー30、31、32がそれぞれ各受けロール20、21、22をエンボスロール10側に押圧することにより、エンボスロール10と各受けロール20、21、22との間に各々ニップ部(N1、N2、N3)が形成されるようになる。ここで、エンボスロール10の周方向における第1の受けロール20とエンボスロール10との間のニップ部N1の長さは約0.1mmとなり、一方、第2、第3の受けロール21、22とエンボスロール10との間のニップ部N2、N3の長さはそれぞれ8〜10mmの範囲内の大きさ、具体的には例えば9.5mmとなっている。
【0017】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0018】
まず、外部から搬送されたシート状材料Sがエンボスロール10と第1の受けロール20との当接部分(ニップ部N1)に送られる。シート状材料Sは、この当接部分においてエンボスロール10と第1の受けロール20とにより挟圧される。その結果、エンボスロール10の外周の凹凸面によってシート状材料Sに図3(a)に示すような凹凸形状の模様が付けられる。ここで、シート状材料Sにはエンボスロール10の外周の凹凸形状がそのままの形状で転写されるわけではなく、シート状材料Sに付けられた凹凸形状の凹凸の度合いは、エンボスロール10の外周の凹凸面の凹凸の度合いよりも小さくなっており、具体的にはシート状材料Sに付けられた粗い凹凸形状の凹凸の高低差(図3(a)の高さD1)は例えば50μm以下となっている。
【0019】
次に、第1の受けロール20から送り出されたシート状材料Sはエンボスロール10の外周面に沿って当該エンボスロール10の回転と同期して搬送され、エンボスロール10と第2の受けロール21との当接部分(ニップ部N2)に送られる。シート状材料Sは、この当接部分においてエンボスロール10と第2の受けロール21とにより挟圧される。このため、ニップ部N2において、エンボスロール10の外周の凹凸面によってシート状材料Sの凹凸形状の凹凸の度合いが大きくなる(図3(b)参照)。具体的には第2の受けロール21から送り出されたシート状材料Sの粗い凹凸形状の凹凸の高低差(図3(b)の高さD2)が例えば50μm〜100μmの範囲内の大きさまで増加する。
【0020】
次に、第2の受けロール20から送り出されたシート状材料Sはエンボスロール10の外周面に沿って更に搬送され、エンボスロール10と第3の受けロール22との当接部分(ニップ部N3)に送られる。シート状材料Sは、この当接部分においてエンボスロール10と第3の受けロール22とにより挟圧される。このため、ニップ部N3において、エンボスロール10の外周の凹凸面によってシート状材料Sの凹凸形状の凹凸の度合いが更に大きくなる(図3(c)参照)。具体的には第3の受けロール22から送り出されたシート状材料Sの粗い凹凸形状の凹凸の高低差(図3(c)の高さD3)はほぼ100μmまで増加し、このシート状材料Sの凹凸形状の凹凸の度合いがエンボスロール10の外周の凹凸面の凹凸の度合いと略同一となる。
【0021】
以上のように本実施の形態のエンボス加工装置によれば、エンボスロール10との間でシート状材料Sを挟圧することによりこのシート状材料Sに凹凸形状の模様を付ける受けロールが、当該エンボスロール10の周方向に沿って複数設けられている。このため、エンボス加工装置に送られたシート状材料Sは、各受けロール20、21、22とエンボスロール10との間に形成された複数のニップ部において順次挟圧され、このことによりエンボスロール10の凹凸面が複数回押し付けられることとなる。その結果、受けロールが1つしか設けられていないエンボス加工装置と比較して、シート状材料Sに対してエンボスロール10の凹凸面を押し付ける回数を増やすことができるので、エンボス加工装置から送り出されたシート状材料Sの凹凸形状の凹凸の度合いをより大きくすることができ、シート状材料Sの凹凸模様をより鮮明なものとすることができる。また、各受けロール20、21、22間においてシート状材料Sはエンボスロール10の外周面に沿って搬送されるので、このシート状材料Sに対してテンションカットが行われ、その結果各受けロール20、21、22とエンボスロール10との間で各々付けられる凹凸形状間に位置ズレが生じることを抑止することができる。
【0022】
また、エンボスロール10において、粗い凹凸面と、この粗い凹凸面よりも微細な凹凸形状となっている微細凹凸面とが外周に混在しているので、単に一種類の凹凸形状の模様をシート状材料Sに付ける場合と比較して、シート状材料Sに付けられる凹凸模様の意匠性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態のエンボス加工装置の構成を示す側面図である。
【図2】図1のエンボス加工装置のエンボスロール(絵柄ロール)の外周面の詳細な構成を示す拡大側面図である。
【図3】(a)〜(c)は、図1のエンボス加工装置において、各々第1〜第3の受けロールから送り出された直後のシート状材料の凹凸の度合いを示す説明図である。
【図4】従来のエンボス加工装置の構成を示す側面図である。
【図5】(a)(b)は、図4のエンボス加工装置において、エンボスロールと受けロールとの間から送り出されたシート状材料の凹凸の度合いを示す説明図である。
【符号の説明】
【0024】
10 エンボスロール
20 第1の受けロール
21 第2の受けロール
22 第3の受けロール
30、31、32 押圧用シリンダー
50 エンボスロール
51 受けロール
S シート状材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に搬送されるシート状材料に凹凸形状の模様を付けるエンボス加工装置において、
凹凸形状の模様が施された凹凸面を外周に有するエンボスロールと、
前記エンボスロールの周方向に沿って当該エンボスロールに順次当接するよう複数設けられ、前記エンボスロールとの間でシート状材料を挟圧することによりこのシート状材料に凹凸形状の模様を付けるための受けロールと、
を備えたことを特徴とするエンボス加工装置。
【請求項2】
前記エンボスロールにおいて、粗い凹凸面と、この粗い凹凸面よりも微細な凹凸形状となっている微細凹凸面とが外周に混在していることを特徴とする請求項1記載のエンボス加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−15209(P2007−15209A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198648(P2005−198648)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】