説明

オイルシール

【課題】ハウジング200のシール保持筒部202とオイルシール10との間の隙間を埋める液状ガスケットGが、リップ摺動部へ付着してしまうことによるシール性の低下を有効に防止する。
【解決手段】円周方向複数に分割されたハウジング200に形成されたシール保持筒部202の内周面202aに嵌着される嵌着部14と、ハウジング200に挿通された回転体300の外周面に摺動可能に密接されるシールリップ12を備えるオイルシール10において、嵌着部14の外周側に、ハウジング200のシール保持筒部202の端面202bに軸方向に近接対向可能であって液状ガスケットGが保持される液状ガスケット保持部16が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や産業機械における回転部分の密封手段として用いられるオイルシールに関するものであって、特に、円周方向に複数に分割されたハウジングの内周に装着されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や産業機械における回転部分の外周をシールリップによって密封する密封装置として、オイルシールが知られている。図8は、この種のオイルシール100の典型的な従来技術を示すもので、金属板を打ち抜き塑性加工することにより製作された補強環101に、固定シール部102、対油リップ103及びダストリップ104が、ゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)で一体成形され、対油リップ103の先端近傍の外周部にガータスプリング105が嵌着された構造を有する。
【0003】
すなわちこのオイルシール100は、固定シール部102が、ハウジング200の軸孔201の開口端部に形成されたシール保持筒部202の内周面に圧入嵌着され、対油リップ103の先端内径部が、ハウジング200に挿通された回転軸300の外周面に摺動可能に密接されることによって軸封機能を奏し、対油リップ103が向いた機内空間Aの密封対象油が軸周から機外空間Bへ漏洩するのを阻止するものである。
【0004】
この種のオイルシール100において、装着対象のハウジング200が例えば軸心を通る平面上で2分割されたもの、すなわち2つ割のハウジングであるような場合、図9に誇張して示すように、不図示のガスケットを介して互いに衝合される一方のハウジング部材200Aと他方のハウジング部材200Bが、僅かな寸法誤差があったり、僅かにずれて組み合わされたりすることに起因して、シール保持筒部202の内周面に、ハウジング部材200A,200Bの合わせ面に沿って軸方向へ延びる径方向の段差200aを生じてしまうことがある(例えば下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4324782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがってこのような場合は、ハウジング200におけるシール保持筒部202の内周面と、オイルシール100の固定シール部102との間に段差200aによって生じる隙間を塞ぐために、オイルシールの装着前に予めハウジング200におけるハウジング部材200A,200Bの合わせ面に、FIPG(Formed In Place Gasket)などの液状ガスケットを塗布しておくことが、漏洩防止に有効である。すなわちこのようにすれば、図10に示すように、液状ガスケットGがシール保持筒部202の内周面とオイルシール100の固定シール部102の間に介在して図9のような段差200aによる隙間を埋めることができるのである。
【0007】
しかしながらこの場合、ハウジング200に液状ガスケットGを塗布した後でオイルシール100を装着する際に、液状ガスケットGの一部がシール保持筒部202の内周空間へ押し出されてオイルシール100の対油リップ103などに過って付着すると、それが対油リップ103と回転軸300との摺動部に介入した状態で硬化することによって、シール性が阻害されるおそれがあった。
【0008】
またこのため、オイルシール100の装着後に、対油リップ103などに液状ガスケットGが付着しないように、余分な液状ガスケットGを拭き取るといった作業が必要であり、これがコストを上昇させる一因となっていた。
【0009】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、ハウジングのシール保持筒部とオイルシールの固定シール部との間の隙間を埋める液状ガスケットが、リップ摺動部へ付着してしまうことによるシール性の低下を有効に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係るオイルシールは、円周方向複数に分割されたハウジングに形成されたシール保持筒部の内周面に嵌着される嵌着部と、前記ハウジングに挿通された回転体の外周面に摺動可能に密接されるシールリップを備えるオイルシールにおいて、前記嵌着部の外周側に、前記ハウジングのシール保持筒部の端面に軸方向に近接対向可能であって液状ガスケットが保持される液状ガスケット保持部が設けられたものである。
【0011】
上記構成によれば、ハウジングにおけるシール保持筒部の内周に当該オイルシールを装着する際に、液状ガスケット保持部に液状ガスケットを塗布などにより保持しておくことによって、オイルシールの装着過程でシール保持筒部の端面に液状ガスケット保持部が軸方向に近接されて行くのに伴い、液状ガスケットが押し出されてその一部が前記シール保持筒部の内周面とオイルシールの嵌着部との間へ介入される。このため、円周方向複数に分割されたハウジングの合わせ面の段差によって、シール保持筒部の内周面とオイルシールの嵌着部との間に隙間が生じていても、この隙間は液状ガスケットの介入によって埋められる。
【0012】
また、請求項2の発明に係るオイルシールは、請求項1に記載の構成において、液状ガスケット保持部が、嵌着部を補強する補強環から一体的に延在されたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明に係るオイルシールによれば、液状ガスケットが、ハウジングのシール保持筒部の内周面に嵌着される嵌着部の外周側に形成された液状ガスケット保持部に保持され、オイルシールの装着過程でシール保持筒部の内周面とオイルシールの嵌着部との間の隙間を埋めるものであるため、オイルシールの装着過程で液状ガスケットが前記嵌着部の内周側に存在するシールリップに付着するようなことはなく、したがってシールリップの摺動部に液状ガスケットが介入することによるシール性の低下を有効に防止することができる。
【0014】
請求項2の発明に係るオイルシールによれば、請求項1の発明による効果に加え、液状ガスケット保持部が補強環に一体に形成されるため、部品点数の増加を防止して製造コストの上昇を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るオイルシールの第一の形態を、その軸心を通る平面で切断して示す片側断面図である。
【図2】第一の形態を、その軸心を通る平面で切断して示す装着状態の片側断面図である。
【図3】本発明に係るオイルシールの第二の形態を、その軸心を通る平面で切断して示す装着状態の片側断面図である。
【図4】本発明に係るオイルシールの第三の形態を、その軸心を通る平面で切断して示す装着状態の片側断面図である。
【図5】本発明に係るオイルシールの第四の形態を、その軸心を通る平面で切断して示す装着状態の片側断面図である。
【図6】本発明に係るオイルシールの第五の形態を、その軸心を通る平面で切断して示す装着状態の片側断面図である。
【図7】本発明に係るオイルシールの第六の形態を、その軸心を通る平面で切断して示す装着状態の片側断面図である。
【図8】従来の技術によるオイルシールの一例を、その軸心を通る平面で切断して示す装着状態の片側断面図である。
【図9】2つ割ハウジングの一例を、その軸心と直交する平面で切断して示す断面図である。
【図10】従来の技術によるオイルシールにおいて、液状ガスケットを塗布した例を、その軸心を通る平面で切断して示す装着状態の片側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るオイルシールの好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず図1は、本発明に係るオイルシールの第一の形態をその軸心を通る平面で切断して示す片側断面図、図2は、同じく装着状態の片側断面図である。
【0017】
図1に示すオイルシール10は、補強環11に、対油リップ12、ダストリップ13及び固定シール部14が一体的に設けられたものである。対油リップ12、ダストリップ13及びその外周側の固定シール部14は、ゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなるものであって、互いに連続している。対油リップ12の先端近傍の外周面にはガータスプリング15が装着されている。なお、対油リップ12は、請求項1に記載されたシールリップに相当する。
【0018】
一方、このオイルシール10が装着されるハウジング200は、図2に示すように、軸孔201と、その開口端部に形成されたシール保持筒部202を有し、また、軸心を通る平面上で2分割された、いわゆる2つ割の構造となっている。
【0019】
補強環11は、鋼板などの金属板を打ち抜き塑性加工することにより製作されたプレス成形品であって、第一筒部11aと、この第一筒部11aのうち、図2の装着状態において機内空間A側となる端部から内周側へ折り返された第二筒部11bと、さらにこの第二筒部11bのうち、図2の装着状態において機外空間B側となる端部から内径方向へ延びる内向き鍔部11cからなり、第一筒部11aにおける第二筒部11bへの折り返し部と反対側(機外空間B側)の端部から外径側へ、後述の液状ガスケット保持部16が一体に延在されている。
【0020】
対油リップ12は、補強環11の内向き鍔部11cの内周位置から、図2の装着状態において機内空間A側となる方向へ延び、その先端近傍の内周面には軸心を通る平面で切断した断面形状が山形をなすリップエッジ12aが形成されている。なお、回転軸300は、請求項1に記載された回転体に相当する。
【0021】
ダストリップ13は、補強環11の内向き鍔部11cの内周位置から、対油リップ12と反対側(図2の装着状態において機外空間B側となる方向)へ円錐筒状に延びている。また、このダストリップ13における先端部13aより対油リップ12側の内周面には、円周方向所定間隔で複数のリブ13bが形成されている。
【0022】
固定シール部14は、この第一の形態において、請求項1に記載された「シール保持筒部の内周面に嵌着される嵌着部」に相当するものであって、対油リップ12及びダストリップ13と連続したゴム状弾性材料が、第一筒部11aの外周側へ廻り込むことによって形成されている。また、この固定シール部14には、密封面圧を局部的に高めるための複数のシール突条14aが、円周方向へ連続して形成されている。
【0023】
ガータスプリング15は、金属製のコイルスプリングを環状に繋げたものであって、対油リップ12における先端近傍の外周面に形成された環状溝に嵌着されている。
【0024】
補強環11の第一筒部11aにおける機外空間B側の端部から外径側へ延在された液状ガスケット保持部16は、軸心と直交する平面をなす円盤状のフランジ部16aと、その外径端部から固定シール部14の外周側を包囲するように延びる外周壁16bからなる。そしてこの液状ガスケット保持部16のフランジ部16aは、図2の装着状態において、ハウジング200のシール保持筒部202の端面202bに軸方向に近接対向又は衝合可能となっている。
【0025】
以上の構成を備える第一の形態のオイルシール10は、互いに連続した補強環11及び液状ガスケット保持部16からなるプレス成形品を、不図示の金型内にセットし、型締めによってこのプレス成形品における補強環11の部分と金型内面との間に画成された環状のキャビティに、未加硫ゴム材料を充填して加熱・加圧することによって、前記プレス成形品にゴム状弾性材料からなる対油リップ12、ダストリップ13及び固定シール部14を加硫成形と同時に加硫接着し、成形後、さらに対油リップ12にガータスプリング15を装着して製作される。そして、液状ガスケット保持部16が補強環11から延在されたものであるため、部品点数や加工工数が増加することがなく、このため製造コストの上昇を防止することができる。
【0026】
このオイルシール10は、固定シール部14を、ハウジング200におけるシール保持筒部202の内周面202aに圧入嵌着することによってハウジング200に装着され、対油リップ12の内径のリップエッジ12aが、ハウジング200の軸孔201に挿通された回転軸300の外周面に摺動可能に密接されることによって軸封機能を奏し、機内空間Aに存在する密封対象油が軸周から機外空間Bへ漏洩するのを阻止すると共に、ダストリップ13の先端部13aが回転軸300の外周面と近接対向されることによって、機外空間B側からのダストの侵入を阻止している。
【0027】
また、ダストリップ13の先端部13aは、内周面に形成されたリブ13bによって、回転軸300の外周面から僅かに浮上した状態に支持される。このため、対油リップ12の吸い込み能力により、対油リップ12とダストリップ13との間の空間のエアーが機内空間Aに吸い込まれた場合に、ダストリップ13が回転軸300の外周面に吸着状態となるのを防止することができる。
【0028】
ここで、ハウジング200が2つ割の構造である場合、先に説明した図9に誇張して示すように、不図示のガスケットを介して互いに衝合される一方のハウジング部材200Aと他方のハウジング部材200Bが、僅かな寸法誤差や、僅かにずれて組み合わされることなどに起因して、シール保持筒部202の内周面202aに、ハウジング部材200A,200Bの合わせ面に沿って軸方向へ延びる径方向の段差200aを生じてしまうことがある。したがって、オイルシール10をハウジング200のシール保持筒部202に装着する際には、図1に示すように、液状ガスケット保持部16のフランジ部16aの内側面に、液状ガスケットGを適量塗布しておく。液状ガスケットGは適度な粘性を有し、経時的に硬化するものであって、例えば公知のFIPG(Formed In Place Gasket)からなるものが用いられる。
【0029】
液状ガスケット保持部16は、そのフランジ部16a及び外周壁16bと、内周側の固定シール部14によって、断面コ字形に囲まれた液状ガスケット溜まりをなすため、フランジ部16aの内側面に塗布された液状ガスケットGは、外部の部品などに不用意に付着するようなことがない。またこのため、塗布作業を容易に行うことができ、塗布後の余分な液状ガスケットGの拭き取りといった作業も不要である。
【0030】
液状ガスケット保持部16のフランジ部16aの内側面に液状ガスケットGを塗布した後は、オイルシール10の固定シール部14をハウジング200のシール保持筒部202の内周面202aに圧入して行くことによって、このオイルシール10をハウジング200に装着する。そしてこの圧入過程では、シール保持筒部202の端面202bに液状ガスケット保持部16のフランジ部16aが軸方向に近接されて行くのに伴い、その内側面に塗布された液状ガスケットGの一部がシール保持筒部202の内周面202aと固定シール部14との間へ向けて押し出される。
【0031】
したがって、シール保持筒部202の内周面202aに図9に示すようなハウジング部材200A,200Bの合わせ面に沿った径方向の段差200aによって、固定シール部14との間に隙間が生じても、この隙間は液状ガスケットGによって埋められ、液状ガスケットGの硬化によって、ハウジング200のシール保持筒部202とオイルシール10の固定シール部14との間の優れたシール性が確保される。
【0032】
また、液状ガスケットGはハウジング200のシール保持筒部202の端面202bと液状ガスケット保持部16のフランジ部16aとの互いの衝合面間にも介在しているので、上述のような径方向の段差200aによる隙間が、もし液状ガスケットGによって完全に埋まらないような場合があったとしても、優れたシール性が確保される。
【0033】
さらには、オイルシール10の固定シール部14の圧入を、液状ガスケット保持部16のフランジ部16aがシール保持筒部202の端面202bと衝合するまで行うことによって、オイルシール10がハウジング200に対して軸方向に位置決めされることになる。すなわち、液状ガスケット保持部16はオイルシール10の装着の際の位置決め機能を兼ねるものである。
【0034】
しかも、オイルシール10の装着過程で液状ガスケット保持部16のフランジ部16aとシール保持筒部202の端面202bの間からその内周側へ押し出される液状ガスケットGは、そのほとんどがオイルシール10の固定シール部14で堰き止められるため、固定シール部14の内周側に位置する対油リップ12などに付着するようなことはなく、したがってリップエッジ12aなどに付着して硬化した液状ガスケットGによってシール性が阻害されるのを有効に防止することができる。
【0035】
またこのため、オイルシール10の装着後に、対油リップ12などに液状ガスケットGが付着しないように、余分な液状ガスケットGを拭き取るといった作業も不要になり、コストを低減することができる。
【0036】
図3〜図7は、それぞれ本発明に係るオイルシールの他の形態を示すものである。
【0037】
このうち図3に示す第二の形態は、オイルシール10の補強環11が、液状ガスケット保持部16のフランジ部16aの内径部に連続した内径筒部11dと、この内径筒部11dの内周面に圧入嵌合した平ワッシャ状の鍔部材11eからなるものであり、その他の部分は基本的に上述した第一の形態と同様である。したがって、この形態も、液状ガスケットGが対油リップ12のリップエッジ12aなどに付着するのを防止するといった、第一の形態と同様の効果を得ることができる。
【0038】
そしてこのオイルシール10は、液状ガスケット保持部16と連続した内径筒部11dの内周面に予め鍔部材11eを圧入嵌合して、その嵌合一体物を、不図示の金型内にセットし、型締めによってこの嵌合一体物における補強環11の部分と金型内面との間に画成された環状のキャビティに、未加硫ゴム材料を充填して加熱・加圧することによって、前記補強環11の部分にゴム状弾性材料からなる対油リップ12、ダストリップ13及び固定シール部14を加硫成形と同時に加硫接着し、成形後、さらに対油リップ12にガータスプリング15を装着することによって製作される。
【0039】
また、図4に示す第三の形態は、液状ガスケット保持部16が、オイルシール10の補強環11と別部品として設けられたものであり、詳しくは、断面略L字形をなす補強環11の内向き鍔部11cと、断面略L字形をなす液状ガスケット保持部16のフランジ部16aの内径部が軸方向に互いに重合されると共に、ゴム状弾性材料からなる固定シール部14、対油リップ12及びダストリップ13との加硫接着により一体化されているものであり、その他の部分は基本的に上述した第一の形態と同様である。したがって、この形態も、液状ガスケットGが対油リップ12のリップエッジ12aなどに付着するのを防止するといった、第一の形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
そしてこのオイルシール10は、補強環11の内向き鍔部11cと液状ガスケット保持部16のフランジ部16aの内径部を軸方向に互いに重合させた状態で、これらを不図示の金型内にセットし、型締めによって補強環11及び液状ガスケット保持部16と金型内面との間に画成された環状のキャビティに、未加硫ゴム材料を充填して加熱・加圧することによって、補強環11及び液状ガスケット保持部16のフランジ部16aの内径部にゴム状弾性材料からなる対油リップ12、ダストリップ13及び固定シール部14を加硫成形と同時に加硫接着し、成形後、さらに対油リップ12にガータスプリング15を装着することによって製作される。
【0041】
また、図5に示す第四の形態は、先に説明した図3に示す第二の形態と同様、オイルシール10の補強環11が、液状ガスケット保持部16のフランジ部16aの内径部に連続した内径筒部11dと、この内径筒部11dの内周面に圧入嵌合した平ワッシャ状の鍔部材11eからなるものであり、補強環11の内径筒部11dの外周面を直接、ハウジング200のシール保持筒部202の内周面202aに嵌着するものである他は、基本的に第二の形態と同様である。なお、この形態では内径筒部11dが、請求項1に記載された「シール保持筒部の内周面に嵌着される嵌着部」に相当するものである。
【0042】
そしてこの形態では、既述の各形態のようなゴム状弾性材料からなる固定シール部14が存在せず、金属同士での嵌合となるため、ハウジング200に対する大きな嵌合力が得られる。
【0043】
また、オイルシール10の圧入過程で、ハウジング200のシール保持筒部202の端面202bと液状ガスケット保持部16のフランジ部16aとの互いの衝合面間から押し出された液状ガスケットGの一部が、シール保持筒部202の内周面202aと補強環11の内径筒部11dの嵌合面間の隙間に介入して、これを埋めることになる。そしてこの形態も、液状ガスケットGが対油リップ12のリップエッジ12aなどに付着するのを防止するといった、第一の形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
また、図6に示す第五の形態は、補強環11及び液状ガスケット保持部16が、図1及び図2に示す第一の形態と同様の、互いに連続したプレス成形品からなるものであり、上述の第四の形態と同様、補強環11の第一筒部11aの外周面を直接、ハウジング200のシール保持筒部202の内周面202aに嵌着するものであるほかは、基本的に第一の形態と同様に構成されている。したがって第一の形態及び第四の形態と同様の効果を実現することができる。
【0045】
さらに、図7に示す第六の形態は、図6に示す第五の形態における補強環11の第一筒部11aと第二筒部11bの間の折り返し部分に円錐面状の固定シール支持部11fを形成し、この固定シール支持部11fの外周面に、対油リップ12側からゴム状弾性材料の一部が回り込んで成形された固定シール部14を設けたもので、その他の部分は基本的に第五の形態と同様である。
【0046】
したがってこの第六の形態によれば、液状ガスケット保持部16のフランジ部16aの内側面に液状ガスケットGを塗布した後で、オイルシール10の固定シール部14をハウジング200のシール保持筒部202の内周面202aに圧入して行く過程で、ハウジング200のシール保持筒部202の端面202bと液状ガスケット保持部16のフランジ部16aとの互いの衝合面間から押し出された液状ガスケットGの一部が、シール保持筒部202の内周面202aと補強環11の第一筒部11aの嵌合隙間へ介入して行くが、介入された液状ガスケットGがシール保持筒部202の内周面202aと補強環11の第一筒部11aの嵌合部を通過してしまうようなことがあっても、この液状ガスケットGは固定シール部14で堰き止められるので、その内周側に位置する対油リップ12などに付着するのを確実に防止することができる。
【0047】
なお上述のように、本発明は、円周方向に複数に分割されたハウジングに装着する場合に優れた効果を発揮するが、円周方向に連続したハウジングに装着することもできる。
【符号の説明】
【0048】
10 オイルシール
11 補強環
11a 第一筒部(嵌着部)
11d 内径筒部(嵌着部)
12 対油リップ(シールリップ)
13 ダストリップ
14 固定シール部(嵌着部)
15 ガータスプリング
16 液状ガスケット保持部
200 ハウジング
202 シール保持筒部
300 回転軸(回転体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周方向複数に分割されたハウジングに形成されたシール保持筒部の内周面に嵌着される嵌着部と、前記ハウジングに挿通された回転体の外周面に摺動可能に密接されるシールリップを備えるオイルシールにおいて、前記嵌着部の外周側に、前記ハウジングのシール保持筒部の端面に軸方向に近接対向可能であって液状ガスケットが保持される液状ガスケット保持部が設けられたことを特徴とするオイルシール。
【請求項2】
液状ガスケット保持部が、嵌着部を補強する補強環から一体的に延在されたものであることを特徴とする請求項1に記載のオイルシール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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