説明

オイルフィルタ

【課題】Oリング等のシール部材の誤装着を防止する。
【解決手段】オイルフィルタ100は、一方端に開口221が形成された円筒部22を有し、円筒部22の内周面に雌ねじ222が形成されたケーシング2と、雌ねじ222に螺合して、ケーシング2との間にフィルタエレメント5が収容されるキャップ6と、を備える。キャップ6は、ケーシング2における円筒部22の開口側の端面221が当接して係止されるフランジ64と、キャップ6とケーシング2との間のオイルの導通を阻止するOリング63が嵌合される嵌合凹部62と、フランジ64の嵌合凹部62側に近接した外周面に、フランジ64の嵌合凹部62側の側面と一体に形成された凸部642と、を備え、フランジ64の周方向の少なくとも一部に、切欠部641が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方端に開口が形成された円筒部を有し、当該円筒部の内周面にねじ部が形成されたケーシングと、前記ねじ部に螺合して、前記ケーシングとの間にフィルタエレメントが収容されるキャップと、を備えるオイルフィルタに関する。特に、車両に搭載され、内燃機関を潤滑するオイルの異物等を濾過するオイルフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載され、内燃機関を潤滑するオイルの異物等を濾過するオイルフィルタが知られている。また、フィルタエレメントを交換可能に構成された種々のオイルフィルタが提案されている。
【0003】
例えば、円筒形状のキャップの外周面に形成された雄ねじが、ケースの内周面に形成された雌ねじに締め付けられ、キャップがケースに固定されるオイルフィルタが開示されている(特許文献1参照)。このオイルフィルタでは、キャップに形成された嵌合凹部にOリングを嵌合させることによって、ケースとキャップとの間のシール状態が保たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−180387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のオイルフィルタでは、ケースの開口端部が当接して係止されるフランジのケース側に、誤ってOリングを装着する虞がある。
【0006】
すなわち、Oリングは、正しくはキャップに形成された嵌合凹部に嵌合させるものであるが、キャップのフランジのケース側に誤ってOリングを装着した場合であっても、ケースの開口側端部とキャップのフランジとの間で挟持されたOリングによって、オイルがある程度シールされた状態となる。また、この場合には、誤装着されたOリングは、キャップのフランジと、ケースの開口側端部との間で挟持されるため、作業者は、Oリングの誤装着に気が付かない虞がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、Oリング等のシール部材の誤装着を防止することが可能なオイルフィルタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るオイルフィルタは、以下のように構成されている。
【0009】
すなわち、本発明に係るオイルフィルタは、一方端に開口が形成された円筒部を有し、当該円筒部の内周面にねじ部が形成されたケーシングと、前記ねじ部に螺合して、前記ケーシングとの間にフィルタエレメントが収容されるキャップと、を備えるオイルフィルタであって、前記キャップが、前記ケーシングにおける前記円筒部の開口側の端面が当接して係止されるフランジと、前記キャップと前記ケーシングとの間のオイルの導通を阻止するシール部材が嵌合される嵌合凹部と、前記キャップの外周面のうち、前記フランジと前記嵌合凹部との間の領域には、前記フランジの前記嵌合凹部側の側面と一体に形成された凸部と、を備え、前記フランジが、周方向の少なくとも一部に切欠部が形成されていることを特徴としている。
【0010】
かかる構成を備えるオイルフィルタによれば、Oリング等のシール部材が嵌合凹部ではなく、前記フランジの前記嵌合凹部側に近接した前記キャップの外周面に誤装着された場合には、前記キャップが前記ケーシングの前記ねじ部に螺合して締め込まれるときに、前記ケーシングにおける前記円筒部の開口側の端面によって前記シール部材が押圧されて、前記フランジの外側にはみ出すことになる。したがって、作業者は、Oリングの誤装着に容易に気付くことができるので、Oリング等のシール部材の誤装着を防止することができる。
【0011】
すなわち、前記キャップの外周面のうち、前記フランジと前記嵌合凹部との間の領域には、前記フランジの前記嵌合凹部側の側面と一体に凸部が形成されているため、前記フランジの前記嵌合凹部側に近接した前記キャップの外周面に誤装着された場合には、前記キャップが前記ケーシングの前記ねじ部に螺合して締め込まれるときに、前記ケーシングにおける前記円筒部の開口側の端面によって前記シール部材が前記フランジ側へ押圧されると共に、前記凸部によって前記シール部材が前記キャップの外周側へ押し広げられて、前記フランジの外側にはみ出すことになる。したがって、作業者は、Oリング等のシール部材の誤装着に容易に気付くことができるので、Oリング等のシール部材の誤装着を防止することができるのである。
【0012】
また、前記フランジの周方向の少なくとも一部に切欠部が形成されているため、前記フランジの前記嵌合凹部側に近接した前記キャップの外周面に誤装着された場合には、前記キャップが前記ケーシングの前記ねじ部に螺合して締め込まれるときに、前記ケーシングにおける前記円筒部の開口側の端面によって前記シール部材が前記フランジ側へ押圧されると共に、前記切欠部において前記シール部材が前記フランジの外側にはみ出すことになる。したがって、作業者は、Oリング等のシール部材の誤装着に容易に気付くことができるので、Oリング等のシール部材の誤装着を防止することができるのである。
【0013】
また、本発明に係るオイルフィルタは、前記切欠部が、周方向の複数箇所に、当該オイルフィルタの中心軸について略軸対称に形成されていることが好ましい。
【0014】
かかる構成を備えるオイルフィルタによれば、前記切欠部が、周方向の複数箇所に、当該オイルフィルタの中心軸について略軸対称に形成されているため、前記キャップが前記ケーシングの前記ねじ部に螺合して締め込まれるときに、前記ケーシングにおける前記円筒部の開口側の端面と、前記フランジとの間に作用する力が当該オイルフィルタの中心軸について略軸対称に作用するので、前記キャップを前記ケーシングにスムーズに締め込むことができる。
【0015】
また、本発明に係るオイルフィルタは、前記切欠部が、前記フランジを当該オイルフィルタの中心軸に平行な平面で切断した態様で形成されていることが好ましい。
【0016】
かかる構成を備えるオイルフィルタによれば、前記切欠部が、前記フランジを当該オイルフィルタの中心軸に平行な平面で切断した態様で形成されているため、前記切欠部を簡素な構成で形成することができる。
【0017】
また、本発明に係るオイルフィルタは、前記凸部が、前記フランジの周方向に前記切欠部と略同一位置に形成されていることが好ましい。
【0018】
かかる構成を備えるオイルフィルタによれば、前記凸部が、前記フランジの周方向に前記切欠部と略同一位置に形成されているため、前記キャップが前記ケーシングの前記ねじ部に螺合して締め込まれるときに、前記凸部によって前記シール部材が前記キャップの外周側へ押圧されて、前記切欠部において前記シール部材が前記フランジの外側にはみ出すことになる。したがって、作業者は、Oリング等のシール部材の誤装着に更に容易に気付くことができるので、Oリング等のシール部材の誤装着を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るオイルフィルタによれば、Oリング等のシール部材が嵌合凹部ではなく、前記フランジの前記嵌合凹部側に近接した前記キャップの外周面に誤装着された場合には、前記キャップが前記ケーシングの前記ねじ部に螺合して締め込まれるときに、前記ケーシングにおける前記円筒部の開口側の端面によって前記シール部材が押圧されて、前記フランジの外側にはみ出すことになる。したがって、作業者は、Oリングの誤装着に容易に気付くことができるので、Oリング等のシール部材の誤装着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るオイルフィルタの一例を示す縦断面図である。
【図2】図1のキャップに形成された切欠及び凸部の一例を示す図である。
【図3】図2のキャップにOリングを正常位置に装着した場合の一例を示す縦断面図である。
【図4】図2のキャップの誤った位置にOリングを装着した場合の一例を示す縦断面図である。
【図5】従来のオイルフィルタにおけるキャップの一例を示す図である。
【図6】図5のキャップにおけるOリングの装着位置の一例を示す縦断面図である。
【図7】図5のキャップの誤った位置にOリングを装着した場合の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
−オイルフィルタ100−
図1は、本発明に係るオイルフィルタ100及び従来のオイルフィルタ100Aの一例を示す縦断面図である。まず、図1を参照してオイルフィルタ100(オイルフィルタ100A)の全体構成について説明する。オイルフィルタ100は、ケーシング2、押さえ板3、ナット部材4、フィルタエレメント5、キャップ6、及び、ドレンボルト7を備えている。なお、本発明に係るオイルフィルタ100は、従来のオイルフィルタ100Aのキャップ6Aに換えて、キャップ6を備える点で相違し、その他の構成は共通している。また、キャップ6とキャップ6Aとの相違点については、図2、図5を参照して後述する。ここでは、図1を参照して、キャップ6とキャップ6Aとの共通する構成について説明する。
【0023】
ケーシング2は、エンジンのシリンダブロックに形成されたブラケット1に取り付けられ、キャップ6(キャップ6A)と螺合して、フィルタエレメント5が収容されるものである。ブラケット1には、オイル入口11、及び、オイル出口12が設けられている。オイル入口11は、オイルを、エンジンのシリンダブロックからオイルフィルタ100へ導入するものである。オイル出口12は、フィルタエレメント5で濾過されたオイルをエンジンのシリンダブロックへ送出するものである。なお、エンジンは、特許請求の範囲に記載の「内燃機関」に相当する。
【0024】
ケーシング2は、貫通孔21、及び、円筒部22を備えている。貫通孔21は、オイル入口11を経由して流入したオイルを、押さえ板3に形成された貫通孔31を経由して、フィルタエレメント5へ送出するものである。円筒部22は、一方端(図1では、下端)に開口が形成され、端面221及び雌ねじ222を備えている。
【0025】
端面221は、円筒部22の開口側の端面であって、キャップ6(キャップ6A)に形成されたフランジ64(フランジ64A)と当接して係止するものである。雌ねじ222は、キャップ6に形成された雄ねじ61(雄ねじ61A)と螺合するものである。なお、雌ねじ222は、特許請求の範囲に記載された「ねじ部」に相当する。
【0026】
押さえ板3は、ケーシング2をブラケット1に固定するものであって、貫通孔31を備えている。貫通孔31は、オイル入口11及び貫通孔21を順次経由して流入したオイルを、フィルタエレメント5へ送出するものである。
【0027】
ナット部材4は、その上面で押さえ板3の下面を上方に押さえ付け、押さえ板3のねじ締結の緩みを防止するものである。
【0028】
フィルタエレメント5は、オイル入口11、貫通孔21及び貫通孔31を順次経由して流入したオイルを濾過するものであって、ここでは、濾紙を折り曲げて略円筒形状に形成されている。また、フィルタエレメント5には、中央部に、濾過されたオイルをオイル出口12へ送出する貫通孔51が形成されている。
【0029】
キャップ6(キャップ6A)は、ケーシング2と螺合して、フィルタエレメント5が収容されるものであって、雄ねじ61(雄ねじ61A)、嵌合凹部62(嵌合凹部62A)、Oリング63(Oリング63A)、フランジ64(フランジ64A)、及び、ドレン孔65(ドレン孔65A)を備えている。
【0030】
雄ねじ61(雄ねじ61A)は、ケーシング2の円筒部22に形成された雌ねじ222と螺合するものである。嵌合凹部62(嵌合凹部62A)は、雄ねじ61(雄ねじ61A)とフランジ64(フランジ64A)との間に、周方向に沿って形成され、Oリング63(Oリング63A)が嵌合される凹部である。Oリング63(Oリング63A)は、キャップ6(キャップ6A)とケーシング2との間のオイルの導通を阻止する(シールする)ものであって、特許請求の範囲に記載された「シール部材」に相当する。フランジ64(フランジ64A)は、ケーシング2の円筒部22の端面221と当接して係止するものである。ドレン孔65(ドレン孔65A)は、ドレンボルト7と螺合されることによって閉塞される孔である。
【0031】
エンジンから送られてくるオイルは、オイル入口11からオイルフィルタ100(オイルフィルタ100A)内部に流入する。オイルは、ケーシング2及び押さえ板3に設けられた貫通孔21、31を通過した後に、フィルタエレメント5によって濾過され、貫通孔51を通って、再びエンジンに送り出される。
【0032】
−従来のキャップ6A−
ここで、図5を参照して、従来のオイルフィルタのキャップ6Aについて説明する。図5は、従来のオイルフィルタ100Aにおけるキャップ6Aの一例を示す図である。図5(a)は、キャップ6Aの全体斜視図であり、図5(b)は、フランジ64Aの拡大斜視図であり、図5(c)は、キャップ6の平面図である。
【0033】
図5(c)に示すように、キャップ6Aのフランジ64Aは、周方向に同一の高さで立設されており、フランジ64Aの頂面は、平面視で円周状に形成されている。また、図5(b)に示すように、フランジ64Aの嵌合凹部62A側の側面は、近接するキャップ6Aの外周面に対して垂直に形成されている。
【0034】
−Oリングの誤装着位置−
次に、図6を参照して、Oリング63Aの誤装着位置について説明する。図6は、図5のキャップ6AにおけるOリング63Aの装着位置の一例を示す縦断面図である。破線は、Oリング63Aの正常な装着位置を示し、実線は、Oリング63Aの誤装着位置の一例を示している。
【0035】
Oリング63Aの正常な装着位置は、図1を用いて上述のように、嵌合凹部62Aに嵌合される位置である。一方、Oリング63Aの誤装着位置は、例えば、フランジ64Aの嵌合凹部62A側の位置である。以下の説明では、Oリング63A(Oリング63)の誤って装着される位置が、図6の実線で示す位置である場合について説明する。
【0036】
−Oリングの誤装着状態(従来)−
次に、従来のオイルフィルタ100Aにおいて、図6に実線で示すフランジ64Aの嵌合凹部62A側の位置にOリング63Aが誤って装着された場合に、キャップ6Aをケーシング2に締め込んだときの状態について図7を参照して説明する。図7は、図5のキャップ6Aの誤った位置にOリング63Aを装着した場合の一例を示す縦断面図である。
【0037】
図7(a)は、キャップ6Aをケーシング2に締め込む前の状態を示す図であって、図7(b)は、キャップ6Aをケーシング2に締め込んだ後の状態を示す図である。図7(a)に示すように、ここでは、フランジ64Aの嵌合凹部62A側の位置にOリング63Aが誤って装着されている。
【0038】
キャップ6Aをケーシング2に締め込むと、図7(b)に示すように、Oリング63Aは、ケーシング2の円筒部22の端面221とフランジ64Aとの間で押圧されて、扁平な断面形状とはなるものの、ケーシング2の円筒部22の端面221とフランジ64Aとの間で挟持されたままである。
【0039】
ここで、作業者は、通常、Oリング63Aが、キャップ6Aとケーシング2との間のオイルの導通を阻止する(シールする)ものであることを認識しているが、フランジ64Aの嵌合凹部62A側の位置にOリング63Aが誤って装着された場合であっても、ケーシング2の円筒部22の端面221とフランジ64Aとの間でOリング63Aが挟持されている(Oリング63Aによって、いわゆる「面シール」されている状態となる)ため、作業者は、誤装着であると気が付き難い。
【0040】
すなわち、従来のオイルフィルタ100Aでは、フランジ64Aの嵌合凹部62A側の位置にOリング63Aが誤って装着された場合であっても、Oリング63Aは、ケーシング2の円筒部22の端面221とフランジ64Aとの間で挟持されている(図7(b)参照)ため、キャップ6Aとケーシング2との間のオイルの導通をある程度阻止することができるのである。
【0041】
また、図7(b)に示すように、Oリング63Aは、ケーシング2の円筒部22の端面221とフランジ64Aとの間で正常に圧着されているように見えるため、作業者は、誤装着をしていることに気が付き難いのである。
【0042】
−本発明に係るキャップ6−
次に、図2を参照して、本発明に係るキャップ6について説明する。図2は、図1のキャップ6に形成された切欠部641及び凸部642の一例を示す図である。図2(a)は、キャップ6の全体斜視図であり、図2(b)は、切欠部641及び凸部642近傍の拡大斜視図であり、図2(c)は、キャップ6の平面図である。
【0043】
図2(c)に示すように、キャップ6のフランジ64には、周方向の2箇所に、オイルフィルタ100の中心軸について軸対称に、切欠部641が形成されている。また、切欠部641は、図2(b)及び図2(c)に示すように、フランジ64をオイルフィルタ100の中心軸に平行な平面で切断した態様で形成されている。
【0044】
また、図2(b)に示すように、キャップ6の外周面のうち、フランジ64と嵌合凹部62との間の領域には、フランジ64の嵌合凹部62側の側面と一体に凸部642が形成されている。また、凸部642は、2つの切欠部641の中央部と、それぞれ対向する位置に形成されている。更に、凸部642は、滑らかな曲面で形成され、キャップ6の外周面及びフランジ64の嵌合凹部62側の側面と滑らかな曲面で接続されている。また、凸部642は、キャップ6の外周面からの突出高さが、フランジ64に向かうにつれて(フランジ64に近接する程)、高くなるように形成されている。
【0045】
上述のように、切欠部641が、周方向の複数箇所(ここでは、2箇所)に、オイルフィルタ100の中心軸について軸対称に形成されているため、キャップ6がケーシング2の雌ねじ222に螺合して締め込まれるときに、ケーシング2における円筒部22の開口側の端面221と、フランジ64との間に作用する力がオイルフィルタ100の中心軸について軸対称に作用するので、キャップ6をケーシング2にスムーズに締め込むことができる。
【0046】
本実施形態では、切欠部641が、周方向の2箇所に形成されている形態について説明するが、切欠部641が、周方向の複数箇所に形成されている形態であればよい。例えば、切欠部641が、周方向の3箇所以上に形成されている形態でもよい。
【0047】
また、上述のように、切欠部641が、フランジ64をオイルフィルタ100の中心軸に平行な平面で切断した態様で形成されているため、切欠部641を簡素な構成で形成することができる。
【0048】
−Oリングの正常な装着状態(本発明)−
まず、本発明に係るオイルフィルタ100において、図6に破線で示す嵌合凹部62にOリング63が正常に装着された場合に、キャップ6をケーシング2に締め込んだときの状態について図3を参照して説明する。図3は、図2のキャップ6にOリング63を正常位置に装着した場合の一例を示す縦断面図である。図3(a)は、キャップ6をケーシング2に締め込む前の状態を示す図であって、図3(b)は、キャップ6をケーシング2に締め込んだ後の状態を示す図である。
【0049】
図3(b)に示すように、キャップ6がケーシング2に締め込まれると、Oリング63が、ケーシング2の円筒部22の内周面に押圧されることによって、扁平して嵌合凹部62に完全に嵌り込んだ状態となる。そして、嵌合凹部62の底面と、この底面と対向するケーシング2における円筒部22の内周面との間において、Oリング63の弾性力によってオイルの導通が阻止される(Oリング63によって、いわゆる「軸シール」されている状態となる)ことになる。
【0050】
−Oリングの誤装着状態(本発明)−
次に、本発明に係るオイルフィルタ100において、図6に実線で示すフランジ64の嵌合凹部62側の位置にOリング63が誤って装着された場合に、キャップ6をケーシング2に締め込んだときの状態について図4を参照して説明する。
【0051】
図4は、図2のキャップ6の誤った位置にOリング63を装着した場合の一例を示す縦断面図である。具体的には、図2(c)のA−A断面図である。すなわち、切欠部641及び凸部642の周方向中央位置において切断した場合の縦断面図である。
【0052】
図4(a)は、キャップ6をケーシング2に締め込む前の状態を示す図であって、図4(b)は、キャップ6をケーシング2に締め込んだ後の状態を示す図である。図4(a)に示すように、ここでは、フランジ64の嵌合凹部62側の位置にOリング63が誤って装着されている。
【0053】
図4(b)に示すように、キャップ6がケーシング2に締め込まれると、ケーシング2における円筒部22の開口側の端面221によってOリング63がフランジ64側へ押圧されると共に、凸部642によってOリング63がキャップ6の外周側へ押し広げられる。また、キャップ6の外周面からの凸部642の突出高さが、フランジ64に向かうにつれて(フランジ64に近接する程)、高くなるように形成されているため、キャップ6がケーシング2に締め込まれるにつれて、凸部642によってOリング63がキャップ6の外周側へ徐々に押し広げられる。そして、更に、Oリング63がフランジ64側へ押圧されると、切欠部641においてOリング63がフランジ64の外側にはみ出すことになる。したがって、作業者は、Oリング63の誤装着に容易に気付くことができるので、Oリング63の誤装着を防止することができる。
【0054】
また、上述のように、凸部642が、滑らかな曲面で形成され、キャップ6の外周面及びフランジ64の嵌合凹部62側の側面と滑らかな曲面で接続されているため、Oリング63がキャップ6の誤った位置に装着され、キャップ6がケーシング2に締め込まれた場合であっても、Oリング63が損傷を受けることを抑制することができる。
【0055】
なお、Oリング63が損傷を受けることを更に抑制するためには、切欠部641の嵌合凹部62側の面とキャップ6の外周面とを滑らかに接続するべく、切欠部641の嵌合凹部62側の面に滑らかな傾斜を設けることが好ましい。
【0056】
本実施形態では、凸部642が、切欠部641の中央部と対向する位置に形成されている場合について説明したが、凸部642が、フランジ64の嵌合凹部62側の側面に沿って周方向の全範囲に形成されている形態でもよい。この場合には、凸部642を簡素な構成で形成することができる。
【0057】
また、本実施形態では、上述のように、切欠部641が、フランジ64をオイルフィルタ100の中心軸に平行な平面で切断した態様で形成されている場合について説明するが、切欠部641が、その他の態様で形成されている形態でもよい。例えば、切欠部641が、周方向の所定範囲においてフランジ64の高さを低減する(例えば、高さを「0」にする)態様で形成されている形態でもよい。
【0058】
この場合には、図4(b)に示すように、キャップ6がケーシング2に締め込まれると、切欠部641においてOリング63がフランジ64の外側に更にはみ出すことになり、Oリング63の誤装着を確実に防止することができる。
【0059】
−他の実施形態−
本実施形態では、キャップ6に切欠部641及び凸部642が形成されている場合について説明したが、キャップ6に切欠部641又は凸部642が形成されている形態でもよい。この場合には、キャップ6の構造が簡略化される。
【0060】
本実施形態では、シール部材がOリング63である場合について説明したが、シール部材がその他の態様(例えば、断面が矩形等のリング状のシール部材等)である形態でもよい。
【0061】
本実施形態では、オイルフィルタ100がエンジンを潤滑するオイルの異物等を濾過する場合について説明したが、オイルフィルタ100がその他の(例えば、クラッチを構成するギアを潤滑する)オイルの異物等を濾過する形態でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、一方端に開口が形成された円筒部を有し、当該円筒部の内周面にねじ部が形成されたケーシングと、前記ねじ部に螺合して、前記ケーシングとの間にフィルタエレメントが収容されるキャップと、を備えるオイルフィルタに利用することができる。特に、車両に搭載され、内燃機関を潤滑するオイルの異物等を濾過するオイルフィルタに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
100、100A オイルフィルタ
2 ケーシング
21 貫通孔
22 円筒部
221 端面
222 雌ねじ(ねじ部)
3 押さえ板
4 ナット部材
5 フィルタエレメント
6、6A キャップ
61、61A 雄ねじ
62、62A 嵌合凹部
63、63A Oリング(シール部材)
64、64A フランジ
641 切欠部
642 凸部
7 ドレンボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端に開口が形成された円筒部を有し、当該円筒部の内周面にねじ部が形成されたケーシングと、前記ねじ部に螺合して、前記ケーシングとの間にフィルタエレメントが収容されるキャップと、を備えるオイルフィルタであって、
前記キャップは、
前記ケーシングにおける前記円筒部の開口側の端面が当接して係止されるフランジと、
前記キャップと前記ケーシングとの間のオイルの導通を阻止するシール部材が嵌合される嵌合凹部と、
前記キャップの外周面のうち、前記フランジと前記嵌合凹部との間の領域には、前記フランジの前記嵌合凹部側の側面と一体に形成された凸部と、を備え、
前記フランジは、周方向の少なくとも一部に切欠部が形成されていることを特徴とするオイルフィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載のオイルフィルタにおいて、
前記切欠部は、周方向の複数箇所に、当該オイルフィルタの中心軸について略軸対称に形成されていることを特徴とするオイルフィルタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のオイルフィルタにおいて、
前記切欠部は、前記フランジを当該オイルフィルタの中心軸に平行な平面で切断した態様で形成されていることを特徴とするオイルフィルタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のオイルフィルタにおいて、
前記凸部は、前記フランジの周方向に前記切欠部と略同一位置に形成されていることを特徴とするオイルフィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−60824(P2013−60824A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198290(P2011−198290)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】