オイルポンプ
【課題】高速回転時にもキャビテーションの発生を抑制し十分な吐出量を確保し得るオイルポンプを提供する。
【解決手段】このオイルポンプでは、ポンプ室の内部容積が拡大する領域に開口する吸入ポート21,31と、ポンプ室の内部容積が縮小する領域の下流側に開口する吐出ポート22,32と、ポンプ室の内部容積が縮小する領域の上流側に開口する切換ポート23,33と、該各切換ポート23,33を前記各吸入ポート21,31又は前記各吐出ポート22,32に連通させるよう切換制御する制御弁40とを設けることで、前記各切換ポート23,33を、これらと対向するポンプ室内圧が正圧となる低回転時には前記各吐出ポート22,32に連通させる一方、負圧となる高回転時には前記吸入ポート21,31に連通させるように構成した。
【解決手段】このオイルポンプでは、ポンプ室の内部容積が拡大する領域に開口する吸入ポート21,31と、ポンプ室の内部容積が縮小する領域の下流側に開口する吐出ポート22,32と、ポンプ室の内部容積が縮小する領域の上流側に開口する切換ポート23,33と、該各切換ポート23,33を前記各吸入ポート21,31又は前記各吐出ポート22,32に連通させるよう切換制御する制御弁40とを設けることで、前記各切換ポート23,33を、これらと対向するポンプ室内圧が正圧となる低回転時には前記各吐出ポート22,32に連通させる一方、負圧となる高回転時には前記吸入ポート21,31に連通させるように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用の内燃機関の各摺動部等に作動油を供給する油圧源に適用されるオイルポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内燃機関に適用される従来のオイルポンプとしては、例えば、以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、このオイルポンプは、いわゆる可変容量形ベーンポンプであって、スプリングによってロータの回転中心に対して常時偏心する方向へ付勢されたカムリングの偏心量を、ハウジングとカムリングの間に画成された制御油室に導入される吐出圧に基づいて制御し、これによって吐出量を可変にすることで、ポンプの駆動トルクを低減し、省エネ化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−309049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、前記従来のオイルポンプを内燃機関よりも高い回転数となる高速で駆動することによって、吐出量の増大化やポンプの小型化を図ることが望まれている。
【0006】
しかしながら、前記従来のオイルポンプを上記高速で駆動させようとすると、吸入量が追いつかず、キャビテーションが発生してしまうこととなり、これによって十分な吐出量を確保できないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来のオイルポンプの技術的課題に鑑みて案出されたもので、高速回転時にもキャビテーションを抑制して十分な吐出量を確保し得るオイルポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、とりわけ、その内部容積が縮小する領域の上流側に開口する前記作動油室内の圧力が負圧となる回転数のときには、当該負圧となる作動油室に低圧部から作動油が流入するように制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、その内部容積が縮小する領域の上流側に開口する作動油室が負圧になる高速回転時には、当該負圧となった作動油室に低圧部から作動油を供給することによって吸入量を増大させることが可能になることから、当該高速回転時であっても、キャビテーションの発生が抑制され、十分な吐出量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るオイルポンプを一体的に構成したバランサ装置の正面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1に示すバランサ装置の平面図である。
【図4】図1に示すバランサ装置の底面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るオイルポンプの構成を示す分解斜視図である。
【図6】図5に示すオイルポンプの縦断面図である。
【図7】図5のB−B線に沿う断面図である。
【図8】図5に示すポンプボディ単体をカバー部材との合わせ面側から見た図である。
【図9】図5に示すカバー部材単体をポンプボディとの合わせ面側から見た図である。
【図10】図7に示す両スプリングのばね荷重とカムリング揺動角との関係を表したグラフである。
【図11】図5に示すオイルポンプの背面図である。
【図12】図11のC−C線に沿う断面図である。
【図13】図12に示す制御弁(バルブボディ)をカバー部材との合わせ面側から見た図である。
【図14】同実施形態に係るオイルポンプの油圧回路図であって、(a)は本発明に係る第1の状態を示し、(b)は本発明に係る第2の状態を示している。
【図15】同実施形態に係るオイルポンプの油圧特性を表したグラフである。
【図16】図15に示す各区間におけるカムリングの位相と油圧回路の状態を表した図であって、(a)は区間a、(b)は区間b、(c)は区間c、(d)は区間d、(e)は区間eについて、それぞれ示している。
【図17】本発明の第2実施形態に係るオイルポンプの油圧回路図であって、(a)は本発明に係る第1の状態を示し、(b)は本発明に係る第2の状態を示している。
【図18】本発明の第3実施形態に係るオイルポンプの油圧回路図であって、(a)は本発明に係る第1の状態を示し、(b)は本発明に係る第2の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係るオイルポンプの各実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、下記の各実施形態では、このオイルポンプを、自動車用内燃機関の摺動部及び機関弁の開閉時期を制御するバルブタイミング制御装置に機関の潤滑油を供給するオイルポンプとして適用した例を示している。
【0012】
図1〜図16は、本発明に係るオイルポンプの第1実施形態を示しており、このオイルポンプ10は、内燃機関の2次振動を低減するために当該内燃機関の下部に設けられるバランサ装置1と一体的に設けられ、当該バランサ装置1によって駆動されるものである。
【0013】
そこで、前記オイルポンプ10について説明する前に、まず、前記バランサ装置1について概略を説明すれば、当該バランサ装置1は、図1〜図4に示すように、機関の下部に設けられる図外のオイルパン内部に収容されるかたちで配設されるもので、前記オイルパンと一体的に構成されるアッパハウジング2及び当該アッパハウジング2の下部に取り付けられるロワハウジング3と、該両ハウジング2,3間に回転自在に支持され、機関の前後方向となるクランクシャフト6の軸方向に沿って並列に配置された一対のバランスシャフトである駆動側のドライブシャフト4及びこれに従動する従動側のドリブンシャフト5と、前記両シャフト4,5の軸方向一端部(図2の右側端部)にそれぞれ固定され、互いに噛合することによって相互に反転するヘリカル型のドライブギヤ4a及びドリブンギヤ5aと、から主として構成され、前記ドライブシャフト4は、チェーン7を介して伝達されるクランクシャフト6の動力をもって当該クランクシャフト6の2倍の回転数で駆動される一方、前記ドリブンシャフト5は、前記両ギヤ4a,5aを介してドライブシャフト4と逆方向へ当該ドライブシャフト4と同じ回転数で従動するようになっている。
【0014】
そして、前記オイルポンプ10は、前記バランサ装置1の前端部に取り付けられると共にその駆動軸14がドリブンシャフト5の軸方向他端部に連結され、該ドリブンシャフト5から伝達される動力をもって回転駆動されることとなる。また、ロワハウジング3には、前記オイルパン内に貯留された作動油の吸入に供するオイルストレーナ8が設けられていて、該オイルストレーナ8によって吸い上げられた作動油は、当該ロワハウジング3内部に設けられた図外の吸入通路を通じて、オイルポンプ10の後記の吸入口21aへと導かれるようになっている。一方、アッパハウジング2には、図外のシリンダブロックへの作動油の吐出(導入)に供する吐出孔2aが設けられていて、オイルポンプ10の後記の吐出口22aから吐出された作動油が、前記両ハウジング2,3の内部に形成された図外の吐出通路を通じて前記吐出孔2aへ導かれて、当該吐出孔2aを介して前記シリンダブロックへと吐出されるようになっている。
【0015】
このように、前記オイルポンプ10をバランサ装置1と一体的に構成したことによって、当該オイルポンプ10から吐出された作動油を、バランサ装置1を通じて内燃機関に供給することが可能となるため、別途オイルポンプ10と内燃機関とを接続する配管等を設ける必要がなく、機関周辺の構造の簡素化に供されることとなる。
【0016】
続いて、本発明に係る前記オイルポンプ10について具体的に説明すれば、当該オイルポンプ10は、図5〜図7に示すように、一端側が開口形成されて内部に後記のポンプ構成体が収容されるポンプ収容室13を有する縦断面ほぼコ字形状のポンプボディ11及び当該ポンプボディ11の一端開口を閉塞するカバー部材12からなるポンプハウジング(本発明に係るポートブロック)と、該ポンプハウジングに回転自在に支持され、前記ポンプ収容室13のほぼ中心部を貫通して前記バランサ装置1によって回転駆動される駆動軸14と、前記ポンプ収容室13内に収容され、駆動軸14により図7中の反時計方向に回転駆動されることで、その内部に形成される複数の作動油室であるポンプ室PRの容積を増減させることによってポンプ作用を行うポンプ構成体と、を備えている。
【0017】
ここで、前記ポンプ構成体は、ポンプ収容室13内に回転自在に収容され、その中心部が駆動軸14の外周に結合されたロータ15と、このロータ15の外周部に放射状に切欠形成された複数のスリット15a内にそれぞれ出没自在に収容されたベーン16と、前記ロータ15の外周側に当該ロータ15の回転中心に対し偏心可能に配置され、前記ポンプハウジング、ロータ15及び隣接する2つのベーン16,16と共に前記各ポンプ室PRを画成するカムリング17と、前記ロータ15よりも小径に形成され、該ロータ15の内周側両側部に摺動自在に配置された一対のリング部材18,18と、から構成されている。
【0018】
前記ポンプボディ11は、アルミニウム合金材により一体に形成されていて、図5〜図8に示すように、ポンプ収容室13の一端壁を成す当該ポンプボディ11の端壁11aのほぼ中央位置には、駆動軸14の一端部を回転自在に支持する軸受孔11bが貫通形成されている。また、ポンプ収容室13の内周壁の所定位置には、ピボットピン19を介しカムリング17を揺動自在に支持する横断面ほぼ半円状の支持溝11cが切欠形成されている。さらに、ポンプ収容室13の内周壁には、軸受孔11bの中心と支持溝11bの中心とを結ぶ直線(以下「カムリング基準線」という。)Mに対し図7中のY軸負方向側に、カムリング17の外周部に配設される後記のシール部材20が摺接するシール摺接面11dが形成されている。このシール摺接面11dは、支持溝11cの中心から所定の半径R1をもって構成される円弧面状に形成されると共に、カムリング17が偏心揺動する範囲において前記シール部材20が常時摺接可能な周方向長さに設定されていて、カムリング17が偏心揺動する際には当該シール摺接面11dに沿って摺動案内されることにより、カムリング17の円滑な作動(偏心揺動)が得られるようになっている。
【0019】
また、前記ポンプボディ11の端壁11aの内側面には、特に図7、図8に示すように、軸受孔11bの外周域に、前記ポンプ構成体によるポンプ作用に伴い前記各ポンプ室PRの容積が拡大する領域(以下「容積拡大領域」という。)に開口するようにして、後記の吸入口21aを介しバランサ装置1側から作動油が導入されるほぼ円弧凹状の吸入ポート21が切欠形成されている。一方、前記各ポンプ室PRの容積が縮小する領域(以下「容積縮小領域」という。)には、その下流側に、当該各ポンプ室PRから吐出された作動油を後記の吐出口22aへと作動油を導くほぼ円弧凹状の吐出ポート22が、また、その上流側に、機関内の作動油圧、すなわち吐出圧に応じて前記吸入ポート21又は吐出ポート22として機能するよう切換可能なほぼ円弧凹状の切換ポート23が、それぞれ軸受孔11bを挟んで吸入ポート21と対向するように切欠形成されている。
【0020】
前記吸入ポート21は、その周方向ほぼ中間位置に、後記の第1スプリング収容室28側へ膨出するように形成された導入部24が一体に設けられていて、この導入部24と吸入ポート21との境界部近傍であって当該吸入ポート21始端側となる位置には、ポンプボディ11の端壁11aを貫通して外部へ開口することによりバランサ装置1内の前記吸入通路に接続される吸入口21aが貫通形成されている。これにより、オイルストレーナ8を介し前記オイルパンから吸い上げられ前記吸入通路を通じて吸入口21aへと導かれた作動油が、前記ポンプ構成体によるポンプ作用に伴って発生する負圧によって導入部24及び吸入ポート21を介して容積拡大領域に位置する各ポンプ室PRへと供給されることとなる。また、前記吸入口21aは、導入部24と共にカムリング17の外周域に形成される後記の低圧室36と連通するように構成されていて、当該低圧室36にも前記吸入圧である低圧の作動油を導くようになっている。ここで、本発明に係る低圧部は、吸入ポート21に連通した前記吸入圧となる範囲の全てを包含した概念であるが、主として、前記吸入ポート21やこれに隣設される導入部24ないし低圧室36等によって構成されている。
【0021】
前記吐出ポート22は、その終端側に、ポンプボディ11の端壁11aを貫通して外部へと開口することによってバランサ装置1内の前記吐出通路に接続される吐出口22aが貫通形成されている。これにより、前記ポンプ構成体によるポンプ作用によって加圧されて吐出ポート22へと吐出された作動油が、吐出口22aから前記吐出通路等を通じ前記シリンダブロック内に設けられた図外のオイルメインギャラリを介して機関内における各摺動部やバルブタイミング制御装置等に供給されることとなる。ここで、前記吐出口22aは、吐出ポート22の周方向両端に対し径方向外側へ膨出するように設けられていて、その外半側がカムリング17内部に形成される後記の第1連通路38を介してカバー部材12側に設けられる後記の吐出ポート32(第2連通孔32a)と連通するようになっている。
【0022】
また、前記吐出ポート22の始端部の近傍には、当該吐出ポート22と軸受孔11bとを連通する連通溝25が切欠形成されていて、この連通溝25を介して軸受孔11bに作動油を供給すると共にロータ15及び各ベーン16の側部にも作動油を供給することで、各摺動部位の良好な潤滑が確保されている。なお、かかる連通溝25は、各ベーン16の出没方向と合致しないように形成されており、これら各ベーン16が出没する際の当該連通溝25への脱落が抑制されている。さらに、前記吐出ポート22の始端部には、ポンプボディ11の端壁11a内部に設けられて当該吐出ポート22と後記の制御油室37とを連通する内部通路26の一端が開口形成されていて、該内部通路26を通じて、当該吐出ポート22へと吐出された作動油の一部が後記の制御油室37へと導かれるようになっている。
【0023】
前記切換ポート23は、その終端部位置に、径方向外側へと膨出するように形成された連通部27が一体に設けられていて、この連通部27を介してカムリング17の内部に形成される後記の第2連通路39を介してカバー部材12側の切換ポート33(第3連通孔33a)と連通するようになっている。
【0024】
前記カバー部材12は、図5、図9に示すように、ほぼ板状を呈し、複数のボルトB1によりポンプボディ11の開口端面に取り付けられるものであって、ポンプボディ11の軸受孔11bに対向する位置には、駆動軸14の他端側を回転自在に支持する軸受孔12aが貫通形成されている。また、ポンプ収容室13の他端壁を構成するこのカバー部材12の内側面にも、ポンプボディ11に設けられた前記各ポート21〜23に対向する位置に、当該各ポート21〜23とほぼ同様に構成される吸入ポート31、吐出ポート32及び切換ポート33がそれぞれ切欠形成されている。そして、この吸入ポート31の終端部には後記の制御弁40の第1ポート46に接続される第1連通孔31aが、また、吐出ポート32の中間部には後記の制御弁40の第2ポート47に接続される第2連通孔32aが、さらに、切換ポート33の終端部には後記の制御弁40の第3ポート48に接続される第3連通孔33aが、それぞれ貫通形成されている。
【0025】
前記駆動軸14は、図2に示すように、ポンプボディ11の端壁11aを貫通して外部へと臨む軸方向一端部14aがバランサ装置1のドリブンシャフト5の軸方向他端部に一体回転可能に連結されていて、当該ドリブンシャフト5から伝達される回転力に基づきロータ15を図6中の反時計方向へ回転させる。ここで、図7に示すように、当該駆動軸14の中心を通り、かつ、前記直線Mと直交する直線(以下「カムリング偏心方向線」という。)Nが、容積拡大領域と容積縮小領域との境界を成し、通常の状態である後記の制御弁40が第1の状態にあるときには、当該直線NのX軸負方向側が吸入領域、正方向側が吐出領域となっている。
【0026】
前記ロータ15は、図5〜図7に示すように、その中心側から径方向外側へ放射状に形成された前記複数のスリット15aが切欠形成されていると共に、該各スリット15aの内側基端部には、それぞれ吐出油を導入する横断面ほぼ円形状の背圧室15bが設けられていて、当該ロータ15の回転に伴う遠心力と背圧室15b内の圧力とにより、前記各ベーン16が外方へと押し出されるようになっている。
【0027】
前記各ベーン16は、ロータ15の回転時において、各先端面がカムリング17の内周面に摺接すると共に、各基端面が前記各リング部材18,18の外周面にそれぞれ摺接するようになっている。すなわち、これらの各ベーン16は、前記各リング部材18,18によってロータ15の径方向外側へ押し上げられる構成となっており、機関回転数が低く、また、前記遠心力や背圧室15bの圧力が小さい場合であっても、各先端がそれぞれカムリング17の内周面と摺接して前記各ポンプ室PRが液密に隔成されるようになっている。
【0028】
前記カムリング17は、いわゆる燒結金属によりほぼ円筒状に一体形成され、その外周部の所定位置には、ピボットピン19に嵌合することで偏心揺動支点を構成するほぼ円弧凹溝状のピボット部17aが軸方向に沿って切欠形成されていると共に、該ピボット部17aに対しカムリング17の中心を挟んで反対側の位置には、後記の各スプリング34,35と連係するアーム部17bが径方向に沿って突設されている。そして、前記アーム部17bの回動方向の両側部には、所定のばね定数に設定された第1スプリング34と、当該第1スプリング34より小さいばね定数に設定された第2スプリング35と、が対向配置されている。ここで、前記アーム部17bには、その回動方向一側部に、ほぼ円弧凸状の押圧突部17cが突設されている一方、他側部には、後記の規制部30の厚さ幅より長く設定された押圧突起17dが延設されていて、前記押圧突部17cが第1スプリング34の先端部に、前記押圧突起17dが第2スプリング35の先端部に、それぞれ常時当接することで、アーム部17bと前記各スプリング34,35とが連係するようになっている。
【0029】
また、かかる構成から、前記ポンプボディ11の内部には、図7及び図8に示すように、前記支持溝11bと対向する位置に、第1、第2スプリング28,29を収容保持する第1、第2スプリング収容室28,29が、図7中のY軸方向へ沿うようにポンプ収容室13に隣設されていて、第1スプリング収容室28には、その端壁とアーム部17b(押圧突部17c)との間に、第1スプリング34が所定のセット荷重W1をもって弾装されている一方、第2スプリング収容室29には、その端壁とアーム部17b(押圧突起17d)との間に、前記第1スプリング34よりも小さい線径に設定された第2スプリング35が所定のセット荷重W2をもって弾装されている。そして、前記第1、第2スプリング収容室28,29の間には、段差縮径状に構成された規制部30が設けられていて、この規制部30の一側部にアーム部17bの他側部が当接することによって、当該アーム部17bの反時計方向の回動範囲が規制される一方、前記規制部30の他側部に第2スプリング35の先端が当接することによって、当該第2スプリング35の最大伸長量が規制されるようになっている。
【0030】
このようにして、前記カムリング17については、前記両スプリング34,35のセット荷重W1,W2の合力W0、すなわち相対的に大きなばね荷重を発揮する第1スプリング34の付勢力をもって、アーム部17bを介してその偏心量が増大する方向(図7中の反時計方向)へ常時付勢されることで、図7に示すように、その非作動状態において、アーム部17bの押圧突起17dが第2スプリング収容室29内へと入り込んで第2スプリング35を圧縮させ、当該アーム部17bの他側部が規制部30の一側部へと押し付けられた状態となり、これによってその偏心量が最大となる位置に規制されている。
【0031】
また、前記カムリング17の外周部には、図7に示すように、ポンプボディ11のシール摺接面11dと対向するように形成された当該シール摺接面11dと同心円弧状のシール面17fを有する横断面ほぼ三角形状のシール構成部17eが突設されていると共に、このシール構成部17eのシール面17fに、横断面ほぼ矩形状のシール保持溝17gが軸方向に沿って切欠形成されていて、このシール保持溝17g内には、カムリング17の偏心揺動時にシール摺接面11dに摺接するシール部材20が収容保持されている。ここで、前記シール面17fは、前記シール摺接面11dを構成する半径R1よりも僅かに小さい所定の半径R2により構成されていて、該シール摺接面11dとシール面17fとの間には、所定の微小なクリアランスが形成されるようになっている。
【0032】
なお、前記シール部材20は、例えば低摩擦特性を有するフッ素系樹脂材によりカムリング17の軸方向に沿って直線状に細長く形成され、シール保持溝17gの底部に配設されたゴム製の弾性部材20aの弾性力によりシール摺接面11dに押し付けられることによって、当該シール摺接面11dとシール面17fとの間が液密に隔成された状態となっている。
【0033】
さらに、前記両スプリング収容室28,29は、特に前記導入部24と吸入ポート21とを介して低圧室36と連通するように構成されていて、この低圧室36内の作動油圧をもってカムリング17が常にピボットピン19へと押し付けられた状態となっていることで、切換ポート23の外周域に相当するカムリング17の外周域には、ピボットピン19とシール部材20とにより、カムリング17の偏心揺動制御に供される制御油室37が隔成されている。
【0034】
この制御油室37には、内部通路26を通じて吐出ポート22内の作動油が常時導入されるようになっていて、当該制御油室37に面するシール構成部17eの側面により構成された受圧面17hにポンプ吐出圧を作用させることで、カムリング17に対してその偏心量を減少させる方向(図7中の時計方向)へ揺動力(移動力)を付与するようになっている。すなわち、この制御油室37は、前記受圧面17hを介して、カムリング17を、その中心がロータ15の回転中心と同心に近づく方向へ常時付勢することによって、かかるカムリング17の同心方向の移動量制御に供されている。
【0035】
以上のような構成から、前記オイルポンプ10では、第1スプリング34のばね荷重に基づく偏心方向の付勢力と、第2スプリング35のばね荷重及び制御油室37の内圧に基づく同心方向の付勢力と、が所定の力関係をもってバランスするように構成されていて、第1スプリング34のセット荷重W1と第2スプリング35のセット荷重W2との差分となる当該両スプリング34,35のセット荷重の合力W0(=W1−W2)に対し制御油室37の内圧に基づく付勢力が小さいときには、カムリング17は図7に示すような最大偏心状態となり、吐出圧の上昇に伴って前記制御油室37の内圧に基づく付勢力が前記両スプリング34,35のセット荷重の合力W0を上回ったときには、その吐出圧に応じてカムリング17が前記同心方向へ移動することとなる。
【0036】
ここで、前記両スプリング34,35のばね荷重Wとカムリング17の揺動角(移動量)Xとの関係について具体的に説明すれば、図10に示すように、カムリング17が最大偏心状態となる位置X1において制御油室37の内圧に基づく付勢力が後記の第1作動油圧Pfに基づく付勢力に相当する前記両スプリング34,35のセット荷重W1,W2の合力W0に到達すると、第1スプリング34は収縮すると共に、第2スプリング35は伸長し始め、当該カムリング17が前記同心方向へと移動する。やがて、ポンプ吐出圧の増大により制御油室37の内圧に基づく付勢力が増大して第2スプリング35が規制部30に当接すると、第2スプリング35による助勢作用がなくなることから、前記カムリング17の同心方向の移動が停止する(図中の位置X2)。そして、さらに吐出圧が増大して制御油室37の内圧に基づく付勢力が後記の第2作動油圧Psに基づく付勢力に相当する第1スプリング34のばね荷重Wxに到達すると、第1スプリング34はさらに収縮を開始し、カムリング17がさらに前記同心方向へ移動することとなる(図中の位置X3)。
【0037】
また、前記オイルポンプ10には、特に図5、図11〜図13に示すように、カバー部材12の背部に、カムリング17内部に設けられた第1連通路38を通じて導入される吐出圧により制御され、その弁体43の軸方向位置に応じて前記切換ポート23の機能を切り換え制御する制御弁40(本発明に係る制御手段に相当)が設けられている。
【0038】
この制御弁40は、特に図12に示すように、一端側が開口形成され他端側が閉塞されるほぼ筒状に形成されたバルブボディ41と、該バルブボディ41の一端開口部を閉塞するプラグ42と、前記バルブボディ41の内周に軸方向へ摺動自在に収容され、その各端部にバルブボディ41内周面に摺接する第1ランド部43a及び第2ランド部43bが形成された弁体43と、前記バルブボディ41の一端側内周にてプラグ42と弁体43との間に後記のポート切換油圧Pkに等しい所定のセット荷重Wkをもって弾装され、弁体43をバルブボディ41の他端側へと常時付勢するバルブスプリング44と、を備えている。
【0039】
前記バルブボディ41は、弁体43の前記各ランド部43a,43bとほぼ同径に設定され、当該弁体43を収容する弁体収容部41aと、その他端部に段部41cを介して前記弁体収容部41aに対し段差縮径状に設けられ、弁体43の第2ランド部43bによって隔成されることで内部に背圧室45を構成する背圧室構成部41bとを有し、カバー部材12の背面に複数のボルトB2によって固定されている。そして、前記弁体収容部41aの周壁には、バルブボディ41内側面に設けられた吸入圧導入溝46aを介して第1連通孔31aに接続される第1ポート46と、バルブボディ41内側面に設けられた吐出圧導入溝47aを介して第2連通孔32aに接続される第2ポート47と、第3連通孔33aに直接開口することによって当該第3連通孔33aに接続される第3ポート48と、がそれぞれ貫通形成されている。さらに、前記背圧室構成部41bの周壁には、バルブボディ41の内側面に設けられた連通溝49aを介して第2ポート47に常時接続されて第2連通孔32aを通じて前記各吐出ポート22,32に吐出された作動油(吐出圧)が常時導入される背圧ポート49(本発明に係る吐出圧導入ポート)が貫通形成されている。
【0040】
前記弁体43は、軸方向中間部が縮径形成されていて、前記両ランド部43a,43bによりバルブボディ41との間に環状空間50を隔成し、この環状空間50を介して第3ポート48と第1ポート46又は第2ポート47とが連通するようになっている。
【0041】
このような構成から、前記制御弁40は、図14(a)に示すように、背圧室45内に導入される吐出圧が低く、この背圧室45の内圧に基づく付勢力がバルブスプリング44のセット荷重Wkよりも小さい状態では、該バルブスプリング44の付勢力をもって弁体43(第2ランド部43b)がバルブボディ41の段部41cへ押し付けられることとなる。これにより、第1ポート46が第1ランド部43aにより遮断され、環状空間50を介して第2ポート47と第3ポート48が連通することにより、前記各切換ポート23,33は吐出ポートとして機能することとなる(本発明に係る第1の状態)。
【0042】
一方、図14(b)に示すように、内燃機関の回転数、つまりオイルポンプ10の回転数の上昇に伴い背圧室45内に導入される吐出圧が高まり、この背圧室45の内圧に基づく付勢力がバルブスプリング44のセット荷重Wkよりも大きい状態になると、当該吐出圧に基づく付勢力をもって弁体43がバルブスプリング44の付勢力に抗してバルブボディ41の一端側(プラグ42側)へ移動することとなる。これにより、第1ポート46が環状空間50を介して第3ポート48と連通し、第2ポート47が背圧ポート49と連通することにより、前記各切換ポート23,33は吸入ポートとして機能することとなる(本発明に係る第2の状態)。
【0043】
ここで、かかる制御弁40のポート切換制御に際して、前記弁体43(第2ランド部43b)の受圧面積及びバルブスプリング44のセット荷重Wkは、前記各切換ポート23,33の内圧が負圧となる直前の吐出圧に基づいた背圧室45による付勢力とバルブスプリング44の付勢力とがほぼつり合うような大きさに設定されていて、第1の状態にて前記各切換ポート23,33の内圧が負圧となるような場合には、第1の状態から第2の状態へ既に切り換わっているような構成となっている。
【0044】
以下、本実施形態に係るオイルポンプ10の特徴的な作用について、図15、図16に基づいて説明する。
【0045】
まず、前記オイルポンプ10の作用説明に入る前に、当該オイルポンプ10の吐出圧制御の基準となる内燃機関の必要油圧につき、図15に基づいて説明すると、図中のP1は、例えば燃費向上等に供するバルブタイミング制御装置を採用した場合の当該装置の要求油圧に相当する第1機関要求油圧を、図中のP2は、ピストンの冷却に供するオイルジェットを採用する場合の当該装置の要求油圧に相当する第2機関要求油圧を、図中のP3は、機関高回転時の前記クランクシャフトの軸受部潤滑に要する第3機関要求油圧を、それぞれ示し、これらの点P1〜P3を繋いだ図中の曲線E(二点差線)が、内燃機関の機関回転数Rに応じた理想的な必要油圧(吐出圧)Pを表している。また、同図中のPfは、制御油室37の内圧に基づく付勢力によりカムリング17が前記両スプリング34,35の合力W0に抗して揺動し始める第1作動油圧を、同図中のPsは、制御油室37の内圧に基づく付勢力によりカムリング17が第1スプリングのばね荷重W1に抗してさらに揺動し始める第2作動油圧を、それぞれ示している。そして、前記両作動油圧Pf,Ps間に設定されるPkは、前記各切換ポート23,33の接続を切り換えるポート切換油圧を示している。
【0046】
すなわち、前記オイルポンプ10の場合、機関のアイドル運転時に相当する図15中の区間aでは、前記両スプリング34,35の合力W0による付勢力、つまり相対的に大きな第1スプリング34のばね荷重に基づく付勢力によって、図16(a)に示すように、カムリング17の偏心量が最大となる状態に保持されることとなる。これにより、当該区間aでは、吐出圧(機関内油圧)Pが前記ポート切換油圧Pkより十分に小さく、制御弁40の弁体43が最も背圧室45側に位置することとなって前記各切換ポート23,33がそれぞれ前記各吐出ポート22,32に接続された状態となることにより、吐出圧Pは機関回転数Rにほぼ比例するように増大する特性となる。
【0047】
その後、機関回転数Rが上昇し吐出圧Pが前記第1機関要求油圧P1よりも高く設定される第1作動油圧Pfに到達すると、図16(b)に示すように、制御油室37の内圧に基づく付勢力と第2スプリング35の付勢力とにより、カムリング17が第1スプリング34の付勢力に抗して前記同心方向へと移動し始める。すると、カムリング17の偏心量が徐々に小さくなることによって吐出量の増加が制限され、これによって機関回転数Rの上昇に基づく吐出圧Pの増大が抑制されることとなる(図15中の区間b)。やがて、上記カムリング17の移動に伴い第2スプリング35が伸長し、図16(c)に示すように、その先端が規制部30に当接すると、当該第2スプリング35による助勢作用がなくなることで上記カムリング17の移動が停止することとなり、再び機関回転数Rの上昇に伴って吐出圧Pが当該機関回転数Rにほぼ比例するかたちで増大することとなる(図15中の区間c)。
【0048】
ここで、本実施形態では、前記オイルポンプ10を、従来のような内燃機関(クランクシャフト)の回転数ではなく、バランサ装置1(ドリブンシャフト5)の回転数、つまり従来の2倍の回転数でもって駆動する構成となっていることから、当該オイルポンプ10では、所定回転数Rkを超える機関回転数Rの領域ではキャビテーションの発生が余儀なくされ、これによって吐出圧Pを機関回転数Rの上昇に比例して増大させることができなくなってしまう。すなわち、従来の2倍速となる回転数では、ロータ15の回転速度が速過ぎるためにポンプ室PRが前記各吸入ポート21,31の領域(容積拡大領域)に位置する時間が短くなり過ぎてしまい、当該ポンプ室PR内に十分な作動油を吸入できないまま前記各吐出ポート22,32と連通する前記各切換ポート23,33の領域(容積縮小領域の上流側)へと移行してしまうこととなるため、該各切換ポート23,33の領域に移行しても、これらと対向するポンプ室PR内は未だ負圧の状態にあって当該各切換ポート23,33に作動油を吐出することができず、機関回転数Rの上昇に伴い吐出量を増加させることができない。
【0049】
なお、かかる技術的課題は、特に、前記オイルポンプ10のようなベーン式ポンプにおいて顕著に発生するものであり、例えばトロコイド式ポンプの場合には、キャビテーションが発生した後も機関回転数の上昇に伴って吐出量が増加することになるため、吐出量が不足するといった当該技術的課題はほとんど発生することがない。
【0050】
そこで、前記オイルポンプ10では、機関回転数Rの上昇により吐出圧Pが、キャビテーションの発生し得る前記機関回転数Rkでの吐出圧に相当する前記ポート切換油圧Pkに到達すると、図16(d)に示すように、制御弁40内において、背圧室45の内圧に基づく付勢力がバルブスプリング44のセット荷重Wkに打ち勝ち、該バルブスプリング44のセット荷重Wkに抗して弁体43がプラグ42側へと移動することによって、制御弁40が第1の状態から第2の状態へと切り換わる。その結果、環状空間50を介して第1ポート46と第3ポート48とが連通することとなり、前記各切換ポート23,33には第3連通孔33aや第2連通路39を介して前記各吸入ポート21,31から作動油が導入されることとなって、前記各吸入ポート21,31に加え、当該各切換ポート23,33も吸入ポートとして機能することとなる。
【0051】
こうして、前記各切換ポート23,33が吸入ポートとして機能することで、前記各吸入ポート21,31と合わせて吸入区間(吸入領域)が拡大しポンプ室PRが当該吸入領域に位置する時間が長くなることから、前述のように前記各吸入ポート21,31の領域のみでは十分に作動油を供給できずに容積縮小領域の上流側(各切換ポート23,33の領域)においても負圧となっていたポンプ室PRに対しても十分な作動油を供給することが可能となって、キャビテーション発生の抑制に供されることとなる。
【0052】
そして、前記制御弁40が第1の状態から第2の状態へと切り換わっている間は、当該制御弁40内における第1ポート46と第2ポート47との連通量が漸次縮小することにより固有吐出量(ポンプ1回転あたりの吐出量)が低下することになるため、機関回転数Rが上昇しても吐出圧Pの増加量は一時的にほぼ横ばいとなるものの、前記ポート切換が完了した後は、再び機関回転数Rの上昇に伴って吐出圧Pが当該機関回転数Rにほぼ比例するかたちで増大することとなる(図15中の区間d)。
【0053】
なお、このとき、前記制御弁40が第2の状態へと移行することによって、吐出領域が縮小されると共に、当該吐出領域に位置するポンプ室PRが容積の縮小した状態で前記各吐出ポート22,32へと作動油を吐出することになるため、当該制御弁40が第1の状態にある場合と比較して、理論上の吐出量としては減少することになるものの、キャビテーションが発生しない分、実際の吐出量は増大することとなる。
【0054】
続いて、さらに機関回転数Rが上昇し吐出圧Pが前記第3機関要求油圧P3よりも高く設定される第1作動油圧Psに到達すると、図16(e)に示すように、制御油室37の内圧に基づく付勢力により、カムリング17が第1スプリング34のばね荷重Wxに抗してさらに前記同心方向へ移動し始める。すると、カムリング17の偏心量が小さくなるに従って吐出量の増加が制限され、これによって機関回転数Rの上昇に基づく吐出圧Pの増大が抑制されることとなる(図15中の区間e)。
【0055】
このように、前記オイルポンプ10では、前記両スプリング34,35及び制御弁40によって吐出圧Pを多段階的に増大させるようにカムリング17を揺動制御することで、当該吐出圧Pを無駄に増大させることなく、内燃機関の要求油圧(曲線E)に極力沿った特性を得ることができる(図15参照)。
【0056】
しかも、前記オイルポンプ10の場合には、その吐出圧Pが前記ポート切換油圧Pkを超えるような高回転時に単に前記各切換ポート23,33を前記各吸入ポート21,31に接続させたのではなく、キャビテーションを抑制するという趣旨から当該高回転時により多くの作動油を吸入させる構成とし、これによって適切な吐出量を確保するようにしたことから、当該ポンプ10に無駄な仕事をほとんどさせることがなく、燃費の悪化を招来してしまうこともない。
【0057】
以上のように、本実施形態に係るオイルポンプ10によれば、前記容積縮小領域の上流側(前記各切換ポート23,33の領域)に位置するポンプ室PRが負圧となるような高回転時には、制御弁40を切り換えることによって前記各切換ポート23,33からも作動油を供給可能とし、これによって吸入量を増大させるようにしたことから、前記技術的課題である当該高回転時のキャビテーションの発生を抑制することが可能となり、十分な吐出量を確保することができる。
【0058】
換言すれば、前記オイルポンプ10の場合には、前記高回転時に前記各切換ポート23,33からも作動油の吸入を可能としたことで、当該高回転時の、作動油を吸入する領域(吸入領域)が拡大され、ポンプ室PRの当該吸入領域に位置する時間(吸入時間)をより長く確保することが可能になることから、十分な吸入量を確保することができ、キャビテーションの抑制に供されることとなる。
【0059】
さらに、前記オイルポンプ10では、カムリング17が前記同心方向へ移動する際に、そのアーム部17bの各側面によって前記各吸入ポート21,31の一部が覆われることとなるため、これが吸入時の抵抗となって、前記キャビテーションの効果的な抑制が図れる。
【0060】
また、前記オイルポンプ10を、従来(クランクシャフトの回転数)の2倍の回転数で駆動するようにしたことで、従来の半分のポンプ容積で従来と同じ吐出能力を持たせることが可能となることから、ポンプ自体の大幅な小型化にも貢献することができる。
【0061】
しかも、本実施形態では、かかる従来の2倍の回転駆動力を得るにあたって、内燃機関に付随する既存のバランサ装置1を利用することとしたため、新たに駆動源を用いることもなく、コストの増大化の抑制にも供される。
【0062】
図17は本発明に係るオイルポンプの第2実施形態を示しており、前記第1実施形態に係る制御弁40の背圧ポート49と前記各吐出ポート22,32との間に、機関運転状態に応じて車載のECU60からの励磁電流に基づき作動するノーマルクローズ型のソレノイドバルブSVを設け、該ソレノイドバルブSVによって前記ポート切換制御を電気的に行うこととしたものである。なお、図17(a)はソレノイドバルブSVには励磁電流が通電されていない状態であって本発明に係る第1状態を、図17(b)はソレノイドバルブSVに励磁電流が通電された状態であって本発明に係る第2状態を、それぞれ表している。
【0063】
すなわち、前記ソレノイドバルブSVは、基本的に、所定のセンサ等により検出された内燃機関の回転数Rをもって制御されるように構成され、当該機関回転数Rが前述の所定回転数Rk(図15参照)よりも低い状態では、ECU60から励磁電流は通電されず、背圧ポート49へと導かれた作動油はドレンされ、背圧室45内には吐出圧Pが導入されないこととなる。この結果、弁体43がバルブスプリング44の付勢力によりバルブボディ41の段部41cに押し付けられた状態となり、当該制御弁40は、前記第1の状態が維持されることとなる(図17(a)参照)。
【0064】
一方、内燃機関の回転数Rが前記所定回転数Rk以上になると、ECU60から励磁電流が通電されることでソレノイドバルブSVが開弁し、背圧室45内には前記ポート切換油圧Pk以上の吐出圧Pが導入されることとなる。この結果、当該導入圧をもって弁体43がバルブスプリング44の付勢力に抗してバルブボディ41の一端側(プラグ42側)へと移動し、当該制御弁40は、前記第2の状態へと切り換えられることとなる(図17(b)参照)。
【0065】
以上のように、本実施形態では、前記制御弁40によるポート切換制御を、ソレノイドバルブSVを用いることによって電気的に行うようにしたことから、前記第1実施形態のように吐出圧(作動油圧)によって前記ポート切換制御を行う場合に比べて、ポンプ10各部の摩耗や油種変更による油圧変化の影響等を受けることがないため、当該ポート切換制御を常時適切に行うことが可能となり、キャビテーションの発生をより確実に抑制することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、前記ソレノイドバルブSVを前記制御弁40の背圧ポート49と前記各吐出ポート22,32との間に介装することによって制御弁40の背圧室45への導入圧を制御する構成としたが、当該構成のほか、前記ソレノイドバルブSVによって制御弁40の弁体43を直接駆動する構成としてもよく、この場合であっても、上記作用効果を得ることができる。
【0067】
図18は本発明に係るオイルポンプの第3実施形態を示しており、前記第2実施形態に係るソレノイドバルブSVをリニアソレノイドバルブRSVに変更すると共に、該リニアソレノイドバルブRSVと前記各吐出ポート22,32との間にオリフィス61を設け、前記リニアソレノイドバルブRSVをもってドレン排出量を制御することで背圧室45に作用させる導入圧を制御するように構成したものである。なお、図18(a)はリニアソレノイドバルブRSVにおけるドレン排出量が最大となる状態であって本発明に係る第1の状態を、図18(b)はリニアソレノイドバルブRSVにおけるドレン排出量がゼロとなる状態であって本発明に係る第2の状態を、それぞれ表している。
【0068】
すなわち、前記リニアソレノイドバルブRSVは、一端側が開口形成され他端側が閉塞されるほぼ筒状に形成されたバルブボディ51と、該バルブボディ51の内周に軸方向に沿って摺動自在に収容され、その各端部にバルブボディ51の内周面に摺接する第1、第2ランド部52a,52bが形成された弁体52と、該弁体52の第2ランド部52bによりバルブボディ51の他端側に隔成される背圧室55内に収容され、弁体52をバルブボディ51の一端側へ付勢するバルブスプリング53と、バルブボディ51の一端開口部に取り付けられ、通電に伴いロッド54bを進出させてバルブスプリング53の付勢力に抗して弁体52をバルブボディ51の他端側へ軸方向移動させる電磁ユニット54と、から主として構成されている。
【0069】
前記バルブボディ51は、その周壁に、前記各切換ポート23,33と連通するINポート51aと、背圧ポート49に接続されるOUTポート51bと、前記各吸入ポート21,31又は外部に接続されて、後記の環状空間56内の作動油の排出に供するドレンポート51cと、がそれぞれ貫通形成されている。
【0070】
前記弁体52は、その軸方向の中間部が縮径形成されていて、前記両ランド部52a,52bによってバルブボディ51との間に環状空間56を隔成し、該環状空間56を介して前記各ポート51a〜51cが相互に連通するようになっている。そして、この弁体52の第2ランド部52bによりドレンポート51cが開閉されることによって、環状空間56からOUTポート51bを介して背圧ポート49へと導く作動油圧が制御されることとなる。
【0071】
前記電磁ユニット54は、周知のように、ボビンにコイルが巻回され、これにヨークを外嵌してなるコイルユニット54aと、該コイルユニット54aの内周側に軸方向に進退可能に設けられた磁性材からなる図外のアーマチュアと、該アーマチュアに結合され、コイルへの通電状態に応じてアーマチュアに伴い進退移動するロッド54bと、から主として構成されている。
【0072】
かかる構成から、前記リニアソレノイドバルブRSVは、内燃機関の回転数Rが前記所定回転数Rkよりも低い状態では、ECU60から最大の励磁電流が通電され、ロッド54bが最大進出した状態となり、ドレンポート51cの排出量は最大となる。この結果、前記制御弁40の背圧室45にはバルブスプリング44の付勢力に抗して弁体43を作動させるのに十分な作動油圧が導入されず、バルブスプリング44の付勢力によって弁体43がバルブボディ41の段部41cへと押し付けられた状態となり、当該制御弁40は、前記第1の状態が維持されることとなる(図18(a)参照)。
【0073】
一方、内燃機関の回転数Rが上昇して前記第1作動油圧Pfに相当する所定回転数Rf以上になると、当該機関回転数Rの上昇に伴ってECU60からの励磁電流が徐々に低減されドレンポート51cの開口面積が漸減していくことによって前記背圧室45の内圧が漸増することとなり、当該背圧室45の内圧が前記ポート切換油圧Pkに到達したところで弁体43がバルブボディ41の一端側(プラグ42側)へと移動し始め、前記ポート切換制御が開始される。やがて、ECU60からの励磁電流が最小となってドレンポート51cが完全に閉じられたとき、当該制御弁40は、前記第1の状態から第2の状態へ完全に移行することとなる(図18(b)参照)。
【0074】
以上のように、本実施形態では、前記制御弁40の背圧室45に対する導入圧制御にリニアソレノイドバルブRSVを採用したことで、前記第2実施形態と同様の作用効果が奏せられるのは勿論のこと、当該リニアソレノイドバルブRSVは、ON−OFF制御のみ可能な前記ソレノイドバルブSVとは異なり、前記ポート切換を徐々に行うことができることから、該ポート切換時の吐出量変化に基づく吐出圧変動の抑制に供される。
【0075】
なお、この実施形態でも、前記リニアソレノイドバルブRSVを前記制御弁40の背圧ポート49と前記各吐出ポート22,32との間に介装することによって制御弁40の背圧室45への導入圧を制御する構成としたが、当該構成のほか、前記リニアソレノイドバルブRSVによって制御弁40の弁体43を直接駆動する構成としてもよく、この場合であっても上記作用効果を得ることができるのは第2実施形態と同様である。
【0076】
本発明は前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば前記機関要求油圧P1〜P3、前記第1、第2作動油圧Pf,Ps及び前記ポート切換油圧Pkは、前記オイルポンプ10が搭載される車両の内燃機関やバルブタイミング制御装置等の仕様に応じて自由に変更することができる。
【0077】
また、前記オイルポンプ10の駆動源についても、必ずしもバランサ装置1を利用する必要はなく、内燃機関の回転数よりも高い回転数で駆動可能なものであれば、他の装置を利用することも可能である。さらに、当該他の装置は、車体に既存のものでもよく、新たに追加したものでもよい。
【0078】
また、前記各実施形態では、前記制御弁40を介して前記各切換ポート23,33を前記各吸入ポート21,31に接続することによって吸入領域の拡大を図っているが、このように分割した各ポートを組み合わせることによって吸入領域を画一的に拡大するのではなく、当該吸入領域を連続的に拡大することで高回転時のポンプ吸入量を確保することとしてもよい。
【0079】
すなわち、前記各吐出ポート22,32と前記各切換ポート23,33とをそれぞれ一連の吐出ポートとして構成すると共に、これら一連の吐出ポートと前記各吸入ポート21,31を仕切る一対の仕切壁のうち内部容積が大きい方のポンプ室PRが対向する一方の仕切壁(例えば図7中でいう下側の隔壁)を、前記両部材11,12とは別体の、該両部材11,12に対して相対移動可能な仕切部材として構成し、該仕切部材をそれぞれ周方向に移動させて吸入領域と吐出領域の配分を連続的に変更することによって前記吸入領域を拡大させることとしてもよい。
【0080】
このように吸入領域と吐出領域の配分を連続的に変更可能に構成することで、機関高回転時における吸入量の確保ができるばかりでなく、吸入・吐出領域の拡縮に基づく急激なポンプ吐出量の変化を抑制することが可能となり、ポンプ10の円滑な吐出量制御に供されることとなる。また、上述の構成の場合には、仕切部材を移動させるのみによって前記吸入・吐出領域の拡縮を容易に行えることから、ポンプ10の応答性の向上にも供される。
【0081】
また、前記第2、第3実施形態では、前記ソレノイドバルブSV及びリニアソレノイドバルブRSVの制御パラメータとして、基本となる機関回転数を例に説明したが、当該機関回転数のほか、例えば機関内を流動する冷却水温もしくは作動油温又はその両方や、前記各切換ポート23,33内に圧力センサや圧力スイッチ等を設けることによって検出した当該各切換ポート23,33内の圧力、に応じて制御することとしてもよい。
【0082】
すなわち、キャビテーションの発生は作動油の粘度にも影響することから、前記冷却水温あるいは作動油温、望ましくは両者を制御パラメータとして設定することで、当該キャビテーションの発生をより適切に抑制することが可能となる。また、前述のように、前記各切換ポート23,33の内圧が負圧になるとキャビテーションが発生することから、当該各切換ポート23,33の内圧に基づいて前記ポート切換制御を行うことも、適切なキャビテーションの抑制に有効となる。
【0083】
前記各実施形態から把握される特許請求の範囲に記載した発明以外の技術的思想について、以下に説明する。
【0084】
(a)請求項1に記載のオイルポンプにおいて、
前記ポンプ構成体は、前記吐出圧に応じて吐出量を可変するように構成され、
前記弁体が前記第1の状態を前記第2の状態に切り換える吐出圧は、ポンプ1回転あたりの吐出量が最低となる吐出圧よりも低く設定されていることを特徴とするオイルポンプ。
【0085】
キャビテーションは、ポンプの吐出圧が、ポンプの固有吐出量が最低となる吐出圧に達するよりも前に発生することになるため、当該固有吐出量が最低となる吐出圧よりも切換圧を低く設定することで、キャビテーション抑制の実効が図れる。
【0086】
(b)前記(a)に記載のオイルポンプにおいて、
前記ポンプ構成体は、内燃機関により回転駆動されてその外周側に放射状の複数の溝を有するロータと、前記ロータの外周側に配置されて該ロータの回転中心とその内周面の中心とが偏心可能となるように設けられたカムリングと、前記複数の溝内にそれぞれ出没自在に収容されて各先端が前記カムリングの内周面に摺接するベーンとから構成され、
前記カムリングの軸方向両側面に前記ポートブロックが配置されることで、該ポートブロック、前記ロータ、前記カムリング及び前記各ベーンにより前記各作動油室が隔成されることを特徴とするオイルポンプ。
【0087】
(c)前記(b)に記載のオイルポンプにおいて、
前記吐出圧が第1の圧力に達すると前記ロータの回転中心と前記カムリングの内周面の中心との偏心量が減少し、前記吐出圧が前記第1の圧力よりも高い第2の圧力に達すると前記ロータの回転中心と前記カムリングの内周面の中心との偏心量がさらに減少するように構成され、
前記弁体が前記第1の状態を前記第2の状態へと切り換える吐出圧は、前記第1の圧力よりも高く前記第2の圧力よりも低く設定されていることを特徴とするオイルポンプ。
【0088】
このように構成することで、可変容量形ポンプとしての機能を確保しつつ、本発明の作用効果を得ることができる。すなわち、第1の状態から第2の状態へと切り換えることによって吐出量が減少してしまうことから、カムリングの揺動タイミングが遅れ、その分、ポンプに不必要な仕事をさせてしまう結果となる。よって、キャビテーションが発生し得ない状態で前述のような切り換えを行ってしまうと、キャビテーション低減効果が活かされないばかりか、逆に、ポンプの駆動トルク低減を図るといった可変容量形ポンプとしての機能を無駄に阻害してしまうこととなる。
【0089】
(d)前記(c)に記載のオイルポンプにおいて、
前記カムリングには、それぞればね荷重の異なる2種類のスプリングによる付勢力が作用するように構成され、
前記吐出圧が前記第1の圧力に達すると、前記カムリングは、前記両スプリングのうち比較的ばね荷重の小さいスプリングの付勢力に抗して前記ロータの回転中心と前記カムリングの内周面の中心との偏心量が減少する方向へ移動し、
前記吐出圧が前記第2の圧力に達すると、前記カムリングは、前記両スプリングのうち比較的ばね荷重の大きいスプリングの付勢力に抗して前記ロータの回転中心と前記カムリングの内周面の中心との偏心量がさらに減少する方向へ移動するように構成されることを特徴とするオイルポンプ。
【0090】
(e)前記(c)に記載のオイルポンプにおいて、
前記ロータの回転中心と前記カムリングの内周面との偏心量が減少すると、前記吸入ポートの一部が前記カムリングの側面によって覆われるように構成されることを特徴とするオイルポンプ。
【0091】
このように構成することで、吸入ポートからの吸い込み量を減少させることが可能となり、キャビテーション発生の抑制に供される。
【0092】
(f)請求項1に記載のオイルポンプにおいて、
前記ポンプ構成体は、内燃機関のクランクシャフトの回転数よりも高回転で駆動されることを特徴とするオイルポンプ。
【0093】
このように、ポンプの回転数を従来よりも高めることで、同じ能力を有するポンプを構成する場合には、従来よりもポンプを小型化することができる。
【0094】
(g)前記(f)に記載のオイルポンプにおいて、
前記ポンプ構成体は、前記クランクシャフトの回転数の2倍の回転数で駆動されることを特徴とするオイルポンプ。
【0095】
このように、ポンプの回転数を従来の2倍とすることで、同じ能力を有するポンプを構成する場合には、従来の半分の容量で足り、ポンプの大幅な小型化に貢献できる。
【0096】
(h)前記(g)に記載のオイルポンプにおいて、
前記ポンプ構成体は、内燃機関の2次振動を低減するバランサ装置によって駆動されることを特徴とするオイルポンプ。
【0097】
このように、内燃機関に付随する既存の装置を利用するようにしたことで、新たに駆動源を用いることなく前記従来の2倍の回転駆動力を得ることができ、コスト増大化の抑制に供される。
【0098】
(i)前記(h)に記載のオイルポンプにおいて、
前記ポンプ構成体は、前記バランサ装置に組み込まれていることを特徴とするオイルポンプ。
【0099】
このようにしてポンプとバランサ装置とを一体化することで、ポンプを別に配置する場合に比べて、車両等にコンパクトに搭載することが可能となる。
【0100】
(j)請求項2に記載のオイルポンプにおいて、
前記制御手段は、電気的に制御されることを特徴とするオイルポンプ。
【0101】
かかる構成とすることで、前記切換制御を吐出圧を用いて行う場合のようにオイルポンプの摩耗や油種変更による油圧変化の影響を受けることがないため、前記切換制御を常時適切に行うことが可能となる。
【0102】
(k)前記(j)に記載のオイルポンプにおいて、
前記制御手段は、検出された内燃機関の回転数に応じて制御されることを特徴とするオイルポンプ。
【0103】
キャビテーションの発生はポンプの回転数に依存するため、該ポンプの回転数に相関する内燃機関の回転数に応じた制御とすることで、キャビテーションの発生を適切に抑制することができる。
【0104】
(l)前記(k)に記載のオイルポンプにおいて、
前記制御手段は、検出された内燃機関の温度を考慮して制御されることを特徴とするオイルポンプ。
【0105】
キャビテーションの発生は作動油の粘度にも影響することから、かかる構成とすることで、キャビテーションの発生をより適切に抑制することができる。
【0106】
(m)前記(j)に記載のオイルポンプにおいて、
前記制御手段は、検出された前記切換ポートの圧力に応じて制御されることを特徴とするオイルポンプ。
【0107】
容積が縮小する領域の上流側に開口する切換ポート内の圧力が負圧になるとキャビテーションが発生するため、当該切換ポートの圧力に基づいて前記切換制御を行うことで、キャビテーションの発生を適切に抑制することができる。
【0108】
(n)請求項3に記載のオイルポンプにおいて、
前記容積が縮小する領域の上流側の作動油室が負圧になる回転数のときには、作動油を吸入する領域を拡大する一方、作動油を吐出する領域を縮小することを特徴とするオイルポンプ。
【0109】
かかる構成とすることで、吸入工程において十分な吸入量を確保することが可能となり、キャビテーションの抑制に供される。
【0110】
(o)前記(n)に記載のオイルポンプにおいて、
作動油を吸入する領域は、前記回転数に応じて連続的に拡大されることを特徴とするオイルポンプ。
【0111】
かかる構成とすることで、吸入・吐出領域の拡縮に基づく急激な吐出量変化を抑制でき、円滑なポンプ制御に供される。
【0112】
(p)前記(o)に記載のオイルポンプにおいて、
前記ポートブロックには、前記吸入ポートと前記吐出ポートとを仕切る仕切部材が設けられ、該仕切部材が前記回転数に応じて移動することにより、前記作動油の吸入領域が拡大されることを特徴とするオイルポンプ。
【0113】
かかる構成とすることで、吸入・吐出領域を固定的に仕切る従来のポンプに比べて、当該吸入・吐出領域の拡縮を容易に行うことができ、ポンプの応答性の向上に供される。
【符号の説明】
【0114】
10…オイルポンプ
11…ポンプボディ(ポートブロック)
12…カバー部材(ポートブロック)
15…ロータ(ポンプ構成体)
16…ベーン(ポンプ構成体)
17…カムリング(ポンプ構成体)
18…リング部材(ポンプ構成体)
21,31…吸入ポート
22,32…吐出ポート
23,33…切換ポート
41…バルブボディ(弁収容孔)
43…弁体
44…バルブスプリング(付勢部材)
45…背圧ポート(吐出圧導入ポート)
46a…第1ポート
47…第2ポート
48…第3ポート
PR…ポンプ室(作動油室)
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用の内燃機関の各摺動部等に作動油を供給する油圧源に適用されるオイルポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内燃機関に適用される従来のオイルポンプとしては、例えば、以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、このオイルポンプは、いわゆる可変容量形ベーンポンプであって、スプリングによってロータの回転中心に対して常時偏心する方向へ付勢されたカムリングの偏心量を、ハウジングとカムリングの間に画成された制御油室に導入される吐出圧に基づいて制御し、これによって吐出量を可変にすることで、ポンプの駆動トルクを低減し、省エネ化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−309049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、前記従来のオイルポンプを内燃機関よりも高い回転数となる高速で駆動することによって、吐出量の増大化やポンプの小型化を図ることが望まれている。
【0006】
しかしながら、前記従来のオイルポンプを上記高速で駆動させようとすると、吸入量が追いつかず、キャビテーションが発生してしまうこととなり、これによって十分な吐出量を確保できないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来のオイルポンプの技術的課題に鑑みて案出されたもので、高速回転時にもキャビテーションを抑制して十分な吐出量を確保し得るオイルポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、とりわけ、その内部容積が縮小する領域の上流側に開口する前記作動油室内の圧力が負圧となる回転数のときには、当該負圧となる作動油室に低圧部から作動油が流入するように制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、その内部容積が縮小する領域の上流側に開口する作動油室が負圧になる高速回転時には、当該負圧となった作動油室に低圧部から作動油を供給することによって吸入量を増大させることが可能になることから、当該高速回転時であっても、キャビテーションの発生が抑制され、十分な吐出量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るオイルポンプを一体的に構成したバランサ装置の正面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1に示すバランサ装置の平面図である。
【図4】図1に示すバランサ装置の底面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るオイルポンプの構成を示す分解斜視図である。
【図6】図5に示すオイルポンプの縦断面図である。
【図7】図5のB−B線に沿う断面図である。
【図8】図5に示すポンプボディ単体をカバー部材との合わせ面側から見た図である。
【図9】図5に示すカバー部材単体をポンプボディとの合わせ面側から見た図である。
【図10】図7に示す両スプリングのばね荷重とカムリング揺動角との関係を表したグラフである。
【図11】図5に示すオイルポンプの背面図である。
【図12】図11のC−C線に沿う断面図である。
【図13】図12に示す制御弁(バルブボディ)をカバー部材との合わせ面側から見た図である。
【図14】同実施形態に係るオイルポンプの油圧回路図であって、(a)は本発明に係る第1の状態を示し、(b)は本発明に係る第2の状態を示している。
【図15】同実施形態に係るオイルポンプの油圧特性を表したグラフである。
【図16】図15に示す各区間におけるカムリングの位相と油圧回路の状態を表した図であって、(a)は区間a、(b)は区間b、(c)は区間c、(d)は区間d、(e)は区間eについて、それぞれ示している。
【図17】本発明の第2実施形態に係るオイルポンプの油圧回路図であって、(a)は本発明に係る第1の状態を示し、(b)は本発明に係る第2の状態を示している。
【図18】本発明の第3実施形態に係るオイルポンプの油圧回路図であって、(a)は本発明に係る第1の状態を示し、(b)は本発明に係る第2の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係るオイルポンプの各実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、下記の各実施形態では、このオイルポンプを、自動車用内燃機関の摺動部及び機関弁の開閉時期を制御するバルブタイミング制御装置に機関の潤滑油を供給するオイルポンプとして適用した例を示している。
【0012】
図1〜図16は、本発明に係るオイルポンプの第1実施形態を示しており、このオイルポンプ10は、内燃機関の2次振動を低減するために当該内燃機関の下部に設けられるバランサ装置1と一体的に設けられ、当該バランサ装置1によって駆動されるものである。
【0013】
そこで、前記オイルポンプ10について説明する前に、まず、前記バランサ装置1について概略を説明すれば、当該バランサ装置1は、図1〜図4に示すように、機関の下部に設けられる図外のオイルパン内部に収容されるかたちで配設されるもので、前記オイルパンと一体的に構成されるアッパハウジング2及び当該アッパハウジング2の下部に取り付けられるロワハウジング3と、該両ハウジング2,3間に回転自在に支持され、機関の前後方向となるクランクシャフト6の軸方向に沿って並列に配置された一対のバランスシャフトである駆動側のドライブシャフト4及びこれに従動する従動側のドリブンシャフト5と、前記両シャフト4,5の軸方向一端部(図2の右側端部)にそれぞれ固定され、互いに噛合することによって相互に反転するヘリカル型のドライブギヤ4a及びドリブンギヤ5aと、から主として構成され、前記ドライブシャフト4は、チェーン7を介して伝達されるクランクシャフト6の動力をもって当該クランクシャフト6の2倍の回転数で駆動される一方、前記ドリブンシャフト5は、前記両ギヤ4a,5aを介してドライブシャフト4と逆方向へ当該ドライブシャフト4と同じ回転数で従動するようになっている。
【0014】
そして、前記オイルポンプ10は、前記バランサ装置1の前端部に取り付けられると共にその駆動軸14がドリブンシャフト5の軸方向他端部に連結され、該ドリブンシャフト5から伝達される動力をもって回転駆動されることとなる。また、ロワハウジング3には、前記オイルパン内に貯留された作動油の吸入に供するオイルストレーナ8が設けられていて、該オイルストレーナ8によって吸い上げられた作動油は、当該ロワハウジング3内部に設けられた図外の吸入通路を通じて、オイルポンプ10の後記の吸入口21aへと導かれるようになっている。一方、アッパハウジング2には、図外のシリンダブロックへの作動油の吐出(導入)に供する吐出孔2aが設けられていて、オイルポンプ10の後記の吐出口22aから吐出された作動油が、前記両ハウジング2,3の内部に形成された図外の吐出通路を通じて前記吐出孔2aへ導かれて、当該吐出孔2aを介して前記シリンダブロックへと吐出されるようになっている。
【0015】
このように、前記オイルポンプ10をバランサ装置1と一体的に構成したことによって、当該オイルポンプ10から吐出された作動油を、バランサ装置1を通じて内燃機関に供給することが可能となるため、別途オイルポンプ10と内燃機関とを接続する配管等を設ける必要がなく、機関周辺の構造の簡素化に供されることとなる。
【0016】
続いて、本発明に係る前記オイルポンプ10について具体的に説明すれば、当該オイルポンプ10は、図5〜図7に示すように、一端側が開口形成されて内部に後記のポンプ構成体が収容されるポンプ収容室13を有する縦断面ほぼコ字形状のポンプボディ11及び当該ポンプボディ11の一端開口を閉塞するカバー部材12からなるポンプハウジング(本発明に係るポートブロック)と、該ポンプハウジングに回転自在に支持され、前記ポンプ収容室13のほぼ中心部を貫通して前記バランサ装置1によって回転駆動される駆動軸14と、前記ポンプ収容室13内に収容され、駆動軸14により図7中の反時計方向に回転駆動されることで、その内部に形成される複数の作動油室であるポンプ室PRの容積を増減させることによってポンプ作用を行うポンプ構成体と、を備えている。
【0017】
ここで、前記ポンプ構成体は、ポンプ収容室13内に回転自在に収容され、その中心部が駆動軸14の外周に結合されたロータ15と、このロータ15の外周部に放射状に切欠形成された複数のスリット15a内にそれぞれ出没自在に収容されたベーン16と、前記ロータ15の外周側に当該ロータ15の回転中心に対し偏心可能に配置され、前記ポンプハウジング、ロータ15及び隣接する2つのベーン16,16と共に前記各ポンプ室PRを画成するカムリング17と、前記ロータ15よりも小径に形成され、該ロータ15の内周側両側部に摺動自在に配置された一対のリング部材18,18と、から構成されている。
【0018】
前記ポンプボディ11は、アルミニウム合金材により一体に形成されていて、図5〜図8に示すように、ポンプ収容室13の一端壁を成す当該ポンプボディ11の端壁11aのほぼ中央位置には、駆動軸14の一端部を回転自在に支持する軸受孔11bが貫通形成されている。また、ポンプ収容室13の内周壁の所定位置には、ピボットピン19を介しカムリング17を揺動自在に支持する横断面ほぼ半円状の支持溝11cが切欠形成されている。さらに、ポンプ収容室13の内周壁には、軸受孔11bの中心と支持溝11bの中心とを結ぶ直線(以下「カムリング基準線」という。)Mに対し図7中のY軸負方向側に、カムリング17の外周部に配設される後記のシール部材20が摺接するシール摺接面11dが形成されている。このシール摺接面11dは、支持溝11cの中心から所定の半径R1をもって構成される円弧面状に形成されると共に、カムリング17が偏心揺動する範囲において前記シール部材20が常時摺接可能な周方向長さに設定されていて、カムリング17が偏心揺動する際には当該シール摺接面11dに沿って摺動案内されることにより、カムリング17の円滑な作動(偏心揺動)が得られるようになっている。
【0019】
また、前記ポンプボディ11の端壁11aの内側面には、特に図7、図8に示すように、軸受孔11bの外周域に、前記ポンプ構成体によるポンプ作用に伴い前記各ポンプ室PRの容積が拡大する領域(以下「容積拡大領域」という。)に開口するようにして、後記の吸入口21aを介しバランサ装置1側から作動油が導入されるほぼ円弧凹状の吸入ポート21が切欠形成されている。一方、前記各ポンプ室PRの容積が縮小する領域(以下「容積縮小領域」という。)には、その下流側に、当該各ポンプ室PRから吐出された作動油を後記の吐出口22aへと作動油を導くほぼ円弧凹状の吐出ポート22が、また、その上流側に、機関内の作動油圧、すなわち吐出圧に応じて前記吸入ポート21又は吐出ポート22として機能するよう切換可能なほぼ円弧凹状の切換ポート23が、それぞれ軸受孔11bを挟んで吸入ポート21と対向するように切欠形成されている。
【0020】
前記吸入ポート21は、その周方向ほぼ中間位置に、後記の第1スプリング収容室28側へ膨出するように形成された導入部24が一体に設けられていて、この導入部24と吸入ポート21との境界部近傍であって当該吸入ポート21始端側となる位置には、ポンプボディ11の端壁11aを貫通して外部へ開口することによりバランサ装置1内の前記吸入通路に接続される吸入口21aが貫通形成されている。これにより、オイルストレーナ8を介し前記オイルパンから吸い上げられ前記吸入通路を通じて吸入口21aへと導かれた作動油が、前記ポンプ構成体によるポンプ作用に伴って発生する負圧によって導入部24及び吸入ポート21を介して容積拡大領域に位置する各ポンプ室PRへと供給されることとなる。また、前記吸入口21aは、導入部24と共にカムリング17の外周域に形成される後記の低圧室36と連通するように構成されていて、当該低圧室36にも前記吸入圧である低圧の作動油を導くようになっている。ここで、本発明に係る低圧部は、吸入ポート21に連通した前記吸入圧となる範囲の全てを包含した概念であるが、主として、前記吸入ポート21やこれに隣設される導入部24ないし低圧室36等によって構成されている。
【0021】
前記吐出ポート22は、その終端側に、ポンプボディ11の端壁11aを貫通して外部へと開口することによってバランサ装置1内の前記吐出通路に接続される吐出口22aが貫通形成されている。これにより、前記ポンプ構成体によるポンプ作用によって加圧されて吐出ポート22へと吐出された作動油が、吐出口22aから前記吐出通路等を通じ前記シリンダブロック内に設けられた図外のオイルメインギャラリを介して機関内における各摺動部やバルブタイミング制御装置等に供給されることとなる。ここで、前記吐出口22aは、吐出ポート22の周方向両端に対し径方向外側へ膨出するように設けられていて、その外半側がカムリング17内部に形成される後記の第1連通路38を介してカバー部材12側に設けられる後記の吐出ポート32(第2連通孔32a)と連通するようになっている。
【0022】
また、前記吐出ポート22の始端部の近傍には、当該吐出ポート22と軸受孔11bとを連通する連通溝25が切欠形成されていて、この連通溝25を介して軸受孔11bに作動油を供給すると共にロータ15及び各ベーン16の側部にも作動油を供給することで、各摺動部位の良好な潤滑が確保されている。なお、かかる連通溝25は、各ベーン16の出没方向と合致しないように形成されており、これら各ベーン16が出没する際の当該連通溝25への脱落が抑制されている。さらに、前記吐出ポート22の始端部には、ポンプボディ11の端壁11a内部に設けられて当該吐出ポート22と後記の制御油室37とを連通する内部通路26の一端が開口形成されていて、該内部通路26を通じて、当該吐出ポート22へと吐出された作動油の一部が後記の制御油室37へと導かれるようになっている。
【0023】
前記切換ポート23は、その終端部位置に、径方向外側へと膨出するように形成された連通部27が一体に設けられていて、この連通部27を介してカムリング17の内部に形成される後記の第2連通路39を介してカバー部材12側の切換ポート33(第3連通孔33a)と連通するようになっている。
【0024】
前記カバー部材12は、図5、図9に示すように、ほぼ板状を呈し、複数のボルトB1によりポンプボディ11の開口端面に取り付けられるものであって、ポンプボディ11の軸受孔11bに対向する位置には、駆動軸14の他端側を回転自在に支持する軸受孔12aが貫通形成されている。また、ポンプ収容室13の他端壁を構成するこのカバー部材12の内側面にも、ポンプボディ11に設けられた前記各ポート21〜23に対向する位置に、当該各ポート21〜23とほぼ同様に構成される吸入ポート31、吐出ポート32及び切換ポート33がそれぞれ切欠形成されている。そして、この吸入ポート31の終端部には後記の制御弁40の第1ポート46に接続される第1連通孔31aが、また、吐出ポート32の中間部には後記の制御弁40の第2ポート47に接続される第2連通孔32aが、さらに、切換ポート33の終端部には後記の制御弁40の第3ポート48に接続される第3連通孔33aが、それぞれ貫通形成されている。
【0025】
前記駆動軸14は、図2に示すように、ポンプボディ11の端壁11aを貫通して外部へと臨む軸方向一端部14aがバランサ装置1のドリブンシャフト5の軸方向他端部に一体回転可能に連結されていて、当該ドリブンシャフト5から伝達される回転力に基づきロータ15を図6中の反時計方向へ回転させる。ここで、図7に示すように、当該駆動軸14の中心を通り、かつ、前記直線Mと直交する直線(以下「カムリング偏心方向線」という。)Nが、容積拡大領域と容積縮小領域との境界を成し、通常の状態である後記の制御弁40が第1の状態にあるときには、当該直線NのX軸負方向側が吸入領域、正方向側が吐出領域となっている。
【0026】
前記ロータ15は、図5〜図7に示すように、その中心側から径方向外側へ放射状に形成された前記複数のスリット15aが切欠形成されていると共に、該各スリット15aの内側基端部には、それぞれ吐出油を導入する横断面ほぼ円形状の背圧室15bが設けられていて、当該ロータ15の回転に伴う遠心力と背圧室15b内の圧力とにより、前記各ベーン16が外方へと押し出されるようになっている。
【0027】
前記各ベーン16は、ロータ15の回転時において、各先端面がカムリング17の内周面に摺接すると共に、各基端面が前記各リング部材18,18の外周面にそれぞれ摺接するようになっている。すなわち、これらの各ベーン16は、前記各リング部材18,18によってロータ15の径方向外側へ押し上げられる構成となっており、機関回転数が低く、また、前記遠心力や背圧室15bの圧力が小さい場合であっても、各先端がそれぞれカムリング17の内周面と摺接して前記各ポンプ室PRが液密に隔成されるようになっている。
【0028】
前記カムリング17は、いわゆる燒結金属によりほぼ円筒状に一体形成され、その外周部の所定位置には、ピボットピン19に嵌合することで偏心揺動支点を構成するほぼ円弧凹溝状のピボット部17aが軸方向に沿って切欠形成されていると共に、該ピボット部17aに対しカムリング17の中心を挟んで反対側の位置には、後記の各スプリング34,35と連係するアーム部17bが径方向に沿って突設されている。そして、前記アーム部17bの回動方向の両側部には、所定のばね定数に設定された第1スプリング34と、当該第1スプリング34より小さいばね定数に設定された第2スプリング35と、が対向配置されている。ここで、前記アーム部17bには、その回動方向一側部に、ほぼ円弧凸状の押圧突部17cが突設されている一方、他側部には、後記の規制部30の厚さ幅より長く設定された押圧突起17dが延設されていて、前記押圧突部17cが第1スプリング34の先端部に、前記押圧突起17dが第2スプリング35の先端部に、それぞれ常時当接することで、アーム部17bと前記各スプリング34,35とが連係するようになっている。
【0029】
また、かかる構成から、前記ポンプボディ11の内部には、図7及び図8に示すように、前記支持溝11bと対向する位置に、第1、第2スプリング28,29を収容保持する第1、第2スプリング収容室28,29が、図7中のY軸方向へ沿うようにポンプ収容室13に隣設されていて、第1スプリング収容室28には、その端壁とアーム部17b(押圧突部17c)との間に、第1スプリング34が所定のセット荷重W1をもって弾装されている一方、第2スプリング収容室29には、その端壁とアーム部17b(押圧突起17d)との間に、前記第1スプリング34よりも小さい線径に設定された第2スプリング35が所定のセット荷重W2をもって弾装されている。そして、前記第1、第2スプリング収容室28,29の間には、段差縮径状に構成された規制部30が設けられていて、この規制部30の一側部にアーム部17bの他側部が当接することによって、当該アーム部17bの反時計方向の回動範囲が規制される一方、前記規制部30の他側部に第2スプリング35の先端が当接することによって、当該第2スプリング35の最大伸長量が規制されるようになっている。
【0030】
このようにして、前記カムリング17については、前記両スプリング34,35のセット荷重W1,W2の合力W0、すなわち相対的に大きなばね荷重を発揮する第1スプリング34の付勢力をもって、アーム部17bを介してその偏心量が増大する方向(図7中の反時計方向)へ常時付勢されることで、図7に示すように、その非作動状態において、アーム部17bの押圧突起17dが第2スプリング収容室29内へと入り込んで第2スプリング35を圧縮させ、当該アーム部17bの他側部が規制部30の一側部へと押し付けられた状態となり、これによってその偏心量が最大となる位置に規制されている。
【0031】
また、前記カムリング17の外周部には、図7に示すように、ポンプボディ11のシール摺接面11dと対向するように形成された当該シール摺接面11dと同心円弧状のシール面17fを有する横断面ほぼ三角形状のシール構成部17eが突設されていると共に、このシール構成部17eのシール面17fに、横断面ほぼ矩形状のシール保持溝17gが軸方向に沿って切欠形成されていて、このシール保持溝17g内には、カムリング17の偏心揺動時にシール摺接面11dに摺接するシール部材20が収容保持されている。ここで、前記シール面17fは、前記シール摺接面11dを構成する半径R1よりも僅かに小さい所定の半径R2により構成されていて、該シール摺接面11dとシール面17fとの間には、所定の微小なクリアランスが形成されるようになっている。
【0032】
なお、前記シール部材20は、例えば低摩擦特性を有するフッ素系樹脂材によりカムリング17の軸方向に沿って直線状に細長く形成され、シール保持溝17gの底部に配設されたゴム製の弾性部材20aの弾性力によりシール摺接面11dに押し付けられることによって、当該シール摺接面11dとシール面17fとの間が液密に隔成された状態となっている。
【0033】
さらに、前記両スプリング収容室28,29は、特に前記導入部24と吸入ポート21とを介して低圧室36と連通するように構成されていて、この低圧室36内の作動油圧をもってカムリング17が常にピボットピン19へと押し付けられた状態となっていることで、切換ポート23の外周域に相当するカムリング17の外周域には、ピボットピン19とシール部材20とにより、カムリング17の偏心揺動制御に供される制御油室37が隔成されている。
【0034】
この制御油室37には、内部通路26を通じて吐出ポート22内の作動油が常時導入されるようになっていて、当該制御油室37に面するシール構成部17eの側面により構成された受圧面17hにポンプ吐出圧を作用させることで、カムリング17に対してその偏心量を減少させる方向(図7中の時計方向)へ揺動力(移動力)を付与するようになっている。すなわち、この制御油室37は、前記受圧面17hを介して、カムリング17を、その中心がロータ15の回転中心と同心に近づく方向へ常時付勢することによって、かかるカムリング17の同心方向の移動量制御に供されている。
【0035】
以上のような構成から、前記オイルポンプ10では、第1スプリング34のばね荷重に基づく偏心方向の付勢力と、第2スプリング35のばね荷重及び制御油室37の内圧に基づく同心方向の付勢力と、が所定の力関係をもってバランスするように構成されていて、第1スプリング34のセット荷重W1と第2スプリング35のセット荷重W2との差分となる当該両スプリング34,35のセット荷重の合力W0(=W1−W2)に対し制御油室37の内圧に基づく付勢力が小さいときには、カムリング17は図7に示すような最大偏心状態となり、吐出圧の上昇に伴って前記制御油室37の内圧に基づく付勢力が前記両スプリング34,35のセット荷重の合力W0を上回ったときには、その吐出圧に応じてカムリング17が前記同心方向へ移動することとなる。
【0036】
ここで、前記両スプリング34,35のばね荷重Wとカムリング17の揺動角(移動量)Xとの関係について具体的に説明すれば、図10に示すように、カムリング17が最大偏心状態となる位置X1において制御油室37の内圧に基づく付勢力が後記の第1作動油圧Pfに基づく付勢力に相当する前記両スプリング34,35のセット荷重W1,W2の合力W0に到達すると、第1スプリング34は収縮すると共に、第2スプリング35は伸長し始め、当該カムリング17が前記同心方向へと移動する。やがて、ポンプ吐出圧の増大により制御油室37の内圧に基づく付勢力が増大して第2スプリング35が規制部30に当接すると、第2スプリング35による助勢作用がなくなることから、前記カムリング17の同心方向の移動が停止する(図中の位置X2)。そして、さらに吐出圧が増大して制御油室37の内圧に基づく付勢力が後記の第2作動油圧Psに基づく付勢力に相当する第1スプリング34のばね荷重Wxに到達すると、第1スプリング34はさらに収縮を開始し、カムリング17がさらに前記同心方向へ移動することとなる(図中の位置X3)。
【0037】
また、前記オイルポンプ10には、特に図5、図11〜図13に示すように、カバー部材12の背部に、カムリング17内部に設けられた第1連通路38を通じて導入される吐出圧により制御され、その弁体43の軸方向位置に応じて前記切換ポート23の機能を切り換え制御する制御弁40(本発明に係る制御手段に相当)が設けられている。
【0038】
この制御弁40は、特に図12に示すように、一端側が開口形成され他端側が閉塞されるほぼ筒状に形成されたバルブボディ41と、該バルブボディ41の一端開口部を閉塞するプラグ42と、前記バルブボディ41の内周に軸方向へ摺動自在に収容され、その各端部にバルブボディ41内周面に摺接する第1ランド部43a及び第2ランド部43bが形成された弁体43と、前記バルブボディ41の一端側内周にてプラグ42と弁体43との間に後記のポート切換油圧Pkに等しい所定のセット荷重Wkをもって弾装され、弁体43をバルブボディ41の他端側へと常時付勢するバルブスプリング44と、を備えている。
【0039】
前記バルブボディ41は、弁体43の前記各ランド部43a,43bとほぼ同径に設定され、当該弁体43を収容する弁体収容部41aと、その他端部に段部41cを介して前記弁体収容部41aに対し段差縮径状に設けられ、弁体43の第2ランド部43bによって隔成されることで内部に背圧室45を構成する背圧室構成部41bとを有し、カバー部材12の背面に複数のボルトB2によって固定されている。そして、前記弁体収容部41aの周壁には、バルブボディ41内側面に設けられた吸入圧導入溝46aを介して第1連通孔31aに接続される第1ポート46と、バルブボディ41内側面に設けられた吐出圧導入溝47aを介して第2連通孔32aに接続される第2ポート47と、第3連通孔33aに直接開口することによって当該第3連通孔33aに接続される第3ポート48と、がそれぞれ貫通形成されている。さらに、前記背圧室構成部41bの周壁には、バルブボディ41の内側面に設けられた連通溝49aを介して第2ポート47に常時接続されて第2連通孔32aを通じて前記各吐出ポート22,32に吐出された作動油(吐出圧)が常時導入される背圧ポート49(本発明に係る吐出圧導入ポート)が貫通形成されている。
【0040】
前記弁体43は、軸方向中間部が縮径形成されていて、前記両ランド部43a,43bによりバルブボディ41との間に環状空間50を隔成し、この環状空間50を介して第3ポート48と第1ポート46又は第2ポート47とが連通するようになっている。
【0041】
このような構成から、前記制御弁40は、図14(a)に示すように、背圧室45内に導入される吐出圧が低く、この背圧室45の内圧に基づく付勢力がバルブスプリング44のセット荷重Wkよりも小さい状態では、該バルブスプリング44の付勢力をもって弁体43(第2ランド部43b)がバルブボディ41の段部41cへ押し付けられることとなる。これにより、第1ポート46が第1ランド部43aにより遮断され、環状空間50を介して第2ポート47と第3ポート48が連通することにより、前記各切換ポート23,33は吐出ポートとして機能することとなる(本発明に係る第1の状態)。
【0042】
一方、図14(b)に示すように、内燃機関の回転数、つまりオイルポンプ10の回転数の上昇に伴い背圧室45内に導入される吐出圧が高まり、この背圧室45の内圧に基づく付勢力がバルブスプリング44のセット荷重Wkよりも大きい状態になると、当該吐出圧に基づく付勢力をもって弁体43がバルブスプリング44の付勢力に抗してバルブボディ41の一端側(プラグ42側)へ移動することとなる。これにより、第1ポート46が環状空間50を介して第3ポート48と連通し、第2ポート47が背圧ポート49と連通することにより、前記各切換ポート23,33は吸入ポートとして機能することとなる(本発明に係る第2の状態)。
【0043】
ここで、かかる制御弁40のポート切換制御に際して、前記弁体43(第2ランド部43b)の受圧面積及びバルブスプリング44のセット荷重Wkは、前記各切換ポート23,33の内圧が負圧となる直前の吐出圧に基づいた背圧室45による付勢力とバルブスプリング44の付勢力とがほぼつり合うような大きさに設定されていて、第1の状態にて前記各切換ポート23,33の内圧が負圧となるような場合には、第1の状態から第2の状態へ既に切り換わっているような構成となっている。
【0044】
以下、本実施形態に係るオイルポンプ10の特徴的な作用について、図15、図16に基づいて説明する。
【0045】
まず、前記オイルポンプ10の作用説明に入る前に、当該オイルポンプ10の吐出圧制御の基準となる内燃機関の必要油圧につき、図15に基づいて説明すると、図中のP1は、例えば燃費向上等に供するバルブタイミング制御装置を採用した場合の当該装置の要求油圧に相当する第1機関要求油圧を、図中のP2は、ピストンの冷却に供するオイルジェットを採用する場合の当該装置の要求油圧に相当する第2機関要求油圧を、図中のP3は、機関高回転時の前記クランクシャフトの軸受部潤滑に要する第3機関要求油圧を、それぞれ示し、これらの点P1〜P3を繋いだ図中の曲線E(二点差線)が、内燃機関の機関回転数Rに応じた理想的な必要油圧(吐出圧)Pを表している。また、同図中のPfは、制御油室37の内圧に基づく付勢力によりカムリング17が前記両スプリング34,35の合力W0に抗して揺動し始める第1作動油圧を、同図中のPsは、制御油室37の内圧に基づく付勢力によりカムリング17が第1スプリングのばね荷重W1に抗してさらに揺動し始める第2作動油圧を、それぞれ示している。そして、前記両作動油圧Pf,Ps間に設定されるPkは、前記各切換ポート23,33の接続を切り換えるポート切換油圧を示している。
【0046】
すなわち、前記オイルポンプ10の場合、機関のアイドル運転時に相当する図15中の区間aでは、前記両スプリング34,35の合力W0による付勢力、つまり相対的に大きな第1スプリング34のばね荷重に基づく付勢力によって、図16(a)に示すように、カムリング17の偏心量が最大となる状態に保持されることとなる。これにより、当該区間aでは、吐出圧(機関内油圧)Pが前記ポート切換油圧Pkより十分に小さく、制御弁40の弁体43が最も背圧室45側に位置することとなって前記各切換ポート23,33がそれぞれ前記各吐出ポート22,32に接続された状態となることにより、吐出圧Pは機関回転数Rにほぼ比例するように増大する特性となる。
【0047】
その後、機関回転数Rが上昇し吐出圧Pが前記第1機関要求油圧P1よりも高く設定される第1作動油圧Pfに到達すると、図16(b)に示すように、制御油室37の内圧に基づく付勢力と第2スプリング35の付勢力とにより、カムリング17が第1スプリング34の付勢力に抗して前記同心方向へと移動し始める。すると、カムリング17の偏心量が徐々に小さくなることによって吐出量の増加が制限され、これによって機関回転数Rの上昇に基づく吐出圧Pの増大が抑制されることとなる(図15中の区間b)。やがて、上記カムリング17の移動に伴い第2スプリング35が伸長し、図16(c)に示すように、その先端が規制部30に当接すると、当該第2スプリング35による助勢作用がなくなることで上記カムリング17の移動が停止することとなり、再び機関回転数Rの上昇に伴って吐出圧Pが当該機関回転数Rにほぼ比例するかたちで増大することとなる(図15中の区間c)。
【0048】
ここで、本実施形態では、前記オイルポンプ10を、従来のような内燃機関(クランクシャフト)の回転数ではなく、バランサ装置1(ドリブンシャフト5)の回転数、つまり従来の2倍の回転数でもって駆動する構成となっていることから、当該オイルポンプ10では、所定回転数Rkを超える機関回転数Rの領域ではキャビテーションの発生が余儀なくされ、これによって吐出圧Pを機関回転数Rの上昇に比例して増大させることができなくなってしまう。すなわち、従来の2倍速となる回転数では、ロータ15の回転速度が速過ぎるためにポンプ室PRが前記各吸入ポート21,31の領域(容積拡大領域)に位置する時間が短くなり過ぎてしまい、当該ポンプ室PR内に十分な作動油を吸入できないまま前記各吐出ポート22,32と連通する前記各切換ポート23,33の領域(容積縮小領域の上流側)へと移行してしまうこととなるため、該各切換ポート23,33の領域に移行しても、これらと対向するポンプ室PR内は未だ負圧の状態にあって当該各切換ポート23,33に作動油を吐出することができず、機関回転数Rの上昇に伴い吐出量を増加させることができない。
【0049】
なお、かかる技術的課題は、特に、前記オイルポンプ10のようなベーン式ポンプにおいて顕著に発生するものであり、例えばトロコイド式ポンプの場合には、キャビテーションが発生した後も機関回転数の上昇に伴って吐出量が増加することになるため、吐出量が不足するといった当該技術的課題はほとんど発生することがない。
【0050】
そこで、前記オイルポンプ10では、機関回転数Rの上昇により吐出圧Pが、キャビテーションの発生し得る前記機関回転数Rkでの吐出圧に相当する前記ポート切換油圧Pkに到達すると、図16(d)に示すように、制御弁40内において、背圧室45の内圧に基づく付勢力がバルブスプリング44のセット荷重Wkに打ち勝ち、該バルブスプリング44のセット荷重Wkに抗して弁体43がプラグ42側へと移動することによって、制御弁40が第1の状態から第2の状態へと切り換わる。その結果、環状空間50を介して第1ポート46と第3ポート48とが連通することとなり、前記各切換ポート23,33には第3連通孔33aや第2連通路39を介して前記各吸入ポート21,31から作動油が導入されることとなって、前記各吸入ポート21,31に加え、当該各切換ポート23,33も吸入ポートとして機能することとなる。
【0051】
こうして、前記各切換ポート23,33が吸入ポートとして機能することで、前記各吸入ポート21,31と合わせて吸入区間(吸入領域)が拡大しポンプ室PRが当該吸入領域に位置する時間が長くなることから、前述のように前記各吸入ポート21,31の領域のみでは十分に作動油を供給できずに容積縮小領域の上流側(各切換ポート23,33の領域)においても負圧となっていたポンプ室PRに対しても十分な作動油を供給することが可能となって、キャビテーション発生の抑制に供されることとなる。
【0052】
そして、前記制御弁40が第1の状態から第2の状態へと切り換わっている間は、当該制御弁40内における第1ポート46と第2ポート47との連通量が漸次縮小することにより固有吐出量(ポンプ1回転あたりの吐出量)が低下することになるため、機関回転数Rが上昇しても吐出圧Pの増加量は一時的にほぼ横ばいとなるものの、前記ポート切換が完了した後は、再び機関回転数Rの上昇に伴って吐出圧Pが当該機関回転数Rにほぼ比例するかたちで増大することとなる(図15中の区間d)。
【0053】
なお、このとき、前記制御弁40が第2の状態へと移行することによって、吐出領域が縮小されると共に、当該吐出領域に位置するポンプ室PRが容積の縮小した状態で前記各吐出ポート22,32へと作動油を吐出することになるため、当該制御弁40が第1の状態にある場合と比較して、理論上の吐出量としては減少することになるものの、キャビテーションが発生しない分、実際の吐出量は増大することとなる。
【0054】
続いて、さらに機関回転数Rが上昇し吐出圧Pが前記第3機関要求油圧P3よりも高く設定される第1作動油圧Psに到達すると、図16(e)に示すように、制御油室37の内圧に基づく付勢力により、カムリング17が第1スプリング34のばね荷重Wxに抗してさらに前記同心方向へ移動し始める。すると、カムリング17の偏心量が小さくなるに従って吐出量の増加が制限され、これによって機関回転数Rの上昇に基づく吐出圧Pの増大が抑制されることとなる(図15中の区間e)。
【0055】
このように、前記オイルポンプ10では、前記両スプリング34,35及び制御弁40によって吐出圧Pを多段階的に増大させるようにカムリング17を揺動制御することで、当該吐出圧Pを無駄に増大させることなく、内燃機関の要求油圧(曲線E)に極力沿った特性を得ることができる(図15参照)。
【0056】
しかも、前記オイルポンプ10の場合には、その吐出圧Pが前記ポート切換油圧Pkを超えるような高回転時に単に前記各切換ポート23,33を前記各吸入ポート21,31に接続させたのではなく、キャビテーションを抑制するという趣旨から当該高回転時により多くの作動油を吸入させる構成とし、これによって適切な吐出量を確保するようにしたことから、当該ポンプ10に無駄な仕事をほとんどさせることがなく、燃費の悪化を招来してしまうこともない。
【0057】
以上のように、本実施形態に係るオイルポンプ10によれば、前記容積縮小領域の上流側(前記各切換ポート23,33の領域)に位置するポンプ室PRが負圧となるような高回転時には、制御弁40を切り換えることによって前記各切換ポート23,33からも作動油を供給可能とし、これによって吸入量を増大させるようにしたことから、前記技術的課題である当該高回転時のキャビテーションの発生を抑制することが可能となり、十分な吐出量を確保することができる。
【0058】
換言すれば、前記オイルポンプ10の場合には、前記高回転時に前記各切換ポート23,33からも作動油の吸入を可能としたことで、当該高回転時の、作動油を吸入する領域(吸入領域)が拡大され、ポンプ室PRの当該吸入領域に位置する時間(吸入時間)をより長く確保することが可能になることから、十分な吸入量を確保することができ、キャビテーションの抑制に供されることとなる。
【0059】
さらに、前記オイルポンプ10では、カムリング17が前記同心方向へ移動する際に、そのアーム部17bの各側面によって前記各吸入ポート21,31の一部が覆われることとなるため、これが吸入時の抵抗となって、前記キャビテーションの効果的な抑制が図れる。
【0060】
また、前記オイルポンプ10を、従来(クランクシャフトの回転数)の2倍の回転数で駆動するようにしたことで、従来の半分のポンプ容積で従来と同じ吐出能力を持たせることが可能となることから、ポンプ自体の大幅な小型化にも貢献することができる。
【0061】
しかも、本実施形態では、かかる従来の2倍の回転駆動力を得るにあたって、内燃機関に付随する既存のバランサ装置1を利用することとしたため、新たに駆動源を用いることもなく、コストの増大化の抑制にも供される。
【0062】
図17は本発明に係るオイルポンプの第2実施形態を示しており、前記第1実施形態に係る制御弁40の背圧ポート49と前記各吐出ポート22,32との間に、機関運転状態に応じて車載のECU60からの励磁電流に基づき作動するノーマルクローズ型のソレノイドバルブSVを設け、該ソレノイドバルブSVによって前記ポート切換制御を電気的に行うこととしたものである。なお、図17(a)はソレノイドバルブSVには励磁電流が通電されていない状態であって本発明に係る第1状態を、図17(b)はソレノイドバルブSVに励磁電流が通電された状態であって本発明に係る第2状態を、それぞれ表している。
【0063】
すなわち、前記ソレノイドバルブSVは、基本的に、所定のセンサ等により検出された内燃機関の回転数Rをもって制御されるように構成され、当該機関回転数Rが前述の所定回転数Rk(図15参照)よりも低い状態では、ECU60から励磁電流は通電されず、背圧ポート49へと導かれた作動油はドレンされ、背圧室45内には吐出圧Pが導入されないこととなる。この結果、弁体43がバルブスプリング44の付勢力によりバルブボディ41の段部41cに押し付けられた状態となり、当該制御弁40は、前記第1の状態が維持されることとなる(図17(a)参照)。
【0064】
一方、内燃機関の回転数Rが前記所定回転数Rk以上になると、ECU60から励磁電流が通電されることでソレノイドバルブSVが開弁し、背圧室45内には前記ポート切換油圧Pk以上の吐出圧Pが導入されることとなる。この結果、当該導入圧をもって弁体43がバルブスプリング44の付勢力に抗してバルブボディ41の一端側(プラグ42側)へと移動し、当該制御弁40は、前記第2の状態へと切り換えられることとなる(図17(b)参照)。
【0065】
以上のように、本実施形態では、前記制御弁40によるポート切換制御を、ソレノイドバルブSVを用いることによって電気的に行うようにしたことから、前記第1実施形態のように吐出圧(作動油圧)によって前記ポート切換制御を行う場合に比べて、ポンプ10各部の摩耗や油種変更による油圧変化の影響等を受けることがないため、当該ポート切換制御を常時適切に行うことが可能となり、キャビテーションの発生をより確実に抑制することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、前記ソレノイドバルブSVを前記制御弁40の背圧ポート49と前記各吐出ポート22,32との間に介装することによって制御弁40の背圧室45への導入圧を制御する構成としたが、当該構成のほか、前記ソレノイドバルブSVによって制御弁40の弁体43を直接駆動する構成としてもよく、この場合であっても、上記作用効果を得ることができる。
【0067】
図18は本発明に係るオイルポンプの第3実施形態を示しており、前記第2実施形態に係るソレノイドバルブSVをリニアソレノイドバルブRSVに変更すると共に、該リニアソレノイドバルブRSVと前記各吐出ポート22,32との間にオリフィス61を設け、前記リニアソレノイドバルブRSVをもってドレン排出量を制御することで背圧室45に作用させる導入圧を制御するように構成したものである。なお、図18(a)はリニアソレノイドバルブRSVにおけるドレン排出量が最大となる状態であって本発明に係る第1の状態を、図18(b)はリニアソレノイドバルブRSVにおけるドレン排出量がゼロとなる状態であって本発明に係る第2の状態を、それぞれ表している。
【0068】
すなわち、前記リニアソレノイドバルブRSVは、一端側が開口形成され他端側が閉塞されるほぼ筒状に形成されたバルブボディ51と、該バルブボディ51の内周に軸方向に沿って摺動自在に収容され、その各端部にバルブボディ51の内周面に摺接する第1、第2ランド部52a,52bが形成された弁体52と、該弁体52の第2ランド部52bによりバルブボディ51の他端側に隔成される背圧室55内に収容され、弁体52をバルブボディ51の一端側へ付勢するバルブスプリング53と、バルブボディ51の一端開口部に取り付けられ、通電に伴いロッド54bを進出させてバルブスプリング53の付勢力に抗して弁体52をバルブボディ51の他端側へ軸方向移動させる電磁ユニット54と、から主として構成されている。
【0069】
前記バルブボディ51は、その周壁に、前記各切換ポート23,33と連通するINポート51aと、背圧ポート49に接続されるOUTポート51bと、前記各吸入ポート21,31又は外部に接続されて、後記の環状空間56内の作動油の排出に供するドレンポート51cと、がそれぞれ貫通形成されている。
【0070】
前記弁体52は、その軸方向の中間部が縮径形成されていて、前記両ランド部52a,52bによってバルブボディ51との間に環状空間56を隔成し、該環状空間56を介して前記各ポート51a〜51cが相互に連通するようになっている。そして、この弁体52の第2ランド部52bによりドレンポート51cが開閉されることによって、環状空間56からOUTポート51bを介して背圧ポート49へと導く作動油圧が制御されることとなる。
【0071】
前記電磁ユニット54は、周知のように、ボビンにコイルが巻回され、これにヨークを外嵌してなるコイルユニット54aと、該コイルユニット54aの内周側に軸方向に進退可能に設けられた磁性材からなる図外のアーマチュアと、該アーマチュアに結合され、コイルへの通電状態に応じてアーマチュアに伴い進退移動するロッド54bと、から主として構成されている。
【0072】
かかる構成から、前記リニアソレノイドバルブRSVは、内燃機関の回転数Rが前記所定回転数Rkよりも低い状態では、ECU60から最大の励磁電流が通電され、ロッド54bが最大進出した状態となり、ドレンポート51cの排出量は最大となる。この結果、前記制御弁40の背圧室45にはバルブスプリング44の付勢力に抗して弁体43を作動させるのに十分な作動油圧が導入されず、バルブスプリング44の付勢力によって弁体43がバルブボディ41の段部41cへと押し付けられた状態となり、当該制御弁40は、前記第1の状態が維持されることとなる(図18(a)参照)。
【0073】
一方、内燃機関の回転数Rが上昇して前記第1作動油圧Pfに相当する所定回転数Rf以上になると、当該機関回転数Rの上昇に伴ってECU60からの励磁電流が徐々に低減されドレンポート51cの開口面積が漸減していくことによって前記背圧室45の内圧が漸増することとなり、当該背圧室45の内圧が前記ポート切換油圧Pkに到達したところで弁体43がバルブボディ41の一端側(プラグ42側)へと移動し始め、前記ポート切換制御が開始される。やがて、ECU60からの励磁電流が最小となってドレンポート51cが完全に閉じられたとき、当該制御弁40は、前記第1の状態から第2の状態へ完全に移行することとなる(図18(b)参照)。
【0074】
以上のように、本実施形態では、前記制御弁40の背圧室45に対する導入圧制御にリニアソレノイドバルブRSVを採用したことで、前記第2実施形態と同様の作用効果が奏せられるのは勿論のこと、当該リニアソレノイドバルブRSVは、ON−OFF制御のみ可能な前記ソレノイドバルブSVとは異なり、前記ポート切換を徐々に行うことができることから、該ポート切換時の吐出量変化に基づく吐出圧変動の抑制に供される。
【0075】
なお、この実施形態でも、前記リニアソレノイドバルブRSVを前記制御弁40の背圧ポート49と前記各吐出ポート22,32との間に介装することによって制御弁40の背圧室45への導入圧を制御する構成としたが、当該構成のほか、前記リニアソレノイドバルブRSVによって制御弁40の弁体43を直接駆動する構成としてもよく、この場合であっても上記作用効果を得ることができるのは第2実施形態と同様である。
【0076】
本発明は前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば前記機関要求油圧P1〜P3、前記第1、第2作動油圧Pf,Ps及び前記ポート切換油圧Pkは、前記オイルポンプ10が搭載される車両の内燃機関やバルブタイミング制御装置等の仕様に応じて自由に変更することができる。
【0077】
また、前記オイルポンプ10の駆動源についても、必ずしもバランサ装置1を利用する必要はなく、内燃機関の回転数よりも高い回転数で駆動可能なものであれば、他の装置を利用することも可能である。さらに、当該他の装置は、車体に既存のものでもよく、新たに追加したものでもよい。
【0078】
また、前記各実施形態では、前記制御弁40を介して前記各切換ポート23,33を前記各吸入ポート21,31に接続することによって吸入領域の拡大を図っているが、このように分割した各ポートを組み合わせることによって吸入領域を画一的に拡大するのではなく、当該吸入領域を連続的に拡大することで高回転時のポンプ吸入量を確保することとしてもよい。
【0079】
すなわち、前記各吐出ポート22,32と前記各切換ポート23,33とをそれぞれ一連の吐出ポートとして構成すると共に、これら一連の吐出ポートと前記各吸入ポート21,31を仕切る一対の仕切壁のうち内部容積が大きい方のポンプ室PRが対向する一方の仕切壁(例えば図7中でいう下側の隔壁)を、前記両部材11,12とは別体の、該両部材11,12に対して相対移動可能な仕切部材として構成し、該仕切部材をそれぞれ周方向に移動させて吸入領域と吐出領域の配分を連続的に変更することによって前記吸入領域を拡大させることとしてもよい。
【0080】
このように吸入領域と吐出領域の配分を連続的に変更可能に構成することで、機関高回転時における吸入量の確保ができるばかりでなく、吸入・吐出領域の拡縮に基づく急激なポンプ吐出量の変化を抑制することが可能となり、ポンプ10の円滑な吐出量制御に供されることとなる。また、上述の構成の場合には、仕切部材を移動させるのみによって前記吸入・吐出領域の拡縮を容易に行えることから、ポンプ10の応答性の向上にも供される。
【0081】
また、前記第2、第3実施形態では、前記ソレノイドバルブSV及びリニアソレノイドバルブRSVの制御パラメータとして、基本となる機関回転数を例に説明したが、当該機関回転数のほか、例えば機関内を流動する冷却水温もしくは作動油温又はその両方や、前記各切換ポート23,33内に圧力センサや圧力スイッチ等を設けることによって検出した当該各切換ポート23,33内の圧力、に応じて制御することとしてもよい。
【0082】
すなわち、キャビテーションの発生は作動油の粘度にも影響することから、前記冷却水温あるいは作動油温、望ましくは両者を制御パラメータとして設定することで、当該キャビテーションの発生をより適切に抑制することが可能となる。また、前述のように、前記各切換ポート23,33の内圧が負圧になるとキャビテーションが発生することから、当該各切換ポート23,33の内圧に基づいて前記ポート切換制御を行うことも、適切なキャビテーションの抑制に有効となる。
【0083】
前記各実施形態から把握される特許請求の範囲に記載した発明以外の技術的思想について、以下に説明する。
【0084】
(a)請求項1に記載のオイルポンプにおいて、
前記ポンプ構成体は、前記吐出圧に応じて吐出量を可変するように構成され、
前記弁体が前記第1の状態を前記第2の状態に切り換える吐出圧は、ポンプ1回転あたりの吐出量が最低となる吐出圧よりも低く設定されていることを特徴とするオイルポンプ。
【0085】
キャビテーションは、ポンプの吐出圧が、ポンプの固有吐出量が最低となる吐出圧に達するよりも前に発生することになるため、当該固有吐出量が最低となる吐出圧よりも切換圧を低く設定することで、キャビテーション抑制の実効が図れる。
【0086】
(b)前記(a)に記載のオイルポンプにおいて、
前記ポンプ構成体は、内燃機関により回転駆動されてその外周側に放射状の複数の溝を有するロータと、前記ロータの外周側に配置されて該ロータの回転中心とその内周面の中心とが偏心可能となるように設けられたカムリングと、前記複数の溝内にそれぞれ出没自在に収容されて各先端が前記カムリングの内周面に摺接するベーンとから構成され、
前記カムリングの軸方向両側面に前記ポートブロックが配置されることで、該ポートブロック、前記ロータ、前記カムリング及び前記各ベーンにより前記各作動油室が隔成されることを特徴とするオイルポンプ。
【0087】
(c)前記(b)に記載のオイルポンプにおいて、
前記吐出圧が第1の圧力に達すると前記ロータの回転中心と前記カムリングの内周面の中心との偏心量が減少し、前記吐出圧が前記第1の圧力よりも高い第2の圧力に達すると前記ロータの回転中心と前記カムリングの内周面の中心との偏心量がさらに減少するように構成され、
前記弁体が前記第1の状態を前記第2の状態へと切り換える吐出圧は、前記第1の圧力よりも高く前記第2の圧力よりも低く設定されていることを特徴とするオイルポンプ。
【0088】
このように構成することで、可変容量形ポンプとしての機能を確保しつつ、本発明の作用効果を得ることができる。すなわち、第1の状態から第2の状態へと切り換えることによって吐出量が減少してしまうことから、カムリングの揺動タイミングが遅れ、その分、ポンプに不必要な仕事をさせてしまう結果となる。よって、キャビテーションが発生し得ない状態で前述のような切り換えを行ってしまうと、キャビテーション低減効果が活かされないばかりか、逆に、ポンプの駆動トルク低減を図るといった可変容量形ポンプとしての機能を無駄に阻害してしまうこととなる。
【0089】
(d)前記(c)に記載のオイルポンプにおいて、
前記カムリングには、それぞればね荷重の異なる2種類のスプリングによる付勢力が作用するように構成され、
前記吐出圧が前記第1の圧力に達すると、前記カムリングは、前記両スプリングのうち比較的ばね荷重の小さいスプリングの付勢力に抗して前記ロータの回転中心と前記カムリングの内周面の中心との偏心量が減少する方向へ移動し、
前記吐出圧が前記第2の圧力に達すると、前記カムリングは、前記両スプリングのうち比較的ばね荷重の大きいスプリングの付勢力に抗して前記ロータの回転中心と前記カムリングの内周面の中心との偏心量がさらに減少する方向へ移動するように構成されることを特徴とするオイルポンプ。
【0090】
(e)前記(c)に記載のオイルポンプにおいて、
前記ロータの回転中心と前記カムリングの内周面との偏心量が減少すると、前記吸入ポートの一部が前記カムリングの側面によって覆われるように構成されることを特徴とするオイルポンプ。
【0091】
このように構成することで、吸入ポートからの吸い込み量を減少させることが可能となり、キャビテーション発生の抑制に供される。
【0092】
(f)請求項1に記載のオイルポンプにおいて、
前記ポンプ構成体は、内燃機関のクランクシャフトの回転数よりも高回転で駆動されることを特徴とするオイルポンプ。
【0093】
このように、ポンプの回転数を従来よりも高めることで、同じ能力を有するポンプを構成する場合には、従来よりもポンプを小型化することができる。
【0094】
(g)前記(f)に記載のオイルポンプにおいて、
前記ポンプ構成体は、前記クランクシャフトの回転数の2倍の回転数で駆動されることを特徴とするオイルポンプ。
【0095】
このように、ポンプの回転数を従来の2倍とすることで、同じ能力を有するポンプを構成する場合には、従来の半分の容量で足り、ポンプの大幅な小型化に貢献できる。
【0096】
(h)前記(g)に記載のオイルポンプにおいて、
前記ポンプ構成体は、内燃機関の2次振動を低減するバランサ装置によって駆動されることを特徴とするオイルポンプ。
【0097】
このように、内燃機関に付随する既存の装置を利用するようにしたことで、新たに駆動源を用いることなく前記従来の2倍の回転駆動力を得ることができ、コスト増大化の抑制に供される。
【0098】
(i)前記(h)に記載のオイルポンプにおいて、
前記ポンプ構成体は、前記バランサ装置に組み込まれていることを特徴とするオイルポンプ。
【0099】
このようにしてポンプとバランサ装置とを一体化することで、ポンプを別に配置する場合に比べて、車両等にコンパクトに搭載することが可能となる。
【0100】
(j)請求項2に記載のオイルポンプにおいて、
前記制御手段は、電気的に制御されることを特徴とするオイルポンプ。
【0101】
かかる構成とすることで、前記切換制御を吐出圧を用いて行う場合のようにオイルポンプの摩耗や油種変更による油圧変化の影響を受けることがないため、前記切換制御を常時適切に行うことが可能となる。
【0102】
(k)前記(j)に記載のオイルポンプにおいて、
前記制御手段は、検出された内燃機関の回転数に応じて制御されることを特徴とするオイルポンプ。
【0103】
キャビテーションの発生はポンプの回転数に依存するため、該ポンプの回転数に相関する内燃機関の回転数に応じた制御とすることで、キャビテーションの発生を適切に抑制することができる。
【0104】
(l)前記(k)に記載のオイルポンプにおいて、
前記制御手段は、検出された内燃機関の温度を考慮して制御されることを特徴とするオイルポンプ。
【0105】
キャビテーションの発生は作動油の粘度にも影響することから、かかる構成とすることで、キャビテーションの発生をより適切に抑制することができる。
【0106】
(m)前記(j)に記載のオイルポンプにおいて、
前記制御手段は、検出された前記切換ポートの圧力に応じて制御されることを特徴とするオイルポンプ。
【0107】
容積が縮小する領域の上流側に開口する切換ポート内の圧力が負圧になるとキャビテーションが発生するため、当該切換ポートの圧力に基づいて前記切換制御を行うことで、キャビテーションの発生を適切に抑制することができる。
【0108】
(n)請求項3に記載のオイルポンプにおいて、
前記容積が縮小する領域の上流側の作動油室が負圧になる回転数のときには、作動油を吸入する領域を拡大する一方、作動油を吐出する領域を縮小することを特徴とするオイルポンプ。
【0109】
かかる構成とすることで、吸入工程において十分な吸入量を確保することが可能となり、キャビテーションの抑制に供される。
【0110】
(o)前記(n)に記載のオイルポンプにおいて、
作動油を吸入する領域は、前記回転数に応じて連続的に拡大されることを特徴とするオイルポンプ。
【0111】
かかる構成とすることで、吸入・吐出領域の拡縮に基づく急激な吐出量変化を抑制でき、円滑なポンプ制御に供される。
【0112】
(p)前記(o)に記載のオイルポンプにおいて、
前記ポートブロックには、前記吸入ポートと前記吐出ポートとを仕切る仕切部材が設けられ、該仕切部材が前記回転数に応じて移動することにより、前記作動油の吸入領域が拡大されることを特徴とするオイルポンプ。
【0113】
かかる構成とすることで、吸入・吐出領域を固定的に仕切る従来のポンプに比べて、当該吸入・吐出領域の拡縮を容易に行うことができ、ポンプの応答性の向上に供される。
【符号の説明】
【0114】
10…オイルポンプ
11…ポンプボディ(ポートブロック)
12…カバー部材(ポートブロック)
15…ロータ(ポンプ構成体)
16…ベーン(ポンプ構成体)
17…カムリング(ポンプ構成体)
18…リング部材(ポンプ構成体)
21,31…吸入ポート
22,32…吐出ポート
23,33…切換ポート
41…バルブボディ(弁収容孔)
43…弁体
44…バルブスプリング(付勢部材)
45…背圧ポート(吐出圧導入ポート)
46a…第1ポート
47…第2ポート
48…第3ポート
PR…ポンプ室(作動油室)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関により回転駆動されることによって複数の作動油室の容積を連続的に増減させるポンプ構成体と、
前記作動油室のうち容積が拡大する領域に開口する吸入ポートと、前記作動油室のうち容積が縮小する領域の上流側に開口する切換ポートと、前記作動油室のうち容積が縮小する領域の下流側に開口する吐出ポートとを有するポートブロックと、
その内周面に、前記吸入ポートに連通する第1ポートと、前記切換ポートに連通する第2ポートと、前記吐出ポートに連通する第3ポートとが開口形成されると共に、その一端部に、前記吐出ポート内の油圧である吐出圧を導入する吐出圧導入ポートが設けられた弁収容孔と、
前記弁収容孔に摺動自在に収容されることによって、前記第1ポートと前記第2ポートとの間の連通を制限して前記第2ポートと前記第3ポートとを連通させる第1の状態と、前記第1ポートと前記第2ポートとを連通させて前記第2ポートと前記第3ポートとの連通を制限する第2の状態とを切り換える弁体と、
前記弁収容孔の他端側に設けられ、前記弁体を前記弁収容孔の一端側へ付勢する付勢部材と、を備え、
前記吐出圧が作用する前記弁体の一端側受圧面積と前記付勢部材の付勢力は、前記切換ポートが開口する前記作動油室内の圧力が負圧となった際に前記第1の状態から前記第2の状態へと切り換わっているように設定されていることを特徴とするオイルポンプ。
【請求項2】
内燃機関により回転駆動されることによって複数の作動油室の容積を連続的に増減させるポンプ構成体と、
前記作動油室のうち容積が拡大する領域に開口する吸入ポートと、前記作動油室のうち容積が縮小する領域の上流側に開口する切換ポートと、前記作動油室のうち容積が縮小する領域の下流側に開口する吐出ポートとを有するポートブロックと、
前記切換ポートが開口する前記作動油室内の圧力が正圧となるような低回転時には、前記切換ポートは前記吐出ポートと共に外部へ作動油を吐出する一方、前記切換ポートが開口する前記作動油室内の圧力が負圧となるような高回転時には、前記吸入ポートと連通する低圧部から前記切換ポートへ作動油が供給されるように制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするオイルポンプ。
【請求項3】
内燃機関により回転駆動されることによって複数の作動油室の容積を連続的に増減させるポンプ構成体と、
前記作動油室のうち少なくとも容積が拡大する領域に開口する吸入ポートと、前記作動油室のうち容積が縮小する領域に開口する吐出ポートとを有するポートブロックと、
容積が縮小する領域の上流側となる前記作動油室内の圧力が負圧になる回転数のときには、当該負圧となる作動油室に低圧部から作動油が流入するように制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするオイルポンプ。
【請求項1】
内燃機関により回転駆動されることによって複数の作動油室の容積を連続的に増減させるポンプ構成体と、
前記作動油室のうち容積が拡大する領域に開口する吸入ポートと、前記作動油室のうち容積が縮小する領域の上流側に開口する切換ポートと、前記作動油室のうち容積が縮小する領域の下流側に開口する吐出ポートとを有するポートブロックと、
その内周面に、前記吸入ポートに連通する第1ポートと、前記切換ポートに連通する第2ポートと、前記吐出ポートに連通する第3ポートとが開口形成されると共に、その一端部に、前記吐出ポート内の油圧である吐出圧を導入する吐出圧導入ポートが設けられた弁収容孔と、
前記弁収容孔に摺動自在に収容されることによって、前記第1ポートと前記第2ポートとの間の連通を制限して前記第2ポートと前記第3ポートとを連通させる第1の状態と、前記第1ポートと前記第2ポートとを連通させて前記第2ポートと前記第3ポートとの連通を制限する第2の状態とを切り換える弁体と、
前記弁収容孔の他端側に設けられ、前記弁体を前記弁収容孔の一端側へ付勢する付勢部材と、を備え、
前記吐出圧が作用する前記弁体の一端側受圧面積と前記付勢部材の付勢力は、前記切換ポートが開口する前記作動油室内の圧力が負圧となった際に前記第1の状態から前記第2の状態へと切り換わっているように設定されていることを特徴とするオイルポンプ。
【請求項2】
内燃機関により回転駆動されることによって複数の作動油室の容積を連続的に増減させるポンプ構成体と、
前記作動油室のうち容積が拡大する領域に開口する吸入ポートと、前記作動油室のうち容積が縮小する領域の上流側に開口する切換ポートと、前記作動油室のうち容積が縮小する領域の下流側に開口する吐出ポートとを有するポートブロックと、
前記切換ポートが開口する前記作動油室内の圧力が正圧となるような低回転時には、前記切換ポートは前記吐出ポートと共に外部へ作動油を吐出する一方、前記切換ポートが開口する前記作動油室内の圧力が負圧となるような高回転時には、前記吸入ポートと連通する低圧部から前記切換ポートへ作動油が供給されるように制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするオイルポンプ。
【請求項3】
内燃機関により回転駆動されることによって複数の作動油室の容積を連続的に増減させるポンプ構成体と、
前記作動油室のうち少なくとも容積が拡大する領域に開口する吸入ポートと、前記作動油室のうち容積が縮小する領域に開口する吐出ポートとを有するポートブロックと、
容積が縮小する領域の上流側となる前記作動油室内の圧力が負圧になる回転数のときには、当該負圧となる作動油室に低圧部から作動油が流入するように制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするオイルポンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−172516(P2012−172516A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31691(P2011−31691)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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